説明

ガスタービンエンジン用のベーン構造体および低圧タービン

【課題】ベーン構造体の各セグメント間からの流体の漏れを阻止する完全なフープ状リング構造を提供する。
【解決手段】ベーン構造体64Bが、セラミックマトリクス複合外周側リング66と、セラミックマトリクス複合内周側リング68と、セラミックマトリクス複合外周側リング66とセラミックマトリクス複合内周側リング68との間に組み込まれた複数のセラミックマトリクス複合エアフォイル部70とを備えている。セラミックマトリクス複合外周側リング66およびセラミックマトリクス複合内周側リング68は、完全なフープを形成するように、組み込まれた複数のエアフォイル部70の周囲に基本的に巻かれている。完全なフープ状リングの設計により、完全なフープ構成におけるセラミックマトリクス複合材料の繊維強度の利用が最大化される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスタービンエンジンに関し、特に、ガスタービンエンジンのセラミックマトリクス複合(CMC)ベーン構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスタービンエンジンの低圧タービン(LPT)のベーン構造体が、一般に、共に完全なリングを形成する複数のクラスタセグメントとして組み立てられる。各セグメントの境界部(interface)が、流れが漏れる複数の通路を有することがある。フェザーシールおよび他の構造体が、セグメントの間からの漏れを最小化するが、どんな漏れであっても効率上不利益なものであり、この不利益は、ガス通路の空気が、二次冷却流が存在すべきキャビティへと流入する場合に金属製品(hardware)を早期に故障させる要因となることがある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本発明の例示的な特徴によるガスタービンエンジン用のベーン構造体が、セラミックマトリクス複合外周側リングとセラミックマトリクス複合内周側リングとの間に組み込まれた複数のセラミックマトリクス複合エアフォイル部を備えている。リング構造体が、低圧タービンの部分を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0004】
【図1】ガスタービンエンジンの概略的な断面図である。
【図2】ガスタービンエンジンの低圧タービンセクションの拡大断面図である。
【図3】低圧タービンセクションの例示的なステータベーン構造体の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0005】
図1には、ガスタービンエンジン20が概略的に示されている。本明細書においては、ガスタービンエンジン20は、一般に、ファンセクション22、圧縮機セクション24、燃焼器セクション26およびタービンセクション28を組み込んでなる2−スプールターボファンとして開示されている。代替的なエンジンが、他のシステムや特徴部の間に増加装置セクション(図示せず)を備え得る。ファンセクション22は、バイパス流路に沿って空気を移動させ、圧縮機セクション24は、圧縮のためにコア流路に沿って空気を移動させ、この空気は、燃焼器セクション26へと通流し、そして、タービンセクション28を通して膨張する。これに限定されない開示された実施例には、ターボファンガスタービンエンジンとして図示されているが、本明細書で説明される概念は、教示されたターボファンを用いて使用することに限定されるものではなく、他の形式のタービンエンジンにも適用することができることを理解されたい。
【0006】
ガスタービンエンジン20は、一般に、低速スプール30および高速スプール32を備えており、これらのスプール30,32は、種々のベアリングシステム38を介してエンジンの静止構造体36に対してエンジンの長手方向中心軸Aを中心に回転するように取り付けられている。種々のベアリングシステム38が、代替的にまたは付加的に様々な位置に設けられ得ることを理解されたい。
【0007】
低速スプール30は、一般に、ファン42、低圧圧縮機44および低圧タービン46を相互接続する内側シャフト40を備えている。内側シャフト40は、低速スプール30の速度よりも低速でファン42を駆動するように、ギア構造体48を介してファン42に接続されている。高速スプール32は、高圧圧縮機52と高圧タービン54とを相互接続する外側シャフト50を備えている。燃焼器56が、高圧圧縮機52と高圧タービン54との間に配置されている。内側シャフト40および外側シャフト50は、同軸に配置されており、これらのシャフトの長手方向軸と同一直線上にあるエンジンの長手方向中心軸Aを中心に回転する。
【0008】
コア空気流が、低圧圧縮機44によって圧縮されてから高圧圧縮機52を介して燃焼器56へと運ばれ、燃焼器56において燃料と混合されて燃焼し、そして、高圧タービン54および低圧タービン46にわたって膨張する。タービン54,46は、膨張に応答して低速スプール30および高速スプール32の各々を回転させる。
【0009】
図2を参照すると、低圧タービン46は、一般に、複数の低圧タービン段を有した低圧タービンケース60を備えている。これに限定されない開示された実施例においては、低圧タービンケース60は、セラミックマトリクス複合(CMC)材料または超合金から製造される。本明細書で説明される構成要素全てにおけるセラミックマトリクス複合材料の例が、例えば、S200およびSiC/SiCを備え得るがこれらに限定されないことを理解されたい。また、本明細書で説明される構成要素全てにおける超合金の例が、例えば、インコネル718およびWaspaloyを備え得るがこれらに限定されないことを理解されたい。開示された実施例においては、低圧タービンとして図示されているが、本明細書で説明される概念は、教示された低圧タービンを用いて使用することに限定されるものではなく、他のセクション、例えば、高圧タービン、高圧圧縮機、低圧圧縮機、中間圧タービン、3−スプール構造のガスタービンエンジンの中間圧タービン等にも適用することができることを理解されたい。
【0010】
ロータ構造体62A,62B,62Cが、ベーン構造体64A,64Bを点在させるようにして配置されている。任意の数の段が設けられ得ることを理解されたい。ベーン構造体64A,64Bの各々が、リング−支柱−リングとした完全なフープ(輪)状構造体を画定するようにセラミックマトリクス複合(CMC)材料から製造される。セラミックマトリクス複合材料は、金属よりも高い温度性能と、重量に対する強度の高い比率とを有利に提供する。また、種々のセラミックマトリクス複合材料の製造性が適用可能であることを理解されたい。
【0011】
ベーン構造体64Bが以下に詳細に説明されるが、ベーン構造体64A,64Bの各々が概ね同等のものであり、単一のベーン構造体64Bのみを詳細に説明する必要があることを理解されたい。ベーン構造体64Bは、一般に、セラミックマトリクス複合外周側リング66と、セラミックマトリクス複合内周側リング68と、セラミックマトリクス複合外周側リング66とセラミックマトリクス複合内周側リング68との間に組み込まれた(図3にも示されている)複数のセラミックマトリクス複合エアフォイル部70とを備えている。セラミックマトリクス複合外周側リング66およびセラミックマトリクス複合内周側リング68は、完全なフープを形成するように、組み込まれた複数のエアフォイル部70の周囲に基本的に巻かれている。本明細書では、「完全なフープ」という用語は、ベーンがこのフープに形成された開口部を貫通しないようにされた中断されていない部材として定義されることを理解されたい。完全なフープ状リングの設計により、完全なフープ構成におけるセラミックマトリクス複合材料の繊維強度の利用が最大化される。
【0012】
完全なフープ状のセラミックマトリクス複合外周側リング66は、低圧タービンケース60に静止金属製品を取り付けるための(図3にも示されている)スプラインインタフェース72を備えている。低圧タービンケース60は、エンジン軸Aに向かって半径方向内側へと延びる支持構造体74を備えている。支持構造体74は、対をなす半径方向フランジ76A,76Bを備えており、半径方向フランジ76A,76Bは、これらの間でスプラインインタフェース72を受ける。スプラインインタフェース72は、エアフォイル部70に沿って軸方向に中央に配置されており、また、一対の半径方向フランジ76A,76Bによって支持される締結具80を受ける開放スロット(open slot)78を備えている。開放スロット78は、熱の変化に起因する半径方向の膨張および収縮を吸収する浮揚リング構造を許容し、エンジン軸Aを中心としたベーン構造体64Bの同軸度を維持したままにする。
【0013】
完全なフープ状内周側リング68は、研磨材料82を支持することができ、該研磨材料82は、完全なフープ状内周側リング68に形成されるか、または完全なフープ状内周側リング68に接合され得る。研磨材料82は、一般に理解されるように、補完的なナイフエッジシール84によって溝掘りを行う。
【0014】
完全なフープ状リングベーン構造体により、セグメントの間からの漏れが無くなり、低圧タービンの効率が向上する。金属製品の重量は、材料の密度の変化のみに基づくのではなく、構造体の設計空間や組立を簡素化するセグメント間の金属製品、例えば、フェザーシール、ナットおよびボルトの必要性がない通常の構造体よりも小さいものとなる。
【0015】
種々の図全体について、同様の符号は、対応するまたは同様の構成要素を示すことを理解されたい。図示した実施例では、特定の構成要素配置が開示されているが、他の配置も本発明の恩恵を受けることになることを理解されたい。
【0016】
特定のステップの順序が示され、説明され、特許請求されているが、これらのステップは、他に指示がなければ、任意の順序で実施され、分離され、または組み合わされ、本発明から恩恵を受けることになることを理解されたい。
【0017】
本発明は、例示的なものであり、限定的なものではない。本発明の例示的な実施例について説明してきたが、当業者であれば、本発明の範囲を逸脱することなく、種々の変更がなされ得ることを理解されたい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミックマトリクス複合外周側リングと、
セラミックマトリクス複合内周側リングと、
前記セラミックマトリクス複合外周側リングと前記セラミックマトリクス複合内周側リングとの間に組み込まれた複数のセラミックマトリクス複合エアフォイル部と、
を備えたガスタービンエンジン用のベーン構造体。
【請求項2】
前記複数のセラミックマトリクス複合エアフォイル部は、低圧タービン内に配置されることを特徴とする請求項1に記載のベーン構造体。
【請求項3】
前記複数のセラミックマトリクス複合エアフォイル部は、高圧圧縮機内に配置されることを特徴とする請求項1に記載のベーン構造体。
【請求項4】
前記セラミックマトリクス複合外周側リングから延びるスプラインインタフェースをさらに備えることを特徴とする請求項1に記載のベーン構造体。
【請求項5】
前記スプラインインタフェースは、前記複数のセラミックマトリクス複合エアフォイル部に対して軸方向に中央に配置されることを特徴とする請求項4に記載のベーン構造体。
【請求項6】
前記スプラインインタフェースは、開放スロットを備えることを特徴とする請求項3に記載のベーン構造体。
【請求項7】
前記セラミックマトリクス複合内周側リングに取り付けられた研磨材料をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載のベーン構造体。
【請求項8】
スプラインインタフェースを有したセラミックマトリクス複合外周側リングと、
セラミックマトリクス複合内周側リングと、
前記セラミックマトリクス複合外周側リングと前記セラミックマトリクス複合内周側リングとの間に組み込まれた複数のセラミックマトリクス複合エアフォイル部と、
を備えたガスタービンエンジン用の低圧タービン。
【請求項9】
低圧タービンケースをさらに備え、前記セラミックマトリクス複合外周側リングは、前記スプラインインタフェースを介して前記低圧タービンケースに取り付けられていることを特徴とする請求項8に記載の低圧タービン。
【請求項10】
前記低圧タービンケースは、セラミックマトリクス複合材料から製造されることを特徴とする請求項9に記載の低圧タービン。
【請求項11】
前記低圧タービンケースから半径方向内側に延びる支持構造体をさらに備えることを特徴とする請求項9に記載の低圧タービン。
【請求項12】
前記支持構造体は、該支持構造体の間で前記スプラインインタフェースを軸方向に受けることを特徴とする請求項11に記載の低圧タービン。
【請求項13】
前記支持構造体は、対をなす半径方向フランジを備えることを特徴とする請求項12に記載の低圧タービン。
【請求項14】
前記セラミックマトリクス複合内周側リングに取り付けられた研磨材料をさらに備えることを特徴とする請求項8に記載の低圧タービン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−246915(P2012−246915A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−99334(P2012−99334)
【出願日】平成24年4月25日(2012.4.25)
【出願人】(590005449)ユナイテッド テクノロジーズ コーポレイション (581)
【氏名又は名称原語表記】UNITED TECHNOLOGIES CORPORATION
【Fターム(参考)】