説明

ガスタービンシステムと改質燃料焚きガスタービンシステム及びガスタービンシステムの改質燃料供給方法

【課題】
本発明の目的は、液体改質燃料の粘度を適度に維持することを特徴とする。
【解決手段】
高温高圧水と重質油とを混合して該重質油から改質燃料を製造する燃料改質器と、該改質燃料を燃焼する燃焼器を備えたガスタービンとを備えたガスタービンシステムであって、前記改質燃料を前記燃焼器に供給する系統上に、前記改質燃料を減圧する手段と、前記改質燃料と冷媒とを熱交換させる手段と、前記改質燃料を気液分離させる手段と、前記冷媒の供給量を制御する制御手段とを備えたことを特徴とする。
【効果】
本発明によれば、液体改質燃料の粘度を適度に維持することが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスタービンシステムと改質燃料焚きガスタービンシステム及びガスタービンシステムの改質燃料供給方法に関する。
【背景技術】
【0002】
重質油は廉価であるが、高粘度であり、高濃度の硫黄分や重金属分を含有しているため、ガスタービン燃料に適さない。このため、重質油を軽質化や脱硫黄化、及び脱金属化して、ガスタービンにも利用可能な燃料に改質する方法が、特許文献1に開示されている。この特許文献1の技術では、高温高圧水と重質油とを25MPa,380℃程度の反応条件で反応させ、熱分解と加水分解を行い、改質燃料を生成する。そして、この改質燃料をガスタービンに供給するガスタービンシステムを開示している。
【0003】
【特許文献1】特開2002−338973号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
但し、このシステムにおいて、燃料改質器で製造された改質燃料は高温高圧状態であるため、燃焼器に供給する前に減圧する必要がある。そして、減圧器によって減圧された改質燃料は断熱膨張しながら等エンタルピ温度となる。しかし、この等エンタルピ温度条件によっては、その温度状態の改質燃料を気液分離器に供給した場合、改質燃料の軽質分がより多く気体状となり気体改質燃料の生成比率が多くなる場合がある。そして、液体改質燃料の成分は残存した重質分となるため、液体改質燃料は非常に粘度が高くなる。この高粘度の液体改質燃料は燃料系統の管内において閉塞しやすく、燃料ポンプの作動不良の原因になる。
【0005】
そこで、本発明の目的は、液体改質燃料の粘度を適度に維持することを特徴とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
改質燃料を燃焼器に供給する系統上に、改質燃料を減圧する手段と、改質燃料と冷媒とを熱交換させる手段と、改質燃料を気液分離させる手段と、冷媒の供給量を制御する制御手段とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、液体改質燃料の粘度を適度に維持することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
燃料改質器は、ガスタービンシステムに適用した際、主要機器による全体構成のヒートバランスを成立させることは可能である。但し、具体的な各個別機器の詳細構造とシステム,熱的評価や検討は、今後実施する必要がある。そのため、燃料改質器を適用した改質燃料焚きガスタービンシステムは、起動等における非定常状態や定格運転における定常状態でのシステム検討が必要である。
【0009】
このガスタービンシステムにおいて、燃料改質器で製造された改質燃料は高温高圧状態であるため、燃焼器に供給するために減圧する必要がある。但し、減圧器によって減圧された改質燃料は、断熱膨張する際に等エンタルピ温度となる。この等エンタルピ温度条件によっては、減圧した改質燃料を気液分離器に供給すると、改質燃料の軽質分がより多く気体状となり、気体改質燃料の生成比率が増加する可能性がある。そして、液体改質燃料の成分は残存した重質分となるため、非常に粘度の高い液体改質燃料となる。この高粘度の液体改質燃料は燃料系統の管内において閉塞しやすく、燃料ポンプが作動不良となる原因になっていた。
【0010】
そこで、本発明では、ガスタービンの排熱を利用して得られる高温高圧水を重質油と混合して反応させ、重質油から改質燃料を製造し、減圧後の改質燃料の温度を制御し、この温度制御された改質燃料をガスタービン用燃料とする改質燃料焚きガスタービンシステムである。本システムにおいて、燃料改質器で製造された改質燃料は高温高圧状態であるため、減圧器によって減圧する。減圧された改質燃料は断熱膨張しながら等エンタルピ温度となる。したがって、改質燃料と低温水蒸気を改質油熱交換器によって熱交換させて温度制御し適正な改質燃料の粘度を保持する。その後、気体改質燃料と液体改質燃料とに分離するため、減圧器の下流側に改質燃料を気液分離する気液分離器を設置する。この気液分離器によって気体改質燃料と液体改質燃料は分離される。
【0011】
また、減圧後の改質燃料を温度制御するために、改質燃料と常温の重質油とを改質油熱交換器によって熱交換させて温度制御することで、液体改質燃料の適正な粘度を保持することが可能である。
【0012】
また、減圧後の改質燃料を温度制御するために、改質燃料と常温の冷却水とを改質油熱交換器によって熱交換させて温度制御することで、液体改質燃料の適正な粘度を保持することが可能である。
【0013】
また、減圧後の改質燃料を温度制御するために、改質燃料と低温水蒸気とを改質油熱交換器によって熱交換させて温度制御し、更に気液分離器に軽質油を供給することによって、迅速かつ簡単に液体改質燃料の適正な粘度を保持することができる。
【0014】
また、減圧後の改質燃料を温度制御するために、改質燃料と低温水蒸気とを改質油熱交換器によって熱交換させて温度制御する。更に、気液分離後の気体改質燃料系統に凝縮して発生する一部の軽質な軽質油を気液分離器に戻すことによって、液体改質燃料の適正な粘度を保持することができる。
【0015】
また、気液分離器および気液分離器で分離された液体改質燃料を液体改質油熱交換器へ供給する系統に、液体改質燃料の加熱器を設ける。ガスタービン停止時のように、減圧後の液体改質燃料が気液分離器内で長時間放置されて貯蔵されている場合には、液体改質燃料の温度が低下している。この状態からガスタービンを起動し、液体改質油熱交換器で低温の液体改質燃料と低温の重質油とを熱交換させる際に、加熱器によって液体改質燃料を初期設定温度に加熱することが可能である。
【0016】
以上の本発明によれば、改質燃料系統において、高温高圧の改質燃料を減圧する減圧器と、減圧後の改質燃料と低温水蒸気とを熱交換させる改質油熱交換器と、前記改質燃料の温度を検出する温度検出器から得られた検出信号によって改質油熱交換器に供給する低温水蒸気の供給量を制御する制御器を備えることで、気液分離器に供給する改質燃料を目標温度(200℃〜350℃)に保持することが可能である。したがって、適正な粘度の液体改質燃料をガスタービンに供給することができる。
【0017】
また、改質油熱交換器の冷媒を重質油にすることで、高温の液体改質燃料の熱エネルギーが重質油に熱回収されて、熱エネルギーの有効利用を図ることが可能である。
【0018】
また、改質油熱交換器の冷媒を冷却水にすることで、高温の液体改質燃料の冷却性能および冷却速度を向上することができ、ガスタービンの急激な負荷変動に対応することができる。また、気液分離器に軽質油を供給する系統を改質燃料系統とは別に設けたことにより、液体改質燃料の粘度を任意に調整することが可能である。したがって、ガスタービンの運転状態に関わらず最適な粘性状態の液体改質燃料を供給することが可能である。
【0019】
また、気液分離後の気体改質燃料系統において、凝縮して発生する一部の軽質な改質油を気液分離器に戻すことで、適正な液体改質油粘度を保持すると同時に、凝縮した軽質な改質油を有効利用できる。
【0020】
また、気液分離器および気液分離器で分離された液体改質燃料を液体改質油熱交換器へ供給する系統に、加熱器を設けたことで低温の液体改質燃料を初期設定温度に加熱することが出来る。これは、ガスタービンの停止時に、液体改質燃料が気液分離器内で長時間放置されて液体改質燃料の温度が低下した状態から、ガスタービンを起動する場合に特に有効な手段である。
【0021】
以下の実施例では、液体改質燃料の粘度を制御する具体的な方法について説明する。
【実施例1】
【0022】
図9は、実施例1におけるガスタービンシステム全体の構成図である。本実施例のガスタービンシステムは、ガスタービンの排熱を利用して得られる高温高圧水(350〜500℃,10〜30MPa)と、重質油とを燃料改質器で混合反応させ、重質油を軽質化して改質燃料を製造する。この改質燃料をガスタービン用燃料とする。具体的には、ガスタービンは、空気を圧縮し圧縮空気を生成する圧縮機1と、燃料と圧縮空気とを混合燃焼させ燃焼ガスを生成する燃焼器3と、燃焼ガスにより回転駆動させるタービン2と、タービン2と同軸上に連結された発電機60とを備える。また、本実施例ではタービン2が排出する燃焼排ガスにより蒸気を生成する排熱回収ボイラ4も備える。
【0023】
ガスタービン起動時には、起動用燃料である軽質油10を燃焼器3に供給する。圧縮機1は外気からの空気20を圧縮し、燃焼器3に圧縮空気を供給する。そして、燃焼器3において軽質油10と圧縮空気とを混合燃焼させて起動する。燃焼器3が排出する燃焼ガスは、タービン2を駆動させた後、排熱回収ボイラ4に送られる。通常の大型ガスタービンでは、定格運転における燃焼排ガス温度は560℃程度である。そのため、排熱回収ボイラ4の燃焼排ガスを利用して、水や重質油の加熱に利用する。具体的な加熱方法は、以下で説明する。
【0024】
水30は水加圧ポンプ80によって20〜25MPa程度に昇圧されて排熱回収ボイラ4に送られる。そして、排熱回収ボイラ4で燃焼排ガスと熱交換することにより、450℃〜550℃程度の重質油改質用の高温高圧水31が生成される。また、排熱回収ボイラ4では、高温高圧水である重質油加熱用蒸気51と蒸気タービン6に供給する蒸気タービン用蒸気50も同時に生成される。そのため、本実施例ではガスタービンと蒸気タービンのコンバインドサイクルを構成する。なお、蒸気タービン6には、蒸気タービン6が駆動する発電機61と、復水器83およびポンプ82が備えられ、復水器83に補給水34を供給することが可能である。
【0025】
一方、重質油40は、重質油加圧ポンプ81によって20〜25MPa程度に昇圧された後、重質油加熱器5にて350℃程度に昇温される。昇温された加熱重質油41が燃料改質器7に供給される。重質油加熱器5では、排熱回収ボイラ4が生成する重質油加熱用蒸気51と重質油とを熱交換させる。
【0026】
このように、それぞれ昇温昇圧された加熱重質油41及び高温高圧水31が燃料改質器7で混合され、燃料改質器7が改質燃料を製造する。燃料改質器7は、単筒もしくは複数の円筒容器で構成され、各円筒容器内部で高温高圧水と重質油とを混合する。高温高圧水が有する作用として、重質油との均一層を形成し、重質油中の比較的高分子の油を分解し軽質化するとともに、油分子中に結合しているバナジウムなどの重金属を分離させる働きを有する。したがって、燃料改質器7内で、重質油改質および重金属除去が行われる。そして、改質された改質燃料90は、減圧器100で減圧された後、燃焼器3に供給される。なお、本実施例では減圧器100にオリフィスを使用する。本実施例の改質燃料焚きガスタービンシステムは、改質燃料90と燃焼用空気とを燃焼器3で混合燃焼し、タービン2を駆動して発電するシステムである。
【0027】
図1は、図9において、燃料改質器7が生成した改質燃料を燃焼器3に供給する系統
(改質燃料系統)を詳しく記載した構成図である。この改質燃料系統には、上流側から順に、改質燃料90を減圧する手段である減圧器100と、減圧後の改質燃料90を温度制御するために改質燃料と冷媒とを熱交換させる手段である改質油熱交換器84と、改質燃料を気体と液体に分離する手段である気液分離器101を備える。そして、気液分離器
101において、改質燃料を気体と液体に分離し、それぞれ気体改質燃料系統91と液体改質燃料系統92に供給する。本実施例では、両者の系統を流下した気体改質燃料と液体改質燃料がガスタービン燃焼器3に供給される。なお、本実施例では、改質燃料が流れる供給側を上流側とし、燃焼器側を下流側とする。また、改質油熱交換器84で改質燃料と熱交換する冷媒として、高温高圧水である重質油加熱用蒸気51が重質油加熱器5で重質油と熱交換した後の低温水蒸気33を使用する。そして、改質油熱交換器84に供給する低温水蒸気33の流量を制御するために、重質油加熱器5から改質油熱交換器84に至る低温水蒸気の系統上に、水蒸気制御弁121が配置されている。この水蒸気制御弁121は、制御器120が発信する開度信号により弁の開度が制御される。
【0028】
ここで改質燃料の温度制御について説明する。改質油熱交換器84は、減圧器100によって減圧された改質燃料90を温度制御するために200℃以下の低温水蒸気33と熱交換させる装置である。この改質油熱交換器84に供給される低温水蒸気33の量は、水蒸気制御弁121の開度によって制御することが可能であり、弁の開度を制御する制御器
120を備える。そして、気液分離器101における液体改質燃料の温度を検出する温度検出器122が得た温度(検出信号)に基づいて、制御器120が水蒸気制御弁121の開度を制御し、低温水蒸気の供給量を制御する。
【0029】
次に、本実施例の改質燃料系統における作用・効果を説明する。
【0030】
改質燃料90は、目標温度に保持されながら、気液分離器101で気体改質燃料91と液体改質燃料92に分離される。このシステムにおける改質燃料目標温度は、改質燃料減圧時2MPaにおける水蒸気飽和温度200℃付近より高く、かつ、350℃以下が望ましい。本システムにおいて、燃料改質器7で製造された改質燃料90は高温高圧状態であるため、減圧器100によって減圧された改質燃料90は断熱膨張しながら等エンタルピ温度となる。しかし、この等エンタルピ温度条件によっては、その温度条件のままで改質燃料90を気液分離器101に供給すると、改質燃料90の軽質分がより多く気体状になり、気体改質燃料91の生成比率が多くなる可能性を有する。そして、液体改質燃料92の成分は残存した重質分となるため、非常に粘度が高くなる。このように液体改質燃料
92が高粘度になった場合、燃料系統の管内が閉塞しやすくなり、燃料ポンプの作動不良の原因になる可能性があった。そのため、液体改質燃料の粘度を適度に維持する必要があった。但し、改質燃料90が断熱膨張する際は、気相の蒸気と改質ガス、及び液相の改質油が流れる可能性があり、改質燃料の特性が複雑である。そこで、本発明者らは改質燃料の減圧前後における改質燃料温度と改質燃料ガス化率の関係を実験により明らかにした。図7に、減圧後の改質燃料温度と改質燃料ガス化率の関係を示す。横軸に減圧後の改質燃料温度を示し、縦軸に改質燃料のガス化率を示す。この図より、改質燃料の温度上昇に伴って、より多くの軽質分が蒸発するため、改質燃料のガス化率が高くなることが分かる。また、図8に、減圧後の改質燃料温度と液体改質燃料の動粘性率との関係を示す。横軸に減圧後の液体改質燃料温度を示し、縦軸に液体改質燃料の動粘性率を示す。この図より、減圧後の液体改質燃料の温度上昇に伴って、動粘性率が高くなることが分かる。図7と図8の結果から、減圧後の液体改質燃料の温度上昇により、軽質分の蒸発によってガス化率が高くなると同時に動粘性率も高くなるため、ガス化率と動粘性率には相関性を有することが分かる。
【0031】
上記の図7及び図8の相関性を利用することで、改質油熱交換器84において、減圧後の高温の改質燃料90と200℃以下の低温水蒸気33とを熱交換させて液体改質燃料
92の温度を制御する。そして、液体改質燃料を目標温度である200℃〜350℃(図8の横軸におけるAB間に相当)に保持し、適正な粘度の液体改質燃料92をガスタービン燃焼器に安定供給することが可能となる。なお、本実施例では、気液分離器で得られた気体改質燃料91も燃焼器3へ供給されている。
【0032】
以上のように、改質燃料を燃焼器に供給する改質燃料系統上に、改質燃料を減圧する手段と、改質燃料と冷媒とを熱交換させる手段と、改質燃料を気液分離させる手段と、冷媒の供給量を制御する制御手段とを備えることで、減圧時に気体改質燃料の生成比率を抑え、液体改質燃料の粘度を適度に維持することが可能である。
【0033】
また、本システムの改質燃料系統において、温度検出器122と制御器120および水蒸気制御弁121が備えられている。そして、温度検出器122が液体改質燃料92の温度を制御器120に送信し、制御器120が水蒸気制御弁121を制御する。したがって、改質油熱交換器84に供給する低温水蒸気の供給量を制御して、液体改質燃料を目標温度(200℃〜350℃)に保持し、目標温度から外れた場合にも対応可能である。
【0034】
そこで、液体改質燃料が適正な温度範囲(目標温度)から外れる場合について説明する。重質油は、原油を蒸留させた最後の残渣油であるため、性状が非常に不安定である。そのため、原油精製条件の変化、もしくは、原油生産地の違いによって発熱量(カロリー)に変化が生じる。この性状変化による発熱量(カロリー)の変化に合わせて、燃料改質器7内の水油比を調整する場合がある。また、改質燃料焚きガスタービンでは、任意に燃料発熱量(カロリー)を調整したい場合、水油比を変更することが考えられる。このとき、燃料改質器7内における水油比の変化によって、減圧後の液体改質燃料温度が変化する。更に、重質油の性状は非常に不安定であるため、複数個の重油タンクには、それぞれ多少性状が異なる重質油の可能性がある。したがって、重質油供給元の重質油タンクを切り替えた場合、燃料特性の変化によって減圧後の液体改質燃料の温度が変化する場合がある。
【0035】
次に、改質燃料焚きガスタービンの特徴を生かして、任意に改質燃料のガス化率を変更したい場合がある。特にガスタービン燃焼器の燃焼ノズルにおいて、ガスタービンの運転状況や目的に合わせて、気体改質燃料を増加させたい場合や、逆に液体改質燃料を増加させたい場合がある。このとき、適正温度範囲内の上限温度(図8の点B近傍)にしたり、適正温度範囲内の下限温度(図8の点A近傍)にする場合がある。
【0036】
次に、ガスタービンの運転状態や気象条件(温度,湿度)によって、システム全体の熱バランスが変化する。そのため、改質油熱交換器84に供給する低温水蒸気33の温度が多少変化する。したがって、同じ低温水蒸気量でも、低温水蒸気の温度が変化すると減圧後の液体改質燃料温度も変化する。
【0037】
また、改質油熱交換器84は、長時間使用すると伝熱管の汚れや閉塞によって、初期性能が維持できない可能性がある。そのため、熱交換器の性能低下によって、減圧後の液体改質燃料温度も変化する場合がある。
【0038】
以上のように、液体改質燃料温度が適正範囲(目標温度)から外れた場合に、本実施例の制御方法について説明する。例えば、図1において、液体改質燃料温度が高くなった場合(図8の横軸における点Bよりも右方向へ遷移)、温度検出器122が検知し、制御器120に信号を発信する。そして、その信号を制御器120が認識する。その後、制御器120の指示によって水蒸気制御弁121が徐々に開かれる(弁開度を大きくする)ことにより、低温水蒸気量を増加させ、液体改質燃料温度が適正範囲内になるよう制御する。したがって、液体改質燃料の動粘性率は減少し(図8の縦軸において下方向へ遷移)、適正な粘性の液体改質燃料を燃焼器3に供給することが可能である。
【0039】
逆に、液体改質燃料温度が低くなって適正範囲から外れた場合(図8の点Aより左側に遷移)、制御器120の指示によって水蒸気制御弁121を徐々に閉めていく。そして、低温水蒸気量を減少させ、液体改質燃料温度が適正範囲内になるよう制御する(図8の縦軸において上方向に遷移)。
【0040】
以上のように、改質燃料を燃焼器に供給する改質燃料系統上に、改質燃料を減圧する手段と、流量制御弁により流量を制御された冷媒と改質燃料とを熱交換させる手段と、改質燃料を気液分離させる手段と、気液分離手段で分離された液体改質燃料の温度を検出する温度検出手段とを備え、温度検出手段により得られた改質燃料温度に基づいて流量制御弁の開度を制御することで、重質油特有の燃料性状変化によって液体改質燃料の粘度が適正範囲から逸脱することを抑制することが可能である。
【実施例2】
【0041】
図2は、実施例2における改質燃料系統を示している。その構造は基本的に図1と同様であり、相違点は改質油熱交換器84の冷媒を重質油40にした点である。これにより、高温の液体改質燃料90の熱エネルギーを重質油に熱回収し、熱エネルギーの有効利用が図れる。
【実施例3】
【0042】
図3は、実施例3における改質燃料系統を示している。その構造は基本的に図1と同様であり、相違点は改質油熱交換器84の冷媒を冷却水35にした点である。これにより、高温の液体改質燃料90の冷却性能および冷却速度を向上することができ、急激なガスタービンの負荷変動に対応することが可能である。
【0043】
なお、改質油熱交換器84の代わりに、冷却水35を改質燃料90に直接スプレー水として供給し、スプレー水の蒸発潜熱を利用して温度制御してもよい。
【実施例4】
【0044】
図4は、実施例4における改質燃料系統を示している。その構造は基本的に図1と同様であり、相違点は気液分離器101に軽質油10を供給可能な系統を設けた点である。これにより、液体改質燃料92の粘度を任意に調整することが可能であり、常に最適な粘性状態の液体改質燃料を供給することが可能である。
【実施例5】
【0045】
図5は、実施例5の改質燃料系統を示している。その構造は基本的に図1と同様であり、相違点は気液分離後の気体改質燃料系統において、凝縮して発生する一部の軽質な改質油を気液分離器101に戻す点である。これによって液体改質燃料の適正な粘度を保持すると同時に、凝縮して発生する軽質な改質油の有効利用を図ることができる。
【実施例6】
【0046】
図6は、実施例6における改質燃料系統を示している。その構造は基本的に図1と同様であり、相違点は気液分離器および気液分離器で分離された液体改質燃料を燃焼器3へ供給する系統に、液体改質燃料用加熱器110,111を設けた点である。ガスタービン停止時のように、減圧後の液体改質燃料が気液分離器内で長時間放置されて貯蔵されている場合には、液体改質燃料の温度が低下している。この状態から、ガスタービンを起動し、低温の液体改質燃料を燃焼器3に供給するにあたって、加熱器によって液体改質燃料を初期設定温度に加熱することが可能となる。ここで、液体改質燃料用加熱器110,111に供給するエネルギー源は、電気エネルギーでも高温水蒸気でも良く、特に限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】図9において、改質燃料供給系統を詳しく記載した構成図である。
【図2】実施例2における改質燃料供給系統である。
【図3】実施例3における改質燃料供給系統である。
【図4】実施例4における改質燃料供給系統である。
【図5】実施例5における改質燃料供給系統である。
【図6】実施例6における改質燃料供給系統である。
【図7】減圧後の改質燃料温度とガス化率の関係を示す概要図である。
【図8】減圧後の液体改質温度と動粘性率の関係を示す概要図である。
【図9】実施例1におけるガスタービンシステム全体の構成図である。
【符号の説明】
【0048】
1…圧縮機、2…タービン、3…燃焼器、4…排熱回収ボイラ、5…重質油加熱器、6…蒸気タービン、7…燃料改質器、10…軽質油、20…空気、30…水、31…高温高圧水、32…改質燃料、33…低温水蒸気、34…補給水、35…冷却水、40…重質油、41…加熱重質油、50…蒸気タービン用蒸気、51…重質油加熱用蒸気、60,61…発電機、80…水加圧ポンプ、81…重質油加圧ポンプ、82…ポンプ、83…復水器、84…改質油熱交換器、90…改質燃料、91…気体改質燃料系統、92…液体改質燃料系統、100…減圧器、101…気液分離器、110…液体改質燃料用加熱器、111…液体改質燃料用加熱器、120…制御器、121…水蒸気制御弁、122…温度検出器。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高温高圧水と重質油とを混合して該重質油から改質燃料を製造する燃料改質器と、
該改質燃料を燃焼する燃焼器を備えたガスタービンとを備えたガスタービンシステムであって、
前記改質燃料を前記燃焼器に供給する系統上に、
前記改質燃料を減圧する手段と、
前記改質燃料と冷媒とを熱交換させる手段と、
前記改質燃料を気液分離させる手段と、
前記冷媒の供給量を制御する制御手段とを備えたことを特徴とするガスタービンシステム。
【請求項2】
請求項1記載のガスタービンシステムであって、
前記改質燃料を減圧する手段としてオリフィスを設置することを特徴とするガスタービンシステム。
【請求項3】
高温高圧水と重質油とを混合して該重質油から改質燃料を製造する燃料改質器と、
該改質燃料を燃焼する燃焼器を備えたガスタービンとを備えたガスタービンシステムであって、
前記改質燃料を前記燃焼器に供給する系統上に、
前記改質燃料を減圧する手段と、
流量を制御された冷媒と前記改質燃料とを熱交換させる手段と、
前記改質燃料を気液分離させる手段と、
該気液分離手段で分離された液体の改質燃料の温度を検出する温度検出手段と、
該温度検出手段により得られた改質燃料温度に基づいて前記冷媒の流量を制御する制御手段とを備えたことを特徴とするガスタービンシステム。
【請求項4】
燃料と空気とを燃焼器で混合燃焼させて生成した燃焼ガスによりタービンを駆動し、該タービンが排出する燃焼排ガスを供給する排熱回収ボイラを備えたガスタービンと、
該排熱回収ボイラで前記燃焼排ガスと水とを熱交換させて生成した高温高圧水と加圧された重質油とを熱交換する重質油加熱器と、
加熱された重質油と高温高圧水を混合して改質する燃料改質器とを備えた改質燃料焚きガスタービンシステムであって、
前記燃料改質器が生成した改質燃料を前記ガスタービン燃焼器に供給する系統上に、
前記改質燃料を減圧する減圧器と、
前記重質油加熱器で重質油と高温高圧水が熱交換後に排出される低温水蒸気と前記改質燃料とを熱交換する熱交換器と、
前記改質燃料を気体と液体に分離する気液分離器とを備え、
前記熱交換器に供給する低温水蒸気の流量を調整する流量制御弁と、
前記気液分離器内の液体改質燃料温度に基づいて該流量制御弁の開度を制御する制御器とを備えたことを特徴とする改質燃料焚きガスタービンシステム。
【請求項5】
請求項4記載の改質燃料焚きガスタービンシステムであって、前記熱交換器に供給する冷媒として、前記重質油加熱器に供給する重質油を使用することを特徴する改質燃料焚きガスタービンシステム。
【請求項6】
請求項4記載の改質燃料焚きガスタービンシステムであって、前記熱交換器に供給する冷媒として、冷却水を使用することを特徴する改質燃料焚きガスタービンシステム。
【請求項7】
請求項4記載の改質燃料焚きガスタービンシステムであって、前記気液分離器に軽質油を供給する軽質油供給系統を設けたことを特徴とする改質燃料焚きガスタービンシステム。
【請求項8】
請求項4記載の改質燃料焚きガスタービンシステムであって、前記気液分離器で分離された気体改質燃料を前記燃焼器に流下させる系統に凝縮した液体改質燃料を該気液分離器に戻す系統を設けたことを特徴する改質燃料焚きガスタービンシステム。
【請求項9】
請求項4記載の改質燃料焚きガスタービンシステムであって、前記気液分離器及び前記気液分離器から前記燃焼器に液体改質燃料を供給する系統にそれぞれ加熱器を設けたことを特徴する改質燃料焚きガスタービンシステム。
【請求項10】
高温高圧水と重質油とを混合して該重質油から改質燃料を製造し、該改質燃料を燃焼してタービンを駆動するガスタービンシステムの改質燃料供給方法であって、
前記改質燃料を減圧する工程と、
前記改質燃料と冷媒とを熱交換させる工程と、
前記改質燃料を気液分離させる工程とを備え、
該気液分離工程で生成された改質燃料温度に基づいて前記冷媒の供給量を制御することを特徴とするガスタービンシステムの改質燃料供給方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate