説明

ガスタービン燃焼器

【課題】本発明は、ガスタービン燃焼器の運転状態に関わらず、液体燃料ノズルの出口部外周側への未燃分カーボンの付着を抑制するとともに、NOx排出量を低減し、信頼性の高いガスタービン燃焼器を提供することを目的とする。
【解決手段】空気と燃料とを混合する混合室11aと、混合室11aに液体燃料を噴出する液体燃料ノズル13と、液体燃料ノズル13の外周側に配置され、空気を噴出する筒状の空気孔16とを有し、空気孔16の壁面に、空気孔16内へ気体燃料を供給する気体燃料噴孔17とを備えたガスタービン燃焼器であって、気体燃料噴孔17へ水を供給する系統223を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体燃料および気体燃料の両方に対応するガスタービン燃焼器に関する。
【背景技術】
【0002】
電力自由化に伴い近年の発電事業では、従来の大容量の大型発電所に加え中小容量の分散電源が普及しつつある。中小容量の発電設備には燃料の供給が比較的容易な液体燃料を使用する場合が多く、それに加えて、温室効果ガス排出削減のために天然ガスやバイオ燃料など多様な燃料を使用するニーズが増えている。このような背景を受け、液体燃料,気体燃料の何れにも対応可能なデュアル燃料対応燃焼器を適用するガスタービン発電設備が望まれている。
【0003】
地球環境保護の観点からガスタービン燃焼器の排出ガスに対するNOx等の環境規制は厳しさを増しており、その一手段として、燃料を空気と予め混合してから燃焼する予蒸発予混合燃焼方式がある。その一例として、特許文献1には、混合室の略軸中心に液体燃料ノズルが配置され、液体燃料ノズルの外周に混合室を設け、その混合室壁に複数列の円筒状の空気孔を設けたガスタービン燃焼器が開示されている。上記構造のガスタービン燃焼器では、液体燃料ノズルから噴射された液体燃料を蒸発させて空気と均一に混合させる予蒸発予混合燃焼をすることでNOx排出量の低減を狙っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−60281号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
液体燃料の中ではA重油等の安価な燃料を使用したいというニーズが増加している。残渣油などの高沸点成分が含まれる安価な燃料の燃焼では、ばい煙やNOxの排出量が増加しやすい傾向にある。また、前述のデュアル燃料対応燃焼器のような構造をもつ燃焼器において、液体燃料ノズルから噴射された液体燃料が混合室の壁面に付着すると、付着した液体燃料は熱分解で未燃分カーボンとなって堆積する。未燃分カーボンが混合室に形成した空気孔を閉塞して空気流量を低下させると、液体燃料の微粒化特性が悪化し、NOx排出量を増大させる可能性がある。
【0006】
本発明は混合室への未燃分カーボンの堆積による、NOx排出量の増大を防止しつつ、さらにNOx排出量を低減するガスタービン燃焼器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、空気と燃料とを混合する混合室と、該混合室に液体燃料を噴出する液体燃料ノズルと、該液体燃料ノズルの外周側に配置され、空気を噴出する筒状の空気孔とを有し、該空気孔の壁面に、該空気孔内へ気体燃料を供給する気体燃料噴孔とを備えたガスタービン燃焼器であって、該気体燃料噴孔へ水を供給する系統を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、混合室への未燃分カーボンの堆積による、NOx排出量の増大を防止しつつ、さらにNOx排出量を低減するガスタービン燃焼器を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施例1におけるガスタービン燃焼器の構成を示す断面図及びガスタービン発電プラントの全体構成を概略的に示す概略構成図。
【図2】実施例1の予混合燃焼バーナの詳細構造を表す断面を示した図。
【図3】実施例1の予混合燃焼バーナに設けた空気孔の詳細構造を表す断面を示した図。
【図4】実施例2におけるガスタービン燃焼器の構成を示す断面図及びガスタービン発電プラントの全体構成を概略的に示す概略構成図。
【図5】実施例2の予混合燃焼バーナに設けた空気孔の詳細構造を表す断面を示した図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を用いたガスタービン燃焼器の実施例について、図面を参照して説明する。
【実施例1】
【0011】
本発明の実施形態の一例である液体燃料と気体燃料の両方を燃料として使用できるデュアル燃料対応のガスタービン燃焼器について図1から図3により説明する。図1は、本実施例のガスタービン燃焼器の断面図を含んだガスタービンシステムの構成図である。図1により本実施例のガスタービンシステムの概略構成を説明する。
【0012】
本実施例に示すガスタービンシステムは、液体燃料および気体燃料をガスタービンの燃料とするガスタービン発電プラントの一部である。ガスタービン発電プラントは主として、空気を圧縮して高圧の燃焼用空気300を生成する圧縮機1と、この圧縮機1から導入される燃焼用空気300と燃料とを混合して燃焼ガス400を生成するガスタービン燃焼器3と、このガスタービン燃焼器3で生成された燃焼ガス400を供給するタービン2と、このタービン2の回転によって駆動され発電を行う発電機4とを備えている。
【0013】
上記のガスタービン燃焼器3は、燃料として液体燃料100と気体燃料200の何れも燃焼可能なデュアル燃料対応のガスタービン燃焼器である。ガスタービン燃焼器3では液体燃料100および気体燃料200と圧縮機1から供給される燃焼用空気300とを混合して、内筒7に形成された燃焼室6で燃焼させ高温の燃焼ガス400を生成させる。前記内筒7を内部に収容した外筒5と、この外筒5の端部を覆う閉止板9と、前記内筒7の下流側に接続して生成した高温の燃焼ガス400をタービン2に導くトランジションピース8とで密閉した圧力容器を構成しており、液体燃料100および気体燃料200を供給する液体燃料供給系統120,121と気体燃料供給系統220,221は前記閉止板9に接続される。
【0014】
前記ガスタービン燃焼器3に備えられた内筒7の上流側の軸中心位置には、液体燃料ノズル12を備えた燃焼安定性の良い拡散燃焼バーナ10が設置されており、この拡散燃焼バーナ10の周囲には予混合燃焼バーナ11が複数個配置されている。前記予混合燃焼バーナ11は燃料と空気とを予混合させる混合室11aを備え、希薄燃焼によりNOx排出量を低減できる。
【0015】
ガスタービン燃焼器3に備えられた拡散燃焼バーナ10は、内側に混合室10aを形成する中空円錐形状の円錐プレート10bが設置された構造であり、この円錐プレート10bの壁面には燃焼用空気300に旋回成分を付与する複数個の空気孔15が同心円状に2列配設されている。前記拡散燃焼バーナ10の軸中心位置には、拡散燃焼用の液体燃料100を噴射する液体燃料ノズル12が配置されている。前記液体燃料ノズル12の外周には、拡散燃焼バーナ10の混合室10aに形成した各空気孔15の上流側に近接した位置に気体燃料200を噴出する気体燃料ノズル14が、同心円状に配置されている。前記各気体燃料ノズル14から噴射する気体燃料200は、円錐プレート10bに形成した空気孔15から燃焼用空気300と混合しながら混合室10aへ噴射される構造となっている。
【0016】
ガスタービン燃焼器3に備えられた予混合燃焼バーナ11については後で詳述するため、ここでは簡単に説明する。予混合燃焼バーナ11の上流側の軸中心位置に液体燃料100を供給するための液体燃料ノズル13が設置されている。前記液体燃料ノズル13の下流側には、該液体燃料ノズル13から噴射された液体燃料100と予混合燃焼バーナ11の壁面に設けられた複数の空気孔16から流入する燃焼用空気300との混合を促進するとともに、液体燃料100を蒸発するための混合室11aを形成している。また、前記空気孔16の壁面には気体燃料200を空気孔16内へ噴出するための気体燃料噴孔17が設けられている。
【0017】
次に、本実施例のガスタービン燃焼器を備えたガスタービン発電プラントにおける燃料供給系統について説明する。
【0018】
ガスタービン燃焼器3に液体燃料100を供給するには、液体燃料タンク110に貯蔵された液体燃料100を加圧ポンプ101で昇圧し、圧力調節弁102で圧力を調節する。この圧力が調節された液体燃料100を液体燃料ノズル12,13に供給する液体燃料供給系統120,121には、液体燃料100の流量を調節する流量制御弁103,105と液体燃料100の供給を遮断する遮断弁104,106とが配設されている。
【0019】
一方、ガスタービン燃焼器3に気体燃料200を供給する場合には、液体状態で燃料タンク210に貯蔵され気化器211で気化した気体燃料200の圧力を減圧弁201で調節する。気体燃料ノズル14および気体燃料噴孔17に供給する燃料の流量を調節する流量制御弁202,204と気体燃料200の供給を遮断する遮断弁203,205を備えた気体燃料供給系統220,221を配設した構成にして、気体燃料200をガスタービン燃焼器3に供給するように構成している。
【0020】
上記に加えて、予混合燃焼バーナ11に設けた気体燃料噴孔17から水250を供給できるように水供給系統223を気体燃料供給系統221に接続している。水タンク260に貯蔵された水250は加圧ポンプ251で昇圧し圧力調節弁252で圧力を調節し、流量制御弁253で流量を調整し、水250の供給を遮断する遮断弁254を介して気体燃料供給系統221の遮断弁205の下流側から気体燃料噴孔17を通って予混合燃焼バーナ11に供給される。
【0021】
なお、前記気体燃料供給系統221および前記水供給系統223には、気体燃料200または水250をガスタービン燃焼器3に供給している時に各供給系統へ気体燃料200あるいは水250が逆流することを防止するために遮断弁205および254の下流側にそれぞれ逆止弁206,256が設置されている。
【0022】
次に、上記構成のガスタービン発電プラントに備えたガスタービン燃焼器の運転方法について説明する。ガスタービン発電プラントの運転者が液体燃料100を選択した場合は、液体燃料供給系統120から拡散燃焼バーナ10に、液体燃料供給系統121から予混合燃焼バーナ11に液体燃料100を供給する。一方、ガスタービン発電プラントの運転者が気体燃料200を選択した場合は気体燃料供給系統220から拡散燃焼バーナ10に、気体燃料供給系統221から予混合燃焼バーナ11に気体燃料200を供給する。
【0023】
燃料流量は、ガスタービンの負荷に応じて制御する構成となっており、ガスタービンを起動から昇速させて低負荷条件で運転する場合には液体燃料100又は気体燃料200を拡散燃焼バーナ10のみに供給して単独で運転させる。更に燃料流量が増加するガスタービンの高負荷条件では、拡散燃焼バーナ10に加えて、予混合燃焼バーナ11にも液体燃料100又は気体燃料200を供給する。
【0024】
この拡散燃焼バーナ10と予混合燃焼バーナ11とを備えたガスタービン燃焼器3では、拡散燃焼と予混合燃焼の燃料流量の比率を制御して、低NOxと安定燃焼の両立を図るように前記ガスタービン燃焼器3を運用する。通常、拡散燃焼の割合を小さくするとNOx排出量を低減できる反面、燃焼不安定を引き起こす可能性が大きくなる。
【0025】
次に、前記ガスタービン燃焼器に備えられた予混合燃焼バーナの構造について、図2を用いて詳細に説明する。図2はガスタービン燃焼器に備えられた予混合燃焼バーナの断面図である。予混合燃焼バーナ11の上流側の軸中心位置に液体燃料100を供給するための液体燃料ノズル13が設置され、この液体燃料ノズル13の燃焼室6側に該液体燃料ノズル13から噴射された液体燃料100と燃焼用空気300の混合を促進する混合室11aを形成している。その上流側が中空円錐形状で、下流側が略円筒形状である。予混合燃焼バーナ11の前記混合室11aの壁面には、予混合燃焼バーナ11内に燃焼用空気300を導入するための円筒形状の空気孔16が予混合燃焼バーナ11の軸方向に3列、周方向に複数個ずつ設けられている。これらの空気孔16を設けた壁面には、気体燃料供給系統221および水供給系統223から燃料ヘッダ18を通って供給される気体燃料200または水250を噴出するための気体燃料噴孔17が設けられている。
【0026】
燃料として液体燃料100が選択される場合、液体燃料ノズル13から噴射された液体燃料100は、混合室11aで燃焼用空気300と混合し、蒸発する。混合・蒸発によって生成された予混合気は燃焼室6で燃焼により高温の燃焼ガスとなる。一方、燃料として気体燃料200が選択される場合、気体燃料噴孔17から供給された気体燃料200は、空気孔16内や混合室11aでの流れの乱れにより燃焼用空気300と混合して燃焼室6で燃焼し高温の燃焼ガスとなる。
【0027】
図2は実施例1の予混合燃焼バーナ11の詳細構造を表す断面を示した図である。図2のA−A′矢視断面図に示したように、この断面には空気孔16が円周方向に6個設けられている。混合室11aの断面円の直径を延長した線D−D′に対して長さX平行移動した位置に空気孔16を設けることにより、混合室11aで旋回流19が形成される。旋回流19によって液体燃料ノズル13から噴射された液体燃料100の液滴にせん断力が作用して微粒化が促進されるため、液滴の表面積が増加して液体燃料100が蒸発しやすくなりNOx排出量の低減に有効である。
【0028】
次に、図3を用いて本実施例の予混合燃焼バーナの空気孔近傍の構造について説明する。図3は図2に示した空気孔を破線で囲ったB部を拡大した図である。燃焼用空気300は空気孔16を通って予混合燃焼バーナ11の混合室11aに導入される。空気孔16には気体燃料噴孔17が設けられており、C−C′矢視断面図に示したように空気孔16の断面円に対して同一の平面上に気体燃料200あるいは水250を供給する気体燃料噴孔17が設けられている。気体燃料噴孔17から供給された気体燃料200あるいは水250の噴流は空気孔16の断面円の中心を通過して気体燃料噴孔17の反対側壁面に衝突し、燃焼用空気300に随伴されて混合室11aへ流入する。気体燃料200あるいは水250が混合した燃焼用空気300は燃焼室で拡散燃焼バーナの燃焼熱から着火エネルギーを得て燃焼により燃焼ガスとなる。
【0029】
気体燃料噴孔17から供給された気体燃料200あるいは水250は、空気孔16の気体燃料噴孔17とは反対側の壁面に衝突するため、予混合燃焼バーナ11の外周側あるいは混合室側へ直接噴射されるのを防止できる。これにより、壁面への衝突の衝撃で空気孔16内に分散され、その後燃焼用空気300に随伴されて混合室へ流入する。気体燃料200が燃焼用空気300に分散・混合することにより、燃料濃度が高いことに起因した局所的な高温燃焼領域の発生を防止でき、NOx排出量を低減可能になる。
【0030】
上記のような構成のガスタービン燃焼器において、液体燃料を燃料として用いるときに気体燃料噴孔17から水250を供給する効果について以下に説明する。
【0031】
気体燃料噴孔17から水250を供給した場合、水250が空気孔16の壁面に衝突し、その衝撃で液滴となり空気孔16内に飛散して分散され、燃焼用空気300に随伴されて混合室へ流入する。水250は液滴となり空気孔内に飛散するため、燃焼用空気300との接触面積が増加し、燃焼用空気300から熱を受けやすくなり蒸発が促進される。これにより、水250の添加による燃焼用空気300の温度低下および燃焼速度の低下により局所の燃焼温度上昇が抑制され、NOx排出量の低減が可能となる。
【0032】
一方、空気孔16から混合室11aへ燃焼用空気300を流入させる場合には、空気孔16の出口に後流50が生じる。液体燃料ノズルから噴射された液体燃料の液滴の一部が後流50に巻き込まれると、混合室11aあるいはその下流の蒸発室の壁面に液体燃料の液滴が付着する可能性がある。液体燃料100が壁面に付着したまま長時間滞留すると、熱分解により未燃分カーボンとなり混合室11aおよび蒸発の壁面に堆積する。特に、液体燃料100に燃焼用空気300の温度より沸点が高い成分(高沸点成分)が存在する場合、高沸点成分の蒸発は困難であるため、熱分解によって生成する未燃分カーボンの堆積量が顕著に増加する。
【0033】
これに対し本実施例の予混合燃焼バーナ11の構造では、気体燃料噴孔17から噴出した水250の一部が空気孔16の壁面を流れることにより予混合燃焼バーナ11の構造物の温度を低下させている。そうすることで、液体燃料の熱分解反応速度を低下させられる。これにより、高沸点成分が混合室11aの壁面に付着しても燃焼用空気300によって液体のまま混合室11aの下流側の燃焼室へ搬送されやすくなり、未燃分カーボンの生成を抑制できる。
【0034】
以上説明した本実施例のガスタービン燃焼器は、空気と燃料とを混合する混合室11aと、混合室11aに液体燃料を噴出する液体燃料ノズル13と、液体燃料ノズル13の外周側に配置され、空気を噴出する筒状の空気孔16とを有し、空気孔16の壁面に、空気孔16内へ気体燃料を供給する気体燃料噴孔17とを備えたガスタービン燃焼器であって、気体燃料噴孔17へ水を供給する系統223を有する。そして、液体燃料ノズル13から液体燃料を供給する際に、気体燃料噴孔17へ水250を供給する。
【0035】
このように構成したガスタービン燃焼器において、油専焼運転時に気体燃料噴孔から水を噴射することで、予混合燃焼バーナの壁面に液体燃料が付着することで生成する未燃分カーボンの堆積を抑制できる。これにより、混合室への空気流量低下や個々の空気孔から混合室へ流入する空気の流量偏差の増大による液体燃料ノズルから噴射される液体燃料の微粒化特性の変化を抑制でき、燃料濃度偏差による火炎の高温領域の発生が抑制され、NOx排出量の増大を防止できる。また、燃焼用空気と水の混合度を高められるため火炎の温度上昇を抑制でき、NOx排出量を低減できるガスタービン燃焼器を提供可能となる。
【実施例2】
【0036】
本発明の第2の実施形態について図4および図5を用いて説明する。図4は本実施例のガスタービン燃焼器の断面図を含んだガスタービンシステムの構成図である。図4に示す本実施例のガスタービン燃焼器の構成およびガスタービンシステムの概略構成は図1に示したものと基本的には共通する。以下、両者の差異について説明する。
【0037】
図4で示した本実施例のシステムは、水供給系統223から分岐した水供給系統224を設け、気体燃料供給系統220に接続し、拡散燃焼バーナ10の気体燃料ノズル14から水250を供給できるようにしている。水供給系統224は、水タンク260に貯蔵された水250が加圧ポンプ251で昇圧され圧力調節弁252で圧力を調節された状態で、水供給系統223から分岐される。分岐された水供給系統224には水250の流量を調整するための流量制御弁257と、水250の供給を遮断するための遮断弁258および逆流を防止するための逆止弁259を設けている。水供給系統224は気体燃料供給系統220に設けた逆止弁207の下流側へ合流し、気体燃料ノズル14を通って拡散燃焼バーナ10に供給される。
【0038】
水供給系統223,224には熱交換器270,275をそれぞれ設け、燃焼用空気300の圧力変化に伴い水250の温度を調節する。燃焼用空気300の圧力は拡散燃焼バーナ10および予混合燃焼バーナ11の燃料ヘッダ18を直接計測するのが好ましいが、ここでは水供給系統223,224の熱交換器270,275の下流側に圧力計272,277を設置して計測する。また、水供給系統223,224の水250の温度も熱交換器270,275の下流側に温度計273,278を設置して計測する。
【0039】
圧力計272および温度計273の計測結果から調節器271で熱交換器270の運転を制御し、水250の温度を調節することで、予混合燃焼バーナ11に沸点未満の水250を供給する。同様に圧力計277および温度計278の計測結果から調節器276で熱交換器275の運転を制御し、水250の温度を調節することで、拡散燃焼バーナ10に沸点未満の水250を供給する。すなわち、燃焼用空気の圧力を元に気体燃料噴出孔17から供給する水250の温度を沸点未満に設定する。そうすると、液体燃料の熱分解による未燃分のカーボンの生成を抑制できる。
【0040】
水250を拡散燃焼バーナ10および予混合燃焼バーナ11に個別に供給する系統を持つことで、拡散燃焼バーナ10の油専焼においても気体燃料ノズル14から混合室10aへ水250を供給できるため、特にNOx排出量が多い拡散燃焼バーナで形成される火炎の温度を低減でき、NOx排出量を低減している。
【0041】
次に、図5を用いて本実施例の燃焼器の予混合燃焼バーナの空気孔近傍の構造について説明する。予混合燃焼バーナ11は図2に示したものとほぼ同等である。ただし予混合燃焼バーナ11の空気孔近傍の構造については実施例1とは異なる。すなわち、図2に示した空気孔を破線で囲ったB部を拡大した図3とは別の構造である。この点について図5を用いて説明する。
【0042】
図5は、図2に示した空気孔を破線で囲ったB部に相当する部分を拡大した図である。燃焼用空気300は空気孔16を通って予混合燃焼バーナ11の混合室11aに導入される。空気孔16は円筒状であり、その円筒状の空気孔16の壁面には気体燃料噴孔17が設けられている。すなわち、C−C′矢視断面図に示したように空気孔16の断面円に対して接線方向から気体燃料200あるいは水250を供給する気体燃料噴孔17が設けられている。そうすると、気体燃料噴孔17から供給された気体燃料200あるいは水250の噴流は空気孔16の壁面に沿って流れ、燃焼用空気300に随伴されて混合室11aへ流入する。気体燃料200あるいは水250が混合した燃焼用空気300は燃焼室で拡散燃焼バーナの燃焼熱から着火エネルギーを得て燃焼により燃焼ガスとなる。
【0043】
気体燃料噴孔17は、その中心軸を空気孔の出口近傍に配置するのが望ましい。具体的には空気孔16の入口(予混合燃焼バーナ11の外側)よりも出口(予混合燃焼バーナ11の内側)に近い位置に配置するのがよい。特に本実施例では、空気孔16で形成される円筒に垂直な平面を予混合燃焼バーナ11の外側から混合室11a側へ移動させたときに最初に円筒と垂直な平面が接しなくなる点Pのある平面上に気体燃料噴孔17の中心を配置した。このように配置することで気体燃料噴孔17から供給された気体燃料200あるいは水250は空気孔16の壁面に沿って流れ、一部は壁による拘束がなくなったところから混合室11aへ飛散する流れ51となる。気体燃料200あるいは水250といった流体の勢いを必要以上に失うことなく、流体に旋回力を与えることができるため好適である。
【0044】
気体燃料200の場合、空気孔16の壁面に沿って流れることで内壁に膜状に広がる。そうすると、気体燃料200が燃焼用空気300に分散して混合するため、燃料濃度が高いことに起因した局所的な高温燃焼領域の発生を防止でき、NOx排出量の低減が可能になる。
【0045】
次に、上記のような構成のガスタービン燃焼器において、液体燃料を燃料としたときに気体燃料噴孔17から水250を供給する効果について以下に説明する。
【0046】
気体燃料噴孔17から水250を供給した場合、空気孔16の壁面で水250が液膜状に広がるため、空気孔16の壁面との接触面積が増加し、熱伝導率が高い壁面から熱を受けやすくなり蒸発が促進される。これにより、水250の添加による燃焼用空気300の温度低下および燃焼速度の低下により局所の燃焼温度上昇が抑制され、NOx排出量の低減が可能となる。なお、気体燃料噴孔17から供給された水250の全量が、予混合燃焼バーナ11で形成された予混合気に混合しており、水250の全量がNOx排出量の低減に寄与するため、水250の供給量が少量でもNOx排出量の低減に有効である。
【0047】
ここで、空気孔16から混合室11aへ燃焼用空気300が流入する構造では空気孔16の出口に後流50が生じる。液体燃料ノズルから噴射された液体燃料の液滴の一部が後流50に巻き込まれ未燃分カーボンが壁面に堆積しやすくなる。これに対し本実施例の予混合燃焼バーナ11の構造では、水250が空気孔16の壁面を流れることにより空気孔16の壁面温度を低下させて混合室11aの壁面温度も低下させることや、後流50によって流れ51が壁面に押しつけられ混合室11aの壁面に近づき混合室11aの壁面を冷却させることで、液体燃料の熱分解反応速度を低下させられる。これにより、高沸点成分が混合室11aの壁面に付着しても燃焼用空気300によって液体のまま混合室11aの下流側の燃焼室へ搬送されやすくなり、熱分解による未燃分カーボンの生成を抑制できる。また、水250の一部が空気孔16から混合室11aへ飛散する流れ51により混合室11aの壁面への液体燃料の付着が遮られ、水250あるいは水蒸気と一緒に燃焼室に流出するため未燃分カーボンの生成を抑制できる。
【0048】
さらに本実施例のガスタービンでは、気体燃料噴孔17へ供給する水250を加熱する加熱手段である熱交換器270,275を有している。そのため、水250が予混合燃焼バーナ11へ供給される前に加熱され、気体燃料噴孔17から噴出した直後から蒸発が開始され、燃焼用空気300との混合度を高められ、局所的な火炎温度の上昇の防止によりNOx排出量を低減できる。また、水250が熱交換器270で加熱されるため空気孔16近傍で蒸発しやすく、気化熱で構造物の温度を低下させるため、空気孔近傍での熱分解反応速度が低下して混合室11aの壁面での未燃分カーボンの生成および堆積を抑制できる。
【0049】
また、燃焼用空気300で予混合燃焼バーナ11が加熱されるため、加熱された水250を供給することで常温の水を供給する場合にくらべて急激な温度変化に伴う溶接部などにかかる熱応力を小さくでき、構造物の割れを防止できる。
【0050】
このように構成したガスタービン燃焼器およびガスタービンシステムにおいては、油専焼運転時に気体燃料噴孔から水を噴射することで、予混合燃焼バーナの空気孔近傍を冷却でき、予混合燃焼バーナの壁面に液体燃料が付着することで生成する未燃分カーボンの堆積を抑制できる。これにより、混合室への空気流量低下や個々の空気孔から混合室へ流入する空気の流量偏差の増大による液体燃料ノズルから噴射される液体燃料の微粒化特性の変化を抑制でき、燃料濃度偏差による火炎の高温領域の発生が抑制され、NOx排出量の増大を防止できる。また、燃焼用空気と水の混合度を高められるため火炎の温度上昇を抑制でき、NOx排出量を低減できるガスタービン燃焼器を提供可能となる。
【符号の説明】
【0051】
1 圧縮機
2 タービン
3 ガスタービン燃焼器
4 発電機
5 外筒
6 燃焼室
7 内筒
8 トランジションピース
9 閉止板
10 拡散燃焼バーナ
10a,11a 混合室
10b 円錐プレート
11 予混合燃焼バーナ
12,13 液体燃料ノズル
14 気体燃料ノズル
15,16 空気孔
17 気体燃料噴孔
18 燃料ヘッダ
50 後流
51 流れ
100 液体燃料
101,251 加圧ポンプ
102,252 圧力調節弁
103,105,202,204,253 流量制御弁
104,106,203,205,254 遮断弁
110 液体燃料タンク
120,121 液体燃料供給系統
200 気体燃料
220,221,221 気体燃料供給系統
206,256 逆止弁
210 燃料タンク
223 水供給系統
250 水
260 水タンク
270 熱交換器
271 調節器
272 圧力計
273 温度計
300 燃焼用空気
400 燃焼ガス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気と燃料とを混合する混合室と、
該混合室に液体燃料を噴出する液体燃料ノズルと、
該液体燃料ノズルの外周側に配置され、空気を噴出する筒状の空気孔とを有し、
該空気孔の壁面に、該空気孔内へ気体燃料を供給する気体燃料噴孔とを備えたガスタービン燃焼器であって、
該気体燃料噴孔へ水を供給する系統を有することを特徴とするガスタービン燃焼器。
【請求項2】
請求項1に記載のガスタービン燃焼器であって、
該気体燃料供給孔は、該気体燃料供給孔から供給された流体が該空気孔の壁面に沿って流れるように設けられていることを特徴とするガスタービン燃焼器。
【請求項3】
請求項1または2に記載のガスタービン燃焼器であって、
該空気孔は円筒状であり、
該円筒状の空気孔の断面円に対して接線方向から流体が供給されるよう該気体燃料噴孔が設けられていることを特徴とするガスタービン燃焼器。
【請求項4】
請求項1から3の何れかに記載のガスタービン燃焼器であって、該気体燃料噴孔へ供給する水を加熱する加熱手段を有する
ことを特徴とするガスタービン燃焼器。
【請求項5】
請求項1から4の何れかに記載のガスタービン燃焼器であって、
該空気孔の入口よりも出口に近い位置に該気体燃料噴孔を配置する構造を持つことを特徴とするガスタービン燃焼器。
【請求項6】
空気と燃料とを混合する混合室と、
該混合室に液体燃料を噴出する液体燃料ノズルと、
該液体燃料ノズルの外周側に配置され、空気を噴出する筒状の空気孔とを有し、
該空気孔の壁面に、該空気孔内へ気体燃料を供給する気体燃料噴孔とを備えたガスタービン燃焼器の運転方法であって、
該液体燃料ノズルから液体燃料を供給する際に、
該気体燃料噴孔へ水を供給することを特徴とするガスタービン燃焼器の運転方法。
【請求項7】
請求項6に記載のガスタービン燃焼器の運転方法であって、
燃焼用空気の圧力を元に該気体燃料噴孔から供給する水の温度を決定する
ことを特徴とするガスタービン燃焼器の運転方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−24438(P2013−24438A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−157396(P2011−157396)
【出願日】平成23年7月19日(2011.7.19)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)