説明

ガスタービン燃焼器

【課題】予混合型としたパイロットバーナにおける圧縮空気と燃料の予混合距離を長くして十分な予混合化が図れて低NOx化を実現できるガスタービン燃焼器を提供する。
【解決手段】圧縮機1からの圧縮空気Aに燃料Fを混合して燃焼させてタービン3に供給する燃焼器であって、燃焼室11を形成する燃焼筒10の頭部に設けられたパイロットバーナ20と、その外周に配置された予混合型のメインバーナ21とを備える。パイロットバーナ20は、上流端部に設けられて径方向外方から内方へ向かって圧縮空気Aを流入させる流入通路41と、流入通路41に圧縮空気Aの流れと直交する方向に燃料Fを噴射する複数の燃料供給孔42と、流入通路41からの圧縮空気Aおよび燃料Fを混合させながら軸方向下流に導く予混合通路43と、予混合通路43からの予混合気M2を燃焼室11に噴射する複数の予混合気噴射孔44A,44Bとを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、窒素酸化物(以下、NOxという)の排出量を抑制できるガスタービン燃焼器に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスタービン装置については、運転時にタービンから排出される排ガス組成に関して厳しい環境基準が設けられており、特に、排ガス中に含まれるNOxの排出量の低減が望まれている。従来、このようなガスタービン装置における低NOx化の手法として、燃焼室内に水や蒸気を噴射して燃焼火炎温度を低下させる方法が採用されていたが、この方法によると、水や蒸気の噴射設備が必要となることでコスト高となるうえ、装置の熱交換率が低下し、使用する水質が悪い場合にはタービンの腐食により装置の寿命を短くするなどの課題があった。これらの課題を克服するガスタービン装置として、近年、水や蒸気を用いることなく、低NOx化を図るDLE(Dry Low Emission)燃焼器を用いたガスタービン装置がある。このようなDLE燃焼器において、これまで拡散燃焼型であったパイロットバーナを予混合型にすることで、タービンから排出されるNOx排出量の一層の低減を図ったものがある(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−21875号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記特許文献1に開示された予混合型パイロットバーナを用いた燃焼器の場合では、燃料と圧縮空気とが混合される予混合距離がきわめて短いため、均一で濃度のばらつきのない予混合気が得られない。したがって、理想的な希薄予混合燃焼が行えず、満足のいくNOx排出量の低減は期待できない。
【0005】
本発明の目的は、圧縮空気と燃料の十分な予混合化が図れて低NOx化を実現できるパイロットバーナを備えたガスタービン燃焼器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、本発明に係るガスタービン燃焼器は、圧縮機からの圧縮空気に燃料を混合して燃焼させてタービンに供給するガスタービン燃焼器であって、燃焼室を形成する燃焼筒の頭部に設けられたパイロットバーナと、その外周に配置された予混合型のメインバーナとを備え、前記パイロットバーナは、上流端部に設けられて径方向外方から内方へ向かって前記圧縮空気を流入させる流入通路と、前記流入通路に圧縮空気の流れと直交する方向に燃料を噴射する複数の燃料供給孔と、前記流入通路からの圧縮空気および燃料を混合させながら軸方向下流に導く予混合通路と、前記予混合通路からの予混合気を前記燃焼室に噴射する複数の予混合気噴射孔とを備えている。
【0007】
この構成によれば、流入通路において圧縮空気と複数の燃料供給孔からの燃料が圧縮空気に直交して供給される、燃料に対する圧縮空気のせん断力によって圧縮空気と燃料との混合が促進される。また、予混合気は、流入通路から予混合通路に導かれる際に90°偏向するので、流れに大きな乱れが生じて、予混合が促進される。さらに、予混合気は、予混合通路を軸方向下流に導かれるので、この予混合通路内において予混合がさらに促進される。その結果、燃料の濃度むらの少ない均一な予混合気が得られる。この予混合気が複数の予混合気噴射孔から燃焼室に噴射されるので、燃焼室内での予混合気の偏在が抑制される。また、パイロットバーナの外周に配置された予混合型のメインバーナからも予混合気が燃焼室に噴射されるので、低負荷領域から高負荷領域まで、燃焼室内で、濃度の濃い混合気ではなく、燃料の濃度むらの少ない均一な予混合気が燃焼される。これにより、NOxの排出量を低減できる。
【0008】
本発明において、さらに、パイロットバーナの中心部に、パイロット用燃料の一部を前記燃焼室に噴射する燃料噴射孔を備えていることが好ましい。この構成によれば、パイロットバーナの中心部に設けた燃料噴射孔から、パイロット用燃料の一部が前記燃焼室に噴射されるので、着火性が向上して安定した保炎性を確保できる。
【0009】
本発明において、前記予混合通路は、下流に向かって通路面積が小さくなる増速部を有することが好ましい。この構成によれば、増速部を通ることで予混合気の流速が増すので、燃焼室側から予混合通路への逆火を防止できる。
【0010】
本発明において、前記予混合通路における前記増速部の上流側に、予混合気を径方向外側寄りに偏向させることで予混合を促進させる混合促進部材が設けられるのが好ましい。この構成によれば、予混合通路内に導かれた圧縮空気と燃料の予混合気が前記混合促進部材により、径方向外側寄りに偏向させられるので、その偏向により予混合が促進される。また、混合促進部材が予混合通路における増速部の上流側である通路面積の大きい部分に設けられているので、流速が大きくない分だけ、混合促進部材による流路抵抗の増大が抑制される。
【0011】
本発明において、さらに、前記燃料噴射孔の下流側近傍に前記予混合通路内の予混合気の一部を供給するカーボン除去用噴射孔を有するのが好ましい。この構成によれば、前記燃料噴射孔から燃焼室に噴射された燃料の濃度を、前記カーボン除去用噴射孔からの予混合気により薄くして、燃料の過濃により煤(カーボン)が発生するのを防止している。これにより、前記燃料噴射孔はカーボン付着による目詰まりを起こすことなく、安定して燃焼室に燃料を噴射できる。
【0012】
本発明において、前記流入通路は環状の流入口と、この流入口の径方向内方に配置されて、前記圧縮空気を流入通路の中心へ向けて案内する複数のガイド片を有することが好ましい。この構成によれば、圧縮空気は、環状の流入口から中心側へ向けて導入されるので、流入通路の中心部で流入口からの圧縮空気が衝突して乱れが大きくなる結果、燃料との撹拌が促進される。
【0013】
本発明において、隣接する前記ガイド片の間に前記燃料供給孔が配置されていることが好ましい。この構成によれば、複数の燃料供給孔がガイド片間に配置されているから、燃料が多点噴射となり、しかもガイド片によって周方向に区画された燃料が流入通路に供給されるので、燃料の濃度むらの一層少ない均一な予混合気が得られる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、流入通路において圧縮空気と複数の燃料供給孔からの燃料が圧縮空気に直交して供給されるので、燃料に対する圧縮空気のせん断力によって圧縮空気と燃料との混合が促進される。また、予混合気は、流入通路から予混合通路に導かれる際に90°偏向するので、流れに大きな乱れが生じて、予混合が促進される。さらに、予混合気は、予混合通路を軸方向下流に導かれるので、この予混合通路内において予混合がさらに促進される。その結果、燃料の濃度むらの少ない均一な予混合気が得られる。この予混合気が複数の予混合気噴射孔から燃焼室に噴射されるので、燃焼室内での予混合気の偏在が抑制される。また、パイロットバーナの外周に配置された予混合型のメインバーナからも予混合気が燃焼室に噴射されるから、燃焼室内において負荷領域から高負荷領域まで、燃料の濃度むらの少ない均一な予混合気の燃焼が実現するので、NOxの排出量を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の好ましい実施形態にかかるガスタービン燃焼器が適用されるガスタービン発電装置の概略構成図である。
【図2】同実施形態にかかるガスタービン燃焼器の縦断面図である。
【図3】同実施形態にかかるガスタービン燃焼器で使用するパイロットバーナを示し、(A)はその拡大縦断面図、(B)は(A)のIIIB− IIIB線断面図、(C)は(A)のIIIC− IIIC線断面図、(D)は(A)のIIID− IIID線断面図である。
【図4】図3の矢印IV方向から見た拡大図である。
【図5】比較例として示す従来の拡散型パイロットバーナを示す縦断面図である。
【図6】ガスタービン燃焼器における負荷率とNOxの排出量の関係を示す特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の好ましい実施形態について図面を参照しながら詳述する。図1は本発明の好ましい実施形態にかかるガスタービン燃焼器が使用されるガスタービン発電装置の概略構成を示す。同図において、ガスタービン発電装置GTは、圧縮機1と、燃焼器2と、タービン3とを主な構成要素とし、燃焼器2は、燃料供給装置5と燃料制御装置6とを備えている。圧縮機1から供給される圧縮空気Aと、燃料制御装置6を介して燃料供給装置5から供給される燃料Fとを燃焼器2で燃焼させ、これにより発生する高温高圧の燃焼ガスGをタービン3に供給して、このタービン3を駆動する。圧縮機1は回転軸7を介してタービン3により駆動され、このタービン3はまた、減速機8を介して発電機9を駆動する。
【0017】
図2の縦断面図に示すように、前記燃焼器2は、これに導入される圧縮空気Aと燃焼ガスGとが互いに燃焼器2内の逆方向に流れる逆流缶型であり、回転軸7と同心の円周上に配設された複数の円筒状のハウジングHを有し、各ハウジングH内に、ほぼ円筒状の燃焼筒10が収納されており、その内部に燃焼室11が形成されている。前記ハウジングHの先端側となる頭部(図2の左端部)にはエンドカバー12がボルト12aにより固定されている。
【0018】
ハウジングHの頭部側には、ハウジングH内に位置する支持筒13の基端部が連結され、この支持筒13の先端部(図2の右端部)に燃焼筒10の頭部10aが固定されて、燃焼筒10が支持筒13を介してハウジングHに支持されている。燃焼筒10の周壁10bとこれを覆うハウジングHとの間には、圧縮機1(図1)からの圧縮空気Aを燃焼筒10の頭部10a、つまり、上流側へ導く環状の空気通路15が形成されている。支持筒13の内側には空気導入室16が形成されており、支持筒13に、圧縮空気Aを空気導入室16内に導く複数の空気導入孔18が設けられている。
【0019】
燃焼筒10の頭部10aの中央部には、燃料Fの一部を燃焼室11内に直接噴出するとともに、燃料Fと圧縮空気Aを混合して生成した予混合気M1を燃焼室11内に噴出する単一の予混合型のパイロットバーナ20が設けられている。このパイロットバーナ20の基端はエンドカバー12に設けたパイロット燃料導入口28に接続されている。パイロットバーナ20の外周を囲むようにして、燃料Fと圧縮空気Aを混合して生成した予混合気M2を、予混合通路29から燃焼室11内に噴出する単一の予混合型のメインバーナ21が設けられている。
【0020】
メインバーナ21は、メイン内周壁21aとメイン外周壁21bとの間に、縦断面L字状の予混合通路29が形成されている。この予混合通路29の上流端が径方向外向きに開口しており、その開口した環状の空気取入口29aの径方向外側に複数のメイン燃料ノズル23がメインバーナ21の周方向に等間隔で配置されている。メイン燃料ノズル23における空気取入口29aに対向する部分に、複数のメイン燃料噴射孔23aが形成されている。メイン燃料ノズル23の基端はエンドカバー12に設けたメイン燃料導入口25に接続されている。空気取入口29aにはスワーラ26が配置されており、メイン燃料導入口25から供給された燃料Fは、空気取入口29aから流入する圧縮空気Aとともに、スワーラ26によって旋回が付与され、環状の予混合通路29内で予混合されたのち、環状の予混合噴出口29bから予混合気M2として燃焼室11内に噴出される。
【0021】
前記パイロット燃料導入口28およびメイン燃料導入口25には、図1の燃料供給装置5から燃料制御装置6を介して燃料Fが供給される。
【0022】
燃焼筒10の周壁10bの上流部には、点火プラグ30が、その先端を燃焼室11内に臨ませて配置されている。点火プラグ30は、ハウジングHを貫通してハウジングHに固定されており、起動時には、予混合型パイロットバーナ20から燃焼室11内に予混合気M1を噴射して点火プラグ30により点火する。低負荷時には予混合型パイロットバーナ20のみが作動する。つづいて、低負荷時よりも負荷が大きい通常運転時には、メインバーナ21から燃焼室11内に噴射された予混合気M2と予混合型パイロットバーナ20からの予混合気M1とを燃焼して、燃焼筒10の上流部において、メインバーナ21の下流側に第1の燃焼領域S1を形成させる。
【0023】
燃焼筒10における第1の燃焼領域S1よりも下流側には、複数、たとえば4つの空気孔31が周方向に等間隔に設けられている。前記ハウジングHにおける各空気孔31に対向する部分には、予混合型の追焚きバーナ40が取り付けられて、その先端部を、空気孔31を通して燃焼室11内に臨ませている。こうして、追焚きバーナ40は、メインバーナ21よりも燃焼筒10の下流側で燃焼筒10の周壁10bを貫通して配置され、追焚きバーナ用の予混合気M3を燃焼筒10内に噴射して、燃焼室11内で第1の燃焼領域S1の下流側に第2の燃焼領域S2を形成させる。
【0024】
図3は、パイロットバーナ20の詳細を示す。図3(A)に示すように、このパイロットバーナ20は、燃焼筒10の軸心C(図2)と同心となる真直なバーナ軸心C1を有し、上流端部(図3(A)左側)に設けられて径方向外方から内方へ向かって圧縮空気Aを流入させる流入通路41と、前記流入通路41からの圧縮空気Aおよび燃料Fを混合させながら軸方向下流(図3(A)右側)に導く予混合通路43と、この予混合通路43からの予混合気M1を燃焼室11(図2)に向けて噴射する複数の混合気噴射孔44A,44Bとを備えている。流入通路41の外周には環状の流入口41aが形成されており、この流入口41aの径方向内側に、流入通路41の圧縮空気Aの流れと直交する方向に燃料Fを噴射する複数の燃料供給孔42が設けられている。前記予混合通路43は、下流に向かって通路面積が小さくなる増速部45を有している。予混合気M1は、この増速部45を通って流速が増したのち、混合気噴射孔44A,44Bから噴射される。
【0025】
また、予混合通路43における前記増速部45の上流側に、予混合気M1を径方向外側寄りに偏向させることで予混合を促進させる混合促進部材46が設けられている。さらに、パイロットバーナ20の中心部には、軸心C1に沿って延びる保炎燃料通路48が設けられ、その下流側先端に燃料噴射孔49が連通しており、この燃料噴射孔49からパイロット用燃料Fの一部が燃焼室(図2)に噴射されるようになっている。保炎燃料通路43は、中央パイプP1の中空部によって形成されている。予混合通路43は、外壁を形成する、くびれ部(増速部)45を持ち、先端(下流端)が閉止された円筒体20aと、中心部の保炎燃料通路48を形成する燃料パイプP1との間に形成された環状の通路である。燃料噴射孔49は、パイロットノズル20の先端壁20bの中心部に形成されており、保炎燃料通路48よりも小径の円孔である。この実施形態では、円筒体20aと先端壁20bは一体形成されている。
【0026】
図3(B)に示すように、流入口41aには、圧縮空気Aを環状の流入口41aから中心側へ向けて案内する複数(例えば12枚)のガイド片50が、周方向に等間隔で設けられている。ガイド片50は円盤状のノズルプレート54と円筒体20aの上流端部との間に配置され、両者54,20aに例えば溶接により固定されている。
【0027】
ノズルプレート54の外周部近傍には、燃料溜め空間55に連通し、燃焼筒10の径方向内方に向かって開孔した複数の燃料供給孔42が、ノズルプレート54と同心状の配置で設けられている。このノズルプレート54とエンドプレート12との間に、燃料溜め空間55に燃料Fを導入するための燃料導入路12aが形成されている。燃料Fは燃料導入口28および燃料導入路12aを通って燃料溜め空間55に入り、一部の燃料Fは保炎燃料通路48に導かれ、その他の燃料Fは燃料供給孔42から流入通路41に供給される。また、このノズルプレート54の中央部には先端が逆円錐状となった中央突起54aが形成されており、この中央突起54aは、少なくともガイド片50の高さ(軸心方向長さ)を若干上回る長さを有している。
【0028】
流入通路41では、流入口41aを通って、隣接するガイド片50,50の間に径方向外方から内方へ向かって圧縮空気Aが流入する。前記隣接するガイド片50,50の間に、圧縮空気Aの流れと直交する方向に燃料Fを噴射する複数の燃料供給孔42が2個ずつ、計24個設けられている。このように、複数の燃料供給孔42がガイド片50,50間に配置されているから、燃料Fが多点噴射となり、しかもガイド片50によって周方向に区画された燃料Fが流入通路41に供給されるので、燃料Fの濃度むらの少ない均一な予混合気が得られる。
【0029】
ここで、圧縮空気Aは、複数のガイド片50によって流入口41aの中心側へ向けて導入されるので、流入通路41の中心部で流入口41aからの圧縮空気Aが衝突して乱れが大きくなる結果、燃料Fとの撹拌が促進される。こうして得られた予混合気M1が中央突起54aに衝突することで、円滑に90°偏向されて予混合通路43に導入される。
【0030】
図3(C)に示すように、混合促進部材46は、中央部に保炎燃料通路48の中央パイプP1を挿通させる挿通孔46aが形成され、外周部に円周方向に等間隔に配置された複数の突片46b(図例では4つ)が形成されたもので、たとえば、金属板を打ち抜いて作成できる。この混合促進部材46は、前記挿通孔46aの部分で中央パイプP1に固定されることで、予混合通路43における増速部45よりも上流側に設置され、各突片46bの間の空間46cが予混合気M2の通路となる。
【0031】
図3(D)に示すように、第1の予混合気噴射孔44Aが円筒体の周壁に周方向に等間隔で複数個(たとえば12個)設けられている。この予混合気噴射孔44Aは、図3(A)に示すように、径方向斜め外方に向かうように設定されている。これにより、予混合気噴射孔44Aから噴射される予混合気M1の一部が前記点火プラグ30(図2)に向かう。
【0032】
図4はパイロットバーナ20を下流側から見たものである。同図に示すように、先端部におけるパイロットバーナ20の軸心C1に合致する中心部に前記燃料噴射孔49が設けられ、その周囲に複数の第2の予混合気噴射孔44B(図例では8個)が設けられている。燃料噴射孔49の外周側で第2の予混合気噴射孔44Bの内周側には、予混合気を供給する複数のカーボン除去用噴射孔53(図例では3個)が形成されている。このカーボン除去用噴射孔53は、図3(A)に示すように、予混合通路43内の予混合気M1の一部が、燃料噴射孔49の先端に噴射されるように斜め内側に向かって形成されている。各カーボン除去用噴射孔53は、燃料噴射孔49と同程度の極めて小径のものとしている。
【0033】
図3(A)において、パイロットバーナ20の円筒体20aの下流端部近傍は、横断面L字形の環状のカラー57を介してメイン内周壁21aに、熱変形を許容された状態で支持されている。
【0034】
追焚きバーナ40は、その上流の燃料噴射部分がパイロットバーナ20と実質的に同一構造のものが採用されているので、その詳しい構造や作用についての説明は省略する。
【0035】
つぎに、この実施形態にかかるガスタービン燃焼器のパイロットバーナ20の作動について説明する。ガスタービンGTの全負荷領域において、図1に示す燃料制御装置6を介して燃料供給装置5から供給される燃料Fは、図3(A)の燃料導入口28からパイロットバーナ20に導かれる。この燃料Fの一部は燃料導入通路48に導かれて燃料噴射孔49から燃焼室11(図2)に噴射され、保炎用に供される。燃料噴射孔49から濃い燃料Fが噴射されて拡散燃焼することで、保炎性および着火性が向上する。燃料噴射孔49からの燃料Fの噴射量はきわめて微量であり、パイロットバーナ20による予混合燃焼に影響を与えない。
【0036】
燃料Fの大部分は、燃料供給孔42から流入通路41内に導かれ、同時に、圧縮機1(図1)からの圧縮空気Aが流入通路41に、径方向外方からガイド片50,50の間を通って径方向内方に向かって導入される。このとき、圧縮空気Aと燃料Fとは直交状態で混合されるので、燃料Fに対する圧縮空気Aによるせん断力によって圧縮空気Aと燃料Fとの混合が促進されながら予混合通路43を軸方向下流に導かれる。前述のとおり、圧縮空気Aと燃料Fは流入通路41内を径方向内方へ向かって流れることで、中心部で衝突して乱れが大きくなり、混合が促進される。また、混合気M1は、流入通路41から予混合通路43に導かれる際に90°偏向するので、流れに大きな乱れが生じて、予混合が促進される。さらに、予混合気M1は、長い予混合通路43を軸方向下流に導かれるので、この予混合通路43内において予混合が促進される。この予混合気M1が複数の予混合気噴射孔44A,44Bから燃焼室11に噴射されるので、燃焼室11内での予混合気の偏在が抑制される。
【0037】
予混合通路43を軸方向下流に導かれる予混合気M2は、混合促進部材46により径方向外側寄りに偏向させられるので、乱れが大きくなって、予混合がより促進される。また、混合促進部材46が予混合通路43における増速部45の上流側である通路面積の大きい部分に設けられているので、流速が大きくない分だけ、混合促進部材46による流路抵抗の増大が抑制される。
【0038】
つづいて、混合促進部材46を経た予混合気M2は、下流に向かって通路面積が小さくなる増速部45を通過することで、予混合気M2の流速が増すので、燃焼室11(図2)側から予混合通路43への逆火が防止できる。このように逆火が防止されることにより、パイロットバーナ20の損傷を回避できる。
【0039】
増速部45を経た予混合気M1の一部は、第1の予混合気噴射孔44Aから径方向斜め外方に向かって噴射される。予混合気M1の他の一部は第2の予混合気噴射孔44Bから燃焼室11(図2)に、ほぼ軸心C1方向へ向かって噴射される。さらに、予混合気M1の残部はカーボン除去用噴射孔53から燃料噴射孔49の先端に向かって斜め方向に噴射され、燃料噴射孔49の出口付近の燃料濃度を低下させている。これにより、燃料の過濃によって発生する煤に起因する燃料噴射孔49の目詰まりを防止する。
【0040】
このように、本発明の実施形態にかかるパイロットバーナ20によれば、圧縮空気Aと燃料Fとが十分に混合され、濃度が均一なパイロット予混合気M1が得られる。始動時および低負荷時を除く通常運転時には、図2に示すメインバーナ21からもメイン予混合気M2が燃焼室11に供給される。この場合の予混合気M1および予混合気M2が形成する第1の燃焼領域をS1として示す。加えて、追焚きバーナ40も予混合型であり、この追焚きバーナ40からも追焚き予混合気M3が燃焼室11内に供給されて燃焼される。この場合の第2の燃焼領域をS2として示す。追焚きバーナ40も予混合型であることで、第2の燃焼領域S2でのNOxの発生も抑制され、その排出量を低減できる。このように、パイロットバーナ20、メインバーナ21および追焚きバーナ40のすべてが予混合型であるので、燃焼時、高温となって多量のNOxを発生させる拡散燃焼型に比べ、大幅にNOx量の低減を図ることができる。
【0041】
これに対して、図5に示す従来のパイロットバーナ70は、拡散燃焼型である。燃料導入口28から導入された燃料Fは導入通路72内に導かれ、先端の燃料噴射孔74から噴射されて、パイロットバーナ20の下流側外方で、圧縮空気Aと混合される。したがって、パイロットバーナ70の下流側では、圧縮空気Aと燃料Fの混合が不十分で濃度にばらつきのある混合気しか得られない。このため、燃焼温度が高くなり、NOxが生成されやすくなる。
【0042】
つぎに、本発明の実施形態にかかる燃焼器と、図5の従来例の燃焼器とをエンジンに搭載して行ったエンジン試験の結果を、図6を参照して説明する。同図の横軸は定格を100%とする負荷率であり、縦軸は燃焼筒出口でのNOx濃度(燃焼用空気の酸素濃度15%)である。同図に示す比較例(a)および(b)は従来のDLE燃焼器であって、パイロットバーナが図5に示した拡散型であり、メインバーナおよび追焚きバーナが予混合型である。比較例(a)では追焚きバーナを作動させておらず、比較例(b)における黒三角印▲では追焚きバーナを作動させている。本発明の第1例および第2例は、パイロットバーナ、メインバーナおよび追焚きバーナのすべてが予混合型であり、第1例では追焚きバーナを作動させておらず、第2例における黒丸印●では追焚きバーナを作動させている。
【0043】
同図から明らかなように、比較例(a)では負荷率の上昇に伴ってNOx濃度が大きく増加している。比較例(b)では比較例(a)に比べると、予混合型の追焚きバーナを作動させた分だけ、負荷率の高い領域でNOx濃度が大きく低下している。本発明の第1例では、パイロットバーナを予混合型としたことにより、下向きの矢印Y1で示すように、比較例(a)よりもNOx濃度が低下している。また、本発明の第2例では、予混合型の追焚きバーナの作動により、負荷率が高い領域でも、矢印Y2で示すように,比較例(b)よりもさらにNOx排出量を低減できており、今後、一層厳しくなりうるNOx排出規制にも十分耐えうるものと期待できる。
【0044】
以上のとおり、図面を参照しながら好適な実施形態を説明したが、当業者であれば、本件明細書を見て、自明な範囲内で種々の変更および修正を容易に想定するであろう。したがって、そのような変更および修正は、添付の特許請求の範囲から定まるこの発明の範囲内のものと解釈される。
【符号の説明】
【0045】
1…圧縮機
2…燃焼器
3…タービン
10…燃焼筒
11…燃焼室
15…空気通路
20…パイロットバーナ
21…メインバーナ
40…追焚きバーナ
41…流入通路
41a…流入口
42…燃料供給孔
43…予混合通路
44A,44B…予混合気噴射孔
45…増速部
46…混合促進部材
48…保炎燃料通路
49…燃料噴射孔
50…ガイド片
53…カーボン除去用噴射孔
54a…中央突起
A…圧縮空気
F…燃料
H…ハウジング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機からの圧縮空気に燃料を混合して燃焼させてタービンに供給するガスタービン燃焼器であって、
燃焼室を形成する燃焼筒の頭部に設けられたパイロットバーナと、その外周に配置された予混合型のメインバーナとを備え、
前記パイロットバーナは、上流端部に設けられて径方向外方から内方へ向かって前記圧縮空気を流入させる流入通路と、
前記流入通路に圧縮空気の流れと直交する方向に燃料を噴射する複数の燃料供給孔と、
前記流入通路からの圧縮空気および燃料を混合させながら軸方向下流に導く予混合通路と、
前記予混合通路からの予混合気を前記燃焼室に噴射する複数の予混合気噴射孔とを備えたガスタービン燃焼器。
【請求項2】
請求項1において、さらに、パイロットバーナの中心部に、パイロット用燃料の一部を前記燃焼室に噴射する燃料噴射孔を備えたガスタービン燃焼器。
【請求項3】
請求項1または2において、前記予混合通路は、下流に向かって通路面積が小さくなる増速部を有するガスタービン燃焼器。
【請求項4】
請求項3において、前記予混合通路における前記増速部の上流側に、予混合気を径方向外側寄りに偏向させることで予混合を促進させる混合促進部材が設けられているガスタービン燃焼器。
【請求項5】
請求項2において、さらに、前記燃料噴射孔の下流側近傍に前記予混合通路内の予混合気の一部を供給するカーボン除去用噴射孔を有するガスタービン燃焼器。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項において、前記流入通路は環状の流入口と、この流入口の径方向内方に配置されて、前記圧縮空気を流入通路の中心へ向けて案内する複数のガイド片を有するガスタービン燃焼器。
【請求項7】
請求項6において、隣接する前記ガイド片の間に前記燃料供給孔が配置されているガスタービン燃焼器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−53814(P2013−53814A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−192549(P2011−192549)
【出願日】平成23年9月5日(2011.9.5)
【出願人】(000000974)川崎重工業株式会社 (1,710)