説明

ガスタービン用のロータディスクを補修する方法及び装置

【課題】本発明の実施形態は、ガスタービン用のロータディスクを補修する方法及び装置を提供することができる。
【解決手段】1つの実施形態では、基部と1対のダブテール壁間の少なくとも1つのダブテールスロットとを含むことができる、ガスタービン用のロータディスクを補修する方法を提供する。本方法は、ロータディスクの基部上で1以上の割れを識別するステップと、ロータディスクの基部上に1以上のフィレットを形成することによって1以上の割れを除去するステップとを含むことができる。さらに、本方法は、少なくとも1つのダブテールスロットの1対のダブテール壁間でロータディスクの基部上に1以上の円錐状切込みを設けるステップを含むことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、総括的にはガスタービンに関し、より具体的には、ガスタービン用のロータディスクを補修する方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、ガスタービンの圧縮機ロータホイール組立体は、ロータディスクと複数のロータブレードとを含むことができる。ロータディスクには、その周辺部の周りに複数のダブテールスロットを設けることができ、また複数のロータブレードの各々には、ダブテールが設けられる。複数のロータブレードの各々のダブテールは、ロータディスクの複数のダブテールスロットの1つに軸方向に挿入して、圧縮機ロータホイール組立体を完成することができる。幾つかの事例では、そのような圧縮機ロータホイール組立体の用途は、ガスタービンに限定されない。圧縮機ロータホイール組立体はまた、その他の発電用途及び推力発生用途においても使用することができる。
【0003】
前方側及び後方側は、ガスタービン内にロータディスクを据付けた後に、作動流体の流れの方向に従って定めることができる。ガスタービン内における作動流体は、ロータディスクの前方側から流入しかつ該ロータディスクの後方側から流出することができる。さらに、ロータディスクの複数のダブテールスロットの各々は、1対のダブテール壁とロータディスクの基部とを含むことができる。複数のダブテールスロットの各々は、ロータディスクの前方側及び後方側において該ロータディスクの基部上に設置された複数の鋭角コーナ部を含むことができる。
【0004】
運転状態の間に、ロータディスクの高い回転速度及び/又は熱勾配により、複数の鋭角コーナ部は高い接線方向及び半径方向応力を受ける可能性があり、これが、複数のダブテールスロットの複数の鋭角コーナ部において1以上の割れの発生開始を引き起こすおそれがある。さらに、各割れは、ロータディスクが作動状態にある時に増大する可能性がある。
【0005】
ガスタービン用のロータディスクを補修する従来の方法は、約0.1インチ(2.5mm)よりも小さい長さを有する割れに関連している。しかしながら、割れの長さが約0.1インチ(2.5mm)よりも大きい場合には、なんらの補修選択肢も規定されておらず、ロータディスクは廃棄されることになる。
【0006】
ロータディスクの廃棄は、関連するタービンを分解しかつ該ロータディスクを取外すのに必要な運転停止及び/又は整備時間のために、ガスタービンの運転コストを直接的に増大させる可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
以上の事実に鑑みて、約0.1インチよりも大きい長さをもつ1以上の割れを有するロータディスクの補修方法に対する必要性が存在する。さらに、ガスタービン用のロータディスクを補修する方法及び装置に対する必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の必要性の一部又は全ては、本発明の実施形態によって対処することができる。本発明の実施形態は、ガスタービン用のロータディスクを補修する方法及び装置を提供することができる。1つの実施形態では、ガスタービン用のロータディスクを補修する方法を提供し、ここで、ロータディスクは、基部と1対のダブテール壁間の少なくとも1つのダブテールスロットとを含むことができる。この実施形態では、ロータディスクの基部上で、1以上の割れを識別することができる。識別した1以上の割れは、除去することができ、またロータディスクの基部上には、1以上のフィレットを形成することができる。さらに、少なくとも1つのダブテールスロットの1対のダブテール壁間でロータディスクの基部上に、1以上の円錐状切込みを設けることができる。
【0009】
本発明の別の実施形態では、ガスタービンにおいてロータディスクの再使用を可能にする方法を提供する。本方法は、ロータディスクの基部上で約0.1インチ(2.5mm)よりも大きくかつ約0.25インチ(6.4mm)以内の長さを有する1以上の割れを識別するステップを含むことができる。識別した1以上の割れは、ロータディスクの基部から除去することができ、基部上に1以上のフィレットを形成することができる。基部上に形成する1以上のフィレットの半径は、約0.1インチ(2.5mm)とすることができる。さらに、少なくとも1つのダブテールスロットの1対のダブテール壁間に、約0.5よりも小さいρ値(投影判別値とも呼ばれる)を有する1以上の円錐状切込みを設けることができる。1以上の円錐状切込みの深さは、約0.45インチ(11.4mm)とすることができ、また1以上の円錐状切込みの対応する長さは、その寸法を約0.55インチ(14.0mm)とすることができる。
【0010】
本発明の別の実施形態では、ガスタービン用のロータディスクを補修する装置を提供することができ、ここで、ロータディスクは、基部と1対のダブテール壁間の少なくとも1つのダブテールスロットとを含むことができる。本装置は、基部上に1以上のフィレットを含むことができ、ここで、1以上の割れがロータディスクの基部から除去される。さらに、少なくとも1つのダブテールスロットの1対のダブテール壁間でロータディスク上に、1以上の円錐状切込みを設けることができ、ここで、1以上の円錐状切込みは、約0.5よりも小さいρ値を含むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】ガスタービンの例示的なロータディスクの一部分を示す図。
【図2】図1のロータディスクの少なくとも1つのダブテールスロット及び該少なくとも1つのダブテールスロットの基部における1以上の例示的な割れを示す例示的な図。
【図3A】本発明の実施形態による、ロータディスク上に1以上のフィレット及び1以上の円錐状切込みを有する少なくとも1つのダブテールスロットの例示的な図。
【図3B】本発明の実施形態による、ロータディスク上に1以上のフィレット及び1以上の円錐状切込みを有する少なくとも1つのダブテールスロットの例示的な図。
【図3C】本発明の実施形態による、ロータディスク上に1以上のフィレット及び1以上の円錐状切込みを有する少なくとも1つのダブテールスロットの例示的な図。
【図3D】本発明の実施形態による、ロータディスク上に1以上のフィレット及び1以上の円錐状切込みを有する少なくとも1つのダブテールスロットの例示的な図。
【図3E】本発明の実施形態による、ロータディスク上に1以上のフィレット及び1以上の円錐状切込みを有する少なくとも1つのダブテールスロットの例示的な図。
【図4A】本発明の実施形態による、ロータディスクの少なくとも1つのダブテールスロットの1対のダブテール壁間に設けられた1以上の円錐状切込みの例示的なジオメトリを示す図。
【図4B】本発明の実施形態による、ロータディスクの少なくとも1つのダブテールスロットの1対のダブテール壁間に設けられた1以上の円錐状切込みの例示的なジオメトリを示す図。
【図5】本発明の実施形態による、ロータディスクを補修する例示的な方法を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、実施例として添付図面を参照しながら、本発明の実施形態についてより詳細に説明する。
【0013】
図1は、ガスタービンの例示的なロータディスク100の一部分を示している。ロータディスク100は、基部102と、ロータブレードを取付けるための少なくとも1つのダブテールスロット104とを含む。一般的には、ロータディスクは、複数のロータブレードつまりロータブレードのアレイを含む。ロータブレードには、それぞれのダブテールが設けられ、ダブテールは、軸方向に少なくとも1つのダブテールスロット104内に挿入して、ロータブレードをロータディスク100内に固定することができる。ガスタービンの運転の間に、ロータディスク100は、軸方向線106の周りで回転することができる。さらに、ロータディスク100は、前方側112と後方側とを含むことができる。本発明の1つの態様では、圧縮機ロータホイール組立体内の作動流体は、ロータディスク100の前方側112から関連するロータブレードのアレイに流入し、かつロータディスク100の後方側で該アレイから流出することができる。
【0014】
本発明の実施形態では、ロータディスク100は、ガスタービンの圧縮機ロータホイール組立体内で使用することができる。しかしながら、ロータディスク100の用途は、ガスタービンの圧縮機ロータホイール組立体に限定されるものではなく、発電及び推力発生のようなその他の用途にも使用することができる。
【0015】
図2は、図1に示すロータディスク100の少なくとも1つのダブテールスロット104の例示的な図である。ロータディスク100のダブテールスロット104の各々は、1対のダブテール壁202a及び202bを含むことができる。図2には、ロータディスク100の基部102の一部分を見ることができ、ここでは、基部102は、幅204と深さ205とを含むことができる。従ってダブテールスロット104の各々は、まとめて基部102と呼ぶことができる底面部分を含むことができる。さらに、基部102は、ロータディスク100の外周に沿って延びることができる。図2はまた、ダブテール壁202a及び202bの各対がそこで基部102と出会うことができる、前方側112及び後方側に形成された複数の鋭角コーナ部206を示している。
【0016】
ロータディスク100の作動中に、複数の鋭角コーナ部206は、高い接線方向及び半径方向応力を受ける可能性があり、これにより、1以上の割れ208が生じるおそれがある。割れ208は、ロータディスク100の一定の運転サイクル数(運転の間の始動及び/又は回転)の後に現れる可能性がある。その後に割れ208が現れ始める可能性がある運転サイクル数は、割れ発生開始寿命として知られている。割れ発生開始寿命後に、割れ208の長さCは、運転サイクル数と共に連続的に増大する可能性があり、従って割れ208の長さCは、割れ発生開始寿命後かつ割れ208を識別するためのロータディスク100の検査前に行われた運転サイクル数に応じて決まるか、又は少なくとも部分的にこの運転サイクル数に基づいたものとなる可能性がある。幾つかの事例では、割れ208の長さCは、上向き、側方及び下向きを含む1以上の方向に延びる可能性がある。
【0017】
図3A〜図3Eは、1以上のフィレット302と1以上の円錐状切込み304とを備えたダブテールスロット104の例示的な図である。図3Eは、少なくとも1つのフィレット302の半径ΦRと軸方向に延びる深さL1とを示している。図3B、図3C及び図3Dは、1以上のフィレット302及び1以上の円錐状切込み304の例示的な形状を示すために異なる角度で取った少なくとも1つのダブテールスロット104の例示的な図である。
【0018】
本発明の実施形態では、1以上の割れ208を有するロータディスク100を補修する方法を提供する。本発明の1つの態様では、1以上の割れ208は、ロータディスク100の基部102の前方側112の複数の鋭角コーナ部206上で識別することができる。さらに、割れ208の長さCは、約0.1インチ(2.5mm)よりも大きくかつ約0.25インチ(6.4mm)よりも小さいか又はそうではなく約0.25インチ(6.4mm)以内にすることができる。「約0.25インチ(6.4mm)」という表現は、最大で約0.30インチ(7.6mm)までの寸法を含むことを意図している。幾つかの事例では、割れ208の長さCは、上向き、側方及び下向きを含む1以上の方向に延びる可能性がある。その後、1以上の割れ208は、ロータディスク100の前方側112において基部102の幅204及び/又は深さ205の一部分にわたって除去して、1以上のフィレット302を形成することができる。1以上のフィレット302は、ロータディスク100の外周に沿って基部102の幅204及び/又は深さ205の一部分にわたって形成することができる。本発明の態様では、1以上のフィレット302は一般的に、丸味のある形状にすることができ、ロータディスク100の基部102上に1以上のフィレット302を形成するステップは、約0.1インチ(2.5mm)の半径ΦRと約0.1インチ(2.5mm)〜約0.25インチ(6.4mm)の深さL1とを有する1以上のフィレット302を形成するステップを含むことができる。しかしながら、1以上のフィレット302の半径ΦR及び深さL1は、これらの値に限定する必要はなく、該1以上のフィレット302の半径ΦR及び深さL1は、本発明の実施形態により割れ208を除去するように、圧縮機ロータホイール組立体の用途に応じて適当に選択することができる。さらに、1以上の円錐状切込み304は、ダブテールスロット104の1対のダブテール壁202a及び202b間でロータディスク100の基部102の前方側112に設けることができる。本発明の態様では、1以上の円錐状切込み304は、ロータディスク100の基部102の前方側112及び後方側の両方上に設けることができる。1以上の円錐状切込み304の例示的な形状は、図4A及び図4Bに関して詳細に説明しかつ図示している。
【0019】
次に図4A〜図4Bを参照すると、本発明の実施形態によりロータディスク100の少なくとも1つのダブテールスロット104の1対のダブテール壁202a及び202b間に設けられた1以上の円錐状切込み304の例示的なジオメトリを示している。図4Aは、1以上の円錐状切込み304の上面図を示し、また図4Bは、1以上の円錐状切込み304の例示的なジオメトリを示している。図4Aはまた、1以上の円錐状切込み304の深さDと長さLとを示している。図4Bにおける実線は、円錐曲線402を表しており、円錐曲線402の両端点は、曲線スタートエッジ404及び曲線エンドエッジ406と呼ばれる。曲線スタートエッジ404及び曲線エンドエッジ406から始まるそれぞれの点線は、これらの点における接線を表しており、それら接線は、曲線アペックス408として知られる点において交わる。さらに、曲線スタートエッジ404と曲線エンドエッジ406とを結ぶ直線に沿う方向はx軸410と呼ばれ、またx軸410に対して垂直な方向はy軸412と呼ばれる。頂点416の距離D1は、y軸412に沿ったx軸410からの該頂点416の距離として定義することができる。また、距離D2は、y軸412に沿ったx軸410からの曲線アペックス408の距離として定義することができる。これらの定義した例示的なパラメータの場合では、投影判別値(projective discriminant)としても知られているρ値を、距離D2に対する距離D1の比率として定義することができる。ρ値は、円錐形状について定義することができ、その値を約0〜約1の範囲とすることができる。幾つかの事例では、ρ値は、その値が約0.5よりも小さい場合には楕円を意味し、その値が約0.5に等しい場合には放物線を意味し、またその値が約0.5よりも大きい場合には双曲線を意味することができる。他の実施形態では、ρ値は、その値を約0〜約1の範囲とすることができる。
【0020】
本発明の態様では、1以上の円錐状切込み304を設けるステップは、約0.5よりも小さいρ値に対応する楕円形状又は同様な形状を有しかつ約0.45インチ(11.4mm)の深さDと約0.55インチ(14.0mm)の長さLとを維持する1以上の円錐状切込み304を設けるステップを含むことができる。
【0021】
戻って図3A〜図3Eを参照すると、本発明の別の実施形態は、1以上の割れ208を有するロータディスク100を補修する方法を含むことができ、ここで、1以上の割れ208は、ロータディスク100の基部102の前方側112の複数の鋭角コーナ部206内に識別することができる。さらに、1以上の割れ208の長さCは、約0.1インチ(2.5mm)よりも大きくかつ約0.25インチ(6.4mm)以内とすることができる。その後、1以上の割れ208は、ロータディスク100の前方側112の基部102の幅204及び/又は深さ205の一部分にわたって除去して、ロータディスク100の基部102上に1以上のフィレット302を形成することができる。本発明の態様では、1以上のフィレットの半径ΦRは、約0.1インチ(2.5mm)とすることができ、また深さL1は、約0.25インチ(6.4mm)とすることができる。1以上のフィレット302は、基部102の幅204又は深さ205の一部分にわたってかつロータディスク100の外周に沿って形成することができる。
【0022】
本発明の態様では、1以上のフィレット302は、丸味のある形状にすることができ、ロータディスク100の基部102上に1以上のフィレット302を形成するステップは、約0.1インチ(2.5mm)の半径ΦRと約0.1インチ(2.5mm)〜約0.25インチ(6.4mm)の深さL1とを有する1以上のフィレット302を形成するステップを含むことができる。しかしながら、1以上のフィレット302の半径ΦR及び深さL1は、これらの値に限定する必要はなく、該1以上のフィレット302の半径ΦR及び深さL1は、本発明の実施形態により1以上の割れ208を除去するように、圧縮機ロータホイール組立体の用途に応じて適当に選択することができる。
【0023】
さらに、楕円形状を有する1以上の円錐状切込み304は、少なくとも1つのダブテールスロット104の1対のダブテール壁202a及び202b間でロータディスク100の基部102の前方側112に設けることができる。本発明の態様では、1以上の円錐状切込み304は、約0.45インチ(11.4mm)の深さDと約0.55インチ(14.0mm)の長さLとを有することができる。発明の別の態様では、1以上の円錐状切込み304は、ロータディスク100の基部102の前方側112及び後方側の両方上に設けることができる。本方法はさらに、ガスタービン内に補修済みロータディスクを据付けるステップを含むことができる。
【0024】
図5は、本発明の実施形態による、ロータディスクを補修する例示的な方法を示している。図5に示す実施形態では、ガスタービンでの再使用のためにロータディスクを補修する方法500を提供することができる。本方法500は、ブロック502にて開始することができ、このブロック502では、ロータディスク100の基部102上で1以上の割れ208を識別することができる。1以上の割れ208の長さCは、約0.1インチ(2.5mm)よりも大きくかつ約0.25インチ(6.4mm)以内とすることができる。本発明の1つの態様では、割れは、ロータディスク100の基部102の少なくとも前方側112又は後方側上で識別することができる。
【0025】
ブロック502にはブロック504が続き、このブロック504では、ロータディスク100の基部102上に1以上のフィレット302を形成して1以上の割れ208を除去することができる。
【0026】
本発明の態様では、1以上のフィレット302は、基部102の幅204又は深さ205の一部分にわたってかつロータディスク100の外周に沿って形成することができる。本発明の別の態様では、1以上のフィレット302は、丸味のある形状にすることができ、ロータディスク100の基部102上に1以上のフィレット302を形成するステップは、約0.1インチ(2.5mm)の半径ΦRと約0.1インチ(2.5mm)〜約0.25インチ(6.4mm)の深さL1とを有する1以上のフィレット302を形成するステップを含むことができる。しかしながら、1以上のフィレット302の半径ΦR及び深さL1は、これらの値に限定されるものではなく、該1以上のフィレット302の半径ΦR及び深さL1は、本発明の実施形態により1以上の割れ208を除去するように、圧縮機ロータホイール組立体の用途に応じて適当に選択することができる。
【0027】
ブロック504にはブロック506が続き、このブロック506では、ロータディスク100の少なくとも1つのダブテールスロット内で1対のダブテール壁202a及び202b間に、1以上の円錐状切込み304を設けることができる。1以上の円錐状切込み304は、1対のダブテール壁202a及び202b間でロータディスク100の基部102の少なくとも後方側又は前方側112上に設けて、少なくとも1つのダブテールスロット104の複数の鋭角コーナ部206の一部又は全てにおける接線方向及び/又は半径方向応力の一部又は全てを緩和するのを可能にするか或いはそうではなくてそれらの一部又は全てを緩和させることができる。比較的高い応力値は、実用に供するロータディスク100の寿命に悪影響を及ぼす可能性がある。比較的低い応力値は、ロータディスク100の寿命を延ばすことができる。割れ発生開始寿命は、ロータディスク100の寿命の1つの尺度である。従って、応力の一部又は全てを緩和させることにより、ロータディスク100の割れ発生開始寿命を改善することができ、1以上の割れ208を有する状態でのロータディスク100の廃棄を回避すること又はそうではなくて最小にすることができる。
【0028】
本発明の1つの態様では、1対のダブテール壁202a及び202b間の1以上の円錐状切込み304は、約0.45インチ(11.4mm)の深さDと約0.55インチ(14.0mm)の長さLとを含むことができる。しかしながら、1以上の円錐状切込み304の深さD及び長さLは、これらの値に限定されるものではなく、該1以上の円錐状切込み304の深さD及び長さLは、本発明の実施形態により圧縮機ロータホイール組立体の用途に応じて適当に選択することができる。1以上の円錐状切込み304のジオメトリを定めるために、投影判別値とも呼ばれるρ値を選択することができる。1以上の円錐状切込み304を設ける方法は、切込みの形状すなわちジオメトリのρ値(投影判別値)を約0.5よりも小さく維持し、それによって1以上の円錐状切込み304のジオメトリを楕円形状になるように制御するか或いはそうではなく決定するステップを含むことができる。
【0029】
本方法500は、ブロック506の後に終了する。他の実施形態では、例示的な方法は、より少ない又はより多い要素を含むことができ、それら要素は、上記と同様な順序で又は異なる順序で実行することができる。
【0030】
本発明の実施形態では、1以上のフィレット302及び1以上の円錐状切込み304を有する補修済みロータディスクを再使用する方法を提供する。ロータディスク100を補修するステップの後に、ロータディスク100は、ガスタービン内に据付けることができる。幾つかの事例では、補修は、関連するガスタービンのサイトで行うことができ、従ってロータディスク100の一部の又は全ての輸送コストを最少にすることができる。1以上の円錐状切込み304は、補修済みロータディスク100内に設けることができ、これにより、運転状態又は低温始動状態の間における一部の又は全ての接線方向及び/又は半径方向応力を低減することができ、このことは次に、少なくとも1つのダブテールスロット104の複数の鋭角コーナ部206の一部又は全てにおける1以上の割れ208の割れ発生開始寿命を向上させることができる。ここに示した本発明の実施形態は、ガスタービンのロータディスクの補修方法に限定されるものではない。少なくとも1つのダブテールスロット104を備えたロータディスク100に適用した補修方法の適用範囲は、発電及び推力発生を含む多くの同様なロータ装置に適用可能であることは、当業者には理解することができるであろう。本発明の態様は、複数のコーナ部に1以上の割れを有するロータディスクの廃棄を減少させることを含むことができる。さらに、本発明の実施形態による補修方法は、据付けサイト又は顧客サイトにおいて比較的容易に実施することができる。
【0031】
以上の記述は、実施例を使用して本発明の様々な実施形態を説明している。本発明概念から逸脱することなく、上記の実施形態において変更を加えることができることは、当業者には分かるであろう。本発明は、開示した特定の実施形態に限定されるものではなく、全てのそのような変更を本出願の技術的範囲内のものとして保護することを意図している。
【符号の説明】
【0032】
100 ロータディスク
102 基部
104 ダブテールスロット
106 軸方向線
112 前方側
202a、202b ダブテール壁
204 基部の幅
205 基部の深さ
206 鋭角コーナ部
208 割れ
302 フィレット
304 円錐状切込み
ΦR フィレットの半径
L1 フィレットの軸方向深さ
D 円錐状切込みの深さ
L 円錐状切込みの長さ
C 割れの長さ
402 円錐曲線
404 曲線スタートエッジ
406 曲線エンドエッジ
408 曲線アペックス
410 x軸
412 y軸
416 頂点
D1 x軸からの頂点の距離
D2 x軸からの曲線アペックスの距離

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基部(102)と1対のダブテール壁(202a、202b)間の少なくとも1つのダブテールスロット(104)とを含む、ガスタービン用のロータディスク(100)を補修する方法(500)であって、
前記ロータディスク(100)の基部(102)上で1以上の割れ(208)を識別するステップ(502)と、
前記1以上の割れ(208)を除去することによって前記ロータディスク(100)の基部(102)上に1以上のフィレット(302)を形成するステップ(504)と、
前記少なくとも1つのダブテールスロット(104)の1対のダブテール壁(202a、202b)間に1以上の円錐状切込み(304)を設けるステップ(506)と、を特徴とする、
方法(500)。
【請求項2】
前記ガスタービン内に前記補修済みロータディスク(100)を据付けるステップをさらに特徴とする、請求項1記載の方法(500)。
【請求項3】
前記1以上の割れ(208)を識別するステップ(502)が、約0.1インチよりも大きくかつ約0.25インチ以内の長さを有する1以上の割れ(208)を識別するステップ(502)を特徴とする、請求項1記載の方法(500)。
【請求項4】
前記1以上のフィレット(302)を形成するステップ(504)が、前記ロータディスク(100)の後方側における前記基部(102)の幅(204)又は深さ(205)の一部分にわたって1以上の割れ(208)を除去するステップを特徴とする、請求項1記載の方法(500)。
【請求項5】
前記1以上のフィレット(302)を形成するステップ(504)が、前記ロータディスク(100)の前方側(112)における前記基部(102)の幅(204)又は深さ(205)の一部分にわたって1以上の割れ(208)を除去するステップを特徴とする、請求項1記載の方法(500)。
【請求項6】
前記1以上のフィレット(302)を形成するステップ(504)が、約0.1インチの半径と約0.1インチよりも大きくかつ約0.25インチ以内の深さとを有する1以上のフィレット(302)を形成するステップ(504)を特徴とする、請求項1記載の方法(500)。
【請求項7】
前記1以上の円錐状切込み(304)を設けるステップ(506)が、前記ロータディスク(100)の前方側(112)に1以上の円錐状切込み(304)を設けるステップ(506)を特徴とする、請求項1記載の方法(500)。
【請求項8】
前記1以上の円錐状切込み(304)を設けるステップ(506)が、約0.5よりも小さいρ値を有する1以上の円錐状切込み(304)を設けるステップ(506)を特徴とする、請求項1記載の方法(500)。
【請求項9】
前記1以上の円錐状切込み(304)を設けるステップ(506)が、約0.05インチ〜約0.45インチの深さと約0.05インチ〜約0.55インチの長さとを有する1以上の円錐状切込み(304)を設けるステップ(506)を特徴とする、請求項1記載の方法(500)。
【請求項10】
基部(102)と1対のダブテール壁(202a、202b)間の少なくとも1つのダブテールスロット(104)とを特徴とする、ガスタービン用のロータディスク(100)であって、
前記ロータディスク(100)の基部(102)上に形成されて該ロータディスク(100)の基部(102)から1以上の割れ(208)を除去した1以上のフィレット(302)と、
前記少なくとも1つのダブテールスロット(104)の1対のダブテール壁(202a、202b)間で該ロータディスク(100)の基部(102)上に設けられた1以上の円錐状切込み(304)と、を特徴とする、
ロータディスク(100)。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図3E】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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