説明

ガスタービン設備及びガスタービン設備内の加湿系統からの不純物除去方法

【課題】
本発明は、ガスタービンの効率向上及び耐久性向上と、コスト低減を両立したガスタービンを提供することを目的とする。
【解決手段】
本発明は、空気を圧縮する圧縮機と、該圧縮機からの圧縮空気を加湿する加湿器と、該加湿器で加湿された圧縮空気と燃料とを混合燃焼して生成された排気ガスから水分を回収する水回収装置と、前記水回収装置から回収された水を再び前記水回収装置に供給する第一の系統と、前記水回収装置から回収された水を前記加湿器に供給する第二の系統に、それぞれ特性が異なる不純物を回収する分離装置を設置することを特徴とする。
【効果】
本発明によれば、ガスタービンの効率向上及び耐久性向上と、コスト低減を両立したガスタービンを提供することが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスタービン設備及びガスタービン設備内の加湿系統からの不純物除去方法に係る。
【背景技術】
【0002】
加湿器により加湿された加湿空気をガスタービンからの排気ガスの熱エネルギーにより蒸気にして、その蒸気をガスタービンの燃焼用空気に混入して燃焼器で混合燃焼させ、燃焼器で得られた高湿分の排気ガスでタービンを駆動させて、ガスタービン出力および発電効率の向上を図る高湿分ガスタービンサイクルが、特許文献1に開示されている。
【0003】
特許文献1では、排気ガス中の湿分を水として回収し(回収された水を回収水と称する)、この回収水を加湿器に供給して再利用する。
【0004】
【特許文献1】WO98/48159号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
燃焼器に供給された燃料のうち、燃焼用空気と混合燃焼せずにタービンへ排出された未燃分燃料が排気ガス中へ混入すると、排気ガス中の湿分を水として回収する水回収装置において、未燃分燃料は水と共に回収される。したがって、回収水中に未燃分燃料が不純物として混入する。又、排気ガス中に含まれる硫黄分なども回収水中に不純物として混入する。
【0006】
この回収水中の不純物は、圧縮機に加湿空気を供給する吸気噴霧装置を通して圧縮機入口へ流入し、圧縮機翼に付着して圧縮機の効率が低下するため、ガスタービン効率を低下させる。また、加湿器,空気冷却器内の配管に残留し、配管に不純物が付着して、この不純物により腐食速度が増加してガスタービンの寿命低下といった耐久性に問題が生じるため、特許文献1には水処理装置を備えた構成が開示されている。しかし、水回収装置と冷却器間で循環させる系統において不純物を除去することは考慮されていなかった。
【0007】
本発明は、ガスタービンの効率向上及び耐久性向上と、コスト低減を両立したガスタービンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、空気を圧縮する圧縮機と、該圧縮機からの圧縮空気を加湿する加湿器と、該加湿器で加湿された圧縮空気と燃料とを混合燃焼して生成された排気ガスから水分を回収する水回収装置と、前記水回収装置から回収された水を再び前記水回収装置に供給する第一の系統と、前記水回収装置から回収された水を前記加湿器に供給する第二の系統に、それぞれ特性が異なる不純物を回収する分離装置を設置することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ガスタービンの効率向上及び耐久性向上と、コスト低減を両立したガスタービンを提供することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施例について図面を参照して説明する。
【0011】
図1は、本発明の実施例を示すガスタービン設備の系統図である。ガスタービン設備は、空気を圧縮して吐出する圧縮機2,圧縮機から吐出した空気と燃料とを混合燃焼する燃焼器4,燃焼器が生成する燃焼ガスにより駆動されるタービン1,タービン1と圧縮機2に軸を介して連結されている発電機3を備えている。そして、発電機3は送電系統に連絡される。圧縮機2には、圧縮機2に供給される吸気を取り込む吸気室14が連結されている。例えば、吸気室14の先端には吸気フィルタ23が設置されている。吸気室14内に設置される吸気噴霧装置11は、微細液滴を噴霧する噴霧装置を備え、圧縮機2に供給する前に事前に加湿する。吸気噴霧装置11では、圧縮機に供給された加湿空気中の液滴が圧縮機内を流下中に気化するような水分量を供給する。本実施例では、吸気噴霧装置11は圧縮機の入口、例えば第1段静翼から間隔を有した吸気室14内に設置されており、吸気フィルタ23の下流側に設置している。
【0012】
圧縮機2から吐出された圧縮空気が燃焼器4に至る経路には、水滴を噴出して圧縮空気に加湿する加湿器7が設置される。加湿器7の後流側に、排気ガス13を熱源として、加湿器7が吐出する加湿空気と熱交換させる再生熱交換器12が設置される。再生熱交換器12により加熱された加湿空気は燃焼器4に供給される。加湿器7は、排気ガス13から回収された水分を供給する経路15を有する。
【0013】
加湿器7において圧縮空気へ水を供給する方法は、圧縮空気流に対して水滴を噴霧する方式や、圧縮空気の流れる流路に面する構造物に水を供給して圧縮気流と接触させる方式等が考えられる。いずれの方式においても、圧縮空気に注水される水が蒸発しやすいように、水の温度は高い方が好ましい。したがって、加湿器7へ水を供給する前に、タービン1の排気ガス13を熱源として水と熱交換する給水加熱器16を設置することが好ましい。この給水加熱器16に供給された水は、一旦加熱された後、加湿器7に入水として供給する。給水加熱器16を設置することにより、従来は排気ガスとして大気中に放出していた熱エネルギーを回収できるので、ガスタービン設備の出力および効率の向上にもつながり好ましい。
【0014】
そして、加湿器7に導かれる圧縮空気を熱源として熱交換する空気冷却器21を加湿器7の上流側に設置している。これにより、加湿器7に供給される水の温度が上昇し蒸発しやすくなるため、同じ加湿量の場合には加湿器7を小型化できるという利点がある。また、従来は排気ガスとして大気中に放出していた熱エネルギーを回収できるため、ガスタービン設備の出力および効率の向上につながるという利点がある。
【0015】
タービン1からの排気ガス13は、再生熱交換器12,給水加熱器16を通過した後、水回収装置17に導入される。水回収装置17は、冷却器18で冷却された水を注入水として利用し、排気ガス13中の湿分を水として回収する。水回収装置17で回収された水を回収水と称する。この回収水は、再び加湿器7に注入水として供給する経路15,吸気噴霧装置11に注入水として供給する経路8,冷却器18に注入水として供給する経路9,回収水が空気冷却器21に注入水として供給される経路22を通して、ガスタービン系統内を循環する経路を備えている。
【0016】
一般に、水回収装置17では排気ガス13に含まれた全ての湿分を水として回収することは困難であるため、不足する水をタンクのように系外からの補給水によって補うことが多い。補給水は、前述の経路15,8,9,22の少なくとも一つに系外からの補給水を利用し、残りの系統に回収水を主に利用するように設定してもよい。
【0017】
ここで、燃焼器4に注入されて燃焼することなく燃焼ガス中に混入した未燃分燃料が排気ガス13中に混入していると、水回収装置17内で未燃分燃料も同時に回収される。未燃分燃料が排気ガス13中へ混入する原因として、以下が考えられる。
【0018】
ガスタービンの燃焼器が失火した際、燃焼器内の燃焼が停止し、ガスタービンは停止する。通常、失火の際、燃料がガスタービン内へ流入しないようにする為、上流側の燃料バブル6を閉止する制御を行う。具体的には、燃焼器内には失火監視装置が設けられており、失火を検知すると制御装置5に信号を送信する。この信号によって、制御装置5は燃料バルブ6を閉止するよう制御する。
【0019】
しかし、タービン1内への燃料の流入を完全に防止することはできない為、若干量の燃料がタービン1内へ流入して未燃分燃料となり、排気ガス13中に混入する。この未燃分燃料が水回収装置17において水と同時に回収されると、回収水を注入水として使用する吸気噴霧装置11,加湿器7,冷却器18,空気冷却器21に未燃分燃料が排出されてしまう。
【0020】
また、燃焼ガスによって生成される排気ガス13中の硫黄分などの酸化物,バナジウムなどの重金属,サビなどの酸化性生物,シリカ,ナトリウムなどの微量元素も、使用燃料の種類,ガスタービンの運転環境などによっては回収水中に混入することが考えられる。本実施例では、回収水中に混入するこれらの成分と未燃分燃料を合わせて、不純物と称する。
【0021】
吸気噴霧装置11への注入水に不純物が混入した際、不純物が圧縮機翼に付着して圧縮機翼の性能が低下し、ガスタービンの効率が低下する。また、不純物の腐食成分による作用によって、圧縮機翼の腐食速度が増加して圧縮機翼の寿命が低下するという問題が発生する。
【0022】
加湿器7への注入水に不純物が混入した際、その腐食成分の作用によって加湿器7内の配管の腐食速度が増加してガスタービンの寿命が低下する。又、加湿器7内の不純物は、その後、再生熱交換器12へ排出される為、その腐食成分の作用によって再生熱交換器
12内の配管の腐食速度が増加してガスタービン設備の寿命が低下する。
【0023】
冷却器18や空気冷却器22への注入水に不純物が混入した際、その腐食成分の作用によって冷却器18内の配管の腐食速度が増加してガスタービン設備の寿命が低下する。
【0024】
上記のように、吸気噴霧装置11,加湿器7,冷却器18,空気冷却器22への注入水に不純物が混入すると、それぞれ問題が生じる。そこで、本実施例では、水回収装置17より回収された水を再び水回収装置17に再び供給する第一の系統である冷却器18へ通じる水系統(経路9)には分離装置32を設け、水回収装置17より回収された水を加湿器7と吸気噴霧装置11に供給する第二の系統であるガスタービン本体へ通じる水系統
(経路8,15,22)には分離装置33を設け、不純物を系外へ抜き出している。このように、分離装置32,33を設置することで、分離装置の下流側に設けられた冷却器
18,加湿器7,吸気噴霧装置11,空気冷却器21に不純物が混入した注入水が供給されることを抑制することが可能である。
【0025】
次に、本実施例の作用・効果を説明する。水回収装置17に循環させるのみの冷却器
18への注入水(第一の系統)と、ガスタービン本体へ供給する加湿空気のために使用される吸気噴霧装置11,加湿器7,空気冷却器21への注入水(第二の系統)とでは、除去が必要となる不純物の種類や、不純物除去後に必要とされる水質・純粋度が異なる。ガスタービン本体へ供給する注入水のために使用される吸気噴霧装置11,加湿器7,空気冷却器21への注入水では、圧縮機翼やタービン翼に付着する不純物がガスタービンの効率に影響を与えるだけでなく、翼の寿命も低下させるため、ほぼ全ての不純物を除去するための分離装置が必要である。一方、水回収装置17に再び供給するのみの冷却器18への注入水では、ガスタービン本体へ供給する注入水ほどの水質・純粋度は必要とされないが、冷却器18への注入水に不純物が混入した際、その腐食成分の作用によって冷却器
18内の配管の腐食速度が増加するため、やはりガスタービン設備の寿命が低下する。したがって、本実施例ではガスタービン本体へ供給する加湿空気のために使用される注入水のみではなく、冷却器18への注入水に対しても水処理を行うことで、ガスタービン設備の寿命を更に延ばし耐久性向上を図ることが可能である。
【0026】
また、ガスタービン本体へ供給する注入水と冷却器18へ供給する注入水では、流れる水の流量も異なる。水の流量は、ガスタービン設備の条件によって様々であるが、一般に冷却器18へ通じる水系統(経路9)の方が流量は大きく、ガスタービン本体へ通じる水系統と冷却器18へ通じる水系統との流量比は1:10〜1:80程度である。
【0027】
上記のような特徴を有するガスタービン本体へ通じる水系統(経路8,15,22)と冷却器18へ通じる水系統(経路9)に対して、水回収装置17が排出した水の全量を一つの分離装置に供給し、不純物を除去した処理水を2系統に分ける方法が考えられる。しかし、この方法では、それほど水質・純粋度を必要としない冷却器18への注入水に対しても過剰の処理を実施する必要がある。また、冷却器18へ通じる水系統は、ガスタービン本体へ通じる水系統よりも流量が多いため、大掛かりな不純物分離装置が必要である。そのため、不純物分離装置が高コストになるという問題があった。
【0028】
そこで、本実施例ではガスタービン本体へ通じる水系統(経路8,15,22)と冷却器18へ通じる水系統(経路9)、それぞれに特性が異なる不純物を回収するための最適な分離装置を設置することで分離装置にかかるコストの低減を図ることが可能である。したがって、分離装置を設置したことによるガスタービンの効率向上・耐久性向上とコスト低減とを両立させたガスタービン設備を提供することが可能である。
【0029】
また、本実施例では、前述の分離装置を、タンクから追加される水とともに冷却器18で冷却し水回収装置17に再び供給する第一の系統上の水回収装置17と冷却器18との間に設置することで、分離装置32下流側の冷却器18を保護することが可能である。同様に、水回収装置17より回収された水を加湿器7と吸気噴霧装置11に供給する第二の系統上の水回収装置17と加湿器7及び吸気噴霧装置11との間に分離装置33を設置することで、加湿器7及び吸気噴霧装置11を保護することが可能である。
【0030】
なお、本実施例では回収水が注入水として供給される空気冷却器21を備えていたが、空気冷却器21を備えないガスタービン設備も可能である。空気冷却器21を備えない場合、設備を省略することができるためガスタービン設備の設置スペースを減らすことが可能であり、コストも低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】実施例1におけるガスタービン設備の系統図である。
【符号の説明】
【0032】
7…加湿器、11…吸気噴霧装置、17…水回収装置、18…冷却器、21…空気冷却器、32,33…分離装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気を圧縮する圧縮機と、
該圧縮機からの圧縮空気を加湿する加湿器と、
該加湿器で加湿された圧縮空気と燃料とを混合燃焼して生成された排気ガスから水分を回収する水回収装置と、
前記水回収装置から回収された水を再び前記水回収装置に供給する第一の系統と、
前記水回収装置から回収された水を前記加湿器に供給する第二の系統に、それぞれ特性が異なる不純物を回収する分離装置を設置することを特徴とするガスタービン設備。
【請求項2】
事前に加湿された加湿空気を圧縮する圧縮機と、
該圧縮機からの圧縮空気を加湿する加湿器と、
該加湿器で加湿された圧縮空気と燃料とを混合燃焼して生成された排気ガスと前記加湿器が吐出する加湿空気とを熱交換させる再生熱交換器と、
該再生熱交換器より排出された排気ガスから水分を回収する水回収装置を備えたガスタービン設備であって、
前記水回収装置から回収された水をタンクから追加される水とともに冷却器に供給して前記水回収装置に再び供給する第一の系統と、前記水回収装置から回収された水を前記加湿器に供給する第二の系統に、それぞれ特性が異なる不純物を回収する分離装置を設置し、
前記第一の系統には前記水回収装置と前記冷却器との間に、前記第二の系統には前記水回収装置と前記加湿器との間に前記分離装置を設置することを特徴とするガスタービン設備。
【請求項3】
事前に加湿された加湿空気を圧縮する圧縮機と、
該圧縮機から吐出した圧縮空気と燃料とを混合燃焼する燃焼器と、
該燃焼器が生成する燃焼ガスにより駆動されるタービンと、
前記圧縮機に供給する前の空気を加湿する吸気噴霧装置と、
前記圧縮機から吐出された圧縮空気に加湿する加湿器と、
該加湿器で加湿された加湿空気と燃料とを前記燃焼器で混合燃焼して、タービンから排出された排気ガスと前記加湿器が吐出する加湿空気とを熱交換させる再生熱交換器と、
該再生熱交換器から排出された排気ガスより水分を回収する水回収装置と、該水回収装置に供給する水を冷却する冷却器を備えたガスタービン設備であって、
前記水回収装置より回収された水をタンクから追加される水とともに前記冷却器で冷却し前記水回収装置に再び供給する第一の系統と、前記水回収装置より回収された水を前記加湿器と前記吸気噴霧装置に供給する第二の系統に、それぞれ特性が異なる不純物を回収する分離装置を設置し、
前記第一の系統には前記水回収装置と前記冷却器との間に、前記第二の系統には前記水回収装置と前記加湿器及び前記吸気噴霧装置との間に分離装置を設置することを特徴とするガスタービン設備。
【請求項4】
請求項1〜3記載のガスタービン設備であって、
前記第一の系統と前記第二の系統に設置された分離装置は、除去する不純物の種類や、不純物除去後の水質,純粋度を異ならしめることを特徴とするガスタービン設備。
【請求項5】
請求項3記載のガスタービン設備であって、
前記吸気噴霧装置は、前記圧縮機に供給された加湿空気中の液滴が圧縮機内を流下中に気化する水分量を供給するように構成されることを特徴とするガスタービン設備。
【請求項6】
空気を圧縮して吐出する圧縮機と、
該圧縮機からの圧縮空気に加湿する加湿器と、
該加湿器で加湿された圧縮空気と燃料とを混合燃焼して生成した排気ガスから水分を回収する水回収装置を備えたガスタービン設備内の加湿系統からの不純物除去方法であって、
前記水回収装置から回収された水を前記水回収装置に再び供給する途中で不純物を除去し、前記水回収装置から回収された水を前記加湿器に供給する途中で該不純物と特性が異なる不純物を回収することを特徴とするガスタービン設備内の加湿系統からの不純物除去方法。

【図1】
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【公開番号】特開2006−2570(P2006−2570A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−176337(P2004−176337)
【出願日】平成16年6月15日(2004.6.15)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)