説明

ガスタービン

【課題】ケーシング冷却による間隙制御において、冷却空気供給量の増加を抑制したガスタービンを提供することにある。
【解決手段】タービン軸105を内包し、冷却空気ヘッダ21及び冷却流路24を備えたタービンケーシング19と、該ケーシングの排気側に接続され、排気ディフューザ冷却流路26を有する排気ディフューザ113を備えたガスタービン101において、複数のインピンジ冷却孔が形成されたプレート22を前記冷却空気ヘッダ内部に設け、前記インピンジ冷却孔から導入された冷却空気が前記ケーシング冷却流路から前記排気ディフューザ冷却流路に至る経路を形成したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はタービン軸やタービン動翼等を内包するケーシングとのクリアランスをコントロールするガスタービンに関する。
【背景技術】
【0002】
ガスタービンは、ケーシング(静止体)の内部にロータ(回転体)を内包した構成となっている。ロータ外周部には、タービン動翼が設けられており、タービン動翼の先端(最外周側)とケーシング内周に取り付けられたシュラウドの間には、間隙が存在している。高温高圧の主流ガスがこの部分を通過すると、漏れ損失が生じ性能が低下するため、タービンの性能向上のためには、タービン動翼とシュラウド間の間隙は小さい方が良い。
【0003】
一方で、動翼先端とケーシングの間隙が小さすぎると動翼先端とシュラウドが接触し破壊の原因になる。この間隙はロータ、ケーシング等の熱膨張、遠心伸びなどにより、ガスタービン運転中に変化するため、全運転状況下において接触による破損が生じないようにケーシングの組み立て時(起動時)間隙を決定している。
【0004】
一般に、産業用ガスタービンではこの最小間隙が起動途中に現れる。これは、熱容量の違いなどの要因により、ロータよりもケーシングの方が温まりにくいことによる。定常運転時以外において間隙が最小となると、この定常運転時以外の時に接触が生じないような間隙に設計せねばならず、定格運転時の間隙は起動途中よりも大きくなり、好ましくない過大な間隙にて運転することとなる。
【0005】
この好ましくない過大な間隙を避けるために、例えば特許文献1に示されるいくつかのガスタービンでは、ケーシング外周にマニホルドを設置し、ケーシング外周を空気流で冷却することでケーシングの熱膨張を抑制し間隙を制御している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−196490号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ガスタービンの高温部品は、高温強度、熱変形、材料コストといった観点から圧縮機の抽気空気、あるいは、別置のブロワ装置による冷却空気を供給することにより温度制御を行っている。冷却を行う高温部品としては、燃焼器、タービン翼、排気ディフューザなどが挙げられる。
【0008】
ガスタービン性能向上のためのケーシング冷却においても冷却空気の供給を必要とし、一般にはブロワが使用されている。また、ケーシング温度は数百℃にも達することから、これよりも空気温度の低い圧縮機抽気空気の使用も可能である。
【0009】
これら圧縮機抽気空気やブロワ等による冷却空気の供給には動力が必要であり、単にケーシング冷却システムを追加しただけでは、冷却空気消費量が増加し、冷却空気供給動力も増加するため、間隙制御による性能向上の一部は、この動力の増加によって相殺されることとなる。
【0010】
本発明の目的は、ケーシング冷却による間隙制御において、冷却空気供給量の増加を抑制したガスタービンを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明のガスタービンは、タービン軸を内包し、冷却空気ヘッダ及びケーシング冷却流路を備えたケーシングと、該ケーシングの排気側に接続され
、排気ディフューザ冷却流路を有する排気ディフューザを備えたガスタービンにおいて、複数のインピンジ冷却孔が形成されたプレートを前記冷却空気ヘッダ内部に設け、前記インピンジ冷却孔から導入された冷却空気が前記ケーシング冷却流路から前記排気ディフューザ冷却流路に至る経路を形成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、少ない冷却空気流量の増加でケーシング冷却可能なガスタービンを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施例であるガスタービンの部分断面図。
【図2】本発明を適用するガスタービンの一実施の形態の概念図。
【図3】本発明の一実施例であるガスタービンの部分断面図。
【図4】従来のガスタービンの動翼先端間隙特性図。
【図5】本発明の一実施例であるガスタービンの動翼先端間隙特性図。
【図6】図1に示すインピンジメント冷却プレート部分の拡大図。
【図7】ケーシングの熱変形状態を示す概念図。
【図8】本発明の一実施例であるガスタービン冷却系統図。
【図9】ケーシング中心とタービン軸中心が一致していない状態を示す概念図。
【図10】本発明の一実施例であるガスタービン冷却系統図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
特許文献1に記載の発明は、ケーシング外面にインピンジマニホールドを設け、ケーシングをインピンジ冷却している。この冷却空気はブロワより導かれ、ケーシングをインピンジ冷却した後に大気開放されるため、ガスタービンの冷却空気の総使用量は、ケーシングの冷却分だけ増加することになる。
【0015】
ガスタービンの排気ディフューザなどを含む高温部分は通常、圧縮機からの抽気空気や、別置のブロアによる空気によって冷却されている。圧縮機やブロア等による冷却空気の供給には動力が必要である。間隙調整のためにケーシングを冷却し冷却空気量が増加すると、冷却空気供給動力も増加するため間隙制御による性能向上の一部は、この動力の増加によって相殺されてしまう。このため、ケーシング冷却システムの追加を想定した場合、より少ない冷却空気量の増加でケーシングを冷却できることが望ましい。
【0016】
また、タービン動翼とシュラウド間の間隙は、極力小さいことが望ましいが、あまりに小さ過ぎると、動翼とシュラウドが接触した場合に破損が生じる恐れがある。このため、後段側では、例えば、ハニカムシールと、シュラウドフィンの組み合わせなどを用いて、接触を許容することで製作公差の影響や、ケーシングの歪の影響を吸収し、間隙を小さく保っている。主流ガス温度の高いタービン前段側では、耐熱性の問題からハニカムシールを使用できないため、動翼先端間隙にマージンを設けることで、製作公差の影響や、ケーシングの歪の影響による接触を回避している。
【0017】
このように、ガスタービン前段側は後段側に比べマージンを設けた分、間隙が大きくなりやすいため、前段側の間隙制御量をより大きくできることが望ましい。
【0018】
圧縮機から抽気された空気は、高温部品の冷却空気として、ガスタービン外側に設けられた抽気配管を通じてタービン側へと導かれる。抽気配管量の増加はコストの増加につながるため、例えば圧縮機中間段と後段のように抽気段は数段に限定されている。この抽気段数は、一般に冷却対象であるガスタービン段数よりも少ない。過剰に高圧な空気の使用は損失の増加をもたらすが、抽気段が制限されているため若干過剰な圧力にて冷却空気が供給されている部分が存在する。この過剰な圧力を適切な圧力に調整するために、オリフィスなどにより圧損を生じさせているが、このようなオリフィスによる圧力調整は圧力の浪費となるため避けることが望ましい。
【0019】
以下、実施例を用いて説明する本発明によれば、少ない冷却空気流量の増加でケーシング冷却可能、かつより好ましい間隙制御が可能なガスタービンを提供することができる。さらに排気ディフューザの歪を低減可能なガスタービンを提供することができる。まず、ガスタービンの全体系統構成を、図2を用いて説明する。
【0020】
図2は、本発明を適用するガスタービンの全体系統構成図を示す。
【0021】
ガスタービン101は、主に、圧縮機102,燃焼器103,タービン104から構成される。圧縮機102は、大気空気111を圧縮して圧縮空気106を生成し、生成された圧縮空気106を燃焼器103へ送る。燃焼器103は、圧縮機102により生成された圧縮空気106と燃料とを混合燃焼させて燃焼ガス107を生成し、タービン104へ排出する。
【0022】
タービン104は、燃焼器103から排出されて圧縮空気のエネルギーを高められた燃焼ガス107により、タービン軸105に回転力を生じさせる。タービン軸105の回転力によって、ガスタービン101に接続される機器109(発電機,ポンプ,スクリュー等の被駆動機)を駆動させる。燃焼ガス107はエネルギーをタービン104で回収された後に、タービン104より排気ディフューザ113を経て、排気112として排出される。
【0023】
また、圧縮機102から抽気された空気、あるいはブロワ装置(図示せず)による空気は、タービン冷却空気110として燃焼器103を経ずにタービン104あるいは排気ディフューザ113へ供給される。
【0024】
図3に、ガスタービンの部分断面図を示す。1は第1段静翼、2は第1段動翼、3は第2段静翼、4は第2段動翼、5は第3段静翼、6は第3段動翼、7は第4段静翼、8は第4段動翼であり、9はタービン内の燃焼ガス107の流れ方向を示す。
【0025】
第1段動翼2は、第1段ホイール10の外周に接続されており、第2段動翼4が接続された第2段ホイール11、圧縮機102の構成要素である圧縮機ロータ20、及びスペーサ14とともにスタッキングボルトによりスタッキングされ、高圧側のタービン軸105を構成している。また、第3段動翼6は、第3段ホイール12の外周に接続されており、第4段動翼8が接続された第4段ホイール13、発電機などの機器109に接続されたロータ、及びスペーサ14とともにスタッキングボルトによりスタッキングされ、低圧側のタービン軸105を構成している。タービン軸105は、燃焼器103から排出される燃焼ガス107のエネルギーを第1段動翼2、第2段動翼4、第3段動翼6及び第4段動翼8で回収し、圧縮機102及びタービン軸端部に接続された機器109を駆動する。
【0026】
タービン軸105は、タービンケーシング19に内包されている。タービンケーシング19には、第1段静翼1、第2段静翼3、第3段静翼5、第4段静翼7、第1段シュラウド15、第2段シュラウド16、第3段シュラウド17、第4段シュラウド18がケーシング内周側に接続されており、さらに、第2段静翼3、第4段静翼7の内周側にはダイヤフラム27が接続されている。
【0027】
第1段動翼2と第1段シュラウド15、第2段動翼4と第2段シュラウド16、第3段動翼6と第3段シュラウド17、第4段動翼8と第4段シュラウド18、スペーサ14とダイヤフラム27の間には間隙が設けられており、この間隙が、静止体と回転体の界面となっている。
【0028】
この間隙は、ガスタービンの運転状況により変化する。図4に従来のガスタービンの間隙の変化トレンドを示す。まず、起動直後よりタービン軸105は回転速度が上昇し、遠心力により径方向に伸び、間隙が縮小する。その後、主流ガスの温度上昇により、タービン軸105、シュラウド15,16,17,18、タービンケーシング19が熱膨張する。タービン軸105は径方向外側に膨張し、シュラウド15,16,17,18は径方向内側に膨張し間隙を縮小させる。タービンケーシング19は径方向外側に膨張し間隙を拡大させる。一般に、タービン軸105、およびシュラウド15,16,17,18はタービンケーシング19に比べて温度上昇しやすいため、タービンが熱的に静定する前、具体的には、定格負荷到達時近傍で最小間隙を示す。このため、定常運転中の間隙は最小間隙よりも大きなものとなる。
(実施例)
図1を用いてケーシング冷却構造を説明する。図1はタービンケーシング19の拡大図である。タービンケーシング19の前段側外周部に冷却空気ヘッダ21が環状空間を形成するために設けられており、冷却空気ヘッダ21の内部には分割構造のインピンジメンント冷却プレート22が環状に設置されており、さらに、冷却空気ヘッダ21は冷却空気ヘッダカバー23により冷却空気ヘッダ21の外部空間と区画され、環状空間が形成されている。インピンジメンント冷却プレート22及び冷却空気ヘッダカバー23はケーシング19の周方向に沿って、複数設置される。各冷却空気ヘッダカバー23には冷却空気配管が接続される。冷却空気ヘッダ21の端面には、タービンケーシング19内を軸方向後段側へと伸びる冷却流路24が接続されている。冷却流路24は略円形の断面を有し、周方向に断続的に配置されている。
【0029】
通常、排気ディフューザ113の冷却に使用される冷却空気110は、冷却空気配管より冷却空気ヘッダ21へと導かれる。冷却空気110は環状の冷却空気ヘッダ21に設置されたインピンジメンント冷却プレート22に設けられたインピンジ孔より噴流となって噴出し、タービンケーシング19を衝突冷却する。その後、冷却空気110は冷却流路24内をタービン軸方向後段側へと流下する。冷却流路24は連通孔25によって、排気ディフューザ冷却通路26へと接続されており、冷却流路24内を流下した冷却空気は、排気ディフューザ冷却通路26へ供給され、排気ディフューザ113を冷却する。
【0030】
図6は、図1に示すインピンジメント冷却プレート22の拡大図である。環状のインピンジメント冷却プレート22には複数のインピンジ孔28が形成されている。このインピンジ孔28は、少なくとも、ケーシング外周面と対向する面に形成される。冷却空気ヘッダカバー23より供給された冷却空気110は複数のインピンジ孔28より噴射される。インピンジ孔28から噴出したインピンジメント冷却空気110aは、インピンジメント冷却プレート22と対向するケーシングの外表面に衝突する。この衝突噴流により、その外周側からケーシングは冷却される。
【0031】
図5に、本実施例によるガスタービンの間隙特性を示す。ケーシング冷却実施により、径方向外側に膨張するタービンケーシング19の変形量を減少することができる。この結果、ケーシングを冷却しない場合と比較して、起動から定常状態に至る過程における最小間隙と定常状態での間隙の差が小さくなり、定常状態での間隙を従来に比べ小さく保つことができる。このとき、最小間隙は従来のものと同程度とすることができるため、ガスタービンの信頼性を損なうことなく性能を向上させることが可能となる。
【0032】
また、ガスタービン前段側では、間隙の変化に追従可能なシール構造を使用することが困難である。これは、ラビリンスシールなどを適用するには、翼端にシュラウドを形成することが必要であるが、シュラウドを形成すると翼端面の重量が増し、翼の応力が過大になるからである。さらに耐熱性の問題によりハニカムシール等の接触を許容したシール構造を用いることが困難である。漏れ損失を抑制するためには、間隙を小さく保つことが必要となる。しかし、破損などを防ぐため、マージンをもたせた設計をせざるを得ない。一方、後段側では、主流ガスの温度が低いため接触を許容できるハニカムシールを適用できるため、マージンを小さくした設計が可能であり、間隙を小さく設計することが可能である。このように、前段側の間隙が過大になる傾向があるため、前段側の間隙制御量を大きくできること、すなわち、前段側のケーシング冷却効果を高くできることが望ましい。
【0033】
本実施例では、冷却空気ヘッダ21設置について軸方向に大きな制限はない。また、インピンジメンント冷却プレート22は冷却空気ヘッダカバー23の内側に取り付けられている。したがって、冷却空気ヘッダカバー23はタービンケーシング19に対して、インピンジメンント冷却プレート22と一体的に取り付け及び取り外しが可能となる。以上の構成により、冷却空気ヘッダ21に対するインピンジメンント冷却プレート22の配置が容易となる。このため、ケーシング非冷却時に間隙を大きくせざるを得ない前段側の間隙を小さく保つことができる。
【0034】
また、本実施例の構造では、冷却流路24と排気ディフューザ冷却通路26は連通孔25によって接続されており、ケーシング冷却を終えた冷却空気110は連通孔25を経て排気ディフューザ冷却通路26へと導かれ、排気ディフューザ113を冷却する。従来のガスタービンでは、排気ディフューザ113とケーシング19をそれぞれ異なる空気で冷却していたが、本実施例のようにケーシングの冷却空気を排気ディフューザの冷却空気として再利用することで、ケーシング冷却の適用にともなう冷却空気量の新たな増加を抑えることができる。
【0035】
さらに、冷却流路24に冷却空気110が流れることにより、ケーシング後側が対流冷却により冷却され、タービン後段側の間隙縮小を可能とする。
【0036】
次に、本発明の他の実施例について図7,図8を用いて説明する。図7は、ケーシングに熱変形が発生した状態を示す概念図、図8は、ガスタービン冷却系統図である。図7に示すように、ケーシング19はフランジ35を介して接続される上半ケーシング19aと、下半ケーシング19bとに分割して構成されている。このように、フランジ35を備えたケーシング19においてプラント起動時等に熱伸びが発生すると、上半ケーシング19a,下半ケーシング19bの頂点側がフランジ側よりも相対的に熱伸び量が大きくなる。詳細には、頂点側の部分が左右方向に大きく熱伸びし、フランジ側の部分が上下方向に小さく熱伸びする。これは、ケーシング19の分割面に形成されたフランジ35の存在により、フランジ側の部分が頂点側の部分より熱容量が大きくなるためである。この結果、図7中の実線で表すように、ケーシング全体としては不均一な熱伸び(変形)が発生し、フランジ側の部分が左右両外側に大きく移動してしまう。
【0037】
そこで、本実施例では、相対的に熱伸びが大きくなるケーシングの頂点側に供給する冷却空気流量を、相対的に熱伸びが小さいフランジ側に供給する冷却空気流量よりも大きくするように構成したものである。以下、均一なクリアランスコントロールを実現する本実施例の構造について、図8を用いて説明する。
【0038】
上半ケーシング19a,下半ケーシング19bの冷却空気ヘッダ内部には、ケーシングの周方向に沿って、インピンジメント冷却プレート22が複数設置される。図8では、8個のインピンジメント冷却プレート22を設置した例を示している。ここで、便宜上、上半ケーシング19a及び下半ケーシング19bの頂点側(上下側)に配置されたインピンジメント冷却プレートを頂点側インピンジメント冷却プレート22a、フランジ35側に配置されたインピンジメント冷却プレートをフランジ側インピンジメント冷却プレート22bと称する。各インピンジメント冷却プレートによって形成される空間(図6に示す、インピンジメント冷却プレート22と冷却空気ヘッダカバー23によって形成される空間)の各々には、図示しない冷却空気ヘッダカバー23を介して複数の冷却空気供給系統38が接続される。冷却空気供給系統38は、インピンジメント冷却するための冷却空気(冷却媒体)を供給する。また、冷却空気供給系統38は共通系統38aと、この共通系統38aから分岐した複数の分岐系統38b,38cによって構成される。共通系統38aから頂点側インピンジメント冷却プレート22a側に冷却媒体を供給する系統を分岐系統38b、フランジ側インピンジメント冷却プレート22bに分岐した系統を分岐系統38cとしている。分岐系統38bは、頂点側インピンジメント冷却プレート22aによって形成される空間に冷却空気を供給する。分岐系統38cは、フランジ側インピンジメント冷却プレート22bによって形成される空間に冷却空気を供給する。そして、これら分岐系統のうち、フランジ側インピンジメント冷却プレート22bが形成する空間に接続された分岐系統38cに、冷却空気の流量を調整する流量調整機構としてオリフィス30を設置している。
【0039】
上述した本実施例によれば、共通系統38aからフランジ側インピンジメント冷却プレート22b側の分岐系統38cに分岐する冷却空気の流量が一定流量以上とならないように、オリフィス30によって調整される。この結果、ケーシングの頂点側とフランジ側との熱伸び周方向分布を均一化させ、ガスタービン前段側のタービン翼先端間隙を均一に縮小可能とする。
【0040】
上記の他の本発明の実施例について、図9、図10を用いて説明する。図9は、ケーシング中心とタービン軸中心が一致していない状態を示す概念図、図10は、本実施例のガスタービン冷却系統図である。製作公差や経時的なケーシングの変形等により、図9のようにケーシング19とタービン軸105の中心は完全には一致しないため、タービン動翼とシュラウド間の間隙の大きさには周方向の偏りがある。ケーシング全周を均一に冷却する場合には全周一様にケーシングの熱伸びが小さくなるため、間隙の不均一は解消できない。
【0041】
本実施例では、周方向のケーシングの冷却量を調節する機構を設置し、ケーシングの径方向および周方向の変形を制御することで、上記の間隙の不均一を解消する。
【0042】
図10に示すように、ケーシング19に設置されたインピンジメント冷却プレート22は周方向に区切られている。各インピンジメント冷却プレート22によって形成される空間には、冷却空気ヘッダカバー23(図10では便宜上、示さない)を介して複数の冷却空気供給系統38が接続されている。冷却空気供給系統38は、共通系統38aと、この共通系統38aから分岐した複数の分岐系統38dによって構成される。各分岐系統38dは、各インピンジメント冷却プレート22によって形成される空間に冷却空気を供給する。各分岐系統38dに、冷却空気の流量を調節する流量調節機構としてオリフィス30を設置する。以下、オリフィス径の設定方法について説明する。
【0043】
ガスタービンを組み立てた際には、設定間隙公差内であることを確認するために、静止状態のタービン動翼先端(回転体)とシュラウド(静止体)間の間隙を周方向に複数点測定している。この間隙測定記録からロータ中心とケーシング中心のずれδを把握し、ガスタービン運転中にどの方向にどれだけ間隙を縮小すれば間隙の不均一を解消できるかを求め、目標とする間隙縮小量を決定する。
【0044】
また、事前に有限要素法を用いた解析や実機試験による間隙計測結果に基づき、各位置のオリフィス径の大きさとケーシング変形量との関係を評価しておく。各オリフィス径を独立に変化させたときのケーシング変形量が分かれば、複数のオリフィス径を同時に変更した場合のケーシング変形量は、それぞれの変形量を合成して予測できる。
【0045】
間隙測定記録から目標間隙縮小量を決定し、オリフィス径とケーシング変形量の関係から目標間隙縮小量を達成する適切なオリフィス径と配置を決定する。ガスタービンの組立時に数種類のオリフィスを事前に用意しておくことで、間隙測定後にオリフィス径を決定し、短時間で適切なオリフィスに交換する。
【0046】
さらに、定期点検等の分解、再組立ごとに静止状態の間隙は測定するため、間隙測定記録に基づきオリフィス径を再設定することにより、経時的なケーシングの変形にも対応できる。
【符号の説明】
【0047】
1 第1段静翼
2 第1段動翼
3 第2段静翼
4 第2段動翼
5 第3段静翼
6 第3段動翼
7 第4段静翼
8 第4段動翼
9 主流ガスの流れ方向
10 第1段ホイール
11 第2段ホイール
12 第3段ホイール
13 第4段ホイール
14 スペーサ
15 第1段シュラウド
16 第2段シュラウド
17 第3段シュラウド
18 第4段シュラウド
19 タービンケーシング
19a 上半ケーシング
19b 上半ケーシング
20 圧縮機ロータ
21 冷却空気ヘッダ
22 インピンジメント冷却プレート
22a 頂点側インピンジメント冷却プレート
22b フランジ側インピンジメント冷却プレート
23 冷却空気ヘッダカバー
24 冷却流路
25 連通孔
26 排気ディフューザ冷却通路
27 ダイヤフラム
28 インピンジ孔
30 オリフィス
35 フランジ
38 冷却空気供給系統
101 ガスタービン
102 圧縮機
103 燃焼器
104 タービン
105 タービン軸
106 圧縮空気
107 燃焼ガス
110 冷却空気
110a インピンジメント冷却空気
111 大気空気
112 排気
113 排気ディフューザ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タービン軸を内包し、冷却空気ヘッダ及びケーシング冷却流路を備えたケーシングと、該ケーシングの排気側に接続され、排気ディフューザ冷却流路を有する排気ディフューザを備えたガスタービンにおいて、
複数のインピンジ冷却孔が形成されたプレートを前記冷却空気ヘッダ内部に設け、前記インピンジ冷却孔から導入された冷却空気が前記ケーシング冷却流路から前記排気ディフューザ冷却流路に至る経路を形成したことを特徴とするガスタービン。
【請求項2】
請求項1に記載のガスタービンにおいて、
前記プレートは、複数段によって構成されるタービン段落の前段側に対応する位置のケーシングをインピンジ冷却するように配置されたことを特徴とするガスタービン。
【請求項3】
請求項1に記載のガスタービンにおいて、
前記ケーシングは、前記冷却空気ヘッダを外部空間と区画するカバーを有することを特徴とするガスタービン。
【請求項4】
請求項3に記載のガスタービンにおいて、
前記カバーは、その内側に前記プレートが取り付けられ、
前記ケーシングに対して前記プレートと一体的に取り付け及び取り外しが可能に構成されていることを特徴とするガスタービン。
【請求項5】
請求項1に記載のガスタービンにおいて、
前記ケーシングは、フランジを介して接続される上半ケーシングと下半ケーシングに分割して構成され、
前記プレートは前記ケーシングの周方向に沿って複数設置され、
前記プレートによって形成される空間の各々に冷却空気を供給する冷却空気供給系統を備えるとともに、
前記複数のプレートのうち、前記フランジ側に位置するプレートが形成する空間に接続された冷却空気供給系統に、冷却空気の流量を調整する流量調整機構を設けたことを特徴とするガスタービン。
【請求項6】
請求項1に記載のガスタービンにおいて、
前記ケーシングは、フランジを介して接続される上半ケーシングと下半ケーシングに分割して構成され、
前記プレートは前記ケーシングの周方向に沿って複数設置され、
前記プレートによって形成される空間の各々に冷却空気を供給する冷却空気供給系統を備えるとともに、
前記冷却空気供給系統の各々にオリフィスを設け、
前記ガスタービンの周方向の各位置の、ガスタービン静止状態時における回転体と静止体との間隙値と、オリフィスの径の大きさとケーシングの変形量との関係に基づき、前記冷却空気供給系統の各々に設けられたオリフィスの径を設定することを特徴とするガスタービン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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