説明

ガスハイドレート塊状体の解砕装置

【課題】ガスハイドレートをペレットに成形した時に発生する固められた小片を、微粉体状に解砕する装置を提供する。
【解決手段】ガスハイドレートの塊状物20aを微粉状に解砕する装置1であって、その装置は小突起部9を多数配置した研削板8と、塊状物20aを押圧して供給する供給装置12とからなり、小突起部9は、押圧される塊状物を受入れるための屋根形をした第1開口部9cと、この第1開口部9cに連続し、研削板8の下方に開口した第2開口部9を有しているガスハイドレート塊状物の解砕装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、所定の温度および圧力下で、原料ガスと水とを反応させてガスハイドレートを生成し、しかる後に、このガスハイドレートを造粒機によってガスハイドレートペレットを製造する際に発生するガスハイドレートの小粒を効率的に微粉に解砕する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、所定の温度と圧力下において、原料ガスと水と反応させてガスハイドレートスラリーを生成し、このスラリーを脱水した後にガスハイドレートペレット(例えば球状体)に成形して貯槽に貯蔵することが提案されている(例えば、文献1参照)。
【0003】
また、生成された粉雪状のガスハイドレートを1対のローラー間で挟持・プレスして球形や楕円形などに成形することが提案されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−104256号公報
【特許文献2】特開2007−270030号公報
【0005】
前記特許文献2に記載された発明は、表面に所定間隔で半球状の凹部を形成して二つのローラーを、凹部が合致するように対面させ、その間に原料となるガスハイドレートのパウダーを供給し、両ローラーの間でハイドレートペレットを加圧成形する成形装置が記載されている。
【0006】
しかし、この成形装置で得られる成形体は、添付図の図5に記載されているように、薄い板状部分20に所定間隔を置いて球状のペレット21を分散して成形した、いわゆる板チョコのような成形体20Aが成形される。
【0007】
前記成形体20Aのうち球状ペレット21は、目的とする生産物であるが、板状部分20は生産物ではなく、別の工程で処理されるものである。
【0008】
ここに図6を参照してハイドレートペレットの製造工程を説明すると、第1生成器22に原料ガスgと原料水wを供給して微細なガスハイドレートからなるスラリーSを製造し、これをポンプ23によって脱水機24の下部から供給し、スラリーSを上方に押し込みながら重力脱水して脱水粉体P(パウダー状のガスハイドレート)とし、これを移送装置25によってペレタイザー26に供給し、図5に示すような成形体20Aが成形される。
【0009】
その成形体20Aを分割装置27(図6)に供給して板状部分20と球状のペレット21とに分割する。この例における分割装置27は、下部にスクリーン29を配置した円筒体28の内部にスクリューコンベア30を支持した構造を有しており、供給口31より成形体20Aを供給し、スクリューコンベア30で攪拌・粉砕しながら移送することによって板状部分20とペレット(球状体)21とが分離される。
【0010】
そしてペレット21は、円筒体28の先端の排出口より排出される。一方、板状部分20は、スクリューコンベア30で攪拌される際に壁面とスクリューとの間で押圧作用を受けて細かく破砕され、スクリーン29よりホッパ32に排出され、排出口33より本発明に係る微細化できる解砕装置1(図1)へ移送される。
【0011】
前記分割装置27で分離された板状部分20は、前の工程の第1生成器22で生成され、脱水され、時には第2生成器によって更にハイドレート含有率を増加させたガスハイドレートの完成品である。従って、微細化されたガスハイドレートを第1生成器22に供給すれば、ここで水和反応が進み、ガスハイドレートの生産性を大きく向上させることができる。
【0012】
しかしながら、前記分割装置27で分割されたハイドレートの板状部分20は、細分化されたといっても、まだ大きな塊状体であり、これをそのまま第1生成器22に供給した場合は、ガスハイドレートの結晶の本来の大きさが50ミクロン程度であるのに対して遥かに大きいので、部分的に反応にムラが発生し、良好なスラリーの製造を阻害することになるのである。
【0013】
更に、塊状体が3〜5mmのものは、スラリーポンプでは移送することができず、反応工程では再利用が困難であるという問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
前記したように従来技術においては各種の問題があるので、これを解決するために本発明者等は、ハイドレートの塊状体を、餅つき機のような装置で解砕する方法を試みた。しかし、この方法によると、恰も粉雪を付き固めるような状態で、解砕されるよりも突き固める作用の方が顕著となり、微粉化することが困難であった。
【0015】
また、グラインダーなどの粉体製造装置を使用して微粉体化を試みたが、やはりこれらの方法によっても、個々に分離された粉雪のような粉体とならずに、それよりも大粒の集合体となることが多かった。
【0016】
更に、大根の卸し金のような装置(本発明では、これの作用を利用して実現した。)や、網目や多孔板を使用した装置によってガスハイドレートの塊状体を摺り卸す方法を検討したが、いずれの方法も“目詰まり”して微細な粉状にすることができなかった。これは、ガスハイドレートの粉状体が湿った粉雪のように固まり易い性質を持っていることが原因であると考えられる。
【0017】
本発明は、前記した従来の各種の解砕装置の欠点を解消し、ガスハイドレートに適した性能を持つ装置を提供することを目的とするものであって、ハイドレートの塊状体を効率的に解砕することができる装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、次のように構成されている。
【0019】
第1の発明は、ガスハイドレートの塊状物を微粉状に解砕する装置であって、前記装置は小突起部を多数配置した研削板と、この研削板の表面に塊状物を押圧供給する供給手段からなり、前記小突起部は押圧される塊状物を受入れるための屋根形をした第1の開口部と、この第1開口部に連続し、前記研削板の下方に開口した第2開口部を有していることを特徴としている。
【0020】
第2の発明は、前記研削板に形成された小突起部に設けた第1開口部の最大高さ(h)よりも前記第2開口部の長さ(b)を大きく開口したことを特徴としている。
【0021】
第3の発明は、ガスハイドレート塊状物の加圧手段は、回転体と、その回転体の回転軸に略並行して設けた刃体とからなり、この刃体は、前記研削板の表面に対して傾斜した押圧面を有し、ガスハイドレート塊状物を前記小突起部の第1開口部に押し込むための傾斜面を有していることを特徴としている。
【発明の効果】
【0022】
前記のように構成された本発明は、研削板8とこれに対面して相対的に移動しながらガスハイドレートの小片(塊状体)を押圧供給する刃体(供給装置)からなり、研削板8に形成された小突起部9(図3)の前側の第1開口部9cを形成する屋根部9aの最大高さhよりも、排出部である第2開口部9dの長さ(b)を長く形成したことによって、第1開口部9cの屋根部9bで破砕された破砕小片は、目詰まりがなく円滑に第2開口部9dより円滑に排出されることから、小突起部9にハイドレートが詰まって硬化し、後から押し込まれるハイドレートの小片が全く処理することができなくなるような事態が発生することもなく、円滑に供給され、解砕され、そして排出されることになる。
【0023】
ガスハイドレートは湿った粉雪のように固まり易いので従来の装置の研削板にあけた孔の前縁に、少しでも詰まると微粉砕が困難であった。
【0024】
しかし、本発明は前記のように構成されており、微粉砕が可能となったことから、この微粉砕されたガスハイドレートを生成器に円滑にスラリーポンプなどを利用して供給することが可能となった。特に、一旦反応が終了しているガスハイドレートを再利用して再びガスハイドレートを生成することによって生産性を高めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る解砕装置の要部を示す側面図である。
【図2】図1に示した装置の研削板と移動刃体との関係を示す図である。
【図3】(A)は研削板の拡大断面図、(B)は小突起部の平面図、(C)は小突起部の正面図である。
【図4】研削板と1枚歯の刃体によって塊状体の被破砕物を解砕する状態を示す図である。
【図5】ペレタイザーで成形されたガスハイドレートの成形体の斜視図である。
【図6】ガスハイドレートの製造工程を示す系統図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1は、第1の実施例に係る解砕装置1の側面図であって、研削板(スクリーン)2の円弧状部分3に回転刃4を回転可能に、塊状体を押圧するように設けたものである。この回転刃4は、籠型の枠体の周面に金属製の刃5を、間隔をあけて固定したものであり、その刃5は、先端が二つの平面5a、5aを交差させて鋭い角度の刃物の先のように形成されており、二つの平面5a、5aの交差部に陵線5bが形成されている。
【0027】
前記スクリーン2と回転刃4との間隙に、被破砕物であるガスハイドレートの小片20aを供給すると、図2に示すように、この小片20aに対して刃5の先端に形成されている前方の平面5aとスクリーン2の円弧状の部分3との間で押圧し、これを解砕するように構成されている。
【0028】
(研削板の特性)
この解砕装置1に使用する研削板(スクリーン)2は、ガスハイドレートの小片20aが押圧されて詰まることがない特性に構成されていることが重要である。この点に関して本発明者等は、各種の多孔質な素材、例えば多孔板、小突起を表面に多数設けた研削板や卸し金などを使用し、ガスハイドレートの小片(小塊状体)がその表面に押圧されても固まることがないものを検討した結果、得られたものが下記の多孔板からなる研削板である。
【0029】
図3は、本発明の解砕装置に使用する多孔板からなる研削板8、つまり、一種の多孔板を示しており、図(A)の断面図、(B)の平面図、更に(A)におけるC−C矢示図を図(C)に示している。
【0030】
図(A)に示すように、一つの小突起部9は、金属板10に切れ目11と、この切れ目11の近傍を、側面から局部的に突出するようにプレスすることで、押上げてドーム形に成形したものである。この小突起部9は屋根部9aと傾斜部9bと前方に開口された第1開口部9cと、この第1開口部9cの続き、下方を向いた第2開口部9dで形成されている。
【0031】
そして第1開口部9cの高さ(h)に対する第2開口部9dの長さ(b)は、第1開口部9cの高さ(h)よりもかなり大きいことが必要である。従って、第1開口部9cの屋根部9の前縁で解砕(割られ)され、この屋根部9aの下側に押込まれたガスハイドレートの小片20a(解砕片)は、排出口であり、下方を向いて開口された第2開口部9dより円滑に排出されて閉塞することが全くない。
【0032】
図4は、本発明に係る研削板8を使用した装置における解砕作用を示しており、移動刃体12の前部の傾斜した平面12aでガスハイドレートの小片20a(塊状物)を押圧しながら屋根部9aの前縁に形成されている第1開口部9cに押込まれる。
【0033】
すると、山型に突出している小突起部9の屋根部9aの前縁部が前記小片20aの下部や中間部に当たって下部を割るように解砕して解砕小片20b、20c、20d・・つまり、バラバラに粉雪に近い状態に解砕される。
【0034】
しかし、前記のように第1開口部9である高さ(h)より排出口である第2開口部9dの長さ(b)の方が遥かに大きく開いている関係で、解砕小片20c、20dは、この第2開口部9dに引っかかつたり、付着したりすることもなく、下方に落下する。従って、第2開口部9dに目詰まりを発生することがなく、ガスハイドレートの小片20aを効率的に解砕できるという効果を奏する。
【符号の説明】
【0035】
1 解砕装置
2 研削板(スクリーン)
3 円弧状部分
4 回転刃(刃体)
5 金属製の刃
5a 平面(押圧面)
5b 陵線
8 研削板(特殊多孔板)
9 小突起部
9a 屋根部
9b 傾斜部
9c 第1開口部
9d 第2開口部
10 金属板
11 切れ目
12 刃体
12X 移動刃体
12a 傾斜した平面
20 ガスハイドレートの板状部分
20a ガスハイドレートの小片
20b、20c、20d 解砕小片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスハイドレートの塊状物を微粉状に解砕する装置であって、前記装置は小突起部を多数配置した研削板と、この研削板の表面に塊状物を押圧供給する供給手段からなり、
前記小突起部は押圧される塊状物を受入れるための屋根形をした第1の開口部と、この第1開口部に連続し、前記研削板の下方に開口した第2開口部を有していることを特徴とするガスハイドレートの解砕装置。
【請求項2】
前記研削板に形成された小突起部に設けた第1開口部の最大高さよりも前記第2開口部の長さの方が大きいことを特徴とする請求項1に記載のガスハイドレートの解砕装置。
【請求項3】
ガスハイドレート塊状物の加圧手段は、回転体と、その回転体の回転軸に略並行して設けた刃体とからなり、この刃体は、前記研削板の表面に対して傾斜した押圧板を有し、ガスハイドレート塊状物を前記小突起部の第1開口部に押し込むための傾斜した平面を有していることを特徴とする請求項1あるいは2の何れかに記載のガスハイドレートの解砕装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−224717(P2012−224717A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−92362(P2011−92362)
【出願日】平成23年4月18日(2011.4.18)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成22年度、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、高効率天然ガスハイドレート製造利用システム技術実証研究の委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000005902)三井造船株式会社 (1,723)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】