説明

ガスハイドレート生成プラントにおける脱水器の運転制御装置

【課題】 ガスハイドレート生成プラントにおける脱水装置の脱水器を安定して運転することができるようにする脱水装置の運転制御装置を提供する。
【解決手段】 脱水器10の駆動部11aに滞留するGHスラリーの団塊Bの形状に着目すると、ほぼ下に凸の円錐形に近似した形状となり、脱水処理が円滑に行われている場合には該形状が安定して、頂部の位置がほぼ一定しているから、この団塊Bの頂部の位置を検出する検出手段として圧力センサ21a、21bや超音波センサ22、透過部23a、23bなどを設ける。この団塊Bの形状や頂部位置B0の変化に応じて、GHスラリーの供給量と濃度のうちのいずれか一方または双方を調整して、該形状や頂部位置B0をほぼ一定に保つようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、海底下等に存在している天然ガスを輸送や貯蔵等に適した状態である天然ガスハイドレートに生成する、天然ガスハイドレート生成プラントで生成された低濃度のガスハイドレートを脱水処理を行って、高濃度のガスハイドレートスラリーを生成する脱水装置の脱水器を安定して運転するためのガスハイドレート生成プラントにおける脱水器の運転制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
シベリアやカナダ、アラスカ等の凍土地帯や大陸周辺部における水深500m以下の海底下には、主成分がメタンである天然ガスハイドレート(NGH)が存在している。このNGHは、メタン等のガス分子と水分子とから構成される低温高圧下で安定した水状固体物質あるいは包接水和物であり、二酸化炭素や大気汚染物質の排出量が少ないクリーンエネルギーとして着目されている。
【0003】
天然ガスは液化された後、貯蔵されてエネルギーとして利用されているが、その製造や貯蔵は−162℃の極低温において行われている。これに対して天然ガスハイドレートは、−20℃で分解せずに安定した性質を示し、固体として扱うことができる等の利点を備えている。このような性質から、世界中に存在している採算面等の理由から未開発の中小ガス田におけるガス資源を有効に利用することができる手段として、あるいは大ガス田からの近距離、小口輸送の場合等に天然ガスハイドレート方式(NGH方式)を活用できる。
【0004】
NGH方式では、中小ガス田等のNGH出荷基地において、輸送や貯蔵に適したNGHを生成し、輸送船や車両等によって所望のNGH受入基地まで輸送され、NGH受入基地では輸送されたNGHを貯蔵し、必要に応じてNGHガス化装置によってエネルギー源として利用することになる。図4は、前記NGH出荷基地に利用されるガスハイドレートの生成プラントの構成の一例を説明する概略のブロック図である。採掘された原料ガスは高圧反応容器である生成器1において水と十分に混合されてハイドレート化されて、低濃度のガスハイドレート(GH)スラリーが生成される。生成されたGHスラリーは給送ポンプ2によって脱水器3に供給されて、脱水された高濃度のGHスラリーを生成する。このとき、脱水器3へは該脱水器3の最下部に供給される。供給されたGHスラリーは脱水器3を徐々に上昇しながら脱水されて、脱水器3の上端部から取り出される。取り出されたガスハイドレートは、脱水されてパウダー状となったGHパウダーとして取り出される。このGHパウダーがペレット成型器4に供給されて造粒され、輸送や貯蔵等にとって適宜な大きさのGHペレットが形成される。次いで、常圧下においても分解しない温度まで冷却機5により冷却された後、脱圧装置6に供給される。すなわち、前記生成器1から冷却機5に至るまでは、常温高圧下において処理がなされ、冷却機5と脱圧装置6とにより、常圧下でも分解しない温度に処理される。その後、生成されたGHペレットは貯蔵槽に給送されて貯蔵される。
【0005】
図3は前記生成器1と脱水器3との処理工程を示しており、生成器1には原料ガスGと水Wとが生成器1の反応槽1aに供給される。供給された原料ガスGと水Wとが攪拌装置1bにより攪拌され、原料ガスGと水Wとが反応して低濃度GHが生成される。未反応の原料ガスGは反応槽1aの上部から回収されブロワ1cにより反応槽1aの底部から再び供給される。生成されたGHスラリーは未反応水と共に前記給送ポンプ2により脱水器3の底部に給送される。供給されたGHスラリーは脱水器3を上昇しながら未反応水が脱水処理されて、該脱水器3の上部からスクリュフィーダ等の給送装置3cにより次工程の前記ペレット成型器4に給送される。脱水器3は内筒3aと該内筒3aを収容する外筒3bとの二重構造とされており、GHスラリーは内筒3aに供給され、該GHスラリーからの脱水は外筒3b内に流出する。外筒3bに流出した流出水は回収ポンプ3dにより前記生成器1に返戻されて、原料ガスGとの反応に供される。
【0006】
例えば、特許文献1には、脱水されたGHスラリーを脱水器3から円滑に搬出するために、ガスハイドレートの付着水を重力脱水する縦型移動層式の脱水器を備えたガスハイドレート脱水装置であって、前記脱水器は略垂直に立設された第1の塔体と、前記第1の塔体の上部に接続し、複数の微細な貫通孔を有する水切り部と、前記水切り部を外囲する貯水部と、前記水切り部の上部に接続する第2の塔体とからなり、前記第1の塔体の底部から供給され前記脱水部を通過したガスハイドレートを上方へ搬送する搬送手段が設けられており、この搬送手段により脱水器の上部に配された搬出機へ脱水器内のガスハイドレートを搬送するものである。なお、搬出機と搬出手段には、スクリュコンベヤが用いられている。
【0007】
【特許文献1】特開2007−224116
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前記脱水器3では、供給されたGHスラリーが上昇するのにしたがって、水分が除去される。該脱水器3の最下部では未反応水とこの未反応水に随伴されたGHスラリーが混在しており、その上部に前記未反応水に対して浮遊したGHスラリーが滞留する駆動部が形成され、この駆動部の上部には内筒3aの壁面に多数の透孔が形成された排水部が存し、この多数の透孔から前記未反応水が外筒3bに流出する。この排水部を通過したGHスラリーは濃度が高くなった状態にあるが、未だ付着水を伴った状態にある。この随伴されている付着水は、GHスラリーを毛管現象による水の上昇限界よりも高位まで上昇させることにより除去される。このため、前記排水部の上部にはこの毛管現象による水の上昇限界以上の高さとなる脱水部が形成される。この場合に、重力を利用した、いわゆる重力方式による脱水処理では処理時間が長くなってしまうことから、加圧することにより水の上昇限界を低くする加圧方式による脱水処理が行われる脱水器がある。
【0009】
前記加圧方式による脱水器では、例えば、脱水器へのGHスラリーの供給が不安定となると、GHスラリーの脱水処理も不安定となる。前述したように、内筒3aの途中には排水部が設けられているが、この排水部は内筒3aの壁体に形成された多数の透孔によるものであることから、脱水器の壁面側のGHスラリーからの排水が促進されて、中央部のGHスラリーからの脱水は遅れることになる。特に、脱水処理が不安定となると、この排水部からの排水が継続されるにも拘わらず、脱水器の中央部のGHスラリーからの排水が滞るおそれがある。このため、脱水器の中央部にGHスラリーが滞留し、専ら壁面近くのGHスラリーからの排水が促進され、排水部の壁面の部分にGHスラリーが存しなくなってしまう。すなわち、排水部の透孔を介して内筒3aの内外部が連通してしまうことになる。この場合、特に、加圧方式による脱水器では加えられた圧力がこの排水部の透孔から抜けてしまうことになるから、さらに脱水処理の不安定さが加速されることになり、脱水器を停止しなければならなくなってしまう。
【0010】
ところで、脱水処理が安定して行われている場合には、GHスラリーが順次処理されていくことから、GHスラリーの滞留状態が一定となり、前記駆動部においてはGHスラリーの団塊が内筒3a内で下に凸の円錐形に近似した形状となり、その頂部が内筒3a内でほぼ一定の高さに定位することが知られている。
【0011】
そこで、この発明は、前記駆動部におけるGHスラリーの挙動をもとに、脱水器における脱水処理を安定して行えるように脱水器を運転するガスハイドレート生成プラントにおける脱水器の運転制御装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記目的を達成するための技術的手段として、この発明に係るガスハイドレート生成プラントにおける脱水器の運転制御装置は、ガスハイドレートの製造過程で生成されたガスハイドレートスラリーから脱水するための円筒形の容器からなる脱水器の運転制御装置おいて、前記脱水器に供給されたガスハイドレートスラリーに付随した未反応水が排出される排水部の下部で、該ガスハイドレートスラリーが滞留する駆動部における該滞留したガスハイドレートスラリーの団塊の形状や該団塊の特定の位置を検出する検出手段を設け、前記検出手段による検出結果に基づいて、脱水器に供給するガスハイドレートスラリーの供給量あるいは濃度のいずれか一方または双方を変更することを特徴としている。
【0013】
脱水器が安定した定常運転の状態にある場合には、前記駆動部におけるGHスラリーの挙動に殆ど変化が生じない。この駆動部においては、前述した通り、GHスラリーの団塊が下に凸の円錐形に近似した形状に形成されるから、この団塊の形状や頂部等の特定位置を検出手段で検出する。この形状や位置に変化があった場合には脱水器の運転状態が定常状態から遷移したこととなる。例えば、前記頂部の位置が下降した場合には、脱水部での脱水処理が遅れている場合であり、GHスラリーの供給量を減じるか供給するGHスラリーの濃度を低くする。他方、前記頂部の位置が上昇した場合には、GHスラリーの脱水処理が過剰な場合であり、GHスラリーの供給量を増加するか供給するGHスラリーの濃度を高くする。これにより、前記頂部の位置が定常運転時の状態となるように調整する。
【0014】
また、請求項2の発明に係るガスハイドレート生成プラントにおける脱水器の運転制御装置は、前記検出手段を、駆動部と排水部との圧力差を検出し、その差圧の変動を検出する圧力検出手段であることを特徴としている。
【0015】
駆動部と排水部との差圧の変化を前記圧力検出手段により検出して、差圧が大きくなった場合にはGHスラリーの団塊の頂部が下降したことによるから、GHスラリーの供給量を減じ、またはGHスラリーの濃度を低くするようにする。差圧が小さくなった場合には、GHスラリーの供給量を増加し、GHスラリーの濃度を高くする。
【0016】
また、請求項3の発明に係るガスハイドレート生成プラントにおける脱水器の運転制御装置は、前記検出手段を、脱水器の一定部位から前記滞留しているガスハイドレートスラリーの所定位置までの距離を測定する位置検出手段であることを特徴としている。
【0017】
例えば、脱水器の底面からGHスラリーの団塊の頂部までの距離を測定する測距手段を位置検出手段として設ける。測距手段としては、例えば超音波センサ等を用いることができる。すなわち、測距データが定常運転時に比べて小さい場合には、前記頂部が下降した場合であり、測距データが大きい場合には上昇した場合となり、それぞれGHスラリーの供給量または濃度のいずれか一方または双方を調整する。
【0018】
また、請求項4の発明に係るガスハイドレート生成プラントにおける脱水器の運転制御装置は、前記検出手段を、脱水器の内部であって前記滞留したガスハイドレートスラリーの端部付近を視認することができるように該脱水器に形成した透過検出手段であることを特徴としている。
【0019】
すなわち、脱水器に透過検出手段として監視用のガラス窓等による透過部を設けて、このガラス窓から脱水器内の駆動部におけるGHスラリーの団塊の挙動を観察すれば、その形状や頂部等の位置を把握することができ、その高さに応じてGHスラリーの供給量または濃度を調整する。
【0020】
前記観察は、作業員が目視により行うこともでき、あるいはカメラにより撮影したものを管理室等に設置したモニタに表示させた映像により行うこともできる。さらに、撮影された映像を画像処理することにより挙動を把握することもできる。
【0021】
また、請求項5の発明に係るガスハイドレート生成プラントにおける脱水器の運転制御装置は、前記ガスハイドレートスラリーの供給量調整を、脱水器へのガスハイドレートスラリーを供給する給送ポンプの吐出量を変更することにより行うことを特徴としている。
【0022】
脱水器へのGHスラリーを供給する給送ポンプの吐出量を変更することにより、GHスラリーの供給量が変更される。
【0023】
また、請求項6の発明に係るガスハイドレート生成プラントにおける脱水器の運転制御装置は、前記ガスハイドレートスラリーの濃度調整を、ガスハイドレートの生成器における生成の条件を変更することにより行うことを特徴としている。
【0024】
ガスハイドレートの生成器における処理温度を低下させると過冷却度が大きくなり生成量が増大することになって濃度が高いガスハイドレートが、処理温度を上昇させると濃度の低いガスハイドレートが生成される。したがって、駆動部におけるGHスラリーの挙動に応じて生成器の処理温度を変更すればよい。
【0025】
また、請求項7の発明に係るガスハイドレート生成プラントにおける脱水器の運転制御装置は、前記排水部から流出した流出水を循環ポンプの入口側に導入し、該循環ポンプの吐出側を、前記脱水器にガスハイドレートスラリーを供給する給送ポンプの吐出側に接続して、前記流出水をガスハイドレートスラリーに混合して再度脱水器に供給し、この流出水の混合量を調整することにより、ガスハイドレートスラリーの供給量を調整することを特徴としている。
【0026】
脱水器においてGHスラリーに随伴した未反応水は排水部から流出するから、この流出水を給送ポンプの吐出側に返戻させて、循環させるようにしたものである。この流出水の量を調整することにより、脱水器へ供給されるGHスラリーの流量が調整されるから、駆動部におけるGHスラリーの団塊の挙動に応じて給送ポンプの吐出側への供給量を調整する。なお、前述した回収ポンプ3dの吐出側の途中で給送ポンプ2の吐出側に接続することにより、脱水器へ供給する循環径路を構成することもできる。
【発明の効果】
【0027】
この発明に係るガスハイドレート生成プラントにおける脱水器の運転制御装置によれば、脱水器の運転状況を駆動部におけるGHスラリーの団塊の挙動に応じてGHスラリーの供給量または濃度を変更させることによるため、脱水器の運転を安定させて行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、図示した好ましい実施の形態に基づいて、この発明に係るガスハイドレート生成プラントにおける脱水器の運転制御装置を具体的に説明する。
【0029】
図1はこの発明に係る運転制御装置を備えた脱水器10と、該脱水器10に供給する低濃度のGHスラリーを生成する前記生成器1とによる工程を説明する図である。生成器1で生成されたGHスラリーは給送ポンプ2により給送管2aを通って脱水器10へ供給されるようにしてある。
【0030】
この脱水器10は、内筒10aが外筒10bに収容された二重構造としてある。この脱水器10における脱水処理は、GHスラリーが分解しない高圧下で行われる必要があり、内筒10aは後述するように排水部で開放されているため、二重構造とした場合には内筒10aには耐圧性は要求されず、外筒10bが圧力容器とされている。前記給送管2aは内筒10aの底部に接続されており、GHスラリーは該内筒10aの底部に供給される。なお、排水部を囲う状態で部分的に外筒を設けて、内筒10aを圧力容器とする構造とすることもできる。
【0031】
図2は脱水器10の構造の概略を説明する図であり、供給されたGHスラリーSの脱水器10内における状態を併記してある。脱水器10に供給されたGHスラリーSは内筒10a内を上昇することになり、排水部11bに至る。この排水部11bは、内筒10aの壁体に多数の透孔が形成された部分であり、GHスラリーSが随伴されていた未反応水が該排水部11bから内筒10aの外部に排出されることになる。内筒10aは外筒10bに収容されているから、排水部11bから流出した未反応水は外筒10bに流入することになる。外筒10bの底部には回収管12aを介して循環ポンプ12が接続されており、この循環ポンプ12の吐出管12bは循環弁13を介して前記給送管2aに接続されている。また、前記吐出管12bの前記循環弁13に至る途中で分岐されて、この分岐管12cが生成器1に接続されている。前記排水部11bから外筒10bに流出した流出水は、この循環ポンプ12によって分岐管12cから生成器1に戻される。また、循環弁13を通過した流出水は、給送管2aを介して内筒10aに供給されることになる。
【0032】
前記排水部11bで未反応水が排出されるから、排水部11bに臨む部分にはGHスラリーSが滞留することになり、他方、下方から順次GHスラリーSが供給されているから、この滞留したGHスラリーSは密度が高くなり団塊Bとなって下方に延びることになる。このため、図1に示すように、GHスラリーSの団塊Bは下に凸となった円錐形に近似した外形となる。この団塊Bが存している部分が駆動部11aとなり、この下方にはGHスラリーSが上昇しているスラリー部11dが形成される。また、前記排水部11bの上方には、未反応水が除去されたGHスラリーSで形成された層による脱水部11cが形成される。この脱水部11cでは、上昇したGHスラリーSに随伴した付着水が毛管現象の上昇限界により付着水がGHスラリーSから分離されて除去されて、濃度が高められてGHスラリーSまたはGHパウダーが生成される。すなわち、脱水器10内では、上部に向かってGHスラリーSの濃度が徐々に高くなる。
【0033】
前記脱水部11cにおける脱水処理が正常に行われている場合には、脱水されたGHスラリーSが上昇し、上昇したGHスラリーSまたはGHパウダーは次工程へ順次給送されることになるから、前記団塊Bの円錐形の形状はほぼ一定した状態に維持されて、その頂部位置B0はほぼ一定の高さにある。
【0034】
前記内筒10aには、前記団塊Bの形状を検出するための第1の実施形態に係る検出手段として、圧力検出手段である圧力センサ21a、21bが内筒10aに設けられている。これら圧力センサは、内筒10aの前記駆動部11aにおける内圧と排水部11cにおける内圧との差圧を検出する。差圧が大きくなる場合には、駆動部11aを占める団塊Bの容積が大きくなって頂部位置B0が低くなり該駆動部11aの内圧が高くなって、前記脱水部11cにおける脱水処理が円滑に行われず脱水処理が滞っている状態を示している。逆に、差圧が小さくなる場合には、団塊Bの頂部位置B0が高くなって、脱水処理が過剰な状態で行われていることを示している。このため、この検出結果に基づいて脱水器10の運転の制御を行うことになる。この脱水器10の運転制御は、脱水器10へ供給するGHスラリーSの供給量と濃度のいずれか一方または双方を調整することにより行われる。
【0035】
脱水器10へのGHスラリーSの供給量を調整するには、前記給送ポンプ2の吐出量を変更することによる。前記団塊Bの大きさが小さくなった場合には、脱水処理が過剰な状態にあるから、GHスラリーSの供給量を増加させる必要があり、前記給送ポンプ2の吐出量を増加させる。他方、団塊Bの大きさが大きくなった場合には、脱水処理が滞った状態にあり、給送ポンプ2の吐出量を減少させてGHスラリーSの脱水器10への供給量を減少させる。
【0036】
また、脱水器10へ供給するGHスラリーSの濃度を調整するには、前工程における生成器1の運転条件を変更することによる。生成器1では、原料ガスと反応用の冷却水とを混合させて攪拌することによる。このとき、冷却水の温度を低下させると原料ガスと冷却水との反応が促進されて生成されるGHスラリーSの濃度が高くなり、冷却水の温度を上昇させるとGHスラリーSの濃度が低くなる。あるいは、原料ガスの供給量や冷却水の供給量を変更することによってもGHスラリーSの濃度を調整することができる。すなわち、団塊Bが大きくなった場合には濃度の低いGHスラリーSを供給するようにして脱水器10の脱水処理の負荷を軽減して脱水処理の迅速化を図り、団塊Bが小さくなった場合には濃度の高いGHスラリーSを供給して脱水の処理量を増加させる。
【0037】
また、前記循環ポンプ12を経由する回収された水の前記給送管2aへの供給量を調整することによりGHスラリーSの脱水器への供給量を調整することもできる。すなわち、団塊Bが大きくなった場合には給送管2aへの供給量を増加させて、GHスラリーSを流出水により希釈して供給量を増加させ、団塊Bが小さくなった場合には給送管2aへの流出水の供給量を減じて、GHスラリーSを希釈することなく脱水器10に供給するようにする。なお、この流出水の給送管2aの供給量は、前記循環弁13の開度を調整することにより行うことができる。
【0038】
また、図1に示すように、この発明の第2実施形態に係る脱水器の運転制御装置として、内筒10aの底面に位置検出手段として超音波センサ22設けて、団塊Bまでの距離を測定することにより団塊Bの大きさを検出して、駆動部11aにおけるGHスラリーSの位置を検出することもできる。この場合、超音波センサ22は複数個を設置して、それらの測距データから団塊Bの下部の形状を推定して団塊Bの大きさを把握するようにすることが好ましい。
【0039】
この第2実施形態に係る脱水器の運転制御装置においても、前記超音波センサ22により検出された測距データにより、団塊Bの大きさに応じて、前述したように、GHスラリーSの供給量と濃度のいずれか一方または双方を調整することで、脱水器の運転状態を安定させることができるようになる。
【0040】
また、図1に示すように、この発明の第3の実施形態に係る脱水器の運転制御装置として、内筒10aと外筒10bのそれぞれの壁体に、透過検出手段として、透過性を備えた板材からなる透過部23a、23bを取り付けて、脱水器10の外部から内筒10aの内部を視認できるようにして、団塊Bの実際の挙動を観察することでGHスラリーSの駆動部11aにおける位置を検出することもできる。この場合、これら透過部23a、23bは安定した運転状態にある場合の団塊Bの下部が視野に入れることができる位置に設ける。また、内筒10aと外筒10bの壁体の複数箇所に配設することが採光を得られることになるので好ましく、さらに、それぞれの設置高さを異ならせてあれば、団塊Bを確認できる高さの範囲が大きくなって好ましい。なお、透過部23a、23bには、例えばガラス板や透明の強化プラスチック等であって、耐圧性を備えたものが用いられる。
【0041】
また、前記透過部23a、23bに臨ませてCCDカメラ等の撮影装置を配設し、常時団塊Bの状態を撮影して、その映像を、例えばこのガスハイドレート生成プラントの管理室等のモニタ装置に表示させ、その表示された映像を観察することもできる。さらに、撮影された映像をもとに画像処理を行って、団塊Bの形状の比較を常時行わせることで、該団塊Bの形状の変化を把握することもできる。
【0042】
この第3実施形態に係る脱水器の運転制御装置においても、団塊Bの大きさからGHスラリーSの駆動部11aにおける位置に応じて、脱水器10へ供給するGHスラリーSの供給量と濃度の一方または双方を調整することにより、脱水器の運転状態の安定化を図ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
この発明に係るガスハイドレート生成プラントにおける脱水器の運転制御装置によれば、脱水器の運転状態を安定させることができることから、ガスハイドレート生成プラントの連続運転を支障なく行うことに寄与する。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】この発明に係るガスハイドレート生成プラントにおける脱水器の運転制御装置の構成を説明する図であり、ガスハイドレート生成プラントの生成器と脱水器とによる工程を示している。
【図2】この発明に係る運転制御装置により運転制御される脱水器の概略の構造を説明する断面図である。
【図3】生成器におけるガスハイドレートの生成処理と、脱水器における脱水処理とを説明する概略のブロック図である。
【図4】ガスハイドレート生成プラントの構成の一例を説明する概略のブロック図である。
【符号の説明】
【0045】
1 生成器
2 給送ポンプ
2a 給送管
10 脱水器
10a 内筒
10b 外筒
11a 駆動部
11b 排水部
11c 脱水部
11d スラリー部
12 循環ポンプ
12a 回収管
12b 吐出管
13 循環弁
22 超音波センサ(測距手段)
23a、23b 透過部(透過検出手段)
B 団塊

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスハイドレートの製造過程で生成されたガスハイドレートスラリーから脱水するための円筒形の容器からなる脱水器の運転制御装置おいて、
前記脱水器に供給されたガスハイドレートスラリーに付随した未反応水が排出される排水部の下部で、該ガスハイドレートスラリーが滞留する駆動部における該滞留したガスハイドレートスラリーの団塊の形状や該団塊の特定の位置を検出する検出手段を設け、
前記検出手段による検出結果に基づいて、脱水器に供給するガスハイドレートスラリーの供給量あるいは濃度のいずれか一方または双方を変更することを特徴とするガスハイドレート生成プラントにおける脱水器の運転制御装置。
【請求項2】
前記検出手段は、駆動部と排水部との圧力差を検出し、その差圧の変動を検出する圧力検出手段であることを特徴とする請求項1に記載のガスハイドレート生成プラントにおける脱水器の運転制御装置。
【請求項3】
前記検出手段は、脱水器の一定部位から前記滞留しているガスハイドレートスラリーの所定位置までの距離を測定する位置検出手段であることを特徴とする請求項1に記載のガスハイドレート生成プラントにおける脱水器の運転制御装置。
【請求項4】
前記検出手段は、脱水器の内部であって前記滞留したガスハイドレートスラリーの端部付近を視認することができるように該脱水器に形成した透過検出手段であることを特徴とする請求項1に記載のガスハイドレート生成プラントにおける脱水器の運転制御装置。
【請求項5】
前記ガスハイドレートスラリーの供給量調整は、脱水器へのガスハイドレートスラリーを供給する給送ポンプの吐出量を変更することにより行うことを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれかに記載のガスハイドレート生成プラントにおける脱水器の運転制御装置。
【請求項6】
前記ガスハイドレートスラリーの濃度調整は、ガスハイドレートの生成器における生成の条件を変更することにより行うことを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれかに記載のガスハイドレート生成プラントにおける脱水器の運転制御装置。
【請求項7】
前記排水部から流出した流出水を循環ポンプの入口側に導入し、該循環ポンプの吐出側を、前記脱水器にガスハイドレートスラリーを供給する給送ポンプの吐出側に接続して、前記流出水をガスハイドレートスラリーに混合して再度脱水器に供給し、この流出水の混合量を調整することにより、ガスハイドレートスラリーの供給量を調整することを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれかに記載のガスハイドレート生成プラントにおける脱水器の運転制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−235333(P2009−235333A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−86603(P2008−86603)
【出願日】平成20年3月28日(2008.3.28)
【出願人】(000005902)三井造船株式会社 (1,723)
【Fターム(参考)】