説明

ガスバリア容器の包装形態

【課題】栄養輸液等の薬液を充填した輸液バッグであるガスバリア性を有する樹脂フィルムからなる包装容器について、バリア性の早期回復及び機能維持性を図った包装形態を提供すること。
【解決手段】ガスバリア性を有する樹脂フィルムからなる包装容器内に薬液を充填した輸液バッグを水蒸気遮断性の包装材からなる袋体で包装する場合において、袋体内部に輸液バッグと共に乾燥剤を同封し、袋体内部を低湿度状態に維持したことを特徴とするガスバリア容器の包装形態である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬液を充填した輸液バッグであるガスバリア性を有する樹脂フィルムからなる包装容器について、そのガスバリア性の早期回復及び機能持続性を図った包装形態、並びに輸液バッグのガスバリア性能の機能持続性を維持する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
これまでに、経口摂取が不十分であって軽度の低蛋白血症又は軽度の低栄養状態にある患者や、手術後前後の経口摂取ができない患者に対するアミノ酸、電解質、各種ビタミンなどを非経口的に投与するカロリー輸液が登場してきている。
【0003】
例えば、消化器系の手術或いは循環器系の手術における術後の侵襲を受けた患者等は、経口摂取による栄養管理が不可能な場合が多い。そのため、このような患者の栄養管理は、一般に静脈栄養法(PN:parenteral nutrition)として、中心静脈から高カロリー輸液(IVH:Intravenous Hyperalimentation)を投与すること、或いは末梢静脈カテーテルを介して栄養輸液を投与する末梢静脈栄養法(PPN:peripheral parenteral nutrition)により行われている。これらの栄養法により投与される栄養輸液は、通常、栄養源である糖質及びアミノ酸に加え、体液成分を構成する電解質、更に所望によりビタミン、微量元素等を含んだものであり、一般的には、糖質と電解質成分とを、アミノ酸と分離して充填する2室容器からなるバッグ(ダブルバッグ)にそれぞれを分離して充填した1バッグ形態の複室輸液製剤として提供されている(特許文献1)。また、複数のビタミンを充填した第3室の小室をさらに有する1バッグ形態の複室輸液製剤も提案されている。
【0004】
このような複室輸液製剤を充填する輸液バッグは、通常、オレフィン系の樹脂を主成分とする樹脂フィルムから構成される容器に充填され輸液バッグとされるが、オレフィン系樹脂の機能としてガスバリア性が乏しいため、ガスバリア性に優れた蒸着フィルム等を積層した外包装によって包装される。これは、容器内に充填した輸液製剤がフィルムを通して侵入される外部に存在する各種ガス(具体的には、炭酸ガス、酸素ガス)により変性を受けないためであり、その目的に応じて各種の積層フィルムが使用されている。
また、別の形態としてガスバリア性を有する樹脂を用いた直接容器に薬液を充填する形態も提案されている。
【0005】
ガスバリア性を有する樹脂フィルムとして、そのなかでもエチレンビニルアルコール共重合体若しくはポリビニルアルコールからなる積層樹脂フィルムが好ましく使用されているが、これらのフィルムにあっては、低湿度状態では高いバリア性能を発揮するものの、高湿度状態ではそのバリア性能が低下する問題点があった。そのため、滅菌処理による高温高湿度の状態ではガスバリア性が著しく低下し、滅菌後のバリア機能回復までに時間を要するため、バリア機能が回復するまでの間に侵入したガスの影響により内容物が変性してしまうものであった。
また、これを回避するためにバリア性を有する外包装内に保存しバリア性の回復を待ったとしても、外包装内部は高湿度状態であるため、必要とするバリア機能を発現することができず、ガスバリア性樹脂を用いた容器であっても外包装開封後に薬剤の変性をきたすことが確認されている。
更に、輸液製剤を充填した輸液バッグを保存・搬送する段階で、梅雨時の高湿度条件下で保存・搬送した場合には、輸液バッグ内に充填した輸液成分が変性し、品質の低下を来すという恐れがあった。
このような問題点は、何も経静脈栄養法に使用する輸液製剤にのみ生じる問題ではなく、外部空気により配合成分に変性を生じる恐れがある他の輸液製剤についてもいえることである。
【0006】
したがって、このような配合成分に変性を来さない輸液バッグの包装形態、並びに保存手段等が求められているが、これまで有効な解決手段がないのが現状であった。
【特許文献1】特開平9−327498号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記の現状に鑑み、栄養輸液等の薬液を充填した輸液バッグであるガスバリア性を有する樹脂フィルムからなる包装容器について、バリア性の早期回復及び機能維持性を図った包装形態を提供することを課題とする。
【0008】
かかる課題を解決するべく本発明者等は鋭意検討した結果、ガスバリア性を有する樹脂フィルムからなる包装容器内に薬液を充填した輸液バッグを、低湿度状態で水蒸気遮断性の包装材からなる袋体で包装してやれば、驚くべきことに、輸液バッグを構成する樹脂フィルムの本来のガスバリア性能の回復及び機能持続性が維持され、袋体から輸液バッグを再度取り出した後にあっても、そのガスバリア性能が持続することを新規に見出し、本発明を完成させるに至った。
【課題を解決するための手段】
【0009】
したがって、本発明はその一つの基本的態様として、ガスバリア性を有する樹脂フィルムからなる包装容器内に薬液を充填した輸液バッグを水蒸気遮断性の包装材からなる袋体で包装する場合において、袋体内部に輸液バッグと共に乾燥剤を同封し、袋体内部を低湿度状態に維持したことを特徴とするガスバリア容器の包装形態である。
【0010】
より具体的には、本発明はガスバリア性を有する樹脂フィルムが、エチレンビニルアルコール共重合体若しくはポリビニルアルコールからなる積層樹脂フィルムであることを特徴とするガスバリア容器の包装形態であり、また、水蒸気遮断性の包装材からなる袋体が、ポリエチレン、ポリプロピレン、環状ポリオレフィン、ポリエチレンと環状ポリオレフィンの混合物、金属蒸着フィルム、無機蒸着フィルム、ポリ塩化ビニリデン、DLCコートフィルム、アルミ箔から選ばれる単独若しくは2種以上の積層フィルムからなることを特徴とするガスバリア容器の包装形態である。
【0011】
また本発明は、袋体内部を効率的に低湿度状態に維持するものとして、水蒸気遮断性の包装材の内層側に吸湿性の包装材を備えた袋体を用いること、さらに、袋体内部を効率的に低湿度状態にする手段として、袋体内部にさらに脱酸素剤を同封したガスバリア容器の包装形態である。
【0012】
最も具体的には、本発明は薬液を充填した輸液バッグが、栄養輸液を複室容器に充填した栄養輸液バッグであることを特徴とする上記したガスバリア容器の包装形態である。
【0013】
また本発明は、別の態様として、輸液バッグのガスバリア性を持続させる方法を提供するものであり、具体的には、ガスバリア性を有する樹脂フィルムからなる包装容器内に薬液を充填した輸液バッグを水蒸気遮断性の包装材からなる袋体で包装し、袋体内部に輸液バッグと共に乾燥剤並びに脱酸素剤を同封し、袋体内部を低湿度状態に維持することからなる、輸液バッグのガスバリア性を持続させる方法である。
【0014】
この別の態様における輸液バッグのガスバリア性を持続させる方法における本発明は、より具体的には、ガスバリア性を有する樹脂フィルムが、エチレンビニルアルコール共重合体若しくはポリビニルアルコールからなる積層樹脂フィルムであり、また、水蒸気遮断性の包装材からなる袋体が、ポリエチレン、ポリプロピレン、環状ポリオレフィン、ポリエチレンと環状ポリオレフィンの混合物、金属蒸着フィルム、無機蒸着フィルム、ポリ塩化ビニリデン、DLCコートフィルム、アルミ箔から選ばれる単独若しくは2種以上の積層フィルムである輸液バッグのガスバリア性を持続させる方法である。
【0015】
最も好ましくは、本発明は、袋体内部にさらに脱酸素剤を同封するものであり、薬液を充填した輸液バッグが、栄養輸液を複室容器に充填した栄養輸液バッグである、当該輸液バッグのガスバリア性を持続させる方法である。
【発明の効果】
【0016】
以上のようにして構成される本発明が提供する、薬液を充填した輸液バッグであるガスバリア性を有する樹脂フィルムからなる包装容器のバリア性能の早期回復及び機能持続性を図った包装形態及び方法は、具体的には以下の優れた効果を有する。
包装容器内に包装した輸液バッグのガスバリア性能が持続することから、外包装袋体から取り出した後であっても、長期間バッグ内に充填した薬液の変性を防止し得る利点を有している。
また、従来品にあっては、薬剤容器自身のバリア性が乏しいため個々の薬剤ごとにガスバリア性を有する外包装体にて包装され、更に脱酸素剤が同封されていたが、本発明によりガスバリア機能は薬剤容器自身が有しているため、個々の薬剤で包装する必要がなく10〜20袋まとめて包装することが可能となり、従って、個々に必要となる外包装袋体が不要となるため使用済みのゴミを減少でき、ゴミを捨てる手間が省けると共に、環境問題への対応が図れる利点を有している。
さらに、上記したように個々の外包装袋体を必要としない点で、製造コストダウンが可能となる。
また、複数あった外包装袋体を開封する手間が省け、製品自体が嵩張らないため、作業スペースを有効に使える利点を有している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明は、基本的な態様として上記した如く、ガスバリア性を有する樹脂フィルムからなる包装容器内に薬液を充填した輸液バッグを水蒸気遮断性の包装材からなる袋体で包装する場合において、袋体内部に輸液バッグと共に乾燥剤を同封し、袋体内部を低湿度状態に維持したことを特徴とするガスバリア容器の包装形態である。
【0018】
本発明における輸液バッグとしてのガスバリア性を有する樹脂フィルムからなる包装容器としては、ガス透過による薬剤変性の防止を確保するのに必要なガスバリア機能を有する樹脂フィルムからなる包装容器である。
【0019】
このようなフィルム機能として、従来はガスバリア機能を有していないポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂を用いたフィルムにより容器を作製し、薬剤を充填していたため、必要とされるガスバリア機能を発現するために、ガスバリア機能を有する蒸着フィルム等を積層した外包装袋体にて包装していた。
【0020】
最近に至り、輸液バッグ自体にガスバリア性を付与する手段が採用され、そのような輸液バッグを構成するガスバリア性を有する樹脂フィルムとして、エチレンビニルアルコール共重合体若しくはポリビニルアルコールからなる積層樹脂フィルムが一般的に使用されるに至った。
しかしながら、この種のフィルムは、ガスバリア機能に対して湿度依存性があり、低湿度状態では高いバリア性能を発揮するものの、高湿度状態ではそのガスバリア性能が低下する問題点があった。
【0021】
このガスバリア性樹脂フィルムで構成される輸液バッグに栄養輸液を充填した場合には、当該バッグを滅菌する段階でガスバリア性能は低下し、また、比較的湿度の高い条件下に保存した場合にも、ガスバリア性能が低下し、外部空気の侵入により、充填した栄養輸液成分に変性を来し、品質の低下が生じる恐れがある。特に含有する栄養成分としてのビタミン或いはアミノ酸の種類によってはその変性は激しいものであり、かかる変性を極力回避しなければならない。
【0022】
その点を回避するべく、本発明者等が検討した結果、栄養輸液を充填した輸液バッグを滅菌した後、別の水蒸気遮断性の包装材からなる袋体で包装し、袋体内部を低湿度状態に維持してやれば、極めて効果的に輸液バッグのガスバリア性が回復し、且つ維持されることが判明した。
【0023】
このような水蒸気遮断性の包装材からなる該包装袋体としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、環状ポリオレフィン、ポリエチレンと環状ポリオレフィンの混合物、金属蒸着フィルム、無機蒸着フィルム、ポリ塩化ビニリデン、DLCコートフィルム、アルミ箔から選ばれる単独若しくは2種以上の積層フィルムからなる袋体であるのがよい。
【0024】
かかる袋体に輸液バッグを包装するに際して、袋体内部を低湿度状態に調湿・維持する手段としては、具体的には、輸液バッグと共に乾燥剤を同封する手段が採用される。
そのような乾燥剤としては、袋体内部を低湿度に調湿・維持することが可能なものであれば特に限定されず、具体的には、二酸化珪素、酸化カルシウム、塩化カルシウム等を主成分とするものを用いることができる。
また、乾燥剤の形態としては、フィルム状、プレート状、シート状、袋タイプ等様々なタイプの乾燥剤を用いることができ、用途に応じて選択することが可能である。
その乾燥剤の封入量は、袋体の大きさ、また袋体内部に包装する輸液バッグの個数等により一概に限定できないが、袋体内部の湿度を50%以下程度に調湿・維持する量であるのが好ましいものであることが判明した。
袋体内部の湿度が50%超える場合には、包装した輸液バッグのガスバリア性能の回復が遅れることとなる。
【0025】
また、本発明にあっては水蒸気遮断性の包装材の内層側に、更に吸湿性の包装材を備えた袋体を用いることも好ましい。
そのような吸湿性の包装材としては、乾燥剤をフィルムに積層したもの若しくは分散ブレンドしたもの、吸湿性樹脂等をシート状にしたものも用いることができる。具体的な市販品として、ドライキープ(佐々木化学薬品社製)、ベルサニー(帝人ファイバー社製)等があげられるが、特に限定されるものではなく吸湿機能を有する素材を用いた包材であればよい。
【0026】
また本発明においては、輸液バッグに充填した栄養輸液成分の変性を回避するために、袋体内部にさらに脱酸素剤を同封することが好ましいものであることが判明した。
この脱酸素剤により袋体内部の酸素を除去することで、酸素により容易に変性をきたす栄養輸液成分の安定性がより有効に維持される利点を有している。
そのような脱酸素剤としては、水酸化鉄、酸化鉄、炭化鉄等の鉄化合物を主成分とするものが用いられる。具体的な市販品としては、エージレス(三菱ガス化学社製)、モジュラン(日本化薬社製)、セキュール(ニッソー樹脂社製)等があげられる。また、有機系の脱酸素剤を用いてもよく、所要の酸素吸収を満たすものであれば特に限定されない。
また吸湿機能、脱酸素機能を合わせ持つ材質のものを用いることもでき、具体的な市販品としてはファーマキープ(三菱ガス化学社製)等を挙げることができる。
【0027】
本発明者等の検討によれば、薬剤バッグ滅菌後、上記した水蒸気遮断性の包装材からなる袋体内部に輸液バッグを包装し、袋体内部に乾燥剤並びに脱酸素剤を封入して密閉することで、袋体内部の湿度が所望の50%以下に調湿・維持され、それに伴って輸液バッグを構成するガスバリア性樹脂フィルムのバリア性能の回復が始まることとなる。
【0028】
上記の手段により、一旦輸液バッグのガスバリア性能が回復した場合には、その状態で袋体より取り出しても、輸液バッグの当該ガスバリア性能は4〜5週間の長期に渡って維持されることが判明した。
したがって、袋体内部に大量の輸液バッグを包装し、当該輸液バッグのバリア性能が回復した状態で、袋体を開封し、袋体内部に包装されていた輸液バッグを外部に取り出しても、ある程度長期に亘ってガスバリア性能が維持されていることから、短期間のうちに使用しなければならないという緊急性を回避しうる利点を有している。
【実施例】
【0029】
以下に、本発明を、具体的実施例に代わる試験例により、より詳細に説明するが、本発明はかかる実施例に限定されるものではない。
【0030】
バリア容器として、エチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)若しくはポリビニルアルコールからなる積層樹脂フィルムが一般的に知られている。
EVOHは、低湿度状態では高いバリア性機能を発揮するが、高湿度状態においては、バリア機能は低下する。
本発明は、このガスバリア性を有する樹脂フィルム(EVOHフィルム)からなる輸液バッグについて、低湿度条件下に保存することで、バリア性の早期回復及び機能維持性を図るものである。
その点を、以下の試験例により確認した。
【0031】
試験例エチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)からなるバリアフィルムバッグのバリア性能の回復及び機能維持検討
[方法]
パレセーフ(登録商標:味の素KK製)[アミノ酸・ビタミンB1加総合電解質液:点滴静注用]処方により試験液を調製し、以下の輸液バッグに充填後、外包装体に各条件下で密封した。
<試験液1>
製造直後の試験液を、ポリエチレン(PE)フィルムバッグに充填し、滅菌した後、アルミ蒸着の外包装で脱酸素剤(エージレス)と共に密封した。
<試験液2>
製造直後の試験液を、バリアフィルムバッグ(EVOH製)に充填し、滅菌した後、アルミ蒸着の外包装で脱酸素剤(エージレス)と共に密封した。
<試験液3>
製造直後の試験液を、バリアフィルムバッグ(EVOH製)に充填し、滅菌した後、アルミ蒸着の外包装で脱酸素剤(エージレス)及び乾燥剤と共に密封した。
【0032】
上記の各試験液を充填したバッグ密封したアルミ蒸着の外包装体を、25℃/60%RHの条件下に2週間保存した。この2週間の保存により、アルミ蒸着の外包装体内部の湿度状態は、下記表1に記載するように、乾燥剤を封入することで低湿度状態が維持されていた。なお、乾燥剤を封入しないものは、湿度が高いものであった。
【0033】
【表1】

【0034】
2週間後に、アルミ蒸着の外包装体より試験液充填バッグを取り出し、そのまま外装しない状態で25℃/60%RHの条件下に保存し、試験液製造直後における試験液中のシステイン含量を100%とし、経時的に試験液中のシステインの含有量を測定した。
すなわち、試験液であるパレセーフの処方として各種アミノ酸が含有されているが、アミノ酸成分の中で一番酸素に敏感な成分であるシステインを対象として、ガスバリア性の評価を行った。
試験液中のシステインの含量低下は、酸素の影響による酸化劣化であることから、システイン含量の低下が無ければ、試験液充填バッグバリア性が維持されており、バッグ内部への酸素の侵入が少ないものと評価される。
測定日は、開封直後(0日)、1週、2週、4週及び6週後とした。
その結果を、下記表2及び図1に示した。
【0035】
【表2】

【0036】
表2及び図中に示した結果から判明するように、ガスバリア性の輸液バッグ(EVOHフィルム製)に充填し、水蒸気遮断性の包装袋(アルミ蒸着の外包装体)中に脱酸素剤及び乾燥剤と共に密封した試験液3では、袋体内部が低湿度状態に維持されていたことから、開封後も輸液バッグのバリア性能が回復・持続しており、システイン含有量の低下は少ないのに対して、同じガスバリア性の輸液バッグであっても、袋体内部が低湿度状態に維持されなかった試験液2では、開封後の輸液バッグのバリア性能持続されず、試験液3よりも経時的にシステイン含量の低下が認められた。
なお、試験液1の輸液バッグ(PEフィルム製)では、ガスバリア性でないことから、開封後の経時的なシステイン含有量の低下は著しいものであり、外包装体から取り出した後の早期の使用が求められる結果となっている。
【産業上の利用可能性】
【0037】
以上記載のように、本発明により、薬液を充填した輸液バッグであるガスバリア性を有する樹脂フィルムからなる包装容器について、簡便な方法で、そのバリア性の早期回復及び機能持続性を図ることができ、輸液バッグ内に充填した薬液の変性を防止しうることができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の試験例の結果を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスバリア性を有する樹脂フィルムからなる包装容器内に薬液を充填した輸液バッグを水蒸気遮断性の包装材からなる袋体で包装する場合において、袋体内部に輸液バッグと共に乾燥剤を同封し、袋体内部を低湿度状態に維持したことを特徴とするガスバリア容器の包装形態。
【請求項2】
ガスバリア性を有する樹脂フィルムが、エチレンビニルアルコール共重合体若しくはポリビニルアルコールからなる積層樹脂フィルムであることを特徴とする請求項1に記載のガスバリア容器の包装形態。
【請求項3】
水蒸気遮断性の包装材からなる袋体が、ポリエチレン、ポリプロピレン、環状ポリオレフィン、ポリエチレンと環状ポリオレフィンの混合物、金属蒸着フィルム、無機蒸着フィルム、ポリ塩化ビニリデン、DLCコートフィルム、アルミ箔から選ばれる単独若しくは2種以上の積層フィルムからなることを特徴とする請求項1又は2に記載のガスバリア容器の包装形態。
【請求項4】
水蒸気遮断性の包装材の内層側に吸湿性の包装材を備えた袋体を用いることを特徴とする請求項1、2又は3に記載のガスバリア容器の包装形態。
【請求項5】
袋体内部にさらに脱酸素剤を同封した請求項1、2、3又は4に記載のガスバリア容器の包装形態。
【請求項6】
薬液を充填した輸液バッグが、栄養輸液を複室容器に充填した栄養輸液バッグであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のガスバリア容器の包装形態。
【請求項7】
ガスバリア性を有する樹脂フィルムからなる包装容器内に薬液を充填した輸液バッグを水蒸気遮断性の包装材からなる袋体で包装し、袋体内部に輸液バッグと共に乾燥剤並びに脱酸素剤を同封し、袋体内部を低湿度状態に維持することからなる、輸液バッグのガスバリア性を持続させる方法。
【請求項8】
ガスバリア性を有する樹脂フィルムが、エチレンビニルアルコール共重合体若しくはポリビニルアルコールからなる積層樹脂フィルムである請求項7に記載の輸液バッグのガスバリア性を持続させる方法。
【請求項9】
水蒸気遮断性の包装材からなる袋体が、ポリエチレン、ポリプロピレン、環状ポリオレフィン、ポリエチレンと環状ポリオレフィンの混合物、金属蒸着フィルム、無機蒸着フィルム、ポリ塩化ビニリデン、DLCコートフィルム、アルミ箔から選ばれる単独若しくは2種以上の積層フィルムである請求項7又は8に記載の輸液バッグのガスバリア性を持続させる方法。
【請求項10】
袋体内部にさらに脱酸素剤を同封する請求項7、8又は9に記載の輸液バッグのガスバリア性を持続させる方法。
【請求項11】
薬液を充填した輸液バッグが、栄養輸液を複室容器に充填した栄養輸液バッグである請求項7〜10のいずれかに記載の輸液バッグのガスバリア性を持続させる方法。

【図1】
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【公開番号】特開2009−285318(P2009−285318A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−143173(P2008−143173)
【出願日】平成20年5月30日(2008.5.30)
【出願人】(000000066)味の素株式会社 (887)
【Fターム(参考)】