説明

ガスバリア性フィルム

【課題】食品、医薬品、精密電子部品等の各種分野の包装用材料として好適に用いることができる、コート液の安定性に優れ、ガスバリア層を薄くしても高湿下におけるガスバリア性の低下が少なく、且つクラックを抑制して安定的に生産できるガスバリア性フィルムを提供する。
【解決手段】アルコキシシラン及び/又はアルコキシシラン重縮合物の加水分解物とポリビニルアルコールとの混合物に、該混合物に対してpKaが4.00(25℃、0.1mol/dm)以下の有機酸を0.5〜15重量%(固形分比)添加したコート液を、プラスチックフィルムからなる基材の少なくとも片面にコートする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は食品、医薬品、精密電子部品等の包装分野等に用いられる、透明性を有するガスバリア性フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、食品、医薬品、精密電子部品等の包装分野に用いられる包装材料は、内容物の変質、特に食品においては油脂の酸化や蛋白質の変質等を抑制して味や鮮度を保持するために、また医薬品においては有効成分の変質を抑制して効能を維持するために、さらに精密電子部品においては金属部分の腐食を抑制して絶縁不良等を防ぐために、包装材料を透過する酸素による影響を防止する必要があり、気体(ガス)を遮断するガスバリア性を備えることが求められている。
【0003】
そのために、従来から塩化ビニリデン樹脂をコートしたポリプロピレン(KOP)やポリエチレンテレフタレート(KPET)或いはエチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)など一般にガスバリア性が比較的高いと言われる高分子フィルムをガスバリア材として用いた包装フィルム、あるいは酸化珪素(SiOx)などの珪素酸化物薄膜を透明高分子からなる基材上に真空蒸着などの手段によって設けた蒸着フィルムをガスバリア材として用いた包装フィルムが一般的に使用されてきた。
【0004】
ところが、上述のEVOHを用いた包装フィルムは、温度や湿度の影響を受け易く、その変化によっては更にガスバリア性が低下することがある。さらにKOPやKPET等の塩化ビニリデン樹脂を用いた包装フィルムは、使用後の廃棄において焼却処理すると塩素ガスを発生するため、これが酸性雨の原因の一つになると言われ、最近では敬遠される傾向がある。また、珪素酸化物薄膜を透明高分子からなる基材上に真空蒸着などの手段によって設けた蒸着フィルムは、屈曲等によって蒸着膜にクラックが入りやすく、結果としてガスバリア性が低下することがある。
【0005】
そこでこれらの欠点を克服した包装フィルムとして、水溶性の無機物もしくはポリマーからなる液状組成物をフィルムにコートし、高いガスバリア性を発現させる方法として、ポリビニルアルコール(PVA)等の親水性高分子溶液と金属アルコキシドの加水分解溶液を混合し、フィルムにコート後乾燥、熱処理し親水性高分子と金属アルコキシド間で相互に作用させることによりガスバリア性の付与を行う方法が提案されている(特許文献1)。これらの方法は金属酸化物が有する優れたガスバリア性と高分子が有する柔軟性を兼ね備えており、高いガスバリア性と屈曲するような乱暴な取扱いにも耐えうる実用性を有している。
しかしながら親水性高分子と金属酸化物を高度に複合化させることは容易でなく、特に高湿度下に長時間暴露するとガスバリア性が損なわれるという問題があった。
【0006】
そこで、ポリビニルアルコールにかえて、ポリビニルアルコールにエチレン・ビニルアルコールコポリマーを混合して用いたもの(特許文献2)、ポリビニルアルコールとして変性ポリビニルアルコールを用いたもの(特許文献3)等が報告されており、また、シラン化合物としてイミノ基を有するアルコキシシランを用い、乾燥してガスバリア層を形成した後エージングする方法(特許文献4)も報告されている。これらにより、ガスバリア性は一定の向上をみるものの、特に高湿度下に長時間暴露した場合のガスバリア性の改善は十分なものとは言い難かった。
【0007】
本発明者らは、先に、これら欠点を克服したガスバリア性フィルムを提案した(特願2004−282962号)。該フィルムは、ガスバリア層の上にオーバーコート層を設けなくとも、高湿下での時間の経過によるガスバリア性の低下が少ないものであるが、バリア層を薄くすると高湿度下において安定的にガスバリア性を発現できない場合があったり、厚くすると乾燥条件によってはクラックが入ることがあり、乾燥条件の精密な制御のために作業が煩雑となる場合があった。
【0008】
一方、金属アルコシドの加水分解溶液と親水性高分子溶液とからなるゾルゲルコート液は、pHによっては数時間程度でゲル状になることから、通常はpH調整剤あるいは加水分解触媒として酸や塩基を添加してコート液に十分なポットライフを持たせている(特許文献5)。しかし、加水分解触媒等として一般的に使用されている塩酸等の無機酸を用いると、コート液の安定性は良好であるが、乾燥時におけるガスバリア層の耐クラック性を何ら向上させるものではない。また、無機酸にかえて酢酸等の有機酸を加水分解触媒として用いた例も報告されているが(特許文献6)、安定なコート液を得るためには添加量を増やす必要があり、その結果、コートフィルムの耐クラック性の低下、ガスバリア性の低下を招くという欠点があった。
【特許文献1】特開平4−345841号公報、同6−192454号公報
【特許文献2】特開2001−219506号公報
【特許文献3】特開2004−143197号公報
【特許文献4】特開2002−292810号公報
【特許文献5】特開平4−80030号公報、同4−345841号公報
【特許文献6】特開2002−60525号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記欠点を解決し、コート液の安定性に優れ、コート層を薄くしても高湿下におけるガスバリア性の低下が少なく、かつ、クラックを抑制して安定的に生産できるガスバリア性フィルムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、コート液に特定の有機酸を添加することにより課題を解決できることを見いだし、本発明を完成するに至った。
すなわち、請求項1記載の発明は、一般式[1](式中、Rは同一でも異なってもよい炭素数1〜4のアルキル基を、nは0〜10の整数を表す。)で表されるアルコキシシラン及び/又はアルコキシシラン重縮合物の加水分解物とポリビニルアルコールとの混合物に、該混合物に対してpKaが4.00(25℃、0.1mol/dm)以下の有機酸を0.5〜15重量%(固形分比)添加したコート液を、プラスチックフィルムからなる基材の少なくとも片面にコートした、ガスバリア性フィルム、
請求項2記載の発明は、プラスチックフィルムとコート層との間に更に接着層を有する、請求項1記載のガスバリア性フィルム、
請求項3記載の発明は、プラスチックフィルムが、延伸ポリアミドフィルムである、請求項1乃至2記載のガスバリア性フィルム、
である。
【0011】
【化2】

【発明の効果】
【0012】
本発明は、ガスバリア性、特に酸素遮断性に優れ、高湿度下に長時間おいても酸素遮断性が低下しないというガスバリア性フィルムであって、特にコート液の安定性に優れ、コート層を薄くでき、且つクラックを抑制して安定的に生産できる、という効果を奏する。
本発明の特徴は、pKaが4.00以下の有機酸を用いる点にある。そのため、pKaが4.00以上の酢酸、酪酸、吉草酸、プロピオン酸などの有機酸を用いた場合おける、安定なコート液を得るための添加量の増加、それに伴う耐クラック性の低下、ガスバリア性の低下、有機酸のガスバリアフィルムへの残留という欠点がなく、また、塩酸、硫酸アルミニウム等の無機酸を用いた場合におけるクラックの発生という欠点もない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明で用いられるアルコキシシランおよびその重縮合物(以下、単にアルコキシシランともいう。)は上記一般式[1](式中、Rは同一又は異なってもよい炭素数1〜4のアルキル基を、nは0〜10の整数を表す。)で表される化合物であり、これらは、単独で、あるいは混合して用いることができる。
また、ポリビニルアルコールは、特に限定されないが、80%以上のけん化物が好ましく、より好ましくは完全けん化物が用いられる。完全けん化物の方がアルコキシシランが加水分解した加水分解物との相溶性が良く、より緻密なバリア層を形成する。ポリビニルアルコールの重合度は200から3,500が好ましい。
【0014】
アルコキシシランは、好ましくは加水分解率90%に加水分解された後、ポリビニルアルコール溶液と混合される。
アルコキシシランの加水分解は、アルコキシシランを水、無機酸及び有機溶媒を含む溶液中で加温することにより実施される。このときアルコキシシラン加水分解物の重縮合も同時に起こる。用いられる水の量は、アルコキシシランの珪素1原子に対し6〜10モルである。10モルより多いと加水分解したシリケートの重縮合が進行しすぎて溶液がゲル化する。ゲル化した液はポリビニルアルコール溶液と均一に混合することができない。また6モルより少ないとアルコキシシランの加水分解率90%以上を達成することが実質上困難である。
【0015】
無機酸はアルコキシシランの加水分解および重縮合の触媒として作用する。用いられる無機酸は、塩酸や硝酸等の鉱酸やその他の無機酸が好適に用いられる。加水分解時のpHは、0.5〜3.5、好ましくは2〜2.7である。pHが3.5より大きいと加水分解が進行しない。pHが0.5より小さいと加水分解は十分に進行するものの同時に重縮合の進行も著しく、溶液がゲル化する。
加水分解時の温度は、30〜60℃、好ましくは40〜55℃である。60℃より高いと重縮合が進行し溶液がゲル化する。また30℃より低いと加水分解が十分に進行せずより長い時間を要し実用的でない。加水分解時間は溶液のpHおよび温度によって異なるが、概ね30〜400分である。
【0016】
用いられる有機溶媒としては、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブタノールなどが挙げられるが、特にエチルアルコールおよびイソプロピルアルコールが好適に用いられる。有機溶媒の量は加水分解に使用する水の重量に対し0.3〜3重量%である。3重量%より多いと有機溶媒を回収するのに困難であり、0.3重量%より少ないとアルコキシシランの加水分解時に溶液がゲル化を起こす。
以上の方法により、アルコキシシラン90%以上の加水分解率にも関わらず、ゲル化しない溶液を得ることができる。
【0017】
アルコキシシランの加水分解液とポリビニルアルコール溶液との混合は、加水分解液中の珪素酸化物(SiO換算)100重量%に対して、ポリビニルアルコール25〜100重量%、好ましくは60〜100重量%である。ポリビニルアルコールの重量比が25重量%より低い場合、バリア層の柔軟性が十分でなくクラックを生じやすいばかりでなく、ガスバリア性も低下する。100重量%より大きい場合もガスバリア性が低下し、好ましくない。
【0018】
本発明においては、上記混合物に、pKaが4.00(25℃、0.1mol/dm)以下の有機酸が添加され、コート液が調整される。
用いられる有機酸としては、pKaが25℃、0.1mol/dmで4.00以下の有機酸から適宜選択できるが、コート液の安定性、耐クラック性、高湿度下におけるガスバリア性の観点から、グリコール酸(pKa=3.66)、乳酸(pKa=3.63)、クエン酸(pKa=2.90)、d−酒石酸(pKa=2.82)などが特に好ましい。
【0019】
有機酸の添加量は、該混合物の固形分100重量%に対して0.5〜15重量部%、好ましくは1〜5重量%である。0.5重量%より少ないとコート液の安定性が十分ではなく、また、乾燥時におけるコート層の耐クラック性の効果が現れにくい。一方、15重量%より多いとコート液の安定性は良好であるが、コート層を厚くしても良好なガスバリア性を発現しにくい。
有機酸の添加方法は任意であり、例えば、アルコキシシランの加水分解物とポリビニルアルコール溶液との混合物に添加する方法、アルコキシシランの加水分解液に有機酸を添加後、ポリビニルアルコール溶液と混合する方法等が挙げられる。
本コート液は非常に安定であり、特に有機酸の添加量が5重量%以上では、室温で96時間以上ゲル化することはなく、ゾルの状態を保つことができる。
【0020】
このようにして調製したコート液を用いて、プラスチックフィルムからなる基材に塗布するには、通常のコーティング法を用いることができる。例えば、リバースロールコーティング法、ディップコーティング法、メイヤーバーコーティング法、ナイフコート法、ノズルコーティング法、ダイコーティング法、スプレーコーティング法、カーテンコーティング法、スクリーン印刷、グラビアコート、などの各種印刷法などが挙げられる。これらを組み合わせてもよい。
【0021】
本発明に用いられる基材のプラスチックフィルムは、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂;ポリオキシメチレンなどのポリエーテル系樹脂;ポリアミド−6、ポリアミド−6,6、ポリメタキシレンアジパミドなどのポリアミド系樹脂;ポリスチレン、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、ポリアクリロニトリル、ポリ酢酸ビニルなどのビニル系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;セルロースアセテートなどのセルロース系樹脂;ポリイミド;ポリエーテルイミド;ポリフェニレンスルフィド;ポリエーテルスルフォン;ポリスルフォン;ポリエーテルエーテルケトン;ポリエーテルケトンケトンなどの熱可塑性樹脂を主成分としたフィルムである。これらの熱可塑性樹脂は単独重合体であっても共重合体であってもよい。なお、本発明に用いられるプラスチックフィルムは、上記熱可塑性樹脂に限定されることなく、セロファンに代表される非熱可塑性フィルムも用いることが出来る。フィルムとしては、未延伸フィルムや一軸または二軸に延伸したものいずれも使用できるが、バリア層をコートするときのコートしやすさ、バリアフィルムの強度の観点から延伸ポリアミドフィルムが最も好ましい。
【0022】
コーティング後、コート層の乾燥およびエージングを行い、高湿度下においても高いガスバリア性を有するガスバリア層を形成させる。
乾燥は、ドライヤー内温度200℃以下、好ましくは100〜150℃で1〜30秒行う。200℃より高い温度で乾燥した場合、急激な溶媒の蒸散によりバリア層に微細なボイドが形成されガスバリア性が低下する。乾燥時間が30秒より長い場合は、塗膜の体積収縮が著しくなりその結果塗膜にクラックが発生する。
乾燥後、エージングは、雰囲気温度20〜80℃で24時間以上、好ましくは40〜60℃で36時間以上実施される。80℃よりも高いとプラスチックフィルムからなる基材の平面性が損なわれ、印刷適性等の加工適性が悪くなるので好ましくない。また20℃より低い場合、十分なエージング効果が得られない。
【0023】
ガスバリア層(コート層)の塗布量は、0.1〜2.0g/m、好ましくは0.3〜1.0g/m(いずれもエージング後)に調整する。0.1g/mより少ないとガスバリア性を十分発現せず、2.0g/mより多いと体積収縮が著しくなり、クラックが発生しやすくなる。
【0024】
本発明において、必要に応じてプラスチックフィルムからなる基材とコート層との間に接着層を設けることができる。接着層とは、イソシアネート基、カルボキシル基、酸無水物基、オキサゾリニル基、チオイソシアネート基、エポキシ基を含む化合物を含有したものであり、上記記載のコーティング方法によりコート、乾燥を行い得ることができる。
【実施例】
【0025】
以下、実施例及び比較例を用いて、本発明について具体的に説明する。
なお、酸素透過度の測定には、イリノイ社製酸素透過度測定装置model8000を用いた。測定は、20℃−90%RHで48時間測定した。
【0026】
実施例1〜4
エチルシリケート40(コルコート社製 SiO分40%)の珪素1原子に対して8.3倍モルの純水、および珪素酸化物の重量に対して1.3倍のイソプロパノールを加え、硫酸アルミニウムを用いてpHを2.9にした後、撹拌しながら55℃で3.5時間加水分解行った。この溶液を冷却後、純水を添加し珪素酸化物が7重量%の透明な溶液を得た。
一方、ポリビニルアルコール(クラレ社製、PVA−117、ケン化度98−99%、平均重合度1100)を純水に溶解し7重量%の水溶液を得た。
ポリビニルアルコールと珪素酸化物の固形分重量比が40/60となるように上記溶液を混合撹拌した後、該混合物の固形分100重量%に対して3.3重量%のグリコール酸を添加してさらに混合撹拌した。この時のコート液のpHは3.0であった。本コート液は、室温で96時間以上安定であり、ゲル化することはなかった。
得られたコート液を延伸ナイロンフィルム(興人製二軸延伸ポリアミドフィルム「ボニール」、厚み15μm)上にメイヤーバーでコートし乾燥した。塗布量および乾燥時のフィルム表面温度を表1に示す。なお、115℃で15秒間、140℃で15秒間乾燥させた時のフィルムの表面温度は、ヒートラベル温度(ミクロン社製)でそれぞれ50℃、70℃であった。
得られたフィルムを一旦室温に戻した後、55℃で96時間エージングし、本発明のガスバリア性フィルムを得た。
該フィルムをドライラミネート用接着剤E−370/C76(大日精化社製)を使用し、ポリエチレン50μm(FC−D;東セロ社製)とラミネート後、水に24時間以上浸漬し、20℃−90%RHで調湿した後、同条件で酸素ガスの透過度を測定した。結果を表1に示す。
【0027】

実施例5〜8
実施例1において、有機酸として乳酸を用い、その添加量を4.4重量%とした以外は実施例1と同様に実施した。
なお、本例におけるコート液のpHは3.0、室温で96時間以上安定であり、ゲル化することはなかった。
【0028】
比較例1
実施例4において、グリコール酸の添加量を27重量%とした以外は実施例4と同様に実施した。
【0029】
比較例2
実施例4において、グリコール酸の添加量を0.3重量%とした以外は実施例4と同様に実施した。
【0030】
比較例3
実施例4において、グリコール酸を添加しなかった以外は実施例4と同様に実施した。
【0031】
比較例4
実施例4において、グリコール酸にかえて硫酸アルミニウムを4.4重量%添加した以外は実施例4と同様に実施した。
【0032】
比較例5
実施例4において、グリコール酸にかえて酢酸4.6重量%添加した以外は実施例4と同様に実施した。
【0033】
比較例6
実施例4において、グリコール酸にかえて酢酸17重量%添加した以外は実施例4と同様に実施した。
【0034】
【表1】

【0035】
表1から、アルコキシシランの加水分解物とポリビニルアルコールとの混合物からなるコート液に対して、pKaが4.00(25℃、0.1mol/dm3)以下の有機酸を0.5〜15重量%(固形分比)添加することにより、コート液の安定性が向上し、ガスバリア層を薄くしても高湿度下において優れたバリア性を維持し、且つクラックを抑制して安定的にガスバリア性を発現できることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0036】
以上説明した通り、本発明によると、コート液の安定性に優れ、ガスバリア層を薄くしても高湿下におけるガスバリア性の低下が少なく、且つクラックを抑制して安定的に生産できるガスバリア性フィルムが提供され、食品、医薬品、精密電子部品等の各種分野の包装用材料として好適に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式[1](式中、Rは同一でも異なってもよい炭素数1〜4のアルキル基を、nは0〜10の整数を表す。)で表されるアルコキシシラン及び/又はアルコキシシラン重縮合物の加水分解物とポリビニルアルコールとの混合物に、該混合物に対してpKaが4.00(25℃、0.1mol/dm)以下の有機酸を0.5〜15重量%(固形分比)添加したコート液を、プラスチックフィルムからなる基材の少なくとも片面にコートした、ガスバリア性フィルム。
【化1】

【請求項2】
プラスチックフィルムとコート層との間に更に接着層を有する、請求項1記載のガスバリア性フィルム。
【請求項3】
プラスチックフィルムが、延伸ポリアミドフィルムである、請求項1乃至2記載のガスバリア性フィルム。

【公開番号】特開2007−254602(P2007−254602A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−81083(P2006−81083)
【出願日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【出願人】(000142252)株式会社興人 (182)
【Fターム(参考)】