説明

ガスバリア性フィルム

【課題】 滑り性が改良され、巻き取り外観に優れるガスバリア性フィルムを提供する。
【解決手段】動摩擦係数0.4以下、ヘイズ6.0%以下、アッシュテスト性能15mm以下であり、少なくも一方の表面の表面粗さが2000nm以下の2軸延伸ポリアミドフィルムを基材フィルム10とし、前記基材フィルム10の表面粗さが2000nmの面に無機酸化物の蒸着膜20を設けたガスバリア性フィルムである。滑り性、透明性、ガスバリア性に優れ、剥離帯電を効果的に防止でき、巻き取り外観に優れるガスバリア性フィルムである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスバリア性フィルムに関し、更に詳しくは、滑り性が改良され、巻き取り外観に優れるガスバリア性フィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、飲食品、化成品、雑貨品、その他を充填包装する包装用材料としては、内容物の変質、変色、その他を防止するために、酸素ガス、水蒸気等の透過を遮断、阻止する、種々の形態からなるバリア性積層材が開発され、提案されている。
【0003】
このようなバリア性積層材の用途としてレトルト用パウチがあり、一般には、温度110〜130℃位、圧力1〜3Kgf/cm2・Gで約20〜60分間程度の殺菌工程を経る。このようなレトルト条件下で使用するバリア性積層材として、アルミなどの金属箔を用いた包装材料があり、温度・湿度の影響が無く、高度なガスバリア性を有するものとして多用されている。
【0004】
しかしながら、金属箔を使用すると内容物を確認することができず、使用後の廃棄の際には金属箔が不燃物として残存するなどの問題がある。このため、金属箔を使用せず、内容物が透視できるバリア性積層材が開発されている(特許文献1)。該特許文献1では、芳香族ポリアミド、脂肪族ポリアミド、および上記芳香族ポリアミドと上記脂肪族ポリアミドとの混合物との3層のうちいずれか2層を含むポリアミド系積層2軸延伸フィルムの少なくとも片面に、厚さ100〜3000Åの範囲で珪素酸化物薄膜層が形成されてなるガスバリア性の優れた透明積層プラスチックフィルムを開示する。ポリアミドを基材として使用するためガスバリア性と機械的強度が共に優れ、透明性が確保されたバリア性積層材となる、という。
【0005】
一方、ポリアミドは機械的強度に優れるが、蒸着時の巻き取り不良や剥離帯電の問題など、加工工程でトラブルを起こす場合がある。このようなポリアミドフィルムの蒸着時の巻き取り不良を改善するものとして、静摩擦係数0.7以下、動摩擦係数0.6以下の2軸延伸ポリアミドフィルムを使用する技術がある(特許文献2)。特許文献2では、2軸延伸ポリアミドフィルムの摩擦係数を小さくする手段として、ポリアミドに無機質粒子、有機高分子を添加し、または滑り剤を塗布する方法を例示し、動摩擦係数が0.34〜0.73のポリアミドフィルムを製造している。
【特許文献1】特開平6−190961号公報
【特許文献2】特開昭59−219337号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記特許文献1記載のフィルムは酸素透過度を低減させることができ、ポリアミドを基材フィルムとするため耐衝撃性や機械的強度に優れる点で有利であるが、アミド基の水素結合に基づく吸湿性によって容易に寸法変化を生じやすい。このため、蒸着膜がポリアミドフィルムの伸縮に追従できない場合には、クラックやピンホールが生じ、バリア性能を維持することが困難となる。また、2軸延伸ポリアミドフィルムは、耐衝撃性、耐突き刺し性等に優れているため大型袋や液体小袋、スタンドパウチなどの物理的に応力がかかり耐久性を要求される用途に多用される。しかしながら、ポリアミドフィルムと蒸着層との密着強度が不十分な場合には、剥離不良が発生しやすく、耐久性の維持が困難となる。また、レトルトやボイルといった加熱殺菌処理を行う用途に使用される場合に、ポリアミドのガラス転移温度を越える加熱水処理を行うと、蒸着層とポリアミドフィルムとの間で剥離が生じる場合があり、得られるポリアミド蒸着フィルムの用途や加工条件が限定される。このように、蒸着ポリアミドフィルムでは、バリア性能の維持と剥離防止のためにポリアミドフィルムと蒸着層との密着強度の向上が強く求められるが、これを十分に満たすものは存在しない。
【0007】
特に、摩擦係数とフィルムの透明性とは二律背反の関係があり、特許文献2のように、動摩擦係数を低くするために無機質粒子や有機高分子粒子を添加すると、フィルムの透明性を確保することが困難となる。加えて、これら粒子の添加によってフィルム表面に凹凸が大きくなると蒸着層に間隙が発生し易くなり、ガスバリア性が低下する。また、摩擦係数を制御するためにフィルム表面に滑り剤を表面に塗布する場合は、滑り剤の上に蒸着層を形成するためポリアミド膜と蒸着層との密着性を確保することができず、ガスバリア性が低下する。
【0008】
更に、動摩擦係数を所定値以下とすれば、ポリアミドフィルムに蒸着処理を行う際の滑り性を改良することができるが、実際には酸化アルミニウムなどの無機酸化物の蒸着膜を形成した蒸着フィルムは、酸化アルミニウムなどの電気不導体から構成されるためにフィルムロールからの繰り出し時や蒸着処理時のゴムロールなどとの接触により帯電し易くなる。このため、帯電によって滑り性が低下し、ロール状に巻き上げる際にたてジワが発生し、巻き取り性が低下する場合がある。
【0009】
そこで本発明は、機械的強度、酸素ガス、水蒸気等の透過を阻止するバリア性に優れ、透明性が確保され、およびフィルム巻き取り時の操作性に優れ、このためロール巻き取り外観に優れるガスバリア性フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、ガスバリア性フィルムについて詳細に検討した結果、ヘイズが6.0%以下のポリアミドフィルムを使用すれば得られるガスバリア性フィルムの透明性を確保できること、前記ポリアミドフィルムの表面粗さが2000nm以下の面に無機酸化物の蒸着層を形成すると、極めて該蒸着膜とポリアミドフィルムとの高いラミネート強度を確保してガスバリア性を向上させうること、温度23℃±2℃、相対湿度50±10%での動摩擦係数が0.4以下の2軸延伸ポリアミドフィルムを基材フィルムとして使用すると滑り性が改良されるため、無機酸化物の蒸着膜の形成工程の操作性を向上させうること、および該ポリアミドフィルムに無機酸化物の蒸着膜を形成した蒸着フィルムにおいて、ポリアミドフィルムのアッシュテスト性能が15mm以下である場合には、該蒸着フィルムの巻き取り時にしわの発生などを効果的に防止でき、このためロール巻取り外観を向上させ得ることを見出し、本発明を完成させた。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るガスバリア性フィルムは、温度23℃±2℃、相対湿度50±10%での動摩擦係数が0.4以下の2軸延伸ポリアミドフィルムを基材フィルムとして使用することで、滑り性を確保することができ、蒸着操作時などの後工程を円滑に行うことができる。
【0012】
本発明のガスバリア性フィルムは、ヘイズ6.0%以下のポリアミドフィルムに無機酸化物の蒸着層を形成するものであり、透明性に優れる。
【0013】
本発明のガスバリア性フィルムは、基材フィルムのアッシュテスト性能が15mm以下であり、巻取り時のしわの発生を防止できるため、ロール巻き取り外観に優れ、かつ剥離帯電を防止できる巻き取り時のシワの発生などを効果的に防止することができ、安全性に優れると共にしわに起因するガスバリア性の低下を防止することができる。
【0014】
更に、本発明のガスバリア性フィルムは、表面粗さが2000nm以下のポリアミドフィルムに無機酸化物の蒸着層を形成したものであり、ポリアミドフィルムと無機酸化物蒸着層との密着性に優れ、高いガスバリア性を確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の第一は、温度23℃±2℃、相対湿度50±10%での動摩擦係数が0.4以下であり、ヘイズが6.0%以下、アッシュテスト性能が15mm以下であり、少なくも一方の表面の表面粗さが2000nm以下である2軸延伸ポリアミドフィルムを基材フィルムとし
前記基材フィルムの表面粗さが2000nmの面に無機酸化物の蒸着膜を設けたガスバリア性フィルムである。以下、本発明を詳細に説明する。
【0016】
(1)フィルムの層構成
本発明のガスバリア性フィルムは、図1(a)に示すように、ポリアミドフィルム(10)と無機酸化物の蒸着膜(20)とを有する。更に、図1(b)に示すように、ポリアミドフィルム(10)および蒸着膜(20)上にそれぞれ表面処理層(10’)、(20’)を有していても良い。
【0017】
(2)ポリアミドフィルム
本発明では、ポリアミドフィルムを基材フィルムとして使用する。本発明で使用する基材フィルムは、化学的ないし物理的強度に優れ、無機酸化物の蒸着膜を製膜化する条件等に耐え、また、その無機酸化物の蒸着膜の膜特性を損なうことなく良好に保持し得ることができるポリアミドフィルムであり、温度23±2℃、相対湿度50±10%での動摩擦係数が0.4以下、より好ましくは0.3以下、ヘイズが6.0%以下、より好ましくは4.0%以下、アッシュテスト性能が15mm以下、より好ましくは8〜12mmであり、少なくも一方の表面の表面粗さが2000nm以下、より好ましくは1500nm以下の2軸延伸ポリアミドフィルムである。
【0018】
本発明は、高い耐久性を有するバリア性フィルムを目的とするため機械的強度に優れる2軸延伸ポリアミドフィルムを使用するものであるが、ポリアミドフィルムは吸湿しやすく滑り性に劣る。一方、滑り性の確保とガスバリア性の確保との両立は困難であり、滑り性確保のために無機粒子を配合すると、ガスバリア性確保のために無機酸化物の蒸着膜を製膜する意義をそこなう場合があり、透明性も低下する。そこで、本発明では、滑り性、透明性に優れ、巻き取り時のシワの発生を防止してロール巻き取り外観に優れ、かつラミネート接着強度を向上して高いガスバリア性を有するガスバリア性フィルムを製造するため、基材フィルムを、温度23±2℃、相対湿度50±10%での動摩擦係数が0.4以下であり、ヘイズが6.0%以下、アッシュテスト性能が15mm以下であり、少なくも一方の表面の表面粗さが2000nm以下である2軸延伸ポリアミドフィルムに限定した。
【0019】
このようなポリアミドフィルムとしては、脂肪族ポリアミドであっても、芳香族ポリアミドであっても、これらを混合した組成物であってもよい。好ましいポリアミドの具体例としては、ポリカプロアミド(ナイロン6)、ポリ‐ε‐アミノへプタン酸(ナイロン7)、ポリ‐ε‐アミノノナン酸(ナイロン9)、ポリウンデカンアミド(ナイロン11)、ポリラウリンラクタム(ナイロン12)、ポリエチレンジアミンアジパミド(ナイロン2・6)、ポリテトラメチレンアジパミド(ナイロン4・6)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン6・6)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ナイロン6・10)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ナイロン6・12)、ポリオクタメチレンドデカミド(ナイロン6・12)、ポリオクタメチレンアジパミド(ナイロン8・6)、ポリデカメチレンアジパミド(ナイロン10・6)、ポリデカメチレンセバカミド(ナイロン10・10)、ポリドデカメチレンドデカミド(ナイロン12・12)、メタキシレンジアミン‐6ナイロン(MXD6)などを挙げることができ、これらを主成分とする共重合体であってもよく、その例としては、カプロラクタム/ラウリンラクタム共重合体、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアンモニウムアジぺート共重合体、ラウリンラクタム/ヘキサメチレンジアンモニウムアジぺート共重合体、ヘキサメチレンジアンモニウムアジぺート/ヘキサメチレンジアンモニウムセバケート共重合体、エチレンジアンモニウムアジぺート/ヘキサメチレンジアンモニウムアジぺート共重合体、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアンモニウムアジぺート/ヘキサメチレンジアンモニウムセバケート共重合体などを挙げることができる。これらのポリアミドには、フィルムの柔軟性改質成分として、芳香族スルホンアミド類、p‐ヒドロキシ安息香酸、エステル類などの可塑剤や低弾性率のエラストマー成分やラクタム類を配合することも有効である。また、従前公知のポリアミドフィルムであって、ヘイズが6.0%以下、動摩擦係数が0.4以下のポリアミドフィルムの中から、アッシュテスト性能が15mm以下、少なくも一方の表面の表面粗さが2000nm以下のものを選択して使用することができる。
【0020】
本発明において、上記基材フィルムの膜厚としては、6〜2000μm位、より好ましくは、9〜100μm位が望ましい。
【0021】
なお、上記ポリアミドの製膜化に際して、例えば、フィルムの加工性、耐熱性、耐候性、機械的性質、寸法安定性、抗酸化性、離形性、難燃性、抗カビ性、強度、その他等を改良、改質する目的で、種々のプラスチック配合剤や添加剤等を添加することができ、その添加量としては、極く微量から数十%まで、その目的に応じて、任意に添加することができる。
【0022】
上記において、一般的な添加剤としては、例えば、架橋剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、充填剤、補強剤、帯電防止剤、顔料、その他等を使用することができ、更には、改質用樹脂等も使用することができる。
【0023】
(3)表面処理
本発明において、上記の基材フィルムの一方の面に無機酸化物の蒸着膜を形成するが、予め基材フィルムに表面処理をおこなってもよい。これによって基材フィルムと無機酸化物の蒸着膜との密着性を向上させることができる。
【0024】
このような表面処理としては、コロナ放電処理、オゾン処理、酸素ガス若しくは窒素ガス等を用いた低温プラズマ処理、グロー放電処理、化学薬品等を用いて処理する酸化処理、その他等の前処理などがある。
【0025】
また、本発明で使用する基材フィルムの表面に、予め、プライマーコート剤、アンダーコート剤、アンカーコート剤、あるいは、蒸着アンカーコート剤等を任意に塗布し、表面処理とすることもできる。なお、前記コート剤としては、例えば、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリエチレンあるいはポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂あるいはその共重合体ないし変性樹脂、セルロース系樹脂、その他等をビヒクルの主成分とする樹脂組成物を使用することができる。
【0026】
このような表面処理の中でも、特に、コロナ処理やプラズマ処理を行うことが好適である。例えばプラズマ処理としては、気体をアーク放電により電離させることにより生じるプラズマガスを利用して表面改質を行なうプラズマ処理がある。プラズマガスとしては、上記のほかに、酸素ガス、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガス等の無機ガスを使用することができる。例えば、後記する化学気相成長法による無機酸化物の蒸着膜を形成する直前に、インラインでプラズマ処理を行うことにより、基材フィルムの表面の水分、塵などを除去すると共にその表面の平滑化、活性化、その他等の表面処理を可能とすることができる。また、蒸着後に、プラズマ処理を行い、蒸着層とその上に積層される他の層との密着性を向上することもできる。なお、プラズマ処理としては、プラズマ出力、プラズマガスの種類、プラズマガスの供給量、処理時間、その他の条件を考慮してプラズマ放電処理を行うことが好ましい。また、プラズマを発生する方法としては、直流グロー放電、高周波放電、マイクロ波放電、その他の装置を使用することができる。また、大気圧プラズマ処理法によりプラズマ処理を行なうこともできる。
【0027】
(4)無機酸化物の蒸着膜
無機酸化物の蒸着膜としては、例えば、化学気相成長法、物理気相成長法またはこれらを複合して、無機酸化物の蒸着膜の1層からなる単層膜あるいは2層以上からなる多層膜または複合膜を形成して製造することができる。
【0028】
化学気相成長法としては、例えば、プラズマ化学気相成長法、低温プラズマ化学気相成長法、熱化学気相成長法、光化学気相成長法等の化学気相成長法(Chemical Vapor Deposition法、CVD法)等がある。具体的には、基材フィルムの一方の面に、有機珪素化合物等の蒸着用モノマーガスを原料とし、キャリヤーガスとして、アルゴンガス、ヘリウムガス等の不活性ガスを使用し、更に、酸素供給ガスとして、酸素ガス等を使用し、低温プラズマ発生装置等を利用する低温プラズマ化学気相成長法を用いて酸化珪素等の無機酸化物の蒸着膜を形成することができる。
【0029】
上記において、低温プラズマ発生装置としては、例えば、高周波プラズマ、パルス波プラズマ、マイクロ波プラズマ等の発生装置を使用することができる。高活性の安定したプラズマが得られる点で、高周波プラズマ方式による発生装置を使用することが好ましい。
【0030】
上記の低温プラズマ化学気相成長法による無機酸化物の蒸着膜の形成法の一例を低温プラズマ化学気相成長装置の概略的構成図である図2を用いて説明する。
【0031】
本発明では、プラズマ化学気相成長装置221の真空チャンバー222内に配置された巻き出しロール223から基材フィルム201を繰り出し、更に、該基材フィルム201を、補助ロール224を介して所定の速度で冷却・電極ドラム225周面上に搬送する。一方、ガス供給装置226、227および、原料揮発供給装置228等から酸素ガス、不活性ガス、有機珪素化合物等の蒸着用モノマーガスその他等を供給して蒸着用混合ガス組成物を調製し、これを原料供給ノズル229を通して真空チャンバー222内に導入する。該蒸着用混合ガス組成物を上記冷却・電極ドラム225周面上に搬送された基材フィルム201の上に供給し、グロー放電プラズマ230によってプラズマを発生させ照射し、酸化珪素等の無機酸化物の蒸着膜を製膜化する。次いで、上記で酸化珪素等の無機酸化物の蒸着膜を形成した基材フィルム201を補助ロール233を介して巻き取りロール234に巻き取れば、プラズマ化学気相成長法による無機酸化物の蒸着膜を形成することができる。なお、冷却・電極ドラム225は、真空チャンバー222の外に配置されている電源231から所定の電力が印加され、冷却・電極ドラム225の近傍には、マグネット232を配置してプラズマの発生が促進されている。このように冷却・電極ドラムに電源から所定の電圧が印加されているため、真空チャンバー内の原料供給ノズルの開口部と冷却・電極ドラムとの近傍でグロー放電プラズマが生成される。このグロー放電プラズマは、混合ガスなかの1つ以上のガス成分から導出されるものであり、この状態で基材フィルムを一定速度で搬送させると、グロー放電プラブマによって、冷却・電極ドラム周面上の基材フィルムの上に、酸化珪素等の無機酸化物の蒸着膜を形成することができる。なお、図2中、符号235は真空ポンプを表す。
【0032】
本発明では、真空チャンバー内を真空ポンプにより減圧し、真空度1×10-1〜1×10-8Torr位、好ましくは、真空度1×10-3〜1×10-7Torr位に調整することが好ましい。
【0033】
原料揮発供給装置は、原料である有機珪素化合物を揮発させ、ガス供給装置から供給される酸素ガス、不活性ガス等と混合させ、この混合ガスを原料供給ノズルを介して真空チャンバー内に導入させる。この際、混合ガス中の有機珪素化合物の含有量は、1〜40%、酸素ガスの含有量は10〜70%、不活性ガスの含有量は10〜60%の範囲とすることが好ましく、例えば、有機珪素化合物:酸素ガス:不活性ガスの混合比を1:6:5〜1:17:14程度とすることができる。なお、上記有機珪素化合物、不活性ガス、酸素ガスなどを供給する際の真空チャンバー内の真空度は、1×10-1〜1×10-4Torr、好ましくは真空度1×10-1〜1×10-2Torrであることが好ましく、また、基材フィルムの搬送速度は、10〜300m/分、好ましくは50〜150m/分である。このようにして得られる酸化珪素等の無機酸化物の蒸着膜の形成は、基材フィルムの上に、プラズマ化した原料ガスを酸素ガスで酸化しながらSiOXの形で薄膜状に形成されるので、当該形成される酸化珪素等の無機酸化物の蒸着膜は、緻密で隙間の少ない、可撓性に富む連続層となり、従って、酸化珪素等の無機酸化物の蒸着膜のバリア性は、従来の真空蒸着法等によって形成される酸化珪素等の無機酸化物の蒸着膜と比較してはるかに高く、薄い膜厚で十分なバリア性を得ることができる。また、SiOXプラズマにより基材フィルムの表面が清浄化され、基材フィルムの表面に、極性基やフリーラジカル等が発生するので、形成される酸化珪素等の無機酸化物の蒸着膜と基材フィルムとの密接着性が高いものとなる。更に、酸化珪素等の無機酸化物の連続膜の形成時の真空度は、1×10-1〜1×10-4Torr、好ましくは、1×10-1〜1×10-2Torrであって、従来の真空蒸着法により酸化珪素等の無機酸化物の蒸着膜を形成する時の真空度、1×10-4〜1×10-5Torrに比較して低真空度であるから、基材フィルムの原反交換時の真空状態設定時間を短くすることができ、真空度が安定しやすく製膜プロセスも安定化する。
【0034】
本発明において、有機珪素化合物等の蒸着モノマーガスを使用して形成される酸化珪素の蒸着膜は、有機珪素化合物等の蒸着モノマーガスと酸素ガス等とが化学反応し、その反応生成物が、基材フィルムの一方の面に密接着し、緻密な、柔軟性等に富む薄膜を形成するものであり、通常、一般式SiOX(ただし、Xは、0〜2の数を表す)で表される酸化珪素を主体とする連続状の薄膜である。上記酸化珪素の蒸着膜としては、透明性、バリア性等の点から、一般式SiOX(ただし、Xは、1.3〜1.9の数を表す。)で表される酸化珪素の蒸着膜を主体とする薄膜であることが好ましい。なお、Xの値は、蒸着モノマーガスと酸素ガスのモル比、プラズマのエネルギー等により変化するが、一般的に、Xの値が小さくなればガス透過度は小さくなるが、膜自身が黄色性を帯び、透明性が悪くなる。
【0035】
本発明において、酸化珪素の蒸着膜は、酸化珪素を主体とし、更に、炭素、水素、珪素または酸素の1種類、または2種類以上の元素からなる化合物の少なくとも1種類を化学結合等により含有する蒸着膜からなることを特徴とするものである。例えば、C−H結合を有する化合物、Si−H結合を有する化合物、または、炭素単位がグラファイト状、ダイヤモンド状、フラーレン状等になっている場合、更に、原料の有機珪素化合物やそれらの誘導体を化学結合等によって含有する場合があるものである。例えば、CH3部位を持つハイドロカーボン、SiH3シリル、SiH2シリレン等のハイドロシリカ、SiH2OHシラノール等の水酸基誘導体等を挙げることができる。なお、上記以外でも、蒸着過程の条件等を変化させることにより、酸化珪素の蒸着膜中に含有される化合物の種類、量等を変化させることができる。この際、上記の化合物が酸化珪素の蒸着膜中に含有する含有量としては、0.1〜50質量%、好ましくは5〜20質量%である。含有率が0.1質量%未満であると、酸化珪素の蒸着膜の耐衝撃性、延展性、柔軟性等が不十分となり、曲げなどにより、擦り傷、クラック等が発生し易く、高いバリア性を安定して維持することが困難になる場合があり、一方、50質量%を越えるとバリア性が低下する場合がある。
【0036】
更に、本発明では、酸化珪素の蒸着膜において、上記の化合物の含有量が酸化珪素の蒸着膜の表面から深さ方向に向かって減少していることが好ましい。これにより、酸化珪素の蒸着膜の表面では上記化合物等により耐衝撃性等が高められ、他方、基材フィルムとの界面では、上記化合物の含有量が少ないために基材フィルムと酸化珪素の蒸着膜との密接着性が強固なものとなる。
【0037】
本発明において、上記の酸化珪素の蒸着膜は、例えばX線光電子分光装置(Xray Photoelectron Spectroscopy、XPS)、二次イオン質量分析装置(Secondary Ion Mass Spectroscopy、SIMS)等の表面分析装置を用い、深さ方向にイオンエッチングする等して分析し、酸化珪素の蒸着膜の元素分析を行うことで、上記の物性を確認することができる。
【0038】
本発明において、上記酸化珪素の蒸着膜の膜厚は、50Å〜4000Å位であることが好ましく、より好ましくは100〜1000Åである。4000Åより厚くなると、その膜にクラック等が発生する場合があり、一方、50Å未満であると、バリア性の効果を奏することが困難になる場合がある。なお、膜厚は、例えば、株式会社理学製の蛍光X線分析装置(機種名、RIX2000型)を用いて、ファンダメンタルパラメーター法で測定することができる。また、酸化珪素の蒸着膜の膜厚を変更する手段としては、蒸着膜の体積速度を大きくする方法、すなわち、モノマーガスと酸素ガス量を多くする方法や蒸着する速度を遅くする方法等によって行うことができる。
【0039】
本発明では、無機酸化物の蒸着膜として、無機酸化物の蒸着膜の1層だけでなく、2層あるいはそれ以上を積層した多層膜の状態でもよく、また、使用する材料も1種または2種以上の混合物で使用し、また、異種の材質で混合した無機酸化物の蒸着膜を構成することもできる。
【0040】
本発明において、酸化珪素等の無機酸化物の蒸着膜を形成する有機珪素化合物等の蒸着用モノマーガスとしては、例えば、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、ヘキサメチルジシロキサン、ビニルトリメチルシラン、メチルトリメチルシラン、ヘキサメチルジシラン、メチルシラン、ジメチルシラン、トリメチルシラン、ジエチルシラン、プロピルシラン、フェニルシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、その他等を使用することができる。これらの中でも、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、または、ヘキサメチルジシロキサンを原料として使用することが、その取り扱い性、形成された連続膜の特性等から、特に好ましい。なお、上記において、不活性ガスとしては、例えば、アルゴンガス、ヘリウムガス等を使用することができる。
【0041】
一方、本発明では、物理気相成長法によっても無機酸化物の蒸着膜を形成することができる。このような物理気相成長法として、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレ−ティング法、イオンクラスタービーム法等の物理気相成長法(Physical Vapor Deposition法、PVD法)などにより無機酸化物の蒸着膜を形成することができる。
【0042】
具体的には、金属または金属の酸化物を原料とし、これを加熱して蒸気化し、これを基材フィルムの一方の上に蒸着する真空蒸着法、または、原料として金属または金属の酸化物を使用し、酸素を導入して酸化させて基材フィルムの一方の上に蒸着する酸化反応蒸着法、更に酸化反応をプラズマで助成するプラズマ助成式の酸化反応蒸着法等を用いて蒸着膜を形成することができる。なお、蒸着材料の加熱方式としては、例えば、抵抗加熱方式、高周波誘導加熱方式、エレクトロンビーム加熱方式(EB)等にて行うことができる。物理気相成長法による無機酸化物の薄膜膜を形成する方法について、巻き取り式真空蒸着装置の一例を示す概略的構成図を示す図3を参照して説明する。
【0043】
まず、巻き取り式真空蒸着装置241の真空チャンバー242の中で、巻き出しロール243から繰り出す基材フィルム201は、ガイドロール244、245を介して、冷却したコーティングドラム246に案内される。上記の冷却したコーティングドラム246上に案内された基材フィルム201の上に、るつぼ247で熱せられた蒸着源248、例えば、金属アルミニウム、あるいは、酸化アルミニウム等を蒸発させ、更に、必要ならば、酸素ガス吹出口249より酸素ガス等を噴出し、これを供給しながら、マスク250、250を介して、例えば、酸化アルミニウム等の無機酸化物の蒸着膜を成膜化し、次いで、上記において、例えば、酸化アルミニウム等の無機酸化物の蒸着膜を形成した基材フィルム201を、ガイドロール251、252を介して送り出し、巻き取りロール253に巻き取ると物理気相成長法による無機酸化物の蒸着膜を形成することができる。なお、上記巻き取り式真空蒸着装置を用いて、まず第1層の無機酸化物の蒸着膜を形成し、次いで、その上に無機酸化物の蒸着膜を更に形成し、または、上記巻き取り式真空蒸着装置を2連に連接し、連続的に、無機酸化物の蒸着膜を形成して、2層以上の多層膜からなる無機酸化物の蒸着膜を形成してもよい。
【0044】
金属または無機酸化物の蒸着膜としては、基本的には、金属の酸化物を蒸着した薄膜であればよく、例えば、ケイ素(Si)、アルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、カリウム(K)、スズ(Sn)、ナトリウム(Na)、ホウ素(B)、チタン(Ti)、鉛(Pb)、ジルコニウム(Zr)、イットリウム(Y)等の金属の酸化物の蒸着膜を使用することができる。好ましくは、ケイ素(Si)、アルミニウム(Al)等の金属の酸化物の蒸着膜を挙げることができる。よって、上記の金属の酸化物の蒸着膜は、ケイ素酸化物、アルミニウム酸化物、マグネシウム酸化物等のように金属酸化物と称することができ、その表記は、例えば、SiOX、AlOX、MgOX等のようにMOX(ただし、式中、Mは、金属元素を表し、Xの値は、金属元素によってそれぞれ範囲がことなる。)で表される。
【0045】
また、上記のXの値の範囲としては、ケイ素(Si)は0を超え2以下、アルミニウム(Al)は0を超え1.5以下、マグネシウム(Mg)は0を超え1以下、カルシウム(Ca)は0を超え1以下、カリウム(K)は0を超え0.5以下、スズ(Sn)は0を超え2以下、ナトリウム(Na)は0を超え0.5以下、ホウ素(B)は0を超え1、5以下、チタン(Ti)は0を超え2以下、鉛(Pb)は0を超え1以下、ジルコニウム(Zr)は0を超え2以下、イットリウム(Y)は0を超え1.5以下の範囲である。上記においてX=0の場合は完全な金属であり、Xの範囲の上限は、完全に酸化した値である。本発明において、Mとしてケイ素やアルミニウムが好ましく、その際これらのXの値は、ケイ素(Si)は1.0〜2.0、アルミニウム(Al)は0.5〜1.5の範囲である。なお、無機酸化物の蒸着膜の膜厚は、使用する金属や金属の酸化物の種類等によって異なるが、例えば、50〜2000Å、好ましくは、100〜1000Åの範囲内で任意に選択することができる。また、無機酸化物の蒸着膜としては、使用する金属または金属の酸化物としては、1種または2種以上の混合物で使用し、異種の材質で混合した無機酸化物の蒸着膜を構成することもできる。
【0046】
更に、本発明では、例えば物理気相成長法と化学気相成長法の両者を併用して異種の無機酸化物の蒸着膜の2層以上からなる複合膜を形成して使用することもできる。
【0047】
上記の異種の無機酸化物の蒸着膜の2層以上からなる複合膜としては、まず、基材フィルムの上に、化学気相成長法により、緻密で柔軟性に富み、比較的にクラックの発生を防止し得る無機酸化物の蒸着膜を設け、次いで、該無機酸化物の蒸着膜の上に、物理気相成長法による無機酸化物の蒸着膜を設けて、2層以上からなる複合膜からなる無機酸化物の蒸着膜を構成することが好ましいものである。上記とは逆くに、基材フィルムの上に、先に、物理気相成長法により、無機酸化物の蒸着膜を設け、次に、化学気相成長法により、緻密で、柔軟性に富み、比較的にクラックの発生を防止し得る無機酸化物の蒸着膜を設けて、2層以上からなる複合膜からなる無機酸化物の蒸着膜を構成することもできる。
【0048】
(5)ガスバリア性フィルム
本発明のガスバリア性フィルムは、前記した構成によって、透明性およびガスバリア性に優れ、機械的強度および滑り性が確保され、帯電が防止されるため、ロール状に巻き上げる際のたてジワの発生を回避し、巻き取り性を向上させることができる。特に、基材フィルムが、温度23℃±2℃、相対湿度50±10%での動摩擦係数が0.4以下であるため、ガスバリア性フィルムの蒸着工程でのフィルム滑り性に優れ、蒸着フィルムの製造を速やかに行うことができる。また、該基材フィルムのアッシュテスト性能が15mm以下であるため、蒸着フィルムの帯電を回避して、得られる無機酸化物蒸着ガスバリア性フィルムの巻き取りを円滑に行い、巻き取り性に優れるロール状物を得ることができる。
【0049】
本発明のガスバリア性フィルムは、更に、上記無機酸化物の蒸着膜またはその表面処理面に、更にプライマー層、ラミネート接着剤層、印刷層、ヒートシール層などを任意に設けることができる。
【0050】
(5−1)プライマー層
プライマー層としては、たとえば、シランカップリング剤と充填剤とを含むポリウレタン系樹脂組成物によるコーティング薄膜が例示できる。
【0051】
該コーティング薄膜に使用するシランカップリング剤としては、二元反応性を有する有機官能性シランモノマ−類を使用することができ、例えば、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルートリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3、4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、ビス(β−ヒドロキシエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルシリコ−ンの水溶液等の1種ないしそれ以上を使用することができる。
【0052】
上記のようなシランカップリング剤は、その分子の一端にある官能基、通常、クロロ、アルコキシ、または、アセトキシ基等が加水分解し、シラノール基(SiOH)を形成し、これが、無機酸化物の蒸着膜に含まれるケイ素その他の活性な基、例えば、水酸基等の官能基と何らかの作用、例えば、脱水縮合反応等の反応を起こして、蒸着層上にシランカップリング剤が共有結合等で修飾され、更に、シラノール基自体の前記蒸着層への吸着や水素結合等により強固な結合を形成する。他方、シランカップリング剤の他端にあるビニル、メタクリロキシ、アミノ、エポキシ、あるいは、メルカプト等の有機官能基が、そのシランカップリング剤の薄膜の上に形成される、例えば、本発明のガスバリア性フィルムに積層され得るラミネート用接着剤層、アンカーコート剤層、その他の層を構成する物質と反応して強固な結合を形成することができる。これにより、ラミネート用接着剤層、アンカーコート剤層等を介して、蒸着層やその上に形成される表面処理層と他の層とが強固に密接着してラミネート強度を高めることができる。
【0053】
充填剤としては、例えば、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、アルミナホワイト、シリカ、タルク、ガラスフリット、樹脂粉末、その他等のものを使用することができる。これは、ポリウレタン系樹脂組成物について、その粘度等を調整し、そのコーティング適性等を高めるものである。ポリウレタン系樹脂としては、具体的には、例えば、多官能イソシアネートとヒドロキシル基含有化合物との反応により得られるポリマー、具体的には、例えば、トリレンジイソシアナート、ジフェニルメタンジイソシアナート、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアナート等の芳香族ポリイソシアナート、あるいは、ヘキサメチレンジイソシアナート、キシリレンジイソシアナート等の脂肪族ポリイソシアナート等の多官能イソシアネートと、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリアクリレートポリオール等のヒドロキシル基含有化合物との反応により得られる一液ないし二液型ポリウレタン系樹脂を使用することができる。本発明では、上記したポリウレタン系樹脂を使用することにより、ラミネート加工性や製袋加工性を向上させ、後加工時における無機酸化物の薄膜のクラック等の発生を防止することができる。
【0054】
上記のポリウレタン系樹脂組成物としては、ポリウレタン系樹脂、1〜30質量%に対し、シランカップリング剤、0.05〜10質量%位、好ましくは、0.1〜5質量%位、充填剤0.1〜20質量%位、好ましくは、1〜10質量%位の割合で添加し、更に、必要ならば、安定剤、硬化剤、架橋剤、滑剤、紫外線吸収剤、その他等の添加剤を任意に添加し、溶媒、希釈剤等を加えて充分に混合してポリウレタン系樹脂組成物を調整する。上記ポリウレタン系樹脂組成物は、例えば、ロールコート、グラビアコート、ナイフコート、デップコート、スプレイコート、その他のコーティング法で無機酸化物の薄膜の上にコーティングし、しかる後コーティング膜を乾燥させて溶媒、希釈剤等を除去して、本発明にかかるガスバリア性フィルムとすることができる。なお、本発明において、ポリウレタン系樹脂組成物によるプライマー層の厚さとしては、例えば、0.01〜50μm位、好ましくは、0.1〜5μm位が望ましい。
【0055】
(5−2)ラミネート用接着剤
ラミネート用接着剤としては、ポリ酢酸ビニル系接着剤、アクリル酸のエチル、ブチル、2−エチルへキシルエステルなどのホモポリマーもしくはこれらとメタクリル酸メチル、アクリロニトリル、スチレンなどとの共重合体などからなるポリアクリル酸エステル系接着剤、シアノアクリレート系接着剤、エチレンと酢酸ビニル、アクリル酸エチル、アクリル酸、メタクリル酸などのモノマーとの共重合体などからなるエチレン共重合体系接着剤、セルロース系接着剤、ポリエステル系接着剤、ポリアミド系接着剤、ポリイミド系接着剤、尿素樹脂またはメラミン樹脂などからなるアミノ樹脂系接着剤、フェノール樹脂系接着剤、エポキシ系接着剤、ポリウレタン系接着剤、反応型(メタ)アクリル酸系接着剤、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、スチレン−ブタジエンゴムなどからなる無機系接着剤、シリコーン系接着剤、アルカリ金属シリケート、低融点ガラスなどからなる無機系接着剤、その他の接着剤を使用することができる。
【0056】
より好ましくは、例えば、トリレンジイソシアナート、ジフェニルメタンジイソシアナート、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアナートなどの芳香族ポリイソシアナート、またはヘキサメチレンジイソシアナート、キシリレンジイソシアナートなどの脂肪族ポリイソシアナート等の多官能イソシアナートと、ポリエーテル系ポリオール、ポリエステル系ポリオール、ポリアクリレートポリオール、その他のヒドロキシル基含有化合物との反応によって得られるポリエーテルポリウレタン系樹脂、ポリエステル系ポリウレタン系樹脂、ポリアクリレートポリウレタン系樹脂を主成分とするものである。これらによれば、柔軟性と屈曲性に富む薄膜を形成することができ、その引っ張り伸長度を向上させ、無機酸化物からなるバリア性薄膜層に対し、柔軟性、屈曲性などを有する被膜として作用し、ラミネート加工、印刷加工などの加工適性を向上させ、無機酸化物からなるバリア性薄膜層へのクラックなどの発生を回避することができる。上記ラミネート用接着剤からなるラミネート接着剤層は、JIS規格K7113に基づいて、100〜300%の引っ張り伸長度を有することが好ましい。
【0057】
これらの接着剤の組成系は、水性型、溶液型、エマルジョン型、分散型などのいずれの組成物形態でもよく、その性状はフィルム、シート状、粉末状、固形状などのいずれでもよい。更に、反応機構として、化学反応型、溶剤揮発型、熱溶着型、熱圧型などのいずれでもよい。また、ラミネート用接着剤の使用量には特に限定はないが、一般には、0.1〜10g/m2(乾燥状態)である。上記ラミネート用接着剤は、ロールコート、グラビアコート、キスコートその他のコート法や印刷法によって行うことができる。
【0058】
(5-3)印刷層
上記ガスバリア性フィルムを形成するいずれかの層の間に所望の印刷模様層を形成することができる。上記の印刷模様層としては、例えば、上記のプライマー層の上に、通常のグラビアインキ組成物、オフセットインキ組成物、凸版インキ組成物、スクリーンインキ組成物、その他のインキ組成物を使用し、例えば、グラビア印刷方式、オフセット印刷方式、凸版印刷方式、シルクスクリーン印刷方式、その他の印刷方式を使用し、例えば、文字、図形、絵柄、記号、その他からなる所望の印刷絵柄を形成することにより構成することができる。
【0059】
上記インキ組成物について、インキ組成物を構成するビヒクルとしては、例えば、ポリエチレン系樹脂、塩素化ポリプロピレン系樹脂などのポリオレフィン系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリスチレン系樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、フッ化ビニリデン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリビニルアセタール系樹脂、ポリビニルブチラール系樹脂、ポリブタジエン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、アルキッド系樹脂、エポキシ系樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、熱硬化型ポリ(メタ)アクリル系樹脂、メラミン系樹脂、尿素系樹脂、ポリウレタン系樹脂、フェノール系樹脂、キシレン系樹脂、マレイン酸樹脂、ニトロセルロース、エチルセルロース、アセチルブチルセルロース、エチルオキシエチルセルロースなどの繊維素系樹脂、塩化ゴム、環化ゴムなどのゴム系樹脂、石油系樹脂、ロジン、カゼインなどの天然樹脂、アマニ油、大豆油などの油脂類、その他の樹脂の1種ないし2種以上の混合物を使用することができる。本発明において、上記のようなビヒクルの1種ないし2種以上を主成分とし、これに、染料・顔料などの着色剤の1種ないし2種以上を加え、さらに必要ならば、充填剤、安定剤、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤などの光安定剤、分散剤、増粘剤、乾燥剤、滑剤、帯電防止剤、架橋剤、その他の添加剤を任意に添加し、溶剤、希釈剤などで充分に混練してなる各種の形態からなるインキ組成物を使用することができる。
【0060】
印刷層は、文字、図形、記号、絵柄、模様等の所望の印刷絵柄を表刷り印刷しても、あるいは裏刷り印刷してもよく、全面印刷でも、部分印刷でもよい。
【0061】
(5−4)アンカーコート層
本発明では、前記蒸着層上にヒートシールを押出し形成によって積層することができる。ヒートシール層を押出し形成する際に、前記蒸着層上にアンカーコート剤を介してヒートシール層を形成することが好ましい。使用するアンカーコート剤としては、イソシアネート系(ウレタン系)、ポリエチレンイミン系、ポリブタジエン系、有機チタン系、その他のアンカーコーティング剤が例示できる。より好ましくは、例えば、トリレンジイソシアナート、ジフェニルメタンジイソシアナート、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアナートなどの芳香族ポリイソシアナート、またはヘキサメチレンジイソシアナート、キシリレンジイソシアナートなどの脂肪族ポリイソシアナート等の多官能イソシアナートと、ポリエーテル系ポリオール、ポリエステル系ポリオール、ポリアクリレートポリオール、その他のヒドロキシル基含有化合物との反応によって得られるポリエーテルポリウレタン系樹脂、ポリエステル系ポリウレタン系樹脂、ポリアクリレートポリウレタン系樹脂を主成分とするものである。これらによれば、柔軟性と屈曲性に富む薄膜を形成することができ、その引っ張り伸長度を向上させ、無機酸化物からなるバリア性薄膜層に対し、柔軟性、屈曲性などを有する被膜として作用し、ラミネート加工、印刷加工などの加工適性を向上させ、無機酸化物からなるバリア性薄膜層へのクラックなどの発生を回避することができ、バリア性フィルムとヒートシール層との密接着性を向上させ、無機酸化物からなるバリア性薄膜層へのクラックの発生を防止し、ラミネート強度を向上させることができる。本発明においては、アンカーコート剤を、例えば、ロールコート、グラビアコート、ナイフコート、デップコート、スプレイコート、その他のコーティング法でコーティングし、溶剤、希釈剤等を乾燥して、本発明にかかるアンカーコート剤によるアンカーコート剤層を形成することができる。アンカーコート剤の塗布量としては、0.1〜5g/m2(乾燥状態)位が望ましい。また、上記アンカーコート剤からなるアンカーコート剤層は、JIS規格K7113に基づいて、100〜300%の引っ張り伸長度を有することが好ましい。
【0062】
(5−5)ヒートシール層
本発明にガスバリア性フィルムに積層できるヒートシール層としては、熱によって溶融し相互に融着し得る各種のヒートシール性を有するポリオレフィン系樹脂等を使用することができる。具体的には、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状(線状)低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、メタロセン触媒を使用して重合したエチレン−α・オレフィン共重合体、ポリプロピレン、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、メチルペンテンポリマー、ポリブテンポリマー、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂をアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマール酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸で変性した酸変性ポリオレフィン樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂等の樹脂からなる1種以上のフィルムもしくはシートまたは塗布膜などを使用することができる。
【0063】
ヒートシール層は、上記樹脂の1種からなる単層でも多層でもよく、ヒートシール層の厚さとしては、15〜130μmである。15μmを下回ると炭素含有酸化珪素の蒸着膜に擦り傷やクラックを発生する場合がある。
【0064】
(5−6)成型物
本発明のガスバリア性フィルムを使用して成型物を製造することができる。例えば、本発明のガスバリア性フィルムに、更にプライマー層、ラミネート用接着剤層、ヒートシール層を積層して積層材となし、包装用容器とすることができる。たとえば、該積層材の内層のヒートシール性フィルムの面を対向させて、それを折り重ねるか、或いはその二枚を重ね合わせ、更にその周辺端部をヒートシールしてシール部を設けて袋体を構成することができる。その製袋方法としては、上記の積層材を、その内層の面を対向させて折り曲げるか、あるいはその二枚を重ね合わせ、更にその外周の周辺端部を、例えば、側面シール型、二方シール型、三方シール型、四方シール型、封筒貼りシール型、合掌貼りシール型(ピロ−シール型)、ひだ付シール型、平底シール型、角底シール型、その他等のヒートシール形態によりヒートシールして、本発明にかかる種々の形態の包装用容器を製造することができる。また、例えば、自立性包装袋(スタンディングパウチ)等も製造することが可能であり、更に、本発明においては、積層材を使用してチューブ容器等も製造することができる。
【0065】
ヒートシールの方法としては、例えば、バ−シール、回転ロ−ルシール、ベルトシール、インパルスシール、高周波シール、超音波シール等の公知の方法で行うことができる。なお、本発明においては、上記のような包装用容器には、例えば、ワンピースタイプ、ツウーピースタイプ、その他等の注出口、あるいは開閉用ジッパ−等を任意に取り付けることができる。また、その形状は、角形容器、丸形等の円筒状の紙缶等のいずれのものでも製造することができる。
【0066】
このような包装用容器は、種々の飲食品、接着剤、粘着剤等の化学品、化粧品、医薬品、ケミカルカイロ等の雑貨品、その他等の物品の充填包装に使用されるものである。本発明においては、特に、例えば、醤油、ソース、スープ等を充填包装する液体用小袋、餅を充填包装する小袋、生菓子等を充填包装する軟包装用袋、あるいは、ボイルあるいはレトルト食品等を充填包装する軟包装用袋等の飲食物等を充填包装する包装用容器として有用なものである。特に、ガスバリア性と共に、レトルト条件、ボイル条件での耐剥離性に優れるため、特にレトルト用パウチなどとして好適に使用することができる。
【実施例】
【0067】
次に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、これらの実施例は何ら本発明を制限するものではない。
【0068】
実施例1
一方にコロナ処理面を有する厚さ15μmの2軸延伸ポリアミドフィルム(温度23℃±2℃、相対湿度50±10%での動摩擦係数0.3、ヘイズ3.2%、アッシュテスト性能12mm、表面粗さ1500nm)を使用し、これを図2に示すプラズマ化学気相成長装置に装着した。次に、プラズマ化学気相成長装置のチャンバー内を減圧した。
【0069】
一方、原料である有機珪素化合物であるヘキサメチルジシロキサン(以下、HMDSOという。)を原料揮発供給装置おいて揮発させ、ガス供給装置から供給された酸素ガスおよび不活性ガスであるヘリウムと混合させて原料ガスとした。
【0070】
製膜室で使用する原料ガスとして、原料ガスの混合比を、HMDSO:O2:He:Ar=1.2:6.0:0.5:0.5(単位;slm、スタンダードリッターミニット))、製膜出力:10kWとし、次いで、上記の厚さ15μmの2軸延伸ポリアミドフィルムをライン速度200m/minで搬送させながら、厚さ15μmの2軸延伸ポリアミドフィルムの前記コロナ処理面の上に膜厚15nmの酸化珪素の蒸着膜を製膜した。
【0071】
次いで、無機酸化物の蒸着膜面に、グロー放電プラズマ発生装置を使用し、パワー9kw、酸素ガス(O2):アルゴンガス(Ar)=7.0:2.5(単位:slm)からなる混合ガスを使用し、混合ガス圧6×10-5Torr、処理速度420m/minで酸素/アルゴン混合ガスプラズマ処理を行って、無機酸化物の蒸着膜面の表面張力を54dyne/cm以上向上させてプラズマ処理面を形成してガスバリア性フィルム1を製造した。
【0072】
実施例2
実施例1のプラズマ化学気相成長法に代えて、一酸化珪素を原料とし、図3の電子ビーム物理蒸着装置により、蒸着チヤンバー内の真空度を2.0×10-4mbarとし、巻き取りチヤンバー内の真空度を2×10-2mbarとし、電子ビーム電力を25kwとし、フィルムの搬送速度を300m/minとして膜厚30nmの蒸着層を形成した以外は、実施例1と同様にしてガスバリア性フィルム2を製造した。
【0073】
比較例1
実施例1の15μm厚さの2軸延伸ポリアミドフィルム(温度23℃±2℃、相対湿度50±10%での動摩擦係数0.3、ヘイズ3.2%、アッシュテスト性能12mm、表面粗さ1500nm、)に代えて、15μm厚さの2軸延伸ポリアミドフィルム(温度23℃±2℃、相対湿度50±10%での動摩擦係数0.6、ヘイズ2.4%、アッシュテスト性能18mm、表面粗さ1500nm)を使用した以外は、実施例1と同様に操作して、比較ガスバリア性フィルム1を製造した。
【0074】
比較例2
実施例2の15μm厚さの2軸延伸ポリアミドフィルム(温度23℃±2℃、相対湿度50±10%での動摩擦係数0.3、ヘイズ3.2%、アッシュテスト性能12mm、表面粗さ1500nm)に代えて、15μm厚さの2軸延伸ポリアミドフィルム(動摩擦係数0.6、ヘイズ2.4%、アッシュテスト性能18mm、表面粗さ1500nm)を使用した以外は、実施例2と同様にして比較ガスバリア性フィルム2を作成した。
【0075】
比較例3
実施例2の15μm厚さの2軸延伸ポリアミドフィルム(温度23℃±2℃、相対湿度50±10%での動摩擦係数0.3、ヘイズ3.2%、アッシュテスト性能12mm、表面粗さ1500nm)に代えて、15μm厚さの2軸延伸ポリアミドフィルム(温度23℃±2℃、相対湿度50±10%での動摩擦係数0.4、ヘイズ8.8%、アッシュテスト性能12mm、表面粗さ2400nm)を使用した以外は実施例2と同様に操作して、比較ガスバリア性フィルム3を作成した。
【0076】
評価方法
I. 実施例1、2、比較例1〜3で製造したガスバリア性フィルムを行い、ガスバリア性、ヘイズ、アッシュテスト、巻き取り外観の評価を行った。なお、動摩擦係数の測定方法を以下に併記する。
【0077】
(1) ガスバリア性は、酸素透過度および水蒸気透過度により評価した。結果を表1に示す。
【0078】
(i)酸素透過度の測定:
温度23℃、湿度90%RHの条件で、米国、モコン(MOCON)社製の測定機〔機種名、オクストラン(OX−TRAN2/20)〕にて測定した。
【0079】
(ii)水蒸気透過度の測定:温度40℃、湿度90%RHの条件で、米国、モコン(MOCON)社製の測定機〔機種名、パ−マトラン(PERMATRAN3/31)〕にて測定した。結果を表1に示す。なお、表1において、酸素透過度の単位は、〔cc/m2/day・23℃・90%RH〕であり、水蒸気透過度の単位は、〔g/m2/day・40℃・90%RH〕である。
【0080】
(2) 動摩擦係数:
摩擦係数は、JIS K7125 プラスチックフィルム及びシートの摩擦係数試験方法に準じて測定した摩擦係数である。なお、上記の摩擦係数は、金属(ステンレス板)に対する摩擦係数を測定した。
【0081】
(3) ヘイズ:
スガ試験機株式会社製HGM・2Kにて測定した。
(4) アッシュテスト:
ガスバリア性フィルムの表裏を組み合わせて10秒間すり合わせた後に、アッシュ(灰)の上1cmに該フィルムを静かにかざして灰の付着状況を観察し、付着直径で評価した。
【0082】
(5) 巻き取り外観:
ガスバリア性フィルムを10,000m巻き取った際の巻き取りロールの外観を評価した。
【0083】
【表1】

結果
(1) 実施例1、実施例2、比較例1、比較例2から、動摩擦係数が0.4を超え、アッシュテストが15mmを超えると、フィルムの滑り性が低下するため、巻き取り外観が悪くなった。一方、比較例3では、動摩擦係数が0.4を超えてもアッシュテストが15mm未満であれば、巻き取り外観に優れていた。このことから、巻き取り外観を向上させるには、アッシュテストが15mm以下であることが重要である、と判明した。
【0084】
(2) 実施例2と比較例3とから、動摩擦係数が0.4を超え、かつ表面粗さが2000nmを超えると、ガスバリア性が低下した。一方、比較例2では、動摩擦係数が0.4を超えても、ガスバリア性に対する影響は少なかった。このことから、ガスバリア性の確保には、表面粗さが2000nm以下であることが重要である、と判明した。
【0085】
(3) 実施例1、実施例2フィルムは、ヘイズが3.2%以下で透明性を確保しつつ動摩擦係数が0.3と滑り性が確保されている。このことから、ヘイズが6.0%以下であれば、滑り性を確保しつつ透明性が確保できることが判明した。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明によるガスバリア性フィルムは、特に、充填機における滑り性が改良され、かつボイルバリア性、レトルトバリア性、レトルト密着性、耐熱密着性、屈曲耐性に優れ、有用である。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】図1(a)〜(e)は、本発明のガスバリア性フィルムを説明する横断面図である。
【図2】低温プラズマ化学蒸着装置の一例を示す概略的構成図である。
【図3】巻き取り式真空蒸着装置の一例を示す概略的構成図である。
【符号の説明】
【0088】
10・・・基材フィルム、
10’ ・・・プラズマ表面処理面
20・・・無機酸化物の蒸着膜、
20’ ・・・コロナ表面処理面。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
温度23℃±2℃、相対湿度50±10%での動摩擦係数が0.4以下であり、ヘイズが6.0%以下、アッシュテスト性能が15mm以下であり、少なくも一方の表面の表面粗さが2000nm以下である2軸延伸ポリアミドフィルムを基材フィルムとし
前記基材フィルムの表面粗さが2000nmの面に無機酸化物の蒸着膜を設けたガスバリア性フィルム。
【請求項2】
前記無機酸化物の蒸着膜は、酸化珪素等の無機酸化物の蒸着膜または酸化アルミニウム等の無機酸化物の蒸着膜である、請求項1記載のガスバリア性フィルム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−143096(P2008−143096A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−334813(P2006−334813)
【出願日】平成18年12月12日(2006.12.12)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】