説明

ガスバリア性積層体

【課題】 ヒートシール層との密着強度に優れ、包装袋としての酸素バリア性に優れ、金属探知機の使用が可能であり、紙として廃棄可能なガスバリア積層体を得ることを可能とする。
【解決手段】 紙支持体上にエチレン変性ポリビニルアルコール樹脂と無機層状化合物を含む第1のガスバリア層と、エチレン変性ポリビニルアルコールからなる第2のガスバリア層を順次設けたガスバリア性積層体。第1のガスバリア層のエチレン変性ポリビニルアルコールと無機層状化合物の質量比が100/5〜100/50である前項に記載のガスバリア性積層体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品類を包装する包装用素材であり、特に酸素と反応して酸化や劣化を引き起こす可能性のある内容物を包装するための包装材料であり、なおかつ、金属探知機が使用でき、使用後に紙として分別処理可能な包装材料を提供するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、食品は酸素と接触すると、食品に含まれる油ような成分が酸素と反応(酸化)して、食品の味が変わったり変色を引き起こす。そのため、多くの食品包装はガスバリア性(特に酸素バリア性)を有する包装材料で包装されている。
従来、このような包装材料として、OPP(二軸延伸ポリプロピレン)にPVDCやPVA層を設けたガスバリアフィルムやPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムやナイロンフィルム上にシリカやアルミナの無機酸化物層あるいはアルミニウムの金属層を設けたガスバリアフィルム、紙基材とアルミ箔あるいは紙基材と前記ガスバリアフィルムを貼合したガスバリア性積層体がある。紙を基材として使用したガスバリア積層体は、優れた印刷適性、適度な剛度、高級感などといった特徴があり、包装材料として幅広く使用されている。
【0003】
しかし、アルミ箔やアルミ蒸着層を有するフィルムと紙基材を貼合すると、金属を含むため、食品包装後の異物検査のための金属探知機が使用できないといった問題がある。また、金属を含むため紙として焼却処理できず、古紙としても再利用できない。一方で、PVAやPVDC、あるいは無機酸化物などのガスバリア層を有するフィルムを使用するとコストが高くなるばかりか、フィルムと紙の積層体は包装適性や加工適性に劣る場合が多い。紙基材のガスバリア積層体のほとんどはアルミ箔と紙基材の積層体が使用されているのが現状である。
一方、紙基材表面にガスバリア層を形成する技術が従来から提案されている。特許文献1にはポリビニルアルコールと無機層状化合物を紙基材上に設ける方法が提案されている。特許文献2には、特許文献1と同様に、紙状物層と、上記紙状物層上に無機層状化合物を有する樹脂組成物層とを備えている包装用積層紙が提案されている。特許文献3には、紙の少なくとも一面に、水溶性高分子化合物100重量部に対し、層状無機化合物を0.01〜200重量部含有する樹脂組成物の層を有する紙複合体が提案されている。特許文献4には、エチレン含有量1〜15モル%のエチレン−ビニルエステル共重合体ケン化物(A)、エチレン含有量15〜70モル%のエチレン−ビニルエステル共重合体ケン化物(B)および無機層状化合物(C)からなる樹脂組成物が提案されている。特許文献5には、被覆層1、バリア層2および紙基材3からなる積層体において、バリア層2が、紙または二軸延伸フィルムの基材Bおよびエチレン含有率0〜15モル%のビニルアルコール系重合体の層Aからなる積層体が提案されている。特許文献6には、紙支持体上に水溶性高分子および無機層状化合物を含む第1ガスバリア層と第2ガスバリア層とを、この順で設けたガスバリア性積層体において、第1ガスバリア層中の水溶性高分子と無機層状化合物との質量比が75/25〜50/50であり、かつ、第2ガスバリア層中の水溶性高分子と無機層状化合物との質量比が95/5〜75/25であるガスバリア性積層体が提案されている。特許文献7には、紙支持体上に水溶性高分子と無機層状化合物と合成樹脂とを含むガスバリア層を設けたガスバリア性積層体において、水溶性高分子100質量部に対して、無機層状化合物が10〜150質量部、合成樹脂が5〜100質量部であるガスバリア性積層体が提案されている。
【特許文献1】特開平11−129381号公報
【特許文献2】特開平11−309817号公報
【特許文献3】特開平13−214396号公報
【特許文献4】特開平14−069255号公報
【特許文献5】特開平15−094574号公報
【特許文献6】特開2007−216592号公報
【特許文献7】特開2007−216593号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、このようなガスバリア積層体を用いた場合、ガスバリア層とポリエチレン樹脂層のようなヒートシール層との密着性が不十分であり、最終形態である包装袋に仕上げた時の酸素バリア性が悪いという問題があった。
従って、ガスバリア層とヒートシール層の密着強度を上げて、包装体の酸素バリア性を向上させることが求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は上記課題を解決するために以下の方法をとる。
本発明の第1は、紙支持体上にエチレン変性ポリビニルアルコール樹脂と無機層状化合物を含む第1のガスバリア層と、エチレン変性ポリビニルアルコールからなる第2のガスバリア層を順次設けたガスバリア性積層体である。
【0006】
本発明の第2は、第1のガスバリア層のエチレン変性ポリビニルアルコールと無機層状化合物の質量比が100/5〜100/50である本発明の第1に記載のガスバリア性積層体である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によって、ヒートシール層との密着強度に優れ、包装袋としての酸素バリア性に優れ、金属探知機の使用が可能であり、紙として廃棄可能なガスバリア積層体を得ることが可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下に本発明について詳細に説明する。
ポリビニルアルコールのような水溶性高分子とモンモリロナイトのような膨潤性無機層状化合物を混合した水性塗料を紙支持体上に塗工してバリア層を形成すると、無機層状化合物の曲路効果により、バリア性が大幅に向上する。
しかし、高いバリア性を発揮するためには、無機層状化合物の配合量を増やさなければならないが、無機層状化合物がある一定量以上になると、バリア層の密着強度や塗膜強度が大幅に低下することを本発明者らは見出した。ここでいう、バリア層の密着強度とは、バリア層とシーラント層を積層した時の、バリア層とシーラント層の密着強度をいう。密着強度が弱いと、包装後のヒートシール強度が弱くなるばかりか、シーラント層とバリア層の界面に空隙ができ、その部分を空気が透過して、包装袋としての酸素バリア性が大幅に低下することが判明した。
【0009】
そこで、本発明者らが鋭意検討したところ、紙基材表面にエチレン変性ポリビニルアルコール樹脂と無機層状化合物を含む第1のガスバリア層と、エチレン変性ポリビニルアルコールからなる第2のガスバリア層を順次設けることで、バリア層とシーラント層との密着強度が大幅に向上することを見出し、本発明に到った。
【0010】
本発明におけるエチレン変性ポリビニルアルコールとは、エチレンモノマーと酢酸ビニルモノマーを共重合させてケン化して得られるポリビニルアルコールである。エチレン単位の含有量は1〜20モル%のものが好ましく、2〜15モル%がさらに好ましく、3〜10モル%が特に好ましい。エチレン変性PVAのエチレン単位の含有量が1モル%未満になると、PVAの延伸性が十分でなくなるおそれがある。またエチレン単位の含有量が20モル%を超えると、水への溶解性が低下し水性塗料とすることが困難であるため好ましくない。なお、エチレン単位の含有量は、モノマー単位全体(エチレン単位+ビニルアルコール単位)に対するモル%で表すものとする(ビニルアルコール単位には、ケン化されていない酢酸ビニル単位も含むものとする)。
【0011】
エチレン変性ポリビニルアルコールは疎水性であるエチレン単位を含むため、シーラントであるポリエチレンフィルムやポリプロピレンフィルムなどのポリオレフィン系基材との密着性に優れると考えられる。
【0012】
また、エチレン変性ポリビニルアルコールの「ケン化」の程度はモル百分率で70%以上99.9%以下が好ましく、80%以上99%未満が更に好ましい。また、重合度は100以上3000以下が好ましく、200以上2000以下がより好ましい。ケン化度が70%未満だと酸素バリア性が低下し、99.9%を超えると無機層状化合物とポリビニルアルコールの混和性が低下するため好ましくない。また、重合度が100未満になると塗膜強度が低下し、重合度が3000を超えると塗工適性が低下するため好ましくない。
【0013】
第1のガスバリア層には、無変性のポリビニルアルコールや変性ポリビニルアルコールが含まれてもかまわない。変性ポリビニルアルコールとしてはシラノール基(−Si(OH))、アミノ基、カルボキシル基、1,2グリコール基等の官能基で変性されたポリビニルアルコールが挙げられる。また、スチレン−ブタジエンラテックスやアクリル−スチレンエマルジョンなどの合成樹脂が含まれてもかまわない。さらに、デンプンなどの多糖類、カゼイン、ポリアクリル酸、ポリエチレンイミンなどの水溶性高分子が含まれてもかまわない。
【0014】
第2のガスバリア層は、前述のとおり、ポリオレフィン系基材との密着性に優れるエチレン変性ポリビニルアルコールを主体として構成されるが、その効果を妨げない範囲で、必要に応じて各種水溶性高分子や合成樹脂等を添加することが可能である。添加して使用可能な水溶性高分子や合成樹脂としては、前述の第1のガスバリア層で使用可能なものが同様に使用できる。なお、本発明において、無機層状化合物は、ポリオレフィン系基材との密着を妨げるので、第2のガスバリア層には添加しない。
【0015】
本発明において、塗膜強度を改良する目的で、ガスバリア層に水素結合性基用架橋剤を添加することができる。
【0016】
本発明で使用可能な水素結合性基用架橋剤としては、特に限定されないが、例えば、チタン系カップリング剤、シラン系カップリング剤、メラミン系カップリング剤、エポキシ系カップリング剤、イソシアネート系カップリング剤、銅化合物、ジルコニウム化合物、ホウ素化合物、コロイダルシリカなどが挙げられ、この中でも、ジルコニウム化合物、ホウ素化合物がより好適に用いられる。
ジルコニウム化合物の具体例としては、例えば、オキシ塩化ジルコニウム、ヒドロキシ塩化ジルコニウム、4塩化ジルコニウム、臭化ジルコニウム等のハロゲン化ジルコニウム、硫酸ジルコニウム、塩基性硫酸ジルコニウム、硝酸ジルコニウムなどの鉱酸のジルコニウム塩、蟻酸ジルコニウム、酢酸ジルコニウム、プロピオン酸ジルコニウム、カプリル酸ジルコニウム、ステアリン酸ジルコニウムなどの有機酸のジルコニウム塩、炭酸ジルコニウムアンモニウム、硫酸ジルコニウムナトリウム、酢酸ジルコニウムアンモニウム、蓚酸ジルコニウムナトリウム、クエン酸ジルコニウムナトリウム、クエン酸ジルコニウムアンモニウムなどのジルコニウム錯塩、などが挙げられる。
【0017】
なお、前記ガスバリア層には、消泡剤、濡れ剤、染料、色合い調整剤、増粘剤などが必要に応じて含まれてもかまわない。
【0018】
第1のガスバリア層の塗工量は0.1〜3.0g/mが好ましく、0.5〜2.5g/mがさらに好ましい。第1のガスバリア層の塗工量が3.0g/mより超えると塗膜強度が大幅に低下するおそれがあり、0.1g/m未満だと酸素バリア性が不十分となるおそれがある。
また、第2のガスバリア層の塗工量は0.1〜3.0g/mが好ましく、0.5〜2.5g/mがさらに好ましい。第2のガスバリア層の塗工量が3.0g/mを超えると塗膜強度が低下するおそれがあり、0.1g/m未満だとシーラント層との密着強度が不十分となり、酸素バリア性も低下するおそれがある。
また、第1のガスバリア層と第2のガスバリア層の塗工量の合計は、0.5〜5g/mが好ましい。塗工量の合計が0.5g/m未満だと、酸素バリア性が低下したり、塗膜強度が低下するおそれがある。また、5g/mを超えると密着強度や塗膜強度が低下するおそれがあり好ましくない。
【0019】
本発明で使用できる無機層状化合物の具体例としては、グラファイト、リン酸塩系誘導体型化合物(リン酸ジルコニウム系化合物等)、カルコゲン化物、ハイドロタルサイト類化合物、リチウムアルミニウム複合水酸化物、粘土系鉱物、合成マイカ、合成スメクタイト等を挙げることができる。
グラファイト、リン酸塩系誘導体型化合物(リン酸ジルコニウム系化合物等)、カルコゲン化物、ハイドロタルサイト類化合物、リチウムアルミニウム複合水酸化物は、単位結晶層が互いに積み重なって層状構造を有する化合物ないし物質であり、ここで層状構造とは、原子が共有結合等によって強く結合して密に配列した面が、ファン・デル・ワールス力等の弱い結合力によって略平行に積み重なった構造をいう。
【0020】
「カルコゲン化物」とは、IV族(Ti,Zr,Hf)、V族(V,Nb,Ta)及び/又はVI族(Mo,W)元素のジカルコゲン化物であって、式MX(Mは上記元素、Xはカルコゲン(S,Se,Te)を示す。)で表されるものをいう。
粘土系鉱物は、一般に、シリカの四面体層の上部に、アルミニウムやマグネシウム等を中心金属にした八面体層を有する2層構造を有するタイプと、シリカの四面体層が、アルミニウムやマグネシウム等を中心金属にした八面体層を両側から挟んでなる3層構造を有するタイプに分類される。前者の2層構造タイプとしては、カオリナイト族、アンチゴライト族等を挙げることができ、後者の3層構造タイプとしては、層間カチオンの数によってスメクタイト族、バーミキュライト族、マイカ族等を挙げることができる。
これらの粘土系鉱物としては、スメクタイト族、バーミキュライト族などの粘土鉱物を挙げることができる。より具体的には、カオリナイト、ディッカイト、ナクライト、ハロイサイト、アンチゴライト、クリソタイル、パイロフィライト、モンモリロナイト、ヘクトライト、テトラシリリックマイカ、ナトリウムテニオライト、マーガライト、タルク、バーミキュライト、ザンソフィライト、緑泥石等を挙げることができる。また、白水晴雄著、「粘土鉱物学」、1988年、(株)朝倉書店 などの文献を参照することができる。特にスメクタイトが好ましく、スメクタイトにはモンモリロナイト、ハイデライト、ノントロナイト、サポナイト、鉄サポナイト、ヘクトライト、ソーコナイト、スチブンサイトなどを挙げることができる。
【0021】
粘土性鉱物(天然品)以外にも、合成品、加工処理品(例えばシランカップリング剤の表面処理品)のいずれであってもよく、合成スメクタイトとしては、式Na0.1〜1.0Mg2.4〜2.9Li0.0〜0.6Si3.5〜4.09.0〜10.6(OH及び/又はF)1.5〜2.5で示されるものが挙げられる。合成スメクタイトや合成マイカの製造方法には、水熱反応法(特開平6−345419号公報)、固相反応法、熔融法(特開平5−270815号公報参照)の3つの合成方法がある。
水熱反応法は、珪酸塩、マグネシウム塩、アルカリ金属イオン、アルカリ金属塩、フッ素イオンなど各種原料を含んだ水溶液あるいは水性スラリーをオートクレーブやパイプリアクターの中で100〜400℃の高温、高圧化のもとで反応させ合成させる方法である。水熱反応法では、結晶の成長が遅いため大きな粒子のものが得られないため、一般に粒子径が10〜100nmのものがほとんどである。もちろん、水熱反応においても、低濃度、低温、長時間の条件で合成すれば粒子径が1μm以上の大きな粒子を製造することは可能だが、製造コストが極端に高くなるといった問題がある。
【0022】
固相反応法はタルクと珪フッ化アルカリと他の原料とともに400〜1000℃の範囲で数時間反応させ、合成マイカを製造する方法である。固相反応は原料のタルクの構造を残したまま元素移動を起こしマイカが生成する(トポタキシー)ため、得られる合成マイカの品質が原料のタルク物性やその不純物に依存したり、元素移動を完全にコントロールできないため合成マイカの純度や結晶化度が低いといった問題がある。
熔融法は、無水珪酸、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、珪フッ化カリウム、炭酸カリウム、その他の原料をマイカの熔融点(例えば1500℃)以上で熔融後、徐冷結晶化し、合成マイカや合成スメクタイトを製造する方法である。また、加熱方法の違いにより、外熱式熔融法と内熱式熔融法がある。外熱式熔融法は原料を入れたるつぼを熔融点以上の温度の室に入れて昇温後、熔融点以下の温度の室に移動させて製造する方法であるがるつぼの費用が高いといった問題点がある。内熱式熔融法は黒鉛(炭素)電極や金属電極を備えていた容器中で通電により原料を加熱熔融させた後、冷却させる方法であり、熔融合成法においては内熱式熔融法が一般的である。熔融合成法は冷却結晶化した塊を粉砕、分級することにより粒子径をコントロールした合成品を製造することができる。熔融合成法は原料として純度が高い原料を使用することができ、熔融化するため原料が均一に混合できるため、結晶化度が高く、粒子径が大きく、純度の高い合成マイカや合成スメクタイトを製造することができるといった利点がある。
【0023】
合成無機層状化合物としては、フッ素金雲母(KMgAlSi10F、熔融法又は固相反応法)、カリウム四珪素雲母(KMg2.5Si10、熔融法)、ナトリウム四ケイ素雲母(NaMg2.5Si10、熔融法)、ナトリウムテニオライト(NaMgLiSi10、熔融法)、リチウムテニオライト(LiMgLiSi10、熔融法)などの合成マイカ、ナトリウムヘクトライト(Na0.33Mg2.67Li0.33Si4.010(OH又はF)、水熱反応法又は熔融法)、リチウムヘクトライト(Na0.33Mg2.67Li0.33Si4.010(OH又はF)、水熱反応法又は熔融法)、サポナイト(Na0.33Mg2.67AlSi4.010(OH)、水熱反応法)などの合成スメクタイトが挙げられる。
粘土鉱物の市販品としては、一般にナトリウムベンナイトと呼ばれる天然のベントナイトや、クニピア(天然モンモリロナイト、クニミネ工業製)、スメクトン(水熱反応法合成スメクタイト、クニミネ工業社製)、ビーガム(商標:バンダービルト社製)、ラポナイト(商標:ラポルテ社製)、DMクリーンA、DMA−350、Na−Ts、NTO−5(熔融法、ナトリウム四珪素雲母、商標:トピー工業製)、ベンゲル(商標:豊順洋行社製)、ソマシフME−100(固相反応法合成マイカ、商標:コープケミカル)等を挙げることができ、これらは単独で用いても、2種以上を混合して用いることもできる。
【0024】
本発明により好ましいものは、水中で容易に膨潤、壁開及び分散する膨潤性無機層状化合物である。膨潤性無機層状化合物の溶媒への「膨潤・へき開」性の程度は、以下の「膨潤・へき開」試験により評価することができる。該膨潤性無機層状化合物の膨潤性は、下記膨潤性試験において約5mL以上(より好ましくは約20mL以上)の程度であることが好ましい。膨潤性の具体的なものとしては、上記クニピア(膨潤力:65mL/2g以上)、スメクトン(膨潤力:60mL/2g以上)、DMクリーンA、DMA−350、Na−Ts(膨潤力:30mL/2g以上)、ME−100(商標:コープケミカル社製、膨潤力:20mL/2g以上)及びベンゲル(膨潤力:38mL/2g以上)等である。
一方、該膨潤性無機層状化合物のへき開性は、下記へき開性試験において約5mL以上(より好ましくは約20mL以上)の程度であることが好ましい。これらの場合、溶媒としては、膨潤性無機層状化合物の密度より小さい密度を有する溶媒を用いる。該溶媒としては、水を用いることが好ましい。
【0025】
膨潤性試験を詳述する。膨潤性無機層状化合物2gを溶媒100mLにゆっくり加える(100mLメスシリンダーを容器とする)。静置後、23℃、24hr後の膨潤性無機層状化合物分散層と上澄みとの界面の目盛から前者(膨潤性無機層状化合物分散層)の体積を読む。この数値が大きい程、膨潤性が高い。
へき開性試験を詳述する。膨潤性無機層状化合物30gを溶媒1500mLにゆっくり加え、分散機(浅田鉄工(株)製、デスパーMH−L、羽根径52mm、回転数3100rpm、容器容量3L、底面−羽根間の距離28mm)にて周速8.5m/secで90分間分散した後(23℃)、分散液100mLをとりメスシリンダーに入れ60分静置後、上澄みとの界面から、膨潤性無機層状化合物分散層の体積を読む。
【0026】
また、本発明で使用するのに好ましい膨潤性無機層状化合物としては、陽イオン交換容量が100g当り、30〜300meq、より好ましくは50〜250meq、特に好ましくは60〜200meqである。陽イオン交換容量が30meq/100g未満だと含窒素化合物との効果が小さくなり防湿性に優れない。また、300meq/100gを越えて大きいと塗料が凝集しやすくなり好ましくない。一般に、天然及び合成スクメタイトは85〜130meq/100gの陽イオン交換容量を有するものが本発明において特に好ましいものである。
陽イオン交換容量の測定は一般にアルコール洗浄法(Schollenberger法あるいはその改良法、和田光史(1981)粘土科学21,160-163参照)と呼ばれる測定方法で行う。膨潤性無機層状化合物の粉末0.2〜1.0gあるいは約1〜3%水分散液約10〜30mlを100ml容量の遠心分離管に採取する。1Nの酢酸アンモニウム(CHCOONH)液(pH7)を加えて約80mlとして、十分に振とうした後、遠心沈降させ上澄みを捨てる(遠沈洗浄)。遠沈洗浄を4回繰り返した後、遠心分離管に残っている余剰の塩を取り除くため80%エタノール水溶液(pH7)で遠沈洗浄を3回行う。次に10%のNaCl水溶液を用いて遠沈洗浄を4回繰り返し、遠心管の上澄み液をすべて集めて抽出液とする。抽出液のNH4を蒸留法で定量し、試料の乾燥質量(100g)当りのミリグラム当量数(meq)を陽イオン交換容量(cation exchange capacity,CEC)の値とする。なお測定は23℃の環境下で行う。また、測定は7点行い、最大値と最小値を除いた5点の平均を測定値とした。
【0027】
膨潤性無機層状化合物としては、そのアスペクト比が50〜5000のものが好ましい。アスペクト比(Z)とはZ=L/aなる関係で示されるものであり、Lは膨潤性無機層状化合物の水中での平均粒子径(レーザー回折法で測定。堀場製作所LA−910.屈折率1.3、体積分布50%のメジアン径)であり、aは膨潤性無機層状化合物の厚みであり。厚みは、防湿層の断面をSEMやTEMによる写真観察によって求めた値である。平均粒子径は0.1μm〜100μmが好ましく、とりわけ0.5μm〜50μmが好ましい。粒子径が0.1μm未満になるとアスペクト比が小さくなる上、防湿層中で防湿面に対して平行に並びにくくなり、防湿効果が不十分になる。粒子径が100μmを越えて大きくなると防湿層から膨潤性無機層状化合物が突き出てしまい好ましくない。
【0028】
これら膨潤性無機層状化合物の中でも、ナトリウム四珪素雲母、ナトリウムテニオライト、リチウムテニオライト、ナトリウムヘクトライト、リチウムヘクトライト、サポナイト、天然スメクタイト(モンモリロナイト)が好ましい。これらの中でも、粒子径、アスペクト比、結晶性の面からから熔融合成法で製造されたナトリウム四珪素雲母(トピー工業製、DMA350)やタルクにフッ化ケイ素をインターカレートし約800℃で焼成して得られる膨潤性フッ素マイカが特に好ましい。
また、本発明で使用する無機層状化合物は水、あるいは溶剤中で分散された状態での平均粒子径が20nm〜100μmの間にあるものが好適であり、好ましくは0.1μm〜50μm、より好ましくは1μm〜30μmである。平均粒子径が20nm未満であると、アスペクト比が小さくなり防湿性向上効果が小さい。一方100μmを越えると塗工層表面から顔料が突き出し、外観不良や防湿性低下を招き好ましくない。
【0029】
本発明で用いる無機層状化合物の水あるいは溶剤に分散された平均粒子径は、平均粒子径が0.1μm以上のものは光散乱理論を応用したレーザー回折による粒度分布測定装置において測定した値である。また、水あるいは溶剤に分散された平均粒子径が0.1μmのものについは動的光散乱法を用いて測定した値である。
また、本発明で使用する無機層状化合物の好ましいアスペクト比は5以上であり、特に好ましくはアスペクト比が10以上である。アスペクト比が5未満のものは曲路効果が小さいために防湿性が低下する。アスペクト比は大きいほど無機層状化合物の塗工層中における層数が大きくなるため高い防湿性能を発揮する。無機層状化合物の厚みは、防湿膜の断面写真より測定する。厚みが0.1μm以上のものは電子顕微鏡写真より画像解析して求める。厚みが0.1μm未満のものは透過型電子顕微鏡写真より画像解析して求める。本発明でいうアスペクト比は、上記水、又は溶剤に分散された平均粒子径を防湿膜の断面写真より求めた厚さで除したものである。
【0030】
第1のガスバリア層におけるエチレン変性ポリビニルアルコールと無機層状化合物の配合量は、質量換算で99/1〜30/70が好ましく、より好ましくは93/7〜35/65、特に好ましくは95/5〜40/60である。無機層状化合物の配合量が1%未満になると、防湿性向上効果及び離解性向上効果が小さくなる。無機層状化合物が70%を越えて大きくなると、無機層状化合物の間を埋める樹脂が不足して、空隙やピンホールの増大を招き防湿性が悪化する。
【0031】
本発明におけるガスバリア塗料は水性塗料であるが、必要に応じて、エタノールやイソプロピルアルコールのようなアルコール系溶剤やメチルエチルケトンやトルエンなどの溶剤を加えてもかまわない。
【0032】
本発明において、ガスバリア塗料を紙支持体に塗工してガスバリア層を形成する。塗工設備として特に限定はしないが、ブレードコーター、バーコーター、エアナイフコーター、スリットダイコーター、グラビアコーター、マイクログラビアコーター、ゲートロールコーターなどの方式が好ましい。特にガスバリア層形成にはブレードコーター、バーコーター、エアナイフコーター、スリットダイコーターなどの塗工表面をスクレイプするコーターが無機層状化合物の配向を促すという点で好ましい。
【0033】
また本発明に用いられる基材は、植物由来のパルプを主成分とするものであれば特に制限はないが、上質紙、中質紙、微塗工紙、塗工紙、片艶紙、晒または未晒クラフト紙(酸性紙又は中性紙)、又は段ボール用、建材用、白ボ−ル用、チップボ−ル用などに用いられる板紙、白板紙などが好適である。
【0034】
また、紙支持体と防湿層の間に防湿層の塗工適性や塗工量減のために、顔料と樹脂を含む顔料層を設けてもよい。あるいはガスバリア層とは反対側の紙支持体の表面に、印刷適性を向上させるために顔料と樹脂を含む顔料層を設けてもかまわない。
顔料としては炭酸カルシウム、カオリン、クレー。焼成クレー、タルク、硫酸バリウムなどが好適に使用される。樹脂としては、スチレン−ブタジエン系共重合体やアクリル−スチレン系共重合体、ポリビニルアルコール、デンプンなどが好適に使用される。
顔料と樹脂の配合比率は質量換算で顔料/樹脂=50/50〜99/1が好適である。
【0035】
本発明のガスバリア性積層体の構成は、紙支持体/第1のガスバリア層/第2のガスバリア層、紙支持体/顔料層/第1のガスバリア層/第2のガスバリア層、顔料層/紙支持体/第1のガスバリア層/第2のガスバリア層、顔料層/紙支持体/顔料層/第1のガスバリア層/第2のガスバリア層が挙げられる。
【0036】
また、本発明のガスバリア性積層体の第2のガスバリア層にポリエチレンやポリプロピレンなどのシーラント層を設けて、包装用積層体となる。シーラントは溶融押出ラミ法やドライラミ法、あるいは、塗工などの方法で積層できる。また、ガスバリア層とシーラント層の間に密着性を向上させるために、アンカー層を設けてもよい。アンカー層はウレタン系樹脂やポリエステル系樹脂が好適であり、イソシアネートのような硬化剤が含まれてもよい。
【実施例】
【0037】
以下、本発明を実施例により詳説する。
【0038】
<変性PVA1>
撹拌機、温度計、エチレン導入管、窒素導入管、及び冷却機を備えた耐圧反応容器に、酢酸ビニル100部とメタノール30部を仕込み、次いで、窒素置換した後、圧力5kg/cmになるようにエチレンを注入した。開始剤として2,2’−アゾビスイソブチロニトリルをメタノールに溶解した溶液を調整し、窒素ガスによるバブリングによって窒素置換した。上記モノマーを仕込んだ反応容器を昇温し、内温が60℃に達したとき開始剤溶液を注入し、重合を開始した。3時間後に冷却した。脱エチレンし、次いで、減圧下に未反応酢酸ビニルモノマーを除去し、エチレン変性されたポリ酢酸ビニルのメタノール溶液を得た。これにNaOHのメタノール溶液(NaOHの含有量10質量%)を添加してケン化反応を開始した。アルカリ溶液を添加して1分経過後、生成したゲル化物を粉砕機で粉砕し、さらに1時間放置してケン化反応を進行させた後、反応系内に酢酸メチルを加えて、残存するアルカリを部分的に中和した。白色固体の変性ポリビニルアルコールを濾別し、これにメタノールを加えて室温で3時間放置し、洗浄し、遠心分離法により脱液した。洗浄後の変性ポリビニルアルコールを遠心脱液し、次いで内温が90℃に保たれた乾燥機を用いて、窒素気流下(酸素濃度8%)に1日間乾燥処理を行い、チップ状の変性ポリビニルアルコールを得た。これを変性PVA1とする。
変性PVA1は、重合度1200、ケン化度98.6モル%、エチレン含有量6.2モル%であった。
なお、本発明において重合度およびケン化度は、JIS K 6725「ポリ酢酸ビニル試験方法」の「3.7平均重合度」および「3.5 ケン化度」に従って求めた。また、エチレン含有量については、1H−NMRおよび13C−NMRによって解析して求めた。エチレン含有量については市販のエチレンビニルアルコール(クラレ製「エバールL101」など)を標準物質とした。
【0039】
<変性PVA2>
圧力を5.5kg/cmになるようにエチレンを注入したこと以外は、変性PVA1と同様にして変性ポリビニルアルコールを製造した。これを変性PVA2とする。
変性PVA2は、重合度1200、ケン化度98.2モル%、エチレン含有量11.2モル%であった。
【0040】
<変性PVA3>
圧力を6.0kg/cmになるようにエチレンを注入したこと以外は、変性PVA1と同様にして変性ポリビニルアルコールを製造した。これを変性PVA3とする。
変性PVA3は、重合度1200、ケン化度98.4モル%、エチレン含有量18.2モル%であった。
【0041】
<変性PVA4>
圧力を4.0kg/cmになるようにエチレンを注入したこと以外は、変性PVA1と同様にして変性ポリビニルアルコールを製造した。これを変性PVA4とする。
変性PVA4は、重合度1200、ケン化度98.0モル%、エチレン含有量4.5モル%であった。
【0042】
<変性PVA5>
圧力を3.0kg/cmになるようにエチレンを注入したこと以外は、変性PVA1と同様にして変性ポリビニルアルコールを製造した。これを変性PVA5とする。
変性PVA5は、重合度1200、ケン化度98.8モル%、エチレン含有量2.1モル%であった。
【0043】
<変性PVA6>
重合時の内温を100℃、圧力を6.0kg/cmになるようにエチレンを注入し、重合開始後、5時間後に冷却したこと以外は、変性PVA1と同様にして変性ポリビニルアルコールを製造した。これを変性PVA6とする。
変性PVA6は、重合度2400、ケン化度98.5モル%、エチレン含有量9.2モル%であった。
<実施例1>
坪量84g/mの塗工紙(王子製紙製:品名OKトップコート、顔料層/紙支持体/顔料層、顔料層の塗工量は片面15g/m)の片面に、エチレン変性ポリビニルアルコールである変性PVA1の水溶液(固形分10%)100部に、無機層状化合物の水分散液(トピー工業製、NTO−5、固形分6%、ナトリウム四珪酸雲母)を33.3部、水16.7部を加え、攪拌して得られた第1のガスバリア性塗料(固形分8%、pH7.4、粘度350cps)を、固形分で1.5g/mになるように、メイヤーバーを用いて塗工し、熱風乾燥機で120℃で1分間乾燥して第1のガスバリア層を形成した。
次に、エチレン変性ポリビニルアルコールである変性PVA1の水溶液(固形分10%)からなる第2のガスバリア性塗料を、第1のガスバリア層上に固形分で1.5g/mになるように、メイヤーバーを用いて塗工し、熱風乾燥機で120℃で1分間乾燥して第2のガスバリア層を形成してガスバリア性積層体を得た。
【0044】
<実施例2>
第1のガスバリア層および第2のガスバリア層に使用するエチレン変性ポリビニルアルコールをPVA2としたこと以外は、実施例1と同様にしてガスバリア性積層体を得た。
【0045】
<実施例3>
第1のガスバリア層および第2のガスバリア層に使用するエチレン変性ポリビニルアルコールをPVA3としたこと以外は、実施例1と同様にしてガスバリア性積層体を得た。
【0046】
<実施例4>
第1のガスバリア層および第2のガスバリア層に使用するエチレン変性ポリビニルアルコールをPVA4としたこと以外は、実施例1と同様にしてガスバリア性積層体を得た。
【0047】
<実施例5>
第1のガスバリア層および第2のガスバリア層に使用するエチレン変性ポリビニルアルコールをPVA5としたこと以外は、実施例1と同様にしてガスバリア性積層体を得た。
【0048】
<実施例6>
第1のガスバリア層および第2のガスバリア層に使用するエチレン変性ポリビニルアルコールをPVA6としたこと以外は、実施例1と同様にしてガスバリア性積層体を得た。
【0049】
<実施例7>
坪量84g/mの塗工紙(王子製紙製:品名OKトップコート、顔料層/紙支持体/顔料層、顔料層の塗工量は片面15g/m)の片面に、エチレン変性ポリビニルアルコールである変性PVA1の水溶液(固形分10%)100部に、無機層状化合物の水分散液(トピー工業製、NTO−5、固形分6%、ナトリウム四珪酸雲母)を83.3部、水4.2部を加え、攪拌して得られた第1のガスバリア性塗料(固形分8%、pH7.4、粘度350cps)を、固形分で1.5g/mになるように、メイヤーバーを用いて塗工し、熱風乾燥機で120℃で1分間乾燥して第1のガスバリア層を形成した。
次に、エチレン変性ポリビニルアルコールである変性PVA1の水溶液(固形分10%)からなる第2のガスバリア性塗料を、第1のガスバリア層上に固形分で1.5g/mになるように、メイヤーバーを用いて塗工し、熱風乾燥機で120℃で1分間乾燥して第2のガスバリア層を形成してガスバリア性積層体を得た。
【0050】
<実施例8>
坪量84g/mの塗工紙(王子製紙製:品名OKトップコート、顔料層/紙支持体/顔料層、顔料層の塗工量は片面15g/m)の片面に、エチレン変性ポリビニルアルコールである変性PVA1の水溶液(固形分10%)100部に、無機層状化合物の水分散液(トピー工業製、NTO−5、固形分6%、ナトリウム四珪酸雲母)を58.3部、水10.4部を加え、攪拌して得られた第1のガスバリア性塗料(固形分8%、pH7.4、粘度350cps)を、固形分で1.5g/mになるように、メイヤーバーを用いて塗工し、熱風乾燥機で120℃で1分間乾燥して第1のガスバリア層を形成した。
次に、エチレン変性ポリビニルアルコールである変性PVA1の水溶液(固形分10%)からなる第2のガスバリア性塗料を、第1のガスバリア層上に固形分で1.5g/mになるように、メイヤーバーを用いて塗工し、熱風乾燥機で120℃で1分間乾燥して第2のガスバリア層を形成してガスバリア性積層体を得た。
【0051】
<実施例9>
坪量84g/mの塗工紙(王子製紙製:品名OKトップコート、顔料層/紙支持体/顔料層、顔料層の塗工量は片面15g/m)の片面に、エチレン変性ポリビニルアルコールである変性PVA1の水溶液(固形分10%)100部に、無機層状化合物の水分散液(トピー工業製、NTO−5、固形分6%、ナトリウム四珪酸雲母)を16.7部、水20.8部を加え、攪拌して得られた第1のガスバリア性塗料(固形分8%、pH7.4、粘度350cps)を、固形分で1.5g/mになるように、メイヤーバーを用いて塗工し、熱風乾燥機で120℃で1分間乾燥して第1のガスバリア層を形成した。
次に、エチレン変性ポリビニルアルコールである変性PVA1の水溶液(固形分10%)からなる第2のガスバリア性塗料を、第1のガスバリア層上に固形分で1.5g/mになるように、メイヤーバーを用いて塗工し、熱風乾燥機で120℃で1分間乾燥して第2のガスバリア層を形成してガスバリア性積層体を得た。
【0052】
<実施例10>
坪量84g/mの塗工紙(王子製紙製:品名OKトップコート、顔料層/紙支持体/顔料層、顔料層の塗工量は片面15g/m)の片面に、エチレン変性ポリビニルアルコールである変性PVA1の水溶液(固形分10%)100部に、無機層状化合物の水分散液(トピー工業製、NTO−5、固形分6%、ナトリウム四珪酸雲母)を8.3部、水22.9部を加え、攪拌して得られた第1のガスバリア性塗料(固形分8%、pH7.4、粘度350cps)を、固形分で1.5g/mになるように、メイヤーバーを用いて塗工し、熱風乾燥機で120℃で1分間乾燥して第1のガスバリア層を形成した。
次に、エチレン変性ポリビニルアルコールである変性PVA1の水溶液(固形分10%)からなる第2のガスバリア性塗料を、第1のガスバリア層上に固形分で1.5g/mになるように、メイヤーバーを用いて塗工し、熱風乾燥機で120℃で1分間乾燥して第2のガスバリア層を形成してガスバリア性積層体を得た。
【0053】
<比較例1>
第2のガスバリア層を設けなかったこと以外は実施例1と同様にガスバリア性積層体を得た。
【0054】
<比較例2>
坪量84g/mの塗工紙(王子製紙製:品名OKトップコート、顔料層/紙支持体/顔料層、顔料層の塗工量は片面15g/m)の片面に、エチレン変性ポリビニルアルコールである変性PVA1の水溶液(固形分10%)100部に、無機層状化合物の水分散液(トピー工業製、NTO−5、固形分6%、ナトリウム四珪酸雲母)を33.3部、水16.7部を加え、攪拌して得られた第1のガスバリア性塗料(固形分8%、pH7.4、粘度350cps)を、固形分で1.5g/mになるように、メイヤーバーを用いて塗工し、熱風乾燥機で120℃で1分間乾燥して第1のガスバリア層を形成した。
次に、第1のガスバリア性塗料を、第1のガスバリア層上に固形分で1.5g/mになるように、メイヤーバーを用いて塗工し、熱風乾燥機で120℃で1分間乾燥して第2のガスバリア層を形成してガスバリア性積層体を得た。
【0055】
<比較例3>
坪量84g/mの塗工紙(王子製紙製:品名OKトップコート、顔料層/紙支持体/顔料層、顔料層の塗工量は片面15g/m)の片面に、無変性ポリビニルアルコールであるPVA(品番PVA105、クラレ製、完全ケン化、重合度500)の水溶液(固形分10%)100部に、無機層状化合物の水分散液(トピー工業製、NTO−5、固形分6%、ナトリウム四珪酸雲母)を33.3部、水16.7部を加え、攪拌して得られた第1のガスバリア性塗料(固形分8%、pH7.4、粘度320cps)を、固形分で1.5g/mになるように、メイヤーバーを用いて塗工し、熱風乾燥機で120℃で1分間乾燥して第1のガスバリア層を形成した。
次に、無変性ポリビニルアルコールであるPVA(品番PVA105、クラレ製、完全ケン化、重合度500)の水溶液(固形分10%)からなる第2のガスバリア性塗料を、第1のガスバリア層上に固形分で1.5g/mになるように、メイヤーバーを用いて塗工し、熱風乾燥機で120℃で1分間乾燥して第2のガスバリア層を形成してガスバリア性積層体を得た。
【0056】
実施例、比較例で得たガスバリア性積層体を以下の方法で評価、結果を表1に示す。
[評価方法]
1)酸素透過度
実施例1〜10及び比較例1〜3で製造したガスバリア性積層体のガスバリア層上に、ラミネート用アンカー剤(東洋モートン製、ポリエステル系主剤ポリエステルEL557A/ポリイソシアネート系硬化剤/酢酸エチル=1.6/0.8/12.5部の有姿比で混合して作成)を有姿で4cc/mと塗工量がなるように塗布して、80℃30秒間乾燥させた。得られたアンカー層上に、ポリエチレン(日本ポリケム製、LC522、低密度ポリエチレン、MFR3.5g/10min)を厚さ20μmになるように溶融押出ラミした。得られたポリエチレンラミネート積層体のサンプルを、JIS−K−7126 B法(等圧法)でポリエチレンラミ側を酸素検出器側(窒素側)にして、酸素側も窒素側も23℃90%RH条件で測定した(酸素透過度測定装置:OX−TRAN100型、MOCON社製)。酸素透過度はサンプルをセットした後、24時間後の値を酸素透過度とした。酸素透過度は30cc/m・24hr以下が好ましく、20cc/m・24hr以下が特に好ましい。
また、測定条件を酸素側も窒素側も23℃0%RH条件で測定すると、全ての実施例および比較例において酸素透過度は1cc/m・24hr以下であった。
2)密着強度
実施例1〜10及び比較例1〜3で製造したガスバリア性積層体のガスバリア層上に、ラミネート用アンカー剤(東洋モートン製、ポリエステル系主剤ポリエステルEL557A/ポリイソシアネート系硬化剤/酢酸エチル=1.6/0.8/12.5部の有姿比で混合して作成)を有姿で4cc/mと塗工量がなるように塗布して、80℃30秒間乾燥させた。得られたアンカー層上に、ポリエチレン(日本ポリケム製、LC522、低密度ポリエチレン、MFR3.5g/10min)を厚さ20μmになるように溶融押出ラミした。得られたポリエチレンラミネート積層体のポリエチレンラミネート面表面にクロステープ(巾3cm、長さ10cm)を貼り、ゴムローラーで10往復させ圧着させた後、クロステープを手で勢いよく剥がした。密着強度の評価は以下のように行った。
◎:積層体が100%材破
○:ポリエチレンラミネート層とガスバリア層の間で一部が剥離するが、一部は材破する
△:ポリエチレンラミネート層とガスバリア層の間で全部が剥離するが抵抗感が強い
×:ポリエチレンラミネート層とガスバリア層の間で抵抗なく剥離する。
3)包装袋のバリア性
実施例1〜10及び比較例1〜3で製造したガスバリア性積層体のガスバリア層上に、ラミネート用アンカー剤(東洋モートン製、ポリエステル系主剤ポリエステルEL557A/ポリイソシアネート系硬化剤/酢酸エチル=1.6/0.8/12.5部の有姿比で混合して作成)を有姿で4cc/mと塗工量がなるように塗布して、80℃30秒間乾燥させた。得られたアンカー層上に、ポリエチレン(日本ポリケム製、LC522、低密度ポリエチレン、MFR3.5g/10min)を厚さ20μmになるように溶融押出ラミした。得られたポリエチレンラミネート積層体を所定の大きさ(160mm×65mm)にサンプリングして、80mm×65mmの大きさになるように、長辺を二つ折りした。ヒートシール機を用いて、65mm側の両方をヒートシールを行った。次に、真空脱気して窒素充填を行い80mm側のヒートシールを行い窒素充填された包装袋を得た。充填機は富士インパルス製の真空ガス充填シーラー「VG−400」を使用した。
包装袋を23℃50%の環境に静置し、1週間ごとに4週間後まで包装袋内の酸素濃度を測定した。酸素濃度の測定は飯島電子工業製の酸素濃度計「RO−112」を使用した。包装体3点について酸素濃度を測定した。小数点以下第2位まで測定し、その平均値を四捨五入して小数点以下第1位の値を酸素濃度とした。
【0057】
表1により明らかなように、エチレン変性ポリビニルアルコールと合成マイカを含む層を第1のガスバリア層に、エチレン変性ポリビニルアルコールを第2のガスバリア層にすることで、ポリエチレンラミネート層(シーラント層)との密着強度が大幅に向上する。
また、表2より明らかなように、エチレン変性ポリビニルアルコールと合成マイカを含む層を第1のガスバリア層に、エチレン変性ポリビニルアルコールを第2のガスバリア層にすることで、包装体としての酸素バリア性が大幅に向上する。
表1と表2から明らかなように、ガスバリア層にポリエチレンラミネート層を設けた積層体の酸素透過度と、該積層体を用いた包装体のガスバリア性との相関は低いが、ガスバリア層とポリエチレンラミネート層との密着強度とガスバリア性との相関は高く、本発明のように密着強度を向上させることが、包装体の酸素バリア性の向上に効果的である。
【0058】
【表1】

【0059】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙支持体上にエチレン変性ポリビニルアルコール樹脂と無機層状化合物を含む第1のガスバリア層と、エチレン変性ポリビニルアルコールからなる第2のガスバリア層を順次設けたことを特徴とするガスバリア性積層体。
【請求項2】
第1のガスバリア層のエチレン変性ポリビニルアルコールと無機層状化合物の質量比が100/5〜100/50であることを特徴とする請求項1に記載のガスバリア性積層体。

【公開番号】特開2009−184138(P2009−184138A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−23753(P2008−23753)
【出願日】平成20年2月4日(2008.2.4)
【出願人】(000122298)王子製紙株式会社 (2,055)
【Fターム(参考)】