説明

ガスバリヤー性包装用板紙

【課題】コスト的に有利なガスバリヤー性を有する包装用板紙を提供する。
【解決手段】ガスバリヤー性を有する板紙であって、板紙12、該板紙12の表面に直接適用される第1のポリオレフィン層14、該ポリオレフィン層14の第2面に直接適用される第1の結合層16、該第1の結合層の第2面に直接適用される脂肪族ナイロン層18、該脂肪族ナイロン層18の第2面に直接適用される第2の結合層20、該第2の結合層20の第2面に直接適用される第2のポリオレフィン層22、を備える、板紙。

【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
本発明の分野は包装用板紙(packaging board:パッケージングボード)である。より詳細には、カートン(carton)やカップ(cup)へと成型し得る包装用板紙であって、ガスバリヤー性を有する包装用板紙である。
【0002】
板紙による包装においてガスバリヤー性が必要なことが広く知られている。板紙を通過するガスの移動を抑制するための多くの解決策がある。ガスの移動の量及び速度は、バリヤー層または複数のバリヤー層の種類によって決まる。板紙上に、ガスバリヤー層をラミネート、押出或いは共押出したりして、板紙にガスバリヤー性を付与するものである。
【0003】
バリヤー性材料(障壁材料)を選択するにあたっては他の要因も存在する。コストは1つの要因であり、使用するバリヤー性材料の種類及びコストの点、そしてまた、必要なバリヤー性を得るために必要な量の点においてもそうである。他の重要な要因は、カートンの耐久性、ピンホール、及びプラスチック炭化物(char:焦げ)である。押出機のダイリップにナイロンが直接接触すると、炭化物(熱分解したナイロン)が生じてしまうが、板紙の汚染を防ぐためには、この炭化物を除去しなければならない。炭化物を除去するには、押出機を停止しなければならない。必要となるバリヤー性材料の量は、マシン方向及び横断方向のいずれにおけるバリヤー層の均一性にも依存する。均一性が低いと、厚い部分や薄い部分が生じてしまい、ガスバリヤー性が変化してしまう。また、材料の種類によって、材料を押し出すために必要な力の大きさが決まり、それゆえ、これは包装用板紙トータルでのコストにおける1つの要因となる。
【0004】
他の要因は、板紙への材料の接着性である。材料の中には、他の材料よりも接着性が優れたものがある。中には、ナイロンのように、板紙への接着性を得るために板紙表面の特別な処理が必要な材料もある。また、これは、コストにも影響する。
【0005】
また、ピンホールの問題も存在する。ピンホールは、プラスチックフィルム中の小さな穴である。ピンホールにより、容器中に入れられた液体が板紙と接触し、液体が板紙に浸透してしまう。湿った板紙は極めて弱く、耐久性が低下し、保存性も低下する。ピンホールは、シール操作においてプラスチックフィルムが加熱された際に生じる。熱により板紙中に蒸気が生じ、その蒸気によりプラスチック構造中に泡が生じるのである。いくつかの泡が破裂し、ピンホールを形成する。低密度ポリエチレン又は直鎖低密度ポリエチレン又は他のポリオレフィンを泡のある部分に流し込み、ピンホールをシールすることによって、ピンホールの数を大きく減らすことができる。
【0006】
押出又は共押出は、ラミネーションに比べて高速で低コストなプロセスである。ラミネートフィルムのコストとそれに関連する取扱いは、共押出によっても回避される。
【0007】
本発明は、製品側(product side)に5つの層を有する、コスト的に有利なガスバリヤー性構造物であって、ガスバリヤー層として脂肪族ナイロンを用いる構造物に関する。
【0008】
図1は、本発明の板紙の断面図である。
【0009】
板紙12は、第1面と、第1面と反対側の第2面とを有する。この板紙12は200−500g/mの重量を有し得る。
【0010】
ポリオレフィン層10は、板紙12の外側表面又は第1の表面に適用される。典型的な外側のポリオレフィン層10は、低密度ポリエチレンである。ポリオレフィン層10によって、良好な印刷表面が得られる。高いカートンの耐久性が必要な場合には、直鎖低密度ポリエチレン、メタロセン触媒直鎖低密度ポリエチレン、又は、低密度ポリエチレンと直鎖低密度ポリエチレン或いはメタロセン触媒直鎖低密度ポリエチレンとの混合物を使用しうる。これらの樹脂は、低密度ポリエチレン樹脂よりも強靱である。ポリオレフィン層10は、1平方メートルあたり15−25グラム(g/m)の範囲の量で適用される。
【0011】
ポリオレフィン層14は、板紙12の内側表面又は第2の表面に直接適用される。ポリオレフィン層14は、第1面と、第1面と反対側の第2面とを有する。ポリオレフィン層14の第1面は、板紙12の第2面に適用される。ポリオレフィン層14は、通常、低密度ポリエチレンである。これは、特別な処理をしなくても板紙に対する接着性が良好である。また、低密度ポリエチレンは、押出又は共押出プロセスにおいて、ナイロンがダイリップへ曝されることを抑制する。ダイリップへの接触は、炭化物を生じさせたり、不稼働時間につながる。高いカートンの耐久性が必要な場合には、直鎖低密度ポリエチレン、メタロセン触媒直鎖低密度ポリエチレン、又は、低密度ポリエチレンと直鎖低密度ポリエチレン或いはメタロセン触媒直鎖低密度ポリエチレンとの混合物を使用し得る。これらの樹脂は、低密度ポリエチレン樹脂よりも強靱である。ポリオレフィン層14の量は、1平方メートルあたり4−25グラムである。
【0012】
第1の結合層16は、ポリオレフィン層14に直接適用される。第1結合層は、第1面と、第1面と反対側の第2面とを有する。結合層16の第1面は、ポリオレフィン層14の第2面に直接適用される。第1結合層16は、任意の適当な接着性樹脂であってよい。典型的な接着性樹脂は、無水マレイン酸修飾ポリエチレン樹脂である。結合用樹脂の通常の量は、1平方メートルあたり3−9グラムであろう。
【0013】
脂肪族ナイロンガスバリヤー層18は、第1結合層16に直接適用される。この脂肪族ナイロン層18は、第1面と、第1面と反対側の第2面とを有する。ナイロン層18の第1面は、第1結合層16の第2面に直接適用される。使用し得る脂肪族ナイロンとしては、例えば、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン6/66、ナイロン6/9、ナイロン6/10、ナイロン11、及びナイロン12がある。ナイロンの量は、1平方メートルあたり5−15グラムである。ナイロンの量によって、ガスバリヤー性能が決まる。
【0014】
第2の結合層20は、脂肪族ナイロンガスバリヤー層18に直接適用される。第2結合層は、第1面と、第1面と反対側の第2面とを有する。第2結合層20の第1面は、ナイロン層18の第2面に直接適用される。第2結合層20は任意の適当な接着性樹脂であってよい。典型的な接着性樹脂は、無水マレイン酸修飾ポリエチレン樹脂である。結合樹脂の通常の量は、1平方メートルあたり3−9グラムであろう。
【0015】
内側のポリオレフィン層22は、結合層20に直接適用される。内側ポリオレフィン層は、第1面と第2面とを有する。ポリオレフィン層22の第1面は、結合層20の第2面に直接適用される。内側ポリオレフィン製品接触層22は、通常、低密度ポリエチレンである。高い耐久性が要求される場合には、直鎖低密度ポリエチレン、メタロセン触媒直鎖低密度ポリエチレン、又は、低密度ポリエチレンと直鎖低密度ポリエチレン或いははメタロセン触媒直鎖低密度ポリエチレンとの混合物を使用しうる。ポリエチレンの量は、1平方メートルあたり12−25グラムであってよい。
【0016】
内側ポリオレフィン層22が18g/m以上のポリオレフィンを含み、ポリオレフィン層14が5g/m以上のポリオレフィンを含む場合、ピンホール特性は、コスト的に有効な方法で顕著に改善される。又、ポリオレフィン層14が18g/m以上のポリオレフィンを含み、内部ポリオレフィン層22が12g/m以上のポリオレフィンを含む場合、ピンホール特性は、コスト的に有効な方法で顕著に改善される。ポリオレフィン層22が12g/mであると、カートンの成形プロセスにおいて適当なシール性が確保される。
【0017】
例として図1を用いると、バリヤー性の被覆がされた板紙の1つの例は、板紙12の第1面に適用された、16g/mの低密度ポリエチレンの外側層10を有する板紙である。11g/mの低密度ポリエチレン層14を板紙12の第2面に直接適用する。5g/mのBynel(登録商標)結合層16の第1面を、低密度ポリエチレン層14の第2面に直接適用する。6g/mのナイロン6或いはナイロン66の層18の第1面を、結合層16の第2面に直接適用する。5g/mのBynel(登録商標)結合層20の第1面をナイロン層18の第2面に直接適用する。15g/mの製品に接触する低密度ポリエチレン内側層22は、結合層20の第2面に直接適用される。
【0018】
例として図1を再び用いると、バリヤー性の被覆がされた板紙の第2の例は、板紙12の第2面に適用された、16g/mの低密度ポリエチレンの外側層10を有する板紙である。16g/mの低密度ポリエチレン層14を板紙12の第2面に直接適用する。8g/mのBynel(登録商標)結合層16の第1面を、低密度ポリエチレン層14の第2面に直接適用する。6g/mのナイロン6又はナイロン66の層18の第1面を、結合層16の第2面に直接適用する。5g/mのBynel(登録商標)結合層20の第1面をナイロン層18の第2面に直接適用する。13g/mの製品に接触する低密度ポリエチレン内側層22は、結合層20の第2面に直接適用される。
【0019】
例として図1を再び用いると、ピンホール特性の改善されたバリヤー性の被覆がされた板紙の第3の例は、板紙12の第1面に直接適用された、16g/mの低密度ポリエチレンの外側層10を有する板紙である。5g/mの低密度ポリエチレン層14の第1面は、板紙12の第2面に直接適用される。5g/mのBynel(登録商標)結合層16の第1面を、低密度ポリエチレン層14の第1面に直接適用する。7g/mのナイロン6或いはナイロン66の層18の第1面を、結合層16の第2面に直接適用する。5g/mのBynel(登録商標)結合層20の第1面をナイロン層18の第2面に直接適用する。24g/mの製品に接触する低密度ポリエチレン内側層22の第1面は、結合層20の第2面に直接適用される。
【0020】
例として図1を再び用いると、ピンホール特性が改善されたバリヤー性の被覆がされた板紙の第4の例は、板紙12の外表面に直接適用された、16g/mの低密度ポリエチレンの外側層10を有する板紙である。18g/mの低密度ポリエチレン層14の第1面を板紙12の第2面に直接適用する。8g/mのBynel(登録商標)結合層16を、低密度ポリエチレン層14の第2面に直接適用する。7g/mのナイロン6又はナイロン66の層18の第1面を、結合層16の第2面に直接適用する。5g/mのBynel(登録商標)結合層20の第1面を、ナイロン層18の第2面に直接適用する。13g/mの製品に接触する低密度ポリエチレン内側層22の第1面を、結合層20の第2面に直接適用する。
【0021】
本発明の好ましい態様を特定の用語を用いて記載してきたが、これらの記載はもっぱら説明を目的としている。使用した語は、記載ためのものであって、限定するためのものではない。添付の特許請求の範囲に記載した本発明の精神或いは範囲から逸脱することなく、当業者による変更やバリエーションがなされ得ることは言うまでもない。添付の特許請求の範囲の精神及び範囲は、本明細書に含まれる好ましいものに関する記載に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1は、本発明の板紙の断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスバリヤー性を有する板紙であって、
第1面と該第1面と反対側の第2面とを有する板紙;
第1面と該第1面と反対側の第2面とを有する第1のポリオレフィン層、ここで、該第1のポリオレフィンの第1面は、該板紙の該第2面に直接適用されている;
第1面と該第1面と反対側の第2面とを有する第1の結合層、ここで、該第1の結合層の第1面は、該第1のポリオレフィン層の該第2面に直接適用されている;
第1面と該第1面と反対側の第2面とを有する脂肪族ナイロン層、ここで、該ナイロン層の第1面は、該第1の結合層の該第2面に直接適用されている;
第1面と該第1面と反対側の第2面とを有する第2の結合層、ここで、該第2の結合層の第1面は、該ナイロン層の該第2面に直接適用されている;
第1面と該第1面と反対側の第2面とを有する第2のポリオレフィン層、ここで、該第1面は、該結合層の該第1面に直接適用されている;
を備える、上記板紙。
【請求項2】
前記第1ポリオレフィン層、前記第1結合層、前記脂肪族ナイロン層、前記第2結合層、及び前記第2ポリオレフィン層が、共押出される、請求項1に記載の板紙。
【請求項3】
前記ポリオレフィン層が低密度ポリエチレンである、請求項1に記載の板紙。
【請求項4】
前記脂肪族ナイロンが、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン6/66、ナイロン6/9、ナイロン6/10、ナイロン11、及びナイロン12の少なくとも1つである、請求項1に記載の板紙。
【請求項5】
第1面と第2面とを有する第3のポリオレフィン層であって、該ポリオレフィン層の第1面が前記板紙の第1面に直接適用されているポリオレフィン層をさらに備える、請求項1に記載の板紙。

【図1】
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【公開番号】特開2006−327195(P2006−327195A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−140025(P2006−140025)
【出願日】平成18年5月19日(2006.5.19)
【出願人】(302009279)ウェヤーハウザー・カンパニー (36)
【Fターム(参考)】