説明

ガスフィルタ及びガス供給装置

【課題】混入防止の虞が低く、しかも簡単且つ低コストでガス中のパーティクルを帯電させ、該パーティクルを捕捉することができるガスフィルタ及びガス供給装置を提供する。
【解決手段】ガスが通流するガス流入口91c及びガス排出口91dを有する基部91と、基部91に螺合して筐体を構成する収容筒92と、ガス流入口91c及びガス排出口91dを隔離するように基部91及び収容筒92に収容されており、ガス流入口91cから流入したガス中のパーティクルを捕捉するフィルタ部材93とを備えるエンドフィルタ9に、ガスの通流によって該ガス中のパーティクルを帯電させる帯電孔96aが形成されたパーティクル帯電板96を、基部91のガス流入口91cに設ける。また、エンドフィルタ9をガス供給装置に設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス中のパーティクルを帯電させて捕捉するガスフィルタ、及び該ガスフィルタを備えたガス供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造工程でパーティクルが混入し、該パーティクルがウエハ表面に付着すると、半導体デバイスの配線が短絡し、半導体デバイスの歩留まりが低下する原因となるため、パーティクルが装置内に混入しないように、各種パーティクル混入防止対策が講じられている。
【0003】
パーティクル混入防止対策の一つとして、ガス供給装置にはガスフィルタが設けられている。ガス供給装置は、ガス圧、流量等を制御してプロセスガス、パージガス等を半導体デバイス製造装置に供給する装置である。ガスフィルタは、2つの通流口を有する筒状の筐体と、該筐体に収容されたフィルタ部材とを備え、ガス供給路に介装されている。フィルタ部材は、例えば焼結ステンレス製、セラミック製又は樹脂製であり、約数十μmのポア径を有している。
【0004】
フィルタ部材のポア径よりも粒径が大きいパーティクルは、フィルタ部材によって物理的に捕捉され、ポア径より粒径が小さいパーティクルも、パーティクル及びフィルタ部材間に働く分子間力によって捕捉される。具体的には、前記フィルタ部材によって、粒径が約0.003μm程度の微小なパーティクルも捕捉することが可能である。
【0005】
一方、空気中の塵埃を捕捉する集塵装置が開示されている(例えば、特許文献1)。特許文献1に係る集塵装置は、空気中の塵埃を帯電させる荷電部と、該荷電部の下流に設けられており、帯電した塵埃を集塵する集塵部とを備えている。荷電部は、例えば導電性の電極線及び電極板で構成され、電極線及び電極板に電圧が印加されるように構成されている。電極線及び電極板に電圧が印加された場合、電極線及び電極板の周囲に電界が形成され、空気の絶縁破壊によって、空気がイオン化し、塵埃を帯電させるもことができる。帯電した塵埃は、集塵部によって集塵される。
【特許文献1】特開2001−310141号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、ガスの種類によっては、従来のガスフィルタでパーティクルを捕捉できない場合があり、ガスフィルタを通過したパーティクルが、ウエハ表面に付着する事例が報告されている。具体的には、洗浄用のフッ素ガス中に含まれる、鉄を主成分としたパーティクルがフィルタ部材を透過していることが分かった。パーティクルがフィルタ部材に捕捉されない原因としては、パーティクル及びフィルタ部材間に働く分子間力に比べ、パーティクル及びガス間に働く分子間力が大きいことが考えられる。
【0007】
一方、特許文献1においては、パーティクルを帯電させて捕捉する集塵装置が開示されているが、電界を発生させる荷電部を備える必要があるため、構成が複雑で、高コストになるという問題があった。
また、半導体製造工程又は洗浄工程においては、数nmのパーティクルを捕捉する必要があるところ、電極線及び電極板で構成された荷電部をガス供給路に配置した場合、該荷電部及び荷電部の固定部位から、不測のパーティクルが発生する虞があり、パーティクル混入防止対策が困難になるという問題があった。
更に、半導体デバイス製造用のガス供給装置においては腐食性のプロセスガスが供給される場合があり、荷電部が腐食する虞があった。
【0008】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、ガスの通流によって該ガスに含まれるパーティクルを帯電させる帯電孔を有するパーティクル帯電部をフィルタ部材の上流側に設けることによって、従来技術に比べてパーティクル混入の虞が低く、しかも簡単且つ低コストでガス中のパーティクルを帯電させ、該パーティクルを捕捉することができるガスフィルタ及びガス供給装置を提供することを目的とする。
【0009】
本発明の他の目的は、帯電孔を音速ノズルとして構成することにより、ガスの通流速度を音速にすることができ、パーティクルを効果的に帯電させて捕捉することができるガスフィルタ及びガス供給装置を提供することにある。
【0010】
本発明の他の目的は、帯電孔が有底筒状のフィルタ部材の中心軸に対して、該フィルタ部材の側壁側に偏在するように設けることにより、帯電したパーティクルを速やかにフィルタ部材に到達させて効果的に捕捉することができるガスフィルタ及びガス供給装置を提供することにある。
【0011】
本発明の他の目的は、ガスフィルタ及びガス供給路間をシールするシール部材に帯電孔を形成することにより、パーティクル帯電部とシール部材とを兼用することができるガス供給装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
第1発明に係るガスフィルタは、ガスが通流する2つの通流口を有する筐体と、各通流口を隔離するように前記筐体に収容されており、一の通流口から流入したガス中のパーティクルを捕捉するフィルタ部材とを備えるガスフィルタにおいて、ガスの通流によって該ガス中のパーティクルを帯電させる帯電孔が形成されたパーティクル帯電部を、前記筐体の一の通流口側に設けてあることを特徴とする。
【0013】
第2発明に係るガスフィルタは、前記帯電孔は音速ノズルであることを特徴とする。
【0014】
第3発明に係るガスフィルタは、前記フィルタ部材は、一の通流口を覆う有底筒状をなし、前記帯電孔は、前記フィルタ部材の中心軸に対して、前記フィルタ部材の側面側に偏在していることを特徴とする。
【0015】
第4発明に係るガス供給装置は、半導体デバイス製造装置にガスを供給するガス供給路を備えたガス供給装置において、第1又は第2発明に係るガスフィルタを前記ガス供給路の途中に介装してあり、前記パーティクル帯電部は、前記ガスフィルタ及び前記ガス供給路間をシールするシール部材に前記帯電孔を形成してなることを特徴とする。
【0016】
第5発明に係るガス供給装置は、半導体デバイス製造装置にガスを供給するガス供給路を備えたガス供給装置において、第1乃至第3発明のいずれか一つのガスフィルタを前記ガス供給路の途中に介装してあることを特徴とする。
【0017】
第1及び第5発明にあっては、パーティクルを含むガスが帯電孔を通流した場合、該ガス中のパーティクルは、摩擦によって帯電し、帯電したパーティクルはフィルタ部材に静電吸着される。帯電したパーティクル及びフィルタ部材間に働く静電力は、パーティクル及びガス間に働く分子間力に比べて大きい。
従って、たとえパーティクル及びフィルタ部材間に働く分子間力が、パーティクル及びガス間に働く分子間力より小さい場合であっても、該パーティクルをフィルタ部材にて捕捉することが可能になる。
また、従来技術の荷電部に比べて、簡単な構成であるため、従来技術に比べ、パーティクル帯電部から不純物のパーティクルが発生する虞は低い。
更に、従来技術の荷電部に比べて、簡単且つ低コストな構成でパーティクルを帯電させることが可能になる。
【0018】
第2及び第5発明にあっては、帯電孔は音速ノズルであるため、パーティクルを含むガスは、帯電孔の一番狭い部分(スロート部)を音速で通流する。なお、音速ノズルの下流側の圧力を上流側の圧力で除して得られる比が所定の臨界圧力比以下である場合、音速ノズルを通流するガスの流速は音速に等しくなることが知られている。
従って、ガス中に含まれるパーティクルを摩擦によって効果的に帯電させることが可能になる。
【0019】
第3及び第5発明にあっては、フィルタ部材は有底筒状をなしており、帯電孔はフィルタ部材の中心軸に対して側面側に偏在している。このため、帯電孔を通流して帯電したパーティクルは、帯電孔がフィルタ部材の中心軸に位置している場合に比べて、より速くフィルタ部材に到達する。
従って、静電力によってパーティクルをより効果的に捕捉することが可能になる。
【0020】
第4発明にあっては、ガスフィルタ及びガス供給路間をシールするシール部材に帯電孔を形成し、パーティクル帯電部を構成している。
従って、パーティクル帯電部とシール部材とを兼用することが可能になる。
【発明の効果】
【0021】
第1及び第5発明によれば、従来技術に比べてパーティクル混入の虞が低く、しかも簡単且つ低コストでガス中のパーティクルを帯電させ、該パーティクルを捕捉することができる。
【0022】
第2及び第5発明によれば、ガスの通流速度を音速にすることができ、パーティクルを効果的に帯電させて捕捉することができる。
【0023】
第3及び第5発明によれば、帯電したパーティクルを速やかにフィルタ部材に到達させて効果的に捕捉することができる。
【0024】
第4発明によれば、パーティクル帯電部とシール部材とを兼用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて詳述する。
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係るガス供給装置の構成を示す模式図である。本発明の実施の形態1に係るガス供給装置は、いわゆるサーフェスマウント型の集積化ガス供給システムであり、図示しないCVD(Chemical Vapor Deposition)、スパッタリング装置、プラズマエッチング装置等の半導体デバイス製造装置にガスを供給するガス供給路1と、ガスの圧力、流量等を制御する制御部11(図4参照)とを備えている。
【0026】
ガス供給路1は、上流側(図1中左側)から順に、プレート型の継手2a・・2iを介して連結されたプレフィルタ3と、マウント型の手動弁4と、ガスの圧力を調整する圧力調整弁5と、ガスの圧力を検出する圧力センサ6と、スルー流路ブロック7aと、ガスの逆流を防止する逆止弁10aと、供給するガスの切り替えを行う三方弁10bと、ガスの流量を制御する流量コントローラ8と、スルー流路ブロック7bと、エンドフィルタ(ガスフィルタ)9とを備える。
【0027】
図2は、本発明に係るエンドフィルタ9の一例を模式的に示す側断面図である。エンドフィルタ9は、筐体を構成する基部91及び収容筒92と、一端側が開放した有底円筒状をなし、ガス中のパーティクルを捕捉するフィルタ部材93と、ガス中のパーティクルを帯電させる円板状のパーティクル帯電板96とを備える。
【0028】
基部91は、ステンレス製の円板状をなし、基部91の一端面(図2中、上面)には収容筒92が内嵌する円筒状の嵌合筒部91aが略垂直に突設されている。嵌合筒部91aの中心軸は、基部91の中心軸と略一致しており、その外周面には、収容筒92を基部91に締結するための雄ねじ91bが形成されている。また、基部91は、一端面の略中央部に、パーティクル帯電板96及びフィルタ部材93の開放端が内嵌する横断面円形状の嵌合凹部91eを有している。嵌合凹部91eの略中央部にはガス流入口91c(通流口)が形成されている。また、嵌合凹部91eと嵌合筒部91aとの間にはガス排出口(通流口)91dが形成されている。ガス流入口91c及びガス排出口91dは夫々、基部91の厚み方向に連通している。
【0029】
収容筒92は、一端側が開放した有底円筒状のステンレス製である。収容筒92は、外周面が拡径した段状部分を開放端側に有し、該段状部分が基部91の嵌合筒部91aに内嵌している。また、収容筒92の開放端と、基部91との間には、収容筒92と基部91との間をシールするニッケル製、又はステンレス製のガスケット95、例えばOリングが介装されている。そして、収容筒92及び基部91は、締結部材94によって締結されて、筐体を構成している。締結部材94は、嵌合筒部91aの雄ねじ91bに螺合する雌ねじ94aを内周面に有するナットであり、一端側の内径が収容筒92の段状部分の外径よりも小さく、収容筒92に当接する当接部を有している。締結部材94が嵌合筒部91aに螺合することによって、収容筒92の段状部分は締結部材94の当接部にて基部91側に押圧され、収容筒92は基部91に締結される。
【0030】
図3は、パーティクル帯電板96の一例を模式的に示す平面図及び側断面図である。図3(a)は、パーティクル帯電板96の平面図、図3(b)は、パーティクル帯電板96の側断面図である。パーティクル帯電板96は、ガスの通流によって該ガス中のパーティクルを帯電させる帯電孔96aを略中央部に有しており、図2に示すように基部91の嵌合凹部91eに内嵌している。帯電孔96aは、通流面積が出側及び入側よりも小さく形成されたスロート部を途中に有する音速ノズルである。
パーティクル帯電板96は、例えばステンレス製であり、パーティクル帯電板96の直径は4〜8mm、厚み方向の幅は約1mm、帯電孔の径は、10〜100μmである。
なお、パーティクル帯電板96は、基部91及びフィルタ部材93間をシールするガスケットとして構成しても良いし、専用のオリフィスとして構成しても良い。
【0031】
フィルタ部材93は、例えば、焼結ステンレス製、セラミック製又は樹脂製であり、約数十μmのポア径を有している。フィルタ部材93の開放端は、図2に示すように嵌合凹部91eに内嵌している。
【0032】
なお、エンドフィルタ9のガス流入口91c及び継手2h間、並びにガス排出口91d及び継手2i間夫々は、ガスケット97,98によってシールされている。
【0033】
図4は、制御部11の構成を示すブロック図である。制御部11は、CPU11aを備えたコンピュータである。CPU11aには、コンピュータの動作に必要な制御プログラムを記憶したROM11b、CPU11aの演算処理を実行する際に生ずる各種データを一時記憶するRAM11c、入力インタフェース(入力IF)11d及び出力インタフェース(出力IF)11eがバス11fを介して接続されている。入力インタフェース11dには、エンドフィルタ9の上流側のガスの圧力を検出する圧力センサ6と、エンドフィルタ9の下流側のガスの圧力を検出する下流側圧力センサ12とが接続され、CPU11aは、ガスの上流側圧力及び下流側圧力を検出するように構成されている。なお、下流側圧力センサ12は、例えばガス供給装置又は図示しない半導体デバイス製造装置に設けられたセンサである。また、出力インタフェース11eには、圧力調整弁5が接続されており、CPU11aは、出力インタフェース11eを介して制御信号を与えることによって、圧力調整弁5の動作を制御する。
【0034】
図5は、CPU11aの圧力制御に係る処理手順を示すフローチャートである。まず、CPU11aは、下流側圧力センサ12にて下流側圧力を検出し(ステップS11)、圧力センサ6にて上流側圧力を検出する(ステップS12)。
【0035】
次いで、CPU11aは、下流側圧力を上流側圧力で除して得られる比が所定臨界圧力比以下であるか否かを判定する(ステップS13)。所定臨界圧力比は、帯電孔96aを通流するガスの流速が音速になるときの下流側圧力と、上流側圧力との比であり、所定臨界圧力の値はROM11bが記憶している。前記比が所定臨界圧力比以下である場合、帯電孔96aを通流するガスの流速は、音速で一定になる。
【0036】
所定臨界圧力比より大きいと判定した場合(ステップS13:NO)、CPU11aは、圧力調整弁5の動作を制御することによって上流側のガスの圧力を増加させ(ステップS14)、処理をステップS11に戻す。所定臨界圧力比以下であると判定した場合(ステップS13:YES)、CPU11aは、処理を終える。
【0037】
次に、本発明に係るエンドフィルタ9及びガス供給装置の作用を説明する。
図6は、エンドフィルタ9の作用を概念的に示す説明図である。ガス供給路1の上流側から供給されたガスは、継手2h及びガス流入口91cを通じて帯電孔96aの入側に到達し、帯電孔96aを通流する。エンドフィルタ9の下流側圧力をエンドフィルタ9の上流側圧力で除して得られる比が所定臨界圧力以下である場合、帯電孔96aを通流するガスの流速は音速に達する。帯電孔96aを音速で通流するガス中のパーティクルPは、帯電孔96aとの摩擦によって帯電、例えば正に帯電する。そして、帯電孔96aを通流したガスはフィルタ部材93を通流する際、帯電したパーティクルPは静電力によってフィルタ部材93に捕捉される。パーティクルP及びフィルタ部材93間に働く静電力は、パーティクルP及びガス間に働く分子間力に比べて大きいため、パーティクルPを効果的に捕捉することが可能になる。
【0038】
このように構成された実施の形態1に係るエンドフィルタ9及びガス供給装置にあっては、従来技術に比べてパーティクル混入の虞が低く、しかも簡単且つ低コストでガス中のパーティクルを帯電させ、該パーティクルを捕捉することができる。
【0039】
また、帯電孔96aを音速ノズルとして構成することによって、ガスの通流速度を音速にすることができ、パーティクルを効果的に帯電させて捕捉することができる。
【0040】
更に、帯電孔96aは、出側の通流面積が途中の通流面積に比べて大きくなるように形成されているため、帯電孔96aを通流したガスは、放射状に噴射し、帯電したパーティクルは、フィルタ部材93の側面に到達する。従って、パーティクルを効果的に捕捉することができる。
【0041】
図7は、第1の変形例に係るエンドフィルタ109を模式的に示す側断面図、図8は、第1の変形例に係るパーティクル帯電板196を模式的に示す平面図及び側断面図である。図8(a)は、パーティクル帯電板196の平面図、図8(b)は、パーティクル帯電板196の側断面図である。第1の変形例に係るパーティクル帯電板196は、フィルタ部材93の中心軸に対して、フィルタ部材93の側面側に偏在するように複数の帯電孔196a,196a,…を有している。例えば、4個の帯電孔196a,196a,…がパーティクル帯電板196の周方向に等配されている。
【0042】
第1の変形例にあっては、帯電したパーティクルを速やかにフィルタ部材93に到達させて効果的に捕捉することができる。
また、複数の帯電孔196a,196a,…を設けているため、一つの帯電孔を設けた場合に比べ、上流側の圧力をより低圧にしてガスの流量を確保することができる。
【0043】
図9は、第2の変形例に係るエンドフィルタ209を模式的に示す側断面図、図10は、第2の変形例に係るパーティクル帯電板296を模式的に示す平面図及び側断面図である。図10(a)は、パーティクル帯電板296の平面図、図10(b)は、パーティクル帯電板296の側断面図である。第2の変形例に係るパーティクル帯電板296は、フィルタ部材93と、収容筒92との間に位置するように、内径がフィルタ部材93の外形より大きく、内径が収容筒92程度の円環状をなしている。また、パーティクル帯電板296は、フィルタ部材93と収容筒92との間に帯電孔296aを有している。
【0044】
第2の変形例にあっては、ガス排出口91d側から逆にガスを流入させ、ガス流入口91cからガスを排出するように用いた場合、フィルタ部材93の内側からガスを流入させる場合に比べて、帯電したパーティクルを速やかにフィルタ部材93に到達させて効果的に捕捉することができる。
【0045】
図11は、第3の変形例に係るエンドフィルタ9を模式的に示す側断面図である。第3の変形例に係るエンドフィルタ9は、専用のパーティクル帯電板96に代えて、エンドフィルタ9と継手2hとの間をシールするガスケットとしてパーティクル帯電板397を構成してある。つまり、第3の変形例に係るパーティクル帯電板397は、エンドフィルタ9と継手2hとの間をシールするガスケットであり、通常の通流口に代えて帯電孔397aを有している。
【0046】
第3の変形例にあっては、パーティクル帯電部397とガスケットとを兼用することができる。
【0047】
なお、実施の形態1においては、ガスフィルタの一例としてエンドフィルタを説明したが、その用途は限定されず、本発明に係るガスフィルタをガス供給装置の他の部位に介装しても良い。
【0048】
また、ガスフィルタの一例としてマウント型を説明したが、インライン型、ディスク型その他のガスフィルタに本発明を適用しても良い。
【0049】
更に、帯電孔を設けることによってパーティクルを帯電させる例を説明したが、ガスを音速で噴射することができるポンプをエンドフィルタの上流側に配することによって、パーティクルを帯電させるように構成しても良い。
【0050】
(実施の形態2)
図12は、本発明の実施の形態2に係るエンドフィルタ409の一例を模式的に示す側断面図である。本発明の実施の形態2に係るインライン型のエンドフィルタ409は、一端側が開放しており、ガス中のパーティクルを捕捉する有底円筒状のフィルタ部材493と、フィルタ部材493を収容するための収容筒492及び覆体499と、パーティクルを帯電させる帯電孔496aを略中央に有する円板状のパーティクル帯電板496とを備える。
【0051】
収容筒492は、両端側が開放しており、フィルタ部材493よりも大径の筒状をなしている。収容筒492は、ガスが流入するガス流入口492bを一端側(図12中左端側)に有しており、ガス流入口492bにはパーティクル帯電板496が内嵌固定、例えば圧入されている。なお、パーティクル帯電板496は、収容筒492と一体形成しても良い。収容筒492の他端側の外周面は縮径し、雄ねじ492aが形成されている。
【0052】
覆体499は、両端側が開放した筒状をなし、収容筒492の雄ねじ492aに螺合する雌ねじ499aを一端側に有し、他端側にガス排出口499bを有する。また、覆体499の他端側の内径は、フィルタ部材493の開放端側の外径よりも小さく形成されている。
【0053】
フィルタ部材493は、実施の形態1と同様の構成であり、開放端を覆体499側に向け、収容筒492と同軸的になるように収容筒492に収容されている。また、フィルタ部材493と収容筒492との間にはガスケット495が介装され、覆体499が収容筒492に螺合することによって、フィルタ部材493は収容固定されている。
【0054】
実施の形態2に係るエンドフィルタ409にあっては、実施の形態1と同様、従来技術に比べてパーティクル混入の虞が低く、しかも簡単且つ低コストでガス中のパーティクルを帯電させ、該パーティクルを捕捉することができる。
【0055】
なお、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではない。本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の実施の形態1に係るガス供給装置の構成を示す模式図である。
【図2】本発明に係るエンドフィルタの一例を模式的に示す側断面図である。
【図3】パーティクル帯電板の一例を模式的に示す平面図及び側断面図である。
【図4】制御部の構成を示すブロック図である。
【図5】CPUの圧力制御に係る処理手順を示すフローチャートである。
【図6】エンドフィルタの作用を概念的に示す説明図である。
【図7】第1の変形例に係るエンドフィルタを模式的に示す側断面図である。
【図8】第1の変形例に係るパーティクル帯電板を模式的に示す平面図及び側断面図である。
【図9】第2の変形例に係るエンドフィルタを模式的に示す側断面図である。
【図10】第2の変形例に係るパーティクル帯電板を模式的に示す平面図及び側断面図である。
【図11】第3の変形例に係るエンドフィルタを模式的に示す側断面図である。
【図12】本発明の実施の形態2に係るエンドフィルタの一例を模式的に示す側断面図である。
【符号の説明】
【0057】
1 ガス供給路
9,109,209,409 エンドフィルタ(ガスフィルタ)
91 基部(筐体)
91c,492b ガス流入口(通流口)
91d,499b ガス排出口(通流口)
92,492 収容筒(筐体)
93 フィルタ部材
96,196,296,397,496 パーティクル帯電板
96a,196a,296a,397a,496a 帯電孔
499 覆体(筐体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスが通流する2つの通流口を有する筐体と、各通流口を隔離するように前記筐体に収容されており、一の通流口から流入したガス中のパーティクルを捕捉するフィルタ部材とを備えるガスフィルタにおいて、
ガスの通流によって該ガス中のパーティクルを帯電させる帯電孔が形成されたパーティクル帯電部を、前記筐体の一の通流口側に設けてある
ことを特徴とするガスフィルタ。
【請求項2】
前記帯電孔は音速ノズルである
ことを特徴とする請求項1に記載のガスフィルタ。
【請求項3】
前記フィルタ部材は、
一の通流口を覆う有底筒状をなし、
前記帯電孔は、前記フィルタ部材の中心軸に対して、前記フィルタ部材の側面側に偏在している
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のガスフィルタ。
【請求項4】
半導体デバイス製造装置にガスを供給するガス供給路を備えたガス供給装置において、
請求項1又は請求項2に記載のガスフィルタを前記ガス供給路の途中に介装してあり、
前記パーティクル帯電部は、
前記ガスフィルタ及び前記ガス供給路間をシールするシール部材に前記帯電孔を形成してなる
ことを特徴とするガス供給装置。
【請求項5】
半導体デバイス製造装置にガスを供給するガス供給路を備えたガス供給装置において、
請求項1乃至請求項3のいずれか一つに記載のガスフィルタを前記ガス供給路の途中に介装してある
ことを特徴とするガス供給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−240984(P2009−240984A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−92689(P2008−92689)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】