説明

ガスワイピングノズルおよびガスワイピング方法

【課題】帯状体の表面に付着した付着物を除去するのに用いられるガスワイピングノズルと、当該ガスワイピングノズルを用いたガスワイピング方法を提供する。
【解決手段】
外周面の少なくとも一部が曲面からなる筒状あるいは柱状の胴部と、前記曲面と一定間隙にして前記曲面の接線方向にワイピングガスを噴出可能に配された噴出口とを備え、前記曲面には凹部が形成され、当該凹部の少なくとも一部は、前記噴出口から噴出された前記ワイピングガスの流れが集中するように構成されているガスワイピングノズルを用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、相対的に移動する帯状体の表面に付着した付着物を噴出ガスで除去するのに用いられるガスワイピングノズルと、当該ガスワイピングノズルを用いて相対的に移動する帯状体の表面に付着した付着物を除去するガスワイピング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明のガスワイピングノズル(以下、ノズルと略すこともある)は、帯状体の表面に付着したゴミ、汚れ、水滴等を噴出ガスで除去したり、過剰に付着した塗料、インク、接着剤、樹脂等の液状部材を噴出ガスで除去するのに用いられるガス噴出ノズルである。そして、溶融金属めっきの製造装置においては、金属帯の表面に付着した過剰の溶融金属を噴出ガスで除去するとき用いられるガス噴出ノズルである。以下、本発明のガスワイピングノズルの背景技術を、溶融金属めっきの製造装置に用いられるガスワイピングノズルを用いて説明する。
【0003】
金属帯の溶融金属めっきでは、連続した金属帯を溶融金属からなるめっき浴中に引き込んだ後、シンクロールで方向転換し、めっき浴から引上げることで当該金属帯表面に溶融金属が付着される。その後、引上げられた金属帯は溶融金属が凝固する前に一対のガスワイピングノズル間に通され、表面に窒素等のワイピングガスが噴き付けられて過剰の溶融金属が除去され、金属帯表面に所定厚みの溶融金属めっき層が形成される。
【0004】
溶融金属めっきでは、ワイピングガスで除去された過剰の溶融金属の大部分は金属帯を伝わってめっき浴に戻るものの、一部は金属帯表面から離脱して雰囲気中に飛散することが知られている。飛散した溶融金属は金属帯上に再付着したり、ノズルのガス噴出口に付着してノズルを目詰まりさせたり、酸化した溶融金属がめっき浴に戻ってめっき浴を汚染するので問題となる。したがって、ガスワイピングノズルを用いてワイピングガスを噴き付ける場合には、溶融金属の飛散が可能な限り発生しないようにするのが望ましいとされている。
【0005】
ガスワイピングノズルを用いてワイピングガスを噴き付ける際、溶融金属の飛散を抑制するには、例えば特許文献1のように、金属帯の表面に角度をつけて直線的にワイピングガスを噴き付ける方法が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平4−2756号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図9は、矢印Aの方向に移動する金属帯Tの表面に付着した溶融金属を、従来のガスワイピングノズルで除去する様子を説明した図である。特許文献1では、ノズル9Aのように金属帯T表面に垂直にワイピングガスを噴き付けるよりも、ノズル9Bのように金属帯T表面に角度をつけてワイピングガスを噴き付けるほうが、溶融金属を除去する効果が高く飛散物Sの発生を抑制できるので好ましいとしている。しかしながら、ワイピングガスが金属帯T表面に直線的に噴き付けられる限り、このようなノズル配置にしても、金属帯T表面の溶融金属はワイピングガスに叩かれてしまうので、溶融金属の飛散物Sの発生を完全に防ぐことは困難である。
【0008】
また、溶融金属の飛散を抑制するのに、金属帯T近くのノズル9Cの位置にガスワイピングノズルを配置し、ワイピングガスを金属帯T表面と平行に近い角度で噴き付ける方法も考えられる。このようなノズル配置にすれば、金属帯T表面の溶融金属はワイピングガスに叩かれにくくなるので、溶融金属の飛散が抑制され、金属帯T表面の過剰の溶融金属の大部分は、金属帯を伝わってめっき浴(不図示)に戻るようになると考えられる。
【0009】
しかしながら、直線的にガスを噴出する従来のノズルでは、ノズルを金属帯Tに接近させることが難しく、ワイピングガスを噴き付ける角度θを小さくするのが困難である。そして、従来のノズルを金属帯Tに接近させた場合、ノズル9Cから噴出したワイピングガスの流れに上方から巻き込まれた空気が振動し、それにつられて金属帯Tが破線のようにたなびいて振動する可能性があり、このような金属帯Tの振動により、ノズルが金属帯T表面に触れてめっき付着量が不均一になったり、金属帯Tの表面から飛散した溶融金属がノズルのガス噴出口に付着して、ノズルを目詰まりさせたりする可能性もある。
【0010】
また、従来のノズルを用いて直線的にガスを噴き付ける方法では、金属帯T表面のガス流が乱れてしまうので溶融金属の除去が不安定であり、金属帯T表面のめっき付着量にばらつきがでてしまう可能性がある。さらに、ノズル9Bとノズル9B’のように、金属帯Tの両面から直線的にガスを噴き付ける場合、直線的なガス流同士の干渉によりワイピングガスの状態が乱れて、金属帯T表裏面のめっき付着量にばらつきがでてしまう可能性もある。
【0011】
本発明は、上記従来の技術の問題点を解決するものであり、相対的に移動する帯状体の表面に付着した付着物を噴出ガスで除去するのに用いられるガスワイピングノズルと、当該ガスワイピングノズルを用いて相対的に移動する帯状体の表面に付着した付着物を除去するガスワイピング方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明のガスワイピングノズルは、相対的に移動する帯状体の表面に付着した付着物の一部あるいは全てを噴出ガスで除去するのに用いられるガスワイピングノズルであって、外周面の少なくとも一部が曲面からなる筒状あるいは柱状の胴部と、前記曲面と一定間隙にして前記曲面の接線方向にワイピングガスを噴出可能に配された噴出口とを備え、前記曲面には凹部が形成され、当該凹部の少なくとも一部は、前記噴出口から噴出された前記ワイピングガスの流れが集中するように構成されていることを特徴としている。そして、前記凹部の少なくとも一部が、ワイピングガスの流れの中央に向かって傾斜していてもよい。
【0013】
上記構成のガスワイピングノズルでは、胴部外周面が有する曲面の接線方向にワイピングガスが噴出されることで、噴出されたワイピングガスの少なくとも一部が、コアンダ効果により、胴部外周面の曲面に沿って向きを変えながら流速を増しながら流れるようになる。これにより、ガス噴出口を帯状体に接近させることなしに、帯状体の表面に略平行の狭角度でワイピングガスを噴き付けることができて、帯状体表面から付着物が飛散するのを抑制することが可能になる。なお、ここでいう略平行とは、平行から数度ずれた程度までの位置関係を示すものである。そして、上記構成のガスワイピングノズルでは、胴部外周面の曲面に沿った曲線的なガス流が形成されるので、帯状体表面に対して平行または略平行のワイピングガス流により、帯状体表面の付着物が安定的に除去できるようになり、帯状体の表面の付着物に流動性がある場合では、付着物を均一な厚みにまで安定して薄膜化することも可能になる。
【0014】
また、上記構成のガスワイピングノズルでは、噴出口から噴出されたワイピングガスの流れの少なくとも一部が、胴部外周面に形成された凹部の段差面に沿って流れの向きを変えるものであり、段差面の少なくとも一部を、噴出口から噴出されたワイピングガスの流れが連続的に縮幅するように流れの中央に向かって傾斜した面にすることで、段差面に当接したワイピングガスの一部が、ワイピングガス全体の流れの中央に向かって流速を増しながら集中するようになる。これにより、ワイピングガスは噴出口から噴出された状態よりもガスが圧縮された状態にして帯状体に噴き付けられるようになるので、帯状体から効率的に付着物の除去ができるようになる。
【0015】
以上に説明した、本発明のガスワイピングノズルが付着物を除去する能力は、帯状体の幅に対する、噴出口から噴出されるワイピングガスの幅にも関係するものであり、帯状体の表面の付着物を均一に除去するためには、帯状体の幅よりも広い噴出口を有するガスワイピングノズルを用いるのが好ましい。
【0016】
そして、本発明のガスワイピングノズルでは、前記凹部を、複数の条溝からなる凹部としてもよい。凹部を複数の条溝にすることで、ワイピングガスの流れの向きを変える段差面も複数になり、ワイピングガスの流れの向きが多段に変えられるので、ワイピングガスの流れを所望の集中した流れにしやすくなる。
【0017】
また、本発明のガスワイピングノズルは、前記ガスワイピングノズルに対して相対的に移動する帯状体を挟み込むよう、一対にして対向配置されてもよい。このようにすることで、帯状体の表裏面の付着物を同時に除去するのに好ましい構成にすることができる。
【0018】
そして、本発明のガスワイピング方法は、前記ガスワイピングノズルを用いて、前記帯状体にワイピングガスを噴き付け、前記帯状体の表面に付着した付着物を除去することを特徴としている。また、前記一対のガスワイピングノズルの間に、前記帯状体の移動方向と平行または略平行のワイピングガス流を形成し、該ワイピングガス流により前記帯状体の表面に付着した付着物を除去することも特徴としている。
【発明の効果】
【0019】
上記説明のように、本発明のガスワイピングノズルおよびガスワイピング方法によれば、従来技術で問題としていた、帯状体(金属帯)からの付着物(溶融金属)の飛散を抑制することができ、帯状体から効率良く付着物を除去することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1実施態様のガスワイピングノズルの概略構成を示す斜視図である。
【図2】本発明の第1実施態様のガスワイピングノズルの断面構造を示す図である。
【図3】本発明の第1実施態様のガスワイピングノズルが採用し得る他の断面構造を示す図である。
【図4】本発明の第1実施態様のガスワイピングノズルの外周面に形成された凹部を説明する図である。
【図5】本発明の第1実施態様のガスワイピングノズルの外周面に形成され得る他の凹部形態を説明する図である。
【図6】本発明の第3実施態様のガスワイピングノズルの概略構成を示す図である。
【図7】実験例においてステンレス箔片に作用するワイピング力を評価する装置の概略構成を示す模式図である。
【図8】実験例においてステンレス箔片に作用する力(荷重)とワイピングガス流量の関係を示すグラフである。
【図9】従来技術の問題点を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明にかかるガスワイピングノズルおよびガスワイピング方法について、その各種態様に基づき図面を参照しながら説明する。
【0022】
[第1実施態様]
本発明の第1実施態様について、図1から図5を用いて説明する。図1は、第1実施態様のガスワイピングノズルの概略構成を示す斜視図、図2は、図1のガスワイピングノズルの断面構造を示す図、図3は、本実施態様のガスワイピングノズルが採用し得る他の断面構造の例を示す図。図4は、図1のガスワイピングノズルの外周面に形成された凹部を説明する図。図5は、本実施態様のガスワイピングノズルの外周面に形成され得る他の凹部形態の例を説明する図である。
【0023】
図1に示す本実施態様のガスワイピングノズル1は、両端面が塞がれた円筒状の胴部11と、外部からノズル1にワイピングガスGを導入するガス導入管14と、胴部11に固定されて胴部11との間にスリット状の噴出口12を形成してワイピングガスGを噴出させるスリット板13と、胴部11とスリット板13の端面の隙間を封止してワイピングガスGが漏れないようにする封止部15とで構成されている。そして、胴部11の外周面18には、段差面19を有する凹部20が形成されている。上記構成のガスワイピングノズル1は、図のように帯状体T表面に対向して配され、帯状体Tの表面にワイピングガスGを噴き付けて、帯状体Tに付着した付着物(図示せず)を除去する。
【0024】
図1の封止部15は、胴部11とスリット板13の端面の隙間に樹脂や金属を充填したり、隙間自体を溶接することで形成することできるが、端面の隙間からワイピングガスGを漏らさない構造であれば他の構造であってもよい。たとえば、胴部11とスリット板13の端面に板状の部材を貼り付けることで、端面の隙間からワイピングガスGを漏らさない構造にしてもよい。
【0025】
図2は、図1のガスワイピングノズル1の断面構造およびガスワイピングノズル1の内部でのワイピングガスGの流れを示す図である。ガスワイピングノズル1は、内部が中空円筒状の胴部11にスリット板13とガス導入管14が固定された構造であり、ワイピングガスGは、ガス導入管14を通じて胴部11の内部に導入された後、貫通孔16と、胴部11とスリット板13との間に形成されたスリット部17を通って、噴出口12からノズル外部に噴出される。
【0026】
噴出口12から噴出されたワイピングガスGは、コアンダ効果により胴部11の外周面18に沿って流れの向きを変え、帯状体T表面と略平行のガスの流れを安定的に形成するので、ガスワイピングノズル1では帯状体T表面の付着物が安定して除去されるようになる。また、ワイピングガスGは帯状体Tの表面と略平行に流れて、帯状体T表面を殆ど叩かないので、ガスワイピングノズル1では帯状体T表面の付着物が飛散しにくくなる。
【0027】
また、ガスワイピングノズル1は、帯状体Tの振動や帯状体Tからの飛散物の影響を受けるまで噴出口12を接近させなくとも帯状体T表面と略平行のガス流を形成することができる。
【0028】
さらに、噴出口12から噴出されたワイピングガスGは、コアンダ効果により周囲のガスを巻き込みながら円筒状の胴部11の外周面18に沿ったガス流を形成するようになる。これにより、噴出口12から噴出されたワイピングガスGより圧縮されたガスの流れが帯状体Tに作用するようになるので、ガスワイピングノズル1を用いることで効率よく帯状体T表面の付着物を除去することができるようになる。
【0029】
そして、ワイピングガスGは、帯状体T表面に付着した付着物を除去した後も、さらに一部は円筒状の胴部11の外周面18に沿って流れる。したがって、帯状体T表面から付着物の飛散が発生しても、その一部は円筒状の胴部11の外周面18に沿って帯状体Tから離れるようにして飛散するので、ガスワイピングノズル1を用いることで飛散した付着物が帯状体Tに再付着しにくくなる。
【0030】
ガスワイピングノズル1からワイピングガスGを噴出する噴出口12は、ワイピングガスGがコアンダ効果により外周面18に沿って流れるよう、円筒外周面18の曲面の接線方向にスリット状にして開口している。そして、ガス導入管14に導入するワイピングガスの圧力を調整することは勿論であるが、胴部11に対するスリット板13の取付け位置を変えたり、スリット板13の長さを変えることで、ガスワイピングノズル1は帯状体T表面の付着物に作用するワイピング力を調整することができる。また、胴部11と帯状体Tとの距離を変えることによっても、ワイピング力を調整することができる。
【0031】
図1および図2のガスワイピングノズル1は、円筒状の胴部11を備えたものであるが、胴部11の形状は必ずしも円筒状に拘るものではない。本発明のガスワイピングノズル1は、噴出口12から噴出されたワイピングガスGが、コアンダ効果により流れの向きを変え、帯状体Tの表面と略平行のワイピングガスGの流れを形成し、帯状体Tに付着した付着物を除去できるような胴部11の外周面18形状であればよい。以上作用が得られる外周面18の形状としては、円筒以外にも楕円のような2次曲線を端面に含む筒状の外周面18であってもよい。
【0032】
そして、ワイピングガスGが表面に沿って流れる曲面は、必要な場所でワイピングガスGの流れの向きが変えられれるよう、外周面18の少なくとも一部にだけあればよく、その他の部分は、平面や凹凸面であってもよい。
【0033】
図3は、ガスワイピングノズル1が採用し得る他の断面構造の例を示す図である。図3のように、ワイピングガスGが噴出される噴出口12付近の外周面18の部分を円筒面状にして、帯状体Tに対向する外周面18の部分を帯状体Tと平行な平面状にしている。このような外周面18にすることで、ワイピングガスGが帯状体Tの表面と略平行に流れる距離を長くでき、ワイピング作用の大きいガスワイピングノズル1にすることができる。
【0034】
ガスワイピングノズル1の外周面18には、段差面19を有する凹部20が形成されている。この凹部20は、凹部20の形成によってもコアンダ効果が維持されて、外周面18に沿ってワイピングガスGが流れるよう、外周面18に浅く形成されるものである。具体的には、その段差は、0.1〜0.2mm程度が好ましい。
【0035】
図4は、ガスワイピングノズル1の外周面18に形成された凹部20を詳細に説明する図である。(a)の図は、ガスワイピングノズル1の胴部11の斜視図を示したものであり、胴部11の外周面18には、段差面19を有する凹部20が形成されている。この凹部20は、(a)の図におけるA−A’部分の断面を示した(b)の図のように、外周面18からほぼ均一な深さに形成されており、段差面19は、外周面18に対してほぼ垂直に形成されている。段差面19は、以後に説明するように、噴出口12から噴出されたワイピングガスGの流れの向きを変えるために形成されたものである。したがって、段差面19は、外周面18に対してゆるやかな角度に形成されるよりも、ある程度切り立った角度、具体的には、30〜60°程度に形成されたほうが好ましい。このような段差面19を有する凹部20は、外周面18を機械加工することで形成することができるが、外周面18上にマスクを形成して、サンドブラストあるいは化学エッチングにより形成することもできる。
【0036】
図4の(c)の図は、外周面18に形成された凹部20を帯状体T方向から見た状態を説明する図である。図のように、凹部20は、噴出口12から離れるに従い、その幅が狭くなる形状にして外周面18上に形成されている。そして、凹部20の境界である段差面19の一部は、噴出口12から噴出されたワイピングガスGの流れの下流に向かって、凹部20が連続的に縮幅するように形成されており、噴出口12から噴出されたワイピングガスGの一部は、図の矢印のように段差面19に沿って流れの向きを変え、噴出口12から噴出された直後よりも圧縮されたガスの流れを形成するようになる。これにより、帯状体T表面に噴き付けられるワイピンガスGの量が実質的に増えることになり、帯状体T上の付着物をより効率よく除去することが可能なワイピングガスGとすることができる。
【0037】
図5は、ガスワイピングノズル1の外周面18に形成され得る他の凹部形態を説明する図であり、(a)の図は、胴部11の斜視図、(b)の図は、(a)のA−A’部分の断面を説明する図、(c)の図は、凹部20を帯状体T側から見た状態を説明する図である。ガスワイピングノズル1の外周面18に形成される凹部20は、(a)の図のように、複数の条溝からなる凹部20であってもよい。これら条溝の断面は、(b)の図のように、V字断面とすることができるが、底面を有したU字断面の条溝としてもよい。これら複数の条溝からなる凹部20は、(c)の図のように、噴出口12から噴出されたワイピングガスGの流れの中央に向かって傾斜した段差面19を形成しており、噴出口12から噴出されたワイピングガスGは、図の矢印のように流れの向きを変え、噴出口12から噴出された直後よりも圧縮されたガスの流れを形成するようになる。したがって、図4のガスワイピングノズル1と同様に、帯状体T表面に噴き付けられるワイピンガスGの実質的な量が増えることになり、帯状体T上の付着物をより効率よく除去することが可能なワイピングガスGとすることができる。
【0038】
[第2実施態様]
本発明の第2実施様態について、図6を参照しながら説明する。図6は、第1実施様態の2個のガスワイピングノズル1を一対にして配し、帯状体Tの表裏面に付着した付着物を同時に除去する、ガスワイピングノズル6を説明する図である。
【0039】
図6のガスワイピングノズル6は、2個のガスワイピングノズル1を帯状体Tを挟んで一対にして対向配置したものであり、これらガスワイピングノズル1は連結部材61によって連結されている。ガスワイピングノズル1それぞれについて、配置およびガス噴出条件を任意に設定することもできるが、ガスワイピングノズル1と帯状体Tとの間隔、ガス流量、噴出口12から噴出するワイピングガスの角度を同じ条件にして、2個のガスワイピングノズル1を、帯状体Tを対称軸に一対にして対称に配置するのが好ましい。かかる配置にすることにより、お互いのガスワイピングノズル1から噴出されたガス流は干渉することなしに、帯状体Tの表裏面に対して略平行で安定した下方向のガス流を形成することができる。
【0040】
そして、図6のガスワイピングノズル6は、2個のガスワイピングノズル1の配置、およびワイピングガスGの噴出条件を最適化することで、2個のガスワイピングノズル1の間に、帯状体Tと略平行なワイピングガス流を形成することができる。かかるガス流は、帯状体T表面から付着物の飛散するのを抑制するとともに、ガスワイピングノズル1と帯状体Tとの相対的移動方向と、ワイピングガスGの流れの方向とが、平行あるいは略平行になるので、帯状体Tを安定してノズル間に配置させて、帯状体Tの振動も抑えることができる。したがって、上記のガスワイピングノズル6を用いたガスワイピング方法は、振動により破断しやすい帯状体、例えば、箔やフィルムのような帯状体のガスワイピングには、大変好ましいものである。
【0041】
(実験例1)
本発明のガスワイピングノズル1が生じるがワイピング力の評価を、図6のように、2個のガスワイピングノズル1が一対になったガスワイピングノズル6を用いて行った。図7に評価に用いた装置の概略構成を示す。2個のガスワイピングノズル1は仕様が同じノズルであり、胴部11の外径は20mm、胴部11の軸方向の長さは8mm、噴出口12の形状は6mm×0.1mmのスリット状とし、胴部11の外周面18には、図1のような段差面19を有する凹部20が形成されている。2個のガスワイピングノズル1は、垂直に垂らしたステンレス箔片T’(幅2mm,厚み0.2mm,長さ200mm)の厚み方向に対して対称にして連結部材61に取付けられ、2個のガスワイピングノズル1の胴部11の間隔は1mmに設定した。ガスワイピングノズル1は、連結部材61の取り付け角度を調整して、ステンレス箔片T’の表面と噴出口12から噴出されたワイピングガスGのなす角度θが20度になるように調整した。ワイピングガスGには圧縮空気を用い、2個のガスワイピングノズル1から噴出されるワイピングガスGの量は、不図示のガス圧調整弁により調整した。
【0042】
図7において、ステンレス箔片T’の上端は、接着部72を介して秤量計71に接続されていて、2個のガスワイピングノズル1からワイピングガスGが噴出されてステンレス箔片T’にワイピング力が作用すると、ステンレス箔片T’はワイピング力によって引き下げられ、秤量計71の示す値(荷重)が大きくなる。本実験では、かかる荷重を計測することで、ガスワイピングノズル1のガスワイピング力を比較・評価した。
【0043】
図8に、秤量計71が示した荷重のガス流量依存性を示す。評価したガスワイピングノズルは、(1)凹部の深さが0.1mmのノズル、(2)凹部の深さが0.2mmのノズル、(3)比較として凹部が形成されていないノズル、の3種類である。いずれのノズルも、ガス流量が増加するにしたがって荷重も増加する様子が計測されたが、凹部が形成されたノズルは、凹部が形成されていないノズルの、約2倍の荷重が計測され、胴部の外周面に凹部を形成することによって、ワイピング力の大きいノズルになることが確認できた。また、凹部が形成されたノズルでも、ある程度まで凹部が深いノズルのほうが荷重が大きくなることから、凹部の深さを最適化することで、ワイピングガスの流れがより集中してワイピング力が大きくなることが確認できた。
【符号の説明】
【0044】
1:ガスワイピングノズル
11:胴部
12:噴出口
13:スリット板
14:ガス導入管
15:封止部
16:貫通孔
17:スリット部
18:外周面
19:段差面
20:凹部
21:底面
6:ガスワイピングノズル
61:連結部材
71:秤量計
72:接着部
G:ワイピングガス
S:飛散物
T:帯状体
T’:ステンレス箔片


【特許請求の範囲】
【請求項1】
相対的に移動する帯状体の表面に付着した付着物の一部あるいは全てを噴出ガスで除去するのに用いられるガスワイピングノズルであって、外周面の少なくとも一部が曲面からなる筒状あるいは柱状の胴部と、前記曲面と一定間隙にして前記曲面の接線方向にワイピングガスを噴出可能に配された噴出口とを備え、前記曲面には凹部が形成され、当該凹部の少なくとも一部は、前記噴出口から噴出された前記ワイピングガスの流れが集中するように構成されていることを特徴とするガスワイピングノズル。
【請求項2】
前記凹部の少なくとも一部が、ワイピングガスの流れの中央に向かって傾斜していることを特徴とする請求項1に記載のガスワイピングノズル。
【請求項3】
前記凹部が、複数の条溝からなることを特徴とする請求項1または2に記載のガスワイピングノズル。
【請求項4】
前記ガスワイピングノズルに対して相対的に移動する帯状体を挟み込むよう、一対にして対向配置されることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のガスワイピングノズル。
【請求項5】
請求項1ないし3のいずれかに記載のガスワイピングノズルを用いて、前記帯状体にワイピングガスを噴き付け、前記帯状体の表面に付着した付着物を除去することを特徴とするガスワイピング方法。
【請求項6】
請求項4に記載された一対のガスワイピングノズルの間に、前記帯状体の移動方向と平行または略平行のワイピングガス流を形成し、該ワイピングガス流により前記帯状体の表面に付着した付着物を除去することを特徴とするガスワイピング方法。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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