説明

ガス中の有機ハロゲン化物のオンライン簡易計測装置及び方法

【課題】例えばPCB等の有機ハロゲン化物質を無害化処理する処理設備内のガス中の有機ハロゲン化物のオンライン簡易計測装置及び方法を提供する。
【解決手段】有機ハロゲン化物処理設備の監視システム10は、有機ハロゲン化物であるPCBの処理設備であるPCB水熱酸化分解装置(計測対象部)11の環境を監視する有機ハロゲン化物処理設備の監視システムであって、計測対象部11の複数箇所S1〜S5から捕集したガスを導入するガス導入ラインL1〜L5から導入されたガス中の残留有機ハロゲン化物を計測するレーザイオン化飛行時間型質量分析装置15と、ガス導入ラインL1〜L5から分岐され、気体体中の残留有機ハロゲン化物をガス導入ラインL11〜L15を介して捕集する捕集用固相カラム22−1〜22−5とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばPCB等の有機ハロゲン化物質を無害化処理する処理設備内のガス中の有機ハロゲン化物のオンライン簡易計測装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年では、生活排水、工場、事業所等からの排液などの浸漬による土壌汚染、また、工場跡地等の土壌汚染により本来自然に分解不可能な化学物質で汚染された土壌、地下水が増加し、その結果、生態系や社会生活基盤としての土壌環境に深刻な影響を与えている。そのため、このような汚染された土壌や地下水を浄化処理する各種の方法が提案されている。しかし、土壌中に残留する廃油、PCB、ダイオキシン類等に関しては有効な処理方法がなく、焼却や封じ込めなどの対策が行われているのが現状である。
【0003】
また、近年PCBを無害化処理する設備として、PCB廃液を高温・高圧の亜臨界状態において水熱酸化分解装置で水熱酸化分解して、無害化することが提案されている(特許文献1)。
【0004】
この無害化処理においては、無害化処理設備内での残留PCB濃度の計測を行い、常に監視している。このPCB処理施設では100%のPCB油(極めて高濃度)を処理するが、排出規制は大変厳しく、排気中PCB管理目標値は0.01mg/m3N(10ppbV以下、10億分の1に相当)となっている。したがって排気管理はリアルタイムでオンライン監視が求められ、その監視手段として「レーザイオン化飛行時間型質量分析装置」が提案されている(特許文献2)。
【0005】
このレーザイオン化飛行時間型質量分析装置を用いた有機ハロゲン化物処理設備の監視システムの一例を図7に示す。
【0006】
図7に示すように、レーザイオン化飛行時間型質量分析装置を用いた有機ハロゲン化物処理設備の監視システムは、PCBの処理設備であるPCB水熱酸化分解装置(計測対象部)101の環境を監視する有機ハロゲン化物処理設備の監視システムであって、計測対象部内の複数箇所S1〜S5から捕集したガスを導入するガス導入ラインL1〜L5から導入されたガス中の残留有機ハロゲン化物を切替弁102を切り替えて順次計測するレーザイオン化飛行時間型質量分析装置105を備えており、ガス導入ラインL1〜L5に介装されたガス流量計121−1〜121−5で流量を監視して、レーザイオン化飛行時間型質量分析装置105の試料イオン化部103に試料を導入し、イオン化した試料を飛行時間型質量分析装置104で計測するようにしている。なお、図7中、符号106は装置制御系CPU、符号107は施設、プラント制御系CPUであり、計測信号をもとに制御を行うようにしている。
【0007】
このレーザイオン化飛行時間型質量分析装置を使用することで、計測時間1分で管理目標値以下のPCBの濃度を連続分析することができている。
【0008】
【特許文献1】特開2003−94013号公報
【特許文献2】特許第3785060号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、前述したレーザイオン化飛行時間型質量分析装置は、極微量の残留物質を高感度で分析するので、その信頼性維持のために、メンテナンス頻度が高いという問題がある。
【0010】
メンテナンス時期における代替策としては公定分析法(手分析)による対処があるが、分析結果を算出するには時間がかかりすぎてしまい現実的では無いため、レーザイオン化飛行時間型質量分析装置のバックアップ策としての迅速分析手段が必要不可欠となってきた。
【0011】
また、レーザイオン化飛行時間型質量分析装置での計測は、オンライン計測ではあるものの、分析装置が一台の場合には、多数の計測地点において、同時刻での残留物質の濃度の計測ではなく、10〜15分の時間差をおいての計測であるので、多数の地点において同時刻での簡易な計測手法の確立が切望されている。
【0012】
本発明は、前記問題に鑑み、例えばPCB等の有機ハロゲン化物質を無害化処理する処理設備内のガス中の有機ハロゲン化物のオンライン簡易計測装置及び方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述した課題を解決するための本発明の第1の発明は、有機ハロゲン化物を処理する閉鎖処理施設内において、雰囲気中の残留有機ハロゲン化物を簡易に計測する計測装置であって、計測対象部の複数箇所から捕集したガスを導入するガス導入ラインと、ガス導入ラインに介装され、ガス中の有機ハロゲン化物を捕集する捕集用固相カラムと、捕集用固相カラムに吸着した有機ハロゲン化物を溶出する固相抽出装置と、固相抽出装置から溶離した溶離液中の有機ハロゲン化物を分析する分析装置とを具備することを特徴とするガス中の有機ハロゲン化物のオンライン簡易計測装置にある。
【0014】
第2の発明は、第1の発明において、ガス中の不純物質が非極性物質と極性物質とを含む場合、前記捕集用固相カラムの充填剤がポリスチレン系充填剤であり、溶出液がヘキサン又はアセトン又はそれらの混合液であることを特徴とするガス中の有機ハロゲン化物のオンライン簡易計測装置にある。
【0015】
第3の発明は、第1の発明において、ガス中の不純物質が非極性物質と極性物質と油成分とを含む場合、前記捕集用固相カラムの充填剤がポリスチレン系充填剤であり、溶出液がヘキサンであると共に、溶離液を硫酸シリカゲル層カラムで更に精製することを特徴とするガス中の有機ハロゲン化物のオンライン簡易計測装置にある。
【0016】
第4の発明は、有機ハロゲン化物を処理する閉鎖処理施設内において、雰囲気中の残留有機ハロゲン化物を簡易に計測する計測装置であって、計測対象部の複数箇所から捕集したガスを導入するガス導入ラインと、ガス導入ラインに介装され、ガス中の有機ハロゲン化物を捕集する捕集用固相カラムと、捕集用固相カラムの充填剤を燃焼分解処理し、塩素を捕集し、塩素濃度から有機ハロゲン化物を計測する全有機ハロゲン化物分析装置とを具備することを特徴とするガス中の有機ハロゲン化物のオンライン簡易計測装置にある。
【0017】
第5の発明は、有機ハロゲン化物を処理する閉鎖処理施設内において、雰囲気中の残留有機ハロゲン化物を簡易に計測する計測方法であって、計測対象部の複数箇所から捕集したガスを導入するガス導入ラインに介装された捕集用固相カラムでガス中の有機ハロゲン化物を捕集し、その後、捕集用固相カラムに吸着した有機ハロゲン化物を溶出し、溶離した溶離液中の有機ハロゲン化物を分析して、有機ハロゲン化物を計測することを特徴とするガス中の有機ハロゲン化物のオンライン簡易計測方法にある。
【0018】
第6の発明は、第5の発明において、ガス中の不純物質が非極性物質と極性物質とを含む場合、前記捕集用固相カラムの充填剤がポリスチレン系充填剤であり、溶出液がヘキサン又はアセトン又はそれらの混合液であることを特徴とするガス中の有機ハロゲン化物のオンライン簡易計測方法にある。
【0019】
第7の発明は、第5の発明において、ガス中の不純物質が非極性物質と極性物質と油成分とを含む場合、前記捕集用固相カラムの充填剤がポリスチレン系充填剤であり、溶出液がヘキサンであると共に、溶離液を硫酸シリカゲル層カラムで更に精製することを特徴とするガス中の有機ハロゲン化物のオンライン簡易計測方法にある。
【0020】
第8の発明は、有機ハロゲン化物を処理する閉鎖処理施設内において、雰囲気中の残留有機ハロゲン化物を簡易に計測する計測方法であって、計測対象部の複数箇所から捕集したガスを導入するガス導入ラインに介装された捕集用固相カラムでガス中の有機ハロゲン化物を捕集し、捕集用固相カラムの充填剤を燃焼分解処理し、塩素を捕集し、塩素濃度から有機ハロゲン化物を計測することを特徴とするガス中の有機ハロゲン化物のオンライン簡易計測方法にある。
【0021】
第9の発明は、有害物質を処理する閉鎖処理施設内において、気体中の残留物質を簡易に計測する計測方法であって、計測対象部の複数箇所から捕集したガスを導入するガス導入ラインに介装された捕集用固相カラムでガス中の有機ハロゲン化物を捕集し、捕集用固相カラムに吸着した有機ハロゲン化物を加熱脱着し、有機ハロゲン化物を計測することを特徴とするガス中の有機ハロゲン化物のオンライン簡易計測方法にある。
【0022】
第10の発明は、有機ハロゲン化物処理設備の環境を監視する有機ハロゲン化物処理設備の監視システムであって、計測対象部の複数箇所から捕集したガスを導入するガス導入ラインから導入されたガス中の残留有機ハロゲン化物を計測するレーザイオン化飛行時間型質量分析装置と、第1乃至4のいずれか一つのガス中の有機ハロゲン化物のオンライン簡易計測装置とを具備することを特徴とする有機ハロゲン化物処理設備の監視システムにある。
【0023】
第11の発明は、第10の発明において、ガス計測ラインのガス流路を切り替える切り替え手段を具備することを特徴とする有機ハロゲン化物処理設備の監視システムにある。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、例えばPCB等の有機ハロゲン化物質を無害化処理する処理設備内の気体中に残留する極微量有機ハロゲン化物をオンラインで多数の計測点において同時にしかも簡易に計測することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、この発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施例における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【実施例1】
【0026】
本発明による実施例に係るガス中の有機ハロゲン化物のオンライン簡易計測装置について、図面を参照して説明する。
図1は、実施例に係るガス中の有機ハロゲン化物のオンライン簡易計測装置を備えた有機ハロゲン化物処理設備の監視システムの概略図である。
本実施例では、各計測点は五箇所S1〜S5としている。
図1に示すように、有機ハロゲン化物処理設備の監視システム10は、有機ハロゲン化物であるPCBの処理設備であるPCB水熱酸化分解装置(計測対象部)11の環境を監視する有機ハロゲン化物処理設備の監視システムであって、計測対象部11の複数箇所S1〜S5から捕集したガスを導入するガス導入ラインL1〜L5から導入されたガス中の残留有機ハロゲン化物を切替弁12を切り替えて順次計測するレーザイオン化飛行時間型質量分析装置15と、ガス導入ラインL1〜L5から分岐され、気体中の残留有機ハロゲン化物をガス導入ラインL11〜L15を介して捕集する捕集用固相カラム22−1〜22−5とを具備するものである。なお、ガス導入ラインL1〜L5には、各々ガス流量計21−1〜21−5が介装されている。図中、P1〜P6はポンプを図示する。なお、ポンプを通過した後のガスは図示しない活性炭で有害物質を吸着除去し、排気するようにしている。
【0027】
ここで、前記レーザイオン化飛行時間型質量分析装置15は、前述した公知の微量計測装置であり、試料をレーザイオン化する試料イオン化部13とイオン化した試料を計測する飛行時間型質量分析装置14とから構成されている。
【0028】
また、レーザイオン化飛行時間型質量分析装置15での計測結果は、計測信号を装置制御系CPU16に送り、計測対象部における各系測定のPCB濃度測定値を求め、その結果を、計測信号として施設、プラント制御系CPU17に送り、ここで適正に監視するようにしている。そして、必要に応じて、制御信号を装置制御系CPU16に送るようにしている。
【0029】
ここで、レーザイオン化飛行時間型質量分析装置15をメンテナンスする場合には、ガス導入ラインL1〜L5から分岐されたガス導入ラインL11〜L15中に介装されたガス切り替え手段である切り替えバルブを開放し、ガスを各々導入して捕集用固相カラム22−1〜22−5に有機ハロゲン化物を捕集するようにしている。
【0030】
図2に、ガス中の有機ハロゲン化物のオンライン簡易計測装置の概略を示す。
図2に示すように、ガス中の有機ハロゲン化物を捕集する捕集用固相カラム22(22−1〜22−5は省略する)と、捕集用固相カラム22に吸着した計測対象物質を溶出する固相抽出装置と、固相抽出装置から溶離した溶離液中の有機ハロゲン化物を分析する分析装置であるGC/ECD計測器(ガスクロマトグラフ/電子捕獲型検出器分析計)40とを具備するものである。
前記捕集用固相カラム22でガス中の有機はハロゲン化物を捕集するには、流速が例えば3L/分程度で、20〜40分、好適には30分前後捕集するようにすればよい。
【0031】
ここで、図2中、便宜的にPCBを白四角印(□)で示し、第1の不純物(例えばアルコール類などの極性不純物)Xを白上向き三角印(△)で示し、第2の不純物(例えばデカンなどの高級飽和炭化水素)Yを白丸印(○)で示している。
固相抽出装置は、捕集用固相カラム22内に充填された固相充填剤30に洗浄液31を用いて洗浄し、不純物Xを除去すると共に、溶出液32を用いてPCBを溶離して溶離液33として容器34に自動で回収し、その後GC/ECD計測器(ガスクロマトグラフ/電子捕獲型検出器分析計)40で分析して、PCB濃度を計測するものである。
ここで、前記固相充填剤30としてはポリスチレン系充填剤とするのが好ましい。
【0032】
ここで、前記洗浄液31としては、純水を用いており、この洗浄は極性不純物が多い場合には有効である。なお、溶出液32で溶出する際には、その溶出操作の前に、窒素パージ(窒素ガスを流入する)して、乾燥操作を行うことが好ましい。
また、溶出液32としては、アセトン又はヘキサン又はそれらの混合液を用いるのが好ましい。
【0033】
また、図3では、さらに第3の不純物Zとして油(例えばフタル酸エステルなどの含酸素化合物)が混入している場合を示す。
このような第3の不純物Zが存在する場合には、硫酸シリカゲル層のカラム35を設けて、油成分である第3の不純物Zを精製処理するようにしている。
また、この第3の不純物Zを精製除去する場合には、溶出液32としては、ヘキサンを用いるのが好ましい。
【0034】
また、容器34内の溶離液33を濃縮するためには、別途窒素ガスを用いて溶離液33を気化させることで減容処理することができる。この際には、容器34の周囲にヒータを配して、加温(60℃以下)処理して、濃縮操作を迅速に行うようにしてもよい。
【0035】
このような装置を用いることで、レーザイオン化飛行時間型質量分析装置のメンテナンスの際、または必要に応じて多数の点で同時に計測する場合に、レーザイオン化検出装置とは別原理で、しかも迅速に有機ハロゲン化物を分析することが可能となる。
【0036】
このように、本実施例の装置では、オンライン監視装置の一部であるサンプリング系統に、切替バルブ、流量調節バルブ、積算式のガス流量計21−1〜21−5、冷却(クライオフォーカス)手段およびアタッチメントからなる固相カートリッジ式の捕集用固相カラム22−1〜22−5を付設し、気中有機ハロゲン化物(PCB)をオンラインで選択的に捕集濃縮することができる。
【0037】
そして、自動固相抽出装置を設置して、有機ハロゲン化物(PCB)が吸着捕集された捕集用固相カラム22を仕掛け、PCBを精製、濃縮し、溶離液33を得る。その後、GC/ECDを設置して、PCBが精製濃縮された溶離抽出液を仕掛け、有機ハロゲン化物(PCB)を分析定量し、気中有機ハロゲン化物(PCB)濃度を算出することができる。
【0038】
本実施例による分析時間は2時間以内(吸着捕集:0.5時間、精製濃縮:1時間、分析:0.5時間)である。
【0039】
レーザイオン化質量分析装置によるオンライン監視装置の分析時間に対しては遠く及ばないが、公定分析法を適用すると12時間程度を要するため格段に短縮される。また、定量にGC/ECDを使用するため分析精度、検出感度ともに公定分析法のレベルを満足でき、データ信頼性が高いものとなる。
【0040】
さらに、公定分析法が各ポイント直近(現場)まで出向いてサンプリング作業を行わねばならないのに対し、本発明ではオンライン監視装置のサンプリング系統を一部流用するため、サンプリング作業がオンライン監視装置設置場所(計器室)で完結するため、作業性効率が良く作業時の外部コンタミネーションの影響も受けにくいものとなる。
【実施例2】
【0041】
図4に、ガス中の有機ハロゲン化物のオンライン簡易計測装置の概略を示す。
図4に示すように、ガス中の有機ハロゲン化物を捕集する捕集用固相カラム22(22−1〜22−5は省略する)と、捕集用固相カラムの充填剤を燃焼分解処理し、塩素を捕集し、塩素濃度から有機ハロゲン化物を計測する全有機塩素計測器41とを具備するものである。
前記全有機塩素計測器41は、捕集用固相カラム22内の充填剤を取り出し、燃焼装置内で燃焼処理し、発生した塩素を吸収液で捕集するものである。その後、吸収液の塩素濃度からPCB換算係数を用いて、ガス中のPCB濃度を換算することができる。
【0042】
本実施例による分析時間は3時間以内(吸着捕集:2.5時間、分析:0.5時間)である。オンライン監視装置によるレーザイオン化質量分析の分析時間に対しては遠く及ばないが、公定分析法を適用すると12時間程度を要するため格段に分析時間が短縮される。また、実施例1のような定量にGC/ECDを使用する場合と比較して分析精度は劣るものの、装置としてはシンプル・安価で、かつ手法も簡便で作業性が良いものとなる。
【実施例3】
【0043】
図5に、ガス中の有機ハロゲン化物のオンライン簡易計測装置の概略を示す。
図5に示すように、ガス中の有機ハロゲン化物を捕集する捕集用固相カラム22(22−1〜22−5は省略する)と、捕集用固相カラム22に吸着した計測対象物質を加熱脱着して有機ハロゲン化物を分析する分析装置である加熱脱着装置付のGC/MS計測器(ガスクロマトグラフ/質量分析計)42とを具備するものである。
【0044】
本実施例では、捕集用固相カラム22を加熱脱着装置付のGC/MS計測器42でPCBを脱着させ、ガス中のPCB濃度を計測するようにしている。
本実施例による分析時間は1.5時間以内(吸着捕集:0.5時間、加熱脱着:0.5時間、分析:0.5時間)である。また、オンライン監視装置の分析時間(10分)に対しては遠く及ばないが、公定分析法を適用すると12時間程度を要するため、分析時間が格段に短縮される。
【0045】
また、定量にGC/MSを使用するために、分析精度、検出感度ともに公定分析法のレベルを満足でき、データ信頼性が高いものとなる。
【実施例4】
【0046】
図6に、ガス中の有機ハロゲン化物のオンライン簡易計測装置の概略を示す。
図6に示すように、ガス中の有機ハロゲン化物を捕集する捕集用固相カラム22(22−1〜22−5は省略する)と、捕集用固相カラム22に吸着した計測対象物質を加熱脱着して有機ハロゲン化物を分析する分析装置である加熱脱着装置付のGC/ECD計測器(ガスクロマトグラフ/電子捕獲型検出器分析計)43とを具備するものである。
【0047】
本実施例では、捕集用固相カラム22に洗浄液31を用いて極性物質Xを洗浄した後、加熱脱着装置付のGC/ECD計測器43でPCBを脱着させ、ガス中のPCB濃度を計測するようにしている。
【0048】
以上述べたように、本発明によれば、レーザイオン化飛行時間型質量分析法を用いたオンライン監視装置のメンテナンスの際において、公定分析法と同等の分析精度を有し、かつ公定分析法よりも格段に短い時間でのオンライン計測ができることとなる。
【0049】
また、必要に応じて、通常の計測地点以外の雰囲気中の有機ハロゲン化物の濃度を検出する場合においても、捕集用固相カラム22を用いて、ガス中の有機ハロゲン化物を固定し、各種分析装置で有機ハロゲン化物を計測することができる。
【0050】
また、計測は同じ時刻で同時に計測できるので、多数の点の雰囲気中の有機ハロゲン化物の同時計測が可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
以上のように、本発明によれば、PCB等の有機ハロゲン化物質を無害化処理する処理設備内の気体中の有機ハロゲン化物の効率的なオンライン監視、ひいてはその施設の効率的な運転、運用を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】実施例1に係る気体中の有機ハロゲン化物のオンライン簡易計測装置を備えた有機ハロゲン化物処理設備の監視システムの概略図である。
【図2】実施例1に係るガス中の有機ハロゲン化物のオンライン簡易計測装置の概略図である。
【図3】実施例1に係る他のガス中の有機ハロゲン化物のオンライン簡易計測装置の概略図である。
【図4】実施例2に係るガス中の有機ハロゲン化物のオンライン簡易計測装置の概略図である。
【図5】実施例3に係るガス中の有機ハロゲン化物のオンライン簡易計測装置の概略図である。
【図6】実施例4に係るガス中の有機ハロゲン化物のオンライン簡易計測装置の概略図である。
【図7】従来の気体中の有機ハロゲン化物処理設備の監視システムの概略図である。
【符号の説明】
【0053】
10 有機ハロゲン化物処理設備の監視システム
11 PCB水熱酸化分解装置
12 切替弁
13 試料イオン化部
14 飛行時間型質量分析装置
22(22−1〜22−5) 捕集用固相カラム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機ハロゲン化物を処理する閉鎖処理施設内において、雰囲気中の残留有機ハロゲン化物を簡易に計測する計測装置であって、
計測対象部の複数箇所から捕集したガスを導入するガス導入ラインと、
ガス導入ラインに介装され、ガス中の有機ハロゲン化物を捕集する捕集用固相カラムと、
捕集用固相カラムに吸着した有機ハロゲン化物を溶出する固相抽出装置と、
固相抽出装置から溶離した溶離液中の有機ハロゲン化物を分析する分析装置とを具備することを特徴とするガス中の有機ハロゲン化物のオンライン簡易計測装置。
【請求項2】
請求項1において、
ガス中の不純物質が非極性物質と極性物質とを含む場合、
前記捕集用固相カラムの充填剤がポリスチレン系充填剤であり、溶出液がヘキサン又はアセトン又はそれらの混合液であることを特徴とするガス中の有機ハロゲン化物のオンライン簡易計測装置。
【請求項3】
請求項1において、
ガス中の不純物質が非極性物質と極性物質と油成分とを含む場合、
前記捕集用固相カラムの充填剤がポリスチレン系充填剤であり、溶出液がヘキサンであると共に、溶離液を硫酸シリカゲル層カラムで更に精製することを特徴とするガス中の有機ハロゲン化物のオンライン簡易計測装置。
【請求項4】
有機ハロゲン化物を処理する閉鎖処理施設内において、雰囲気中の残留有機ハロゲン化物を簡易に計測する計測装置であって、
計測対象部の複数箇所から捕集したガスを導入するガス導入ラインと、
ガス導入ラインに介装され、ガス中の有機ハロゲン化物を捕集する捕集用固相カラムと、
捕集用固相カラムの充填剤を燃焼分解処理し、塩素を捕集し、塩素濃度から有機ハロゲン化物を計測する全有機ハロゲン化物分析装置とを具備することを特徴とするガス中の有機ハロゲン化物のオンライン簡易計測装置。
【請求項5】
有機ハロゲン化物を処理する閉鎖処理施設内において、雰囲気中の残留有機ハロゲン化物を簡易に計測する計測方法であって、
計測対象部の複数箇所から捕集したガスを導入するガス導入ラインに介装された捕集用固相カラムでガス中の有機ハロゲン化物を捕集し、
その後、捕集用固相カラムに吸着した有機ハロゲン化物を溶出し、
溶離した溶離液中の有機ハロゲン化物を分析して、有機ハロゲン化物を計測することを特徴とするガス中の有機ハロゲン化物のオンライン簡易計測方法。
【請求項6】
請求項5において、
ガス中の不純物質が非極性物質と極性物質とを含む場合、
前記捕集用固相カラムの充填剤がポリスチレン系充填剤であり、溶出液がヘキサン又はアセトン又はそれらの混合液であることを特徴とするガス中の有機ハロゲン化物のオンライン簡易計測方法。
【請求項7】
請求項5において、
ガス中の不純物質が非極性物質と極性物質と油成分とを含む場合、
前記捕集用固相カラムの充填剤がポリスチレン系充填剤であり、溶出液がヘキサンであると共に、溶離液を硫酸シリカゲル層カラムで更に精製することを特徴とするガス中の有機ハロゲン化物のオンライン簡易計測方法。
【請求項8】
有機ハロゲン化物を処理する閉鎖処理施設内において、雰囲気中の残留有機ハロゲン化物を簡易に計測する計測方法であって、
計測対象部の複数箇所から捕集したガスを導入するガス導入ラインに介装された捕集用固相カラムでガス中の有機ハロゲン化物を捕集し、
捕集用固相カラムの充填剤を燃焼分解処理し、塩素を捕集し、塩素濃度から有機ハロゲン化物を計測することを特徴とするガス中の有機ハロゲン化物のオンライン簡易計測方法。
【請求項9】
有害物質を処理する閉鎖処理施設内において、気体中の残留物質を簡易に計測する計測方法であって、
計測対象部の複数箇所から捕集したガスを導入するガス導入ラインに介装された捕集用固相カラムでガス中の有機ハロゲン化物を捕集し、
捕集用固相カラムに吸着した有機ハロゲン化物を加熱脱着し、有機ハロゲン化物を計測することを特徴とするガス中の有機ハロゲン化物のオンライン簡易計測方法。
【請求項10】
有機ハロゲン化物処理設備の環境を監視する有機ハロゲン化物処理設備の監視システムであって、
計測対象部の複数箇所から捕集したガスを導入するガス導入ラインから導入されたガス中の残留有機ハロゲン化物を計測するレーザイオン化飛行時間型質量分析装置と、
請求項1乃至4のいずれか一つのガス中の有機ハロゲン化物のオンライン簡易計測装置とを具備することを特徴とする有機ハロゲン化物処理設備の監視システム。
【請求項11】
請求項10において、
ガス計測ラインのガス流路を切り替える切り替え手段を具備することを特徴とする有機ハロゲン化物処理設備の監視システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−198453(P2009−198453A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−43224(P2008−43224)
【出願日】平成20年2月25日(2008.2.25)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】