説明

ガス供給ソケット

【課題】 管継手の延在方向によらずに、医療用機器を適正な姿勢で取り付けることができるガス供給ソケットを提供する。
【解決手段】 ガス供給ソケット2は、流入口31を備えるソケット台座部6と、排出口11を備え、ソケット台座部6に着脱可能に固定されるソケット本体部5とを有する。ソケット本体部5は、差込プラグ3を差込可能なソケット部13と、ソケット台座部6の一端部に突設されるピン15a,15bとを有する。ソケット台座部6は、基台32と、ピン受け部材33とを含み、基台32は、ソケット本体部5が連結される筒部50に、周方向に所定の間隔をあけて複数の係止溝81が形成された凹凸部分82を有する。ピン受け部材33は、筒部50に回転自在に装着され、ソケット本体部5の各ピン15a,15bを挿通可能な透孔91a,91bが形成される受け部92と、係止溝81に係合可能な係止片93とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、治療室および一般病室などの壁部や、手術室の天井に懸垂式に設置されるシーリングアームのコンソールボックスなどに設けられ、治療等に用いられるたとえば酸素、笑気および空気などの医療用ガスを供給し、または汚物等を吸引する医療用アウトレット装置におけるガス供給ソケットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、治療室および一般病室などの壁部や、手術室の天井に懸垂式に設置されるシーリングアームのコンソールボックスなどには、酸素ガス、笑気および空気などの医療用ガス毎および吸引力が導かれるアウトレットとも称される複数のガス供給ソケットが設置され、各ガス供給ソケットに対応する差込プラグが必要に応じて差込み装着される(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
図8は、従来技術に係るガス供給ソケット100を壁部Wに設置した状態を示す断面図である。ガス供給ソケット100に対して、差込プラグ200を、所定の位置まで差込むことによって、ガス供給ソケット100内に弾発的に付勢された状態で収容された弁体111を、この弾発力に抗して後退させてガスの排出口112を開放させ、ガス供給ソケット100内に導入されている医療用ガスを、排出口112から、医療用機器に直接あるいはチューブなどの可撓性の管体を介して接続される差込プラグ200内のガス管路210に流入させ、治療に用いることができるように構成されている。使用後は、差込プラグ200をガス供給ソケット100から抜取ることによって、弁体111が弾発付勢力によって排出口112を封止する位置に復帰し、抜出された差込プラグ200は所定の保管位置に保管される。
【0004】
図9は、従来技術に係るガス供給ソケット100の組立前の構成を概略的に示す断面図である。図9に示すように、ガス供給ソケット100は、医療用ガスの供給源150から所定のガスが導かれ、または吸引源(図示せず)から吸引力が導かれる流入口121を備えるソケット台座部120と、排出口112および弁体111を備えるとともに、差込プラグ200が装着されるソケット部113を有し、ソケット台座部120に着脱可能に連結されて固定されるソケット本体部110とからなり、これらを連結することによって構成されている。
【0005】
従来から、ガス供給ソケット100に装着される差込プラグ200の周辺には、差込プラグ200の軸線J1まわりの周方向に、当該差込プラグ200に導かれるべき医療用ガスの種類または吸引力に応じて所定の間隔をあけて、複数本(たとえば2本)のピン220が、差込プラグ200に平行に延びるように設けられている。そして、差込プラグ200が装着されるソケット本体部110のソケット部113においても、差込プラグ200に設けられている各ピン220の配置に対応する位置に、各ピン220をそれぞれ挿通可能なピン孔114が形成されている。
【0006】
これにより、ガス供給ソケット100に差込プラグ200を装着した状態では、各ピン220が対応するピン孔114に挿通されることとなる。前記のように、医療用ガスの種類または吸引力に応じて、ピン220およびピン孔114の間隔は予め定められているので、このような連結構造によって、たとえば酸素ガスが導かれているガス供給ソケット100に対して、笑気、空気または吸引力が導かれるべき医療用機器に接続された差込プラグ200が誤って装着されることが防止されている。
【0007】
また、ソケット本体部110におけるソケット台座部120に連結される側の端部115においても、前記同様、排出口112の軸線J2まわりの周方向に、当該ソケット本体部110が如何なる用途(酸素ガス供給用、笑気供給用、空気供給用、吸引用など)で用いられるかに応じて所定の間隔をあけて、複数本(たとえば2本)のピン116が、前記軸線J2に平行に延びるように設けられている。そして、ソケット台座部120においても、ソケット本体部110に設けられる各ピン116の配置に対応する位置に、各ピン116をそれぞれ挿通可能なピン孔122が形成されている。
【0008】
これにより、ソケット台座部120にソケット本体部110を連結した状態では、各ピン220が対応するピン孔114に挿通されることとなる。前記のように、医療用ガスの種類または吸引力に応じて、ピン116およびピン孔122の間隔は予め定められているので、このような連結構造によって、特定のガスの供給源150または吸引源に接続された状態で壁部Wやコンソールボックスに取り付けられているソケット台座部120に対して、用途の異なるソケット本体部110が誤って連結されることが防止されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平4−341273号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従来から、ソケット台座部120には、流入口121を備え、ガスの供給源150あるいは吸引源に接続される管継手123が、ソケット本体部110が連結される側(図9における右側)から見たときに、外方に向かって延びるように設けられている。そして、治療室および一般病室などの壁部Wやシーリングアームのコンソールボックスなどにおいて、ソケット台座部120は、図9に示すように、管継手123が鉛直上方に向かって延びるような姿勢で取り付けられている。
【0011】
ソケット本体部110は、ソケット台座部120に対し、複数本のピン116を各ピン孔122に挿通することにより周方向に位置決めされた状態で連結されるため、ソケット台座部120へ連結したときの姿勢を基本姿勢として、この基本姿勢のソケット本体部110に対して、差込プラグ200に直接接続される酸素湿潤器などの医療用機器が適正な姿勢で装着されるように、差込プラグ200側に設けられる各ピン220が挿通されるピン孔114の形成位置が決定されている。
【0012】
ところが、最近では、コンソールボックスの小形化や、管継手123近傍の配管のレイアウトを柔軟に設計することを可能にするために、ソケット台座部120を、管継手123が鉛直上方以外の方向に向かって延びるような姿勢で取り付けたいという要望がある。
【0013】
しかしながら、従来技術に係るガス供給ソケット100は、管継手123が鉛直上方に向かって延びるような姿勢で取り付けられることを前提として、ピン116やピン孔122,114が形成されているので、ソケット台座部120を、管継手123が鉛直上方以外の方向に向かって延びるような姿勢で取り付けた場合には、それに伴って、酸素湿潤器などの医療用機器を適正な姿勢で取り付けることができなくなってしまうという問題がある。
【0014】
本発明の目的は、管継手の延在方向によらずに、医療用機器を適正な姿勢で取り付けることができるガス供給ソケットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、ガス供給源からガスが導かれ、または吸引力が導かれ、差込プラグが着脱自在に装着されるガス供給ソケットであって、
ガス供給源からガスが導かれ、または吸引力が導かれる流入口を備えるソケット台座部と、
前記流入口に導かれたガスが排出され、または吸引力が導かれる排出口を備え、前記ソケット台座部に着脱可能に連結されて固定されるソケット本体部であって、
前記排出口にその軸線方向に同軸に連接されて前記差込プラグを気密に差込み可能とされる筒状のソケット部と、
前記ソケット台座部に連結される側の端部に突設され、前記ソケット台座部への連結方向に沿って延びる複数のピンとを有するソケット本体部とを含み、
前記ソケット台座部は、
前記流入口が形成される基台であって、前記ソケット本体部が連結される円筒状の筒部を有し、該筒部に、周方向に所定の間隔をあけて複数の係止溝が形成された凹凸部分を有する基台と、
前記筒部に該筒部の軸線まわりに回転自在に装着される円環状のピン受け部材であって、前記ソケット本体部に設けられる各ピンをそれぞれ挿通可能な透孔が形成される受け部と、前記係止溝に係合可能な係止片とを有するピン受け部材とを含むことを特徴とするガス供給ソケットである。
【0016】
また本発明は、前記ソケット本体部に、
前記排出口の軸線に沿って弾発的に付勢された状態で設置され、この状態で前記排出口を閉塞し、前記弾発的に付勢する力に抗する力が作用したときには、前記弾発的に付勢される方向とは逆方向に移動して前記排出口を開放するように作動する弁体が組み込まれていることを特徴とする。
【0017】
また本発明は、前記筒部は、前記凹凸部分に隣接して設けられ、前記ピン受け部材が回転自在に装着される円筒状のピン受け部材保持部分と、前記ピン受け部材保持部分に隣接して設けられ、該ピン受け部材保持部分の外径よりも大きな外径を有する円筒状の抜止め部分とを有し、
前記ピン受け部材には、前記ピン受け部材保持部分への装着状態において、前記抜止め部分に係合可能な係止部が、内方に突出して設けられていることを特徴とする。
【0018】
また本発明は、前記抜止め部分は、前記ピン受け部材保持部分から離反するに従って、外径が小さくなるように形成されていることを特徴とする。
【0019】
また本発明は、前記係止片は、前記受け部に一体的に連なり、該受け部に対して屈曲して設けられていることを特徴とする。
【0020】
また本発明は、前記抜止め部分には、前記ピン受け部材を前記抜止め部分を挿通して前記ピン受け部材保持部分に装着する際に、前記係止片が通過可能な凹溝が形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、ピン受け部材は、基台への装着状態において、受け部に形成されている透孔の位置を、必要に応じて周方向に変化させることができる。したがって、ソケット台座部が、管継手が鉛直上方以外の方向に延在するように設置された場合であっても、それに応じて、ピン受け部材を周方向に回転させて透孔の位置を変化させることにより、医療用機器が適正な姿勢で取り付けられるように、ソケット本体部をソケット台座部に連結することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施形態に係るガス供給ソケット2を含む医療用ガス配管接続装置1の縦断面図である。
【図2】ガス供給ソケット2を構成するソケット本体部5の側面図である。
【図3】図2におけるソケット本体部5を矢符III方向から見た正面図である。
【図4】図2におけるソケット本体部5を矢符IV方向から見た背面図である。
【図5】ガス供給ソケット2を構成するソケット台座部6の斜視図である。
【図6】図1におけるソケット台座部6を紙面に垂直な方向から見た側面図である。
【図7】ソケット台座部6を構成するピン受け部材33の構成を示す図であり、図7(a)はピン受け部材33の平面図であり、図7(b)は図7(a)の切断面線B−Bから見た断面図である。
【図8】従来技術に係るガス供給ソケット100を壁部Wに設置した状態を示す断面図である。
【図9】従来技術に係るガス供給ソケット100の組立前の構成を概略的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1は、本発明の一実施形態に係るガス供給ソケット2を含む医療用ガス配管接続装置1の縦断面図である。図示の医療用ガス配管接続装置1は、治療室および一般病室などの壁部に設置された筐体あるいは手術室の天井に懸垂式に設置されるシーリングアームのコンソールボックスなどに収容されて設けられ、本発明の特徴であるピン受け部材33を備えるガス供給ソケット2と、ガス供給ソケット2に着脱自在に装着される差込プラグ3とによって構成される。
【0024】
ガス供給ソケット2には、供給源4から医療用ガスが導かれ、あるいは、吸引源(図示せず)から吸引力が導かれる。本実施形態に係るガス供給ソケット2は、医療用ガスの一つである酸素ガスの供給源4が接続されるように構成されているものとして説明する。
【0025】
図2は、ガス供給ソケット2を構成するソケット本体部5の側面図であり、図3は、図2におけるソケット本体部5を矢符III方向から見た正面図であり、図4は、図2におけるソケット本体部5を矢符IV方向から見た背面図である。図5は、ガス供給ソケット2を構成するソケット台座部6の斜視図であり、図6は、図1におけるソケット台座部6を紙面に垂直な方向から見た側面図である。
【0026】
ガス供給ソケット2は、供給源4から酸素ガスが導かれる流入口31を備えるソケット台座部6と、流入口31に導かれた酸素ガスが排出される排出口11を備え、ソケット台座部6に着脱可能に連結されて固定されるソケット本体部5とからなり、これらを連結することによって構成される。
【0027】
ソケット本体部5は、図1に示すように、差込プラグ3が差込まれる方向A1(以下、「差込方向A1」と称する)とは反対の方向A2(以下、「引抜方向A2」と称する)に弾発的に付勢された状態で設置され、この状態で排出口11を閉塞し、弾発的に付勢する力に抗する力が作用したときには、差込方向A1に移動して排出口11を開放するように作動する弁体12と、排出口11に連通し、排出口11の軸線J11と同軸のプラグ差込孔が形成され、差込プラグ3を気密に差込み可能に構成される筒状のソケット部13と、ソケット台座部6に連結される側の端部14に突設され、排出口11の軸線J11に沿って延びる複数本(本実施形態では2本)のピン15a,15bと、排出口11の軸線J11と同軸であり、ソケット台座部6に螺着される円筒状の連結部16とを含んで構成される。ここで、差込方向A1および引抜方向A2は、排出口11の軸線J11に平行な方向である。
【0028】
ソケット台座部6は、流入口31が形成される基台32と、後述するピン受け部材33とからなる。基台32は、台座本体41と、台座本体41内に収容される球状の弁体42と、弁体42によって開閉される弁孔43を有するホルダ44と、弁孔43を外囲するようにホルダ44に装着される環状のシール部材45と、弁体42をシール部材45に向かってばね付勢するばね46とを有する。
【0029】
弁体42は、金属または合成樹脂からなる。シール部材45は、可撓性および弾発性を有する材料、たとえばゴム、合成ゴムまたは合成樹脂からなる断面円形の部材であり、Oリングによって実現される。このようなシール部材45は、弁体42が着座する弁座を構成する。ばね46は、圧縮コイルばねによって実現され、弁体42をシール部材45に着座した状態に保つ。これらの弁体42、ホルダ44、シール部材45およびばね46によって、流路開閉手段が構成される。
【0030】
台座本体41は、弁体42およびばね46が収容され、ホルダ44がシール部材45とともに装着される弁室47を規定する基部48と、弁室47に連通する嵌合空間49を規定する円筒状の筒部50とを有する。基部48にはまた、管継手34が溶接またはパッキングされて気密に接続される接続孔51と、接続孔51と弁室47とを連通する通路52とが形成される。
【0031】
管継手34は、円筒状に形成され、その軸線J34の延在方向の一端部が、台座本体41の基部48に接続される。詳細には、図6に示すように、軸線J34が、台座本体41における筒部50の軸線J50に対して垂直に交差するように接続される。管継手34の軸線J34の延在方向の他端部には、供給源4から酸素ガスが導かれる流入口31が設けられる。この管継手34には、チューブなどの管体を介して供給源4が接続され、これにより、弁室47に供給源4から酸素ガスが導入される。弁室47に導入された酸素ガスは、弁体42がシール部材45から離反する方向に移動し、弁孔43が開放することによって、嵌合空間49に導入される。
【0032】
この嵌合空間49を規定する筒部50の内周部には、内ねじが刻設された内ねじ部60が形成される。一方、ソケット本体部5における円筒状の連結部16の外周部には、前記内ねじに螺合可能な外ねじが刻設された外ねじ部61が形成される。
【0033】
したがって、この連結部16の外ねじ部61を、筒部50の内ねじ部60に螺合させることによって、連結部16が基台32の台座本体41に着脱可能に取付けられる。連結部16には、外ねじ部61に隣接して環状のシール部材64が外装され、台座本体41と連結部16とは、それらの間に介在される該シール部材64によって、気密に接続される。シール部材64は、たとえばOリングからなる。
【0034】
この連結部16には、その内周面によって規定される取付孔20に、たとえば金属粉末を焼結した多孔質材料からなるフィルタ17が取り付けられる。このフィルタ17は、直円筒状の筒部17aと、筒部17aの軸線方向一端部を塞ぐ底部17bと、底部17bから筒部17aの軸線方向外方に突出して形成される円柱状の突起17cと、筒部17aの軸線方向他端部から半径方向外方に突出するフランジ部17dとを有し、これらの筒部17a、底部17b、突起17cおよびフランジ部17dが、一体的に形成されてなる。
【0035】
フィルタ17には、そのフランジ部17dにおける、筒部17aが連設される側とは反対側の端面に、排出口11を形成する弁座リング19が螺着され、ゴム製のパッキン21とともに、連結部16の取付孔20に収容される。より詳細には、フィルタ17は、突起17cを連結部16から外方へ突出させた状態で収容される。
【0036】
連結部16の内周部には、内ねじが刻設された内ねじ部60が形成されており、この内ねじに螺合可能な外ねじが刻設された外ねじ部61が外周部に形成されたナット22を、その連結部16に螺着することによって、取付孔20に収容されているフィルタ17のフランジ部17dおよび弁座リング19が、ナット22とソケット部13とによって挟持される。このようにして、フィルタ17は、連結部16に着脱可能に取付けられ、取付状態ではナット22によって抜止めされる。
【0037】
このようにして取り付けられたフィルタ17の突起17cは、連結部16が台座本体41の筒部50に対して螺進されることによって、ばね46の付勢力に抗して弁体42を押圧し、弁体42をシール部材45から離反する方向へ移動させる。これにより、弁孔43が開放され、弁室47まで導かれていた酸素ガスが嵌合空間49に導入される。すなわち、ソケット本体部5をソケット台座部6に連結した状態では、嵌合空間49まで酸素ガスが導かれることとなる。
【0038】
フィルタ17の底部17bには、圧縮ばね23の基端部が当接して支持され、圧縮ばね23の先端部には、弁体12が装着される。弁体12は、フィルタ17に保持された圧縮ばね23によって、軸線J11に沿って弁座リング19に形成される排出口11に向かって弾発的にばね付勢されている。弁体12の先端部側には、Oリング24が装着され、弁体12が弾発的に付勢された状態で、このOリング24が排出口11の内周縁部に形成された弁座部25に弾発的に当接し、これによって排出口11が閉塞状態とされる。
【0039】
この排出口11と、ソケット部13の筒部65との間には、挿入筒部66よりも内径が小さく、差込プラグ3の円筒状の先端部3aが軸線J11と平行に挿入自在でかつパッキン21を差込方向A1の下流側から装着されて保持する絞り部67が形成され、この絞り部67の内周部に差込まれた差込プラグ3との間の気密性を保つため、絞り部67と弁座リング19との間にパッキン21が装着されている。ソケット部13は、排出口11とは反対側の開口部が差込口68とされ、この差込口68を介して着脱自在に差込プラグ3が差込み可能とされている。
【0040】
差込口68を介して装着された差込プラグ3は、その先端部3aが弁体12の環状部分69をパッキン21とともに押圧する位置まで差込まれると、先端部3aによって弁体12が圧縮ばね23の弾発力に抗して押圧され、これによって、弁体12が後退し、排出口11が開放される。このようにして、弁体12が差込プラグ3によって開弁されることによって、嵌合空間49内の酸素ガスが、排出口11および流入口3bを経て差込プラグ3内の通路3bに供給される。
【0041】
カバーリング70は、図3に示すように、表面に酸素ガス用であることを明示するための識別符71が印刷されている。カバーリング70の中央部には、円形孔70aが形成され、この円形孔70aからソケット部13の端部が露出している。
【0042】
差込プラグ3をガス供給ソケット2に差込む際は、差込方向A1に沿って、先端部3aからソケット部13の差込口68に差込む。差込プラグ3が突設されているグリップ部7には、差込プラグ3の軸線まわりの周方向に、差込プラグ3に導かれるべき医療用ガスの種類または吸引力に応じて所定の間隔をあけて、複数本(本実施形態では2本)のピン72a,72bが、差込プラグ3に平行に延びるように設けられている。そして、差込プラグ3が装着されるソケット本体部5のソケット部13においても、差込プラグ3に設けられている各ピン72a,72bの配置に対応する位置に、各ピン72a,72bをそれぞれ挿通可能なピン孔73a,73bが形成されている。
【0043】
これにより、酸素ガスが導かれているガス供給ソケット2に対して、笑気、空気または吸引力が導かれるべき医療用機器に接続された差込プラグ3が誤って装着されることが防止されている。同様に、笑気、空気および吸引力がそれぞれ導かれている各ガス供給ソケットに関しても、用途によるピンおよびピン孔の配置の違いによって、異なる用途の差込プラグが誤って装着されることが防止されている。
本実施形態では、ピンおよびピン孔の配置によって、互いに異なる用途のガス供給ソケット2と差込みプラグ3とが誤って接続されることを防止しているが、他の実施形態では、ガス供給ソケットの差込部の形状(四角形、六角形および円周上の溝など)および差込みプラグの形状を、用途ごとに異ならせることによって実現することもできる。
【0044】
また、ソケット本体部5におけるソケット台座部6に連結される側の端部14においても、図4に示すように、排出口11の軸線J11まわりの周方向に、当該ソケット本体部5が如何なる用途(酸素ガス供給用、笑気供給用、空気供給用、吸引用など)で用いられるかに応じて所定の間隔をあけて、2本のピン15a,15bが、軸線J11に平行に延びるように設けられている。本実施形態では、酸素ガス供給用として、α=β=20°となる位置に、2本のピン15a,15bがそれぞれ設けられている。
【0045】
図7は、ソケット台座部6を構成するピン受け部材33の構成を示す図である。図7(a)は、ピン受け部材33の平面図であり、図6における右側から見た状態に対応している。また、図7(b)は、図7(a)の切断面線B−Bから見た断面図である。以下、図1および図5〜図7を参照して、ソケット台座部6において、ソケット本体部5に設けられる2本のピン15a,15bが連結される部分の構成について説明する。
【0046】
ソケット台座部6の基台32における筒部50は、周方向に所定の間隔をあけて複数の係止溝81が外周部に形成される凹凸部分82と、凹凸部分82に隣接して設けられ、外径D1の直円筒状の外周面を有し、後述するピン受け部材33が回転自在に装着されるピン受け部材保持部分83と、ピン受け部材保持部分83に隣接して設けられ、ピン受け部材保持部分83の外径D1よりも大きな外径D2を有する抜止め部分84とを有する。抜止め部分84、ピン受け部材保持部分83および凹凸部分82は、この順番で、筒部50の先端側から基部48に向かって設けられている。
【0047】
凹凸部分82は、詳細には、その係止溝81における底部81aが、ピン受け部材保持部分83の外周面と面一に形成されている。また、隣接する係止溝81間に設けられる凸部81bは、底部81aからの高さが、後述する受け部92の第2部分92bが係合可能な高さに設定されている。凹凸部分82は、本実施形態では、周方向に30°間隔で係止溝81が形成されて構成されている。
【0048】
抜止め部分84は、ピン受け部材保持部分83に連なる部分が外径D2となるように形成されている。これにより、ピン受け部材保持部分83には、段差部84aが形成されている。また、抜止め部分84は、ピン受け部材保持部分83から離反するに従って、外径が小さくなるように形成されている。
【0049】
ピン受け部材33は、大略的に円環状に形成され、ソケット本体部5に設けられる2本のピン15a,15bをそれぞれ挿通可能な透孔91a,91bが形成される板状の受け部92と、凹凸部分82の係止溝81に係合可能な係止片93とを有する。
【0050】
透孔91a,91bは、ソケット本体部5に設けられている各15a,15bの配置に対応した位置に形成され、本実施形態では、図7(a)に示すように、α=β=20°となる位置に形成されている。
【0051】
受け部92は、ピン受け部材保持部分83が挿通可能な貫通孔を有する円環状の板状部であり、抜止め部分84の外径D2よりも大きな外径d1を有する仮想直円柱の外周面に対応する内周面を有する第1部分92aと、前記仮想直円柱の外周面よりも内方に突出した係止部94を有する第2部分92bと、係止片93が設けられる第3部分92cとを有する。本実施形態では、周方向に間をあけて3つの第2部分92bが形成されるとともに、周方向に180°離間して第3部分92cが形成されている。
【0052】
係止片93は、受け部92の第3部分92cに一体的に連なり、受け部92に対して略垂直となるように屈曲して設けられている。また、係止片93は、前記仮想直円柱の外周面よりも内方に突出するように、第3部分92cに設けられている。図7に示すように、第1部分92aと第2部分92bとの間、および第1部分92aと第3部分92cとの間には、半径方向内方から外方に向かって延びる切欠き95がそれぞれ形成されている。
【0053】
ソケット台座部6は、このようなピン受け部材33を基台32のピン受け部材保持部分83に装着し、ピン受け部材33の係止片93を、凹凸部分82の係止溝81に係合することによって構成される。
【0054】
これにより、ピン受け部材33は、受け部92に形成されている透孔91a,91bの位置を、必要に応じて周方向に変化させることができる。したがって、ソケット台座部6が、管継手34が鉛直上方以外の方向に延在するように設置された場合であっても、それに応じて、ピン受け部材33を周方向に回転させて透孔91a,91bの位置を変化させることにより、医療用機器が適正な姿勢で取り付けられるように、ソケット本体部5をソケット台座部6に連結することができる。
【0055】
また本実施形態によれば、ピン受け部材保持部分83に装着されたピン受け部材33は、その係止部94が、抜止め部分84の段差部84aに係止されるように構成されているので、ピン受け部材33が基台32から容易に離脱してしまうことを防止することができる。したがって、ピン受け部材保持部分83においてピン受け部材33を回転させる際に、ピン受け部材33が基台32から離脱して落下してしまうことを防止することができる。
【0056】
また本実施形態によれば、抜止め部分84が、ピン受け部材保持部分83から離反するに従って、外径が小さくなるように形成されている。前記のように、係止部94は段差部84aに係合可能に形成されているため、ピン受け部材33を抜止め部分84を挿通してピン受け部材保持部分83に装着する際には、係止部94が設けられる第2部分92bが弾性変形を伴って装着されることになる。したがって、前記構成を採用することにより、抜止め部分84を挿通させるときに、第2部分92bの変形量を徐々に増大させながら装着されることになるので、容易に装着することができる。
【0057】
また本実施形態によれば、第1部分92aと第2部分92bとの間には切欠き95が形成されているので、前記のように抜止め部分84を挿通させるときに、僅かな力で第2部分92bを弾性変形させることができる。
【0058】
また本実施形態によれば、基台32に、ピン15a,15bを挿通可能なピン孔を設ける必要がなくなるので、使用されるべき用途(酸素ガス供給用、笑気供給用、空気供給用、吸引用など)によらず、同一の基台32を用いることができる。換言すれば、使用されるべき用途に応じてピン孔の配置を異ならせた複数種類の基台を製造する必要をなくすことができ、在庫管理上の利点を有する。
【0059】
本実施形態では、前記のように、係止片93が、前記仮想直円柱の外周面よりも内方に突出するように、第3部分92cに設けられている。そこで、図5に示すように、抜止め部分84を挿通させるときに、係止片93を通過させることができる凹溝84bが、抜止め部分84に予め形成されている。したがって、係止片93を凹溝84bの位置に合わせた状態で、抜止め部分84を挿通させることで、係止片93を弾性変形させるための余分な力が不要となり、容易に装着することができる。
【符号の説明】
【0060】
1 医療用ガス配管接続装置
2 ガス供給ソケット
3 差込プラグ
4 供給源
5 ソケット本体部
6 ソケット台座部
11 排出口
12 弁体
13 ソケット部
15a,15b ピン
31 流入口
32 基台
33 ピン受け部材
50 筒部
81 係止溝
82 凹凸部分
83 ピン受け部材保持部分
84 抜止め部分
84b 凹溝
91a,91b 透孔
92 受け部
93 係止片
94 係止部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス供給源からガスが導かれ、または吸引力が導かれ、差込プラグが着脱自在に装着されるガス供給ソケットであって、
ガス供給源からガスが導かれ、または吸引力が導かれる流入口を備えるソケット台座部と、
前記流入口に導かれたガスが排出され、または吸引力が導かれる排出口を備え、前記ソケット台座部に着脱可能に連結されて固定されるソケット本体部であって、
前記排出口にその軸線方向に同軸に連接されて前記差込プラグを気密に差込み可能とされる筒状のソケット部と、
前記ソケット台座部に連結される側の端部に突設され、前記ソケット台座部への連結方向に沿って延びる複数のピンとを有するソケット本体部とを含み、
前記ソケット台座部は、
前記流入口が形成される基台であって、前記ソケット本体部が連結される円筒状の筒部を有し、該筒部に、周方向に所定の間隔をあけて複数の係止溝が形成された凹凸部分を有する基台と、
前記筒部に該筒部の軸線まわりに回転自在に装着される円環状のピン受け部材であって、前記ソケット本体部に設けられる各ピンをそれぞれ挿通可能な透孔が形成される受け部と、前記係止溝に係合可能な係止片とを有するピン受け部材とを含むことを特徴とするガス供給ソケット。
【請求項2】
前記ソケット本体部に、
前記排出口の軸線に沿って弾発的に付勢された状態で設置され、この状態で前記排出口を閉塞し、前記弾発的に付勢する力に抗する力が作用したときには、前記弾発的に付勢される方向とは逆方向に移動して前記排出口を開放するように作動する弁体が組み込まれていることを特徴とする請求項1記載のガス供給ソケット。
【請求項3】
前記筒部は、前記凹凸部分に隣接して設けられ、前記ピン受け部材が回転自在に装着される円筒状のピン受け部材保持部分と、前記ピン受け部材保持部分に隣接して設けられ、該ピン受け部材保持部分の外径よりも大きな外径を有する円筒状の抜止め部分とを有し、
前記ピン受け部材には、前記ピン受け部材保持部分への装着状態において、前記抜止め部分に係合可能な係止部が、内方に突出して設けられていることを特徴とする請求項1または2記載のガス供給ソケット。
【請求項4】
前記抜止め部分は、前記ピン受け部材保持部分から離反するに従って、外径が小さくなるように形成されていることを特徴とする請求項3記載のガス供給ソケット。
【請求項5】
前記係止片は、前記受け部に一体的に連なり、該受け部に対して屈曲して設けられていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載のガス供給ソケット。
【請求項6】
前記抜止め部分には、前記ピン受け部材を前記抜止め部分を挿通して前記ピン受け部材保持部分に装着する際に、前記係止片が通過可能な凹溝が形成されていることを特徴とする請求項5記載のガス供給ソケット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−96499(P2013−96499A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−239652(P2011−239652)
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(390010342)エア・ウォーター防災株式会社 (56)
【Fターム(参考)】