説明

ガス供給装置用流量制御器の流量測定装置及び流量測定方法

【課題】 ガス供給装置用流量制御器の流量測定をより迅速且つ高精度で行えるようにすると共に、測定に用いる流量測定装置の構造の簡素化及び小型化を図る。
【解決手段】 ガス供給管路Lの出口端部に設けた開閉弁V0の上流部へ分岐状に且つ解離自在にその入口側端部を連結すると共にその出口側端部をガス流出側へ連結する分岐管路Lbと、分岐管路Lbの出口側に設けた開閉弁と、開閉弁の上流側のガス圧力及びガス温度を検出する圧力検出器Pd及び温度検出器Tdと、圧力検出器Pd及び温度検出器Tdからの検出信号が入力され、分岐管路Lbを流通するガス流量を演算ずる演算制御装置CPとからなり、ガス供給装置GFのガス供給管路Lの出口端部に設けた開閉弁Vの上流部へ分岐状に且つ解離自在に連結する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体製造装置や薬品製造装置等で使用するガス供給装置の流量制御器の流量測定装置及び流量測定方法の改良に関するものであり、装置の小型化、構造の簡単化、測定精度の向上及び流量測定の迅速化等を可能としたガス供給装置用流量制御器の流量測定装置及びこれを用いた流量測定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体製造装置等のガス供給装置は、一般に多種類のガスをプロセスチャンバ等のガス使用対象に切換へ供給できるように構成されており、必要なプロセス用ガスが、供給ガス種毎に設けた流量制御器により流量制御され、ガス使用対象へ供給されて行く。
また、上記各流量制御器の流量測定は、一般にビルドアップ法(若しくは圧力上昇率(ROR)法)により適宜の時間間隔を置いて行われ、流量制御器の設定流量とビルドアップ法等により計測した現実の制御流量とを対比することにより流量測定が行われている。
【0003】
図5及び図6は従前のガス供給装置用流量制御器の流量測定方法の一例を示すものである。即ち、図5の測定方法に於いては、先ず、内容積が既知のビルドアップタンクBTと入口開閉弁Vと出口開閉弁Vと圧力検出器Pd及びガス温度検出器Tdとから成る流量測定ユニットU0をガス供給路Lへ分岐状に連結する。次に、例えばガス供給装置GFの流量制御器MFCを測定する場合には、先ず開閉弁V02、V0n、Vを閉、開閉弁V01、V及びVを開にして、タンクBT内へガスを流通させ、開閉弁V及びVを開放した状態での時刻t、若しくは開閉弁V及びVを開放したあと開閉弁Vを閉鎖した状態での時刻tにおける圧力検出値P、温度検出値Tを計測する。次に、開閉弁V及びVの開放状態から開閉弁Vを閉鎖してからΔt秒経過後、若しくは前記開閉弁V及びVを開放したあと開閉弁Vを閉鎖した状態での時刻tからΔt秒経過後における圧力検出値P、温度検出値Tを計測する。
【0004】
そして、上記各計測値から圧力上昇率ΔP/Δtを求め、流量QをQ=(ΔP/Δt)×(V/RT)として算出して流量制御器MFCの流量制御値を確認する。尚、前記流量計算式は、ガスを理想気体と仮定してタンクBT内へのビルドアップ流量を演算するものであり、VはビルドアップタンクBT及びその上流側管路の合計内容積、Rはガス常数、TはタンクBT内のガス温度である。
【0005】
一方、図6の測定方法に於いては、ビルドアップタンクを用いない流量測定ユニットUをガス供給ラインLへ分岐状に連結する。そして、例えばガス供給装置GFの流量制御器MFCを測定する場合には、先ず、開閉弁V、V00、V02、V0nを閉、開閉弁V01、V、Vを開にして流量測定ユニットU1へ流量制御器MFCから設定流量のガスを流し、次に開閉弁Vを閉にする。開閉弁Vの閉鎖後、圧力検出器Pdの圧力検出値がPになった時に第1計測を行い、圧力P、温度Tを測定する。その後、圧力検出器Pの圧力検出値がPになったとき(又は設定時間t秒が経過したとき)に第2計測を行い、圧力P、温度Tを測定する。
【0006】
また、予め、流量測定ユニットU1の上流側の開閉弁V00、開閉弁V01、開閉弁V02、開閉弁V0nから開閉弁Vまでのガス供給ラインL、Ls部分の管路内容積Veと、流量測定ユニットU1の開閉弁Vと開閉弁V間の流路内容積Vtとの和Vを、上記図5場合と同じ測定方法により求めた圧力上昇率ΔP/Δtと、その時の流量制御器MFCの流量値Qを用いて、流量式Q=(ΔP/Δt)×(V/RT)から演算し、全内容積Vを求めておく。
【0007】
そして、上記各測定値から、流量制御器MFCからの温度0℃、1atmに於けるガスの絶対流量Qoを、ガスの流入質量dGと経過(流入)時間dtとの関係を用いて求める。即ち、流入質量dGは、dG=ro・Qo・dt(但し、dtは経過(流入)時間、roは比重量である)で表すことができる。また、第1計測時及び第2計測時の圧力P、温度Tから理想気体についてはPV=nRTの関係が成立するため、モル数nに代えて質量Gを用いれば、PV=GRTの関係が成立する。
【0008】
従って、今、第1計測時に計測したガス圧力P、ガス温度T、ガス質量Gと、第2計測時のガス圧力P、ガス温度T、ガス質量Gとすれば、質量Gの差分(流入質量dG)はdG=G−G=P/T・V/R−P/T・V/R=(P/T−P/T)・V/R・・・・(1)式となり、上記dG=ro・Qo・dtの式から、ガスの絶対流量Qoは、Qo=(P/T−P/T)・V/R・1/roとして算出することができ、当該算出値Qoを基準として流量制御器MFCの流量制御能の適否を判定する。
【0009】
上記図6方法は、(1)ガス種によっては理想気体方程式の適用が困難になるため、圧縮因子なる係数を上記(1)式に持ち込みして算出した基準流量の誤差を少なくすること、及び(2)第1計測のあと第2計測を開始するタイミングを、制御流量が1000〜2000SCCMの範囲では圧力上昇値を基準にして決定し、また、制御流量が2〜1000SCCMの範囲では経過時間を基準にして決定するようにしたことを発明の主たる内容とするものである。
【0010】
尚、上記図6方法に於いても、上記各計測値から圧力上昇率ΔP/Δtを求め、流量QをQ=(ΔP/Δt)×(V/RT)として算出すると共に、当該算出値を基準にして流量制御器MFCの流量制御値の適否を判断するように出来る事は勿論である。
【0011】
上記図5に示したビルドアップタンクBTを用いる方法は、(1)ビルドアップタンクBTを用いるために流量測定装置が大型化し、ガス供給装置の小型化が図れないこと、(2)タンクBT内のガス温度の計測値が温度検出器Tdの取付位置によって大きく変動すること、(3)タンク内のガス圧力上昇中のガス温度Tが大きく変動し、一定温度Tにならないこと、(4)外気の温度変化が大きい場合には、圧力検出中のガス温度が変化して温度検出値Tの変動が大きくなる等の点に問題があり、ガス種が理想気体に近いものであっても高い流量測定精度が得られないと云う問題がある。
【0012】
一方、図6の方法にあっては、流量測定ユニットU1の流入側にバルブVを設け、これを介して分岐接続管路Lsの端部へ連結するようにしている。しかし、このバルブVは流量測定に際して全く利用されないものであり、逆にこのバルブVが存在することにより、流体抵抗が増加したり、バルブVの駆動用機構、例えば電磁弁、駆動流体用配管等が必要になり、部品費や組立費が増加すること、バルブVの駆動特性に起因する動作遅延やタイミング調整が必要になること等の多くの問題が生じることになる。
【0013】
また、図6の方法にあっては、流体供給管路Lと分岐接続管路Lsの流路内容積Veと、流量測定ユニットU1の流路内容積Vtの和の容積Vを計測するに際して、バルブVを2度に亘って開閉し且つその間に流量測定ユニットU1内を真空引きするようにしているため、流量測定に手数が掛かり過ぎると云う問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2006−337346号公報
【特許文献2】国際公開WO2007/102319号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本願発明は、従前の流量測定ユニットU1を用いた流量制御器の流量測定に於ける上述の如き問題、即ち、流量測定ユニットU1の流体入口側と流体出口側の夫々にバルブV,Vを設けているが、この入口側バルブVを設けたことにより生ずる流体抵抗が増加したり、入口側バルブVに電磁弁、駆動流体用配管等からなる駆動用機構を必要とし、その組立費が増加すること、駆動特性に起因する動作遅延やタイミング調整が必要になること等の問題を解決すると共に、流量測定に必要な流体供給管路Lと分岐接続管路Lsと流量測定ユニットU1の内部容積Vtとの合計内容積Vの算定に手数が掛かると云う問題を解決し、小型で,簡単にガス供給装置に付設することができ、しかも簡単な操作でもって高精な流量測定を出来るようにしたガス供給装置用流量制御器の流量測定装置と、これを用いた流量測定方法の提供を発明の主目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本願請求項1の発明は、ガス供給管路Lの出口端部に設けた開閉弁V0の上流部へ分岐状に且つ解離自在にその入口側端部を連結すると共にその出口側端部をガス流出側へ連結する分岐管路Lbと、分岐管路Lbの出口側に設けた開閉弁V’と、開閉弁V’を流れるガス圧力及びガス温度を検出する圧力検出器Pd及び温度検出器Tdと、圧力検出器Pd及び温度検出器Tdからの検出信号が入力され、分岐管路Lbを流通するガス流量を演算ずる演算制御装置CPとからなり、ガス供給装置GFのガス供給管路Lの出口端部に設けた開閉弁Vの上流部へ分岐状に且つ解離自在に連結することを発明の基本構成とするものである。
【0017】
本願請求項2の発明は、複数種のガスを各流量制御器を通して切換え可能にガス使用箇所へ供給するガス供給装置に於いて、前記ガス供給装置のガス供給路Lに、分岐管路Lbとその出口側に設けた開閉弁V’と分岐管路Lbのガス圧力検出器Pd及びガス温度検出器Tdと演算制御装置CPとから成る流量測定装置Uを分岐状に連結すると共に、当該流量測定装置Uの開閉弁V’をガス流出側に接続し、先ず、前記流量制御装置の各流量制御器の出口側開閉弁V01〜V0n及びガス供給管路Lの出口端部の開閉弁Vを閉鎖すると共に流量測定装置Uの開閉弁V’を開放し、次に、被測定流量制御器の出口側開閉弁のみを開放して設定流量のガスを前記流量測定装置Uへ流入させ、ガス圧力及びガス温度が安定した後開閉弁V’を閉鎖し、ガス圧力が設定圧P1に達した時刻tに於いて第1回のガス温度T及びガス圧力P1を計測し、その後前記ガス圧力が設定圧P2に達した時刻t2に於いて第2回のガス温度T2及びガス圧力P2を計測し、前記各計測値からガス流量QをQ=(22.4V/R・Δt)×(P/T−P1/T1)(但し、Vは分岐管路Lb及びガス供給管路Lの合計内容積、Rはガス定数、Δtはt2−t1である)として演算t2に於いて第2回のガス温度T2及びガス圧力P2を計測し、前記各計測値からガス流量QをQ=(22.4V/R・Δt)×(P/T−P1/T1)(但し、Vは分岐管路Lb及びガス供給管路Lの合計内容積、Rはガス定数、Δtはt2−t1である)として演算することを発明の基本構成とするものである。
【0018】
本願請求項3の発明は、複数種のガスを各流量制御器を通して切換え可能にガス使用箇所へ供給するガス供給装置に於いて、前記ガス供給装置のガス供給路Lに、分岐管路Lbとその出口側に設けた開閉弁V’と分岐管路Lbのガス圧力検出器Pd及びガス温度検出器Tdと演算制御装置CPとから成る流量測定装置Uを分岐状に連結すると共に、当該流量測定装置Uの開閉弁V’をガス流出側に接続し、先ず、前記流量制御装置の各流量制御器の出口側開閉弁Vo〜Vo及びガス供給管路Lの出口端部の開閉弁Vを閉鎖すると共に流量測定装置Uの開閉弁V’を開放し、次に、被測定流量制御器の出口側開閉弁のみを開放して設定流量のガスを前記流量測定装置Uへ流入させ、ガス圧力及びガス温度が安定した後開閉弁Vを閉鎖し、ガス圧力の上昇率ΔP/Δtを計測すると共に、流量Qを、Q=ΔP/Δt×V/R・T(但し、Vは分岐管路Lb及びガス供給管路Lの合計内容積、Rはガス定数、Δtは測定時間、Tは気体温度である)として演算することを発明の基本構成とするものである。
【0019】
請求項4の発明は、請求項2または請求項3の発明に於いて、流量測定装置Uを、入口側端部をガス供給管路Lへまた出口側端部をガス流出側へ夫々連結する分岐管路Lbと、分岐管路Lbの出口側に設けた開閉弁V’と、開閉弁V’に流れるガス圧力及びガス温度を検出する圧力検出器Pd及び温度検出器Tdと、圧力検出器Pd及び温度検出器Tdからの検出信号が入力され、分岐管路Lbを流通するガス流量を演算ずる演算制御装置CPと、開閉弁V’へ駆動用流体を供給する電磁弁EVと、電磁弁EVへ駆動用流体を供給する駆動用流体源DGSと、演算制御装置CPへの入出力ボードIOと、電源装置ESとから構成するようにしたものである。
【発明の効果】
【0020】
本発明に於いては、上記容積Vは、窒素ガス等を用いてガス流量Qの時の圧力上昇率を測定することにより、V=Δt×Q×R×T/ΔP(但し、Qは流量、Pは流体圧、Tは温度、Rは気体定数ΔP/Δtは圧力上昇率である)により容易に求めることが出来る。即ち、開閉弁Vを設けなくても、流量測定に必要な分岐管路Lb及びガス供給管路Lの合計内容積Vを簡単に算定することが出来るため、流量制御器の流量測定操作がより簡単となる。
【0021】
また、本発明に於いては、流量測定装置Uの分岐管路Lbに設ける開閉弁V’をその出口側端のみに設ける構成としているため、流量測定装置Uの小型化及び構造の簡素化が図れるだけでなく、ガス流路抵抗の引下げが可能となる。また、ガス供給装置GFの運転中は常時2次側のガス供給管路Lのガス圧を圧力検出器Pdによって監視することができ、流量計測が可能な圧力状態か否かを事前に即座に確認することができる。
【0022】
また、流量測定操作に際しても、測定スタートの信号に対して圧力異常の状態にあれば即座にアラームの発信ができるだけでなく、常時2次側のガス供給管路Lの圧力状態を監視することができるので、圧力検出器Pdをガス供給管路Lのガス圧モニターとして活用することができる。
更に、流量制御器が圧力式流量制御装置の場合には、圧力検出器Pdの検出信号を流量制御器の流量制御範囲の下限値を示すアラームとしても活用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係るガス供給装置用流量制御器の流量測定装置の構成図である。
【図2】流量測定装置を備えたガス供給装置の説明図である。
【図3】管路内容積の計測方法の説明図である
【図4】図3の計測方法におけるガス圧力やガス温度の変化状況を示す線図である。
【図5】従前のビルドアップ法による流量測定方法の説明図である。
【図6】従前の他のビルドアップ法による流量測定方法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1は本発明に係るガス供給装置用流量制御器の流量測定装置の構成を示す説明図であり、また、図2は流量制御器の測定方法の実施形態を示す説明図であって、ガス供給装置GFに設けた圧力式流量制御器FCSの流量測定を行う場合を示している。
【0025】
図1及び図2において、GFはガス供給装置、FCS1〜FCSは流量制御器、Go〜Gnは供給ガス種、L1〜L、Lはガス供給管路、Lsは分岐接続管路、Lbは分流管路、V00〜V0nは開閉弁、Vは開閉弁、V’は開閉弁、CHはプロセスチャンバ、VPは真空ポンプ、Tdは温度検出器、Pdは圧力検出器、Bは分岐点、Fは接続用フランジ、EVは電磁弁、DGSは駆動用流体源、Tuは駆動用流体供給管、IOは入出力ポート、ESはDC電源、1は圧力調整器、2は圧力計、3・4は開閉弁、Uは流量測定装置、CPは演算制御装置であり、ガス供給装置GFからガス供給管路L、開閉弁Vを通してプロセスチャンバCHへ所定のガス種が切替え供給されている。
【0026】
流量測定装置Uは、ガス供給管路Lの出口端部に設けた開閉弁Vの上流部へ分岐状に且つ解離自在に連結されて居り、ガス供給管路Lへ連結する入口側端部及びガス流出側へ連結する出口側端部とを有する直管状の適宜内径の分岐管路Lbと、分岐管路Lbの出口側に設けた流体圧駆動式のメタルダイヤフラム型開閉弁V’と、開閉弁V’の上流側のガス圧力及びガス温度を検出する圧力検出器Pd及び温度検出器Tdと、圧力検出器Pd及び温度検出器Tdからの検出信号が入力され、分岐管路Lbを流通するガス流量を演算ずる演算制御装置CPと、開閉弁V’へ駆動用流体を供給する電磁弁EVと、電磁弁EVへ駆動用流体を供給する駈装用流体源DGSと、演算制御装置CPへの入出力ボードIOと、電源装置ESとから構成されている。
【0027】
また、流量測定装置Uの圧力検出器Pd及び温度検出器Tdの各検出出力、開閉弁V’の制御信号等は演算制御装置CPへ入出力されており、後述するようにガス流量値の演算及び表示等が行われる。
【0028】
先ず、本願発明者は、図3の如き流量測定ユニットU’を作成し、これを用いて、ビルドアップによりガス圧力を上昇せしめ、ユニットU’(内容積1.0996L)の内部のガス温度やガス圧力の変化を調査した。
即ち、図1の実施形態に於いて、流量制御器FCSに代えて標準流量調整器を取り付けると共に、流量測定装置Uに代えて図3の流量測定ユニットU’を接続し、先ず開閉弁V02、V0n、Vを閉に、開閉弁V’を開にして、Nガスを500sccmの流量で一定時間流通させ、Nガスの流量、圧力、温度の安定を確認したあと、開閉弁V’を閉にして10秒間のビルドアップを行い、その間のユニットU’内のガス温度や圧力等の変化状態を観察した。
尚、流量制御器にはフジキン製の流量レンジ1SLMのものを使用しており、ユニットU’の内容積Vは1.0996L(既知)に設定されている。また、ガス流量(N)は500sccm、ビルドアップ時間は10secに設定している。更に外気温度(室内温度)は21.7℃であった。
【0029】
図4は、上記上記ビルドアップにおける流量測定ユニットU’内のガス温度やガス圧力等の変化状態を示すものであり、曲線Aは流量制御器の流量出力、Aはガス圧力検出値、Aはガス温度検出値、Aは外気温度(室内温度)、Aは出口側開閉弁V’の制御信号を示すものである。
尚、圧力検出器PdにはMKS製の(バラトロン)キャパシタンスマノメーターTYPE627D(F.S.1000ToRR)を、また温度検出器Tdには2.5mm径K熱電対(素線タイプ)を、測定機器にはキーエンス製のデータロガーNR500を使用している。
【0030】
即ち、図4に於いて、t1点に於いて出口側開閉弁V’を閉にしてビルドアップを始めると、t2点に於いてタンク内のガス圧力は30.6Torrから94.1Torrにまで上昇する。また、タンク内のガス温度は徐々に上昇する。
今、流量測定ユニットU’の出口側開閉弁V‘の閉鎖(ビルドアップ開始)時(時刻t1・第1回計測)と、ビルドアップ完了後の時刻tに於いて、第2回計測を行ってガス流入質量を演算することにより、ビルドアップ中に流入したガスのモル数
【0031】
【数1】

を標準状態(0℃、1aTm)におけるガス体積Vに換算すると、
【0032】
【数2】

となり、流量測定ユニットU’内へのガス流量Qは
【0033】
【数3】

として演算できる。但しΔtはビルドアップ時間であり、Δt=t2−t1である。
【0034】
また、後述するように、上記各計測値から圧力上昇率ΔP/Δtを求め、この圧力上昇率を用いて、全内容積Vを、V=Δt×Q×R×T/ΔP(但し、Qは流量、Tは温度、Rは気体定数ΔP/Δtは圧力上昇率である)として演算する。
[第1実施形態]
【0035】
図1及び図2を参照して、ガス供給装置GFの流量制御器FCSの流量測定に際しては、先ず流量測定装置Uをガス供給管路Lへ分岐状に接続する。次に、流量制御器FCS1を測定する場合は、開閉弁V00、V02、V0n、Vを閉鎖し、開閉弁V01、V‘を開にして、流量制御器FCS1から設定流量Qsのガス流を流量測定装置Uへ供給し、真空ポンプVPにより排気する。
【0036】
次に、流量測定装置Uの分岐管路Lb内のガス温度To及びガス圧力Poが落ち着くと、時刻t1に於いて出口側開閉弁V’を閉鎖してガスのビルドアップを開始すると共に、分岐管路Lb内のガス温度T1及びガス圧力P1を検出し、これを演算制御装置CPへ入力する。
分岐管路Lb内へのガスのビルドアップが進行し、ガス圧力が設定値P2(又は設定時刻t2)に達すると、分岐管路Lb内の圧力P及び温度Tを検出し、その検出値を演算制御装置CPへ入力する。
尚、時刻tにおける第2回目の圧力及び温度の検出が終れば、その後に出口側開閉弁V’を開放して、分岐管路Lb内のガスを排出する。
【0037】
一方、演算制御装置CPでは、前記検出値P1、T、P、T及びビルドアップ時間Δt(Δt=t2−t1)を用いて前記数式3により流量Qが演算され、前記流量調整器FCSの設定流量Qsと演算流量Qとが対比され、所定の基準に基づいて流量調整器FCS1 の流量制御性能の判定や測定が行われる。
【0038】
上記の如き測定操作を各流量制御器FCS1〜FCSについて行うことにより、ガス供給装置GFの流量調整器の測定が行われる。
【0039】
尚、本実施形態では、上記数式3を用いて流量Qの演算を行うようにしているが、上記第1回計測及び第2回計測の計測値から圧力上昇率を算定し、流量QをQ=(ΔP/Δt)×(V/RT)として算出すると共に、当該算出値を基準にして流量制御器FCSの流量制御値の適否を判断するように出来る事は勿論である。
【0040】
本発明に於いては、上記流量Qの演算式に於ける内容積V、即ちプロセスチャンバCHへのガス供給よう開閉弁V0より上流側のガス供給管路Lの内容積と、分岐接続管Ls及び分岐管路Lbの内容積との合計値が既知であるとしているが、ガス供給装置GFの改修等によって上記内容積が変化したような場合には、変化後の内容積Vを測定する必要がある。
この場合には、例えば、図2のガス種Gを窒素ガス等の理想気体に近いガスとし、先ず開閉弁V01〜V0n、Vを閉、開閉弁V00、Vを開にして、分岐管路Lbへガスを流通させ、その圧力及び温度が設定値に落ち着くと、開閉弁V’を閉鎖して、時刻tにおける圧力検出値P、温度検出値Tを計測する。次に、適宜の時間経過後の時刻tにおいて圧力検出値P、温度検出値Tを計測する。
【0041】
そして、上記各計測値から圧力上昇率ΔP/Δtを求め、この圧力上昇率を用いて、全内容積Vを、V=Δt×Q×R×T/ΔP(但し、Qは流量、Pは流体圧、Tは温度、Rは気体定数ΔP/Δtは圧力上昇率である)として演算する。
【0042】
尚、上記実施形態に於いては、流量制御器として圧力式流量制御装置を用いているが、これが熱式流量制御器であっても良い事は勿論である。また、接続用フランジについては、管継手等による接続や、ブロック状の継手部材等を用いた接続であっても良い事は勿論である。開閉弁V’等は、AOV(空気作動式バルブ)を用いているが、電磁弁を用いることで、駆動用流体源DGS、駆動用流体供給管Tu、そして駆動用流体を制御する電磁弁EVを省略することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、半導体製造装置用のガス供給装置(ガスボックス)のみならず、あらゆる用途に用いるガス供給装置の流量制御器やガス供給系の流量制御器の測定試験に利用できるものである。
【符号の説明】
【0044】
GF ガス供給装置
FCS1〜FCS 流量制御器
〜G 供給ガス種
L,L〜L ガス供給管路
Ls 分岐接続管
Lb 分流管路
F 接続用フランジ
B 分岐点、
00〜V0n 開閉弁
開閉弁
U 流量測定装置
V’ 開閉弁
CH プロセスチャンバ
VP 真空装置(真空ポンプ)
Td 温度検出器
Pd 圧力検出器
1 圧力調整器
2 圧力計
3,4 開閉弁
CP 演算制御装置
EV 電磁弁
DGS 駆動用流体源
Tu 駆動用流体供給管
IO 入出力ポート
ES DC電源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス供給管路Lの出口端部に設けた開閉弁Vの上流部へ分岐状に且つ解離自在にその入口側端部を連結すると共にその出口側端部をガス流出側へ連結する分岐管路Lbと、分岐管路Lbの出口側に設けた開閉弁V’と、開閉弁V’に流れるガス圧力及びガス温度を検出する圧力検出器Pd及び温度検出器Tdと、圧力検出器Pd及び温度検出器Tdからの検出信号が入力され、分岐管路Lbを流通するガス流量を演算する演算制御装置CPとからなり、ガス供給装置GFのガス供給管路Lの出口端部に設けた開閉弁Vの上流部へ分岐状に且つ解離自在に連結することを特徴とするガス供給装置用流量制御器の流量測定装置。
【請求項2】
複数種のガスを各流量制御器を通して切換え可能にガス使用箇所へ供給するガス供給装置に於いて、前記ガス供給装置のガス供給路Lに、分岐管路Lbとその出口側に設けた開閉弁Vと分岐管路Lbのガス圧力検出器Pd及びガス温度検出器Tdと演算制御装置CPとから成る流量測定装置Uを分岐状に連結すると共に、当該流量測定装置Uの開閉弁V’をガス流出側に接続し、先ず、前記流量制御装置の各流量制御器の出口側開閉弁V01〜V0n及びガス供給管路Lの出口端部の開閉弁Vを閉鎖すると共に流量測定装置Uの開閉弁V’を開放し、次に、被測定流量制御器の出口側開閉弁のみを開放して設定流量のガスを前記流量測定装置Uへ流入させ、ガス圧力及びガス温度が安定した後開閉弁V’を閉鎖し、ガス圧力が設定圧P1に達した時刻tに於いて第1回のガス温度T及びガス圧力P1を計測し、その後前記ガス圧力が設定圧P2に達した時刻t2に於いて第2回のガス温度T2及びガス圧力P2を計測し、前記各計測値からガス流量QをQ=(22.4V/R・Δt)×(P/T−P1/T1)(但し、Vは分岐管路Lb及びガス供給管路Lの合計内容積、Rはガス定数、Δtはt2−t1である)として演算することを特徴とするガス供給装置用流量制御器の流量測定方法。
【請求項3】
複数種のガスを各流量制御器を通して切換え可能にガス使用箇所へ供給するガス供給装置に於いて、前記ガス供給装置のガス供給路Lに、分岐管路Lbとその出口側に設けた開閉弁Vと分岐管路Lbのガス圧力検出器Pd及びガス温度検出器Tdと演算制御装置CPとから成る流量測定装置Uを分岐状に連結すると共に、当該流量測定装置Uの開閉弁V’をガス流出側に接続し、先ず、前記流量制御装置の各流量制御器の出口側開閉弁Vo〜Vo及びガス供給管路Lの出口端部の開閉弁Vを閉鎖すると共に流量測定装置Uの開閉弁V’を開放し、次に、被測定流量制御器の出口側開閉弁のみを開放して設定流量のガスを前記流量測定装置Uへ流入させ、ガス圧力及びガス温度が安定した後開閉弁V’を閉鎖し、ガス圧力の上昇率ΔP/Δtを計測すると共に、流量Qを、Q=ΔP/Δt×V/R・T(但し、Vは分岐管路Lb及びガス供給管路Lの合計内容積、Rはガス定数、Δtは測定時間、Tは気体温度である)として演算することを特徴とするガス供給装置用流量制御器の流量測定方法。
【請求項4】
流量測定装置Uを、入口側端部をガス供給管路Lへまた出口側端部をガス流出側へ夫々連結する分岐管路Lbと、分岐管路Lbの出口側に設けた開閉弁V’と、開閉弁V’に流れるガス圧力及びガス温度を検出する圧力検出器Pd及び温度検出器Tdと、圧力検出器Pd及び温度検出器Tdからの検出信号が入力され、分岐管路Lbを流通するガス流量を演算ずる演算制御装置CPと、開閉弁Vへ駆動用流体を供給する電磁弁EVと、電磁弁EVへ駆動用流体を供給する駆動用流体源DGSと、演算制御装置CPへの入出力ボードIOと、電源装置ESとから構成するようにした請求項2又は請求項3に記載のガス供給装置用流量制御器の流量測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−141254(P2012−141254A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−904(P2011−904)
【出願日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【出願人】(390033857)株式会社フジキン (148)
【Fターム(参考)】