説明

ガス処理装置の溶剤冷却分離装置

【課題】活性炭14より脱着させた溶剤が含まれる溶剤濃縮ガスを冷却して溶剤を凝縮分離するのに、ペルチェ素子46を用いて、冷却水を必要としないガス処理装置の溶剤冷却分離装置を提供する。
【解決手段】活性炭槽10から流出した溶剤濃縮ガスの流路と、活性炭槽10に流入する不活性ガスの流路を隣接して配設し、2つの流路を仕切る隔壁42に溶剤濃縮ガスの流路に発熱または冷却の一方の面を晒すとともに不活性ガスの流路に発熱または冷却の他方の面を晒すようにしてペルチェ素子46を配設する。脱着工程において、ペルチェ素子46の冷却により溶剤濃縮ガスを冷却して溶剤を凝縮分離すると同時に、ペルチェ素子46の発熱により不活性ガスを加熱する。冷却水を必要としない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶剤を用いる工程から排出される被処理ガス中に含まれる溶剤を吸着工程により浄化するとともに脱着工程により溶剤を脱着するガス処理装置において、脱着された溶剤を凝縮分離して回収するための溶剤冷却分離装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
環境汚染に対する関心が高まり、溶剤を用いる工程で排出される溶剤を含む被処理ガスを浄化して排出するとともに溶剤を回収することが要請されている。そこで、この溶剤を含む被処理ガスを浄化するガス処理装置として、例えば、特開平7−39717号公報に記載された技術は次のようなものである。活性炭を内蔵した活性炭塔に溶剤を含む被処理ガスを流入させ、内蔵された活性炭により被処理ガス中に含まれる溶剤を吸着して、浄化されたガスが活性炭塔から浄化ガスとして排出される。溶剤を吸着した活性炭はヒータにより加熱され活性炭より溶剤を脱着させ、溶剤が含まれる溶剤濃縮ガスが冷却水が循環する冷却凝縮器により冷却されて溶剤が凝縮分離される。
【特許文献1】特開平7−39717号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
活性炭より脱着させた溶剤が含まれる溶剤濃縮ガスを冷却水が循環する冷却凝縮器により冷却して溶剤を凝縮分離する特開平7−39717号公報に示された技術にあっては、大量の冷却水を必要とするという不具合がある。
【0004】
本発明は、かかる従来技術の事情に鑑みてなされたもので、活性炭より脱着させた溶剤が含まれる溶剤濃縮ガスを冷却して溶剤を凝縮分離するのに、冷却水を必要としないようにしたガス処理装置の溶剤冷却分離装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かかる目的を達成するために、本発明のガス処理装置の溶剤冷却分離装置は、吸着工程で、溶剤を含む被処理ガスを活性炭槽に流入させ、前記活性炭槽に内蔵した活性炭により前記溶剤を吸着して前記活性炭槽から浄化された浄化ガスを流出させ、脱着工程で、前記溶剤を吸着した前記活性炭を加熱して吸着された前記溶剤を脱着し、前記活性炭槽に不活性ガスを流入して脱着された前記溶剤が濃縮されて含まれる溶剤濃縮ガスを流出させ、前記溶剤濃縮ガスを溶剤冷却分離装置に流入させて冷却して前記不活性ガスから前記溶剤を凝縮分離させるガス処理装置の溶剤冷却分離装置において、前記溶剤冷却分離装置に、前記活性炭槽から流出した前記溶剤濃縮ガスの流路と、前記活性炭槽に流入する前記不活性ガスの流路を隣接して配設し、前記2つの流路を仕切る隔壁に前記溶剤濃縮ガスの流路に発熱または冷却の一方の面を晒すとともに前記不活性ガスの流路に発熱または冷却の他方の面を晒すようにしてペルチェ素子を配設し、前記脱着工程の少なくとも一時期において、前記ペルチェ素子の発熱と冷却により前記溶剤濃縮ガスを冷却して前記溶剤を凝縮分離するすると同時に前記不活性ガスを加熱するように構成されている。
【0006】
また、吸着工程で、溶剤を含む被処理ガスを活性炭槽に流入させ、前記活性炭槽に内蔵した活性炭により前記溶剤を吸着して前記活性炭槽から浄化された浄化ガスを流出させ、脱着工程で、前記溶剤を吸着した前記活性炭を加熱して吸着された前記溶剤を脱着し、前記活性炭槽に不活性ガスを流入して脱着された前記溶剤が濃縮されて含まれる溶剤濃縮ガスを流出させ、前記溶剤濃縮ガスを溶剤冷却分離装置に流入させて冷却して前記不活性ガスから前記溶剤を凝縮分離させるガス処理装置の溶剤冷却分離装置において、前記溶剤冷却分離装置にペルチェ素子を配設し、このペルチェ素子の発熱または冷却の一方の面に接続した第1の熱伝導板を前記活性炭槽から流出した前記溶剤濃縮ガスの流路に晒すとともに発熱または冷却の他方の面に接続した第2の熱伝導板を前記活性炭槽に流入する前記不活性ガスの流路に晒すようにし、前記脱着工程の少なくとも一時期において、前記ペルチェ素子の発熱と冷却により前記溶剤濃縮ガスを冷却して前記溶剤を凝縮分離するすると同時に前記不活性ガスを加熱するように構成しても良い。
【0007】
そして、前記脱着工程の終了の際に、前記ペルチェ素子に印可する電圧の極性を切り換えて、前記不活性ガスが冷却されて前記活性炭槽に流入するように構成することもできる。
【0008】
さらに、前記不活性ガスの流路の内側に前記溶剤濃縮ガスの流路を配設して構成しても良い。
【0009】
さらにまた、前記溶剤濃縮ガスの流路の内側に前記不活性ガスの流路を配設して構成しても良い。
【0010】
また、前記内側に配設された流路の隔壁を略蛇腹形状に構成しても良い。
【0011】
またさらに、前記内側に配設された前記溶剤濃縮ガスの流路の隔壁を上下方向を軸とする略蛇腹形状とし、この略蛇腹形状の内側端縁に下方に向けた縁を設け、この内側端縁の内径が下側ほど大きくなるようにし、前記溶剤濃縮ガスの流路の上下方向の軸の下方に凝縮分離された前記溶剤が溜まる溜まり容器を配設して構成することも可能である。
【発明の効果】
【0012】
請求項1記載のガス処理装置の溶剤冷却分離装置は、溶剤冷却分離装置に、活性炭槽から流出した溶剤濃縮ガスの流路と、活性炭槽に流入する不活性ガスの流路を隣接して配設し、2つの流路を仕切る隔壁に溶剤濃縮ガスの流路に発熱または冷却の一方の面を晒すとともに不活性ガスの流路に発熱または冷却の他方の面を晒すようにしてペルチェ素子を配設したので、脱着工程において、ペルチェ素子で溶剤濃縮ガスを冷却して溶剤を凝縮分離でき、従来技術のごとく冷却水を必要としない。しかも、ペルチェ素子に発生する発熱により同時に活性炭槽に流入する不活性ガスを加熱するので、流入する不活性ガスのより活性炭槽の温度が低下して脱着効率が悪くなるようなことがない。
【0013】
請求項2記載のガス処理装置の溶剤冷却分離装置にあっては、溶剤冷却分離装置にペルチェ素子を配設し、ペルチェ素子の発熱または冷却の一方の面に接続した第1の熱伝導板を活性炭槽から流出した溶剤濃縮ガスの流路に晒すとともに発熱または冷却の他方の面に接続した第2の熱伝導板を活性炭槽に流入する不活性ガスの流路に晒すようにしたので、請求項1と同様に、脱着工程において、溶剤濃縮ガスを冷却して溶剤を凝縮分離ために、従来技術のごとく冷却水を必要とせず、しかも活性炭槽に流入する不活性ガスを加熱して流入させることができる。さらに、第1と第2の熱伝導板を用いることで、溶剤濃縮ガスの流路と活性炭槽に流入する不活性ガスの流路を隣接して配設しなければならないというような制約がない。
【0014】
請求項3記載のガス処理装置の溶剤冷却分離装置にあっては、脱着工程の終了の際に、ペルチェ素子に印可する電圧の極性を切り換えて、不活性ガスが冷却されて活性炭槽に流入するようにしたので、冷却された不活性ガスにより活性炭が冷却され、溶剤を吸着する作用を速やかに回復させることができる。
【0015】
請求項4および5記載のガス処理装置の溶剤冷却分離装置にあっては、不活性ガスの流路の内側に前記溶剤濃縮ガスの流路を配設し、または溶剤濃縮ガスの流路の内側に不活性ガスの流路を配設して、2つの流路が2重構造となるので、2つの流路の隔壁にペルチェ素子を設ければ良く、構造が簡単である。
【0016】
請求項6記載のガス処理装置の溶剤冷却分離装置にあっては、2重構造となる2つの流路の内側に配設された流路の隔壁を略蛇腹形状に構成することで、ペルチェ素子を広い面積に配設することができ、溶剤濃縮ガスおよび不活性ガスが接する面積を広くできて、溶剤濃縮ガスおよび不活性ガスに対する熱の伝達が効率的になし得る。
【0017】
請求項7記載のガス処理装置の溶剤冷却分離装置にあっては、2重構造の内側に配設された溶剤濃縮ガスの流路の隔壁を上下方向を軸とする略蛇腹形状とし、この略蛇腹形状の内側端縁に下方に向けた縁を設けたので、冷却により凝縮分離された溶剤は、略蛇腹形状の内側端縁に下方に向けた縁から下に滴れ落ちる。しかも、この内側端縁の内径が下側ほど大きくなるようにしたので、縁から滴れ落ちた溶剤は、下方に配設した溜まり容器に直接に落ちて溜まり、凝縮分離された溶剤が下方にあるペルチェ素子の表面を流れることがない。もって、ペルチェ素子により溶剤が含まれる溶剤濃縮ガスを効率よく冷却することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明のガス処理装置の溶剤冷却分離装置の第1実施例につき、図1ないし図3を参照して説明する。図1は、本発明のガス処理装置の溶剤冷却分離装置の第1実施例を用いたガス処理装置のブロック図である。図2は、図1に示す第1実施例で開閉弁と電圧印加とペルチェ素子およびブロワーの動作を示すタイムテーブルである。図3は、図1の溶剤冷却分離装置の動作を説明するための図である。
【0019】
図1の第1実施例において、活性炭槽10は、円筒状の細長い中空形状でその両端部が上方に位置するようにして略U字状に形成されている。そして、細長い中空形状の一端部に流入室16が形成され、他端部に排出室18が形成される。そして、流入室16には、第1の開閉弁20を介して溶剤を含む被処理ガスとしての原ガスを流入させる流路が接続されている。また、流入室16には、第2の開閉弁24を介して溶剤冷却分離装置40からの窒素ガス等の不活性ガスを流入させる流路が接続されている。さらに、排出室18には、第3の開閉弁26を介して浄化されたガスが流出する流路が接続されている。また、排出室18には、第4の開閉弁28を介して溶剤が濃縮されて含まれた溶剤濃縮ガスが、溶剤冷却分離装置40に流出する流路が接続されている。
【0020】
円筒状の細長い中空形状の活性炭槽10の外周壁は、ステンレス等の耐熱性と導電性を有する金属で形成され、第1の電極30としても作用する。しかも、この外周壁としての第1の電極30が接地されている。また、円筒状の活性炭槽10の断面軸心位置に軸方向に長い線状または円筒状または円柱状のステンレス等の耐熱性と導電性を有する金属で形成された第2の電極32が配設される。この第2の電極32は、第1の電極30とは絶縁状態に構成されることは勿論である。なお、第2の電極32は、細長い中空形状の活性炭槽10の内部で適宜に支持固定されている。そして、活性炭槽10の内部に活性炭14が挿入されて内蔵され、第1の電極30と第2の電極32の間に活性炭14が介在する状態となされる。さらに、電源としての交流電圧36が、スイッチ38を直列に介して、第1の電極30と第2の電極32の間に印加される。なお、第1の電極30には、交流電圧36の送電回路の接地側を接続することは勿論である。そして、第1の電極30と第2の電極32の間に電圧を印加して活性炭14に電流を流してジュール熱により発熱させて、活性炭14を加熱する手段が構成されている。
【0021】
溶剤冷却分離装置40にあっては、上下方向を軸とする2重構造であり、内側の隔壁42が断熱材等の熱伝導性の悪い素材で形成され、しかも略蛇腹形状とされる。隔壁42の内側が溶剤濃縮ガスの流路となり、隔壁42と外側の壁44の間が不活性ガスの流路とされる。そして、内側の隔壁42と置き換わるようにして、発熱または冷却する一方の面を内側の溶剤濃縮ガスの流路に晒すとともに発熱または冷却する他方の面を外側の不活性ガスの流路に晒すように多数のペルチェ素子42が設けられている。隔壁42の略蛇腹形状の内径が、上側より下側ほど大きくなるように形成され、しかも略蛇腹形状の内側縁部に下方に向けた縁48が設けられている。
【0022】
そして、溶剤冷却分離装置40の隔壁42と外側の壁44の間の不活性ガスの流路の下側にブロワー22を介して不活性ガスが流入する流路が接続される。また、溶剤冷却分離装置40の隔壁42と外側の壁44の間の不活性ガスの流路の上側から、第2の開閉弁24を介して流入室16に流路が接続される。さらに、溶剤冷却分離装置40の隔壁42の内側の溶剤濃縮ガスの流路の下側に、溶剤を溜める溜まり容器50が設けられるとともに第4の開閉弁28を介して排出室18に流路が接続される。また、溶剤冷却分離装置40の隔壁42の内側の溶剤濃縮ガスの流路の上側が排出する不活性ガスを回収する適宜な装置(図示せず)に接続されている。溜まり容器50の下部は、溜まった溶剤を外部に流し出す第5の開閉弁52に接続されている。
【0023】
かかる構成からなるガス処理装置の溶剤冷却分離装置の第1実施例の動作につき、図2を参照して説明する。まず、最初は、活性炭槽10で溶剤の吸着がなされる。そして、活性炭槽10の活性炭14に適宜な量の溶剤が吸着されると、活性炭槽10で溶剤の脱着がなされる。吸着工程にあっては、まず活性炭槽10に接続される第1の開閉弁20と第3の開閉弁26が開成され、第2の開閉弁24と第4の開閉弁28が閉成され、ブロワー22は回転されず(OFF)、さらにスイッチ38がOFFとされて、第1の電極30と第2の電極32の間に電圧が印加されない。また、ペルチェ素子46には電圧が印可されておらず発熱および冷却がなされされない。かかる状態では、第1の開閉弁20を介して溶剤を含む被処理ガスとしての原ガスが一端部の流入室16から活性炭槽10内に流入すると、活性炭14の隙間を通過することで溶剤が活性炭14に吸着され、浄化された浄化ガスが他端部の排出室18から第3の開閉弁26を介して外部に浄化ガスとして排出される。そして、活性炭14に吸着された溶剤の量が適宜な所定値に達すると、第1と第3の開閉弁20、26を閉成して原ガスの流入を停止させ、吸着工程が終了する。
【0024】
脱着工程にあっては、まず第1と第3のの開閉弁20、26が閉成された状態で、第2と第4のの開閉弁24、28が開成され、ブロワー22が回転される(ON)。すると、不活性ガスである窒素ガス等が活性炭槽10内に流入し、活性炭槽10内に残存する浄化ガスが第4の開閉弁28を介して溶剤冷却分離装置40に排出される。この不活性ガスを適宜に設定された所定量または所定時間だけ流入させて、活性炭槽10の内部を不活性ガスで充満した後に、スイッチ38がONとされて第1の電極30と第2の電極32の間に電圧が印加されるとともに、ペルチェ素子46に隔壁42の内側が冷却されるように電圧が印加される。すると、活性炭14に電流が流れ、ジュール熱により活性炭14が約200度まで熱せられ、吸着された溶剤が活性炭14から脱着され、第4の開閉弁28を介して溶剤が濃縮されて含まれる溶剤濃縮ガスが溶剤冷却分離装置40の内側の溶剤濃縮ガスの流路に流れ込み、ペルチェ素子46により冷却され、含まれていた溶剤が不活性ガスから凝縮分離されて下方に滴れ落ちる。冷却により溶剤が凝縮分離された不活性ガスは排出不活性ガスとして回収装置へと流れる。これと同時に、隔壁42と外側の壁44の間の不活性ガスの流路を流れる不活性ガスは、ペルチェ素子46の発熱により加熱され、高温の不活性ガスが第2の開閉弁24を介して流入室16に流れ込む。そして、冷却により凝縮分離されて下方に滴れ落ちた溶剤は、溜まり容器50に溜まる。さらに、脱着が適宜に設定された所定値までなされると、スイッチ38がOFFされて電圧の印加が停止されて脱着が停止される。そして、その後も流入する不活性ガスで活性炭14から溶剤濃縮ガスが排出され、溶剤冷却分離装置40で冷却されて溶剤の凝縮分離がなされる。その後、ペルチェ素子46に印加される電圧の極性が変えられて、隔壁42と外側の壁44の間を流れる不活性ガスが冷却されて流入室16に流れ込み、活性炭14が冷却される。活性炭14が所定の温度まで低下して所望の吸着性能を奏するようになると、ペルチェ素子46への電圧の印加が停止されるとともに、ブロワー22の回転が停止されて脱着が終了する。ここで、次の吸着工程に備えて、第1と第3の開閉弁20、26が開成され、第2と第4の開閉弁24、28が閉成される。
【0025】
溶剤濃縮ガスの冷却により凝縮分離されて下方に滴れ落ちた溶剤は、図3に示すごとく、略蛇腹形状の斜面を内側に流れ落ちて、内側縁部の下方に向けた縁48から下方に滴れ落ちて溜まり容器50に溜まる。ここで、上側の内側縁部の内径が下側よりも小さく、上側の内側縁部の縁48から下方に滴れ落ちた溶剤は、略蛇腹形状の他の斜面に滴れ落ちることなく真っ直ぐに溜まり容器50に落ちて溜まる。そこで、下側の略蛇腹形状の斜面を上側で凝縮分離された溶剤が流れることがなく、溶剤を含む溶剤濃縮ガスを効率良く冷却することができる。溜まり容器50に滴れ落ちて溜まった溶剤が適宜な量となれば、第5の開閉弁が開成されて外部へと排出させる。
【0026】
本発明のガス処理装置の溶剤冷却分離装置の第1実施例にあっては、脱着工程において、ペルチェ素子46で溶剤濃縮ガスを冷却して溶剤を凝縮分離でき、従来技術のごとく冷却水を必要としない。しかも、ペルチェ素子46に発生する発熱により同時に活性炭槽10に流入する不活性ガスを加熱するので、流入する不活性ガスにより活性炭槽10の温度が低下して脱着効率が悪くなるようなことがない。しかも、ペルチェ素子46に印加する電圧の極性を切り換えて、不活性ガスを冷却して活性炭槽10に流入させることができ、この冷却された不活性ガスにより活性炭槽10に内蔵される活性炭14を速やかに冷却することができて、溶剤を吸着する作用を速やかに回復させることができる。また、2重構造となる2つの流路の内側に配設された流路の隔壁42を略蛇腹形状に構成することで、ペルチェ素子46を広い面積に配設することができ、溶剤濃縮ガスおよび不活性ガスが接する面積を広くでき、溶剤濃縮ガスおよび不活性ガスに対する熱の伝達を効率的になし得る。さらに、2重構造の内側に配設された溶剤濃縮ガスの流路の隔壁42を上下方向を軸とする略蛇腹形状とし、この略蛇腹形状の内側端縁に下方に向けた縁48を設けたので、冷却により凝縮分離された溶剤は、略蛇腹形状の内側端縁に下方に向けた縁から下に滴れ落ちる。しかも、この内側端縁の内径が下側ほど大きくなるようにしたので、縁48から滴れ落ちた溶剤は、下方に配設した溜まり容器50に直接に落ちて溜まり、凝縮分離された溶剤が下方にあるペルチェ素子46の表面を流れることがない。もって、ペルチェ素子46により溶剤が含まれる溶剤濃縮ガスを効率よく冷却することができる。
【0027】
次に、本発明のガス処理装置の溶剤冷却分離装置の第2実施例につき、図4を参照して説明する。図4は、本発明のガス処理装置の溶剤冷却分離装置の第2実施例の構造図である。図4において、図1ないし図3に示す部材と同じまたは均等な部材には同じ符号を付けて、重複する説明を省略する。
【0028】
図4に示す第2の実施例の溶剤冷却分離装置60は、上下方向を軸とする2重構造の円筒状であり、内側の隔壁62は熱伝導性の悪い材質で形成され、この隔壁62に置き換わるようにペルチェ素子46が配設されている。したがって、ペルチェ素子46は、発熱または冷却の一面を隔壁62の内側に晒し、他方の面を隔壁62の外側に晒している。そして、隔壁62の内側に下側からブロワー22により不活性ガスが流入されて不活性ガスの流路とされ、その上側から不活性ガスが活性炭槽10へと流れる。また、隔壁62と外側の壁64の間が溶剤濃縮ガスの流路であり、その下側から溶剤濃縮ガスが流入し上側から溶剤が分離された不活性ガスが排出される。隔壁62と外側の壁64の間の溶剤濃縮ガスの流路の下側には溜まり容器50が接続されている。
【0029】
脱着工程において、ペルチェ素子46で隔壁62の外側を冷却するように電圧を印加し、溶剤濃縮ガスを冷却して溶剤を凝縮分離する。第1実施例と第2実施例に示すように、流路を2重構造とした場合に、いずれの流路が溶剤濃縮ガスおよび不活性ガスの流路であっても良く、流路内を流れるガスに応じてペルチェ素子46に適宜な極性で電圧を印可すれば良い。また、ペルチェ素子46を配設する面積を広くするには、第2実施例のごとく筒状の2重管であれば、隔壁62の面積を広くすべくその軸方向の長さを長くすれば足りる。
【0030】
さらに、本発明のガス処理装置の溶剤冷却分離装置の第3実施例につき、図5を参照して説明する。図5は、本発明のガス処理装置の溶剤冷却分離装置の第3実施例の構造図であり、(a)は全体構造図であり、(b)は(a)のA−A断面矢視図である。図5において、図1ないし図4に示す部材と同じまたは均等な部材には同じ符号を付けて、重複する説明を省略する。
【0031】
図5に示す第3の実施例の溶剤冷却分離装置70は、外側の壁74は上下方向を軸とする円筒状であり、その内側の中央に隔壁72が熱伝導性の悪い材質で形成され、この隔壁72に置き換わるようにペルチェ素子46が配設されている。したがって、円筒形状内が隔壁72で2つの流路とされ、ペルチェ素子46は、発熱または冷却の一面を一方の流路に晒し、他方の面を他方の流路に晒している。そして、隔壁72で仕切られた一方の流路の下側からブロワー22により不活性ガスが流入されて不活性ガスの流路とされて、その上側から不活性ガスが活性炭槽10へと流れる。また、隔壁72で仕切られた他方の流路が溶剤濃縮ガスの流路であり、その下側から溶剤濃縮ガスが流入し上側から溶剤が分離された不活性ガスが排出される。この溶剤濃縮ガスの流路の下側には溜まり容器50が接続されている。
【0032】
脱着工程において、ペルチェ素子46で溶剤濃縮ガスの流路を冷却するように電圧を印加し、溶剤濃縮ガスを冷却して溶剤を凝縮分離する。1枚の板状の隔壁72の一部を置き換えるようにペルチェ素子46を配設するので、その構造が簡単である。
【0033】
またさらに、本発明のガス処理装置の溶剤冷却分離装置の第4実施例につき、図6を参照して説明する。図6は、本発明のガス処理装置の溶剤冷却分離装置の第4実施例の構造図である。図6において、図1ないし図5に示す部材と同じまたは均等な部材には同じ符号を付けて、重複する説明を省略する。
【0034】
図6に示す第4の実施例の溶剤冷却分離装置80は、溶剤濃縮ガスの流路82と不活性ガスの流路84が互いに近接しているが独立して設けられている。溶剤濃縮ガスの流路82の下側には、溶剤濃縮ガスが流入する流路が接続され、また溜まり容器50が設けられ、上側から溶剤が分離された不活性ガスが排出される流路が接続されている。また、不活性ガスの流路84は、その下側からブロワー22により不活性ガスが流入し、その上側から不活性ガスが活性炭槽10に流出するように接続される。そして、ペルチェ素子46の発熱または冷却する一方の面に接続された第1の熱伝導板86が、溶剤濃縮ガスの流路82内に晒され、第1の熱伝導板86から流路82内に複数の熱交換板86aが突出している。また、ペルチェ素子46の発熱または冷却する他方の面に接続された第2の熱伝導板88が、不活性ガスの流路84内に晒され、第2の熱伝導板88から流路84内に複数の熱交換板88aが突出している。第1と第2の熱伝導板86、88および熱交換板86a、88aは、熱伝導性の良い素材で形成されることは勿論である。
【0035】
脱着工程において、ペルチェ素子46で溶剤濃縮ガスの流路82に晒される第1の熱伝導板86を冷却するように電圧を印加し、溶剤濃縮ガスを冷却して溶剤を凝縮分離する。第1と第2の熱伝導板86、88を用いることで、ペルチェ素子46の配設位置および溶剤濃縮ガスの流路82と不活性ガスの流路84を配設する位置が制約されることがない。
【0036】
なお、上記実施例において、溶剤冷却分離装置40、60、70、80は、いずれも上下方向を軸とする構造としているが、これに限られず、凝縮分離された溶剤が適切に回収できる構造であれば、軸方向が横方向または斜め方向であっても良い。また、被処理ガスに含まれる溶剤を吸着し、また吸着した溶剤を脱着させる活性炭槽10の構造は、上記説明のものに限られず、特開平7−39717号公報に記載されたようなものや特開2000−107563号公報に記載されたようなものであっても良い。
【特許文献2】特開2000−107563号公報
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明のガス処理装置の溶剤冷却分離装置の第1実施例を用いたガス処理装置のブロック図である。
【図2】図1に示す第1実施例で開閉弁と電圧印加とペルチェ素子およびブロワーの動作を示すタイムテーブルである。
【図3】図1の溶剤冷却分離装置の動作を説明するための図である。
【図4】本発明のガス処理装置の溶剤冷却分離装置の第2実施例の構造図である。
【図5】本発明のガス処理装置の溶剤冷却分離装置の第3実施例の構造図であり、(a)は全体構造図であり、(b)は(a)のA−A断面矢視図である。
【図6】本発明のガス処理装置の溶剤冷却分離装置の第4実施例の構造図である。
【符号の説明】
【0038】
10 活性炭槽
14 活性炭
16 流入室
18 排出室
20 第1の開閉弁
22 ブロワー
24 第2の開閉弁
26 第3の開閉弁
28 第4の開閉弁
30 第1の電極
32 第2の電極
36 交流電圧
38 スイッチ
40、60、70、80 溶剤冷却分離装置
42、62、72 隔壁
44、64、74 外側の壁
46 ペルチェ素子
48 縁
50 溜まり容器
52 第5の開閉弁
82 溶剤濃縮ガスの流路
84 不活性ガスの流路
86 第1の熱伝導板
86a、88a 熱交換板
88 第2の熱伝導板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸着工程で、溶剤を含む被処理ガスを活性炭槽に流入させ、前記活性炭槽に内蔵した活性炭により前記溶剤を吸着して前記活性炭槽から浄化された浄化ガスを流出させ、脱着工程で、前記溶剤を吸着した前記活性炭を加熱して吸着された前記溶剤を脱着し、前記活性炭槽に不活性ガスを流入して脱着された前記溶剤が濃縮されて含まれる溶剤濃縮ガスを流出させ、前記溶剤濃縮ガスを溶剤冷却分離装置に流入させて冷却して前記不活性ガスから前記溶剤を凝縮分離させるガス処理装置の溶剤冷却分離装置において、前記溶剤冷却分離装置に、前記活性炭槽から流出した前記溶剤濃縮ガスの流路と、前記活性炭槽に流入する前記不活性ガスの流路を隣接して配設し、前記2つの流路を仕切る隔壁に前記溶剤濃縮ガスの流路に発熱または冷却の一方の面を晒すとともに前記不活性ガスの流路に発熱または冷却の他方の面を晒すようにしてペルチェ素子を配設し、前記脱着工程の少なくとも一時期において、前記ペルチェ素子の発熱と冷却により前記溶剤濃縮ガスを冷却して前記溶剤を凝縮分離するすると同時に前記不活性ガスを加熱するように構成したことを特徴とするガス処理装置の溶剤冷却分離装置。
【請求項2】
吸着工程で、溶剤を含む被処理ガスを活性炭槽に流入させ、前記活性炭槽に内蔵した活性炭により前記溶剤を吸着して前記活性炭槽から浄化された浄化ガスを流出させ、脱着工程で、前記溶剤を吸着した前記活性炭を加熱して吸着された前記溶剤を脱着し、前記活性炭槽に不活性ガスを流入して脱着された前記溶剤が濃縮されて含まれる溶剤濃縮ガスを流出させ、前記溶剤濃縮ガスを溶剤冷却分離装置に流入させて冷却して前記不活性ガスから前記溶剤を凝縮分離させるガス処理装置の溶剤冷却分離装置において、前記溶剤冷却分離装置にペルチェ素子を配設し、このペルチェ素子の発熱または冷却の一方の面に接続した第1の熱伝導板を前記活性炭槽から流出した前記溶剤濃縮ガスの流路に晒すとともに発熱または冷却の他方の面に接続した第2の熱伝導板を前記活性炭槽に流入する前記不活性ガスの流路に晒すようにし、前記脱着工程の少なくとも一時期において、前記ペルチェ素子の発熱と冷却により前記溶剤濃縮ガスを冷却して前記溶剤を凝縮分離するすると同時に前記不活性ガスを加熱するように構成したことを特徴とするガス処理装置の溶剤冷却分離装置。
【請求項3】
請求項1または2記載のガス処理装置の溶剤冷却分離装置において、前記脱着工程の終了の際に、前記ペルチェ素子に印可する電圧の極性を切り換えて、前記不活性ガスが冷却されて前記活性炭槽に流入するように構成したことを特徴とするガス処理装置の溶剤冷却分離装置。
【請求項4】
請求項1記載のガス処理装置の溶剤冷却分離装置において、前記不活性ガスの流路の内側に前記溶剤濃縮ガスの流路を配設して構成したことを特徴とするガス処理装置の溶剤冷却分離装置。
【請求項5】
請求項1記載のガス処理装置の溶剤冷却分離装置において、前記溶剤濃縮ガスの流路の内側に前記不活性ガスの流路を配設して構成したことを特徴とするガス処理装置の溶剤冷却分離装置。
【請求項6】
請求項4または5記載のガス処理装置の溶剤冷却分離装置において、前記内側に配設された流路の隔壁を略蛇腹形状に構成したことを特徴とするガス処理装置の溶剤冷却分離装置。
【請求項7】
請求項4記載のガス処理装置の溶剤冷却分離装置において、前記内側に配設された前記溶剤濃縮ガスの流路の隔壁を上下方向を軸とする略蛇腹形状とし、この略蛇腹形状の内側端縁に下方に向けた縁を設け、この内側端縁の内径が下側ほど大きくなるようにし、前記溶剤濃縮ガスの流路の上下方向の軸の下方に凝縮分離された前記溶剤が溜まる溜まり容器を配設して構成したことを特徴とするガス処理装置の溶剤冷却分離装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2010−207742(P2010−207742A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−57412(P2009−57412)
【出願日】平成21年3月11日(2009.3.11)
【出願人】(591143364)株式会社アペレ (3)
【Fターム(参考)】