説明

ガス処理装置

【課題】本発明は、コスト低減を図ると共に分解触媒が長寿命化されたガス処理装置を提供する。
【解決手段】ガス処理装置10は、蓄熱材32を通ったガスが引き続き反応室34に流れる第1の状態と、反応室34を通ったガスが引き続き蓄熱材32に流れる第2の状態とが交互に生ずるようにされ、第2の状態において蓄熱材32を加熱すると共に第1の状態で蓄熱材32によって反応室に向かうガスを加熱するようになっており、蓄熱材32は、ガスに含まれていて分解触媒を被毒する触媒毒の、分解触媒に対する被毒性を、触媒毒を化学変化させることにより低下させる被毒性低下物質36を含み、被毒性低下物質は蓄熱材32を兼ねる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、揮発性有機化合物(VOC:Volatile Organic Compound)を含むガスを処理する処理装置としては、特許文献1に記載のものが知られている。この処理装置は、内部に流通されるガスを分解する反応室を備える。反応室内には、低温のガスを加熱するためのバーナが配されている。
【0003】
また、反応室には、筒状をなす第1開口部、及び第2開口部が、下方に延びると共に反応室の内外を連通して設けられている。各開口部にはそれぞれ、ガスと接触してガスを酸化分解させる第1分解触媒と、第2触媒とが配されている。
【0004】
更に、第1開口部には、第1分解触媒について反応室と反対側の位置に、ガスとの間で熱交換可能な第1蓄熱材が配されている。また、第2開口部には、第2分解触媒について反応室と反対側の位置に、第2蓄熱材が配されている。
【0005】
流通路には、第1蓄熱材、第1分解触媒、反応室、第2分解触媒、第2蓄熱材の順にガスを流通させる第1経路、及び、ガスを第2蓄熱材、第2分解触媒、反応室、第1分解触媒、第1蓄熱材の順に流通させる第2経路を切り替える切り替え部材が設けられている。
【0006】
上記の処理装置においては、例えば以下のようにしてガスが処理される。まず、切り替え部材を切り替えることにより、ガスを第1経路で流通させる。すると、ガスは、第1開口部から、第1蓄熱材、第1分解触媒を通って反応室内に導入される。ガスはバーナで加熱されて高温になり、第1分解触媒又は第2分解触媒と接触して、ガスに含まれるVOCが酸化分解される。
【0007】
その後、ガスは第2分解触媒、第2蓄熱材を通って、第2開口部から排出される。このとき、ガスの熱が第2蓄熱材に伝達されることにより、第2蓄熱材が加熱される。これにより、反応室内が高温に保持されると共に、処理後のガスの温度を下げることができる。反応室内の温度が高温に保持されることにより、VOCの酸化分解反応を効率よく進行させることができる。
【0008】
その後、所定時間が経過したら、切り替え部材を切り替えることにより、ガスを第2経路で流通させる。すると、ガスは、第2開口部から、第2蓄熱材、第2分解触媒を通って反応室内に導入される。このとき、第2蓄熱材をガスが通る際に、第2蓄熱材からガスへと熱が伝達され、ガスが加熱される。加熱されたガスは反応室内に導入され、第2分解触媒又は第1分解触媒と接触して、ガスに含まれるVOCが酸化分解される。このとき、ガスは第2蓄熱材に加熱されて比較的に高温になっているので、バーナの火力を弱くすることが可能となり、コストダウンを図ることができる。
【0009】
続いて、ガスは第1分解触媒、第1蓄熱材を通って、第1開口部から排出される。このとき、第1蓄熱材において、ガスの熱が、ガスから第1蓄熱材に伝達される。
【0010】
以下、上記の動作を繰り返して、高温のガスの熱を第1蓄熱材及び第2蓄熱材に蓄積することよって有効に利用しつつ、ガスの処理が実行される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平11−44416号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながらガスの中には、例えば有機シリコン化合物等、第1分解触媒及び第2分解触媒の活性を低下させる触媒毒が含まれる場合がある。VOCの酸化分解反応に用いられる触媒は、有機シリコン化合物等の触媒毒が微量混入するだけで酸化活性が大きく低下することがある。このため、上記の触媒毒がガス中に微量でも含まれていると、第1及び第2触媒の触媒活性が低下し、触媒寿命が短くなることが懸念される。
【0013】
上記の問題を解決するために、例えば触媒毒を吸着する吸着材を、第1触媒及び第2触媒の前段に配することが考えられる。しかしながら上記の手法によると、吸着材における触媒毒の吸着量が飽和した場合に、吸着材の交換、又は、再生による吸着物の除去が必要となる。このため、吸着材の必要性能を維持するためのランニングコストが高くつくという問題があった。
【0014】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、コスト低減を図ると共に分解触媒が長寿命化されたガス処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、揮発性有機化合物を含んだガスが流通する蓄熱材を収容した蓄熱材室と、前記揮発性有機化合物を分解させる分解触媒が収容されて前記分解触媒を加熱する加熱手段を有する反応室とを備え、前記蓄熱材を通ったガスが引き続き前記反応室に流れる第1の状態と、前記反応室を通ったガスが引き続き前記蓄熱材に流れる第2の状態とが交互に生ずるようにされ、前記第2の状態において前記蓄熱材を加熱すると共に前記第1の状態で前記蓄熱材によって前記反応室に向かうガスを加熱するようにしたガス処理装置において、前記蓄熱材は、前記ガスに含まれていて前記分解触媒を被毒する触媒毒の、前記分解触媒に対する被毒性を、前記触媒毒を化学変化させることにより低下させる被毒性低下物質を含み、前記被毒性低下物質は前記蓄熱材を兼ねる(手段1)。
【0016】
上記の発明によれば、ガスを第1の状態で蓄熱材室から反応室へと流通させる。すると、ガスは、蓄熱材に含まれる被毒性低下物質と接触する。これにより、ガスに含まれる触媒毒は、被毒性低下物質によって、分解触媒に対する触媒毒の被毒性が低下される。この結果、分解触媒が触媒毒によって被毒されることが抑制される。このように本発明によれば、VOCの分解触媒を長寿命化することができる。
【0017】
また、この被毒性低下物質によって、吸着材を用いた場合よりもVOC分解触媒の劣化が抑制されるので、交換によるメンテナンス費用を低減させることができる。さらに、被毒性低下物質を蓄熱材としても利用できるので、熱交換率を向上させることが可能となり、ランニングコスト削減にも寄与する。
【0018】
また、被毒性低下物質は、蓄熱材を兼ねるので、別途、被毒性低下物質を配する場合に比べて、ガス処理装置を小型化できる。
【0019】
なお、「分解触媒に対する被毒性を、触媒毒を化学変化させることにより低下させる」、とは、触媒毒に対して被毒性低下物質が触媒として作用することにより、触媒毒を分解させたり、又は分解触媒に対する被毒性を低下させたりする場合を含み、また、触媒毒と被毒性低下物質とが反応して触媒毒が被毒性低下物質に化学吸着する場合を含む。
【0020】
本発明の実施態様としては以下の態様が好ましい。
手段2は、手段1に係るガス処理装置であって、前記蓄熱材は、被毒性が低下された前記触媒毒を吸着可能であることが好ましい。
【0021】
上記の態様によると、まず、ガスを第1の状態で流通させることにより被毒性が低下された触媒毒は、蓄熱材に吸着される。
【0022】
その後、ガスを第2の状態で、反応室から蓄熱材室へと流通させる。すると、反応室で加熱されたガスが蓄熱材を流通する際に、被毒性が低下された触媒毒の一部が、蓄熱材から離脱して、ガスと共に蓄熱材室から排出される。
【0023】
以下、第1の状態と、第2の状態とを交互に繰り返すことにより、蓄熱材に含まれる被毒性低下物質で触媒毒を低活性化させると共に、蓄熱材に吸着された触媒毒の一部を蓄熱材室から排出することができる。このように本願発明によれば、蓄熱材を再生するための再生工程の一部がこのプロセス内で自動的に実行されるため、触媒毒の除去性能を維持するためのランニングコストを低減させることができる。
【0024】
手段3は、手段1または手段2に係るガス処理装置であって、前記被毒性低下物質は、ゼオライト、活性アルミナ、ケイ酸カルシウム水和物、粘土鉱物からなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0025】
上記の態様によれば、分解触媒に対する触媒毒の被毒性を低下させることができる。
【0026】
手段4は、手段1ないし手段3のいずれか一つに係るガス処理装置であって、前記被毒性低下物質の温度は200℃以上600℃以下に維持されていることが好ましい。
【0027】
被毒性低下物質の温度が200℃未満であると、触媒毒の反応性を十分に低下させることができないので好ましくない。また、被毒性低下物質の温度が600℃を越えると、経済性の低下や、分解触媒と一体化した場合は分解触媒の耐熱温度に近くなるため好ましくない。
【0028】
手段5は、手段4に記載のガス処理装置であって、前記被毒性低下物質は、前記蓄熱材のうち前記反応室に向かう前記ガスの流れの下流側に配されており、前記蓄熱材の温度は、前記反応室に向かう前記ガスの流れの上流側において、前記触媒毒の沸点よりも低くなるように維持されていることが好ましい。
【0029】
上記の態様によれば、まず、ガスを第1の状態で蓄熱材室から反応室へと流通させる。このとき、蓄熱材の温度は、反応室に向かうガスの流れの上流側において触媒毒の沸点よりも低く維持されている。このため、ガスが蓄熱材と接触すると、ガスに含まれる触媒毒の温度がその沸点よりも低くなるので、触媒毒は液体となる。これにより、ガス中の触媒毒が蓄熱材によって物理吸着されて、ガス中に含まれる触媒毒の濃度が低下する。
【0030】
ガスが蓄熱材の内部を下流側に流通すると、ガスは、蓄熱材のうちガスの流れ方向の下流側に配された被毒性低下物質と接触する。すると、ガス中に残った触媒毒が、被毒性低下物質によって化学変化し、触媒毒の被毒性が低下する。これにより、分解触媒の触媒寿命を、一層延長させることができる。
【0031】
その後、ガスを第2の状態で、反応室から蓄熱材室へと流通させる。すると、反応室で加熱されたガスが蓄熱材を流通する際に、蓄熱材に物理吸着された触媒毒が、ガスと共に蓄熱材室から排出される。
【0032】
また、蓄熱材には、被毒性が低下された触媒毒も吸着されており、この被毒性が低下された触媒毒も、蓄熱材から離脱して排出される。
【0033】
以下、第1の状態と、第2の状態とを交互に繰り返すことにより、蓄熱材によるガス中の触媒毒の物理吸着、被毒性低下物質による触媒毒の被毒性の低下、更には被毒性が低下された触媒毒の蓄熱材による吸着、その後の、蓄熱材に物理吸着された触媒毒の離脱や、被毒性が低下された触媒毒の離脱を行うことができる。このように、手段5によれば、蓄熱材において、触媒毒を吸着する作用と、触媒毒の被毒性を低下させる作用との、双方を実行することができるので、分解触媒の寿命を延ばすと共に、ランニングコストを一層低減することができる。
【0034】
なお、蓄熱材の温度を、反応室に向かうガスの流れの上流側において、触媒毒の沸点よりも低くなるように維持する構成の例としては、例えば、蓄熱材の量を調節する構成、第2の状態において反応室と蓄熱材室との間にガスの冷却手段を設ける構成、又は蓄熱材室のうち反応室に向かうガスの流れの上流側に冷却手段を設ける構成等が考えられる。
【0035】
手段6は、手段4または手段5に係るガス処理装置であって、前記蓄熱材室は、前記反応室について前記ガスが流通する方向の両側の位置に配されて、それぞれ第1蓄熱材室、及び第2蓄熱材室とされており、更に、前記ガスを前記第1蓄熱部、前記反応室、前記第2蓄熱部の順に流通させる第1経路、及び、前記ガスを前記第2蓄熱部、前記反応室、前記第1蓄熱部の順に流通させる第2経路、を切り替える切り替え手段を備えることが好ましい。
【0036】
上記の態様によれば、切り替え手段を切り替えて、第1経路でガスを流通させると、ガスは、第1蓄熱部、反応室、第2蓄熱部の順に流通する。これにより、第1蓄熱部と反応室との関係では第1の状態が実現され、また、反応室と第2蓄熱部との関係では、第2の状態が実現される。
【0037】
また、切り替え手段を切り替えて、第2経路でガスを流通させると、ガスは、第2蓄熱部、反応室、第1蓄熱部の順に流通する。これにより、第1蓄熱部と反応室との関係では第2の状態が実現され、また、反応室と第2蓄熱部との関係では第1の状態が実現される。
【0038】
このように、上記の態様によれば、切り替え手段を切り替えるという簡易な手法により、第1の状態と、第2の状態とを容易に作出することができる。
【0039】
手段7は、手段4または手段5または手段6に係るガス処理装置であって、内側容器と、前記内側容器を外側から隙間を有して覆う外側容器と、を有し、前記内側容器の内部には前記反応室が設けられていることが好ましい。
【0040】
上記の態様によれば、内側容器と外側容器との間の隙間には気体層が形成される。この気体層により内側容器の保温性が向上するので、反応室を加熱する際に加熱手段に投入するエネルギー消費量を削減できる。この結果、コストダウンを図ることができる。
【0041】
手段8は、手段7に係るガス処理装置であって、前記内側容器には、前記蓄熱材室が更に設けられていることが好ましい。
【0042】
上記の態様によれば、内側容器には反応室と蓄熱材室とが設けられているので、反応室と蓄熱材室とを別々に設ける場合に比べて、ガス処理装置全体を小型化できる。
【0043】
手段9は、手段7または手段8に係るガス処理装置であって、前記内側容器の内部は、前記ガスが流通可能な隙間を有して隔壁で仕切られていることが好ましい。
【0044】
上記の態様によれば、内側容器を大型化することなく、ガスの流通経路を延ばすことができる。
【0045】
手段10は、手段5に係るガス処理装置であって、前記蓄熱材室は複数設けられると共に前記反応室に対して並設されており、前記蓄熱材室及び前記反応室への前記ガスの流入方向及び排出方向を切り替える切り替え手段を備えることが好ましい。
【0046】
上記の態様によれば、切り替え手段を切り替えることにより、複数の蓄熱材室に対して、連続的に第1の状態と、第2の状態とを作出することができる。
【0047】
手段11は、手段5に係るガス処理装置であって、前記反応室と前記蓄熱材室は一体に形成されると共に互いに直列に配されており、前記反応室及び前記蓄熱材室の内部には、分解触媒及び蓄熱材が一体に積層されて収容されており、前記反応室と前記蓄熱材前記反応室のうち前記蓄熱材室と反対側に位置する端部は封止されており、前記蓄熱材室について前記反応室と反対側の端部には、前記ガスを前記蓄熱材室に供給する給気口と、前記ガスを前記蓄熱材室から排出する排気口とが設けられた給排気ユニットが、前記反応室及び前記蓄熱材室と直列に配されており、前記分解触媒及び前記蓄熱材と、前記給排気ユニットとは、互いの並び方向を軸として相対的に回転可能に配設されていることが好ましい。
【0048】
給気口からガスが蓄熱材室に給気されると、ガスは、蓄熱材室から反応室へと流通する。反応室のうち蓄熱材室と反対側に位置する端部は封止されているので、ガスは反応室へと達したのち、蓄熱材室から排気口へと流通し、排気口から排気される。これにより、給気口から蓄熱材室を経て反応室へとガスが流れる領域においては第1の状態が実現され、反応室から蓄熱材室を経て排気口へとガスが流れる領域においては、第2の状態が実現される。
【0049】
次いで、反応室及び蓄熱材室と、給排気ユニットとを相対的に回転させることにより、第1の状態でガスが流れていた領域に排気口が位置し、第2の状態でガスが流れていた領域に給気口が位置するようになる。すると、これまで第1の状態でガスが流れていた領域においては、反応室から蓄熱材室を経て排気口からガスが排気されることにより、第2の状態が実現される。一方、これまで第2の状態でガスが流れていた領域においては、給気口から蓄熱材室を経て反応室へとガスが流通することにより、第1の状態が実現される。
【0050】
このように、反応室及び蓄熱材室と、給排気ユニットとを相対的に回転させることにより、第1の状態と、第2の状態とを交互に生ずるようにすることができる。
【0051】
手段12は、手段1ないし手段11のいずれか一つに係るガス処理装置であって、前記分解触媒は、白金、パラジウム、鉄、チタン、ジルコニウム、マンガン、銅、コバルト、ニッケル、セリウム、インジウム、タングステン、スズ、マグネシウム、カルシウム、ナトリウムの金属、および金属酸化物からなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0052】
上記の態様により、揮発性有機化合物の分解率を向上させることができる。
【発明の効果】
【0053】
本発明によれば、ガス処理装置について、コスト低減を図ると共に分解触媒を長寿命化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明に係るガス処理装置を、VOC分解処理装置に適用した概略説明図
【図2】ガス処理装置を示すと共に、第1の経路でガスが流通する状態を示す断面図
【図3】ガス処理装置を示すと共に、第2の経路でガスが流通する状態をしめす断面図
【図4】図2におけるIV−IV線断面図
【図5】IPA濃度の経時変化を示すグラフ
【図6】実施形態2に係るガス処理装置を示す断面図
【図7】実施形態3に係るガス処理装置の概略構成を示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0055】
<実施形態1>
本発明に係るガス処理装置10を、揮発性有機化合物濃縮酸化分解処理装置11(以下、VOC分解処理装置と称する。)に適用した実施形態1について、図1ないし図5を参照しつつ説明する。図1に示すように、VOC分解処理装置11においては、無端状の繊維状活性炭シート12(以下、活性炭シートと称する。)が、複数のローラ13に架設されて周回するようになっている。この活性炭シート12の吸着部分にVOC含有ガスを導入することにより、VOCは活性炭シート12に吸着される。これにより浄化された清浄空気14は、ブロア15Aを経て外気に放出される。
【0056】
上記活性炭シート12の周回経路には脱離部16が設けられている。この脱離部16には脱離ヒータ17によって加熱された空気が導入され、活性炭シート12に吸着されたVOCを脱離する。
【0057】
上記の活性炭シート12を周回させることにより、VOCガス含有ガスからVOCを連続的に吸着し、脱離することができるようになっている。
【0058】
脱離部16から出た高濃度のVOCガスは、後述するガス処理装置10に導入されて、ガス中のVOCが分解される。なお、脱離部16から出た高濃度VOCガスには、後述する第1分解触媒18、第2分解触媒19の触媒活性を低下させる触媒毒が含まれる。
【0059】
VOCが分解された高温のガスは、脱離熱交換器20において、ブロア15Bから供給される脱離用空気21と熱交換され、VOC分解処理装置11の外部に排出される。
【0060】
(ガス処理装置10)
さて、図2に示すように、ガス処理装置10には、VOCを含むガスが流通されるようになっている。このガス処理装置10は、管状の内側容器22と、この内側容器22を外側から覆う管状の外側容器23とを同軸上に配置した二重管構造をなす。
【0061】
(外側容器23)
外側容器23は、図2における上下両端部が封止されている。外側容器23の上端部寄りの位置には、図2における左右両側にそれぞれ、外側容器23の内外を連通する第1ガス出入口24、第2ガス出入口25が設けられている。
【0062】
図2における左側に位置する第1ガス出入口24には、第1三方バルブ26(特許請求の範囲に記載の切り替え手段に相当)が取り付けられている。また、図2における右側に位置する第2ガス出入口25には、第2三方バルブ27(特許請求の範囲に記載の切り替え手段に相当)が取り付けられている。
【0063】
(内側容器22)
図2における内側容器22の上端は、外側容器23の上壁の内面に接続されている。これにより、内側容器22は、外側容器23の側壁、及び底壁から離間して隙間を有した状態で、外側容器23内に保持されている。
【0064】
図2における内側容器22の下端部には、格子状をなす支持部28が設けられている。支持部28は内側容器22と一体に設けられてもよく、また、別体に設けられた支持部28を内側容器22に組み付けてもよい。支持部28の格子により、内側容器22の下端部は、外側容器23の内部と連通している。
【0065】
(隔壁29)
図2における外側容器23の底壁からは、上方に突出する隔壁29が設けられている。この隔壁29は、内側容器22の支持部28を突き抜けて設けられている。隔壁29の上端縁は、内側容器22の内部に位置すると共に、内側容器22の上壁から隙間を有して配されている。上記の隙間により、隔壁29の上端部と、内側容器22の上壁と間の隙間を、ガスが流通可能になっている。この隔壁29により、内側容器22の内部は、概ね、図2における左側と、右側とに仕切られている。
【0066】
また、図4に示すように、上記の隔壁29は、外側容器23と内側容器22との間においては、両容器の間を隙間なく仕切っている。
【0067】
図2に示すように、外側容器23と内側容器22との間には、上記の隔壁29により、図2における左側に位置する第1通気路30と、右側に位置する第2通気路31とが形成される。
【0068】
(蓄熱材室)
図2に示すように、内側容器22の内部には、上記の支持部28の上方に、蓄熱材32が収容されている。蓄熱材32は、支持部28によって内側容器22内に支持されている。蓄熱材32は、隔壁29の左右両側にそれぞれ収容されている。図2における左側には第1蓄熱材32Aが収容されている。内側容器22のうち、第1蓄熱材32Aが収容された領域は第1蓄熱材室33Aとされる。また、図2における右側には第2蓄熱材32Bが収容されている。内側容器22のうち、第2蓄熱材32Bが収容された領域は、第2蓄熱材室Bとされる。第1蓄熱材32A及び第2蓄熱材32Bの、内側容器22内における充填高さは、実質的に同じになっている。なお、実質的に同じとは、同じである場合を含み、且つ、同じでなくとも略同じ場合を含む。
【0069】
第1蓄熱材32A、及び第2蓄熱材32Bは、例えば、コージェライト等のセラミックから形成することができ、必要に応じて任意の材料から形成することができる。また、第1蓄熱材32A、及び第2蓄熱材32Bは、図2における上下方向から見て、格子状、ハニカム状等、ガスが流通可能な通路が形成されている成形ブロックから構成することができる。
【0070】
第1蓄熱材32A、及び第2蓄熱材32Bの図2における上方には、それぞれ、第1被毒性低下物質36A、及び第2被毒性低下物質36Bが積層されている。第1被毒性低下物質36A、及び第2被毒性低下物質36Bは、ガス中に含まれる触媒毒を化学変化させることにより、第1分解触媒18、及び第2分解触媒19に対する触媒毒の被毒性を低下させる。
【0071】
なお、分解触媒に対する被毒性を、触媒毒を化学変化させることにより低下させる、とは、触媒毒に対して被毒性低下物質が触媒として作用することにより、触媒毒を分解させたり、又は分解触媒に対する被毒性を低下させたりする場合を含み、また、触媒毒と被毒性低下物質とが反応して触媒毒が被毒性低下物質に化学吸着する場合を含む。
【0072】
第1被毒性低下物質36A、及び第2被毒性低下物質36Bとしては、ゼオライト、活性アルミナ、ケイ酸カルシウム水和物、粘土鉱物からなる群から選択される少なくとも1種を含む物質を用いることができる。本実施形態においては、ゼオライトが用いられている。
【0073】
このゼオライトは、触媒毒を接触することにより、触媒毒に対して触媒として作用し、触媒毒を分解させることができる。さらに、分解された触媒毒を吸着することができる。
【0074】
なお、第1被毒性低下物質36A,及び第2被毒性低下物質36Bは、ガスと熱交換可能であり、蓄熱材も兼ねる。
【0075】
第1被毒性低下物質36A,及び第2被毒性低下物質36Bの温度は、200℃以上600℃以下に維持されている。被毒性低下物質の温度が200℃未満であると、触媒毒の反応性を十分に低下させることができないので好ましくない。また、被毒性低下物質の温度が600℃を越えると、経済性の低下や、分解触媒と一体化した場合は分解触媒の耐熱温度に近くなるため好ましくない。
【0076】
(反応室34)
図2に示すように、第1被毒性低下物質36A、及び第2被毒性低下物質36Bの更に上方には、それぞれ、第1分解触媒18、及び第2分解触媒19が配されている。第1分解触媒18、及び第2分解触媒19は、VOCを含むガスと接触して、VOCを分解させる。第1分解触媒18、及び第2分解触媒19の、内側容器22内における充填高さは、実質的に同じになっている。
【0077】
また、内側容器22内における隔壁29の高さ寸法は、第1分解触媒18、及び第2分解触媒19の充填高さよりもやや高く設定されている。
【0078】
上記の第1分解触媒18、及び第2分解触媒19は、白金、パラジウム、鉄、チタン、ジルコニウム、マンガン、銅、コバルト、ニッケル、セリウム、インジウム、タングステン、スズ、マグネシウム、カルシウム、ナトリウムの金属、および金属酸化物からなる群から選択される少なくとも1種を含む。
【0079】
図2に示すように、内側容器22のうち、第1分解触媒18、及び第2分解触媒19の上方には、第1分解触媒18、及び第2分解触媒19を加熱する加熱手段35が配設されている。この加熱手段35としては、ガスヒータ、電気ヒータ等の加熱器を用いることが可能であって、安全性、安定性、コンパクト性、高温化、省エネルギーの観点から電気ヒータを用いることが好ましい。
【0080】
内側容器22のうち、第1分解触媒18、及び第2分解触媒19を収容すると共に、加熱手段35を有する領域は、反応室34とされる。
【0081】
(ガスの流通経路)
図2に示すように、第1三方バルブ26、及び第2三方バルブ27を切り替えることにより、VOCを含むガスは、第1三方バルブ26、第1通気路30、第1蓄熱材室33A(第1蓄熱材32A)、反応室34(第1分解触媒18、第2分解触媒19)、第2蓄熱材室33B(第2蓄熱材32B)、第2通気路31、第2三方バルブ27の順に流通される。この流通経路は第1経路とされる。第1経路は、図2において矢線Aで示される。
【0082】
このように第1経路でガスを流通させた状態では、ガスは、第1蓄熱材室33Aから反応室34へと流通する。この状態は、第1の状態とされる。また、ガスは、反応室34から第2蓄熱材室33Bへと流通する。この状態は、第2の状態とされる。
【0083】
図2に示すように、ガスが第1経路で流通されている状態において、第1蓄熱材32Aのうち、図2における下端部側は、反応室34に向かうガスの流れの上流側に位置する。第1蓄熱材32Aのうち図2における下端部寄りの温度は、ガスに含まれる触媒毒の沸点よりも低くなるように維持されている。また、上記した第1被毒性低下物質36Aは、第1蓄熱材室33Aから反応室34へ流れるガスの流通方向について下流側に配されている。
【0084】
また、図3に示すように、第1三方バルブ26、及び第2三方バルブ27を、切り替えることにより、VOCを含むガスは、第2三方バルブ27、第2通気路31、第2蓄熱材室33B(第2蓄熱材32B)、反応室34(第2分解触媒19、第1分解触媒18)、第1蓄熱材室33A(第1蓄熱材32A)、第1通気路30、第1三方バルブ26の順に流通される。この流通経路は第2経路とされる。第2経路は、図3において矢線Bで示される。
【0085】
このように第2の経路でガスを流通させた状態では、ガスは、第2蓄熱材室33Bから反応室34へと流通する。これにより、第2蓄熱材室33Bと反応室34との関係では第1の状態が実現される。また、ガスは、反応室34から第1蓄熱材室33Aへと流通する。これにより、反応室34と第1蓄熱材室33Aとの関係では第1の状態が実現される。
【0086】
図3に示すように、ガスが第1経路で流通されている状態において、第2蓄熱材32Bのうち、図3における下端部側は、反応室34に向かうガスの流れの上流側に位置する。第1蓄熱材32Aのうち図3における下端部寄りの温度は、ガスに含まれる触媒毒の沸点よりも低くなるように維持されている。また、第2被毒性低下物質36Bは、第2蓄熱材室33Bから反応室34へ流れるガスの流通方向について下流側に配されている。
【0087】
なお、第1蓄熱材32A、及び第2蓄熱材32Bの温度を、反応室34に向かうガスの流れの上流側において、触媒毒の沸点よりも低くなるように維持する構成の例としては、例えば、第1及び第2蓄熱材32Bの量を調節する構成、反応室34と、第1及び第2蓄熱材室33Bとの間にガスの冷却手段を設ける構成等が考えられる。
【0088】
(作用、効果)
続いて、本実施形態の作用、効果について説明する。まず、図2に示すように、第1経路でガスを流通させると、VOCを含んだガスは、第1三方バルブ26から第1出入口を経て外側容器23内に導入される。続いてガスは、第1通気路30内を流通した後、内側容器22の支持部28から内側容器22内に導入される。内側容器22の第1蓄熱材室33Aに導入されたガスは、第1蓄熱材32Aと接触する。
【0089】
第1蓄熱材32Aの温度は、ガスの流れの上流側において、触媒毒の沸点よりも低くなるように維持されているので、ガスが第1蓄熱材32Aと接触すると、触媒毒は液体となる。これにより、ガス中の触媒毒が第1蓄熱材32Aによって物理吸着される。この結果、第1分解触媒18、及び第2分解触媒19が触媒毒によって被毒されることが抑制される。これにより、第1分解触媒18、及び第2分解触媒19を長寿命化することができる。
【0090】
続いて、ガスは第1蓄熱材32A内を上昇して第1被毒性低下物質36Aと接触する。すると、ガス中に残存した触媒毒が、第1被毒性低下物質36Aによって分解される。分解された触媒毒は、一部が第1被毒性低下物質36Aに吸着される。また、分解された触媒毒の一部は反応室34に流入することが懸念されるが、既に被毒性が低下されているので、触媒寿命を著しく低下させることはない。
【0091】
その後、ガスは、反応室34内に流入し、第1分解触媒18、及び第2分解触媒19と接触する。すると、ガス中のVOCは、第1分解触媒18、及び第2分解触媒19により分解される。
【0092】
VOCが分解されて高温になったガスは、反応室34から第2蓄熱材室33Bへと流通し、第2被毒性低下物質36B、及び第2蓄熱材32Bと接触する。すると、第2蓄熱材32Bは高温になったガスにより加熱される。第2被毒性低下物質36B、及び第2蓄熱材32Bに熱を伝達したガスは、第2通気路31から第2出入口を経て、第2三方バルブ27からガス処理装置10の外部に排出される。
【0093】
次いで、図3に示すように、第2経路でガスを流通させると、VOCを含んだガスは、第2三方バルブ27から第2出入口を経て外側容器23内に導入される。続いてガスは、第2通気路31内を流通した後、内側容器22の支持部28から内側容器22内に導入される。内側容器22の第2蓄熱材室33Bに導入されたガスは、第2蓄熱材32Bと接触する。
【0094】
第2蓄熱材32Bの温度は、ガスの流れの上流側において、触媒毒の沸点よりも低くなるように維持されているので、ガスが第2蓄熱材32Bと接触すると、触媒毒は液体となる。これにより、ガス中の触媒毒が第2蓄熱材32Bによって物理吸着される。この結果、第2分解触媒19、及び第2分解触媒19が触媒毒によって被毒されることが抑制される。これにより、第1分解触媒18、及び第2分解触媒19を長寿命化することができる。
【0095】
更に、ガスは、第2蓄熱材32B、及び被毒性低下物質36Bに蓄えられた熱を受け取って昇温される。これにより、加熱手段35による加熱を弱くすることができるので、コストダウンを図ることができる。
【0096】
続いて、ガスは第2蓄熱材32B内を上昇して第2被毒性低下物質36Bと接触して、ガス中に残存した触媒毒が、第2被毒性低下物質36Bによって分解される。分解された触媒毒は、一部が第2被毒性低下物質36Bに吸着される。
【0097】
その後、ガスは、反応室34内に流入し、第1分解触媒18、及び第2分解触媒19と接触する。すると、ガス中のVOCは、第1分解触媒18、及び第2分解触媒19により分解される。
【0098】
VOCが分解されて高温になったガスは、反応室34から第1蓄熱材室33Aへと流通し、第1被毒性低下物質36A、及び第1蓄熱材32Aと接触する。すると、第1被毒性低下物質36A、及び第1蓄熱材32Aは高温になったガスにより加熱される。さらに、高温のガスによって、第1蓄熱材32Aに物理吸着された触媒毒、及び第1被毒性低下物質36Aに吸着された、分解された触媒毒が脱離される。その上、その後、ガスは、触媒毒等と共に、第1通気路30を通って第1三方バルブ26を経て、ガス処理装置10の外部に排出される。
【0099】
以下、第1三方バルブ26と、第2三方バルブ27を切り替えることにより、第1の状態と、第2の状態とを交互に繰り返す。これにより、第1蓄熱材32A、及び第2蓄熱材32Bによるガス中の触媒毒の物理吸着、第1被毒性低下物質36A及び第2被毒性低下物質36Bによる触媒毒の被毒性の低下、更には被毒性が低下された触媒毒の第1被毒性低下物質36A及び第2被毒性低下物質36Bによる吸着、その後の、両蓄熱材32A,32B及び両被毒性低下物質36A,36Bに吸着された触媒毒の離脱や、被毒性が低下された触媒毒の離脱を行うことができる。このように、本実施形態によれば、両蓄熱材32A,32B、及び両被毒性低下物質36A,36Bにおいて、触媒毒を吸着する作用と、触媒毒の被毒性を低下させる作用との、双方を実行することができるので、両分解触媒18,19の寿命を延ばすと共に、ランニングコストを一層低減することができる。
【0100】
なお、従来においては、第1蓄熱材32A及び第2蓄熱材32Bの温度設計は、反応室34内の温度を維持する観点から、反応室34の温度に近くなるように維持するようになされていた。これに対し本実施形態においては、第1蓄熱材32A及び第2蓄熱材32Bの温度を、反応室34に向かう排ガスの流れの上流側において、触媒毒の沸点よりも低くなるように維持する構成となっている。これにより、ガスから触媒毒を除去又は低減することが可能となっている。
【0101】
また、本実施形態においては、第1三方バルブ26、及び第2三方バルブ27を切り替えるという簡易な手法により、第1の状態と、第2の状態とを容易に作出することができる。
【0102】
また、本実施形態においては、内側容器22と、外側容器23との間には隙間が形成されている。これにより、内側容器22と外側容器23との間の隙間はガスが流通する第1通気路30及び第2通気路31とされる。この第1通気路30及び第2通気路31にはガスによる気体層が形成される。この気体層により内側容器22の保温性が向上するので、反応室34を加熱する際に加熱手段35に投入するエネルギー消費量を削減できる。この結果、コストダウンを図ることができる。
【0103】
また、本実施形態においては、内側容器22内には、第1蓄熱材室33A及び第2蓄熱材室33Bが更に設けられている。これにより、反応室34、第1蓄熱材室33A及び第2蓄熱材室33Bをそれぞれ個別に設ける場合に比べて、ガス処理装置10全体を小型化できる。
【0104】
更に、本実施形態においては、内側容器22の内部は、ガスが流通可能な隙間を有して隔壁29で仕切られている。これにより、内側容器22を大型化することなく、ガスの流通経路を延ばすことができる。
【0105】
分解触媒は、白金、パラジウム、鉄、チタン、ジルコニウム、マンガン、銅、コバルト、ニッケル、セリウム、インジウム、タングステン、スズ、マグネシウム、カルシウム、ナトリウムの金属、および金属酸化物からなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。更に、酸化鉄との複合酸化物、及び酸化アルミニウムとの複合酸化物の双方又は一方を含むことが好ましい。
【0106】
(実施例1)
以下、本発明に係るガス処理装置10の実施例1について説明する。上述したガス処理装置10内に、濃度1,000ppmのIPA(VOCの一例)と、濃度10ppmのHMDS(ヘキサメチルジシラザン、触媒毒の一例)と、を含むガスを、流速0.2m/minで流通させた。なお、HMDSの沸点は、122℃〜127℃(MSDS−OHS (2004))である。第1分解触媒18、及び第2分解触媒19は、パラジウム担持触媒を用いた。
【0107】
第1蓄熱材32A、及び第2蓄熱材32Bは、板状のコージェライトを3枚積層させた。これにより、コージェライトの最下層の温度がHMDSの沸点よりも低い温度に維持されるようにした。
【0108】
第1被毒性低下物質36A、及び第2被毒性低下物質36Bは、粒状のゼオライトを用いた。このゼオライトは、約400℃で事前に焼成したものを用いた。
【0109】
加熱手段35の制御温度は、500℃とした。パラジウム担持触媒の温度も500℃であった。また、ゼオライト層のうち反応室34側の温度は422℃であり、反応室34と反対側(第1蓄熱材32A、及び第2蓄熱材32B側)の温度は258℃であった。また、コージェライトの最下層の温度は、54℃であった。なお、コージェライトの最下層から輩出されるガス温度は125℃であり、コージェライトに流入するガス温度は35℃であった。
【0110】
第1三方バルブ26、及び第2三方バルブ27を60秒毎に切り替えることにより、ガス処理装置10内に、ガスを第1経路で流通させる状態と、第2経路で流通させる状態とを、交互に作出した。
【0111】
ガス処理装置10から排出されたガスについて、IPAの分解率を連続的に測定した。図5に、IPA分解率の経時変化を表すグラフを示す。
【0112】
(比較例1)
比較例1においては、第1及び第2被毒性低下物質36A,36Bの代わりに、コージェライトを収容した以外は、実施形態1と同様にして実験を行った。すなわち、比較例1においては、蓄熱材室内に、コージェライトが4枚積層された状態になっていた。図5に、IPA分解率の経時変化を、併せて記載した。
【0113】
(結果)
図5に示すように、実施例1においては、IPAの分解率が80%に低下するまでの時間は、約21時間であった。これに対して、比較例1においては、IPAの分解率が80%に低下するまでの時間は、約4時間であった。このように、実施例1においては、比較例1と比べて、触媒寿命を約5倍に延ばすことができた。
【0114】
<実施形態2>
次に、本発明の実施形態2を、図6を参照しつつ説明する。本実施形態にかかるガス処理装置40は、反応室44に、複数(本実施形態では3つ)の蓄熱材室43が並設されている。蓄熱材室43は、図7における左から第1蓄熱材室43A、第2蓄熱材室43B、及第3蓄熱材室43Cとされる。各蓄熱材室43A,43B,43Cにはそれぞれ、第1蓄熱材42A、第2蓄熱材42B、及び第3蓄熱材42Cが収容されている。各蓄熱材42A,42B,42Cの上方には、それぞれ、第1被毒性低下物質46A,第2被毒性低下物質46B、及び第3被毒性低下物質46Cが積層されている。さらに、各被毒性低下物質46A,46B,46Cの上方には、それぞれ第1分解触媒48、第2分解触媒49、及び第3分解触媒50が配されている。また、各分解触媒48,49,50の上方には加熱手段35が配されている。各分解触媒48,49,50、及び加熱手段45が収容された領域が、反応室44とされる。
【0115】
各蓄熱材室43A,43B,43Cからは、ガスが流通可能な流通路51が、3つずつ延設されている。それぞれの流通路51には、ガスの流通方向を切り替えるバルブ52(特許請求の範囲に記載の切り替え手段に相当)が設けられている。
【0116】
上記以外の構成については、実施形態1と略同様なので、同一部材については同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0117】
本実施形態においては、まず、バルブ52を操作することにより、ガスが、第1蓄熱材室43A、反応室44、第2蓄熱材室43Bの順に流通するようにする。すると、第1蓄熱材室43Aの下端部において、ガス中に含まれる触媒毒が液化して第1蓄熱材42Aに吸着される。続いて、第1被毒性低下物質46Aにおいて、ガス中に残留した触媒毒の被毒性が低下される。その後、ガス中のVOCは反応室44で分解される。反応室44で高温になったガスは、第2蓄熱材42Bを加熱する一方、ガス自身は冷却されて、ガス処理装置40から排出される。このとき、第3蓄熱材42Cにおいては、未反応ガスや触媒毒等がパージされる。
【0118】
続いて、所定時間が経過した後、バルブ52を切り替えることにより、ガスが、第2蓄熱材室43B、反応室44、第3蓄熱材室43Cの順に流通するようにする。すると、第2蓄熱材室43Bの下端部において、ガス中に含まれる触媒毒が液化して第2蓄熱材42Bに吸着される。さらに、ガスは、加熱された第2蓄熱材42Bから熱を受け取って高温になる。続いて、ガスは第2被毒性低下物質46Bと接触して、ガス中に残存した触媒毒の被毒性が低下される。その後、ガス中のVOCは反応室44で分解される。反応室44で高温になったガスは、第3蓄熱材42Cを加熱する一方、ガス自身は冷却されて、ガス処理装置10から排出される。このとき、第1被毒性低下物質46A、及び第1蓄熱材42Aにおいては、未反応ガスや触媒毒等がパージされる。
【0119】
続いて、所定時間が経過した後、バルブ52を切り替えることにより、ガスが、第3蓄熱材室43C、反応室44、第1蓄熱材室43Aの順に流通するようにする。すると、第3蓄熱材室43Cの下端部において、ガス中に含まれる触媒毒が液化して第3蓄熱材42Cに吸着される。さらに、ガスは、加熱された第3蓄熱材42Cから熱を受け取って高温になる。続いて、ガスは、第3被毒性低下物質46Cと接触することで、ガス中に残存した触媒毒の被毒性が低下される。その後、ガス中のVOCは反応室44で分解される。反応室44で高温になったガスは、第1蓄熱材42Aを加熱する一方、ガス自身は冷却されて、ガス処理装置10から排出される。このとき、第2被毒性低下物質46B、及び第2蓄熱材42Bにおいては、未反応ガスや触媒毒等がパージされる。
【0120】
以下、同様の手順を繰り返すことにより、各蓄熱材室43A、43B、43C、を備えたガス処理装置40に対して、連続的に、VOCを含むガスの処理を実行することができる。
【0121】
<実施形態3>
次に、本発明の実施形態3について、図7を参照しつつ説明する。本実施形態に係るガス処理装置60は、反応室64と蓄熱材室63とは、円筒形をなして一体に形成されている。詳細には、図7における下側に、被毒性低下物質66、及び蓄熱材62を収容する蓄熱材室63が形成されており、この蓄熱材室63の上方に、直列に並んで分解触媒67を収容する反応室64が形成されている。反応室64の上部には、加熱手段65が配されている。また、反応室64の上端部は封止されている。
【0122】
蓄熱材室63の下方には、図7に左側に、VOCを含むガスが給気される給気口68が設けられており、また、右側には、蓄熱材室63からガスが排出される排気口69が設けられている。これら給気口68及び排気口69により、給排気ユニット70が形成されている。本実施形態においては、給排気ユニット70は、反応室64及び蓄熱材室63に直列に並んだ状態で固定されている。
【0123】
分解触媒67、被毒性低下物質66及び蓄熱材62は概ね円板状をなしている。分解触媒67、被毒性低下物質66及び蓄熱材62には、その板厚方向と直交する方向に延びて、中心を貫通する回転軸71が設けられている。
【0124】
本実施形態においては、分解触媒67、被毒性低下物質66及び蓄熱材62は、反応室64及び蓄熱材室63の内部において、回転軸71を中心として、図7における上方から見て時計回り方向(図7の矢線D参照)に回転可能に収容されている。これにより、分解触媒67、被毒性低下物質66及び蓄熱材62と、給排気ユニット70とは、相対的に回転可能になっている。
【0125】
上記以外の構成については、実施形態1と略同様なので、同一部材については同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0126】
本実施形態においては、まず、給気口68からガスが蓄熱材室63に給気されると、ガスは、蓄熱材室63を通って反応室64へと流通する。反応室64のうち蓄熱材室63と反対側に位置する端部は封止されているので、ガスは反応室64へと達したのち、蓄熱材室63から排気口69へと流通し、排気口69から排気される。これにより、給気口68から蓄熱材室63を経て反応室64へとガスが流れる領域においては第1の状態が実現され、反応室64から蓄熱材室63を経て排気口69へとガスが流れる領域においては、第2の状態が実現される。
【0127】
次いで、分解触媒67及び蓄熱材62を、回転軸71を軸として回転させる。すると、分解触媒67及び蓄熱材62と、給排気ユニット70とを相対的に回転する。すると、分解触媒67及び蓄熱材62のうち、第1の状態でガスが流れていた領域に排気口69が位置し、第2の状態でガスが流れていた領域に給気口68が位置するようになる。すると、これまで第1の状態でガスが流れていた領域においては、反応室64から蓄熱材室63を経て排気口からガスが排気されることにより、第2の状態が実現される。一方、これまで第2の状態でガスが流れていた領域においては、給気口68から蓄熱材室63を経て反応室34へとガスが流通することにより、第1の状態が実現される。
【0128】
このように、分解触媒67及び蓄熱材62と、給排気ユニット70とを相対的に回転させることにより、第1の状態と、第2の状態とを交互に生ずるようにすることができる。
【0129】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)蓄熱材室のうち、反応ガスの流れ方向について上流側の温度は、触媒毒の沸点以上であってもよい。
(2)反応室と、蓄熱材室とは、別体に形成されて、流通経路で接続される構成としてもよい。これにより、反応室のメンテナンスと、蓄熱材室のメンテナンスを個別に行うことができるので、メンテナンス性が向上する。
また、ガスの流れ方向について複数の蓄熱材室を設け、それぞれの蓄熱材室に蓄熱材を収容してもよい。
また、ガスの流れ方向に並ぶ複数の蓄熱材室の一つに、被毒性低下物質を収容する構成としてもよい。これにより、蓄熱材と、被毒性低下物質のメンテナンスを個別に行うことができるので、メンテナンス性を向上させることができる。
さらに、反応室、蓄熱材が収容された蓄熱材室、及び被毒性低下物質が収容された蓄熱材室を、各蓄熱材室に個別に設けた加熱手段や、冷却手段により、個別に温度制御する構成としてもよい。
(3) 反応室と一体に蓄熱材室を設けてその中に被毒性低下物質を収容すると共に、さらに別体の蓄熱材室を設けてその中に蓄熱材を収容する構成としてもよい。これにより、被毒性低下物質については、反応室での加熱手段からの輻射熱と、VOCの分解熱からの熱を受けやすくなる。これにより、高温燃焼が長時間継続されて、被毒性低下物質全体が200℃を大幅に上回った場合でも、別体に形成された蓄熱材室に収容された蓄熱材の温度を冷却手段により200℃以下に制御することが可能となる。
(4)反応室又は蓄熱材室は、二塔式であってもよく、また、四塔以上の多塔式であってもよい。このとき、1つの反応室に各蓄熱材室が接続される構成としてもよく、また、各蓄熱材室に対して個別に反応室が接続される構成としてもよい。
(5)実施形態3においては、給排気ユニット70を固定して、分解触媒67、被毒性低下物質66及び蓄熱材62を回転させる構成としたが、これに限られず、分解触媒67、被毒性低下物質66及び蓄熱材62を固定して、給排気ユニット70を回転させる構成としてもよい。また、分解触媒67、被毒性低下物質66及び蓄熱材62と、給排気ユニット70との双方を回転させる構成としてもよい。
(6)分解触媒によるVOCの分解反応は、酸化分解に限られず、無酸素雰囲気下におけるVOCの分解反応であってもよく、任意の分解反応を利用できる。
(7)蓄熱室全体を200℃以上600℃以下に維持してもよい。
【符号の説明】
【0130】
10,40,60…ガス処理装置
18,48…第1分解触媒(分解触媒)
19,49…第2分解触媒(分解触媒)
22…内側容器
23…外側容器
26…第1三方バルブ(切り替え手段)
27…第2三方バルブ(切り替え手段)
29…隔壁
32…蓄熱材
32A,43A…第1蓄熱材(蓄熱材)
32B,43B…第2蓄熱材(蓄熱材)
33A,43A…第1蓄熱材室(蓄熱材室)
33B、43B…第2蓄熱材室(蓄熱材室)
34,44,64…反応室
35,65…加熱手段
36A,46A…第1被毒性低下物質(被毒性低下物質)
36B,46B…第2被毒性低下物質(被毒性低下物質)
42C…第3蓄熱材(蓄熱材)
43…蓄熱材室
43C…第3蓄熱材室(蓄熱材室)
46C…第3被毒性低下物質(被毒性低下物質)
50…第3分解触媒(分解触媒)
52…バルブ(切り替え手段)
66…被毒性低下物質
67…分解触媒
68…給気口
69…排気口
70…給排気ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
揮発性有機化合物を含んだガスが流通する蓄熱材を収容した蓄熱材室と、前記揮発性有機化合物を分解させる分解触媒が収容されて前記分解触媒を加熱する加熱手段を有する反応室とを備え、前記蓄熱材を通ったガスが引き続き前記反応室に流れる第1の状態と、前記反応室を通ったガスが引き続き前記蓄熱材に流れる第2の状態とが交互に生ずるようにされ、前記第2の状態において前記蓄熱材を加熱すると共に前記第1の状態で前記蓄熱材によって前記反応室に向かうガスを加熱するようにしたガス処理装置において、
前記蓄熱材は、前記ガスに含まれていて前記分解触媒を被毒する触媒毒の、前記分解触媒に対する被毒性を、前記触媒毒を化学変化させることにより低下させる被毒性低下物質を含み、前記被毒性低下物質は前記蓄熱材を兼ねるガス処理装置。
【請求項2】
前記蓄熱材は、被毒性が低下された前記触媒毒を吸着可能である請求項1に記載のガス処理装置。
【請求項3】
前記被毒性低下物質は、ゼオライト、活性アルミナ、ケイ酸カルシウム水和物、粘土鉱物からなる群から選択される少なくとも1種を含む請求項1または請求項2に記載のガス処理装置。
【請求項4】
前記蓄熱材のうち前記被毒性低下物質の温度は200℃以上600℃以下に維持されている請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載のガス処理装置。
【請求項5】
前記被毒性低下物質は、前記蓄熱材のうち前記反応室に向かう前記ガスの流れの下流側に配されており、前記蓄熱材の温度は、前記反応室に向かう前記ガスの流れの上流側において、前記触媒毒の沸点よりも低くなるように維持されている請求項4に記載のガス処理装置。
【請求項6】
前記蓄熱材室は、前記反応室について前記ガスが流通する方向の両側の位置に配されて、それぞれ第1蓄熱材室、及び第2蓄熱材室とされており、更に、前記ガスを前記第1蓄熱部、前記反応室、前記第2蓄熱部の順に流通させる第1経路、及び、前記ガスを前記第2蓄熱部、前記反応室、前記第1蓄熱部の順に流通させる第2経路、を切り替える切り替え手段を備えた請求項4または請求項5に記載のガス処理装置。
【請求項7】
内側容器と、前記内側容器を外側から隙間を有して覆う外側容器と、を有し、前記内側容器の内部には前記反応室が設けられている請求項4ないし請求項6のいずれか一項に記載のガス処理装置。
【請求項8】
前記内側容器には、前記蓄熱材室が更に設けられている請求項7に記載のガス処理装置。
【請求項9】
前記内側容器の内部は、前記ガスが流通可能な隙間を有して隔壁で仕切られている請求項7または請求項8に記載のガス処理装置。
【請求項10】
前記蓄熱材室は複数設けられると共に前記反応室に対して並設されており、前記蓄熱材室及び前記反応室への前記ガスの流入方向及び排出方向を切り替える切り替え手段を備えた請求項5に記載のガス処理装置。
【請求項11】
前記反応室と前記蓄熱材室は一体に形成されると共に互いに直列に配されており、前記反応室及び前記蓄熱材室の内部には、分解触媒及び蓄熱材が一体に積層されて収容されており、前記反応室と前記蓄熱材前記反応室のうち前記蓄熱材室と反対側に位置する端部は封止されており、前記蓄熱材室について前記反応室と反対側の端部には、前記ガスを前記蓄熱材室に供給する給気口と、前記ガスを前記蓄熱材室から排出する排気口とが設けられた給排気ユニットが、前記反応室及び前記蓄熱材室と直列に配されており、前記分解触媒及び前記蓄熱材と、前記給排気ユニットとは、互いの並び方向を軸として相対的に回転可能に配設されている請求項4または請求項5に記載のガス処理装置。
【請求項12】
前記分解触媒は、白金、パラジウム、鉄、チタン、ジルコニウム、マンガン、銅、コバルト、ニッケル、セリウム、インジウム、タングステン、スズ、マグネシウム、カルシウム、ナトリウムの金属、および金属酸化物からなる群から選択される少なくとも1種を含む請求項1ないし請求項11のいずれか一項に記載のガス処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−201373(P2010−201373A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−50892(P2009−50892)
【出願日】平成21年3月4日(2009.3.4)
【出願人】(000213297)中部電力株式会社 (811)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】