ガス分解素子、アンモニア分解素子、発電装置および電気化学反応装置
【課題】小型の装置で、大きな処理能力を有し、NOx、二酸化炭素の発生のおそれなく、低いランニングコストで稼動することができる、ガス分解素子、アンモニア分解素子、および、発電装置を提供する。
【解決手段】ガス分解素子は、多孔質のアノード2と、アノードと対をなす、多孔質のカソードと、アノードとカソードとの間に位置し、イオン導電性をもつイオン導電材1とを備え、アノード2が、表面酸化された金属粒連鎖体21を含む。
【解決手段】ガス分解素子は、多孔質のアノード2と、アノードと対をなす、多孔質のカソードと、アノードとカソードとの間に位置し、イオン導電性をもつイオン導電材1とを備え、アノード2が、表面酸化された金属粒連鎖体21を含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス分解素子、アンモニア分解素子、発電装置および電気化学反応装置に関し、より具体的には、ガスを効率よく分解することができるガス分解素子、NOxの発生なしにアンモニアを分解できるアンモニア分解素子、所定のガスの分解反応に基づく発電装置、および流体(ガス、液体など)についての電気化学反応装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
アンモニアは農業や工業に不可欠の化合物であるが、ヒトには有害であるので、水中や大気中のアンモニアを分解する方法が、多く開示されてきた。たとえば、高濃度のアンモニアを含む水からアンモニアを分解除去するために、噴霧状のアンモニア水を空気流と接触させて空気中にアンモニアを分離して、次亜臭素酸溶液または硫酸と接触させる方法が提案されている(特許文献1)。また、上記と同じプロセスで空気中にアンモニアを分離して触媒により燃焼させる方法の開示もなされている(特許文献2)。また、アンモニア含有排水を触媒を用いて分解して、窒素と水とに分解する方法が提案されている(特許文献3)。アンモニア分解反応の触媒については、遷移金属成分を含む多孔質カーボン粒子、マンガン組成物、鉄−マンガン組成物(特許文献3)、クロム化合物、銅化合物、コバルト化合物(特許文献4)、アルミナ製3次元網状構造体に担持された白金(特許文献5)などが公表されている。上記の触媒を用いた化学反応によってアンモニアを分解する方法では、窒素酸化物NOxの生成を抑えることができる。さらに、触媒に二酸化マンガンを用いることによって、100℃以下で、より効率的にアンモニアの熱分解を促進する方法も提案されている(特許文献6、7)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−31966号公報
【特許文献2】特開平7−116650号公報
【特許文献3】特開平11−347535号公報
【特許文献4】特開昭53−11185号公報
【特許文献5】特開昭54−10269号公報
【特許文献6】特開2006−231223号公報
【特許文献7】特開2006−175376号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の中和剤などの薬液を用いる方法(特許文献1)、燃焼する方法(特許文献2)、触媒を用いた熱分解反応による方法(特許文献3〜7)などによれば、アンモニアの分解は可能である。しかし、上記の方法では、薬品や外部エネルギー(燃料)を必要とし、さらに触媒の定期的交換を要し、ランニングコストが高いという問題がある。また、装置が大掛かりとなり、たとえば既存の設備に付加的に設ける場合に配置が難しい場合も生じる。また、わが国では、装置の小型化は能率を害さないかぎり、実用上、大きな利益をもたらす場合が多く、通例、高い評価を受ける。またアンモニアを燃焼する方法などでは、二酸化炭素、NOxを排出する問題も発生する。
【0005】
本発明は、(1)小型の装置で、大きな処理能力を有し、(2)低いランニングコストで稼動することができる、ガス分解素子、なかでもとくにアンモニアを対象とするアンモニア分解素子、これらの分解素子のうち電力を生じる素子を用いた発電装置、および流体(ガス、液体など)についての電気化学反応装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のガス分解素子は、ガスを分解するために用いられる。この素子は、多孔質のアノードと、アノードと対をなす、多孔質のカソードと、アノードとカソードとの間に位置し、イオン導電性をもつイオン導電材とを備え、アノードおよび/またはカソードが、表面酸化された金属粒連鎖体を含むことを特徴とする。
【0007】
金属粒連鎖体は、金属粒が連らなってできた数珠状の細長い金属体をいう。表面酸化された状態では、その金属粒連鎖体の表面が酸化されており、中身(表層の内側の部分)は酸化されずに金属の導電性を保持している。このため、たとえば(A1)金属粒連鎖体をアノードに含有させた場合、アノードにおいて、イオン導電材から移動してくる陰イオンと、アノード外部からアノードへと導かれる流体の中の分子との化学反応を、金属粒連鎖体の酸化層によって促進させ(触媒作用)、かつ陰イオンを参加させてアノードでの化学反応を促進させる(電荷による促進作用)。そして、その化学反応の結果、生じる電子の導電性を、金属粒連鎖体の金属部分で確保することができる。この結果、アノードにおける電荷の授受を伴う電気化学反応を、全体的に促進することができる。
また、(A2)金属粒連鎖体をカソードに含有させた場合、カソードにおいて、カソード外部からカソードへと導かれる流体の中の分子の化学反応を、金属粒連鎖体の酸化層によって促進させ(触媒作用)、かつ外部回路からの電子の導電性を向上させて、当該電子を参加させてカソードでの化学反応を促進させる(電荷による促進作用)。そして、当該分子から効率よく陰イオンを生じて、イオン導電材へと送り出すことができる。このため、上記アノードに含ませる場合と同様に、カソードにおける電荷の授受を伴う電気化学反応を、全体的に促進することができる。どのような場合に、金属粒連鎖体をカソードに含ませるかは、分解対象のガスによって変わる。(A3)金属粒連鎖体をアノードおよびカソードに含有させた場合は、上記(A1)および(A2)の効果を得ることができる。
上記の電気化学反応は、陰イオンのイオン導電材を移動する速度または移動時間で律速される場合が多い。陰イオンの移動速度を大きくするために、上記のガス分解素子は、加熱機器たとえばヒータを備え、高温、たとえば600℃〜800℃にするのが普通である。高温にすることで、イオン移動速度だけでなく、電極での電荷授受をともなう化学反応も促進される。
上記イオン導電材からアノードへと移動してくる陰イオンは、上述のように、カソードでの化学反応によって発生し、供給される。カソードにおいて導入された流体中の分子と電子とが反応して陰イオンが生成する。生成した陰イオンは、イオン導電材中をアノードへと移動する。カソードでの反応に参加する電子は、アノードとカソードとを連絡する外部回路(蓄電器、電源、電力消費機器を含む)から入ってくる。上記電気化学反応は、燃料電池としての発電反応であってもよいし、または電気分解反応であってもよい。
【0008】
ここで、金属粒連鎖体は、強磁性金属イオンおよび還元性イオンを含む溶液において、その強磁性金属イオンを金属に還元して析出させて得ることができる。その析出する金属は、析出初期は微粒子であるが、所定サイズに成長すると強磁性体となり磁性力によって数珠状またはひも状に連なる。その後は、溶液中の強磁性金属イオンは、その数珠状の析出体に対して、全体的に成長層を加えてゆく。このため金属粒と金属粒の境目のくびれは、少し太くなり、凹凸の程度が小さくなり、全体的に滑らかになる。たとえば、金属粒連鎖体は、3価のチタンイオンなどを還元剤とする還元性溶液に、強磁性の金属イオンを共存させて当該金属イオンを金属体として析出させることで形成される。
したがって、上記の金属粒連鎖体における金属は、強磁性体となり得るもの(金属、合金など)である。アノードは、イオン導電性セラミックスと、表面酸化された連鎖状金属粉末とを含む焼結体で形成される場合が多い。
【0009】
アノードの表面酸化された金属粒連鎖体が、アノード反応に対する触媒作用と、アノード反応の結果生じる電子に対して導電性とを有するため、全体の電気化学反応が促進され、小型の素子で、大きな処理能力を確保することができる。また、分解対象のガスは、アノードまたはカソードのどちらかに導入するが、対をなす相手側の電極へ導入する流体を、NOx、二酸化炭素などの発生のないものに限定することができる。分解対象のガスは、アノードまたはカソードに導入されるが、本発明に係るアノードでは、少なくともアノードでの反応を促進させることができる。また、上記の分解反応では、中和剤などは不要であり、反応物を取り出す必要もないので、低いランニングコストで稼動することができる。
【0010】
上記のアノードおよび/またはカソードを、ニッケル(Ni)を主成分とする金属粒連鎖体と、イオン導電性セラミックスとを含む焼結体とすることができる。これによって、たとえばアノードに適用した場合、アノードの全位置で、流体の流通性を確保して、流体中の分子と上記陰イオンとの反応を、触媒作用と電子導電性とを確保しながら、進行させることができる。
【0011】
上記のカソードおよび/またはアノードを、銀(Ag)を含む材料で構成することができる。これによって、たとえばカソードに銀を含ませた場合、カソードにおける流体中の分子と電子との反応を、Agによる触媒作用を受けて促進させることができる。このため、カソードに導入された流体中の分子から陰イオンを効率よく生成して、イオン導電材を介してアノードへと十分な量を供給することができる。
【0012】
アノードと、イオン導電材と、カソードとで、平板を形成する態様としてもよい。これによって、平板のサイズ、平板の積層数などを増減することで、ガス排出装置に応じて、分解容量を調整することができる。この平板は典型的な形状のMEA(Membrane Electrode Assembly)に該当する。なお、MEAは平板に限定されず、このあと筒体のMEAを説明する。
【0013】
アノードと、イオン導電材と、カソードとが、筒体を形成する態様を採ることができる。すなわち、(アノード/イオン導電材/カソード)は筒体のMEAを構成する。筒体は、ガス分解素子にするとき、シール部材を筒体の端部に配置するだけでよいので、シール部材(高温用なので、通常、ガラス系材料)と、筒体MEAとの熱膨張差で破損することが防止される。一般に平板のMEAの場合、シール部材を広い範囲に配置するので、平板のサイズが少し大きくなると、たとえシール部材を構成するガラス材の熱膨張率を極力合わせても、熱膨張差によって破損が生じやすくなる。筒体は、上記のように、シール部材は端部だけで済むので、熱膨張差で生じる応力は限定的である。また、筒体は、積層形態では用いられないので、寸法許容精度はそれほど厳格には要求されない。また、長手方向に筒体を比較的容易に伸ばせるので、反応容量等を容易に拡大することができる。また、上記の筒体を、複数、並べることでも、反応容量を大きくすることができる。筒体のMEAは、上記シール部材の問題がない場合でも、平板MEAに比べて、装置に組み上げやすく、製造歩留まりを高くすることができ、また長期間の使用における耐久性に優れている。筒体は、どのような形状でもよく、たとえば直円筒、曲円筒など、筒であればどのようなものでもよい。
【0014】
アノードが筒体の内面側に、またカソードが筒体の外面側に位置することができる。アンモニア分解等の場合、低濃度でも外部に漏れるアンモニアは異臭を放つので、筒の内側を通すのがよい。カソードには酸化性ガス、たとえば酸素ガスが導入される場合が多く、空気中の酸素を用いることが多いので酸素との接触などの点から外面側に配置するのがよい。ただし、分解対象のガスによっては、逆の場合、またはその他の形態の配設をとらなければならない場合もある。
【0015】
上記のアノードおよび/またはカソードの、イオン導電材と反対側に、多孔質金属体の集電体を配置することができる。これによって、実際に世の中で用いられるガス分解素子において、流体または気体の流通性を、集電体/電極(アノード、カソード)の部分で、確保することができる。さらに、集電体/電極(アノード、カソード)の部分で、高い電子伝導性を確保することができるため、電力発生(燃料電池)、または電力消費(電気分解装置)の、電力の授受を損失なく確実に行うことができる。
【0016】
多孔質金属体を金属めっき体とすることができる。これによって、気孔率が高い多孔質金属体を得ることができ、圧力損失を抑制することが可能になる。金属めっきによる多孔体は、骨格部を金属(Ni)めっきで形成するので、厚みを薄くした範囲で制御しやすいので、容易に気孔率を大きくすることができる。金属めっき多孔体については、後述する。
【0017】
上記のアノードに第1の流体が導入され、カソードに第2の流体が導入され、イオン導電材が酸素イオン導電性を有し、カソードとアノードから電力の取り出しができる構成とすることができる。これによって、分解対象のガスを燃料とし、ガス分解素子によって燃料電池を構成して発電を行うことができる。
【0018】
ヒータを備え、該ヒータに電力を供給することができる。これによって、エネルギー効率の優れたガス分解を行うことができる。
【0019】
上記のアノードに第3の流体が導入され、カソードに第4の流体が導入され、イオン導電材が酸素イオン導電性を有し、カソードおよびアノードから電力を投入することができる。これによって、電力を消費して分解対象のガスを分解することができる。この場合のガス分解素子は、アノードとカソードとで、第3および第4の流体の電気分解を行うことになる。分解対象のガスと、電気化学反応に与るイオンを供給する流体(空気(酸素)、水分)との電気化学的関係に応じて、電気分解とするか燃料電池とするか、決まる。たとえば、第3の流体にアンモニア、また第4の流体に炭酸ガスを用いて、両方(アンモニアおよび炭酸ガス)の分解を行うことができる。
【0020】
本発明のアンモニア分解素子は、上記のいずれかのガス分解素子を備え、アノードにアンモニアを含む流体が導入され、カソードに酸素原子を含む流体が導入されることを特徴とする。これによって、カソードで発生させた酸素イオンをアノードに移動させて、アノードにおいてアンモニアと酸素イオンとを、金属酸化層による触媒作用、およびイオンによる促進作用のもとで反応させて、さらに反応の結果生じる電子を速やかに移動させることができる。
【0021】
本発明の発電装置は、上記の電力の取り出しができるガス分解素子を備え、電力を他の電気装置に供給するための電力供給部品を備えることを特徴とする。これによって、ガス分解素子を発電装置として用いることができる。ここで、電力供給部品は、配電用の配線、端子などでもよい。
【0022】
本発明の電気化学反応装置は、流体(気体、液体など)についての電気化学反応装置であって、上述のいずれかのガス分解素子(アンモニア分解素子もガス分解素子とする)を用いたことを特徴とする。これによって、今後、流体分解、および流体分解に伴う電力発生(=燃料電池)の分野で、その基礎となる電極材料等に用いられて、電気化学反応の効率向上、装置の小型化、低いランニングコスト等を得ることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明のガス分解素子によれば、小型の装置で、大きな処理能力を有し、低いランニングコストで稼動することができる。とくにアンモニア、NOx等については好適に用いることができる。また上記の分解素子のうち電力を生じる素子については発電装置、そしてさらには一般的な電気化学反応装置として用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施の形態1におけるガス分解素子を示す断面図である。
【図2】図1のガス分解素子を燃料電池にして、アンモニアを分解する状態を説明するための図である。
【図3】実施の形態1のガス分解素子におけるアノードの特徴を説明するための図である。
【図4】実施の形態1のガス分解素子におけるカソードの特徴を説明するための図である。
【図5】本発明の実施の形態2において、ガス分解素子を電気分解素子として用いた例を示す図である。
【図6】本発明の実施の形態3におけるガス分解素子を示す断面図である。
【図7】図6の円筒MEAの内面側電極(アノード)の集電体を示し、(a)は1枚のシート状Niめっき多孔体を巻いた形態、(b)は環状Niめっき多孔体と棒状Niめっき多孔体との組み合わせの形態、を示す図である。
【図8】円筒MEAの製造方法を示すフローチャートである。
【図9】図6に示すアンモニア分解装置を示す図であり、(a)は1つの円筒MEAを用いる場合、(b)は複数の円筒MEAを用いる場合、を示す図である。
【図10】本発明の実施の形態4におけるガス分解素子を示す断面図である。
【図11】実施の形態4のガス分解素子におけるカソードを説明するための図である。
【図12】実施の形態4のガス分解素子におけるアノードを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1におけるガス分解素子10を示す図である。このガス分解素子10では、イオン導電性の電解質1をはさんで、アノード2と、カソード5とが、配置されている。アノード2の外側にはアノード集電体11が、また、カソード5の外側にはカソード集電体12が配置されている。アノード2は、金属粒連鎖体21とイオン導電性のセラミックス(金属酸化物)22とを主構成材とする焼結体であり、流体が流通できる多孔質体である。また、カソード5は、やはり流体が流通できる多孔質体である。カソード5は、たとえば銀(Ag)51とイオン導電性のセラミックス52とを主構成材とする焼結体とするのがよい。アノード集電体11およびカソード集電体12は、ともに多孔質金属体とするのがよい。多孔質金属体には、たとえば三角柱状の骨格が3次元に連なった連続気孔を持つ金属多孔体があり、その典型材として、たとえば住友電気工業(株)製のセルメット(商標登録)を用いることができる。
電解質1は、固体酸化物、溶融炭酸塩、リン酸、固体高分子、電解液など、イオン導電性があれば何でもよい。このガス分解素子10は、表1に示すように、燃料電池として作動させることもできるし、電気分解装置として作動させることもできる。
【0026】
【表1】
【0027】
本実施の形態1では、図2に示すように、ガス分解素子10を燃料電池として用いる場合について説明する。この場合、燃料電池での名称を参考のために示すと、アノード2は燃料極、カソードは空気極と呼ばれるが、本説明では、アノード2およびカソード5の用語を用いる。図2において、分解対象の流体(ガス)は、アノード2に導入され、また酸素イオンを供給するための流体はカソードに導入される。導入された流体は、アノード2(カソード5)で所定の反応をした後、放出される。所定の反応は、発電を伴う電気化学反応であり、アノード集電体11およびカソード集電体12から電力を取り出し、負荷に電力を供給することができる。すなわちガス分解素子10は燃料電池として機能する。
【0028】
表1は、本発明のガス分解素子または電気化学反応装置が用いられる、一部の反応例を示す表である。表1に示す電気化学反応の、R1〜R4、R6が、電力を発生する燃料電池反応に該当する。発生した電力の負荷としては、ガス分解素子10に内蔵される、図示しない加熱装置、たとえばヒータとすることができる。表1は、このあとの電気化学反応を説明するのに、適宜、引用する。
【0029】
アノード2は、表面酸化されて酸化層を有する金属粒連鎖体21と、酸素イオン導電性のセラミックス22とを主成分とする焼結体である。酸素イオン導電性のセラミックス22としては、SSZ(スカンジウム安定化ジルコニア)、YSZ(イットリウム安定化ジルコニア)、SDC(サマリウム安定化セリア)、LSGM(ランタンガレート)、GDC(ガドリア安定化セリア)などを用いることができる。また、カソード5は、銀(Ag)51と、酸素イオン導電性のセラミックス52とを主成分とする焼結体とする。この場合の酸素イオン導電性のセラミックス52として、LSM(ランタンストロンチウムマンガナイト)、LSC(ランタンストロンチウムコバルタイト)、SSC(サマリウムストロンチウムコバルタイト)などを用いるのがよい。電解質1は、酸素イオン導電性がある、固体酸化物、溶融炭酸塩、リン酸、固体高分子などを用いることができるが、固体酸化物は小型化でき、取り扱いが容易なので好ましい。固体酸化物1としては、SSZ、YSZ、SDC、LSGM、GDCなどを用いるのがよい。
【0030】
本実施の形態では、分解対象のガスはアンモニア(NH3)とし、酸素イオンを供給する気体は、空気すなわち酸素(O2)とする。表1における反応R1に該当する。アノード2に導入されたアンモニアは、2NH3+3O2−→N2+3H2O+6e−の反応(アノード反応)をする。反応後の流体であるN2+3H2Oはアノードから放出される。また、カソード5に導入された空気の中の酸素は、O2+2e−→2O2−の反応(カソード反応)をする。酸素イオンは、カソード5中のLSM52から固体電解質1を通って、アノード2に到達する。アノード2に到達した酸素イオンは、アンモニアと上記反応をして、アンモニアは分解される。分解されたアンモニアは、窒素ガスおよび水蒸気(H2O)となって、放出される。アノード2で生成した電子e−は、負荷5を経てカソード5に向かって流れる。上記の反応の結果、アノード2とカソード5との間に電位差が生じ、カソード5は、アノード2よりも電位が高くなる。
【0031】
(本発明の実施の形態のポイント)
図3は、アノード2を構成する材料の役割を説明するための図であり、本発明の実施の形態の特徴点を示す。アノード2は、表面酸化された金属粒連鎖体21と、SSZ22との焼結体で構成される。金属粒連鎖体21の金属は、ニッケル(Ni)とするのがよい。Niに鉄(Fe)を少し含むものであってもよい。さらに好ましくはTiを2〜10000ppm程度の微量含むものである。(1)Ni自体、アンモニアの分解を促進する触媒作用を有する。また、FeやTiを微量含むことでさらに触媒作用を高めることができる。さらに、このNiを酸化させて形成されたニッケル酸化物は、これら金属単味の促進作用をさらに大きく高めることができる。(2)上記の触媒作用に加えて、アノードにおいて、酸素イオンを分解反応に参加させている。すなわち、分解を電気化学反応のなかで行う。上記のアノード反応2NH3+3O2−→N2+3H2O+6e−では、酸素イオンの寄与があり、アンモニアの分解速度を大きく向上させる。(3)アノード反応では、自由な電子e−が生じる。電子e−がアノード2に滞留すると、アノード反応の進行は、妨げられる。金属粒連鎖体21は、ひも状に細長く、酸化層21bで被覆された中身21aは良導体の金属(Ni)である。電子e−は、ひも状の金属粒連鎖体の長手方向に、スムースに流れる。このため、電子e−がアノード2に滞留することはなく、金属粒連鎖体21の中身21aを通って、外に流れる。金属粒連鎖体21により、電子e−の通りが、非常に良くなる。要約すると、本発明の実施の形態における特徴は、アノードにおける次の(1)、(2)および(3)にある。
(1)ニッケル粒連鎖体のニッケル酸化層による分解反応の促進(高い触媒機能)
(2)酸素イオンによる分解促進(電気化学反応の中での分解促進)
(3)金属粒連鎖体のひも状良導体による電子の導通性確保(高い電子伝導性)
上記の(1)、(2)および(3)によって、アノード反応は非常に大きく促進される。
【0032】
温度を上げて、触媒に分解対象ガスを接触させるだけで、その分解対象ガスの分解は進行する。それは先行文献に開示されており、上記したように周知である。しかし、上記のように、燃料電池を構成する素子において、カソード5からイオン導電性の固体電解質1を経て、酸素イオンを反応に関与させ、その結果、生じる電子を外に導通させることで、分解反応速度は飛躍的に向上する。上記の(1)、(2)および(3)の機能、およびその機能をもたらす構成をもつことが、本発明の大きな特徴である。
【0033】
図4は、カソード5を構成する材料の役割を説明するための図である。本発明の実施の形態の、アノード以外の部分の特徴を示す。本実施の形態におけるカソード5は、Ag粒子51と、LSM52とで構成される。この中で、Ag51はカソード反応O2+2e−→2O2−を大きく促進させる触媒機能を有する。この結果、カソード反応は非常に大きい速度で進行することができる。カソードにAgを含ませる特徴は、上記の特徴(1)〜(3)に付加される、特徴(4)と位置づけられる。
【0034】
上記のアノード2およびカソード5の構成によって、アノード反応およびカソード反応は、非常に高い反応速度で進行する。このため、小型の簡単な構造の素子によって、大量のアンモニアを能率よく分解することができる。しかも、アノードでもカソードでも、NOxや二酸化炭素の発生はなく、環境に対して悪影響を及ぼすおそれはない。さらに、上記のように発電が可能なので、たとえば本実施の形態のガス分解素子10に内蔵されるヒータの電力を外部から供給しなくてもよいか、または外部からの供給量を減らすことができる。このため、エネルギー効率に優れている。また、反応生成物が堆積することもなく、メインテナンスは必要なく、ランニングコストは大幅に低減することができる。
【0035】
次に、上記のガス分解素子10の各部について説明する。
1.アノード
(1)金属粒連鎖体21
金属粒連鎖体21は、還元析出法によって製造するのがよい。この金属粒連鎖体21の還元析出法については、特開2004−332047号公報などに詳述されている。ここで紹介されている還元析出法は、還元剤として3価チタン(Ti)イオンを用いる方法であり、析出する金属粒(Ni粒など)は微量のTiを含む。このため、Ti含有量を定量分析することで、3価チタンイオンによる還元析出法で製造されたものと特定することができる。3価チタンイオンとともに存在する金属イオンを変えることで、所望の金属の粒を得ることができる。Niの場合はNiイオンを共存させる。Feイオンを微量加えると、微量Feを含むNi粒連鎖体が形成される。
また、連鎖体を形成するには、金属が強磁性金属であり、かつ所定のサイズ以上であることを要する。NiもFeも強磁性金属なので、金属粒連鎖体を容易に形成することができる。サイズについての要件は、強磁性金属が磁区を形成して、相互に磁力で結合し、その結合状態のまま金属の析出→金属層の成長が生じて、金属体として全体が一体になる過程で、必要である。所定サイズ以上の金属粒が磁力で結合した後も、金属の析出は続き、たとえば結合した金属粒の境界のネックは、金属粒の他の部分とともに、太く成長する。アノード2に含まれる金属粒連鎖体21の平均直径Dは5nm以上、500nm以下の範囲とするのがよい。また、平均長さLは0.5μm以上、1000μm以下の範囲とするのがよい。また、上記平均長さLと平均径Dとの比は3以上とするのがよい。ただし、これら範囲外の寸法を持つものであってもよい。
(2)表面酸化
表面酸化処理は、(i)気相法による熱処理酸化、(ii)電解酸化、(iii)化学酸化の3種類が好適な手法である。(i)では大気中で500〜700℃にて1〜30分処理するのがよい。最も簡便な方法であるが、酸化膜厚の制御が難しい。(ii)では標準水素電極基準で3V程度に電位を印加し、陽極酸化することにより表面酸化を行うが、表面積に応じ電気量により酸化膜厚を制御できる特徴がある。しかし、大面積化した場合、均一に酸化膜をつけることは難しい手法である。(iii)では硝酸などの酸化剤を溶解した溶液に1〜5分程度浸漬することで表面酸化する。酸化膜厚は時間と温度、酸化剤の種類でコントロールできるが薬品の洗浄が手間となる。いずれの手法も好適であるが、(i)または(iii)がより好ましい。
望ましい酸化層の厚みは、1nm〜100nmであり、より好ましくは10nm〜50nmの範囲とする。ただし、この範囲外であってもかまわない。酸化皮膜が薄すぎると触媒機能が不十分となる。また、わずかな還元雰囲気でもメタライズされてしまう恐れがある。逆に酸化皮膜が厚すぎると触媒性は充分保たれるが、反面、界面での電子伝導性が損なわれ、発電性能が低下する。
(3)焼結
SSZの原料粉末の平均径は0.5μm〜50μm程度とする。
表面酸化された金属粒連鎖体21と、SSZ22との配合比は、mol比で0.1〜10の範囲とする。
焼結方法は、たとえば大気雰囲気中で、温度1000℃〜1600℃の範囲に、30分〜180分間保持することで行う。
2.カソード
(1)銀
Ag粒子の平均径は、10nm〜100nmとするのがよい。
(2)焼結
SSZの平均径は0.5μm〜50μm程度のものを用いるのがよい。
銀と、SSZとの配合比は、0.01〜10程度とするのがよい。
焼結条件は、大気雰囲気で、1000℃〜1600℃に、30分〜180分間程度保持する。
【0036】
(実施の形態2)
図5は、本発明の実施の形態2におけるガス分解素子を示す図である。本実施の形態における反応は、一般的には、表1の反応R5、R7およびR8のように、電気分解反応である。すなわち、このガス分解素子10は、電気分解素子であり、電力を投入してガス(とくに図5の場合はNOx)を分解する。アノード2には空気を導入し、カソード5にはNOxを導入する。実施の形態1の場合は、分解対象ガスをアノード2に導入したが、本実施の形態では、分解対象ガスは、カソード5に導入する。アノード反応は、2O2−→O2+4e−である。またカソード反応は、NOの場合、2NO+4e−→N2+2O2−である。この場合、アノード2の集電体11と、カソード5の集電体12との間に、アノード側が高くなるように、外部から電位差(電圧)を印加する。外部の電源は、ガス分解素子10に対して電力を消費する。表1の番号R8の反応である。
【0037】
上記のように、電力の発生と消費という相違はあるが、アノード2/電解質1/カソード5および集電体11,12の構成は、実施の形態1と同様である。したがって、アノード2について、表面酸化された金属粒連鎖体による、(1)ニッケル酸化物による反応の促進(高い触媒機能)、および(2)金属粒連鎖体のひも状良導体による電子の導通性確保(高い電子伝導性)を得ることができる。また、カソード5について、銀による、カソード反応2NO+4e−→N2+2O2−の促進作用を得ることができる。その結果、小型で簡単な素子によって大量のガスを迅速に処理することができ、環境に悪影響を及ぼす気体の発生がなく、またメインテナンス費用(ランニングコスト)が安価である。
【0038】
表1において、本実施の形態におけるNOxと同様に、番号R7では、カソードにNOxを導入して分解する。このときアノードには、VOC(揮発性有機化合物:volatile organic compounds)を導入する。光化学オキシダントの発生原因という意味ではVOCも有害ガスであり、その意味ではアノードに導入する気体も分解対象ガスということができる。この場合も、電力をガス分解素子に消費することで、ガス分解を進行させることができる。
実施の形態1においても説明したように、触媒のもとで分解対象ガスを分解させることは周知である。しかし、本実施の形態では、電気化学反応において酸素イオンを関与させ、そのアノードに上記(1)および(2)の構成および作用効果を持たせたることで、反応速度を大幅に向上させることができる。
【0039】
(実施の形態3)
図6は、本発明の実施の形態3における電気化学反応装置であるガス除害装置、とくにアンモニア分解装置10を示す図である。このアンモニア分解装置10では、円筒形の固体電解質1の内面を覆うようにアノード(第1電極)2が設けられ、また外面を覆うようにカソード(第2電極)5が設けられて、円筒形MEA7(1,2,5)が形成されている。筒状体は、一般には、らせん状やサーペンタイン状などに曲がりくねっていてもよいが、図6の場合は、直円筒形のMEAである。本実施の形態の電気化学反応装置10では、円筒形のMEA7の内筒を埋めるように、多孔質金属体11が配置されている。円筒形MEAの内径は、たとえば20mm程度であるが、適用する装置に応じて、変えるのがよい。
本実施の形態では、MEA7が円筒形であることに特徴がある。MEA7が円筒形であるため、ガス分解装置10に組み立てるとき、シール部材を筒体の端部に配置するだけでよいので、図示しないシール部材と、筒体MEAとの熱膨張差で破損することが防止される。シール部材は、高温用なので、通常、ガラス系材料が用いられ、熱膨張係数を円筒形MEA7のそれに極力近いものとする。それでも、平板のMEAの場合、シール部材を広い範囲に配置するので、平板のサイズが少し大きくなると、熱膨張差によって破損が生じやすくなる。円筒形MEA7は、上記のように、シール部材は端部だけで済むので、熱膨張差で生じる応力は限定的である。また、円筒形MEAは、積層形態では用いられないので、寸法許容精度はそれほど厳格には要求されない。また、長手方向に円筒形MEA7を比較的容易に伸ばせるので、反応容量等を容易に拡大することができる。また、上記の円筒形MEA7を、複数、並べることでも、反応容量を大きくすることができる。円筒形MEA7は、平板MEAに比べて、装置に組み上げやすく、製造歩留まりを高くすることができ、また長期間の使用における耐久性に優れている。
【0040】
アノード2の集電材である多孔質金属体11は金属めっき体とするのがよい。多孔質金属体11には金属めっき多孔体とくにNiめっき多孔体、すなわち上述のセルメット(登録商標)を用いるのがよい。Niめっき多孔体は、気孔率を大きくとることができ、たとえば0.6以上0.98以下とすることができる。これによって、内面側電極であるアノード2の集電体として機能しながら、非常に良好な通気性を得ることができる。気孔率が0.6未満では、圧力損失が大きくなり、ポンプ等による強制循環をするとエネルギー効率が低下し、またイオン導電材等に曲げ変形等を生じて好ましくない。圧力損失を低減し、イオン導電材の損傷を防止するために、気孔率は、0.8以上とするのがよく、更に好ましい範囲として0.9以上とする。一方、気孔率が0.98を超えると電気伝導性が低下して集電機能が低下する。
【0041】
Niめっき多孔体11とアノード2とは、アンモニア分解のための稼働温度650℃〜950℃で接触して導通していなければならない。この導電接触の条件は、Niの熱膨張率がセラミックスの熱膨張率より大きいので、問題なく満たされる。また、熱膨張率が小さい金属のめっき多孔体を用いた場合でも、円筒MEA7を横置き(軸線水平)する場合には、集電体の上部に隙間があいても下部においては円筒MEAと必ず接触するので、集電機能は維持される。とくにアンモニアを円筒MEAの内面側に流すので、アンモニアの還元作用により、金属多孔体11は表面が酸化されず、常にアノード2と導電接触を維持することができる。
【0042】
図7は、シート状金属多孔体によるアノード集電材11を示す図である。図7(a)は、シート状金属多孔体11を巻いたものであり、シートの端を薄くして巻いたときに軸線に沿うストレート間隙が生じないようにしている。アンモニア除害の場合、除害したあとの出口濃度を10ppm以下にしないと異臭が強く感じられるので、ストレート間隙が生じないようにするのがよい。ストレート間隙があると、アンモニアまたはアンモニア含有気体は、そこを素通りしてしまう。ストレート間隙が生じない限り、金属多孔体11で充填されていれば、アンモニアまたはアンモニア含有気体は、内面を構成するアノード2に接触する可能性が大きくなる。
図7(b)は、シート状金属多孔体を環状に巻いて、内面側多孔体または環状多孔体11aとして、中央部には棒状多孔体11bを挿入する。中央部の棒状多孔体11bの孔の目を、環状多孔体11aのそれより小さくして、中央部よりも外側のアノード2に近づくようにするのがよい。すなわち、棒状多孔体11bを通る気体に対する流れの抵抗を大きくして、流れの抵抗が小さい環状多孔体11aを流れやすくするのがよい。これによって、アンモニア等がアノード2に接触して分解しやすくなる。中央部の棒状多孔体は、多孔体ではない単なる固体棒状体に置き換えてもよい。
【0043】
この電気化学反応装置であるアンモニア分解装置10では、アンモニアを含んだ気体を円筒形MEA7の内面側(アノード2)に導入し、外面側(カソード5)は、空気に触れさせる。図6において、円筒形MEAの外側のスペースSは空気スペースである。カソード5は空気中の酸素(O2)と反応する。円筒形MEA7の内面のアノード2に導入されたアンモニアは、実施の形態1と同様に、酸素イオンと次のアノード反応をする。
(アノード反応):2NH3+3O2−→N2+3H2O+6e−
反応後の気体であるN2+3H2Oは、円筒形の内面側(内筒)を通って流れてゆく。また、外面のカソード5と接触する空気中の酸素は、外部配線から供給される電子e−と、次のカソード反応をする。
(カソード反応):O2+2e−→2O2−
カソード反応の結果、MEA7の外面で生じた酸素イオンO2−は、固体電解質1を経由して、内面側のアノード2へと、厚み方向に沿って移動する。上記の電気化学反応は、温度650℃〜950℃の高温で、実用可能な分解速度を得ることができる。このため、ヒータ等の加熱装置41を備える。
上記のアンモニア分解の電気化学反応は、表1における反応R1に対応する。アンモニア分解の反応は、表1に示すように上記のR1以外に、反応R2,R3,R5がある。反応R2およびR3は、上記の反応R1と同じように、発電をする反応であるが、反応R5は、電力を投入する反応である。なお、半導体製造装置の排気には、アンモニアの他に水素も含まれるので、その場合には、反応R4も並行的に進行し、どちらも発電反応であり、負荷に電力を供給することができる。
【0044】
上記のような円筒形MEA7は、素材自体は脆弱(強度的に)であるが、(a1)円筒形であることによって強度を高めることができる。薄片状のMEAを多段に積層した板状多層MEAに比べて、強度的に安定している。このため、ガス分解装置10に組み立てる際の取り扱いにおいて、少しの力の付加で破損する等の事態が避けられ、(a2)製造歩留まりの向上を得ることができる。板状多層MEAの場合、高い寸法精度がないと、少しの押さえ込みなどによって簡単に破損してしまう。また、組み立てた後でも、稼働と非稼働とのサイクルで、加熱と冷却とを繰り返すので、板状多層MEAの場合は、熱膨張の差により応力集中部から破損しやすい。この点でも、円筒形MEA7は、端部で固定するので、(a3)加工精度はそれほど高くする必要はなく、(a4)加熱と冷却のサイクルで熱膨張の差により破損が発生する応力集中部またはシール部材などによる拘束部は少ない。とくに熱膨張差による応力が高まっても、所定範囲で破損しないで変形することができる。この点、積層平板MEAのように、変形の許容度が小さいものより、頑強である。このため、使用と不使用とを繰り返す長期間にわたる耐久性にも優れている。その上、円筒形MEA7の長さは、容易に伸ばせるので、(a5)反応長を長くすることが容易であり、一つの円筒形MEAの能力を拡大しやすい。
さらに、本実施の形態におけるガス分解装置10では、アンモニアを円筒の内面側に通すので、極低濃度にまで分解することで、アンモニアを密封しながら実際上、消滅させることができる。このため円筒形という簡単な構造を用いることで、上記(a1)〜(a5)を得ることができる。
【0045】
円筒MEA7を形成する材料は、実施の形態1におけるものと同じであり、その作用効果も同じである。
アノード2は、表面酸化されて酸化層を有する金属粒連鎖体21と、酸素イオン導電性のセラミックス22とを主要部とする焼結体とするのがよい。酸素イオン導電性のセラミックス22としては、SSZ(スカンジウム安定化ジルコニア)、YSZ(イットリウム安定化ジルコニア)、SDC(サマリウム安定化セリア)、LSGM(ランタンガレート)、GDC(ガドリア安定化セリア)などを用いることができる。
また、カソード5は、銀(Ag)51と、酸素イオン導電性のセラミックス52とを主成分とする焼結体とするのがよい。この場合の酸素イオン導電性のセラミックス52として、LSM(ランタンストロンチウムマンガナイト)、LSC(ランタンストロンチウムコバルタイト)、SSC(サマリウムストロンチウムコバルタイト)などを用いるのがよい。
固体電解質1は、酸素イオン導電性がある、固体酸化物、溶融炭酸塩、リン酸、固体高分子などを用いることができる。円筒形に焼結されたものを購入する。固体酸化物1としては、SSZ、YSZ、SDC、LSGM、GDCなどを用いるのがよい。
【0046】
上記の材料で形成されたカソード5は、銀粒子51の含有などによって導電率は高い。このため、図6に示すように、カソード5の端にのみ接続端子部55を設けるだけでよい。しかし、アノード2は、導電率の高い材料を含まず導電率が低く、すなわち電気抵抗を示し、集電体11の配置が必要になる。
筒状体の内面側に、有害物質を流す利点を上記のように挙げたが、集電体を筒状体の内面側に確実に配置する技術はこれまで十分にあるとはいえず、むしろ、今後の需要が見込まれるにもかかわらず、これといった技術がない。筒状体の内径は十分大きくないのが普通であり、この中に、(e1)分解対象のガス成分を流して、内面電極と接触させて十分反応させるスペースを確保しながら、(e2)内面電極に接触して導電を確実にとることができる構造の集電体を、(e3)困難な作業を要しないで、簡単に工業的に実現したものは、これまで知られていない。内面側に流すガス成分は、還元性気体であるため、導電をとる作用(e2)を長期間にわたってさらに確実にすることができる。
本実施の形態では、Niめっき多孔体11を用いることで、上記(e1)〜(e3)を容易に実現することができる。
【0047】
次に、図8により、円筒形MEA7の製造方法の概要について説明する。図8には、アノード2、およびカソード5ごとに、焼成を行う工程を示す。まず、市販されている円筒形固体電解質1を購入して準備する。次いで、カソード5を形成する場合は、所定の流動性を持つようにカソード構成材料を溶媒に溶かした溶液を調整して、円筒形固体電解質の内面に均等になるように塗布する。次いで、カソード5に適切な焼成条件で焼成する。このあとアノード2の形成に移る。図6に示す製造方法の他に、多くのバリエーションがある。焼成回数を1回ですます場合で、図8に示すように、各部分ごとに焼成を行うのではなく、塗布状態のまま、各部分を形成して、最後に、各部分の最大公約数的な条件で焼成を行う。この他、多くのバリエーションがあり、各部分を構成する材料と、目標とする分解効率と、製造経費等を総合的に考えて製造条件を決めることができる。
【0048】
図9(a)は、1つの円筒形MEA7を用いた場合のガス除害装置であり、また、図9(b)は、図9(a)に示すものを、複数(12個)、並列に配置した構成のガス除害装置である。1つのMEA7では処理容量が不足する場合に、複数の並列配置は、面倒な加工無しに容量増大をはかることができる。複数のどの円筒形MEA7についても、内面側に金属多孔体11の集電体を装入し、当該内面側にアンモニアを含む気体を流す。図9では、図7(b)に示した形態の金属多孔体11を示したが、金属多孔体11であれば、どのような形態であってもよい。円筒形MEA7の外面側は、スペースSを設けて高温の空気または高温の酸素に触れさせるようにする。円筒形MEA7の内面側をアンモニアを含む気体を流すのであるが、当該気体が素通りしてはアンモニア濃度を極低濃度にすることは難しい。このため、圧力損失とアンモニア出口濃度とを考慮して、図7(b)に示すNiめっき多孔体11a,11bの目の粗さを設定するのがよい。
また、加熱装置であるヒータ41については、複数、並列配置した円筒形MEA7の全体をまとめて結束する態様により、設けることができる。このような全体をまとめて結束する態様をとることで、小型化をはかることができる。
【0049】
(実施の形態4)
図10は、本発明の実施の形態4におけるガス分解装置10を示す断面図である。このガス分解装置10は、NOx分解に用いられるものである。ガス分解装置10は、NOxを含む気体が排気される排気路内に配置され、NOxはカソード3において分解される。排気中に、(カソード3でNOxの分解/アノード2で「所定のガス成分」の分解)、という、NOxと対をなす所定のガス成分が、含まれることは想定していないが、含まれていてもよい。ただ、このような所定のガス成分を、排気路(たとえばマフラー)に意図して導入することはコスト増などを招くので、意図して含ませることはしない。アノード2では、カソード3で生成され固体電解質1を経由して移動してきた酸素イオン等が反応して、酸素分子(酸素ガス)が発生する。ガス分解装置10で用いられる電源からの電力がこの化学反応を駆動する。この分解反応が、実用レベルの反応速度となるように、ガス分解装置は、250℃〜650℃の温度に加熱されて稼働するものとする。
【0050】
通常、図10に示すMEA7は平板であり、積層されて用いられ、各層のMEA7の間に、導電材または集電材となるインターコネクタが挿入される。インターコネクタには、蛇腹状または畝状に加工されたステンレススティール板が用いられるが、上記のNiめっき多孔体11,12を用いてもよい。図10では、インターコネクタ11,12で挟まれた1層のMEA7のみを示しているが、実際は、(インターコネクタ11/MEA7/インターコネクタ12/MEA7/インターコネクタ11)のように、2層のMEAまたはそれ以上の層の積層体の形態で用いられる場合が多い。
この場合、蛇腹状の金属板がMEAに接触する部分は、畝状の平坦頂部であり、蛇腹の凹凸も、またその凹凸のピッチも大きい。MEAは、固体電解質1、アノード2およびカソード3が、薄く、かつ焼結体であるため、脆いことで知られている。蛇腹状の金属板を介在させてMEAを積層した場合、押さえる領域がずれることで、曲げ応力等がMEAに生じて、簡単に破損にいたる。加熱中に温度差に起因する熱応力も加わるので、破損はさらに生じやすい。上記のように、金属めっき体の表面に均等に無数に分散している微小接続部で、両側からMEAを挟んで保持することで、金属めっき体が一種のクッション材のように作用する。このため、MEAに曲げ応力や局所的に高い応力を付加することがない。この結果、金属多孔体は、外力等に対する緩衝材として働き、脆いMEAを安定して確実に保持することができる。
【0051】
本実施の形態例では、図11に示すように、カソード5は、酸素イオン導電性電解質57と、Ni粒連鎖体56aとその酸化層56bとで形成される酸化層付きNi粒連鎖体56とで形成するのがよい。また、図12に示すように、アノード2は、酸素イオン導電性セラミックス27と、触媒の銀粒子26とで形成するのがよい。アンモニア分解では、カソード5に銀粒子が含まれ、アノード2にNi粒連鎖体が含まれたが、NOx分解の本実施の形態では、アノード2に銀粒子26が含まれ、カソード5にNi粒連鎖体56が含まれる点で、実施の形態1、3と相違する。カソード5およびアノード2の材料の具体例は、あとで詳しく説明する。
【0052】
焼結体であるカソード3に接触または進入する混合気体中のNOxは、次の反応をして、酸素イオンを、イオン導電性セラミックス57を経由させて固体電解質1へと送り出す。カソードでは、カソード反応:2NO2+8e−→N2+4O2−、または2NO+4e−→N2+O2−、が生じる。カソード反応で生じた酸素イオンO2−は、電場が形成されている固体電解質1を通ってアノード2に向かう。
一方、アノード2では、固体電解質1を移動してきた酸素イオンO2−同士が、次の反応をする。アノード反応:O2−+O2−→O2+4e−の反応が生じる。電子e−は、アノード2から外部回路を経て、カソード3に至り、上記のカソード反応にあずかる。
上記の電気化学反応は、表1のいずれの反応にも該当しない。
【0053】
排気である混合気体の中に配置されて、カソード3においてNOxを分解し、アノードで酸素ガスを生成する電気化学反応は、電力を投入しないと進行しない電気分解反応である。このために、電源を必要とする。図10に示す電源は、アノード2とカソード3との間に10V〜20Vを印加できればよいが、それより高い電圧、たとえば50V程度の公称電圧のものであってもよい。この電圧印加によって、アノード反応およびカソード反応を含む全体の電気化学反応が促進され、また固体電解質1に形成される電場によって酸素イオンの固体電解質1の移動時間の短縮をはかることができる。固体電解質1内の酸素イオンの移動時間によって、分解反応が律速される場合が多いので、上記の電場による酸素イオンの加速は分解反応速度を向上させる上で効果的である。
【0054】
カソード5は、表面酸化層に被覆されたNi粒連鎖体からなる酸化層付きNi粒連鎖体56と、酸素イオン導電性のセラミックス57とを主成分とする焼結体とするのがよい。酸素イオン導電性のセラミックスとしては、SSZ(スカンジウム安定化ジルコニア)、YSZ(イットリウム安定化ジルコニア)、SDC(サマリウム安定化セリア)、LSGM(ランタンガレート)、GDC(ガドリア安定化セリア)などを用いることができる。酸素イオン導電性セラミックス57の他に、表面酸化した金属粒子、とくに表面酸化した金属粒連鎖体(ひも状)56を加えると、触媒作用の増大と、上記の電子伝導性を高めることができるので、上記のカソード反応を促進することができる。金属粒連鎖体の導電部(酸化層で被覆される金属部)は、Niのみでもよいし、NiにFe、Ti等を含ませたものでもよい。
他方、アノード2は、銀粒子(触媒)26と、酸素イオン導電性セラミックス27とを含む焼結体とするのがよい。酸素イオン導電性セラミックス27としては、LSM(ランタンストロンチウムマンガナイト)、LSC(ランタンストロンチウムコバルタイト)、SSC(サマリウムストロンチウムコバルタイト)などを用いるのがよい。
アノード2およびカソード5に含まれる酸素イオン導電性セラミックスの種類も、本実施の形態のNOx分解の場合、アンモニアの場合とは、逆になっている。
【0055】
(本発明に係る電気化学反応装置が用いられる電気化学反応について)
本発明の電気化学反応装置は、表1に示すすべてのガス分解反応R1〜R8、およびそのほかのガス分解反応に用いることができる。上記実施の形態4は、表1のいずれの反応にも該当せず、アノードには、カソードと同じ、NOxおよび不純物ガスなどが導入される。電圧印加されているので、アノードでは酸素イオン同士が反応して酸素ガスを生成し、放出される。
NOxの分解も含めて、実施の形態4とは異なり、カソードに導入する気体と異なる気体をアノードに導入してもよい。表1によれば、NOx分解の場合、NOxと対をなす相手側ガス(燃料極で分解する気体)に、アンモニアを用いることで、反応R3が可能である。この場合、発電反応なので、外部から電圧を印加する必要がない。このため、外部回路に負荷として加熱用ヒータを配置することができる。また、上記アンモニアに代えて水蒸気、またはVOCを用いることもできる(反応R8、または反応R7)。この場合には、実施の形態4と同様に、電力を投入する必要がある。
【0056】
アンモニアの除害についていえば、R1〜R3、R5の反応が可能である。このうち反応R5は燃料電池反応ではなく電気分解反応であるが、電力の取り出しと投入との相違があるだけで、電気化学反応という点で、上記の実施の形態1と同じである。また、VOC(Volatile Organic Compounds)の分解もできる。これらすべての電気化学反応、およびその他の同様の電気化学反応について、図6または図9の構造のガス分解装置を採用することができる。
【実施例】
【0057】
次に、試験体を用いて実際に検証した例について説明する。用いた試験体は、本発明例A1〜A7、および比較例B1〜B6、の計13体である。いずれも、表2に示すとおりである。
(本発明例A1〜A7):
アノードには、(c1)SSZ(一例のみYSZ)と、(c2)金属粒連鎖体である、鎖状ニッケル(平均鎖太さ10nm〜150nm、平均鎖長1μm〜30μm)、または20wt%の鉄を含む鎖状ニッケル(平均鎖太さ150nm、平均鎖長30μm)との焼結体を用いた。鎖状ニッケルの酸化層の厚みは、いずれも1nm〜5nmとなるように酸化した。この酸化層の形成に際し、上述の1.アノード、(2)表面酸化において説明した(i)気相法による熱処理酸化を用い、大気中で650℃にて20分処理した。上記1nm〜5nmの酸化層の厚み範囲は、上記(2)の説明における望ましい範囲内の薄目の範囲にあり、処理時間を節約しながら上述の有益な作用を確実に得ることができる。また、カソードには、(c3)LSMと、(c4)球状銀(平均直径50nm〜2μm)との焼結体を用いた。温度は800℃という低めの温度、1水準とした。
(比較例B1〜B6):
アノードには、(d1)SSZ(一例のみYSZ)と、(d2)球状ニッケル(平均直径1μm〜2μm)との焼結体を用いた。また、カソードには、(d3)LSMと、(d4)触媒なしか、または球状銀(平均直径1μm〜2μm)との焼結体を用いた。温度は800℃、900℃、1000℃の3水準とした。
上述のように、本発明例A1〜A7に共通する特徴は、アノードの触媒である構成要素(c2)である。さらに、その構成要素(c2)と、カソードの触媒である構成要素(c4)との組み合わせである。そして、これら(c2)および(c2)+(c4)の作用を際立たせるのに、アノードの電解質SSZまたはYSZ、およびカソードの電解質LSMが、有益に作用している。
(評価):
所定のアンモニアを含むセル内において、1cm2当たりの処理能力を測定した。測定方法は、検知管法によりセルより排出されたアンモニア量を測定することにより行った。結果を表2に示す。
【0058】
【表2】
【0059】
表2より、つぎのことが分かる。
(1)アノードの触媒に、鎖状ニッケルを用いることで、球状ニッケルの場合に比較して、100倍程度のアンモニアの分解能力増大が可能となる。
(2)アノードの触媒の鎖状ニッケルの平均鎖太さは、小さいほうが、アンモニア分解能力が高い。たとえば、本発明例A3(平均鎖太さ10nm)は、本発明例A2(平均鎖太さ50nm)よりもアンモニア処理能力が、20%程度高く、また本発明例A1(平均鎖太さ150nm)よりも、50%弱高い。
これに対して、平均鎖長さの影響は明確に認められない。
(3)カソードの触媒の銀粒子を2μmから0.05μm(50nm)へと微細にすることで、アンモニア分解量の大きな増大を得ることができる。たとえば、本発明例A6とA7とを比較すると、アンモニア分解量が約2倍に増大することが分かる。
(4)鉄を含む鎖状ニッケルは、鉄を含まない鎖状ニッケルと、同程度のアンモニア分解能力を持つ。すなわち鉄については含有させても、大きな影響がない。
(5)温度については、比較例において、高温化によるアンモニア分解能力の増大が認められる。温度は、本発明の場合、物質特有の効果とは無関係に普遍的に作用すると考えられるので、本発明例においても、高温にすることで、分解能力は増大すると考えられる。
要約すれば、上記(1)〜(3)により、本発明に係るガス分解素子の優れたアンモニア分解能力が明らかである。また、(5)において言及した温度の作用も得ることができる。さらに、上記(4)は一例であり、他の元素についてアンモニア分解作用を助長する例が得られている。表面酸化された金属粒連鎖体であるかぎり、合金化により良好な作用効果を得ることができると否とにかかわらず、本発明のガス分解素子に該当する。
【0060】
上記において、本発明の実施の形態について説明を行ったが、上記に開示された本発明の実施の形態は、あくまで例示であって、本発明の範囲はこれら発明の実施の形態に限定されない。本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明のガス分解素子によれば、大掛かりな装置を用いずに、小型、かつ簡単な素子により、大量のガスを能率よく分解することができる。メインテナンス費用は低く、また、環境に悪影響を与える副産物のガスは発生することもない。さらに、発電装置としても用いることができるので、このガス分解素子を高温に保持するための加熱装置に電力を供給することも可能である。
【符号の説明】
【0062】
1 イオン導電性電解質(固体酸化物電解質)、2 アノード、5 カソード、10 ガス分解素子、11 アノード集電体、12 カソード集電体、21,56 金属粒連鎖体、21a,56a 金属粒連鎖体の芯部(金属部)、21b,56b 酸化層、22,27 アノードのイオン導電性セラミックス、41 ヒータ、26,51 銀、52,57 カソードのイオン導電性セラミックス、55 外面電極(カソード)端子部、S 空気スペース。
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス分解素子、アンモニア分解素子、発電装置および電気化学反応装置に関し、より具体的には、ガスを効率よく分解することができるガス分解素子、NOxの発生なしにアンモニアを分解できるアンモニア分解素子、所定のガスの分解反応に基づく発電装置、および流体(ガス、液体など)についての電気化学反応装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
アンモニアは農業や工業に不可欠の化合物であるが、ヒトには有害であるので、水中や大気中のアンモニアを分解する方法が、多く開示されてきた。たとえば、高濃度のアンモニアを含む水からアンモニアを分解除去するために、噴霧状のアンモニア水を空気流と接触させて空気中にアンモニアを分離して、次亜臭素酸溶液または硫酸と接触させる方法が提案されている(特許文献1)。また、上記と同じプロセスで空気中にアンモニアを分離して触媒により燃焼させる方法の開示もなされている(特許文献2)。また、アンモニア含有排水を触媒を用いて分解して、窒素と水とに分解する方法が提案されている(特許文献3)。アンモニア分解反応の触媒については、遷移金属成分を含む多孔質カーボン粒子、マンガン組成物、鉄−マンガン組成物(特許文献3)、クロム化合物、銅化合物、コバルト化合物(特許文献4)、アルミナ製3次元網状構造体に担持された白金(特許文献5)などが公表されている。上記の触媒を用いた化学反応によってアンモニアを分解する方法では、窒素酸化物NOxの生成を抑えることができる。さらに、触媒に二酸化マンガンを用いることによって、100℃以下で、より効率的にアンモニアの熱分解を促進する方法も提案されている(特許文献6、7)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−31966号公報
【特許文献2】特開平7−116650号公報
【特許文献3】特開平11−347535号公報
【特許文献4】特開昭53−11185号公報
【特許文献5】特開昭54−10269号公報
【特許文献6】特開2006−231223号公報
【特許文献7】特開2006−175376号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の中和剤などの薬液を用いる方法(特許文献1)、燃焼する方法(特許文献2)、触媒を用いた熱分解反応による方法(特許文献3〜7)などによれば、アンモニアの分解は可能である。しかし、上記の方法では、薬品や外部エネルギー(燃料)を必要とし、さらに触媒の定期的交換を要し、ランニングコストが高いという問題がある。また、装置が大掛かりとなり、たとえば既存の設備に付加的に設ける場合に配置が難しい場合も生じる。また、わが国では、装置の小型化は能率を害さないかぎり、実用上、大きな利益をもたらす場合が多く、通例、高い評価を受ける。またアンモニアを燃焼する方法などでは、二酸化炭素、NOxを排出する問題も発生する。
【0005】
本発明は、(1)小型の装置で、大きな処理能力を有し、(2)低いランニングコストで稼動することができる、ガス分解素子、なかでもとくにアンモニアを対象とするアンモニア分解素子、これらの分解素子のうち電力を生じる素子を用いた発電装置、および流体(ガス、液体など)についての電気化学反応装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のガス分解素子は、ガスを分解するために用いられる。この素子は、多孔質のアノードと、アノードと対をなす、多孔質のカソードと、アノードとカソードとの間に位置し、イオン導電性をもつイオン導電材とを備え、アノードおよび/またはカソードが、表面酸化された金属粒連鎖体を含むことを特徴とする。
【0007】
金属粒連鎖体は、金属粒が連らなってできた数珠状の細長い金属体をいう。表面酸化された状態では、その金属粒連鎖体の表面が酸化されており、中身(表層の内側の部分)は酸化されずに金属の導電性を保持している。このため、たとえば(A1)金属粒連鎖体をアノードに含有させた場合、アノードにおいて、イオン導電材から移動してくる陰イオンと、アノード外部からアノードへと導かれる流体の中の分子との化学反応を、金属粒連鎖体の酸化層によって促進させ(触媒作用)、かつ陰イオンを参加させてアノードでの化学反応を促進させる(電荷による促進作用)。そして、その化学反応の結果、生じる電子の導電性を、金属粒連鎖体の金属部分で確保することができる。この結果、アノードにおける電荷の授受を伴う電気化学反応を、全体的に促進することができる。
また、(A2)金属粒連鎖体をカソードに含有させた場合、カソードにおいて、カソード外部からカソードへと導かれる流体の中の分子の化学反応を、金属粒連鎖体の酸化層によって促進させ(触媒作用)、かつ外部回路からの電子の導電性を向上させて、当該電子を参加させてカソードでの化学反応を促進させる(電荷による促進作用)。そして、当該分子から効率よく陰イオンを生じて、イオン導電材へと送り出すことができる。このため、上記アノードに含ませる場合と同様に、カソードにおける電荷の授受を伴う電気化学反応を、全体的に促進することができる。どのような場合に、金属粒連鎖体をカソードに含ませるかは、分解対象のガスによって変わる。(A3)金属粒連鎖体をアノードおよびカソードに含有させた場合は、上記(A1)および(A2)の効果を得ることができる。
上記の電気化学反応は、陰イオンのイオン導電材を移動する速度または移動時間で律速される場合が多い。陰イオンの移動速度を大きくするために、上記のガス分解素子は、加熱機器たとえばヒータを備え、高温、たとえば600℃〜800℃にするのが普通である。高温にすることで、イオン移動速度だけでなく、電極での電荷授受をともなう化学反応も促進される。
上記イオン導電材からアノードへと移動してくる陰イオンは、上述のように、カソードでの化学反応によって発生し、供給される。カソードにおいて導入された流体中の分子と電子とが反応して陰イオンが生成する。生成した陰イオンは、イオン導電材中をアノードへと移動する。カソードでの反応に参加する電子は、アノードとカソードとを連絡する外部回路(蓄電器、電源、電力消費機器を含む)から入ってくる。上記電気化学反応は、燃料電池としての発電反応であってもよいし、または電気分解反応であってもよい。
【0008】
ここで、金属粒連鎖体は、強磁性金属イオンおよび還元性イオンを含む溶液において、その強磁性金属イオンを金属に還元して析出させて得ることができる。その析出する金属は、析出初期は微粒子であるが、所定サイズに成長すると強磁性体となり磁性力によって数珠状またはひも状に連なる。その後は、溶液中の強磁性金属イオンは、その数珠状の析出体に対して、全体的に成長層を加えてゆく。このため金属粒と金属粒の境目のくびれは、少し太くなり、凹凸の程度が小さくなり、全体的に滑らかになる。たとえば、金属粒連鎖体は、3価のチタンイオンなどを還元剤とする還元性溶液に、強磁性の金属イオンを共存させて当該金属イオンを金属体として析出させることで形成される。
したがって、上記の金属粒連鎖体における金属は、強磁性体となり得るもの(金属、合金など)である。アノードは、イオン導電性セラミックスと、表面酸化された連鎖状金属粉末とを含む焼結体で形成される場合が多い。
【0009】
アノードの表面酸化された金属粒連鎖体が、アノード反応に対する触媒作用と、アノード反応の結果生じる電子に対して導電性とを有するため、全体の電気化学反応が促進され、小型の素子で、大きな処理能力を確保することができる。また、分解対象のガスは、アノードまたはカソードのどちらかに導入するが、対をなす相手側の電極へ導入する流体を、NOx、二酸化炭素などの発生のないものに限定することができる。分解対象のガスは、アノードまたはカソードに導入されるが、本発明に係るアノードでは、少なくともアノードでの反応を促進させることができる。また、上記の分解反応では、中和剤などは不要であり、反応物を取り出す必要もないので、低いランニングコストで稼動することができる。
【0010】
上記のアノードおよび/またはカソードを、ニッケル(Ni)を主成分とする金属粒連鎖体と、イオン導電性セラミックスとを含む焼結体とすることができる。これによって、たとえばアノードに適用した場合、アノードの全位置で、流体の流通性を確保して、流体中の分子と上記陰イオンとの反応を、触媒作用と電子導電性とを確保しながら、進行させることができる。
【0011】
上記のカソードおよび/またはアノードを、銀(Ag)を含む材料で構成することができる。これによって、たとえばカソードに銀を含ませた場合、カソードにおける流体中の分子と電子との反応を、Agによる触媒作用を受けて促進させることができる。このため、カソードに導入された流体中の分子から陰イオンを効率よく生成して、イオン導電材を介してアノードへと十分な量を供給することができる。
【0012】
アノードと、イオン導電材と、カソードとで、平板を形成する態様としてもよい。これによって、平板のサイズ、平板の積層数などを増減することで、ガス排出装置に応じて、分解容量を調整することができる。この平板は典型的な形状のMEA(Membrane Electrode Assembly)に該当する。なお、MEAは平板に限定されず、このあと筒体のMEAを説明する。
【0013】
アノードと、イオン導電材と、カソードとが、筒体を形成する態様を採ることができる。すなわち、(アノード/イオン導電材/カソード)は筒体のMEAを構成する。筒体は、ガス分解素子にするとき、シール部材を筒体の端部に配置するだけでよいので、シール部材(高温用なので、通常、ガラス系材料)と、筒体MEAとの熱膨張差で破損することが防止される。一般に平板のMEAの場合、シール部材を広い範囲に配置するので、平板のサイズが少し大きくなると、たとえシール部材を構成するガラス材の熱膨張率を極力合わせても、熱膨張差によって破損が生じやすくなる。筒体は、上記のように、シール部材は端部だけで済むので、熱膨張差で生じる応力は限定的である。また、筒体は、積層形態では用いられないので、寸法許容精度はそれほど厳格には要求されない。また、長手方向に筒体を比較的容易に伸ばせるので、反応容量等を容易に拡大することができる。また、上記の筒体を、複数、並べることでも、反応容量を大きくすることができる。筒体のMEAは、上記シール部材の問題がない場合でも、平板MEAに比べて、装置に組み上げやすく、製造歩留まりを高くすることができ、また長期間の使用における耐久性に優れている。筒体は、どのような形状でもよく、たとえば直円筒、曲円筒など、筒であればどのようなものでもよい。
【0014】
アノードが筒体の内面側に、またカソードが筒体の外面側に位置することができる。アンモニア分解等の場合、低濃度でも外部に漏れるアンモニアは異臭を放つので、筒の内側を通すのがよい。カソードには酸化性ガス、たとえば酸素ガスが導入される場合が多く、空気中の酸素を用いることが多いので酸素との接触などの点から外面側に配置するのがよい。ただし、分解対象のガスによっては、逆の場合、またはその他の形態の配設をとらなければならない場合もある。
【0015】
上記のアノードおよび/またはカソードの、イオン導電材と反対側に、多孔質金属体の集電体を配置することができる。これによって、実際に世の中で用いられるガス分解素子において、流体または気体の流通性を、集電体/電極(アノード、カソード)の部分で、確保することができる。さらに、集電体/電極(アノード、カソード)の部分で、高い電子伝導性を確保することができるため、電力発生(燃料電池)、または電力消費(電気分解装置)の、電力の授受を損失なく確実に行うことができる。
【0016】
多孔質金属体を金属めっき体とすることができる。これによって、気孔率が高い多孔質金属体を得ることができ、圧力損失を抑制することが可能になる。金属めっきによる多孔体は、骨格部を金属(Ni)めっきで形成するので、厚みを薄くした範囲で制御しやすいので、容易に気孔率を大きくすることができる。金属めっき多孔体については、後述する。
【0017】
上記のアノードに第1の流体が導入され、カソードに第2の流体が導入され、イオン導電材が酸素イオン導電性を有し、カソードとアノードから電力の取り出しができる構成とすることができる。これによって、分解対象のガスを燃料とし、ガス分解素子によって燃料電池を構成して発電を行うことができる。
【0018】
ヒータを備え、該ヒータに電力を供給することができる。これによって、エネルギー効率の優れたガス分解を行うことができる。
【0019】
上記のアノードに第3の流体が導入され、カソードに第4の流体が導入され、イオン導電材が酸素イオン導電性を有し、カソードおよびアノードから電力を投入することができる。これによって、電力を消費して分解対象のガスを分解することができる。この場合のガス分解素子は、アノードとカソードとで、第3および第4の流体の電気分解を行うことになる。分解対象のガスと、電気化学反応に与るイオンを供給する流体(空気(酸素)、水分)との電気化学的関係に応じて、電気分解とするか燃料電池とするか、決まる。たとえば、第3の流体にアンモニア、また第4の流体に炭酸ガスを用いて、両方(アンモニアおよび炭酸ガス)の分解を行うことができる。
【0020】
本発明のアンモニア分解素子は、上記のいずれかのガス分解素子を備え、アノードにアンモニアを含む流体が導入され、カソードに酸素原子を含む流体が導入されることを特徴とする。これによって、カソードで発生させた酸素イオンをアノードに移動させて、アノードにおいてアンモニアと酸素イオンとを、金属酸化層による触媒作用、およびイオンによる促進作用のもとで反応させて、さらに反応の結果生じる電子を速やかに移動させることができる。
【0021】
本発明の発電装置は、上記の電力の取り出しができるガス分解素子を備え、電力を他の電気装置に供給するための電力供給部品を備えることを特徴とする。これによって、ガス分解素子を発電装置として用いることができる。ここで、電力供給部品は、配電用の配線、端子などでもよい。
【0022】
本発明の電気化学反応装置は、流体(気体、液体など)についての電気化学反応装置であって、上述のいずれかのガス分解素子(アンモニア分解素子もガス分解素子とする)を用いたことを特徴とする。これによって、今後、流体分解、および流体分解に伴う電力発生(=燃料電池)の分野で、その基礎となる電極材料等に用いられて、電気化学反応の効率向上、装置の小型化、低いランニングコスト等を得ることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明のガス分解素子によれば、小型の装置で、大きな処理能力を有し、低いランニングコストで稼動することができる。とくにアンモニア、NOx等については好適に用いることができる。また上記の分解素子のうち電力を生じる素子については発電装置、そしてさらには一般的な電気化学反応装置として用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施の形態1におけるガス分解素子を示す断面図である。
【図2】図1のガス分解素子を燃料電池にして、アンモニアを分解する状態を説明するための図である。
【図3】実施の形態1のガス分解素子におけるアノードの特徴を説明するための図である。
【図4】実施の形態1のガス分解素子におけるカソードの特徴を説明するための図である。
【図5】本発明の実施の形態2において、ガス分解素子を電気分解素子として用いた例を示す図である。
【図6】本発明の実施の形態3におけるガス分解素子を示す断面図である。
【図7】図6の円筒MEAの内面側電極(アノード)の集電体を示し、(a)は1枚のシート状Niめっき多孔体を巻いた形態、(b)は環状Niめっき多孔体と棒状Niめっき多孔体との組み合わせの形態、を示す図である。
【図8】円筒MEAの製造方法を示すフローチャートである。
【図9】図6に示すアンモニア分解装置を示す図であり、(a)は1つの円筒MEAを用いる場合、(b)は複数の円筒MEAを用いる場合、を示す図である。
【図10】本発明の実施の形態4におけるガス分解素子を示す断面図である。
【図11】実施の形態4のガス分解素子におけるカソードを説明するための図である。
【図12】実施の形態4のガス分解素子におけるアノードを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1におけるガス分解素子10を示す図である。このガス分解素子10では、イオン導電性の電解質1をはさんで、アノード2と、カソード5とが、配置されている。アノード2の外側にはアノード集電体11が、また、カソード5の外側にはカソード集電体12が配置されている。アノード2は、金属粒連鎖体21とイオン導電性のセラミックス(金属酸化物)22とを主構成材とする焼結体であり、流体が流通できる多孔質体である。また、カソード5は、やはり流体が流通できる多孔質体である。カソード5は、たとえば銀(Ag)51とイオン導電性のセラミックス52とを主構成材とする焼結体とするのがよい。アノード集電体11およびカソード集電体12は、ともに多孔質金属体とするのがよい。多孔質金属体には、たとえば三角柱状の骨格が3次元に連なった連続気孔を持つ金属多孔体があり、その典型材として、たとえば住友電気工業(株)製のセルメット(商標登録)を用いることができる。
電解質1は、固体酸化物、溶融炭酸塩、リン酸、固体高分子、電解液など、イオン導電性があれば何でもよい。このガス分解素子10は、表1に示すように、燃料電池として作動させることもできるし、電気分解装置として作動させることもできる。
【0026】
【表1】
【0027】
本実施の形態1では、図2に示すように、ガス分解素子10を燃料電池として用いる場合について説明する。この場合、燃料電池での名称を参考のために示すと、アノード2は燃料極、カソードは空気極と呼ばれるが、本説明では、アノード2およびカソード5の用語を用いる。図2において、分解対象の流体(ガス)は、アノード2に導入され、また酸素イオンを供給するための流体はカソードに導入される。導入された流体は、アノード2(カソード5)で所定の反応をした後、放出される。所定の反応は、発電を伴う電気化学反応であり、アノード集電体11およびカソード集電体12から電力を取り出し、負荷に電力を供給することができる。すなわちガス分解素子10は燃料電池として機能する。
【0028】
表1は、本発明のガス分解素子または電気化学反応装置が用いられる、一部の反応例を示す表である。表1に示す電気化学反応の、R1〜R4、R6が、電力を発生する燃料電池反応に該当する。発生した電力の負荷としては、ガス分解素子10に内蔵される、図示しない加熱装置、たとえばヒータとすることができる。表1は、このあとの電気化学反応を説明するのに、適宜、引用する。
【0029】
アノード2は、表面酸化されて酸化層を有する金属粒連鎖体21と、酸素イオン導電性のセラミックス22とを主成分とする焼結体である。酸素イオン導電性のセラミックス22としては、SSZ(スカンジウム安定化ジルコニア)、YSZ(イットリウム安定化ジルコニア)、SDC(サマリウム安定化セリア)、LSGM(ランタンガレート)、GDC(ガドリア安定化セリア)などを用いることができる。また、カソード5は、銀(Ag)51と、酸素イオン導電性のセラミックス52とを主成分とする焼結体とする。この場合の酸素イオン導電性のセラミックス52として、LSM(ランタンストロンチウムマンガナイト)、LSC(ランタンストロンチウムコバルタイト)、SSC(サマリウムストロンチウムコバルタイト)などを用いるのがよい。電解質1は、酸素イオン導電性がある、固体酸化物、溶融炭酸塩、リン酸、固体高分子などを用いることができるが、固体酸化物は小型化でき、取り扱いが容易なので好ましい。固体酸化物1としては、SSZ、YSZ、SDC、LSGM、GDCなどを用いるのがよい。
【0030】
本実施の形態では、分解対象のガスはアンモニア(NH3)とし、酸素イオンを供給する気体は、空気すなわち酸素(O2)とする。表1における反応R1に該当する。アノード2に導入されたアンモニアは、2NH3+3O2−→N2+3H2O+6e−の反応(アノード反応)をする。反応後の流体であるN2+3H2Oはアノードから放出される。また、カソード5に導入された空気の中の酸素は、O2+2e−→2O2−の反応(カソード反応)をする。酸素イオンは、カソード5中のLSM52から固体電解質1を通って、アノード2に到達する。アノード2に到達した酸素イオンは、アンモニアと上記反応をして、アンモニアは分解される。分解されたアンモニアは、窒素ガスおよび水蒸気(H2O)となって、放出される。アノード2で生成した電子e−は、負荷5を経てカソード5に向かって流れる。上記の反応の結果、アノード2とカソード5との間に電位差が生じ、カソード5は、アノード2よりも電位が高くなる。
【0031】
(本発明の実施の形態のポイント)
図3は、アノード2を構成する材料の役割を説明するための図であり、本発明の実施の形態の特徴点を示す。アノード2は、表面酸化された金属粒連鎖体21と、SSZ22との焼結体で構成される。金属粒連鎖体21の金属は、ニッケル(Ni)とするのがよい。Niに鉄(Fe)を少し含むものであってもよい。さらに好ましくはTiを2〜10000ppm程度の微量含むものである。(1)Ni自体、アンモニアの分解を促進する触媒作用を有する。また、FeやTiを微量含むことでさらに触媒作用を高めることができる。さらに、このNiを酸化させて形成されたニッケル酸化物は、これら金属単味の促進作用をさらに大きく高めることができる。(2)上記の触媒作用に加えて、アノードにおいて、酸素イオンを分解反応に参加させている。すなわち、分解を電気化学反応のなかで行う。上記のアノード反応2NH3+3O2−→N2+3H2O+6e−では、酸素イオンの寄与があり、アンモニアの分解速度を大きく向上させる。(3)アノード反応では、自由な電子e−が生じる。電子e−がアノード2に滞留すると、アノード反応の進行は、妨げられる。金属粒連鎖体21は、ひも状に細長く、酸化層21bで被覆された中身21aは良導体の金属(Ni)である。電子e−は、ひも状の金属粒連鎖体の長手方向に、スムースに流れる。このため、電子e−がアノード2に滞留することはなく、金属粒連鎖体21の中身21aを通って、外に流れる。金属粒連鎖体21により、電子e−の通りが、非常に良くなる。要約すると、本発明の実施の形態における特徴は、アノードにおける次の(1)、(2)および(3)にある。
(1)ニッケル粒連鎖体のニッケル酸化層による分解反応の促進(高い触媒機能)
(2)酸素イオンによる分解促進(電気化学反応の中での分解促進)
(3)金属粒連鎖体のひも状良導体による電子の導通性確保(高い電子伝導性)
上記の(1)、(2)および(3)によって、アノード反応は非常に大きく促進される。
【0032】
温度を上げて、触媒に分解対象ガスを接触させるだけで、その分解対象ガスの分解は進行する。それは先行文献に開示されており、上記したように周知である。しかし、上記のように、燃料電池を構成する素子において、カソード5からイオン導電性の固体電解質1を経て、酸素イオンを反応に関与させ、その結果、生じる電子を外に導通させることで、分解反応速度は飛躍的に向上する。上記の(1)、(2)および(3)の機能、およびその機能をもたらす構成をもつことが、本発明の大きな特徴である。
【0033】
図4は、カソード5を構成する材料の役割を説明するための図である。本発明の実施の形態の、アノード以外の部分の特徴を示す。本実施の形態におけるカソード5は、Ag粒子51と、LSM52とで構成される。この中で、Ag51はカソード反応O2+2e−→2O2−を大きく促進させる触媒機能を有する。この結果、カソード反応は非常に大きい速度で進行することができる。カソードにAgを含ませる特徴は、上記の特徴(1)〜(3)に付加される、特徴(4)と位置づけられる。
【0034】
上記のアノード2およびカソード5の構成によって、アノード反応およびカソード反応は、非常に高い反応速度で進行する。このため、小型の簡単な構造の素子によって、大量のアンモニアを能率よく分解することができる。しかも、アノードでもカソードでも、NOxや二酸化炭素の発生はなく、環境に対して悪影響を及ぼすおそれはない。さらに、上記のように発電が可能なので、たとえば本実施の形態のガス分解素子10に内蔵されるヒータの電力を外部から供給しなくてもよいか、または外部からの供給量を減らすことができる。このため、エネルギー効率に優れている。また、反応生成物が堆積することもなく、メインテナンスは必要なく、ランニングコストは大幅に低減することができる。
【0035】
次に、上記のガス分解素子10の各部について説明する。
1.アノード
(1)金属粒連鎖体21
金属粒連鎖体21は、還元析出法によって製造するのがよい。この金属粒連鎖体21の還元析出法については、特開2004−332047号公報などに詳述されている。ここで紹介されている還元析出法は、還元剤として3価チタン(Ti)イオンを用いる方法であり、析出する金属粒(Ni粒など)は微量のTiを含む。このため、Ti含有量を定量分析することで、3価チタンイオンによる還元析出法で製造されたものと特定することができる。3価チタンイオンとともに存在する金属イオンを変えることで、所望の金属の粒を得ることができる。Niの場合はNiイオンを共存させる。Feイオンを微量加えると、微量Feを含むNi粒連鎖体が形成される。
また、連鎖体を形成するには、金属が強磁性金属であり、かつ所定のサイズ以上であることを要する。NiもFeも強磁性金属なので、金属粒連鎖体を容易に形成することができる。サイズについての要件は、強磁性金属が磁区を形成して、相互に磁力で結合し、その結合状態のまま金属の析出→金属層の成長が生じて、金属体として全体が一体になる過程で、必要である。所定サイズ以上の金属粒が磁力で結合した後も、金属の析出は続き、たとえば結合した金属粒の境界のネックは、金属粒の他の部分とともに、太く成長する。アノード2に含まれる金属粒連鎖体21の平均直径Dは5nm以上、500nm以下の範囲とするのがよい。また、平均長さLは0.5μm以上、1000μm以下の範囲とするのがよい。また、上記平均長さLと平均径Dとの比は3以上とするのがよい。ただし、これら範囲外の寸法を持つものであってもよい。
(2)表面酸化
表面酸化処理は、(i)気相法による熱処理酸化、(ii)電解酸化、(iii)化学酸化の3種類が好適な手法である。(i)では大気中で500〜700℃にて1〜30分処理するのがよい。最も簡便な方法であるが、酸化膜厚の制御が難しい。(ii)では標準水素電極基準で3V程度に電位を印加し、陽極酸化することにより表面酸化を行うが、表面積に応じ電気量により酸化膜厚を制御できる特徴がある。しかし、大面積化した場合、均一に酸化膜をつけることは難しい手法である。(iii)では硝酸などの酸化剤を溶解した溶液に1〜5分程度浸漬することで表面酸化する。酸化膜厚は時間と温度、酸化剤の種類でコントロールできるが薬品の洗浄が手間となる。いずれの手法も好適であるが、(i)または(iii)がより好ましい。
望ましい酸化層の厚みは、1nm〜100nmであり、より好ましくは10nm〜50nmの範囲とする。ただし、この範囲外であってもかまわない。酸化皮膜が薄すぎると触媒機能が不十分となる。また、わずかな還元雰囲気でもメタライズされてしまう恐れがある。逆に酸化皮膜が厚すぎると触媒性は充分保たれるが、反面、界面での電子伝導性が損なわれ、発電性能が低下する。
(3)焼結
SSZの原料粉末の平均径は0.5μm〜50μm程度とする。
表面酸化された金属粒連鎖体21と、SSZ22との配合比は、mol比で0.1〜10の範囲とする。
焼結方法は、たとえば大気雰囲気中で、温度1000℃〜1600℃の範囲に、30分〜180分間保持することで行う。
2.カソード
(1)銀
Ag粒子の平均径は、10nm〜100nmとするのがよい。
(2)焼結
SSZの平均径は0.5μm〜50μm程度のものを用いるのがよい。
銀と、SSZとの配合比は、0.01〜10程度とするのがよい。
焼結条件は、大気雰囲気で、1000℃〜1600℃に、30分〜180分間程度保持する。
【0036】
(実施の形態2)
図5は、本発明の実施の形態2におけるガス分解素子を示す図である。本実施の形態における反応は、一般的には、表1の反応R5、R7およびR8のように、電気分解反応である。すなわち、このガス分解素子10は、電気分解素子であり、電力を投入してガス(とくに図5の場合はNOx)を分解する。アノード2には空気を導入し、カソード5にはNOxを導入する。実施の形態1の場合は、分解対象ガスをアノード2に導入したが、本実施の形態では、分解対象ガスは、カソード5に導入する。アノード反応は、2O2−→O2+4e−である。またカソード反応は、NOの場合、2NO+4e−→N2+2O2−である。この場合、アノード2の集電体11と、カソード5の集電体12との間に、アノード側が高くなるように、外部から電位差(電圧)を印加する。外部の電源は、ガス分解素子10に対して電力を消費する。表1の番号R8の反応である。
【0037】
上記のように、電力の発生と消費という相違はあるが、アノード2/電解質1/カソード5および集電体11,12の構成は、実施の形態1と同様である。したがって、アノード2について、表面酸化された金属粒連鎖体による、(1)ニッケル酸化物による反応の促進(高い触媒機能)、および(2)金属粒連鎖体のひも状良導体による電子の導通性確保(高い電子伝導性)を得ることができる。また、カソード5について、銀による、カソード反応2NO+4e−→N2+2O2−の促進作用を得ることができる。その結果、小型で簡単な素子によって大量のガスを迅速に処理することができ、環境に悪影響を及ぼす気体の発生がなく、またメインテナンス費用(ランニングコスト)が安価である。
【0038】
表1において、本実施の形態におけるNOxと同様に、番号R7では、カソードにNOxを導入して分解する。このときアノードには、VOC(揮発性有機化合物:volatile organic compounds)を導入する。光化学オキシダントの発生原因という意味ではVOCも有害ガスであり、その意味ではアノードに導入する気体も分解対象ガスということができる。この場合も、電力をガス分解素子に消費することで、ガス分解を進行させることができる。
実施の形態1においても説明したように、触媒のもとで分解対象ガスを分解させることは周知である。しかし、本実施の形態では、電気化学反応において酸素イオンを関与させ、そのアノードに上記(1)および(2)の構成および作用効果を持たせたることで、反応速度を大幅に向上させることができる。
【0039】
(実施の形態3)
図6は、本発明の実施の形態3における電気化学反応装置であるガス除害装置、とくにアンモニア分解装置10を示す図である。このアンモニア分解装置10では、円筒形の固体電解質1の内面を覆うようにアノード(第1電極)2が設けられ、また外面を覆うようにカソード(第2電極)5が設けられて、円筒形MEA7(1,2,5)が形成されている。筒状体は、一般には、らせん状やサーペンタイン状などに曲がりくねっていてもよいが、図6の場合は、直円筒形のMEAである。本実施の形態の電気化学反応装置10では、円筒形のMEA7の内筒を埋めるように、多孔質金属体11が配置されている。円筒形MEAの内径は、たとえば20mm程度であるが、適用する装置に応じて、変えるのがよい。
本実施の形態では、MEA7が円筒形であることに特徴がある。MEA7が円筒形であるため、ガス分解装置10に組み立てるとき、シール部材を筒体の端部に配置するだけでよいので、図示しないシール部材と、筒体MEAとの熱膨張差で破損することが防止される。シール部材は、高温用なので、通常、ガラス系材料が用いられ、熱膨張係数を円筒形MEA7のそれに極力近いものとする。それでも、平板のMEAの場合、シール部材を広い範囲に配置するので、平板のサイズが少し大きくなると、熱膨張差によって破損が生じやすくなる。円筒形MEA7は、上記のように、シール部材は端部だけで済むので、熱膨張差で生じる応力は限定的である。また、円筒形MEAは、積層形態では用いられないので、寸法許容精度はそれほど厳格には要求されない。また、長手方向に円筒形MEA7を比較的容易に伸ばせるので、反応容量等を容易に拡大することができる。また、上記の円筒形MEA7を、複数、並べることでも、反応容量を大きくすることができる。円筒形MEA7は、平板MEAに比べて、装置に組み上げやすく、製造歩留まりを高くすることができ、また長期間の使用における耐久性に優れている。
【0040】
アノード2の集電材である多孔質金属体11は金属めっき体とするのがよい。多孔質金属体11には金属めっき多孔体とくにNiめっき多孔体、すなわち上述のセルメット(登録商標)を用いるのがよい。Niめっき多孔体は、気孔率を大きくとることができ、たとえば0.6以上0.98以下とすることができる。これによって、内面側電極であるアノード2の集電体として機能しながら、非常に良好な通気性を得ることができる。気孔率が0.6未満では、圧力損失が大きくなり、ポンプ等による強制循環をするとエネルギー効率が低下し、またイオン導電材等に曲げ変形等を生じて好ましくない。圧力損失を低減し、イオン導電材の損傷を防止するために、気孔率は、0.8以上とするのがよく、更に好ましい範囲として0.9以上とする。一方、気孔率が0.98を超えると電気伝導性が低下して集電機能が低下する。
【0041】
Niめっき多孔体11とアノード2とは、アンモニア分解のための稼働温度650℃〜950℃で接触して導通していなければならない。この導電接触の条件は、Niの熱膨張率がセラミックスの熱膨張率より大きいので、問題なく満たされる。また、熱膨張率が小さい金属のめっき多孔体を用いた場合でも、円筒MEA7を横置き(軸線水平)する場合には、集電体の上部に隙間があいても下部においては円筒MEAと必ず接触するので、集電機能は維持される。とくにアンモニアを円筒MEAの内面側に流すので、アンモニアの還元作用により、金属多孔体11は表面が酸化されず、常にアノード2と導電接触を維持することができる。
【0042】
図7は、シート状金属多孔体によるアノード集電材11を示す図である。図7(a)は、シート状金属多孔体11を巻いたものであり、シートの端を薄くして巻いたときに軸線に沿うストレート間隙が生じないようにしている。アンモニア除害の場合、除害したあとの出口濃度を10ppm以下にしないと異臭が強く感じられるので、ストレート間隙が生じないようにするのがよい。ストレート間隙があると、アンモニアまたはアンモニア含有気体は、そこを素通りしてしまう。ストレート間隙が生じない限り、金属多孔体11で充填されていれば、アンモニアまたはアンモニア含有気体は、内面を構成するアノード2に接触する可能性が大きくなる。
図7(b)は、シート状金属多孔体を環状に巻いて、内面側多孔体または環状多孔体11aとして、中央部には棒状多孔体11bを挿入する。中央部の棒状多孔体11bの孔の目を、環状多孔体11aのそれより小さくして、中央部よりも外側のアノード2に近づくようにするのがよい。すなわち、棒状多孔体11bを通る気体に対する流れの抵抗を大きくして、流れの抵抗が小さい環状多孔体11aを流れやすくするのがよい。これによって、アンモニア等がアノード2に接触して分解しやすくなる。中央部の棒状多孔体は、多孔体ではない単なる固体棒状体に置き換えてもよい。
【0043】
この電気化学反応装置であるアンモニア分解装置10では、アンモニアを含んだ気体を円筒形MEA7の内面側(アノード2)に導入し、外面側(カソード5)は、空気に触れさせる。図6において、円筒形MEAの外側のスペースSは空気スペースである。カソード5は空気中の酸素(O2)と反応する。円筒形MEA7の内面のアノード2に導入されたアンモニアは、実施の形態1と同様に、酸素イオンと次のアノード反応をする。
(アノード反応):2NH3+3O2−→N2+3H2O+6e−
反応後の気体であるN2+3H2Oは、円筒形の内面側(内筒)を通って流れてゆく。また、外面のカソード5と接触する空気中の酸素は、外部配線から供給される電子e−と、次のカソード反応をする。
(カソード反応):O2+2e−→2O2−
カソード反応の結果、MEA7の外面で生じた酸素イオンO2−は、固体電解質1を経由して、内面側のアノード2へと、厚み方向に沿って移動する。上記の電気化学反応は、温度650℃〜950℃の高温で、実用可能な分解速度を得ることができる。このため、ヒータ等の加熱装置41を備える。
上記のアンモニア分解の電気化学反応は、表1における反応R1に対応する。アンモニア分解の反応は、表1に示すように上記のR1以外に、反応R2,R3,R5がある。反応R2およびR3は、上記の反応R1と同じように、発電をする反応であるが、反応R5は、電力を投入する反応である。なお、半導体製造装置の排気には、アンモニアの他に水素も含まれるので、その場合には、反応R4も並行的に進行し、どちらも発電反応であり、負荷に電力を供給することができる。
【0044】
上記のような円筒形MEA7は、素材自体は脆弱(強度的に)であるが、(a1)円筒形であることによって強度を高めることができる。薄片状のMEAを多段に積層した板状多層MEAに比べて、強度的に安定している。このため、ガス分解装置10に組み立てる際の取り扱いにおいて、少しの力の付加で破損する等の事態が避けられ、(a2)製造歩留まりの向上を得ることができる。板状多層MEAの場合、高い寸法精度がないと、少しの押さえ込みなどによって簡単に破損してしまう。また、組み立てた後でも、稼働と非稼働とのサイクルで、加熱と冷却とを繰り返すので、板状多層MEAの場合は、熱膨張の差により応力集中部から破損しやすい。この点でも、円筒形MEA7は、端部で固定するので、(a3)加工精度はそれほど高くする必要はなく、(a4)加熱と冷却のサイクルで熱膨張の差により破損が発生する応力集中部またはシール部材などによる拘束部は少ない。とくに熱膨張差による応力が高まっても、所定範囲で破損しないで変形することができる。この点、積層平板MEAのように、変形の許容度が小さいものより、頑強である。このため、使用と不使用とを繰り返す長期間にわたる耐久性にも優れている。その上、円筒形MEA7の長さは、容易に伸ばせるので、(a5)反応長を長くすることが容易であり、一つの円筒形MEAの能力を拡大しやすい。
さらに、本実施の形態におけるガス分解装置10では、アンモニアを円筒の内面側に通すので、極低濃度にまで分解することで、アンモニアを密封しながら実際上、消滅させることができる。このため円筒形という簡単な構造を用いることで、上記(a1)〜(a5)を得ることができる。
【0045】
円筒MEA7を形成する材料は、実施の形態1におけるものと同じであり、その作用効果も同じである。
アノード2は、表面酸化されて酸化層を有する金属粒連鎖体21と、酸素イオン導電性のセラミックス22とを主要部とする焼結体とするのがよい。酸素イオン導電性のセラミックス22としては、SSZ(スカンジウム安定化ジルコニア)、YSZ(イットリウム安定化ジルコニア)、SDC(サマリウム安定化セリア)、LSGM(ランタンガレート)、GDC(ガドリア安定化セリア)などを用いることができる。
また、カソード5は、銀(Ag)51と、酸素イオン導電性のセラミックス52とを主成分とする焼結体とするのがよい。この場合の酸素イオン導電性のセラミックス52として、LSM(ランタンストロンチウムマンガナイト)、LSC(ランタンストロンチウムコバルタイト)、SSC(サマリウムストロンチウムコバルタイト)などを用いるのがよい。
固体電解質1は、酸素イオン導電性がある、固体酸化物、溶融炭酸塩、リン酸、固体高分子などを用いることができる。円筒形に焼結されたものを購入する。固体酸化物1としては、SSZ、YSZ、SDC、LSGM、GDCなどを用いるのがよい。
【0046】
上記の材料で形成されたカソード5は、銀粒子51の含有などによって導電率は高い。このため、図6に示すように、カソード5の端にのみ接続端子部55を設けるだけでよい。しかし、アノード2は、導電率の高い材料を含まず導電率が低く、すなわち電気抵抗を示し、集電体11の配置が必要になる。
筒状体の内面側に、有害物質を流す利点を上記のように挙げたが、集電体を筒状体の内面側に確実に配置する技術はこれまで十分にあるとはいえず、むしろ、今後の需要が見込まれるにもかかわらず、これといった技術がない。筒状体の内径は十分大きくないのが普通であり、この中に、(e1)分解対象のガス成分を流して、内面電極と接触させて十分反応させるスペースを確保しながら、(e2)内面電極に接触して導電を確実にとることができる構造の集電体を、(e3)困難な作業を要しないで、簡単に工業的に実現したものは、これまで知られていない。内面側に流すガス成分は、還元性気体であるため、導電をとる作用(e2)を長期間にわたってさらに確実にすることができる。
本実施の形態では、Niめっき多孔体11を用いることで、上記(e1)〜(e3)を容易に実現することができる。
【0047】
次に、図8により、円筒形MEA7の製造方法の概要について説明する。図8には、アノード2、およびカソード5ごとに、焼成を行う工程を示す。まず、市販されている円筒形固体電解質1を購入して準備する。次いで、カソード5を形成する場合は、所定の流動性を持つようにカソード構成材料を溶媒に溶かした溶液を調整して、円筒形固体電解質の内面に均等になるように塗布する。次いで、カソード5に適切な焼成条件で焼成する。このあとアノード2の形成に移る。図6に示す製造方法の他に、多くのバリエーションがある。焼成回数を1回ですます場合で、図8に示すように、各部分ごとに焼成を行うのではなく、塗布状態のまま、各部分を形成して、最後に、各部分の最大公約数的な条件で焼成を行う。この他、多くのバリエーションがあり、各部分を構成する材料と、目標とする分解効率と、製造経費等を総合的に考えて製造条件を決めることができる。
【0048】
図9(a)は、1つの円筒形MEA7を用いた場合のガス除害装置であり、また、図9(b)は、図9(a)に示すものを、複数(12個)、並列に配置した構成のガス除害装置である。1つのMEA7では処理容量が不足する場合に、複数の並列配置は、面倒な加工無しに容量増大をはかることができる。複数のどの円筒形MEA7についても、内面側に金属多孔体11の集電体を装入し、当該内面側にアンモニアを含む気体を流す。図9では、図7(b)に示した形態の金属多孔体11を示したが、金属多孔体11であれば、どのような形態であってもよい。円筒形MEA7の外面側は、スペースSを設けて高温の空気または高温の酸素に触れさせるようにする。円筒形MEA7の内面側をアンモニアを含む気体を流すのであるが、当該気体が素通りしてはアンモニア濃度を極低濃度にすることは難しい。このため、圧力損失とアンモニア出口濃度とを考慮して、図7(b)に示すNiめっき多孔体11a,11bの目の粗さを設定するのがよい。
また、加熱装置であるヒータ41については、複数、並列配置した円筒形MEA7の全体をまとめて結束する態様により、設けることができる。このような全体をまとめて結束する態様をとることで、小型化をはかることができる。
【0049】
(実施の形態4)
図10は、本発明の実施の形態4におけるガス分解装置10を示す断面図である。このガス分解装置10は、NOx分解に用いられるものである。ガス分解装置10は、NOxを含む気体が排気される排気路内に配置され、NOxはカソード3において分解される。排気中に、(カソード3でNOxの分解/アノード2で「所定のガス成分」の分解)、という、NOxと対をなす所定のガス成分が、含まれることは想定していないが、含まれていてもよい。ただ、このような所定のガス成分を、排気路(たとえばマフラー)に意図して導入することはコスト増などを招くので、意図して含ませることはしない。アノード2では、カソード3で生成され固体電解質1を経由して移動してきた酸素イオン等が反応して、酸素分子(酸素ガス)が発生する。ガス分解装置10で用いられる電源からの電力がこの化学反応を駆動する。この分解反応が、実用レベルの反応速度となるように、ガス分解装置は、250℃〜650℃の温度に加熱されて稼働するものとする。
【0050】
通常、図10に示すMEA7は平板であり、積層されて用いられ、各層のMEA7の間に、導電材または集電材となるインターコネクタが挿入される。インターコネクタには、蛇腹状または畝状に加工されたステンレススティール板が用いられるが、上記のNiめっき多孔体11,12を用いてもよい。図10では、インターコネクタ11,12で挟まれた1層のMEA7のみを示しているが、実際は、(インターコネクタ11/MEA7/インターコネクタ12/MEA7/インターコネクタ11)のように、2層のMEAまたはそれ以上の層の積層体の形態で用いられる場合が多い。
この場合、蛇腹状の金属板がMEAに接触する部分は、畝状の平坦頂部であり、蛇腹の凹凸も、またその凹凸のピッチも大きい。MEAは、固体電解質1、アノード2およびカソード3が、薄く、かつ焼結体であるため、脆いことで知られている。蛇腹状の金属板を介在させてMEAを積層した場合、押さえる領域がずれることで、曲げ応力等がMEAに生じて、簡単に破損にいたる。加熱中に温度差に起因する熱応力も加わるので、破損はさらに生じやすい。上記のように、金属めっき体の表面に均等に無数に分散している微小接続部で、両側からMEAを挟んで保持することで、金属めっき体が一種のクッション材のように作用する。このため、MEAに曲げ応力や局所的に高い応力を付加することがない。この結果、金属多孔体は、外力等に対する緩衝材として働き、脆いMEAを安定して確実に保持することができる。
【0051】
本実施の形態例では、図11に示すように、カソード5は、酸素イオン導電性電解質57と、Ni粒連鎖体56aとその酸化層56bとで形成される酸化層付きNi粒連鎖体56とで形成するのがよい。また、図12に示すように、アノード2は、酸素イオン導電性セラミックス27と、触媒の銀粒子26とで形成するのがよい。アンモニア分解では、カソード5に銀粒子が含まれ、アノード2にNi粒連鎖体が含まれたが、NOx分解の本実施の形態では、アノード2に銀粒子26が含まれ、カソード5にNi粒連鎖体56が含まれる点で、実施の形態1、3と相違する。カソード5およびアノード2の材料の具体例は、あとで詳しく説明する。
【0052】
焼結体であるカソード3に接触または進入する混合気体中のNOxは、次の反応をして、酸素イオンを、イオン導電性セラミックス57を経由させて固体電解質1へと送り出す。カソードでは、カソード反応:2NO2+8e−→N2+4O2−、または2NO+4e−→N2+O2−、が生じる。カソード反応で生じた酸素イオンO2−は、電場が形成されている固体電解質1を通ってアノード2に向かう。
一方、アノード2では、固体電解質1を移動してきた酸素イオンO2−同士が、次の反応をする。アノード反応:O2−+O2−→O2+4e−の反応が生じる。電子e−は、アノード2から外部回路を経て、カソード3に至り、上記のカソード反応にあずかる。
上記の電気化学反応は、表1のいずれの反応にも該当しない。
【0053】
排気である混合気体の中に配置されて、カソード3においてNOxを分解し、アノードで酸素ガスを生成する電気化学反応は、電力を投入しないと進行しない電気分解反応である。このために、電源を必要とする。図10に示す電源は、アノード2とカソード3との間に10V〜20Vを印加できればよいが、それより高い電圧、たとえば50V程度の公称電圧のものであってもよい。この電圧印加によって、アノード反応およびカソード反応を含む全体の電気化学反応が促進され、また固体電解質1に形成される電場によって酸素イオンの固体電解質1の移動時間の短縮をはかることができる。固体電解質1内の酸素イオンの移動時間によって、分解反応が律速される場合が多いので、上記の電場による酸素イオンの加速は分解反応速度を向上させる上で効果的である。
【0054】
カソード5は、表面酸化層に被覆されたNi粒連鎖体からなる酸化層付きNi粒連鎖体56と、酸素イオン導電性のセラミックス57とを主成分とする焼結体とするのがよい。酸素イオン導電性のセラミックスとしては、SSZ(スカンジウム安定化ジルコニア)、YSZ(イットリウム安定化ジルコニア)、SDC(サマリウム安定化セリア)、LSGM(ランタンガレート)、GDC(ガドリア安定化セリア)などを用いることができる。酸素イオン導電性セラミックス57の他に、表面酸化した金属粒子、とくに表面酸化した金属粒連鎖体(ひも状)56を加えると、触媒作用の増大と、上記の電子伝導性を高めることができるので、上記のカソード反応を促進することができる。金属粒連鎖体の導電部(酸化層で被覆される金属部)は、Niのみでもよいし、NiにFe、Ti等を含ませたものでもよい。
他方、アノード2は、銀粒子(触媒)26と、酸素イオン導電性セラミックス27とを含む焼結体とするのがよい。酸素イオン導電性セラミックス27としては、LSM(ランタンストロンチウムマンガナイト)、LSC(ランタンストロンチウムコバルタイト)、SSC(サマリウムストロンチウムコバルタイト)などを用いるのがよい。
アノード2およびカソード5に含まれる酸素イオン導電性セラミックスの種類も、本実施の形態のNOx分解の場合、アンモニアの場合とは、逆になっている。
【0055】
(本発明に係る電気化学反応装置が用いられる電気化学反応について)
本発明の電気化学反応装置は、表1に示すすべてのガス分解反応R1〜R8、およびそのほかのガス分解反応に用いることができる。上記実施の形態4は、表1のいずれの反応にも該当せず、アノードには、カソードと同じ、NOxおよび不純物ガスなどが導入される。電圧印加されているので、アノードでは酸素イオン同士が反応して酸素ガスを生成し、放出される。
NOxの分解も含めて、実施の形態4とは異なり、カソードに導入する気体と異なる気体をアノードに導入してもよい。表1によれば、NOx分解の場合、NOxと対をなす相手側ガス(燃料極で分解する気体)に、アンモニアを用いることで、反応R3が可能である。この場合、発電反応なので、外部から電圧を印加する必要がない。このため、外部回路に負荷として加熱用ヒータを配置することができる。また、上記アンモニアに代えて水蒸気、またはVOCを用いることもできる(反応R8、または反応R7)。この場合には、実施の形態4と同様に、電力を投入する必要がある。
【0056】
アンモニアの除害についていえば、R1〜R3、R5の反応が可能である。このうち反応R5は燃料電池反応ではなく電気分解反応であるが、電力の取り出しと投入との相違があるだけで、電気化学反応という点で、上記の実施の形態1と同じである。また、VOC(Volatile Organic Compounds)の分解もできる。これらすべての電気化学反応、およびその他の同様の電気化学反応について、図6または図9の構造のガス分解装置を採用することができる。
【実施例】
【0057】
次に、試験体を用いて実際に検証した例について説明する。用いた試験体は、本発明例A1〜A7、および比較例B1〜B6、の計13体である。いずれも、表2に示すとおりである。
(本発明例A1〜A7):
アノードには、(c1)SSZ(一例のみYSZ)と、(c2)金属粒連鎖体である、鎖状ニッケル(平均鎖太さ10nm〜150nm、平均鎖長1μm〜30μm)、または20wt%の鉄を含む鎖状ニッケル(平均鎖太さ150nm、平均鎖長30μm)との焼結体を用いた。鎖状ニッケルの酸化層の厚みは、いずれも1nm〜5nmとなるように酸化した。この酸化層の形成に際し、上述の1.アノード、(2)表面酸化において説明した(i)気相法による熱処理酸化を用い、大気中で650℃にて20分処理した。上記1nm〜5nmの酸化層の厚み範囲は、上記(2)の説明における望ましい範囲内の薄目の範囲にあり、処理時間を節約しながら上述の有益な作用を確実に得ることができる。また、カソードには、(c3)LSMと、(c4)球状銀(平均直径50nm〜2μm)との焼結体を用いた。温度は800℃という低めの温度、1水準とした。
(比較例B1〜B6):
アノードには、(d1)SSZ(一例のみYSZ)と、(d2)球状ニッケル(平均直径1μm〜2μm)との焼結体を用いた。また、カソードには、(d3)LSMと、(d4)触媒なしか、または球状銀(平均直径1μm〜2μm)との焼結体を用いた。温度は800℃、900℃、1000℃の3水準とした。
上述のように、本発明例A1〜A7に共通する特徴は、アノードの触媒である構成要素(c2)である。さらに、その構成要素(c2)と、カソードの触媒である構成要素(c4)との組み合わせである。そして、これら(c2)および(c2)+(c4)の作用を際立たせるのに、アノードの電解質SSZまたはYSZ、およびカソードの電解質LSMが、有益に作用している。
(評価):
所定のアンモニアを含むセル内において、1cm2当たりの処理能力を測定した。測定方法は、検知管法によりセルより排出されたアンモニア量を測定することにより行った。結果を表2に示す。
【0058】
【表2】
【0059】
表2より、つぎのことが分かる。
(1)アノードの触媒に、鎖状ニッケルを用いることで、球状ニッケルの場合に比較して、100倍程度のアンモニアの分解能力増大が可能となる。
(2)アノードの触媒の鎖状ニッケルの平均鎖太さは、小さいほうが、アンモニア分解能力が高い。たとえば、本発明例A3(平均鎖太さ10nm)は、本発明例A2(平均鎖太さ50nm)よりもアンモニア処理能力が、20%程度高く、また本発明例A1(平均鎖太さ150nm)よりも、50%弱高い。
これに対して、平均鎖長さの影響は明確に認められない。
(3)カソードの触媒の銀粒子を2μmから0.05μm(50nm)へと微細にすることで、アンモニア分解量の大きな増大を得ることができる。たとえば、本発明例A6とA7とを比較すると、アンモニア分解量が約2倍に増大することが分かる。
(4)鉄を含む鎖状ニッケルは、鉄を含まない鎖状ニッケルと、同程度のアンモニア分解能力を持つ。すなわち鉄については含有させても、大きな影響がない。
(5)温度については、比較例において、高温化によるアンモニア分解能力の増大が認められる。温度は、本発明の場合、物質特有の効果とは無関係に普遍的に作用すると考えられるので、本発明例においても、高温にすることで、分解能力は増大すると考えられる。
要約すれば、上記(1)〜(3)により、本発明に係るガス分解素子の優れたアンモニア分解能力が明らかである。また、(5)において言及した温度の作用も得ることができる。さらに、上記(4)は一例であり、他の元素についてアンモニア分解作用を助長する例が得られている。表面酸化された金属粒連鎖体であるかぎり、合金化により良好な作用効果を得ることができると否とにかかわらず、本発明のガス分解素子に該当する。
【0060】
上記において、本発明の実施の形態について説明を行ったが、上記に開示された本発明の実施の形態は、あくまで例示であって、本発明の範囲はこれら発明の実施の形態に限定されない。本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明のガス分解素子によれば、大掛かりな装置を用いずに、小型、かつ簡単な素子により、大量のガスを能率よく分解することができる。メインテナンス費用は低く、また、環境に悪影響を与える副産物のガスは発生することもない。さらに、発電装置としても用いることができるので、このガス分解素子を高温に保持するための加熱装置に電力を供給することも可能である。
【符号の説明】
【0062】
1 イオン導電性電解質(固体酸化物電解質)、2 アノード、5 カソード、10 ガス分解素子、11 アノード集電体、12 カソード集電体、21,56 金属粒連鎖体、21a,56a 金属粒連鎖体の芯部(金属部)、21b,56b 酸化層、22,27 アノードのイオン導電性セラミックス、41 ヒータ、26,51 銀、52,57 カソードのイオン導電性セラミックス、55 外面電極(カソード)端子部、S 空気スペース。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスを分解するために用いる素子であって、
多孔質のアノードと、
前記アノードと対をなす、多孔質のカソードと、
前記アノードとカソードとの間に位置し、イオン導電性をもつイオン導電材とを備え、
前記アノードおよび/またはカソードが、表面酸化された金属粒連鎖体を含むことを特徴とする、ガス分解素子。
【請求項2】
前記アノードおよび/またはカソードが、ニッケル(Ni)を主成分とする金属粒連鎖体と、イオン導電性セラミックスとを含む焼結体であることを特徴とする、請求項1に記載のガス分解素子。
【請求項3】
前記カソードおよび/またはアノードが、銀(Ag)を含むことを特徴とする、請求項1または2に記載のガス分解素子。
【請求項4】
前記アノードと、前記イオン導電材と、前記カソードとが、平板を形成していることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載のガス分解素子。
【請求項5】
前記アノードと、前記イオン導電材と、前記カソードとが、筒体を形成していることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載のガス分解素子。
【請求項6】
前記アノードが筒体の内面側に、また前記カソードが筒体の外面側に位置していることを特徴とする、請求項5に記載のガス分解素子。
【請求項7】
前記アノードおよび/またはカソードの、前記イオン導電材と反対側に、多孔質金属体の集電体が配置されていることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載のガス分解素子。
【請求項8】
前記多孔質金属体が金属めっき体であることを特徴とする、請求項7に記載のガス分解素子。
【請求項9】
前記アノードに第1の流体が導入され、前記カソードに第2の流体が導入され、前記イオン導電材が酸素イオン導電性を有し、前記カソードと前記アノードから電力の取り出しができることを特徴とする、請求項1〜8いずれか1項に記載のガス分解素子。
【請求項10】
ヒータを備え、該ヒータに前記電力を供給することを特徴とする、請求項9に記載のガス分解素子。
【請求項11】
前記アノードに第3の流体が導入され、前記カソードに第4の流体が導入され、前記イオン導電材が酸素イオン導電性を有し、前記カソードおよび前記アノードから電力を投入することを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項に記載のガス分解素子。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1項に記載のガス分解素子を備え、前記アノードにアンモニアを含む流体が導入され、前記カソードに酸素原子を含む流体が導入されることを特徴とする、アンモニア分解素子。
【請求項13】
請求項9または10に記載のガス分解素子を備え、前記電力を他の電気装置に供給するための電力供給部品を備えることを特徴とする、発電装置。
【請求項14】
流体についての電気化学反応装置であって、請求項1〜12のいずれか1項に記載のガス分解素子を用いたことを特徴とする、電気化学反応装置。
【請求項1】
ガスを分解するために用いる素子であって、
多孔質のアノードと、
前記アノードと対をなす、多孔質のカソードと、
前記アノードとカソードとの間に位置し、イオン導電性をもつイオン導電材とを備え、
前記アノードおよび/またはカソードが、表面酸化された金属粒連鎖体を含むことを特徴とする、ガス分解素子。
【請求項2】
前記アノードおよび/またはカソードが、ニッケル(Ni)を主成分とする金属粒連鎖体と、イオン導電性セラミックスとを含む焼結体であることを特徴とする、請求項1に記載のガス分解素子。
【請求項3】
前記カソードおよび/またはアノードが、銀(Ag)を含むことを特徴とする、請求項1または2に記載のガス分解素子。
【請求項4】
前記アノードと、前記イオン導電材と、前記カソードとが、平板を形成していることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載のガス分解素子。
【請求項5】
前記アノードと、前記イオン導電材と、前記カソードとが、筒体を形成していることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載のガス分解素子。
【請求項6】
前記アノードが筒体の内面側に、また前記カソードが筒体の外面側に位置していることを特徴とする、請求項5に記載のガス分解素子。
【請求項7】
前記アノードおよび/またはカソードの、前記イオン導電材と反対側に、多孔質金属体の集電体が配置されていることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載のガス分解素子。
【請求項8】
前記多孔質金属体が金属めっき体であることを特徴とする、請求項7に記載のガス分解素子。
【請求項9】
前記アノードに第1の流体が導入され、前記カソードに第2の流体が導入され、前記イオン導電材が酸素イオン導電性を有し、前記カソードと前記アノードから電力の取り出しができることを特徴とする、請求項1〜8いずれか1項に記載のガス分解素子。
【請求項10】
ヒータを備え、該ヒータに前記電力を供給することを特徴とする、請求項9に記載のガス分解素子。
【請求項11】
前記アノードに第3の流体が導入され、前記カソードに第4の流体が導入され、前記イオン導電材が酸素イオン導電性を有し、前記カソードおよび前記アノードから電力を投入することを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項に記載のガス分解素子。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1項に記載のガス分解素子を備え、前記アノードにアンモニアを含む流体が導入され、前記カソードに酸素原子を含む流体が導入されることを特徴とする、アンモニア分解素子。
【請求項13】
請求項9または10に記載のガス分解素子を備え、前記電力を他の電気装置に供給するための電力供給部品を備えることを特徴とする、発電装置。
【請求項14】
流体についての電気化学反応装置であって、請求項1〜12のいずれか1項に記載のガス分解素子を用いたことを特徴とする、電気化学反応装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2010−100929(P2010−100929A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−181873(P2009−181873)
【出願日】平成21年8月4日(2009.8.4)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年8月4日(2009.8.4)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】
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