説明

ガス分離膜及び複合膜、それらの製造方法、それらを用いたモジュール、分離装置

【課題】ガス透過性及び分離選択性に優れたガス分離膜及び複合膜、及びそれらの製造方法、ガス混合物の分離方法、及びそれを用いたモジュール、分離装置を提供する。
【解決手段】少なくとも1種の下記一般式(I)で表される部分構造と、少なくとも1種の下記の一般式(II)で表される部分構造とを含むポリマーを含有するガス分離膜。
(I)[CHC(R)(JRa)]
(II)[CHC(R)(J)]nL
(一般式(I)中、R、R及びRaは各々独立に水素原子又は置換基を表す。Lはn価の連結基を、W及びWは単結合又は2価の連結基を、nは2以上の整数を表す。複数存在するJ、W、R、J、W、R及びRaは同一でも異なっていてもよい。)ただし、一般式(I)のRa及び一般式(II)のLの少なくともいずれか一方は、フッ素原子を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素、ヘリウム、一酸化炭素、二酸化炭素、硫化水素、酸素、窒素、アンモニア、硫黄酸化物、窒素酸化物、メタン、エタンなどの炭化水素、プロピレンなどの不飽和炭化水素、テトラフルオロエタンなどのパーフルオロ化合物などのガスを含有する気体混合物から特定の気体を効率よく分離し得る新規なガス分離膜に関し、特に二酸化炭素を含む気体混合物から二酸化炭素を選択分離するガス分離膜及びこの製造方法、これを用いたモジュール、分離装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、高分子素材には、その素材に特有の気体透過性があるため、高分子素材から構成された膜によって、気体成分を分離できることが知られており、近年の地球環境温暖化における問題と関連して、火力発電所やセメントプラント、製鉄所高炉等の大規模な二酸化炭素発生源から二酸化炭素を省エネルギーで分離回収することの出来る可能性のある手段として着目されている。一方、天然ガスやバイオガス(生物の排泄物、有機質肥料、生分解性物質、汚水、ゴミ、エネルギー作物などの発酵、嫌気性消化により発生するガス)は主としてメタンと二酸化炭素の混合ガスであり、不純物を除去する手段として膜分離方法が従来より検討されてきた(特許文献1、特許文献2)。
ところで、高分子膜における気体の透過性(透過係数)は気体の高分子膜への溶解度係数(溶解性)と拡散係数(拡散性)との積で表される(非特許文献1)。それゆえに、二酸化炭素の透過性(透過係数)を分離対象ガスに対して選択的に向上させるためには、二酸化炭素の高分子膜に対する溶解度係数(溶解性)及び/又は拡散係数(拡散性)を選択的に向上させればよいことになる。二酸化炭素は分子内で分極した四重極子構造であり、極性を有する化学構造と親和性を有し、例えば、ポリエチレングリコールは二酸化炭素との溶解性が高いことが報告されている(非特許文献2)。
このような観点を活かし、ポリエチレンオキシ(PEO)組成を含む分離膜が検討されている(非特許文献3、特許文献3〜6)。また、ポリエチレンオキシ組成を含む架橋高分子膜における特徴として水素(H:2.9Å)よりも分子の動的直径の大きな二酸化炭素(CO:3.3Å)がより透過しやすい、逆の分離選択性を有することも報告されている(非特許文献4)。これは二酸化炭素がポリエチレンオキシ組成との相互作用が強いことに起因する。水素は一般的に天然ガスの水蒸気改質、水性ガスシフトを経て製造されており、組成の約40%が二酸化炭素、約60%が水素の気体混合物である。濃度の低い不純物である二酸化炭素を選択透過、除去させることができれば分離精製方法として経済的により優れているといえる。
一方、二酸化炭素との溶解性に優れる化合物のそのほかの例として、フッ素を有する化合物が二酸化炭素への溶解性に優れることについて報告されている(非特許文献5、6、7)。気体分離膜として、フッ素化合物を用いた例としては、プラズマ重合体薄膜を形成したものなどが知られているが、これらの分離膜は二酸化炭素/窒素の分離選択性は3.9〜8.0と低いために、実用的な二酸化炭素の分離膜としては性能不十分であった(特許文献7〜9)。またフッ素含有ポリイミドを用いた分離膜に関する方法も検討されている(特許文献10)。しかしながら、分離膜の気体透過性や分離選択性にはさらなる改善が求められている(非特許文献8、9)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−297605号公報
【特許文献2】特開2006−297335号公報
【特許文献3】特開平7−60079号公報
【特許文献4】国際公開第08/143514号
【特許文献5】国際公開第08/143515号
【特許文献6】国際公開第08/143516号
【特許文献7】特開昭62−204825号公報
【特許文献8】特開昭62−204826号公報
【特許文献9】特開昭62−204827号公報
【特許文献10】特開2003−62439号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】永井一清監修 シーエムシー出版、「気体分離膜・透過膜・バリア膜の最新技術」、52−59頁
【非特許文献2】Journal of Physical Chemistry1990, 94, 2124−2128.
【非特許文献3】Journal of Membrane Science 1999, 160, 87−99.
【非特許文献4】Science,2006,311,639−642.
【非特許文献5】Organic Process Research & Development 2000, 4, 353−356.
【非特許文献6】Chemistry. Letters.,2000,522−523.
【非特許文献7】佐古猛監修、シーエムシー出版、2008年9月末発行「超臨界流体技術の開発と応用」v
【非特許文献8】Industrial.Engineering.Chemistry. Research.2008,47,2109.
【非特許文献9】Industrial.Engineering.Chemistry. Research.2002,41,1393.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
水素製造においては改質のために水蒸気を使用しているため、水素/二酸化炭素の分離においては加温、加湿条件での安定的な分離選択性付与が望ましい。
しかしながら、本発明者らがこれらのポリエチレンオキシ組成を含むガス分離膜において検討した結果、加湿条件では膜の膨潤に伴いガス分離選択性が低下する問題が発生することがわかり、さらなる改善が必要であることがわかった。
本発明は、ガス透過性及び分離選択性に優れたガス分離膜及び複合膜、ガス分離膜及び複合膜の製造方法、ガス混合物の分離方法、及びそれを用いたモジュール、分離装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題は以下の手段により達成された。すなわち
〔1〕
少なくとも1種の下記一般式(I)で表される部分構造と、少なくとも1種の下記の一般式(II)で表される部分構造とを含むポリマーを含有することを特徴とするガス分離膜。
【0007】
【化1】

【0008】
(一般式(I)中、R及びRは各々独立に水素原子又は置換基を表す。Jは−CO−、−COO−、−CONR20−、−OCO−、メチレン基、フェニレン基、又は−CCO−基を表す。R20は水素原子、アルキル基、アリール基、又はアラルキル基を表す。Wは単結合又は2価の連結基を表す。複数存在するJ、W、R及びRは同一でも異なっていてもよい。)
【0009】
【化2】

【0010】
(一般式(II)中、Rは各々独立に水素原子又は置換基を表す。Lはn価の連結基を表す。nは2以上の整数を表す。Jは−CO−、−COO−、−CONR−、−OCO−、メチレン基、フェニレン基、又は−CCO−基を表す。Rは水素原子、アルキル基、アリール基、又はアラルキル基を表す。Wは単結合又は2価の連結基を表す。複数存在するJ、W、Rは同一でも異なっていてもよい。)
ただし、一般式(I)のR及び一般式(II)のLの少なくともいずれか一方は、フッ素原子を有する。
〔2〕
前記一般式(I)で表される部分構造が下記一般式(I−1)で表される部分構造であることを特徴とする〔1〕に記載のガス分離膜。
【0011】
【化3】

【0012】
(一般式(I−1)中、Rは水素原子又は置換基を表し、Lは−CF−又は−CFCFO−を表す。lは1以上の整数を表す。R及びWは、前記一般式(I)におけるR及びWと同義である。複数存在するR、W、L、l及びRは同一でも異なっていてもよい。)
〔3〕
前記一般式(II)で表される部分構造が下記一般式(II−1)で表される部分構造であることを特徴とする〔1〕又は〔2〕に記載のガス分離膜。
【0013】
【化4】

【0014】
(一般式(II−1)中、Lは−CF−又は−CFCFO−を表す。W及びRは前記一般式(II)におけるW及びRと同義である。WはWと同義である。RはRと同義である。m、x及びzは1以上の整数を表す。複数存在するL、及びmは同一でも異なっていてもよい。)
〔4〕
少なくとも1種の下記一般式(Ia)で表される化合物と、少なくとも1種の下記の一般式(IIa)で表される化合物とを含有する組成物により形成されたことを特徴とするガス分離膜。
【0015】
【化5】

【0016】
(一般式(Ia)中、Rは水素原子又は置換基を表す。Jは−CO−、−COO−、−CONR−、−OCO−、メチレン基、フェニレン基、又は−CCO−基を表す。Rは水素原子、アルキル基、アリール基、又はアラルキル基を表す。Wは単結合又は2価の連結基を表す。Aは、フッ素原子又は少なくとも一つのフッ素原子を有する置換基を表す。)
【0017】
【化6】

【0018】
(一般式(IIa)中、Rは各々独立に水素原子又は置換基を表す。Jは−CO−、−COO−、−CONR−、−OCO−、メチレン基、フェニレン基、又は−CCO−基を表す。Rは水素原子、アルキル基、アリール基、又はアラルキル基を表す。Wは単結合又は2価の連結基を表す。Lはy価の連結基を表す。yは2以上の整数を表す。複数存在するJ、W、Rは同一でも異なっていてもよい。)
〔5〕
少なくとも1種の下記一般式(Ib)で表される化合物と、少なくも1種の下記の一般式(IIb)で表される化合物とを含有する組成物により形成されたことを特徴とするガス分離膜。
【0019】
【化7】

【0020】
(一般式(Ib)中、Rは水素原子又は置換基を表す。Rは水素原子又は置換基を表す。Jは−CO−、−COO−、−CONR20−、−OCO−、メチレン基、フェニレン基、又は−CCO−基を表す。R20は水素原子、アルキル基、アリール基、又はアラルキル基を表す。Wは単結合又は2価の連結基を表す。)
【0021】
【化8】

【0022】
(一般式(IIb)中、Rは各々独立に水素原子又は置換基を表す。Lは少なくとも一つのフッ素原子を有するn価の連結基を表す。nは2以上の整数を表す。Jは−CO−、−COO−、−CONR−、−OCO−、メチレン基、フェニレン基、又は−CCO−基を表す。Rは水素原子、アルキル基、アリール基、又はアラルキル基を表す。Wは単結合又は2価の連結基を表す。複数存在するJ、W、Rは同一でも異なっていてもよい。)
〔6〕
少なくとも1種の〔4〕に記載の一般式(Ia)で表される化合物と、少なくも1種の〔5〕に記載の一般式(IIb)で表される化合物とを含有する組成物により形成されたことを特徴とするガス分離膜。
〔7〕
前記一般式(Ia)で表される化合物が下記一般式(Ia−1)で表される化合物であることを特徴とする前記〔4〕又は〔6〕に記載のガス分離膜。
【0023】
【化9】

【0024】
(一般式(Ia−1)中、Rは水素原子又は置換基を表し、LはCF又はCFCFOを表す。lは1以上の整数を表す。R及びWは、前記一般式(Ia)におけるR及びWと同義である。複数存在するLは同一でも異なっていてもよい。)
〔8〕
前記一般式(IIb)で表される化合物が下記一般式(IIb−1)で表される化合物であることを特徴とする前記〔5〕又は〔6〕に記載のガス分離膜。
【0025】
【化10】

【0026】
(一般式(IIb−1)中、W及びWはそれぞれ独立に、単結合又は二価の連結基を表し、mは1以上の整数を表す。Rは、それぞれ独立に前記一般式(IIb)におけるRと同義であり、Lは−CF−又は−CFCFO−を表す。複数存在するLは同一でも異なっていてもよい。)
〔9〕
ガラス転移点が50℃未満であることを特徴とする〔1〕〜〔8〕のいずれか一項に記載のガス分離膜。
〔10〕
多孔質性の支持体の少なくとも表面に、〔1〕〜〔8〕のいずれか一項に記載のガス分離膜を形成することを特徴とする複合膜。
〔11〕
少なくとも1種の下記一般式(I)で表される部分構造と、少なくとも1種の下記の一般式(II)で表される部分構造とを含むポリマーを含有するガス分離膜を、活性放射線を照射することにより形成することを特徴とする〔1〕〜〔9〕のいずれか一項に記載のガス分離膜の製造方法。
【0027】
【化11】

【0028】
(一般式(I)中、R及びRは各々独立に水素原子又は置換基を表す。Jは−CO−、−COO−、−CONR20−、−OCO−、メチレン基、フェニレン基、又は−CCO−基を表す。R20は水素原子、アルキル基、アリール基、又はアラルキル基を表す。Wは単結合又は2価の連結基を表す。複数存在するJ、W、R及びRは同一でも異なっていてもよい。)
【0029】
【化12】

【0030】
(一般式(II)中、Rは複数存在する場合は各々独立に水素原子又は置換基を表す。Lはn価の連結基を表す。nは2以上の整数を表す。Jは−CO−、−COO−、−CONR−、−OCO−、メチレン基、フェニレン基、又は−CCO−基を表す。Rは水素原子、アルキル基、アリール基、又はアラルキル基を表す。Wは単結合又は2価の連結基を表す。複数存在するJ、W、Rは同一でも異なっていてもよい。)
ただし、一般式(I)のR及び一般式(II)のLの少なくともいずれか一方は、フッ素原子を有する。
〔12〕
多孔質性の支持体の少なくとも表面に、〔1〕〜〔9〕のいずれか一項に記載のガス分離膜を、活性放射線を照射することにより形成することを特徴とする〔10〕に記載の複合膜の製造方法。
〔13〕
少なくとも一種の酸性ガスを含むガス混合物から酸性ガスを気体分離膜によって分離する方法において、〔1〕〜〔9〕のいずれか一項に記載のガス分離膜又は〔10〕に記載の複合膜を用いることを特徴とするガス混合物の分離方法。
〔14〕
酸性ガスが二酸化炭素又は硫化水素であることを特徴とする〔13〕に記載のガス混合物の分離方法。
〔15〕
前記ガス混合物の主成分が二酸化炭素及びメタン又は二酸化炭素及び水素であることを特徴とする〔13〕に記載のガス混合物の分離方法。
〔16〕
〔1〕〜〔9〕のいずれか一項に記載のガス分離膜又は〔10〕に記載の複合膜を含むガス分離膜モジュール。
〔17〕
〔16〕に記載のガス分離膜モジュールを少なくとも1種を含む気体分離装置。
【発明の効果】
【0031】
本発明のガス分離膜及び複合膜は優れたガス透過性と分離選択性を有する。特に二酸化炭素の透過性に優れ、二酸化炭素/メタン、二酸化炭素/水素の分離選択性が優れる性能を有する。特に加湿条件での安定性及び分離選択性に優れる。また、本発明のガス分離膜及び複合膜の製造方法は、該ガス分離膜及び該複合膜を効率よく形成し得る。更に、本発明のガス分離膜又は複合膜を用いることにより高性能のガス分離膜モジュール、ガス分離、ガス精製装置に適用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下に本発明について詳しく説明するが、本発明はこれにより限定して解釈されるものではない。
【0033】
本発明のガス分離膜は、少なくとも1種の下記一般式(I)で表される部分構造と、少なくとも1種の下記の一般式(II)で表される部分構造とを含むポリマーを含有する。
【0034】
【化13】

【0035】
(一般式(I)中、R及びRは各々独立に水素原子又は置換基を表す。Jは−CO−、−COO−、−CONR20−、−OCO−、メチレン基、フェニレン基、又は−CCO−基を表す。R20は水素原子、アルキル基、アリール基、又はアラルキル基を表す。Wは単結合又は2価の連結基を表す。複数存在するJ、W、R及びRは同一でも異なっていてもよい。)
【0036】
【化14】

【0037】
(一般式(II)中、R複数存在する場合は各々独立に水素原子又は置換基を表す。Lはn価の連結基を表す。nは2以上の整数を表す。Jは−CO−、−COO−、−CONR−、−OCO−、メチレン基、フェニレン基、又は−CCO−基を表す。Rは水素原子、アルキル基、アリール基、又はアラルキル基を表す。Wは単結合又は2価の連結基を表す。複数存在するJ、W、Rは同一でも異なっていてもよい。)
ただし、一般式(I)のR及び一般式(II)のLの少なくともいずれか一方は、フッ素原子を有する。
【0038】
本発明における一般式の関係について説明する。一般式(I)は好ましくは一般式(I−1)であり、一般式(II)は好ましくは一般式(VI)である。
【0039】
〔一般式(I)で表される部分構造〕
一般式(I)で表される部分構造について詳しく説明する。一般式(I)においてRは水素原子又は置換基を表す。
【0040】
が表す置換基としては、下記に示される置換基群Zより選ばれるいずれか1つを用いることができる。
置換基群Z:
アルキル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜10のアルキル基であり、例えばメチル、エチル、Iso−プロピル、tert−ブチル、n−オクチル、n−デシル、n−ヘキサデシル)、シクロアルキル基(好ましくは炭素数3〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数3〜10のシクロアルキル基であり、例えばシクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどが挙げられる。)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜10のアルケニル基であり、例えばビニル、アリル、2−ブテニル、3−ペンテニルなどが挙げられる。)、アルキニル基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜10のアルキニル基であり、例えばプロパルギル、3−ペンチニルなどが挙げられる。)、アリール基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12のアリール基であり、例えばフェニル、p−メチルフェニル、ナフチル、アントラニルなどが挙げられる。)、アミノ基(好ましくは炭素数0〜30、より好ましくは炭素数0〜20、特に好ましくは炭素数0〜10のアミノ基であり、例えばアミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジベンジルアミノ、ジフェニルアミノ、ジトリルアミノなどが挙げられる。)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜10のアルコキシ基であり、例えばメトキシ、エトキシ、ブトキシ、2−エチルヘキシロキシなどが挙げられる。)、アリールオキシ基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12のアリールオキシ基であり、例えばフェニルオキシ、1−ナフチルオキシ、2−ナフチルオキシなどが挙げられる。)、ヘテロ環オキシ基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12のヘテロ環オキシ基であり、例えばピリジルオキシ、ピラジルオキシ、ピリミジルオキシ、キノリルオキシなどが挙げられる。)、
【0041】
アシル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12のアシル基であり、例えばアセチル、ベンゾイル、ホルミル、ピバロイルなどが挙げられる。)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜12のアルコキシカルボニル基であり、例えばメトキシカルボニル、エトキシカルボニルなどが挙げられる。)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは炭素数7〜30、より好ましくは炭素数7〜20、特に好ましくは炭素数7〜12のアリールオキシカルボニル基であり、例えばフェニルオキシカルボニルなどが挙げられる。)、アシルオキシ基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜10のアシルオキシ基であり、例えばアセトキシ、ベンゾイルオキシなどが挙げられる。)、アシルアミノ基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜10のアシルアミノ基であり、例えばアセチルアミノ、ベンゾイルアミノなどが挙げられる。)、
【0042】
アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜12のアルコキシカルボニルアミノ基であり、例えばメトキシカルボニルアミノなどが挙げられる。)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数7〜30、より好ましくは炭素数7〜20、特に好ましくは炭素数7〜12のアリールオキシカルボニルアミノ基であり、例えばフェニルオキシカルボニルアミノなどが挙げられる。)、スルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメタンスルホニルアミノ、ベンゼンスルホニルアミノなどが挙げられる。)、スルファモイル基(好ましくは炭素数0〜30、より好ましくは炭素数0〜20、特に好ましくは炭素数0〜12のスルファモイル基であり、例えばスルファモイル、メチルスルファモイル、ジメチルスルファモイル、フェニルスルファモイルなどが挙げられる。)、
【0043】
カルバモイル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12のカルバモイル基であり、例えばカルバモイル、メチルカルバモイル、ジエチルカルバモイル、フェニルカルバモイルなどが挙げられる。)、アルキルチオ基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12のアルキルチオ基であり、例えばメチルチオ、エチルチオなどが挙げられる。)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12のアリールチオ基であり、例えばフェニルチオなどが挙げられる。)、ヘテロ環チオ基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12のヘテロ環チオ基であり、例えばピリジルチオ、2−ベンズイミゾリルチオ、2−ベンズオキサゾリルチオ、2−ベンズチアゾリルチオなどが挙げられる。)、
【0044】
スルホニル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12のスルホニル基であり、例えばメシル、トシルなどが挙げられる。)、スルフィニル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12のスルフィニル基であり、例えばメタンスルフィニル、ベンゼンスルフィニルなどが挙げられる。)、ウレイド基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12のウレイド基であり、例えばウレイド、メチルウレイド、フェニルウレイドなどが挙げられる。)、リン酸アミド基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12のリン酸アミド基であり、例えばジエチルリン酸アミド、フェニルリン酸アミドなどが挙げられる。)、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子であり、より好ましくはフッ素原子が挙げられる)、
【0045】
シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、オキソ基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、ヘテロ環基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜12のヘテロ環基であり、ヘテロ原子としては、例えば窒素原子、酸素原子、硫黄原子、具体的には例えばイミダゾリル、ピリジル、キノリル、フリル、チエニル、ピペリジル、モルホリノ、ベンズオキサゾリル、ベンズイミダゾリル、ベンズチアゾリル、カルバゾリル基、アゼピニル基などが挙げられる。)、シリル基(好ましくは炭素数3〜40、より好ましくは炭素数3〜30、特に好ましくは炭素数3〜24のシリル基であり、例えばトリメチルシリル、トリフェニルシリルなどが挙げられる。)、シリルオキシ基(好ましくは炭素数3〜40、より好ましくは炭素数3〜30、特に好ましくは炭素数3〜24のシリルオキシ基であり、例えばトリメチルシリルオキシ、トリフェニルシリルオキシなどが挙げられる。)などが挙げられる。これらの置換基は、更に上記置換基群Zより選択されるいずれか1つ以上の置換基により置換されてもよい。
【0046】
は水素原子又はアルキル基であることが好ましく、水素原子、メチル基又はエチル基であることがより好ましく、水素原子であることが更に好ましい。
【0047】
は−CO−、−COO−、−CONR20−、−OCO−、メチレン基、フェニレン基、又は−CCO−基を表す。R20は水素原子、アルキル基、アリール基、又はアラルキル基を表し、水素原子、アルキル基、アリール基が好ましく、その好ましい範囲は置換基Zで説明したアルキル基、アリール基の好ましい範囲と同義である。これらのうち、Jとしては−CO−、−COO−又は−OCO−が好ましく、−COO−が特に好ましい。
【0048】
は単結合又は2価の連結基を表す。2価の連結基としては、例えば、直鎖、分岐若しくは環状のアルキレン基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜12、更に好ましくは炭素数1〜4のアルキレン基であり、例えばメチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチレン、へキシレン、オクチレン、デシレンなどが挙げられる。)、アルキレンオキシ基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜12、更に好ましくは炭素数1〜4のアルキレンオキシ基であり、例えばメチレンオキシ、エチレンオキシ、プロピレンオキシ、ブチレンオキシ、ペンチレンオキシ、へキシレンオキシ、オクチレンオキシ、デシレンオキシなどが挙げられる。)、アラルキレン基(好ましくは炭素数7〜30、より好ましくは炭素数7〜13のアラルキレン基であり、例えばベンジリデン、シンナミリデンなどが挙げられる。)、アリーレン基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜15のアリーレン基であり、例えば、フェニレン、クメニレン、メシチレン、トリレン、キシリレンなどが挙げられる。)などが挙げられる。これらは更に置換基を有していてもよい。更なる置換基としてはヒドロキシ基又はハロゲン原子が好ましく、ヒドロキシ基又はフッ素原子がより好ましく、フッ素原子が特に好ましい。また、分子内にエーテル結合を含むことが好ましい。
【0049】
は、単結合、アルキレン基又はアルキレンオキシ基が好ましく、単結合、炭素数1〜4のアルキレン基又は炭素数1〜4のアルキレンオキシ基であることが好ましい。
【0050】
前記一般式(I)中、Rは水素原子又は置換基を表し、その例としては前記置換基群Zのなかで説明した基より選択される。
は、少なくとも一つのフッ素原子を有する置換基であることが好ましい。前記「少なくとも一つのフッ素原子を有する置換基」は、少なくとも一つのフッ素原子を有するアルキル基、又は少なくとも一つのフッ素原子を有するアリール基であることが好ましく、少なくとも一つのフッ素原子を有するアルキル基であることが更に好ましい。
が、少なくとも一つのフッ素原子を有する置換基の場合、炭素ーフッ素の結合力が強く分極率が小さいため表面エネルギーが低下し、分子間相互作用が小さいことによる撥水、撥油性能が期待され、本組成を含んだ膜の加湿時における膨潤を抑制することができる。
また、前記「少なくとも一つのフッ素原子を有する置換基」は、炭素数が1〜50であることが好ましく、1〜10であることがより好ましい。炭素数がこの範囲であれば相溶性、本発明のガス分離膜の柔軟性でも好ましい。フッ素原子の数は1〜30であることが好ましく、1〜10であることがより好ましい。フッ素原子の数がこの範囲であれば相溶性、本発明のガス分離膜の柔軟性を付与する観点であり好ましい。
【0051】
〔一般式(II)で表される部分構造〕
一般式(II)で表される部分構造について詳しく説明する。式中、R水素原子又は置換基を表す。置換基の例としては、前記置換基群Zのなかで説明した置換基と同じ意味を表し、Rは好ましくは水素原子又はアルキル基であり、更に好ましくは水素原子である。
は−CO−、−COO−、−CONR−、−OCO−、メチレン基、フェニレン基、又は−CCO−基を表す。Rは水素原子、アルキル基、アリール基、又はアラルキル基を表す。Rは水素原子、アルキル基、アリール基、又はアラルキル基を表し、水素原子、アルキル基、アリール基が好ましく、その好ましい範囲は置換基Zで説明したアルキル基、アリール基の好ましい範囲と同義である。
は単結合又は2価の連結基を表す。2価の連結基としては、例えば、直鎖、分岐若しくは環状のアルキレン基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜12、更に好ましくは炭素数1〜4のアルキレン基であり、例えばメチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチレン、へキシレン、オクチレン、デシレンなどが挙げられる。)、アルキレンオキシ基(好ましくは炭素数1〜100、より好ましくは炭素数1〜50、更に好ましくは炭素数1〜20のアルキレンオキシ基であり、例えばメチレンオキシ、エチレンオキシ、プロピレンオキシ、ブチレンオキシ、ペンチレンオキシ、へキシレンオキシ、オクチレンオキシ、デシレンオキシなどが挙げられる。)、アラルキレン基(好ましくは炭素数7〜30、より好ましくは炭素数7〜13のアラルキレン基であり、例えばベンジリデン、シンナミリデンなどが挙げられる。)、アリーレン基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜15のアリーレン基であり、例えば、フェニレン、クメニレン、メシチレン、トリレン、キシリレンなどが挙げられる。)などが挙げられる。これらは更に置換基を有していてもよい。分子内にエーテル結合を有していることが好ましい。Wは、単結合、アルキレン基又はアルキレンオキシ基が好ましく、単結合、炭素数1〜20のアルキレン基又は炭素数1〜4のアルキレンオキシ基であることが好ましい。
はn価の連結基を表し、その具体的な例としては下記の(L−1)〜(L−35)で表される構造単位又はこれらを組み合わせて構成される連結基を挙げることができる。
【0052】
【化15】

【0053】
前記(L−1)〜(L−35)より選択される基より構成されるLはアルキレン基、アルキレンオキシ基又はアリーレン基が好ましく、アルキレン基、又はアルキレンオキシ基であることがより好ましく、分子内にエーテル結合を有していることが更に好ましい。
nは2以上の整数を表す。好ましくは、nは2〜6であり、より好ましくは2〜4である。一般式(I)のR又は一般式(II)の連結基Lの少なくともいずれか一方は、少なくともフッ素原子を有する置換基又は連結基である。
【0054】
〔一般式(I−1)で表される部分構造〕
前記一般式(I)で表される部分構造が下記一般式(I−1)で表される部分構造であることが好ましい。
【0055】
【化16】

【0056】
(一般式(I−1)中、Rは水素原子又は置換基を表し、Lは−CF−又は−CFCFO−を表す。lは1以上の整数を表す。R及びWは、前記一般式(I)におけるR及びWと同義である。複数存在するR、W、L、l及びRは同一でも異なっていてもよい。)
【0057】
一般式(I−1)で表される部分構造について詳しく説明する。Rは、水素原子又は置換基を表し、好ましくは水素原子、アルキル基、ハロゲン、であり、より好ましくは水素原子、アルキル基、ハロゲンであり、更に好ましくはハロゲン、特にフッ素原子である。
【0058】
は−CF−又は−CFCFO−を表す。lは1以上の整数を表し、好ましくは1〜30であり、更に好ましくは1〜10であり、より好ましくは1〜5である。
及びWは、前記一般式(I)におけるR及びWと同義であり、その好ましい範囲も同じである。
【0059】
〔一般式(II−1)で表される部分構造〕
前記一般式(II)で表される部分構造が下記一般式(II−1)で表される部分構造であることが好ましい。
【0060】
【化17】

【0061】
(一般(II−1)式中、Lは−CF−又は−CFCFO−を表す。W及びRは前記一般式(II)におけるW及びRと同義である。WはWと同義である。RはRと同義である。m、x及びzは1以上の整数を表す。複数存在するL、及びmは同一でも異なっていてもよい。)
【0062】
一般式(II−1)で表される部分構造について詳しく説明する。Lは−CF−又は−CFCFO−を表す。mは1以上の整数を表し、好ましくは1〜30であり、更に好ましくは1〜10であり、より好ましくは1〜5である。
【0063】
及びRは前記一般式(II)におけるW及びRと同義であり、WはWと同義であり、RはRと同義であり、好ましい範囲も同様である。
zは1以上の整数を表す。好ましくはzは1〜6であり、より好ましくは1〜4である。
【0064】
本発明の他の態様のガス分離膜は、少なくとも1種の下記一般式(Ia)で表される化合物と、少なくとも1種の下記の一般式(IIa)で表される化合物とを含有する組成物により形成されたものである。
【0065】
【化18】

【0066】
(一般式(Ia)中、Rは水素原子又は置換基を表す。Jは−CO−、−COO−、−CONR−、−OCO−、メチレン基、フェニレン基、又は−CCO−基を表す。Rは水素原子、アルキル基、アリール基、又はアラルキル基を表す。Wは単結合又は2価の連結基を表す。Aは、フッ素原子又は少なくとも一つのフッ素原子を有する置換基を表す。)
【0067】
一般式(IIa)におけるR、J、W、及びAの例示及び好ましい範囲は一般式(II)のR、J、W、及びAの例示及び好ましい範囲と同様である。
【0068】
【化19】

【0069】
(一般式(IIa)中、R複数存在する場合は各々独立に水素原子又は置換基を表す。Jは−CO−、−COO−、−CONR−、−OCO−、メチレン基、フェニレン基、又は−CCO−基を表す。Rは水素原子、アルキル基、アリール基、又はアラルキル基を表す。Wは単結合又は2価の連結基を表す。Lはy価の連結基を表す。yは2以上の整数を表す。複数存在するJ、W、及びRは同一でも異なっていてもよい。)
【0070】
一般式(IIa)におけるR、J、W、及びyの例示及び好ましい範囲は一般式(II)のR、J、W、及びnの例示及び好ましい範囲と同様である。
【0071】
本発明の他の態様のガス分離膜は、少なくとも1種の下記一般式(Ib)で表される化合物と、少なくも1種の下記の一般式(IIb)で表される化合物とを含有する組成物により形成されたものである。
【0072】
【化20】

【0073】
(一般式(Ib)中、Rは水素原子又は置換基を表す。Rは水素原子又は置換基を表す。Jは−CO−、−COO−、−CONR20−、−OCO−、メチレン基、フェニレン基、又は−CCO−基を表す。R20は水素原子、アルキル基、アリール基、又はアラルキル基を表す。Wは単結合又は2価の連結基を表す。)
【0074】
【化21】

【0075】
(一般式(IIb)中、Rは水素原子又は置換基を表す。Lは少なくとも一つのフッ素原子を有するn価の連結基を表す。nは2以上の整数を表す。Jは−CO−、−COO−、−CONR−、−OCO−、メチレン基、フェニレン基、又は−CCO−基を表す。Rは水素原子、アルキル基、アリール基、又はアラルキル基を表す。Wは単結合又は2価の連結基を表す。複数存在するJ、W、及びRは同一でも異なっていてもよい。)
【0076】
一般式(Ib)におけるR、J及びWの例示及び好ましい範囲は一般式(I−1)のR、J及びWの例示及び好ましい範囲と同様である。
一般式(IIb)におけるR、J、W、及びnの例示及び好ましい範囲は一般式(II)のR、J、W、及びnの例示及び好ましい範囲と同様である。
【0077】
別の態様におけるガス分離膜は、少なくとも1種の前記一般式(Ia)で表される化合物と、少なくも1種の前記一般式(IIb)で表される化合物とを含有する組成物により形成されたガス分離膜である。
【0078】
前記一般式(Ia)で表される化合物が下記一般式(Ia−1)で表される化合物であることが好ましい。
【0079】
【化22】

【0080】
(一般式(Ia−1)中、Rは水素原子又は置換基を表し、LはCF又はCFCFOを表す。lは1以上の整数を表す。R及びWは、前記一般式(Ia)におけるR及びWと同義である。複数存在するLは同一でも異なっていてもよい。)
【0081】
一般式(Ia−1)におけるR、W、l及びRの例示及び好ましい範囲は一般式(I−1)のR、W、l及びRの例示及び好ましい範囲と同様である。
【0082】
前記一般式(IIb)で表される化合物が下記一般式(IIb−1)で表される化合物であることが好ましい。
【0083】
【化23】

【0084】
(一般式(IIb−1)中、W及びWはそれぞれ独立に、単結合又は二価の連結基を表し、mは1以上の整数を表す。Rは、それぞれ独立に前記一般式(IIb)におけるRと同義であり、Lは−CF−又は−CFCFO−を表す。複数存在するLは同一でも異なっていてもよい。)
【0085】
一般式(IIb−1)におけるR、及びLの例示及び好ましい範囲は一般式(II)のR、及びLの例示及び好ましい範囲と同様である。W、Wの例示及び好ましい範囲はWの例示及び好ましい範囲と同様である。
【0086】
一般式(I−1)で表される部分構造は更に、下記一般式(I−2)で表される部分構造であることが好ましい。
【0087】
【化24】

【0088】
(一般式(I−2)中、Rは水素原子又は置換基を表す。R、R、R10及びR11は水素原子又はフッ素原子を表し、oは0又は1である。複数存在するR、R、R、R10及びR11は同一でも異なっていてもよい。)
【0089】
は一般式(I)のRの例示及び好ましい範囲と同様である。
【0090】
前記一般式(Ia−1)で表される化合物が下記一般式(Ia−2)で表される化合物であることが好ましい。 また、一般式(I−2)で表される化合物は、下記一般式(Ia−2)で表される化合物より形成されることが好ましい。
【0091】
【化25】

【0092】
一般式(Ia−2)中、R、R、R、R10及びR11及びoは前記一般式(I−2)で説明したR、R、R、R10及びR11及びoと同義である。)
【0093】
本発明の態様のガス分離膜は、下記一般式(I−1)で表される部分構造及び下記一般式(III)で表される部分構造とを含むポリマー(プレポリマー(III)と称する場合がある)を含有することが好ましい。
プレポリマー(III)はフッ素原子を共重合体中に含み、かつ分子内に反応性基を含み、前述の一般式(I)で表される部分構造と、一般式(II)で表される部分構造とを含むポリマーと同様に分離膜に用いると優れたガス分離性を奏する。また、揮発性が低く、粘度の調整がし易いため製膜の際の取り扱い性に優れる。
【0094】
【化26】

【0095】
(上記一般式中、Rは水素原子又は置換基を表し、LはCF又はCFCFOを表す。lは1以上の整数を表す。R及びWは、前記一般式(Ia)におけるR及びWと同義である。
12及びW13はそれぞれ独立に、単結合又は二価の連結基を表す。R12は水素原子又は置換基を表し、J12は一般式(IIb−1)におけるJと同義である。R22は水素原子あるいはアルキル基を表す。Lは二価の連結基を表す。複数存在するR、L、l、R、W、W12、W13、R12、J12、及びR22は同一でも異なっていてもよい。
ただし、一般式(I−1)のR及び一般式(III)のLの少なくともいずれか一方は、フッ素原子を有する。)
【0096】
一般式(I−1)及び一般式(III)において、R、W、L、l及びRの例示及び好ましい範囲は一般式(Ia−1)のR、W、L、l及びRの例示及び好ましい範囲と同様である。
は二価の連結基を表し、その具体的な例としては前記の(L−1)〜(L−35)で表される構造単位又はそれらを組み合わせて構成される連結基を挙げることができる。R12、W12、W13及びJ12は一般式(IIb−1)におけるR、W、W及びJの例示及び好ましい範囲と同様である。R22は水素原子あるいはアルキル基を表し、好ましくは水素原子あるいはメチル基である。
【0097】
一般式(I−1)で表される部分構造及び一般式(III)で表される部分構造に対して、更に他のモノマーとの共重合成分(グラフト、ブロック、ランダム)を有していても良い。
【0098】
プレポリマー(III)は、下記一般式(I−2)で表される部分構造及び下記一般式(III−1)で表される部分構造とを含むポリマー(プレポリマー(III−1)と称する場合がある)であることが特に好ましい。
【0099】
【化27】

【0100】
(一般式(I−2)において、R、R、R、R10及びR11は水素原子又はフッ素原子を表し、oは0又は1である。R、R、R、R10、R11及びoは一般式(一般式(I−1))の例示及び好ましい範囲と同様である。W12及びW13はそれぞれ独立に、単結合又は二価の連結基を表す。R12は水素原子又は置換基を表し、J12は一般式(IIb−1)におけるJと同義である。R22は水素原子あるいはアルキル基を表す。前記一般式(II)におけるRと同義であり、Lは二価の連結基を表す。複数存在するR、R、R、R10、R11、o、W12、W13、R12、J12、L、及びR22は同一でも異なっていてもよい。
【0101】
プレポリマーの利用、合成法としては、特開2009−263703号及び特開2010−77322号等の記載を参考とすることができる。
【0102】
本発明の一般式(I)で表される部分構造と、一般式(II)で表される部分構造とを含むポリマーを含む分離膜が気体分離において高性能を奏する機構については、まずフッ素原子は周期表の中で電気陰性度が最も大きく、また小さい原子であるが電子が原子核の陽電荷により強くひきつけられているため分極率は小さいことが要因として考えられる。一般的にフッ素系の化合物はC−Fの分極構造(電気陰性度C:2.5、F:4.0)のため二酸化炭素のような局所的に分極構造を有する分子(四重極子)と双極子−双極子間で相互作用しやすく、フッ素を多数有するパーフルオロポリマーは分子量が1万を越えるような化合物においても超臨界二酸化炭素に溶解するなど、二酸化炭素との相溶性が高いことが知られている。またフッ素は小さい分子なため電子は原子核の陽電荷に強く引き付けられて分極率は小さい。つまり、フッ素を有する化合物は分子間相互作用が小さく沸点が低いなどの特徴が知られている。
【0103】
一般式(I−1)よりも一般式(I−2)が好ましく、一般式(Ia−1)よりも一般式(Ia−2)が好ましい関係について説明する。本発明者らが鋭意検討した結果、実際に本発明における検討においてもフルオロアルキル鎖を増やすほど、二酸化炭素ガスの透過性は大きくなるが、二酸化炭素ガスとメタンガスとの分離選択性は低下する。これは、推定ではあるがフルオロアルキル鎖を増やすことによる二酸化炭素の膜への溶解性の向上だけでなく、同時に分子間相互作用が小さくなり膜における自由体積分率が大きくなることに起因する拡散性が大きくなる効果も生じ、後者の寄与がより顕著なために、二酸化炭素よりも大きな分子であるメタンも拡散、透過しやすくなり、結果として二酸化炭素ガスとメタンガスとの分離選択性は低下するものと推定される。従って、二酸化炭素と水素ガスとの、又は二酸化炭素ガスとメタンガスとの高い分離選択性を保持しつつ、フッ素原子を含む部分構造を導入することによる膜の膨潤を抑制するためには、単位部分構造中の適切なフッ素原子数及びポリマーに占める部分構造の割合が重要であることを見出したものである。
【0104】
前記一般式(I)〜一般式(II−1)で表される部分構造は、それぞれの部分構造に対応するモノマーを共重合させることにより得ることができる。そのモノマーとして好ましい具体例(例示モノマーM−1〜M−80)を以下に挙げるが、本発明はこれらに限るものではない。また具体例におけるp、q及びrは任意の正の整数を表す。
【0105】
【化28】

【0106】
【化29】

【0107】
【化30】

【0108】
【化31】

【0109】
【化32】

【0110】
【化33】

【0111】
【化34】

【0112】
【化35】

【0113】
本発明の一般式(I)〜一般式(II−1)の部分構造を含むポリマーを合成する前記各化合物は、市販されており、また容易に合成することもできる。
本発明にかかるポリマーは、他のモノマーとの共重合体であってもよい。用いられる他のモノマーとしては、例えば、アクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類、アクリルアミド類、メタクリルアミド類、ビニルエステル類、スチレン類、アクリル酸、メタクリル酸、アクリロニトリル、無水マレイン酸、マレイン酸イミド等の公知のモノマーも挙げられる。このようなモノマー類を共重合させることで、製膜性、膜強度、親水性、疎水性、溶解性、反応性、安定性等の諸物性を改善することができる。モノマーの合成法としては、例えば丸善株式会社 日本化学会編の「第5版 実験科学講座16 有機化合物の合成(II−1)」におけるエステル合成の項目や「第5版 実験科学講座26 高分子化学」におけるモノマーの取り扱い、精製の項目などを参考とすることができる。
【0114】
本発明のガス分離膜は、一般式(I)〜一般式(II−1)の部分構造に対応するモノマーにおける重合性基の機能により、何らかのエネルギーを付与することで硬化することにより形成することができる。
【0115】
〔ガス分離膜の製造方法〕
本発明のガス分離膜の製造方法は、少なくとも1種の下記一般式(I)で表される部分構造と、少なくとも1種の下記の一般式(II)で表される部分構造とを含むポリマーを含有するガス分離膜を、活性放射線を照射することにより形成する製造方法である。
【0116】
【化36】

【0117】
(一般式(I)中、R及びRは各々独立に水素原子又は置換基を表す。Jは−CO−、−COO−、−CONR20−、−OCO−、メチレン基、フェニレン基、又は−CCO−基を表す。R20は水素原子、アルキル基、アリール基、又はアラルキル基を表す。Wは単結合又は2価の連結基を表す。複数存在するJ、W、R及びRは同一でも異なっていてもよい。)
【0118】
【化37】

【0119】
(一般式(II)中、Rは水素原子又は置換基を表す。Lはn価の連結基を表す。nは2以上の整数を表す。Jは−CO−、−COO−、−CONR−、−OCO−、メチレン基、フェニレン基、又は−CCO−基を表す。Rは水素原子、アルキル基、アリール基、又はアラルキル基を表す。Wは単結合又は2価の連結基を表す。複数存在するJ、W、Rは同一でも異なっていてもよい。)
ただし、一般式(I)のR及び一般式(II)のLの少なくともいずれか一方は、フッ素原子を有する。
【0120】
好ましくは後述する重合開始剤を含有し、活性放射線の照射により硬化することにより形成されるガス分離膜である。ここで活性放射線とは、その照射により膜組成物中において開始種を発生させうるエネルギーを付与することができるものであれば、特に制限はなく、広くα線、γ線、X線、紫外線、可視光線、電子線などを包含するものである。なかでも、硬化感度及び装置の入手容易性の観点から紫外線及び電子線が好ましく、特に紫外線が好ましい。
【0121】
本発明において、紫外線を使用する場合には、後述の光重合開始剤を添加することが必要となる。電子線硬化の場合は、重合開始剤が不要であり、透過深さも深いので好ましい。電子線加速器としてはスキャニング方式、ダブルスキャニング方式又はカーテンビーム方式が採用できるが、好ましいのは比較的安価で大出力が得られるカーテンビーム方式である。電子線特性としては、加速電圧が30〜1000kV、好ましくは50〜300kVである。吸収線量として好ましくは5〜200kGy(0.5〜20Mrad)、より好ましくは20〜100kGy(2〜10Mrad)である。加速電圧及び吸収線量が上記範囲内であると、十分な量のエネルギーが透過し、エネルギー効率がよい。電子線を照射する雰囲気は窒素雰囲気により酸素濃度を200ppm以下にすることが好ましく、この範囲内では表面近傍の架橋、硬化反応が良好に進む。
【0122】
紫外線光源としては、水銀灯が用いられる。水銀灯は20〜240W/cmのランプを用い、速度0.3〜20m/分で使用される。膜と水銀灯との距離は一般に1〜30cmであることが好ましい。卓上型紫外線硬化装置を用いる場合は、1秒〜10分程度、素材、環境により光量、光源の配置を適宜調整したうえで硬化させるのが望ましい。
【0123】
放射線硬化装置、条件などについては、「UV・EB硬化技術」((株)総合技術センター発行)や「低エネルギー電子線照射の応用技術」(2000年、(株)シーエムシー発行)などに記載されている公知のものを用いることができる。硬化時に加熱工程を併用してもよい。
【0124】
本発明のガス分離膜は少なくとも1種の前記一般式(Ia)で表される化合物と、少なくも1種の一般式(IIb)で表される化合物とを含有する組成物により形成される。
前記一般式(Ia)で表される化合物が下記一般式(Ia−1)で表される化合物であることが好ましい。
【0125】
【化38】

【0126】
(一般式(Ia−1)中、Rは水素原子又は置換基を表し、LはCF又はCFCFOを表す。lは1以上の整数を表す。R及びWは、前記一般式(Ia)におけるR及びWと同義である。複数存在するLは同一でも異なっていてもよい。)
【0127】
一般式(Ia−1)におけるR、W、l及びRの例示及び好ましい範囲は一般式(I−1)のR、W、l及びRの例示及び好ましい範囲と同様である。
【0128】
前記一般式(IIb)で表される化合物が下記一般式(IIb−1)で表される化合物であることが好ましい。
【0129】
【化39】

【0130】
(一般式(IIb−1)中、W及びWはそれぞれ独立に、単結合又は二価の連結基を表し、mは1以上の整数を表す。Rは、前記一般式(IIa)におけるRと同義であり、Lは−CF−又は−CFCFO−を表す。複数存在するLは同一でも異なっていてもよい。)
【0131】
一般式(IIb−1)におけるR、l、及びLの例示及び好ましい範囲は一般式(II)のR、l、及びLの例示及び好ましい範囲と同様である。W、Wの例示及び好ましい範囲はWの例示及び好ましい範囲と同様である。
【0132】
〔重合開始剤〕
本発明のガス分離膜を形成する工程において、ラジカル重合開始剤を添加することが好ましく、光重合開始剤を添加することが特に好ましい。
本発明における光重合開始剤は光の作用、又は、増感色素の電子励起状態との相互作用を経て、化学変化を生じ、ラジカル、酸及び塩基のうちの少なくともいずれか1種を生成する化合物である。
光重合開始剤は、照射される活性光線、例えば、400〜200nmの紫外線、遠紫外線、g線、h線、i線、KrFエキシマレーザー光、ArFエキシマレーザー光、電子線、X線、分子線又はイオンビームなどに感度を有するものを適宜選択して使用することができる。
【0133】
具体的な光重合開始剤は当業者間で公知のものを制限なく使用でき、具体的には、例えば、Bruce M. Monroeら著、Chemical Revue,93,435(1993).や、R.S.Davidson著、Journal of Photochemistry and biology A :Chemistry,73.81(1993).や、J.P.Faussier’’Photoinitiated Polymerization−Theory and Applications’’:Rapra Review vol.9,Report,Rapra Technology(1998).や、M.Tsunooka et al.,Prog.Polym.Sci.,21,1(1996).に多く、記載されている。また、(有機エレクトロニクス材料研究会編、「イメージング用有機材料」、ぶんしん出版(1993年)、187〜192ページ参照)に化学増幅型フォトレジストや光カチオン重合に利用される化合物が多く、記載されている。更には、F.D.Saeva,Topics in Current Chemistry,156,59(1990).、G.G.Maslak,Topics in Current Chemistry,168,1(1993).、H.B.Shuster et al,JACS,112,6329(1990).、I.D.F.Eaton et al,JACS,102,3298(1980).等に記載されているような、増感色素の電子励起状態との相互作用を経て、酸化的若しくは還元的に結合解裂を生じる化合物群も知られる。
【0134】
好ましい光重合開始剤としては(a)芳香族ケトン類、(b)芳香族オニウム塩化合物、(c)有機過酸化物、(d)ヘキサアリールビイミダゾール化合物、(e)ケトオキシムエステル化合物、(f)ボレート化合物、(g)アジニウム化合物、(h)メタロセン化合物、(i)活性エステル化合物、(j)炭素ハロゲン結合を有する化合物等が挙げられる。
【0135】
(a)芳香族ケトン類の好ましい例としては、「RADIATION CURING IN POLYMER SCIENCE AND TECHNOLOGY」J.P.FOUASSIER J.F.RABEK (1993)、p77〜117記載のベンゾフェノン骨格或いはチオキサントン骨格を有する化合物等が挙げられる。より好ましい(a)芳香族ケトン類の例としては、特公昭47−6416記載のα−チオベンゾフェノン化合物、特公昭47−3981記載のベンゾインエーテル化合物、特公昭47−22326記載のα−置換ベンゾイン化合物、特公昭47−23664記載のベンゾイン誘導体、特開昭57−30704号公報記載のアロイルホスホン酸エステル、特公昭60−26483号公報記載のジアルコキシベンゾフェノン、特公昭60−26403号公報、特開昭62−81345号公報記載のベンゾインエーテル類、特公平1−34242号公報、米国特許第4,318,791号、ヨーロッパ特許0284561A1号記載のα−アミノベンゾフェノン類、特開平2−211452号公報記載のp−ジ(ジメチルアミノベンゾイル)ベンゼン、特開昭61−194062号公報記載のチオ置換芳香族ケトン、特公平2−9597号公報記載のアシルホスフィンスルフィド、特公平2−9596号公報記載のアシルホスフィン、特公昭63−61950号公報記載のチオキサントン類、特公昭59−42864号公報記載のクマリン類等を挙げることができる。
【0136】
(b)芳香族オニウム塩としては、周期律表の第V、VI及びVII族の元素、具体的にはN、P、As、Sb、Bi、O、S、Se、Te、又はIの芳香族オニウム塩が含まれる。例えば、欧州特許104143号明細書、米国特許4837124号明細書、特開平2−150848号公報、特開平2−96514号公報に記載されるヨードニウム塩類、欧州特許370693号明細書、同233567号明細書、同297443号明細書、同297442号明細書、同279210号明細書、及び同422570号各明細書、米国特許3902144号明細書、同4933377号明細書、同4760013号明細書、同4734444号明細書、及び同2833827号明細書各明細書に記載されるスルホニウム塩類、ジアゾニウム塩類(置換基を有してもよいベンゼンジアゾニウム等)、ジアゾニウム塩樹脂類(ジアゾジフェニルアミンのホルムアルデヒド樹脂等)、N−アルコキシピリジニウム塩類等(例えば、米国特許4,743,528号明細書、特開昭63−138345号公報、特開昭63−142345号公報、特開昭63−142346号公報、及び特公昭46−42363号公報の各公報等に記載されるもので、具体的には1−メトキシ−4−フェニルピリジニウム テトラフルオロボレート等)、更には特公昭52−147277号公報、同52−14278号公報、及び同52−14279号公報の各公報記載の化合物が好適に使用される。これらは活性種としてラジカルや酸を生成する。
【0137】
(c)「有機過酸化物」としては分子中に酸素−酸素結合を1個以上有する有機化合物のほとんど全てが含まれるが、その例としては、3,3′4,4′−テトラ−(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3′4,4′−テトラ−(t−アミルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3′4,4′−テトラ−(t−ヘキシルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3′4,4′−テトラ−(t−オクチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3′4,4′−テトラ−(クミルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3′4,4′−テトラ−(p−イソプロピルクミルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、ジ−t−ブチルジパーオキシイソフタレートなどの過酸化エステル系が好ましい。
【0138】
(d)ヘキサアリールビイミダゾールとしては、特公昭45−37377号公報、特公昭44−86516号公報記載のロフィンダイマー類、例えば2,2′−ビス(o−クロロフェニル)−4,4′,5,5′−テトラフェニルビイミダゾール、2,2′−ビス(o−ブロモフェニル)−4,4′,5,5′−テトラフェニルビイミダゾール、2,2′−ビス(o,p−ジクロロフェニル)−4,4′,5,5′−テトラフェニルビイミダゾール、2,2′−ビス(o−クロロフェニル)−4,4′,5,5′−テトラ(m−メトキシフェニル)ビイミダゾール、2,2′−ビス(o,o′−ジクロロフェニル)−4,4′,5,5′−テトラフェニルビイミダゾール、2,2′−ビス(o−ニトロフェニル)−4,4′,5,5′−テトラフェニルビイミダゾール、2,2′−ビス(o−メチルフェニル)−4,4′,5,5′−テトラフェニルビイミダゾール、2,2′−ビス(o−トリフルオロフェニル)−4,4′,5,5′−テトラフェニルビイミダゾール等が挙げられる。
【0139】
(e)ケトオキシムエステルとしては3−ベンゾイロキシイミノブタン−2−オン、3−アセトキシイミノブタン−2−オン、3−プロピオニルオキシイミノブタン−2−オン、2−アセトキシイミノペンタン−3−オン、2−アセトキシイミノ−1−フェニルプロパン−1−オン、2−ベンゾイロキシイミノ−1−フェニルプロパン−1−オン、3−p−トルエンスルホニルオキシイミノブタン−2−オン、2−エトキシカルボニルオキシイミノ−1−フェニルプロパン−1−オン等が挙げられる。
【0140】
本発明に用いることができる光重合開始剤の他の例である(f)ボレート塩の例としては米国特許3,567,453号明細書、同4,343,891号明細書、ヨーロッパ特許109,772号明細書、同109,773号明細書に記載されている化合物が挙げられる。
光重合開始剤の他の例である(g)アジニウム塩化合物の例としては、特開昭63−138345号公報、特開昭63−142345号公報、特開昭63−142346号公報、特開昭63−143537号公報並びに特公昭46−42363号公報に記載のN−O結合を有する化合物群を挙げることができる。
【0141】
光重合開始剤の他の例である(h)メタロセン化合物の例としては、特開昭59−152396号公報、特開昭61−151197号公報、特開昭63−41484号公報、特開平2−249号公報、特開平2−4705号公報に記載のチタノセン化合物並びに、特開平1−304453号公報、特開平1−152109号公報に記載の鉄−アレーン錯体を挙げることができる。
上記チタノセン化合物の具体例としては、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ジ−クロライド、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−フェニル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,5,6−テトラフルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,4,6−トリフルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−2,6−ジフルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,4−ジフルオロフェニ−1−イル、ジ−メチルシクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニ−1−イル、ジ−メチルシクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,5,6−テトラフルオロフェニ−1−イル、ジ−メチルシクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,4−ジフルオロフェニ−1−イル、ビス(シクロペンタジエニル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(ピリ−1−イル)フェニル)チタニウム、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(メチルスルホンアミド)フェニル〕チタン、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(N−ブチルビアロイル−アミノ)フェニル〕チタン等を挙げることができる。
【0142】
(i)活性エステル化合物の例としては、欧州特許0290750号明細書、同046083号明細書、同156153号明細書、同271851号明細書、及び同0388343号明細書の各明細書、米国特許3901710号明細書、及び同4181531号各明細書、特開昭60−198538号公報、及び特開昭53−133022号公報の各公報に記載されるニトロベンズルエステル化合物、欧州特許0199672号明細書、同84515号明細書、同199672号明細書、同044115号明細書、及び同0101122号明細書の各明細書、米国特許4618564号明細書、同4371605号明細書、及び同4431774号明細書の各明細書、特開昭64−18143号公報、特開平2−245756号公報、及び特開平4−365048号公報の各公報記載のイミノスルホネート化合物、特公昭62−6223号公報、特公昭63−14340号公報、及び特開昭59−174831号公報の各公報に記載される化合物等が挙げられる。
【0143】
(j)炭素ハロゲン結合を有する化合物の好ましい例としては、たとえば、若林ら著、Bull.Chem.Soc.Japan,42、2924(1969)記載の化合物、英国特許1388492号明細書記載の化合物、特開昭53−133428号公報記載の化合物、独国特許3337024号明細書記載の化合物等を挙げることができる。
【0144】
また、F.C.Schaefer等によるJ.Org.Chem.29、1527(1964)記載の化合物、特開昭62−58241号公報記載の化合物、特開平5−281728号公報記載の化合物等を挙げることができる。ドイツ特許第2641100号明細書に記載されているような化合物、ドイツ特許第3333450号明細書に記載されている化合物、ドイツ特許第3021590号明細書に記載の化合物群、又はドイツ特許第3021599号明細書に記載の化合物群、等を挙げることができる。
【0145】
重合開始剤の使用量は好ましくは、重合性化合物の量の0.01質量%〜10質量%であり、より好ましくは0.1質量%〜5質量%である。
【0146】
〔共増感剤〕
更に本発明のガス分離膜の作製プロセスにおいて、感度を一層向上させる、又は酸素による重合阻害を抑制する等の作用を有する公知の化合物を共増感剤として、更に、加えてもよい。
このような共増感剤の例としては、アミン類、例えばM. R. Sanderら著「Journal of Polymer Society」第10巻3173頁(1972)、特公昭44−20189号公報、特開昭51−82102号公報、特開昭52−134692号公報、特開昭59−138205号公報、特開昭60−84305号公報、特開昭62−18537号公報、特開昭64−33104号公報、Research Disclosure 33825号に記載の化合物等が挙げられ、具体的には、トリエタノールアミン、p−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、p−ホルミルジメチルアニリン、p−メチルチオジメチルアニリン等が挙げられる。
【0147】
別の例としてはチオール及びスルフィド類、例えば、特開昭53−702号公報、特公昭55−500806号公報、特開平5−142772号公報記載のチオール化合物、特開昭56−75643号公報のジスルフィド化合物等が挙げられ、具体的には、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾオキサゾール、2−メルカプトベンゾイミダゾール、2−メルカプト−4(3H)−キナゾリン、β−メルカプトナフタレン等が挙げられる。
また別の例としては、アミノ酸化合物(例、N−フェニルグリシン等)、特公昭48−42965号公報に記載の有機金属化合物(例、トリブチル錫アセテート等)、特公昭55−34414号公報に記載の水素供与体、特開平6−308727号公報に記載のイオウ化合物(例、トリチアン等)、特開平6−250387号公報に記載のリン化合物(ジエチルホスファイト等)、特願平6−191605号明細書記載のSi−H、Ge−H化合物等が挙げられる。
【0148】
〔物性〕
本発明のガス分離膜は、二酸化炭素/水素の逆の分離選択性を付与するために、気体の拡散係数の大きい柔軟な膜質を達成するという点で、ガラス転移点が50℃未満であることが好ましい。
また本発明のガス分離膜の水に対する接触角は60°以上であることが好ましく、80°以上であることが、更に好ましい。
本発明のガス分離膜には、膜物性を調整するため、各種高分子化合物を添加することもできる。高分子化合物としては、アクリル系重合体、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、シェラック、ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ゴム系樹脂、ワックス類、その他の天然樹脂等が使用できる。また、これらは2種以上併用してもかまわない。
また、液物性調整のためにノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤や、有機フルオロ化合物などを添加することもできる
【0149】
界面活性剤の具体例としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、高級脂肪酸塩、高級脂肪酸エステルのスルホン酸塩、高級アルコールエーテルの硫酸エステル塩、高級アルコールエーテルのスルホン酸塩、高級アルキルスルホンアミドのアルキルカルボン酸塩、アルキルリン酸塩などのアニオン界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、アセチレングリコールのエチレンオキサイド付加物、グリセリンのエチレンオキサイド付加物、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルなどの非イオン性界面活性剤、また、この他にもアルキルベタインやアミドベタインなどの両性界面活性剤、シリコン系界面活性剤、フッソ系界面活性剤などを含めて、従来公知である界面活性剤及びその誘導体から適宜選ぶことができる。
【0150】
高分子分散剤として、具体的にはポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリビニルメチルエーテル、ポリエチレンオキシド、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリアクリルアミド等が挙げられ、中でもポリビニルピロリドンを用いることも好ましい。
【0151】
前記一般式(I)〜(II−1)で表される部分構造に対応するモノマーとしては、オリゴマー、プレポリマーとしたものを用いてもよい。高分子化合物を得る上での重合体については、ブロック共重合体、或いはランダム共重合体、グラフト共重合体などのいずれの形態を有する共重合体でも良いが、特にブロック共重合体やグラフト共重合体を用いる場合には、粘度、相溶性の観点で好ましい。
【0152】
前記一般式(I)と一般式(II)の部分構造比は、特に規定されるものではないが、一般式(II)又は一般式(II−1)のような架橋構造を複数有する部分構造の組成比が増加するに従い、分子構造の影響は多大にあるものの概して膜の強度、分離選択性は向上するが気体の透過性は低下する傾向があるため、それぞれ組成比として1〜50質量%、好ましくは5〜30質量%の範囲を目安として用いることが好ましいが、この範囲に限定されることなく、ガス分離の目的(回収率、純度など)に応じて組成比を変えることによりガス透過性と分離選択性を調整されるものである。
【0153】
前記一般式(I)〜一般式(II−1)で表される部分構造を含むポリマーの分子量は、架橋膜であるため特に限定されるものではない。各部分構造に対応するモノマーとしては、好ましくは数平均分子量として100〜10,000であり、より好ましくは100〜5,000である。
【0154】
本発明のガス分離膜を形成する条件に特に制限はないが、温度は−30〜100℃が好ましく、−10〜80℃がより好ましく、5〜50℃が特に好ましい。
【0155】
本発明においては、膜を形成時に空気や酸素などの気体を共存させてもよいが、不活性ガス雰囲気下であることが望ましい。
【0156】
また、本発明のガス分離膜を作製する際に、媒体として有機溶剤を添加することができる。具体的に使用できる有機溶剤としては特に限定されるものではないが、n−ヘキサン、n−ヘプタン等の炭化水素系有機溶剤、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系有機溶剤、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、tert−ブタノール等の低級アルコール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジアセトンアルコール等の脂肪族ケトン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、エチレングリコールモノメチル又はモノエチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、トリプロピレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールフェニルエーテル、プロピレングリコールフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノメチル又はモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチル又はモノエチルエーテル、ジブチルブチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル系有機溶剤、N−メチルピロリドン、2−ピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルイミダゾリジノン、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミドなどが挙げられる。これらは、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
本発明のガス分離膜の膜厚は0.01〜100μmであることが好ましく、0.1〜10μmであることがより好ましい。
【0157】
〔複合膜〕
本発明の複合膜は、多孔質性の支持体の少なくとも表面に、本発明のガス分離膜を形成することが好ましい。多孔質性の支持体の少なくとも表面に、本発明のガス分離膜を、塗布又は浸漬し、活性放射線を照射することにより形成することがより好ましい。
本発明のガス分離膜は、多孔質性の支持体の表面及び内面に形成してもよく、少なくとも表面に形成して複合膜とすることができる。多孔質性の支持体の少なくとも表面に、本発明のガス分離膜を形成することで、高分離選択性と高ガス透過性、更には機械的強度を兼ね備えるという利点を有する複合膜とすることができる。分離層の膜厚としては機械的強度、分離選択性を維持しつつ高ガス透過性を付与する条件において可能な限り薄膜であることが好ましい。
【0158】
本発明で用いる多孔質支持体は、機械的強度及び高気体透過性の付与に合致する目的のものであれば、特に限定されるものではなく有機、無機どちらの素材であっても構わないが、好ましくは有機高分子の多孔質膜であり、その厚さは1〜3000μm、好ましくは5〜500μmであり、より好ましくは5〜150μmである。この多孔質膜の細孔構造は、通常平均細孔直径が10μm以下、好ましくは0.5μm以下、より好ましくは0.2μm以下であり、空孔率は好ましくは20〜90%であり、より好ましくは30〜80%である。また、その気体透過率は二酸化炭素透過速度で101cm(STP)/cm・sec・cmHg以上であることが好ましい。多孔質膜の素材としては、従来公知の高分子、例えばポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂等、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン等の含フッ素樹脂等、ポリスチレン、酢酸セルロース、ポリウレタン、ポリアクリロニトリル、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリイミド、ポリアラミド等の各種樹脂を挙げることが出来る。多孔質膜の形状としては、平板状、スパイラル状、管状、中空糸状などいずれの形状をとることができる。
【0159】
〔ガス混合物の分離方法〕
本発明のガス混合物の分離方法は、少なくとも一種の酸性ガスを含むガス混合物から酸性ガスを気体分離膜によって分離する方法において、本発明のガス分離膜又は前記複合膜を用いる。
酸性ガスが二酸化炭素又は硫化水素であることが好ましい。
【0160】
本発明のガス分離膜を用いる気体の分離方法において、原料の気体混合物の成分は特に規定されるものではないが、ガス混合物の主成分が二酸化炭素及びメタン又は二酸化炭素及び水素であることが好ましい。ガス混合物が二酸化炭素や硫化水素のような酸性ガス共存下で特に優れた性能を発揮し、好ましくは二酸化炭素とメタン等の炭化水素、二酸化炭素と窒素、二酸化炭素と水素の分離において優れた性能を発揮する。
【0161】
〔ガス分離膜モジュール・気体分離装置〕
本発明のガス分離膜は多孔質支持体と組み合わせた複合膜とすることが好ましく、更にはこれを用いたガス分離膜モジュールとすることが好ましい。また、本発明のガス分離膜、複合膜又はガス分離膜モジュールを用いて、ガスを分離回収又は分離精製させるための手段を有する気体分離装置とすることができる。
本発明のガス分離膜はモジュール化して好適に用いることができる。モジュールの例としては、スパイラル型、中空糸型、プリーツ型、管状型、プレート&フレーム型などが挙げられる。また本発明の高分子膜は、例えば、特開2007−297605号に記載のような吸収液と併用した膜・吸収ハイブリッド法としての気体分離回収装置に適用してもよい。
【0162】
上記の優れた特性を有する本発明のガス分離膜は、ガス分離回収法、ガス分離精製法として好適に用いることができる。
【実施例】
【0163】
以下に実施例に基づき本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。なお、文中「部」及び「%」とあるのは特に示さない限り質量基準とする。
【0164】
〔合成例〕
<モノマー(M−41)、(M−45)及び(M−46)の合成>
【0165】
【化40】

【0166】
モノマー(M−41)の合成
500mlの三口フラスコに無水テトラヒドロフラン200mlを入れ、窒素気流下、氷冷下において、更に水素化リチウムアルミニウム1.07g(28.2mmol)を加えて攪拌しているところに、化合物A(Exfluor社製、分子量=426.09)20g(46.9mmol)の無水テトラヒドロフラン溶液(100ml)を30分以上かけて滴下した。その後、室温下で4時間攪拌した。反応混合物をその後、氷冷したのち水を1ml、15%水酸化ナトリウム水溶液を1ml、更に水を3ml、注意深くパスツールピペットを用いて系内に滴下した。更に反応混合物を30分間攪拌した後、反応混合物をセライトろ過することによりアルミニウム残渣を取り除き、得られたろ液をロータリーエバポレーターにより減圧濃縮して化合物(B)を得た。この化合物(B)はこれ以上精製することなく、速やかに次の反応に用いた。
200mlの三口フラスコに前記化合物B(分子量=398.08)5.1g(12.8mmol)、アセトニトリル25mlを加えて、氷冷下で攪拌しているところに塩化アクリロイル(和光純薬株式会社製、製品番号:013−12485)1.27g(14.1mmol)、続いてトリエチルアミン(和光純薬株式会社製、製品番号:292−02646)2.1ml(15.4mmol)を滴下ロートでゆっくりと滴下した。氷冷下で30分攪拌した後、室温下で4時間攪拌した。その後、反応混合物を氷冷下まで冷却し、攪拌しながら水を加えた。反応混合物に酢酸エチルを加え、有機層と水層を分離し、水層を更に酢酸エチルで抽出した。集めた有機層に無水水酸化マグネシウムを加えたのち、無機塩をろ過により除き、更に重合禁止剤として4−メトキシハイドロキノン0.02gを加えてロータリーエバポレーターで濃縮してモノマーM−41(分子量=452.12)3.0gを得た。(収率:52%)
【0167】
前記モノマー(M−41)の合成と同様にして、化合物(C)〜(D)より、それぞれモノマー(M−45)(分子量=402)及び(M−46)(分子量=568)を得た。
【0168】
<モノマー(M−51)、(M−52)及び(M−53)の合成>
【0169】
【化41】

【0170】
モノマー(M−51)の合成
100mlの三口フラスコに2−フルオロエタノール(和光純薬工業株式会社製、製品番号:065−01891)2.9g(45.3mmol)、アセトニトリル29mlを加えて窒素気流下で攪拌しているところに氷冷下で攪拌しているところに、塩化アクリロイル(和光純薬株式会社製、製品番号:013−12485)4.0ml(49.8mmol)、を加えた。更にトリエチルアミン(和光純薬株式会社製、製品番号:292−02646)7.6ml(54.3mmol)を30分以上かけて滴下した。滴下終了後、氷冷却下で1時間攪拌した後、徐々に室温まで昇温した。反応混合物に水、酢酸エチルを加えて、抽出したのち、集めた酢酸エチル層を無水硫酸マグネシウムに乾燥させた。有機層を常圧で濃縮したのち、水流アスピレータで減圧蒸留(40℃/18mmHg)を実施し、化合物(M−51)を0.91g得た。(収率:17%)
H−NMR(400MHz)d=6.47(dd,1H,J=2,23Hz),6.17(dd,1H,J=14,23Hz),5.89(dd,1H,J=2,14Hz),4.34−4.76(m,4H).
【0171】
モノマー(M−52)の合成
200mlの三口フラスコにp−トリフルオロメチルフェノール(和光純薬工業株式会社製、製品番号:327−68402)8.1g(50.0mmol)、アセトニトリル40mlを加えて窒素気流下で攪拌しているところに氷冷下で攪拌しているところに、塩化アクリロイル(和光純薬株式会社製、製品番号:013−12485)4.4ml(55.0mmol)、を加えた。更にトリエチルアミン(和光純薬株式会社製、製品番号:292−02646)8.4ml(59.95mmol)を30分以上かけて滴下した。滴下終了後、氷冷却下で1時間攪拌した後、徐々に室温まで昇温した。反応混合物に水、酢酸エチルを加えて、抽出したのち、集めた酢酸エチル層を無水硫酸マグネシウムに乾燥させた。有機層を減圧濃縮したのち、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、化合物(M−52)を9.75g得た。(収率:90%)
H−NMR(400MHz)d=7.67(dd,1H,J=2,12Hz),7.27(dd,2H,J=12Hz),6.65(br.dd,1H,J=1.2,23Hz),6.34(br.ddd,J=1.214,23Hz),6.07(br.dd,1H,J=1.2,14Hz).
【0172】
モノマー(M−53)の合成
100mlの三口フラスコに3,5−ビストリフルオロメチルフェノール(和光純薬工業株式会社製、製品番号:329−34071)5.0g(38.2mmol)、アセトニトリル50mlを加えて窒素気流下、氷冷下でかくはんしているところに、塩化アクリロイル(和光純薬株式会社製、製品番号:013−12485)1.9ml(23.9mmol)、を加えた。更にトリエチルアミン(和光純薬株式会社製、製品番号:292−02646)3.6ml(26.1mmol)を30分以上かけて滴下した。滴下終了後、氷冷却下で1時間攪拌した後、徐々に室温まで昇温した。反応混合物に水、酢酸エチルを加えて、抽出したのち、集めた酢酸エチル層を無水硫酸マグネシウムに乾燥させた。有機層を減圧濃縮したのち、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、化合物(M−53)を3.03g得た。(収率:49%)
H−NMR(400MHz)d=7.78(br.s,1H),7.65(br.s2H),6.68(dd,1H,J=1.6,23Hz),6.34(dd,J=14,23Hz),6.12(dd,1H,J=1.6,14Hz).
【0173】
<プレポリマー(M−71)〜(M−74)の合成>
【0174】
【化42】

【0175】
プレポリマー(M−71)の合成
100ml三口フラスコ中に、アクリル酸2,2,2−トリフルオロエチル(M−1)3.3g(21mmol)、ポリ(エチレングリコール)メチルエーテルアクリレート(M−31)(Aldrich社製、製品番号:45,499−0、Mn=480)6.7g、ブレンマーAE400(日油株式会社製)1.0g(約1.9mmol)、更にメチルエチルケトン24.7gを加え、窒素気流下、内温75℃で攪拌しているところに、V−601(和光純薬株式会社製)89mg(0.39mmol)のメチルエチルケトン1g溶液を滴下し、反応混合物を窒素気流下、75℃で6時間攪拌することでポリマー(E)のメチルエチルケトン溶液を得た。(質量平均分子量:71,000、数平均分子量:32,000、測定:東ソー株式会社製HLC−8220GPC)続いて、ポリマー混合物を氷冷下、塩化アクリロイル(和光純薬株式会社製、製品番号:013−12485)を0.17ml(2.1mmol),加えて攪拌しているところにトリエチルアミン0.32ml(2.3mmol)を滴下した。反応混合物は氷冷下で1時間攪拌したあと更に室温に昇温し、1時間攪拌した。生じた塩酸塩をろ過により取り除いた後、ろ液をロータリーエバポレーターで濃縮し、プレポリマー(M−71)を得た。
【0176】
プレポリマー(M−72)の合成
100ml三口フラスコ中に、前述のようにして合成したポリマー(E)のメチルエチルケトン30質量%溶液3gに、カレンズAOI(登録商標、昭和電工株式会社製)0.026g(0.18mmol)、TEMPO(東京化成工業株式会社製、製品番号T1560)0.29g(0.0019mmol)、ネオスタンU−600(日東化成株式会社製)を0.86mg(0.0013mmol)加えたのち、窒素気流下で45℃で6時間加熱攪拌することでポリマー(M−72)を合成した。
【0177】
プレポリマー(M−73)の合成
100ml三口フラスコ中に、前述のようにして合成したポリマー(E)のメチルエチルケトン30質量%溶液3gに、グリシジルメタクリレート(東京化成工業株式会社製、製品番号:M0590)g(mmol)、TEMPO(東京化成工業株式会社製、製品番号T1560)0.29g(0.0019mmol)、ベンジルトリエチルアンモニウムクロリド(東京化成工業株式会社、製品番号:B0444)0.007g(0.032mmol)加えたのち、窒素気流下で70℃で6時間加熱攪拌することでポリマー(M−73)を合成した。
【0178】
プレポリマー(M−74)の合成:VEEA
100ml三口フラスコ中に、上記のスキームのようにして合成したポリマー(F)のメチルエチルケトン30質量%溶液3gに、VEEA(日本触媒株式会社製)0.03g(0.16mmol)、TEMPO(東京化成工業株式会社製、製品番号T1560)0.29g(0.0019mmol)、トリフルオロ酢酸(和光純薬株式会社製)を1滴加えたのち、窒素気流下で40℃で2時間加熱攪拌することでポリマー(M−74)を合成した。
【0179】
〔実施例1〕
30ml褐色バイアル瓶に、アクリル酸2,2,2−トリフルオロエチル(M−1)(東京化成工業株式会社製、製品番号:A1152)を2.8g、ポリエチレングリコールジアクリレート(M−21)(Aldrich社製、製品番号:45,500−8、Mn=700)を1.2gを混合して30分攪拌したのち、更に1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(Aldrich社製、製品番号:40,561−2)を4mg加えて、更に30分攪拌した。
10cm四方のガラス板上に、多孔質親水性ポリビニリデンジフルオライド(PVDF)膜(ミリポア製親水性デュラポア(登録商標)、孔径0.1μm)を静置しているところに前記モノマー混合物を浸漬させ、更に、もう一枚の10cm四方のガラス板で上下より挟みこみ、圧着することにより膜中の気泡を除去した。この二枚のガラス板に挟み込まれたモノマー浸漬PVDF膜をセン特殊光源株式会社製光硬化装置(TCT1000B−28HE)を用いて、10mWにて27秒間露光させた。その後、ガラス板を取り出した後、メタノールに浸漬させ、ガラスとPVDF複合膜を剥離させた後、真空ポンプにて減圧乾燥を6時間実施した。乾燥後のPVDF複合膜の膜厚をエレクトリックマイクロメーター(アンリツ製、K−402B)により測定した結果120μmであった。得られたPVDF複合膜をガス透過率測定装置(GTRテック社製GTR−10XF)にて水素(H)、二酸化炭素(CO)、窒素(N)、メタン(CH)のガス透過率を測定した。膜のガス透過性は膜厚に反比例するために素材間差を比較するためにガス透過率測定値に膜厚を乗じたガス透過係数(Permeability)を算出することにより比較した。ガス透過係数の単位はBarrer(バーラー)単位(1Barrer=1×10−10cm(STP)・cm/(s・cm・cmHg))で表した。
【0180】
〔比較例1及び比較例2〕
酢酸セルロース、ポリイミドについては文献値(松本幹治、高圧ガス、Vol.39、No.8、5 (2002))を参考とした。酢酸セルロースの非対称膜は例えば、中尾真一、吉川正和監修、膜学実験法−人工膜編−(日本膜学会)の3〜8頁に記載の方法などを参考として調製することができる。
【0181】
〔比較例3〕
実施例1のアクリル酸2,2,2−トリフルオロエチルの(M−1)代わりに、ポリ(エチレングリコール)メチルエーテルアクリレート(M−31)(Aldrich社製、製品番号:45,499−0、Mn=454)2.8gに変えた以外は実施例1と同様の操作によりPVDF複合膜を作製し、ガス透過率を測定した。
【0182】
〔実施例2〜7、比較例4〜6〕
前記実施例1の(M−1)の代わりに(M−3)に(実施例2)、(M−1)の代わりに(M−31)に、(M−21)の代わりに(M−45)に(実施例3)、(M−1)の代わりに(M−31)に、(M−21)の代わりに(M−46)に(実施例4)、(M−21)の代わりに(M−45)に(実施例5)、(M−21)の代わりに(M−46)に(実施例6)、(M−1)の代わりに(M−41)に(実施例7)、(M−1)の代わりに(M−9)に、PVDFの代わりに多孔質親水性ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)膜(ミリポア製親水性オムニポア(登録商標)、孔径0.1μm)に(実施例8)、(M−1)の代わりに(M−10)に(実施例9)、(M−1)の代わりに(M−51)に(実施例10)、(M−1)の代わりに(M−52)に(実施例11)、(M−1)の代わりに(M−53)に(実施例12)、(M−1)及び(M−21)の代わりに(M−71)に(実施例13)、(M−1)及び(M−21)の代わりに(M−72)に(実施例14)、(M−1)及び(M−21)の代わりに(M−73)に(実施例15)、(M−1)及び(M−21)の代わりに(M−74)に(実施例16)、比較例3のポリエチレングリコールジアクリレート(M−21)(Aldrich社製、製品番号:45,500−8、Mn=700)をポリエチレングリコールジアクリレート(M−21)(Aldrich社製、製品番号:47,652−9、Mn=575)に(比較例4)、比較例3のポリエチレングリコールジアクリレート(M−21)(Aldrich社製、製品番号:45,500−8、Mn=700)をポリエチレングリコールジアクリレート(M−21)(Aldrich社製、製品番号:43,744−1、Mn=258)に(比較例5)に、実施例1のアクリル酸2,2,2−トリフルオロエチル(M−1)の代わりにアクリル酸エチル(和光純薬株式会社製、製品番号:056−00426、比較例6)に、変えた以外は同様の操作によりPVDFあるいはPTFE複合膜を作製し、ガス透過率を測定した。
【0183】
〔ガス透過率、ガラス転移点〕
実施例1〜16及び比較例1〜6の複合膜について、上記のようにガス透過率を測定した。ガス透過係数を以下の表1に示す。また各モノマーの組み合わせにおいて、単独で光硬化させて得られた膜をEXSTAR TG/DTA6200(SIIナノテクノロジー株式会社)にてTGDTA測定を実施し、熱分解温度を測定した後、、SIIナノテクノロジー株式会社製、DSC−6200にてガラス転移点を測定した。
【0184】
表中のMnは数平均分子量、Mwは分子量を表す。
【0185】
【表1】

【0186】
本発明のガス分離膜の二酸化炭素透過性は、実用化されている酢酸セルロースやポリイミドと比較して10倍以上COガス透過性に優れることがわかる。またガラス転移点から本発明の分離膜素材は柔軟なゴム状膜であることが分かる。
【0187】
〔ガス分離選択性〕
ガス分離選択性はCOとH及びCOとCHの各ガス単独の透過率あるいは透過係数の除算による理想分離選択性として算出した。実施例1〜16及び比較例1〜6の複合膜の気体分離選択性を以下の表2に示す。
【0188】
【表2】

【0189】
本発明の高分子化合物を用いた分離膜は、酢酸セルロースやポリイミドのような代表的なガラス状高分子膜とは異なり、CO/H分離選択性は逆の分離選択性を有していることがわかる。更にCO/CH分離選択性については、文献(Industrial.Engineering.Chemistry.Research.2002,41,1393.)に記載の実用膜の水準10−15と比較して大きく優れる。本発明のように、CO2/H2逆の分離選択性を有しつつ、高いCO2/CH4分離選択性を両立しているガス分離膜は、柔軟な膜構造であることを意味し、すなわち従来の酢酸セルロースやポリイミドのようなガラス状高分子膜で知られている1MPa以上の高圧あるいは高CO濃度での分離といった厳しい使用環境において膜の可塑化による分離選択性の低下現象を、本発明のガス分離膜では最小限度に抑制することが出来ることが期待される。
【0190】
〔加温、加湿条件(40℃、80%湿度)における気体分離選択性〕
実施例1〜16及び比較例3〜6のPVDFあるいはPTFE複合膜について、加温、加湿条件(40℃、Rh80%湿度)におけるガス分離選択性を比較した。
【0191】
【表3】

【0192】
〔膨潤率〕
次に、実施例1〜16及び比較例3〜6のPVDFあるいはPTFE複合膜を100mlのイオン交換水に浸漬させた。室温下で24時間静置したのち、イオン交換水から取り出し、ろ紙で膜表面の余分な水分を除去したのち浸漬前後における質量変化より膨潤率(膨潤率0を質量変化なしと規定)を調べた。
【0193】
【表4】

【0194】
本発明のPVDF及びPTFE複合膜は水浸漬における質量変化が小さく、膨潤しにくい膜であることがわかる。前述したように、本発明のガス分離膜はモジュール又はエレメントと呼ばれる膜が充填されたパッケージとして使用することができる。ガス分離膜は、表4に記載したように、高分子鎖の絡み合いが緩くなると分離選択性が低下する。更に、ガス分離膜をモジュールとして使用する場合は膜表面積を大きくするために高密度に充填されているため、水などの不純物の影響により膜が膨潤してしまうとモジュール内部の空間を押し潰し、高圧条件において圧力が不均一にかかることに伴う膜破壊又はモジュール破壊などの問題が生じる懸念がある。このため、不純物存在下での膨潤率は低いことが好ましい。
【0195】
本発明のガス分離膜は加温、加湿条件でのガス分離選択性の低下を大きく抑制できていることがわかる。
【0196】
上記の結果より、本発明のガス分離膜は、優れたガス透過性とガス分離選択性、特に二酸化炭素の透過性に優れ、二酸化炭素/メタン、二酸化炭素/水素の分離膜として優れる。特に加温、加湿条件における分離選択性の低下が抑制される。本発明のガス分離膜及び複合膜により、優れた気体分離方法、ガス分離膜モジュール、ガス分離膜モジュールを含むガス分離、ガス精製装置を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種の下記一般式(I)で表される部分構造と、少なくとも1種の下記の一般式(II)で表される部分構造とを含むポリマーを含有することを特徴とするガス分離膜。
【化1】

(一般式(I)中、R及びRは各々独立に水素原子又は置換基を表す。Jは−CO−、−COO−、−CONR20−、−OCO−、メチレン基、フェニレン基、又は−CCO−基を表す。R20は水素原子、アルキル基、アリール基、又はアラルキル基を表す。Wは単結合又は2価の連結基を表す。複数存在するJ、W、R及びRは同一でも異なっていてもよい。)
【化2】

(一般式(II)中、Rは水素原子又は置換基を表す。Lはn価の連結基を表す。nは2以上の整数を表す。Jは−CO−、−COO−、−CONR−、−OCO−、メチレン基、フェニレン基、又は−CCO−基を表す。Rは水素原子、アルキル基、アリール基、又はアラルキル基を表す。Wは単結合又は2価の連結基を表す。複数存在するJ、W、Rは同一でも異なっていてもよい。)
ただし、一般式(I)のR及び一般式(II)のLの少なくともいずれか一方は、フッ素原子を有する。
【請求項2】
前記一般式(I)で表される部分構造が下記一般式(I−1)で表される部分構造であることを特徴とする請求項1に記載のガス分離膜。
【化3】

(一般式(I−1)中、Rは水素原子又は置換基を表し、Lは−CF−又は−CFCFO−を表す。lは1以上の整数を表す。R及びWは、前記一般式(I)におけるR及びWと同義である。複数存在するR、W、L、l及びRは同一でも異なっていてもよい。)
【請求項3】
前記一般式(II)で表される部分構造が下記一般式(II−1)で表される部分構造であることを特徴とする請求項1又は2に記載のガス分離膜。
【化4】

(一般式(II−1)中、Lは−CF−又は−CFCFO−を表す。W及びRは前記一般式(II)におけるW及びRと同義である。WはWと同義である。RはRと同義である。m、x及びzは1以上の整数を表す。複数存在するL及びmは同一でも異なっていてもよい。)
【請求項4】
少なくとも1種の下記一般式(Ia)で表される化合物と、少なくとも1種の下記の一般式(IIa)で表される化合物とを含有する組成物により形成されたことを特徴とするガス分離膜。
【化5】

(一般式(Ia)中、Rは水素原子又は置換基を表す。Jは−CO−、−COO−、−CONR−、−OCO−、メチレン基、フェニレン基、又は−CCO−基を表す。Rは水素原子、アルキル基、アリール基、又はアラルキル基を表す。Wは単結合又は2価の連結基を表す。Aは、フッ素原子又は少なくとも一つのフッ素原子を有する置換基を表す。)
【化6】

(一般式(IIa)中、Rは水素原子又は置換基を表す。Jは−CO−、−COO−、−CONR−、−OCO−、メチレン基、フェニレン基、又は−CCO−基を表す。Rは水素原子、アルキル基、アリール基、又はアラルキル基を表す。Wは単結合又は2価の連結基を表す。Lはy価の連結基を表す。yは2以上の整数を表す。複数存在するJ、W、及びRは同一でも異なっていてもよい。)
【請求項5】
少なくとも1種の下記一般式(Ib)で表される化合物と、少なくも1種の下記の一般式(IIb)で表される化合物とを含有する組成物により形成されたことを特徴とするガス分離膜。
【化7】

(一般式(Ib)中、Rは水素原子又は置換基を表す。Rは水素原子又は置換基を表す。Jは−CO−、−COO−、−CONR20−、−OCO−、メチレン基、フェニレン基、又は−CCO−基を表す。R20は水素原子、アルキル基、アリール基、又はアラルキル基を表す。Wは単結合又は2価の連結基を表す。)
【化8】

(一般式(IIb)中、Rは水素原子又は置換基を表す。Lは少なくとも一つのフッ素原子を有するn価の連結基を表す。nは2以上の整数を表す。Jは−CO−、−COO−、−CONR−、−OCO−、メチレン基、フェニレン基、又は−CCO−基を表す。Rは水素原子、アルキル基、アリール基、又はアラルキル基を表す。Wは単結合又は2価の連結基を表す。複数存在するJ、W、及びRは同一でも異なっていてもよい。)
【請求項6】
少なくとも1種の請求項4に記載の一般式(Ia)で表される化合物と、少なくも1種の請求項5に記載の一般式(IIb)で表される化合物とを含有する組成物により形成されたことを特徴とするガス分離膜。
【請求項7】
前記一般式(Ia)で表される化合物が下記一般式(Ia−1)で表される化合物であることを特徴とする前記請求項4又は請求項6に記載のガス分離膜。
【化9】

(一般式(Ia−1)中、Rは水素原子又は置換基を表し、LはCF又はCFCFOを表す。lは1以上の整数を表す。R及びWは、前記一般式(Ia)におけるR及びWと同義である。複数存在するLは同一でも異なっていてもよい。)
【請求項8】
前記一般式(IIb)で表される化合物が下記一般式(IIb−1)で表される化合物であることを特徴とする前記請求項5又は請求項6に記載のガス分離膜。
【化10】

(一般式(IIb−1)中、W及びWはそれぞれ独立に、単結合又は二価の連結基を表し、mは1以上の整数を表す。Rは、それぞれ独立に前記一般式(IIb)におけるRと同義であり、Lは−CF−又は−CFCFO−を表す。複数存在するLは同一でも異なっていてもよい。)
【請求項9】
ガラス転移点が50℃未満であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載のガス分離膜。
【請求項10】
多孔質性の支持体の少なくとも表面に、請求項1〜8のいずれか一項に記載のガス分離膜を形成することを特徴とする複合膜。
【請求項11】
少なくとも1種の下記一般式(I)で表される部分構造と、少なくとも1種の下記の一般式(II)で表される部分構造とを含むポリマーを含有するガス分離膜を、活性放射線を照射することにより形成することを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載のガス分離膜の製造方法。
【化11】

(一般式(I)中、R及びRは各々独立に水素原子又は置換基を表す。Jは−CO−、−COO−、−CONR20−、−OCO−、メチレン基、フェニレン基、又は−CCO−基を表す。R20は水素原子、アルキル基、アリール基、又はアラルキル基を表す。Wは単結合又は2価の連結基を表す。複数存在するR、W、J及びRは同一でも異なっていてもよい。)
【化12】

(一般式(II)中、Rは各々独立に水素原子又は置換基を表す。Lはn価の連結基を表す。nは2以上の整数を表す。Jは−CO−、−COO−、−CONR−、−OCO−、メチレン基、フェニレン基、又は−CCO−基を表す。Rは水素原子、アルキル基、アリール基、又はアラルキル基を表す。Wは単結合又は2価の連結基を表す。複数存在するJ、W、Rは同一でも異なっていてもよい。)
ただし、一般式(I)のR及び一般式(II)のLの少なくともいずれか一方は、フッ素原子を有する。
【請求項12】
多孔質性の支持体の少なくとも表面に、請求項1〜9のいずれか一項に記載のガス分離膜を、活性放射線を照射することにより形成することを特徴とする請求項10に記載の複合膜の製造方法。
【請求項13】
少なくとも一種の酸性ガスを含むガス混合物から酸性ガスを気体分離膜によって分離する方法において、請求項1〜9のいずれか一項に記載のガス分離膜又は請求項10に記載の複合膜を用いることを特徴とするガス混合物の分離方法。
【請求項14】
酸性ガスが二酸化炭素又は硫化水素であることを特徴とする請求項13に記載のガス混合物の分離方法。
【請求項15】
前記ガス混合物の主成分が二酸化炭素及びメタン又は二酸化炭素及び水素であることを特徴とする請求項13に記載のガス混合物の分離方法。
【請求項16】
請求項1〜9のいずれか一項に記載のガス分離膜又は請求項10に記載の複合膜を含むガス分離膜モジュール。
【請求項17】
請求項16に記載のガス分離膜モジュールを少なくとも1種を含む気体分離装置。

【公開番号】特開2011−41938(P2011−41938A)
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−163441(P2010−163441)
【出願日】平成22年7月20日(2010.7.20)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】