説明

ガス化装置

【課題】ガス化反応炉内での灰の融着を防止しつつ、タールを低減した生成ガスを生成することを可能にしたガス化装置を提供する。
【解決手段】ガス化反応炉1と、ガス化剤供給口14からガス化反応炉1の内部にガス化剤2を供給するガス化剤供給手段3と、バイオマス供給口15からバイオマス4を供給するバイオマス供給手段5と、バイオマス4とともにバイオマス供給口15から水蒸気6を供給する水蒸気供給手段7とを備える。また、バイオマス供給口15から生成ガス排出口13の間26の温度が1000℃以上となるように、且つバイオマス供給口15からガス化剤供給口14の間27の温度がバイオマス4の灰の融点以下となるように、ガス化反応炉1の内部温度を制御する制御手段8を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオマスをガス化するためのガス化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば草木や紙ごみなどの再生可能なバイオマスをガス化し、生成ガス成分の一酸化炭素と水素を合成して液体燃料を製造し、これを石油の代替エネルギーとして用いることが、循環型エネルギーサイクルを確立、有機物系廃棄物の資源化・発生量減少を実現するために、提案、実用化されている。
【0003】
また、バイオマスから液体燃料のメタノールを製造する際には、乾燥して粉砕したバイオマスの粉粒体をガス化装置でガス化し、生成ガス(バイオマスガス)を生成する。そして、触媒により、150〜300℃程度の高温且つ100気圧程度の高圧下で生成ガス中の一酸化炭素と水素の合成反応を生じさせ、メタノールガスを生成し、このメタノールガスを冷却して液体燃料のメタノールを製造する。
【0004】
一方、バイオマスをガス化するガス化装置は、例えば、略円筒状に形成されたガス化反応炉と、水蒸気と酸素を含むガス化剤をガス化剤供給口からガス化反応炉の内部に供給するガス化剤供給手段と、バイオマスの粉粒体をバイオマス供給口からガス化反応炉の内部に供給するバイオマス供給手段とを備えて構成されている(例えば、特許文献1参照)。また、水蒸気供給手段を備え、バイオマスとともにバイオマス供給口からガス化反応炉の内部に水蒸気を供給するように構成したものもある。
【0005】
さらに、ガス化反応炉は、軸線方向一端側を高温燃焼部、他端側をガス化反応部とし、ガス化剤供給口とバイオマス供給口を高温燃焼部に配設し、ガス化反応炉内で生成された生成ガスを排出する生成ガス排出口をガス化反応部に配設して形成されている。また、ガス化反応炉は、バイオマスをガス化する際に、高温燃焼部を900〜1400℃、ガス化反応部を900〜1200℃の温度で維持できるように構成されている。このとき、ガス化反応部の温度は、生成ガス排出口付近が900℃程度となるように維持される。
【0006】
このように構成したガス化装置では、ガス化反応炉の一端側のガス化剤供給口から供給したガス化剤がガス化反応炉の他端側のガス排出口に向けて流通する。そして、バイオマス供給口から投入したバイオマスの粉粒体が、高温燃焼部で燃焼し、ガス化反応部に搬送されるとともにガス化反応によってガス化する。バイオマスがガス化反応炉の内部でガス化することにより、一酸化炭素と水素を含む生成ガスが生成され、この生成ガスが生成ガス排出口から順次排出される。そして、ガス化装置で生成した生成ガスに対し、熱交換器、湿式洗浄装置(スクラバー)による冷却、水分除去や、触媒による一酸化炭素と水素の合成などの処理を施し、液体燃料が製造される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−91568号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、バイオマスをガス化装置でガス化する際にタールが発生し、このタールを含んだ生成ガスが生成される。しかしながら、タールは液体燃料合成触媒被毒物質であり、触媒によって一酸化炭素と水素の合成反応を好適に生じさせて液体燃料を製造するためには、生成ガス中のタールを極力少なくすることが求められる。このため、従来、活性炭などの吸着剤を用い、ガス化装置で生成した生成ガスからタールを除去するようにしており、このタール除去に多大な時間、コストを要するという問題があった。
【0009】
さらに、生成ガス中にタールが存在すると、ガス化反応炉から排出した後、生成ガスが冷却されるとともにタールが析出する。そして、生成ガスを冷却する熱交換器など、各機器内にタールが析出、付着することで、各機器の性能低下が生じる。このため、生成ガス中にタールが存在することによって、高頻度で機器のメンテナンスを行なうことが必要になり、この結果として、装置の運転を停止する頻度が増し、すなわち長時間運転の妨げとなって、生成ガス、液体燃料の製造効率の低下、製造コストの増大を招くという問題があった。
【0010】
ここで、ガス化反応炉の温度をより高温にし、生成ガスが排出される生成ガス排出口までの間でタールを熱分解させることで、タールが少ない生成ガスを生成することも考えられる。しかしながら、従来のガス化装置では、ガス化反応炉の生成ガス排出口の温度ひいてはガス化反応部の温度を高温化すると、高温燃焼部も同時に高温化することになる。そして、生成ガス排出口付近を高温化するために高温燃焼部が高温化すると、高温燃焼部の温度がバイオマスの灰の融点以上の温度になってしまい、ガス化反応炉の壁面に灰が融着するという不都合が生じることになる。
【0011】
本発明は、上記事情に鑑み、ガス化反応炉内での灰の融着を防止しつつ、タールを低減した生成ガスを生成することを可能にしたガス化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的を達するために、この発明は以下の手段を提供している。
【0013】
本発明のガス化装置は、バイオマスをガス化して生成ガスを生成するためのガス化装置であって、ガス化剤供給口とバイオマス供給口と生成ガス排出口を備えて形成されたガス化反応炉と、前記ガス化剤供給口から前記ガス化反応炉の内部に、酸素と水蒸気を含むガス化剤を供給するガス化剤供給手段と、前記バイオマス供給口から前記ガス化反応炉の内部に前記バイオマスを供給するバイオマス供給手段と、前記バイオマスとともに前記バイオマス供給口から前記ガス化反応炉の内部に水蒸気を供給する水蒸気供給手段とを備え、前記ガス化反応炉が、前記ガス化剤供給口から前記生成ガス排出口に向かう前記ガス化剤の流通方向の前記ガス化剤供給口と前記生成ガス排出口の間に前記バイオマス供給口を配設して形成されるとともに、前記ガス化剤の流通方向の前記バイオマス供給口から前記生成ガス排出口の間の温度が1000℃以上となるように、且つ前記ガス化剤の流通方向の前記バイオマス供給口から前記ガス化剤供給口の間の温度が前記バイオマスの灰の融点以下となるように、前記ガス化反応炉の内部温度を制御する制御手段を備えていることを特徴とする。
【0014】
この発明においては、バイオマス供給手段によってバイオマスをガス化反応炉の内部に供給するバイオマス供給口(バイオマスの供給位置)よりも生成ガス排出口側のガス化反応炉の内部温度が1000℃以上となるように制御することで、ガス化装置でバイオマスをガス化して生成する生成ガス中のタールを大幅に低減することが可能になる。
【0015】
また、バイオマス供給口よりもガス化剤供給口側のガス化反応炉の内部温度がバイオマスの灰の融点以下となるように制御することで、バイオマス供給手段によってガス化反応炉の内部に供給したバイオマスが溶融することを防止でき、ガス化反応炉の内壁に灰が融着することを防止できる。
【0016】
また、本発明のガス化装置においては、前記ガス化反応炉の前記バイオマス供給口から前記生成ガス排出口の間の温度を検出するガス化反応領域温度検出手段と、前記バイオマス供給口から前記ガス化剤供給口の間の温度を検出する燃焼領域温度検出手段とを備え、前記ガス化反応領域温度検出手段と前記燃焼領域温度検出手段で検出した両温度に基づいて、前記制御手段が前記ガス化剤供給手段を制御し、前記ガス化剤供給口から供給する水蒸気の量を制御するように構成されていることが望ましい。
【0017】
この発明においては、ガス化反応領域温度検出手段によってバイオマス供給口よりも生成ガス排出口側のガス化反応炉の内部温度を検出し、燃焼領域温度検出手段によってバイオマス供給口よりもガス化剤供給口側の温度を検出し、これら検出温度に基づいて、ガス化剤供給手段によってガス化剤供給口から供給する水蒸気量を制御する。
【0018】
そして、このように供給する水蒸気量を調整することによって、バイオマス供給口よりも生成ガス排出口側のガス化反応炉の内部温度を1000℃以上となるように制御することができ、確実に、ガス化装置でバイオマスをガス化して生成する生成ガス中のタールを大幅に低減することが可能になる。
【0019】
また、供給する水蒸気量を調整することによって、バイオマス供給口よりもガス化剤供給口側のガス化反応炉の内部温度をバイオマスの灰の融点以下となるように制御することができ、確実に、バイオマス供給手段によってガス化反応炉の内部に供給したバイオマスが溶融することを防止できるとともにガス化反応炉の内壁に灰が融着することを防止できる。
【0020】
また、本発明のガス化装置においては、前記ガス化反応炉の前記バイオマス供給口から前記生成ガス排出口の間の温度を検出するガス化反応領域温度検出手段と、前記バイオマス供給口から前記ガス化剤供給口の間の温度を検出する燃焼領域温度検出手段とを備え、前記ガス化反応領域温度検出手段と前記燃焼領域温度検出手段で検出した両温度に基づいて、前記制御手段が前記水蒸気供給手段を制御し、前記バイオマス供給口から前記バイオマスとともに供給する水蒸気の量を制御するように構成されていてもよい。
【0021】
この発明においては、ガス化反応領域温度検出手段によってバイオマス供給口よりも生成ガス排出口側のガス化反応炉の内部温度を検出し、燃焼領域温度検出手段によってバイオマス供給口よりもガス化剤供給口側の温度を検出し、これら検出温度に基づいて、水蒸気供給手段によってバイオマス供給口から供給する水蒸気量を制御する。
【0022】
そして、このように水蒸気供給手段によって供給する水蒸気量を調整することによっても、バイオマス供給口よりも生成ガス排出口側のガス化反応炉の内部温度を1000℃以上となるように制御することができ、また、バイオマス供給口よりもガス化剤供給口側のガス化反応炉の内部温度をバイオマスの灰の融点以下となるように制御することが可能である。
【発明の効果】
【0023】
本発明のガス化装置においては、バイオマス供給手段によってバイオマスをガス化反応炉の内部に供給するバイオマス供給口よりも生成ガス排出口側のガス化反応炉の内部温度が1000℃以上となるように制御することで、ガス化装置でバイオマスをガス化して生成する生成ガス中のタールを大幅に低減することが可能になる。また、バイオマス供給口よりもガス化剤供給口側のガス化反応炉の内部温度がバイオマスの灰の融点以下となるように制御することで、バイオマス供給手段によってガス化反応炉の内部に供給したバイオマスが溶融することを防止でき、ガス化反応炉の内壁に灰が融着することを防止できる。
【0024】
そして、このように、ガス化装置によってタールが少ない生成ガスを生成することができることで、生成ガス中からタールを吸着剤で除去する処理が不要になり、ランニングコストを大幅に削減することが可能になる。また、生成ガスをガス冷却過程で冷却する際に、従来のようにタールが各機器で析出して付着することがなく、メンテナンスの頻度を下げ、長時間運転して生成ガスを生成することが可能になる。よって、効率的に生成ガスひいては液体燃料を製造することが可能になる。
【0025】
また、ガス化反応炉の内部で灰が融着することを防止できるため、この点からもメンテナンスの頻度を下げ、長時間運転して生成ガスを生成することができ、より効率的に生成ガスひいては液体燃料を製造することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の一実施形態に係るであるガス化装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図1を参照し、本発明の一実施形態に係るガス化装置について説明する。ここで、本実施形態は、バイオマスをガス化し、一酸化炭素と水素を含む生成ガスを生成するためのガス化装置に関するものである。
【0028】
本実施形態のガス化装置Aは、図1に示すように、略円筒状に形成されたガス化反応炉1と、ガス化反応炉1の内部に、水蒸気と酸素(又は空気)を含むガス化剤2を供給するガス化剤供給手段3と、ガス化反応炉1の内部にバイオマス(バイオマスの粉粒体)4を供給するバイオマス供給手段5と、ガス化反応炉1の内部に水蒸気6を供給する水蒸気供給手段7と、ガス化反応炉1の内部温度を制御するための制御手段8とを備えて構成されている。
【0029】
本実施形態のガス化反応炉1は、軸線O1方向を上下方向に向けて配設されている。また、このガス化反応炉1は、軸線O1方向略中央に下方に向かうに従い漸次縮径する第1テーパー部1aが設けられ、本実施形態では、この第1テーパー部1aよりも上方部分がガス化反応部10、第1テーパー部1aを含めた下方部分が高温燃焼部11とされている。また、ガス化反応炉1の下端側、すなわち高温燃焼部11の下端側に、軸線O1方向下方に向かうに従い漸次縮径する第2テーパー部1bが設けられている。そして、ガス化反応炉1内で発生した煤などの残渣やバイオマスの粗粒体を受ける受けホッパ12が、この第2テーパー部1bに接続して配設されている。
【0030】
さらに、ガス化反応炉1には、上端側(軸線O1方向他端側)に、すなわちガス化反応部10の上部に、生成ガス排出口13が設けられ、この生成ガス排出口13に熱交換器などの機器に繋がる排出管が接続されている。また、下端側(軸線O1方向一端側)の高温燃焼部11の第2テーパー部1bに、ガス化剤供給手段3が接続されてガス化反応炉1の内部にガス化剤2を供給するためのガス化剤供給口14が設けられている。さらに、高温燃焼部11に、且つガス化剤供給口14よりも上方に、バイオマス供給手段5及び水蒸気供給手段7が接続されてガス化反応炉1の内部にバイオマス4、水蒸気6を供給するためのバイオマス供給口15が設けられている。
【0031】
すなわち、本実施形態のガス化装置Aにおいては、ガス化反応炉1の下端側に設けられたガス化剤供給口14から内部にガス化剤2が供給され、供給したガス化剤2がガス化反応炉1の内部を上端側の生成ガス排出口13に向けて流通する。そして、ガス化反応炉1は、ガス化剤の流通方向Tのガス化剤供給口14と生成ガス排出口13の間にバイオマス供給口15を配設して形成されている。
【0032】
次に、本実施形態のバイオマス供給手段5は、乾燥し、粉砕設備で粉砕したバイオマスの粉粒体4を貯留するバイオマス受入ホッパ16と、バイオマス受入ホッパ16にロータリーバルブなどを介して接続した供給管17と、モータに接続して供給管17の内部に配設されたスクリュ18とを備えて構成されている。さらに、バイオマス供給手段5は、供給管17がその一端をガス化反応炉1のバイオマス供給口15に接続し、スクリュ18がその先端をバイオマス供給口15からガス化反応炉1の内部に配して設けられている。
【0033】
そして、このバイオマス供給手段5は、モータを駆動してスクリュ18を回転させるとともに、バイオマス受入ホッパ16に貯留したバイオマスの粉粒体4を順次ガス化反応炉1に向けて搬送し、ガス化反応炉1のバイオマス供給口15(投入部、バイオマスの供給位置)から内部に定常的に押し出して供給する。
【0034】
次に、本実施形態の水蒸気供給手段7は、水蒸気生成装置20で生成した水蒸気6の一部をバイオマス4とともにバイオマス供給口15からガス化反応炉1の内部に供給するためのものである。そして、本実施形態において、この水蒸気供給手段7は、水蒸気生成装置20と、バイオマス供給手段5の供給管17を挿入して内包するように配設されるとともに、一端をガス化反応炉1のバイオマス供給口15に接続して配設され、供給管17との間に水蒸気供給路21を形成する外管22とを備えて構成されている。また、外管22(水蒸気供給路21)に水蒸気生成装置20に繋がる配管が接続され、水蒸気生成装置20から水蒸気供給路21、バイオマス供給口15を通じてガス化反応炉1の内部に水蒸気6を供給できるように構成されている。ここで、この水蒸気供給手段7から供給する水蒸気6は、バイオマス供給手段5によってガス化反応炉1のバイオマス供給口15から供給するバイオマス4を吹き飛ばし、ガス化反応炉1の内部で分散させて投入する役割を果す。また、このバイオマス4とともに供給する水蒸気6は、高温燃焼部11に接続したバイオマス供給手段5のスクリュ18や供給管17の先端部分などをある程度低温化する役割も果す。
【0035】
次に、本実施形態のガス化剤供給手段3は、水蒸気生成装置20で生成した水蒸気6と酸素(又は空気)23を混合し、水蒸気6と酸素23を含むガス化剤2をガス化剤供給口14からガス化反応炉の内部に供給するとともに、ガス化剤供給口14から生成ガス排出口13に向けてガス化剤2を流通させる。
【0036】
そして、上記のように構成したガス化装置Aでは、ガス化剤供給手段3によってガス化剤供給口14からガス化反応炉1の内部にガス化剤2を供給して流通させるとともに、バイオマス供給手段5によってバイオマス供給口15からガス化反応炉1の内部にバイオマス4を供給する。また、バイオマス供給手段5から供給したバイオマス4は、水蒸気供給手段7によって水蒸気6とともに供給されることで、ガス化反応炉1の内部で好適に分散し、高温燃焼部11で燃焼し、ガス化反応部10に搬送されるとともにガス化反応によってガス化する。バイオマス4がガス化反応炉1の内部でガス化することにより、一酸化炭素と水素を含む生成ガス25が生成され、生成ガス排出口13から順次排出される。
【0037】
より具体的に、バイオマス(CHO)4は、ガス化反応炉1の高温燃焼部11内で下記の化学式(1)、(2)に示すような反応を主に生じた後、ガス化反応部10内に送給されて、下記の化学式(3)に示すような反応を主に生じて生成ガス(CO,H)25となる。
【0038】
CHO+O→CO+HO・・・(1)
CHO→CO+H・・・(2)
CO+HO←→CO+H・・・(3)
【0039】
そして、ガス化装置Aで生成した生成ガス25に対し、熱交換器、湿式洗浄装置(スクラバー)による冷却、水分等の除去、触媒による一酸化炭素と水素の合成などの処理を施し、液体燃料が製造される。
【0040】
一方、本実施形態のガス化装置Aにおいては、図1に示すように、まず、ガス化反応炉1のバイオマス供給口15から生成ガス排出口13の間(26)の温度を検出するガス化反応領域温度検出手段30と、バイオマス供給口15からガス化剤供給口14の間(27)の温度を検出する燃焼領域温度検出手段31とを備えている。
【0041】
さらに、ガス化反応領域温度検出手段30と燃焼領域温度検出手段31は、制御手段8に接続されている。そして、制御手段8は、ガス化反応領域温度検出手段30と燃焼領域温度検出手段31でそれぞれ検出した両温度の検出結果に基づいて、ガス化剤の流通方向Tのバイオマス供給口15から生成ガス排出口13の間26の温度が1000℃以上となるように、且つガス化剤の流通方向Tのバイオマス供給口15からガス化剤供給口14の間27の温度がバイオマス4の灰の融点以下となるように、ガス化反応炉1の内部温度を制御する。
【0042】
このとき、本実施形態では、ガス化反応領域温度検出手段30と燃焼領域温度検出手段31で検出した制御手段8が、ガス化剤供給手段3を制御し、ガス化剤供給手段3によってガス化剤供給口14からガス化反応炉1の内部に供給する水蒸気6の量を調整する。あるいは、前記両温度に基づいて、制御手段8が、水蒸気供給手段7を制御し、バイオマス供給口15からガス化反応炉1の内部に供給する水蒸気6の量を調整する。あるいは、前記両温度に基づいて、制御手段8が、ガス化剤供給手段3と水蒸気供給手段7を制御し、ガス化剤供給口14からガス化反応炉1の内部に供給する水蒸気6の量、及びバイオマス供給口15からガス化反応炉1の内部に供給する水蒸気6の量を調整する。
【0043】
すなわち、本実施形態のガス化装置Aでは、上記のように制御手段8でガス化反応炉1に供給する水蒸気量を調整することによって、バイオマス供給口15から生成ガス排出口13の間26の温度が1000℃以上となるように、且つバイオマス供給口15からガス化剤供給口14の間27の温度がバイオマス4の灰の融点以下となるように、ガス化反応炉1の内部温度を制御する。
【0044】
また、このとき、バイオマス4は、表1に示す通り、その種類によって灰の融点が異なるため、使用するバイオマス4の種類に応じて、バイオマス供給口15からガス化剤供給口14の間27の温度がバイオマス4の灰の融点以下となるようにガス化反応炉1の内部温度を制御することになる。
【0045】
【表1】

【0046】
さらに、このとき、ガス化剤供給手段3と水蒸気供給手段7とによってガス化反応炉1の内部に供給する水蒸気6の総供給量がHO/C(投入バイオマス粉粒体中のC(炭素)量)=1〜3の条件を満たすように、制御手段8によって水蒸気6の量を制御することが好ましい。すなわち、水蒸気6の供給量が少ないほど、生成ガス25を製造する際のエネルギー効率は高くなるが、水素収率を増加させるためには、水蒸気6を一定量以上供給することが必要になる。一方、必要以上に水蒸気6を供給してしまうと、ガス化温度を維持するための部分燃焼量(酸素の投入量;O/C)を増加させる必要が生じ、エネルギー効率の低下を招いてしまう。このため、水蒸気6の総供給量がHO/C=1〜3の条件を満たすように、制御手段8によって水蒸気6の量を制御することで、水素の収率、エネルギー効率ともに好適な状態で生成ガス25を生成することができる。
【0047】
そして、上記のように供給する水蒸気量を調整し、バイオマス供給口15から生成ガス排出口13の間26の温度が1000℃以上となるように(最も低温化しやすい生成ガス排出口13の周辺温度が1000℃以上となるように)、ガス化反応炉1の内部温度を制御すると、ガス化装置Aでバイオマス4をガス化して生成される生成ガス25中のタールが大幅に低減する。
【0048】
ここで、表2は、水蒸気量を制御し、ガス化反応領域(バイオマス供給口15から生成ガス排出口13の間26)の温度を900℃から段階的に1250℃まで上げ、温度の違いによる生成ガス25中のタール濃度を確認した結果を示している。この結果から、ガス化反応領域26の温度が900℃では、10g/Nmものタールが発生するが、1000℃以上にすると、1/10〜1/20以下に生成ガス25中のタールが著しく減少することが確認された。また、1100℃以上にすると、より効果的にタールが減少することが確認された。
【0049】
【表2】

【0050】
これにより、例えばガス化反応炉1の生成ガス排出口13から排出された生成ガス25を冷却する熱交換器などの機器にタールが付着し、このタールを除去するためにガス化装置Aの運転を停止する必要がなく、またはその頻度が低くなり、生成ガス25ひいては液体燃料の製造効率が大幅に改善されることになる。また、液体燃料合成時に触媒被毒物質となるタールが低減することで、触媒被毒防止のため、タールの除去処理に必要であった吸着剤の消費量も大幅に低減する。よって、本実施形態のガス化装置Aを用いて生成ガス25を生成することにより、ガス化装置Aのランニングコスト、ひいては生成ガス25、液体燃料の製造コストの大幅な低減が図れることになる。
【0051】
したがって、本実施形態のガス化装置Aにおいては、バイオマス供給手段5によってバイオマス4をガス化反応炉1の内部に供給するバイオマス供給口15(バイオマス4の供給位置)よりも生成ガス排出口13側のガス化反応炉1の内部温度が1000℃以上となるように制御することで、ガス化装置Aでバイオマス4をガス化して生成する生成ガス25中のタールを大幅に低減することが可能になる。
【0052】
また、バイオマス供給口15よりもガス化剤供給口14側のガス化反応炉1の内部温度がバイオマス4の灰の融点以下となるように制御することで、バイオマス供給手段5によってガス化反応炉1の内部に供給したバイオマス4が溶融することを防止でき、ガス化反応炉1の内壁に灰が融着することを防止できる。
【0053】
そして、このように、ガス化装置Aによってタールが少ない生成ガス25を生成できることで、生成ガス25中からタールを吸着剤で除去する処理が不要になり、ランニングコストを大幅に削減することが可能になる。また、生成ガス25をガス冷却過程で冷却する際に、従来のようにタールが各機器で析出して付着することがなく、メンテナンスの頻度を下げ、長時間運転して生成ガス25を生成することが可能になる。よって、効率的に生成ガス25ひいては液体燃料を製造することが可能になる。
【0054】
また、ガス化反応炉1の内部で灰が融着することを防止できるため、この点からもメンテナンスの頻度を下げ、長時間運転して生成ガス25を生成することができ、より効率的に生成ガス25ひいては液体燃料を製造することが可能になる。
【0055】
また、本実施形態のガス化装置Aにおいては、ガス化反応領域温度検出手段30によってバイオマス供給口15よりも生成ガス排出口13側のガス化反応炉1の内部温度を検出し、燃焼領域温度検出手段31によってバイオマス供給口15よりもガス化剤供給口14側の温度を検出し、これら検出温度に基づいて、ガス化剤供給手段3によってガス化剤供給口14から供給する水蒸気量を制御する。
【0056】
そして、このように供給する水蒸気量を調整することによって、バイオマス供給口15よりも生成ガス排出口13側のガス化反応炉1の内部温度を1000℃以上となるように制御することができ、確実に、ガス化装置Aでバイオマス4をガス化して生成する生成ガス25中のタールを大幅に低減することが可能になる。
【0057】
また、供給する水蒸気量を調整することによって、バイオマス供給口15よりもガス化剤供給口14側のガス化反応炉1の内部温度をバイオマス4の灰の融点以下となるように制御することができ、確実に、ガス化反応炉1の内部に供給したバイオマス4が溶融することを防止できるとともにガス化反応炉1の内壁に灰が融着することを防止できる。
【0058】
また、本実施形態のガス化装置Aにおいては、ガス化反応領域温度検出手段30によってバイオマス供給口15よりも生成ガス排出口13側のガス化反応炉1の内部温度を検出し、燃焼領域温度検出手段31によってバイオマス供給口15よりもガス化剤供給口14側の温度を検出し、これら検出温度に基づいて、水蒸気供給手段7によってバイオマス供給口15から供給する水蒸気量を制御する。
【0059】
そして、このように水蒸気供給手段7によって供給する水蒸気量を調整することによっても、バイオマス供給口15よりも生成ガス排出口13側のガス化反応炉1の内部温度を1000℃以上となるように制御することができ、また、バイオマス供給口15よりもガス化剤供給口14側のガス化反応炉1の内部温度をバイオマス4の灰の融点以下となるように制御することが可能である。
【0060】
以上、本発明に係るガス化装置の実施形態について説明したが、本発明は上記の一実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0061】
例えば、図1に示すようにガス化反応炉1に設けられた監視窓32から、作業者が直接、あるいは監視カメラ33を用いて、ガス化反応炉1の内部の状態を監視し、バイオマス4の灰の溶融の有無など、ガス化反応炉1の内部の状態に応じて、ガス化反応炉1に供給する水蒸気量を調整するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0062】
1 ガス化反応炉
1a 第1テーパー部
1b 第2テーパー部
2 ガス化剤
3 ガス化剤供給手段
4 バイオマス(粉粒体)
5 バイオマス供給手段
6 水蒸気
7 水蒸気供給手段
8 制御手段
10 ガス化反応部
11 高温燃焼部
12 受けホッパ
13 生成ガス排出口
14 ガス化剤供給口
15 バイオマス供給口
16 バイオマス受入ホッパ
17 供給管
18 スクリュ
20 水蒸気生成装置
21 水蒸気供給路
22 外管
23 酸素(又は空気)
25 生成ガス
30 ガス化反応領域温度検出手段
31 燃焼領域温度検出手段
32 監視窓
33 監視カメラ
A ガス化装置
O1 軸線
T 流通方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイオマスをガス化して生成ガスを生成するためのガス化装置であって、
ガス化剤供給口とバイオマス供給口と生成ガス排出口を備えて形成されたガス化反応炉と、
前記ガス化剤供給口から前記ガス化反応炉の内部に、酸素と水蒸気を含むガス化剤を供給するガス化剤供給手段と、
前記バイオマス供給口から前記ガス化反応炉の内部に前記バイオマスを供給するバイオマス供給手段と、
前記バイオマスとともに前記バイオマス供給口から前記ガス化反応炉の内部に水蒸気を供給する水蒸気供給手段とを備え、
前記ガス化反応炉が、前記ガス化剤供給口から前記生成ガス排出口に向かう前記ガス化剤の流通方向の前記ガス化剤供給口と前記生成ガス排出口の間に前記バイオマス供給口を配設して形成されるとともに、
前記ガス化剤の流通方向の前記バイオマス供給口から前記生成ガス排出口の間の温度が1000℃以上となるように、且つ前記ガス化剤の流通方向の前記バイオマス供給口から前記ガス化剤供給口の間の温度が前記バイオマスの灰の融点以下となるように、前記ガス化反応炉の内部温度を制御する制御手段を備えていることを特徴とするガス化装置。
【請求項2】
請求項1記載のガス化装置において、
前記ガス化反応炉の前記バイオマス供給口から前記生成ガス排出口の間の温度を検出するガス化反応領域温度検出手段と、前記バイオマス供給口から前記ガス化剤供給口の間の温度を検出する燃焼領域温度検出手段とを備え、
前記ガス化反応領域温度検出手段と前記燃焼領域温度検出手段で検出した両温度に基づいて、前記制御手段が前記ガス化剤供給手段を制御し、前記ガス化剤供給口から供給する水蒸気の量を制御するように構成されていることを特徴とするガス化装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のガス化装置において、
前記ガス化反応炉の前記バイオマス供給口から前記生成ガス排出口の間の温度を検出するガス化反応領域温度検出手段と、前記バイオマス供給口から前記ガス化剤供給口の間の温度を検出する燃焼領域温度検出手段とを備え、
前記ガス化反応領域温度検出手段と前記燃焼領域温度検出手段で検出した両温度に基づいて、前記制御手段が前記水蒸気供給手段を制御し、前記バイオマス供給口から前記バイオマスとともに供給する水蒸気の量を制御するように構成されていることを特徴とするガス化装置。

【図1】
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【公開番号】特開2013−103965(P2013−103965A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−247688(P2011−247688)
【出願日】平成23年11月11日(2011.11.11)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】