説明

ガス吸着用シートおよび空気清浄フィルター

【課題】揮発性有機化合物やオゾンを除去することができ、しかも燃焼時に十分な難燃性を有し、ハニカム型フィルターの接着性も良好であるガス吸着用シートおよび空気清浄フィルターを提供する。
【解決手段】活性炭、難水溶性難燃剤、フィブリル化繊維、およびバインダー繊維を含む一層構造のガス吸着用シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス吸着用シートおよびそれを用いたハニカム型空気清浄フィルターに関するものである。くわしくは、ハニカム型空気清浄フィルターにした際の接着性が良好で、さらに、揮発性有機化合物やオゾンの除去に優れ、かつ難燃性を有するガス吸着用シートおよびそれを用いたハニカム型空気清浄フィルターに関するものである。
【背景技術】
【0002】
コピー機、プリンター、多機能OA機、コンピュータ、プロジェクター、POD印刷機等の電子機器は、近年集積化、小型化が進み、機器内部に熱がこもるのを避けるために、ファン等による排熱が欠かせなくなってきている。そして、インク、トナー等といった印字の際に用いられる成分、電子機器の本体を構成するプラスチック、および、各種接合部に使用されているゴム等に含まれている各種成分がガス化し、有害ガス成分として排熱と共に室内へと排出されている。また、コピー機、レーザープリンター等では高電圧を使用するため、前記ガス成分だけでなく、オゾンといった有害ガス成分も排出されている。近年、環境問題への意識の高まりから、有害ガス成分に関して、排出規制が行われるようになった。例えば、ドイツでは、「BAM(ブルーエンジェルマーク)」という環境ラベルが制定されており、電子機器毎に果たすべき環境性能基準が定められている。
【0003】
電子機器から排出される有害ガス成分を低減する目的で、前記電子機器内部に空気清浄フィルターが組み込まれている。前記空気清浄フィルターは電子機器内部に組み込まれるため、有害ガス成分の除去に優れるだけではなく、難燃規格UL(Underwriters Laboratories Inc.)の取得が必須である(非特許文献1参照)。
【0004】
レーザープリンターをはじめとする電子機器や、種々の空調機器等に組み込んでオゾンおよび揮発性有機化合物を除去するための空気清浄フィルターについてはよく知られている。特許文献1では、特定細孔の細孔容積を規定した活性炭に水溶性難燃剤を含有させたハニカム型空気清浄フィルターを提案した。難燃剤を含有させることで難燃性能の付与は行えたが、水溶性難燃剤を用いることで、活性炭の細孔の一部を閉塞し、揮発性有機化合物やオゾンガスの除去性能を低下させる問題を有していた。
【0005】
特許文献1の課題を解決するために、特許文献2、3では難燃剤を水溶性から難水溶性に変更し、活性炭の細孔が閉塞しない難燃化処方を提案した。活性炭の本来のオゾンおよび揮発性有機化合物の除去を維持し、難燃性能の付与を行えたが、シート基材に活性炭、難水溶性難燃剤を塗布した多層構造であったため、ハニカム型空気清浄フィルターにした際に、波型シートと平型シートの接着性が悪く、生産性および取り扱い性に劣るものであった。
【0006】
上述のとおり、コピー機、プリンター、多機能OA機、コンピュータ、プロジェクター、POD印刷機等の電子機器に組み込む空気清浄フィルターに関して、揮発性有機化合物、オゾンなどの有害ガス成分を除去性能、難燃性能、フィルターの生産性および取り扱い性を全て良好なものが得られていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭60−225640号公報
【特許文献2】特開2000−157825号公報
【特許文献3】特開2001−276608号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】UL 94:Standard for Safety Tests for Flammability of Plastic Materials for Parts in Devices and Appliances.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記従来技術の現状に鑑み創案されたものであり、コピー機、プリンター、多機能OA機、コンピュータ、プロジェクター、POD印刷機等の電子機器に組み込んで、有害ガス成分を除去することができ、しかも燃焼時に十分な難燃性を有し、ハニカム型空気清浄フィルターの接着性も良好であるガス吸着用シートおよび空気清浄フィルターを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意研究した結果、一層構造のシートに活性炭、難水溶性難燃剤を含有させることで、本発明の完成に到達した。
すなわち、本発明は以下の通りである。
【0011】
(1)活性炭、難水溶性難燃剤、フィブリル化繊維、およびバインダー繊維を含む一層構造のガス吸着用シート。
(2)難水溶性難燃剤が、リン酸メラミン、またはリン酸アルミニウムである上記(1)に記載のガス吸着用シート。
(3)(1)または(2)に記載のガス吸着用シートを、ハニカム形状に加工した空気清浄フィルター。
【発明の効果】
【0012】
本発明のガス吸着用シートおよび空気清浄フィルターは、オゾンおよび揮発性有機化合物を除去することができ、しかも燃焼時に十分な難燃性を有し、ハニカム型フィルターの接着性も良好であるガス吸着用シートおよび空気清浄フィルターを提供できるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明のガス吸着用シートの断面概略図を示す。
【図2】本発明のガス吸着用シートを片段ボールシートとした断面概略図を示す。
【図3】片段ボールシートを積層したハニカム型空気清浄フィルターの断面概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明のガス吸着用シートおよび空気清浄フィルターを詳細に説明する。本発明のガス吸着用シートは、図1に示すように、活性炭、難水溶性難燃剤、フィブリル化繊維、およびバインダー繊維を少なくとも含む一層構造のシートであり、このシートをハニカム型空気清浄フィルターにしたことを特徴とする。
【0015】
本発明のガス吸着用シートの製法は、特に限定はなく、公知のシート化方法により作製できるが、よりシートの高密度化が行える湿式抄紙法が好ましい。湿式抄紙法は、水に原材料を分散させて、網で濾過し、乾燥する製造方法である。
【0016】
本発明で使用する活性炭としては、特に限定はなく、公知の活性炭が使用でき、かかる活性炭は、例えば木質、果実殻(ヤシ殻、棉実殻、もみ殻、コーヒー豆など)、セルロース、リグニン、パルプなどの植物系原料、褐炭、亜炭、泥炭、無煙炭、石油スラッジなどの鉱物系原料等を素材とし、塩化亜鉛などを使用した薬品賦活あるいは水蒸気などを用いたガス賦活等を施すことにより得られる。
【0017】
本発明で使用する活性炭の形状は、粉末状、粒状、繊維状のいずれであってもよいが、ガス吸着用シート中での密度を上げるには、粉末状や粒状のものが好ましい。
【0018】
粉粒状活性炭の粒径としては、1〜100μmが好ましく、より好ましくは1〜80μmである。また、繊維表面に活性炭を固着させるためには、1〜30μmの範囲が好ましい。粒径が1μm未満の活性炭は、飛散や凝着など取り扱い性が悪く、他方100μmより大きい活性炭ではガス吸着用シートの薄層化が困難であり、また当該シートからの活性炭の剥離を招くおそれがある。
【0019】
本発明で使用する活性炭の比表面積は、800〜2,000m/gが好ましく、1,000〜1,600m/gがより好ましい。活性炭の比表面積が800m/gより小さいと、揮発性有機化合物およびオゾンの除去性能が低下するおそれがある。一方、活性炭の比表面積が2,000m/gより大きいと、活性炭の硬度が低下し、シートおよびハニカム製造時のプレス工程で粉化するおそれがある。
【0020】
本発明において、ガス吸着用シートに含まれる活性炭量は5〜50g/mが好ましい。より好ましくは、7〜45g/mであり、さらに好ましくは10〜40g/mである。5g/m未満の場合は、十分な揮発性有機化合物およびオゾンの除去性能が得られず、他方50g/mを越える場合は、ガス吸着用シートの厚みが厚くなるため加工性が悪くなり、またハニカム形状に加工した場合に開口率が小さくなって通過する空気の圧力損失が大きくなるといった問題を生ずるおそれがある。
【0021】
本発明において、ガス吸着用シートに含まれる活性炭の全含有量は、ガス吸着用シートに対して10〜80重量%が好ましい。より好ましくは、20〜70重量%である。活性炭の含有率が10重量%未満の場合、揮発性有機化合物およびオゾンの除去に機能する活性炭量が不足するため、除去性能が十分にはなされない場合がある。一方80重量%を越える場合、ガス吸着用シートの強度が低下し、加工性が悪くなることがある。
【0022】
本発明に使用する活性炭に、アルカリ金属化合物およびアルカリ土類金属化合物を添着しておいてもよい。アルカリ金属化合物およびアルカリ土類金属化合物を活性炭に添着することで、オゾン、酸性ガスの長寿命化が行える。使用するアルカリ金属化合物およびアルカリ土類金属化合物としては、それぞれアルカリ金属およびアルカリ土類金属を含有する無機または有機化合物であれば特に限定されるものではなく、例えば、アルカリ金属化合物としては、ナトリウム、カリウム、リチウムなどのアルカリ金属類の水酸化物;酸化物;炭酸塩、炭酸水素塩、酢酸塩、シュウ酸塩、リン酸塩、硫酸塩、こはく酸、フタル酸、フタル酸水素などの水溶性の塩;ハロゲン化物などが挙げられる。またアルカリ土類金属化合物としては、カルシウム、マグネシウム、バリウムなどのアルカリ土類金属の水酸化物;酸化物;炭酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、リン酸塩などの水溶性の塩;ハロゲン化物などが挙げられる。使用に当たってはこれらのアルカリ金属化合物およびアルカリ土類金属化合物の一種または二種以上が使用できる。アルカリ金属化合物やアルカリ土類金属化合物を添着する方法としては、シート化する前に活性炭に添着しておく方法、シート化後にスプレー、浸漬により添着する方法などが挙げられる。
【0023】
本発明において、アルカリ金属化合物およびアルカリ土類金属化合物の添加量は、ガス吸着用シート中の活性炭に対して10〜100重量%が好ましい。より好ましくは、15〜95重量%であり、さらに好ましくは20〜90重量%である。アルカリ金属化合物およびアルカリ土類金属化合物の含有量が10重量%より少ないとオゾン除去効果が小さくなるという問題があり、100重量%より多いと、オゾン除去性能は上がるが難燃性に劣るという問題がある。
【0024】
本発明で使用する難水溶性難燃剤とは、20℃の水への溶解度が1重量%以下の難燃剤であり、例えば、メタリン酸アルミニウム、リン酸メラミン、リン酸マグネシウム、縮合リン酸アミドなどのリン系難燃剤;水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムなどの無機系難燃剤が使用できる。これらの難燃剤を一種または二種以上を併用してもよい。
【0025】
本発明において、ガス吸着用シート中の難水溶性難燃剤の添加量は、ガス吸着用シート中の活性炭に対して8〜100重量%であることが好ましい。より好ましくは、10〜80重量%であり、さらに好ましくは12〜60重量%である。難燃剤の含有量が8重量%より少ないと、十分な難燃効果が得られず、ULの定める規格を満足することができないという問題があり、100重量%より多いと活性炭上のオゾン分解活性点が減少するため、ガス吸着用シートのオゾン除去性能が低下するという問題がある。
【0026】
本発明で使用する難水溶性難燃剤に加えて、リン酸グアニジン、リン酸アンモニウムなどの水溶性難燃剤も使用してもよい。水溶性難燃剤の添加量は、ガス吸着性シートの活性炭に対して、0.2〜5重量%であることが好ましい。より好ましくは、0.5〜4重量%であり、さらに好ましくは1〜3重量%である。水溶性難燃剤の含有量が0.2重量%より少ないと、水溶性難燃剤を添加したことによる難燃効果が得られず、5重量%より多いと活性炭上のオゾン分解活性点が減少するため、ガス吸着用シートのオゾン除去性能が低下するという問題がある。
【0027】
本発明で使用するフィブリル化繊維としては、例えば、マニラ麻パルプ、NBKPパルプ、ポリオレフィン系パルプ、アクリルパルプ、アラミドパルプ、セラミックパルプなどのフィブリル化できる繊維が挙げられる。粉末状の活性炭や難水溶性難燃剤を用いる場合は、繊維表面積が大きくなるフィブリル化繊維を用いる方が粉末状物質の定着性が良くなる。フィブリル繊維の補強用として、レーヨンやポリエチレン、ポリエステル、ポリプロピレン、セラミック繊維、ガラス繊維等の短繊維を使用してもよい。
【0028】
本発明において、フィブリル化繊維の混合比率は、ガス吸着用シート中の活性炭に対して10〜50重量%が好ましい。より好ましくは、15〜45重量%であり、さらに好ましくは20〜40重量%である。フィブリル化繊維の混合比率が10重量%より少ないと粉末状の活性炭や難水溶性難燃剤の定着性が悪くなるという問題があり、50重量%より多いと、揮発性有機化合物やオゾンの除去性能が低下する問題がある。
【0029】
本発明で使用するバインダー繊維としては、例えば、ポリビニルアルコール繊維やポリオレフィン系繊維、ポリエステル繊維などの繊維が挙げられる。補助的なバインダー効果を得るために、粉末状のバインダーを使用してもよい。
【0030】
本発明において、バインダー繊維の混合比率は、ガス吸着用シート中の活性炭に対して5〜15重量%が好ましい。より好ましくは、6〜14重量%であり、さらに好ましくは7〜13重量%である。バインダー繊維の混合比率が5重量%より少ないとガス吸着用シートの強度低下が大きくなるという問題があり、15重量%より多いと、揮発性有機化合物やオゾンの除去性能が低下する問題がある。
【0031】
本発明において、ガス吸着用シートの目付は、10〜100g/mが好ましい。より好ましくは20〜80g/mである。当該シートの目付が10g/mより小さいと揮発性有機化合物やオゾンの除去効果が小さく、100g/mより大きいとシートが厚くなり、ハニカム形状にガス吸着用シートを加工した場合に開口率が小さくなって、通過する空気の圧力損失が大きくなるといった問題が起こるおそれがある。
【0032】
本発明のガス吸着用シートの厚みは、0.05〜0.3mmであることが好ましい。シートの厚みが0.05mm未満の場合には、ハニカム形状への折り込み加工の際の強度が不十分となり、シートの厚みが0.3mmを越える場合には、ハニカム形状にガス吸着性シートを加工した場合に開口率が小さくなって、通過する空気の圧力損失が大きくなるといった問題が起こるおそれがある。
【0033】
本発明のガス吸着用シートをハニカム形状とする方法には、従来公知の加工方法を用いることができる。なお本発明においてハニカム形状とは、断面が六画形状のものの他、四角、正弦波形、ロール形のものなど中空多角柱、円柱などの中空柱体が連続したものをいう。例えば、ガス吸着用シートを正弦波形のハニカム形状とするには、まずガス吸着用シートを賦形ロールに通して波形に賦形し、波形の当該ガス吸着用シートの片面または両面に平らなシートを接合する。これを積層化して正弦波形のハニカム形状のフィルターとする。ここで、波形の頂点に接着剤を付けて固定するのが普通であるが、波形のガス吸着用シートを積層するとその間にある平らなシートは必然的に固定されるので、必ずしも接着剤を付ける必要はない。なお、接着剤を付ける場合はシートの吸着能を損なわないものを使用する必要がある。接着剤としては例えば、コーンスターチ、酢ビ樹脂、アクリル樹脂などが好適に使用できる。オゾン除去性能を高めるためには、波形のガス吸着用シートの接着ピッチを小さくし、山高さを低くするとよい。好適範囲としては、ピッチは0.5〜8mm、山高さは0.4〜5mmである。
【0034】
本発明の空気清浄用フィルターの開口率は、シートの厚みやピッチ、山の高さを調整することによって制御することができ、好適範囲としては50〜90%である。開口率が50%未満の場合、通過する流体の圧力損失が大きくなり、90%を越える場合は、強度面で耐久性が落ちるおそれがある。
【0035】
上記のように構成された本発明のガス吸着用シートおよび空気清浄フィルターは、通常使用時だけでなく燃焼時も活性炭層中の活性炭粒子を脱落させることがないので、有害ガス成分を効果的に除去できるだけでなく、UL規格94V−Oを満足する高い難燃性を持つ。
【実施例】
【0036】
以下、実施例によって本発明のガス吸着用シートおよび空気清浄フィルターの作用効果を具体的に示すが、本発明はこれらによって何ら限定されるものではない。なお、実施例中で測定した特性値の評価方法を以下に示す。
【0037】
(難燃性)
非特許文献1に記載されているULで定めるUL94V試験法に基づいて評価した(Standard for Test for Flammability of Plastic Materials for Parts in Devices and Appliances. Vertical Burning Test ;94V−0,94V−1,94V−2)。UL94試験法に定められた有炎燃焼時間、無炎燃焼時間から燃焼性のグレードを求め、定められた基準に達しないものは難燃性を不合格とした。
【0038】
(オゾンの除去率)
層長15mmの空気清浄フィルターに、オゾン濃度1ppmの空気を風速1m/秒で通し、カラムの入口側と出口側のオゾン濃度を測定した。測定条件は、温度25℃、湿度50%とした。これらの測定値を下記式1に代入してオゾン除去率(%)を算出した。尚、初期効率を求めるため、測定開始後1分と100時間後でのオゾン除去率を求めた。
【数1】

【0039】
(トルエンの除去率)
層長15mmの空気清浄フィルターに、トルエン濃度5ppmの空気を風速1m/秒で通し、カラムの入口側と出口側のトルエン濃度を測定した。測定条件は、温度25℃、湿度50%とした。これらの測定値を下記式2に代入してトルエン除去率(%)を算出した。尚、初期効率を求めるため、測定開始後1分でのトルエン除去率を求めた。
【数2】

【0040】
(圧力損失)
層長15mmの空気清浄フィルターに、空気を風速1m/秒で通し、カラムの入口側と出口側の差圧から圧力損失を測定した。測定条件は、温度25℃、湿度50%とした。
【0041】
(平均粒子直径)
各粒子を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、100個の粒子の直径を測定し、それから平均直径を算出した。
【0042】
(平均繊維直径)
各粒子を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、100本の繊維の直径を測定し、それから平均直径を算出した。
【0043】
(ハニカム接着性)
ピッチ2.6mm、山高さ1.2mmの片段ボールシートを、図3に示すような2枚積層したサンプルを作製した。サンプルサイズは、幅50mm、長さ250mmにカットし予め50mmを剥がす。その後、引張試験機に設置し、引張速度100mm/分で100mm間の剥離強度を測定した。接着点が2.6mm間隔であるため、不連続の強度を示すために最大強度から5点をピックアップし、その平均値を剥離強度とした。綺麗に剥離するサンプルは、剥離強度を数値として示すことができるが、試験途中でガス吸着用シートが切断するサンプルは材料破壊とした。材料破壊の場合、ハニカム接着性がガス吸着用シートの切断強度より高いことを表すために、ハニカム接着性としては良好となる。
【0044】
<実施例1>
平均粒子直径20μmの木質系活性炭を25g/m、難水溶性難燃剤として平均粒子直径12μmのリン酸メラミン(20℃の水への溶解度:0.2重量%)を12.5g/m、フィブリル化繊維のNBKPパルプを10g/m、バインダー繊維として平均繊維直径12μmのポリビニルアルコール繊維を2.5g/mになるように配合し湿式抄紙を行い、目付50g/m、厚み0.15mmのガス吸着用シートを作製した。次に、コルゲート加工機を用いてガス吸着用シートをピッチ2.6mm、山高さ1.2mmの片段ボールシートに成形した。この片段ボールシートを積み重ね、切断加工して層長15mmのハニカム型空気清浄フィルターを得た。
【0045】
<実施例2>
平均粒子直径20μmの木質系活性炭を25g/m、難水溶性難燃剤として平均粒子直径12μmのリン酸メラミン(20℃の水への溶解度:0.2重量%)を12.5g/m、フィブリル化繊維のNBKPパルプを10g/m、バインダー繊維として平均繊維直径12μmのポリビニルアルコール繊維を2g/mと平均繊維直径14μm、繊維長5mmの芯鞘ポリエステル繊維(芯部融点:260℃、鞘部融点:110℃)を0.5g/mになるように配合し湿式抄紙を行い、目付50g/m、厚み0.15mmのガス吸着用シートを作製した。次に、コルゲート加工機を用いてガス吸着用シートをピッチ2.6mm、山高さ1.2mmの片段ボールシートに成形した。この片段ボールシートを積み重ね、切断加工して層長15mmのハニカム型空気清浄フィルターを得た。
【0046】
<比較例1>
平均粒子直径20μmの木質系活性炭を25g/m、フィブリル化繊維のNBKPパルプを10g/m、バインダー繊維として平均繊維直径12μmのポリビニルアルコール繊維を2g/mと平均繊維直径14μm、繊維長5mmの芯鞘ポリエステル繊維(芯部融点:260℃、鞘部融点:110℃)を0.5g/mになるように配合し湿式抄紙を行い、目付37.5g/m、厚み0.13mmの湿式シートを作製した。この湿式シートに含浸加工法で、水溶性難燃剤のリン酸グアニジンを7.5g/m添着し、目付45g/m、厚み0.14mmのガス吸着用シートを作製した。次に、コルゲート加工機を用いてガス吸着用シートをピッチ2.6mm、山高さ1.2mmの片段ボールシートに成形した。この片段ボールシートを積み重ね、切断加工して層長15mmのハニカム形状の空気清浄フィルターを得た。
【0047】
<比較例2>
フィブリル化繊維のNBKPパルプを10g/m、バインダー繊維として平均繊維直径12μmのポリビニルアルコール繊維を2g/m、平均繊維直径14μm、繊維長5mmの芯鞘ポリエステル繊維(芯部融点:260℃、鞘部融点:110℃)を0.5g/mになるように配合し湿式抄紙を行い、目付12.5g/m、厚み0.06mmの湿式シートと作製した。この湿式シートの両側表面に、平均粒子直径20μmの木質系活性炭、平均粒子直径12μmのリン酸メラミン(20℃の水への溶解度:0.2%)、バインダー成分のアルギン酸ナトリウムを加えて、ペースト状として湿式シートにコート加工した。それぞれのコート量は、活性炭を25g/m、リン酸メラミンを12.5g/m、アルギン酸ナトリウムを5g/mとし、目付55g/m、厚さ0.15mmのガス吸着用シートを作製した。次に、コルゲート加工機を用いてガス吸着用シートをピッチ2.6mm、山高さ1.2mmの片段ボールシートに成形した。この片段ボールシートを積み重ね、切断加工して層長15mmのハニカム形状の空気清浄フィルターを得た。
【0048】
<比較例3>
フィブリル化繊維のNBKPパルプを10g/m、バインダー繊維として平均繊維直径12μmのポリビニルアルコール繊維を2g/m、平均繊維直径14μm、繊維長5mmの芯鞘ポリエステル繊維(芯部融点:260℃、鞘部融点:110℃)を0.5g/mになるように配合し湿式抄紙を行い、目付12.5g/m、厚み0.06mmの湿式シートと作製した。この湿式シートの両側表面に、平均粒子直径20μmの木質系活性炭、水溶性難燃剤のリン酸グアニジン、バインダー成分のアルギン酸ナトリウムを加えて、ペースト状として湿式シートにコート加工した。それぞれのコート量は、活性炭を25g/m、リン酸グアニジンを7.5g/m、アルギン酸ナトリウムを5g/mとし、目付50g/m、厚さ0.15mmのガス吸着用シートを作製した。次に、コルゲート加工機を用いてガス吸着用シートをピッチ2.6mm、山高さ1.2mmの片段ボールシートに成形した。この片段ボールシートを積み重ね、切断加工して層長15mmのハニカム形状の空気清浄フィルターを得た。
【0049】
実施例1〜2、比較例1〜3で得られた空気清浄フィルターの構成の詳細を表1に、オゾン除去率と圧力損失と難燃性とハニカム接着性の評価結果を表2に示す。
【0050】
【表1】

【0051】
【表2】

【0052】
表1、2から明らかなように、実施例1〜2はオゾン除去率が高く、UL難燃性試験においてUL94V−0で、さらにハニカム接着性も材料破壊になるぐらい接着性が良好で、取り扱い性が大幅に向上した。一方、比較例1は水溶性難燃剤を用いているために、オゾン除去率も初期も寿命も低性能である。比較例2はガス吸着用シートが3層となり、シート表面が粒子で覆われているためにハニカム接着性が弱く、取り扱いが悪く、輸送時にハニカムが割れる場合があり、過剰梱包が必要となる。比較例3はオゾン除去率、ハニカム接着性が悪い。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明のガス吸着用シートおよび空気清浄フィルターは、揮発性有機化合物やオゾンなどの有害ガス成分の除去性と難燃性に優れ、ハニカム型フィルターの接着性も良好で、コピー機、プリンター、多機能OA機、コンピュータ、プロジェクター、POD印刷機等の電子機器の排出ガス中に含まれる有害ガス成分を除去するための空気清浄フィルター等に好適に使用できる。
【符号の説明】
【0054】
1 活性炭
2 難水溶性難燃剤
3 フィブリル化繊維
4 バインダー繊維
5 ガス吸着用シート


【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性炭、難水溶性難燃剤、フィブリル化繊維、およびバインダー繊維を含む一層構造のガス吸着用シート。
【請求項2】
難水溶性難燃剤が、リン酸メラミン、またはリン酸アルミニウムである請求項1に記載のガス吸着用シート。
【請求項3】
請求項1または2に記載のガス吸着用シートを、ハニカム形状に加工した空気清浄フィルター。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−125717(P2012−125717A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−280254(P2010−280254)
【出願日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】