説明

ガス圧接用バーナー

【課題】複雑な構成を採用することなく燃料ガスの供給管の耐熱性と放熱性を高めることができるガス圧接用バーナーを提供すること。
【解決手段】燃料ガスの供給管20の内側面21が平坦な平面に設けられ、内側面21以外の面がバーナー火口30から噴出する火炎の輻射熱が直に当たらないように、内側面21の巾よりも他の部分の巾が同等か小さくなるように設けられ、内側面21であってバーナー火口30を除く平坦な平面の部分に、燃料ガスの供給管20を輻射熱から保護するように、平坦な断熱層材40が配され、断熱層材40が、内側面21から脱落しないように、耐熱材で設けられた保持部材50によって保持され、内側面21以外の面には放熱性を高めるために断熱層材が配されていない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、燃料ガスの供給管と複数個のバーナー火口とを備え、鉄筋などの金属製棒材のガス圧接に用いるガス圧接用バーナーに関する。
【背景技術】
【0002】
鉄筋を突合せ接合する作業においてガス圧接法が広く用いられている。このガス圧接法では鉄筋などの一対の被圧接部材を互いに押圧する方向に加圧すると共に火炎によって加熱することにより、接合端面を溶かすことなく赤熱状態として、接合部に膨らみ部ができるように圧縮して被圧接部材の接合が行われる。
【0003】
このガス圧接法によると複数のバーナー火口より噴出する火炎の熱が被圧接部材によって反射され、バーナー火口及び燃料ガスの供給管が高温となる。また、火炎の輻射熱により、輻射熱が当たる燃料ガスの供給管の内側面が高温となりやすい。このため、燃料ガスの供給管内で逆火が生じ易いという問題点がある。
【0004】
これに対して、従来においては以下の発明が提案されている。
金属製棒材の周囲からその金属製棒材の外周面に向かうフレームを形成するための燃料噴射孔をそれぞれ有する複数の火口と、それら複数の火口が所定間隔を隔てて設けられ、内部に形成された燃料供給路に接続されたそれら燃料噴射孔に燃料を供給するための先端が封止された燃料供給管とを備えた加熱トーチであって、前記燃料供給管の外周面に冷却気体を供給するための冷却気体流通路を含むことにある(特許文献1参照)。
【0005】
これによれば、燃料供給管が冷却気体流通路の冷却気体によって積極的に冷却されてその温度上昇が抑制されると共に、火口もその燃料供給管を介して冷却されることから、燃料ガスの流速が比較的低い燃料供給路内や高温に曝される火口での逆火の発生が抑制される。
【0006】
また、この発明は、断熱材として燃料ガスの供給管に糸や布等が巻きつけられると共にその外周面が水溶性の耐熱セメント等で固められて断熱層が設けられることによる断熱効果に限界があることを考慮してなされたものである。
【0007】
しかしながら、現在、セラミックファイバーなどの高耐火・耐熱性繊維が開発されているため、燃料ガスの供給管が高温となる箇所にはそれらの断熱材を利用することができる。この耐熱材を利用する場合、上記のように円筒形のチューブで形成されている燃料ガスの供給管の全体に巻き付ける方法がある。さらに、燃料ガスの供給管が熱せられる側である円筒形のチューブの半円状面だけに断熱材を装着することが考えられる。しかし、前者の場合は、放熱性について問題があり、後者の場合は、燃料ガスの供給管の半円状面を覆うことになるため断熱材を適切に位置合せして装着することが難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特願平9−280519号公報(第1頁、請求項1、[0006]、[0009])
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、複雑な構成を採用することなく燃料ガスの供給管の耐熱性と放熱性を高めることができるガス圧接用バーナーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明にかかるガス圧接用バーナーの一形態によれば、ガス圧接がなされる被圧接物を囲うように形成されると共に燃料ガスを供給するように設けられた燃料ガスの供給管と、該燃料ガスの供給管の前記被圧接物へ対面する供給管の内側面に、複数の火炎が前記被圧接物へ向って噴出されるように装着された複数個のバーナー火口とを備えるガス圧接用バーナーであって、前記供給管の内側面が平坦な平面に設けられ、該供給管の内側面以外の面が前記バーナー火口から噴出する火炎の輻射熱が直に当たらないように、該供給管の内側面の巾よりも他の部分の巾が同等か小さくなるように設けられ、前記供給管の内側面であって前記バーナー火口を除く平坦な平面の部分に、前記燃料ガスの供給管を輻射熱から保護するように、平坦な断熱層材が配され、該断熱層材が、前記供給管の内側面から脱落しないように、耐熱材で設けられた保持部材によって保持され、前記供給管の内側面以外の面には放熱性を高めるために断熱層材が配されていないことを特徴とする。
【0011】
また、本発明にかかるガス圧接用バーナーの一形態によれば、前記燃料ガスの供給管が断面四角の筒形状であることを特徴とすることができる。
【0012】
また、本発明にかかるガス圧接用バーナーの一形態によれば、前記断熱層材は、セラミックファイバーが積層されて形成された不織布状に設けられていることを特徴とすることができる。
【0013】
また、本発明にかかるガス圧接用バーナーの一形態によれば、前記バーナー火口が前記供給管の内側面に螺着され、該バーナー火口の先端部が6角柱状であって前記保持部材よりも被圧接物側へ突設していることを特徴とすることができる。
【0014】
また、本発明にかかるガス圧接用バーナーの一形態によれば、前記保持部材は、耐熱金属板材で設けられ、前記断熱層材に熱が篭らないように、前記バーナー火口から少なくとも前記断熱層材の厚さ以上の間隔をおいた部分を押えることで保持するように形成されていることを特徴とすることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明にかかるガス圧接用バーナーによれば、複雑な構成を採用することなく燃料ガスの供給管の耐熱性と放熱性を高めることができるという特別有利な効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明にかかるガス圧接用バーナーの一例を示す概要図である。
【図2】(a)は図1のガス圧接用バーナーのA方向から見た部分拡大図であり、(b)は図1のガス圧接用バーナーのA−B部の部分拡大図である。
【図3】本発明にかかるガス圧接用バーナーのC−C線の端面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明にかかるガス圧接用バーナーの形態例を添付図面(図1〜3)に基づいて詳細に説明する。
このガス圧接用バーナーは、図1及び図2に示すように、燃料ガスの導入管10と、その燃料ガスの導入管10から先端側へ二股に分かれて設けられた一対の燃料ガスの供給管20と、その供給管20に装着された複数個のバーナーノズルであるバーナー火口30と、バーナーの火炎から燃料ガスの供給管20を保護する断熱層である断熱層材40と、この断熱層材40を燃料ガスの供給管20に保持するための保持部材50とを備えるものである。
【0018】
燃料ガスの供給管20は、図1に示すように、ガス圧接がなされる被圧接部材5を囲うように形成されると共に燃料ガスの導入管10から燃料ガスが供給されるように設けられている。ここで、本発明は以下被圧接部材5として鉄筋を想定するが、これに限られずガス圧接が可能な物全てを対象とする。なお、本形態例では、一対の燃料ガスの供給管20は、燃料ガスの導入管10から二股に分かれて線対称に形成され、鉄筋5を挿通させる空間を対称に囲うように設けられているが、燃料ガスの供給管20を非対称形に形成して鉄筋5の挿通空間の位置を変えてもよい。
【0019】
また、燃料ガスの供給管20は、図1及び図2に示すように、鉄筋5の対面となる内側面21を、概括的にはその鉄筋5の外周面に沿った円弧状に形成しつつ、先端が閉じられた断面四角の筒状に形成されている。以下に説明する複数のバーナー火口30は、その内側面21に取り付けられ、各バーナー火口30が位置するそれぞれの面も平坦な平面に形成されている。
【0020】
これらのバーナー火口30から噴出する火炎の輻射熱の熱線は直進する。このため、燃料ガスの供給管20が断面四角の筒状に形成されたことで輻射熱が直接当たる面は内側面21だけとなる。したがって、以下に説明する断熱層材40及びその保持部材50は、この内側面21に設けることで十分な輻射熱対策となる。特に、天然ガスを燃料ガスとする場合は、輻射熱が大きいため効果が大きい。そして、燃料ガスの供給管20の内側面21を除く他の3面は、断熱層材が配されていないため熱を逃がす効果を持たせることができ、放熱性を高めることができる。また、断熱層材が配されないことで断熱層がない面(本形態例では内側面21以外の面)の表面積を大きくすることや、燃料ガスの供給管20を放熱性の高い材質で形成することで放熱性を高めるようにしてもよい。
【0021】
なお、燃料ガスの供給管20は、内側面21の短手方向の巾よりも他の部分の巾、すなわち内側面21より鉄筋5から遠ざかる外側の部分の巾が、同等か小さくなるように形成すればよい。これによれば、該他の部分が、輻射熱の熱線が直接当たらない影の面になって加熱されない。従って、燃料ガスの供給管20は、例えば、断面半円形状の筒状とすることや、断面三角形の筒状とすることもできる。
【0022】
バーナー火口30は、図1及び2に示すように、内側面21にそれぞれ複数個(本実施形態では5つ)装着される。バーナー火口30は、図3に示すように、その内部に燃料ガスの供給管20と繋がった燃料噴射孔31を備えて、複数の火炎を鉄筋5に向って噴出するように設けられる。
【0023】
そして、本形態例のバーナー火口30は、鉄筋を圧接する際にその鉄筋5と接触して破損する場合などに備えて、交換・修理ができるように設けられている。すなわち、バーナー火口30の燃料ガスの供給管20への固定は、従来のようなろう付けとせずに螺着によっている。さらに詳細には、図1乃至図3に示すように、バーナー火口30の先端部は6角柱状に形成されている。また、前述したように燃料ガスの供給管20が断面四角の筒形状であって、バーナー火口30のそれぞれの取り付け面が平坦な平面になっている。そして、バーナー火口30は、後述する保持部材50の面より鉄筋5側へ突出している。このため、バーナー火口30の着脱作業は、6角レンチなどの工具による螺子締め作業よって容易に行うことができる。従って、バーナー火口30の交換・修理等のメンテナンスを効率良くに行うことができる。
【0024】
断熱層材40は、火炎の輻射熱の熱線が当たる内側面21が高温となり易く、また火炎の熱自体が鉄筋5によって反射し、燃料ガスの供給管20が高温となり、逆火が生ずることを防ぐために設けられている。この断熱層材40は、熱せられる内側面21だけを覆うように帯状に形成されて配されている。そして、断熱層材40は、平坦な平面で形成された内側面21には載せやすく、後述の保持部材50によって内側面21に保持されている。また、本形態例の断熱層材40は、内側面21に接着されていないので保持部材50を外すだけで容易に交換できる。さらに、本形態例の断熱層材40は、セラミックファイバーが積層されて形成された不織布状になっている。なお、図3の断熱層材40は、不織布状のものを複数層(図面上は二層)重ねた形態例を示してある。
【0025】
保持部材50は、内側面21から断熱材層40が脱落しないように保持している。この保持部材50は、図2及び図3に示すように、断熱層材40を覆うように略帯状に形成される。本形態例の保持部材50では、保持片51が燃料ガスの供給管20の先端部と燃料ガスの導入管10寄りの部分に2箇所ずつ形成され、断熱層材40を保持する面から延設され、内側面21を挟んで燃料ガスの供給管20の外側でネジ止めされている。また、本形態例の保持部材50は、耐熱金属板材によって形成されている。燃料ガスの供給管20が断面四角の筒状であるため、断熱層材40を平坦な平面に形成された内側面21の上に載せ、その上に保持部材50を位置合せ容易に重ね合わせることができる。従って、断熱層材40を容易且つ適切に保持することができる。
【0026】
一方、保持部材50は、図2(a)及び図3に示すように、バーナー火口30を覆わないようにし、本形態例ではさらにバーナー火口30の周囲に断熱層材40の厚さ以上の間隔をおいた放熱孔52を形成している。このような大きな放熱孔52が形成されることで、バーナー火口30を避けて保持部材50を取り付けることが容易となるだけでなく、断熱層材40にバーナー火口30の熱が篭らないようにすることができる。なお、保持部材50は、バーナー火口30に対応した放熱孔52を有する帯状部材で形成しているが、格子状やネット状などのさらに開口空間を大きくした形態とし、放熱性を高めることもできる。
【0027】
以上、本発明につき好適な形態例を挙げて種々説明してきたが、本発明はこの形態例に限定されるものではなく、発明の精神を逸脱しない範囲内で多くの改変を施し得るのは勿論のことである。
【符号の説明】
【0028】
5 鉄筋
10 燃料ガスの導入管
20 燃料ガスの供給管
21 内側面
30 バーナー火口
31 燃料噴射孔
40 断熱層材
50 保持部材
51 保持片
52 放熱孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス圧接がなされる被圧接物を囲うように形成されると共に燃料ガスを供給するように設けられた燃料ガスの供給管と、該燃料ガスの供給管の前記被圧接物へ対面する供給管の内側面に、複数の火炎が前記被圧接物へ向って噴出されるように装着された複数個のバーナー火口とを備えるガス圧接用バーナーであって、
前記供給管の内側面が平坦な平面に設けられ、該供給管の内側面以外の面が前記バーナー火口から噴出する火炎の輻射熱が直に当たらないように、該供給管の内側面の巾よりも他の部分の巾が同等か小さくなるように設けられ、
前記供給管の内側面であって前記バーナー火口を除く平坦な平面の部分に、前記燃料ガスの供給管を輻射熱から保護するように、平坦な断熱層材が配され、
該断熱層材が、前記供給管の内側面から脱落しないように、耐熱材で設けられた保持部材によって保持され、
前記供給管の内側面以外の面には放熱性を高めるために断熱層材が配されていないことを特徴とするガス圧接用バーナー。
【請求項2】
前記燃料ガスの供給管が断面四角の筒形状であることを特徴とする請求項1記載のガス圧接用バーナー。
【請求項3】
前記断熱層材は、セラミックファイバーが積層されて形成された不織布状に設けられていることを特徴とする請求項1又は2記載のガス圧接用バーナー。
【請求項4】
前記バーナー火口が前記供給管の内側面に螺着され、該バーナー火口の先端部が6角柱状であって前記保持部材よりも被圧接物側へ突設していることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のガス圧接用バーナー。
【請求項5】
前記保持部材は、耐熱金属板材で設けられ、前記断熱層材に熱が篭らないように、前記バーナー火口から少なくとも前記断熱層材の厚さ以上の間隔をおいた部分を押えることで保持するように形成されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のガス圧接用バーナー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−94814(P2013−94814A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−239957(P2011−239957)
【出願日】平成23年11月1日(2011.11.1)
【特許番号】特許第5022510号(P5022510)
【特許公報発行日】平成24年9月12日(2012.9.12)
【出願人】(596171384)株式会社 徳武製作所 (14)
【Fターム(参考)】