説明

ガス圧監視制御装置

【課題】その都度の現地対応が不要となり、対応に要する人件費を削減することができ、且つ、補給量予測を正確に判断することができるガス圧監視制御装置を提供する。
【解決手段】本発明のガス圧監視制御装置100は、ガスを貯留してガス機器13に供給するガスボンベ1と、ガスボンベ1の重量を計量するガスボンベ計量器2と、ガス機器13内のガスの圧力を検出する圧力リレー8と、ガスボンベ1内のガスの圧力を検出する圧力リレー5と、ガスボンベ1からガス機器13へのガスの供給量を調整する電磁弁7と、ガスボンベ1周辺の外気温を測定する温度計10と、ガスボンベ計量器2、圧力リレー8、圧力リレー5、及び温度計10から得られた情報に基づいて、電磁弁7を調整(全開閉及び半開閉を含む)してガス機器13内のガスの圧力が所定値になるように制御するPC11と、を備えて構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス圧監視制御装置に関し、特に、絶縁ガスを充填したガス機器内のガス圧を監視して、自動的にガス圧が一定値になるように制御するガス圧監視制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
発変電所には、絶縁ガス(SFガス)を電力機器内部に封入することにより、電気的に内部の部材同士を絶縁しているガス機器と呼ばれる機器が多数使用されている。例えば、ガス絶縁開閉装置、ガス絶縁変圧器、及びガス絶縁母線等がある。これらのガス機器は、無人の発変電所等に設置されている場合が多く、ガス漏れが発生し、ガス圧低下となった場合は、ガス機器監視装置から発せられた異常信号を制御監視システムが検知して、作業員がガスボンベや補給用機材を現地へ運搬してガスの補給作業を行っている。図6は従来のガス機器監視装置の構成を示す図であり、各ガス機器13にガス圧の低下を検知する圧力リレー14を備えている。例えば、ガス機器が故障した場合、その内容が故障表示器16に表示されると共に、符号化装置17により故障状況が符号化されて、制御監視システム18に送信される。
尚、特許文献1には、ガス開閉器に高圧絶縁ガスを蓄えた高圧室を備え、開閉器の消弧室内のガス圧低下を自動的に検知してガスを補充する開閉器のガス圧調整装置について開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−215668号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、図6のガス機器監視装置では、各ガス機器13の圧力値については、制御監視システム18へ送信されていないため、少量のガス漏れが発生した場合、漏洩の傾向が把握しにくく、効率的なガス補給の予測が立てにくいといった問題がある。そこで、作業員が定期巡視時(2回/月)に、各ガス機器13の圧力計15の値を目視により監視して、圧力が低い場合にガス補給口9にガスボンベを接続してガス圧が所定の値になるように補給していた。このように、一旦ガス圧低下が発生した機器に関しては、定期的にガス圧を監視し、低下傾向と圧力低下警報値に達する日を予測して、補給日を検討する必要がある。また、ガス漏れの恒久対策としては、機器を停止(停電)のうえ分解修理を行うこととなるが、お客様専用線など停電させることが困難な場合には、上記の対応が1年以上継続する場合がある。
また、特許文献1に開示されている従来技術は、消弧室のガス圧と大気圧とを比較し、大気圧より消弧室のガス圧が低下した場合に、弁体を移動させて連通溝を介して高圧室のガスを消弧室に導入して、消弧室のガス圧を一定に保つ構成であるが、高圧室のガス容量に限界があるため、長期に消弧室のガス圧を一定に保つことが困難であるといった問題がある。
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、ガス機器内のガス圧を一定期間測定してデータを蓄積し、蓄積した測定データの低下率が所定値に達した場合に、将来のガス圧の低下傾向を圧力値が非許容値に達するのに要する期間まで計算し、該期間満了時の所定期間前(約1週間前)にガス機器に絶縁ガスを補給することにより、その都度の現地対応が不要となり、対応に要する人件費を削減することができ、且つ、補給量予測を正確に判断することができるガス圧監視制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明はかかる課題を解決するために、請求項1は、絶縁ガスを封入して機器内の部材を電気的に絶縁するように構成されたガス機器内のガス圧を監視及び制御するガス圧監視制御装置であって、前記絶縁ガスを貯留して前記ガス機器に供給するガスボンベと、該ガスボンベの重量を計量するガスボンベ計量手段と、前記ガス機器内の絶縁ガスの圧力を検出する第1のガス圧検出手段と、前記ガスボンベ内の絶縁ガスの圧力を検出する第2のガス圧検出手段と、前記ガスボンベから前記ガス機器への前記絶縁ガスの供給量を調整するガス調整手段と、前記ガスボンベ周辺の外気温を測定する外気温測定手段と、前記ガスボンベ計量手段、前記第1のガス圧検出手段、前記第2のガス圧検出手段、及び前記外気温測定手段から得られた情報に基づいて、前記ガス調整手段を調整して前記ガス機器内の前記絶縁ガスの圧力が所定値になるように制御する制御手段と、を備えたことを特徴とする。
本発明の制御手段は、ガスボンベ計量手段、第1のガス圧検出手段、第2のガス圧検出手段、及び外気温測定手段から得られた情報に基づいて、ガス調整手段を調整してガス機器内の絶縁ガスの圧力が所定値になるように制御する。即ち、制御手段は、ガス機器内のガス圧により、ガス機器に充填されている絶縁ガスが所定の圧力であるか否かを判断し、ガスボンベ内のガス圧により、ガスボンベに充填されている絶縁ガスが所定の圧力で、且つ所定の量があるか否かを判断する。また、外気温を測定することにより、気温に対する圧力の変化を正規化することができる。これらの値は常時、制御手段に入力するので、ガス機器の圧力変化率を正確に把握することができる。
【0006】
請求項2は、前記制御手段は、前記ガスボンベから前記ガス機器に前記絶縁ガスが補給された後、前記第1のガス圧検出手段により検出される圧力値を、前記外気温測定手段により測定した外気温を用いて20℃時のガス圧に換算して記憶することを特徴とする。
ガス圧は外気温により変動する。即ち、外気温が高くなればガス圧が上昇し、外気温が低くなれば、ガス圧が低下する。その結果、外気温のデータをそのまま使用すると、外気温が低くガス圧が低下した場合、異常値として判断してしまう。そこで本発明では、第1のガス圧検出手段により検出される圧力値を、外気温測定手段により測定した外気温を用いて20℃時のガス圧に換算して記憶する。つまり、第1のガス圧検出手段により検出される圧力値に対して、外気温が20℃に対する温度変化に換算係数を乗じて求める。これにより、ガス圧が外気温の変動に対してほぼ直線的な変化となり、ガス圧の変化率を管理し易くなる。
【0007】
請求項3は、前記制御手段は、経過時間単位の前記圧力値の傾きから将来の圧力値の低下率を計算し、該低下率が所定値以上である場合は、圧力値が非許容値に達するのに要する期間を計算し、該期間満了時の所定期間前に前記ガス機器に絶縁ガスを補給することを特徴とする。
制御手段は20℃で換算したガス圧を計算して記憶していく。ガス機器に異常が無ければ、各データをプロットした直線の傾きは少ない。また、ガス機器に異常(例えば、ガス漏れ等)が発生すると、その傾きは大きくなる。本発明では、傾き(低下率)が所定の値を超えた場合に、圧力値が非許容値に達するのに要する期間を計算し、期間満了時の所定期間前(例えば、1週間前)にガス機器に絶縁ガスを補給する。これにより、余裕をもってガスの補給を行うことができ、且つ非許容値になる期間を延長することができる。
請求項4は、前記制御手段は、経過時間単位の前記圧力値の傾きから将来の圧力値の低下率を計算し、該低下率が所定値以下である場合は、前記圧力値を継続して計算して記憶することを特徴とする。
制御手段は20℃で換算したガス圧を、例えば、まず10日単位に計算して記憶していく。ガス機器に異常が無ければ、各データをプロットした直線の傾きは少ない。この場合は、更に10日間データを記憶する。このように、ある期間単位にガス圧の低下率を監視して、データの蓄積を継続する。これにより、低下率に異常がない場合は、データ蓄積に専念することができる。
【0008】
請求項5は、前記制御手段は、前記ガス機器に前記絶縁ガスを補給する場合、前記ガスボンベ計量手段により計量した計量値が所定値以上のとき、前記ガス調整手段を開放し、前記第1のガス圧検出手段、及び前記第2のガス圧検出手段により検出される圧力値が共に定格圧力以上になったら前記ガス調整手段を閉止することを特徴とする。
制御手段は、ガス圧の低下率が所定値以上になり、期間満了時の所定期間前にガス機器に絶縁ガスを補給する場合、まず、ガスボンベに絶縁ガスが所定量以上貯留されているか否かを、ガスボンベ計量手段で計量した計量値により判断する。そして、ガスボンベに所定量以上の絶縁ガスが貯留されていた場合に、ガス調整手段を開放して絶縁ガスを補給する。そのとき、第1のガス圧検出手段、及び第2のガス圧検出手段により検出される圧力値を監視しておき、共に定格圧力以上になったらガス調整手段を閉止する。これにより、補給中に絶縁ガスが無くなることを未然に防止することができる。
請求項6は、前記制御手段は、前記ガス機器に前記絶縁ガスを補給する場合、前記ガスボンベ計量手段により計量した計量値が所定値以下のとき、警報を発して前記ガス調整手段を閉止することを特徴とする。
制御手段は、ガス圧の低下率が所定値以上になり、期間満了時の所定期間前にガス機器に絶縁ガスを補給する場合、まず、ガスボンベに絶縁ガスが所定量以上貯留されているか否かを、ガスボンベ計量手段で計量した計量値により判断する。そして、ガスボンベに所定量以上の絶縁ガスが貯留されていない場合は、補給中に絶縁ガスが無くなる虞があるので、警報を発して補給を中止する。これにより、無駄な補給を未然に防止することができる。
【0009】
請求項7は、前記制御手段は、前記ガス調整手段を開放して前記第1のガス圧検出手段、及び前記第2のガス圧検出手段により検出される圧力値が共に定格圧力以下の場合、前記ガス調整手段を閉止して警報を発することを特徴とする。
ガス調整手段を開放した場合、ガスボンベとガス機器はガス管により接続されて、同じ圧力を示すことになる。そのとき、どちらかにガス漏れの箇所があると、ガス圧は所定の値以上に達しなくなる。このときは、ガス漏れがあると判断してガス調整手段を閉止して警報を発する。これにより、ガス漏れを未然に発見することができる。
請求項8は、前記20℃時のガス圧に換算した値をMPa、前記第1のガス圧検出手段により検出したガス圧をPa、前記外気温測定手段により測定した外気温をt℃としたとき、前記MPa=Pa+(t℃−20℃)×0.0025MPa/℃により求めることを特徴とする。
絶縁ガスにSF6ガスを使用した場合、1℃当たりの圧力変化は、0.0025MPaとなる。従って、20℃に対して何度変化したかにより、現在のガス圧が上下する計算式である。言い換えると、現在の温度に対するガス圧を20℃のガス圧に正規化するものである。これにより、警報圧力値を一定に設定することができ、瞬時に異常値であることを認識できる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、制御手段は、ガス機器内のガス圧により、ガス機器に充填されている絶縁ガスが所定の圧力であるか否かを判断し、ガスボンベ内のガス圧により、ガスボンベに充填されている絶縁ガスが所定の圧力で、且つ所定の量があるか否かを判断し、外気温を測定することにより、気温に対する圧力の変化を正規化することができるので、ガス機器の圧力変化率を正確に把握することができる。
また、第1のガス圧検出手段により検出される圧力値に対して、外気温が20℃に対する温度変化に換算係数を乗じて求めるので、ガス圧が外気温の変動に対してほぼ直線的な変化となり、ガス圧の変化率を管理し易くなる。
また、傾き(低下率)が所定の値を超えた場合に、圧力値が非許容値に達するのに要する期間を計算し、期間満了時の所定期間前(例えば、1週間前)にガス機器に絶縁ガスを補給するので、余裕をもってガスの補給を行うことができ、且つ非許容値になる期間を延長することができる。
また、ある期間単位にガス圧の低下率を監視して、データの蓄積を継続するので、低下率に異常がない場合は、データ蓄積に専念することができる。
【0011】
また、ガス調整手段を開放して絶縁ガスを補給するとき、第1のガス圧検出手段、及び第2のガス圧検出手段により検出される圧力値を監視しておき、共に定格圧力以上になったらガス調整手段を閉止するので、補給中に絶縁ガスが無くなることを未然に防止することができる。
また、ガスボンベに所定量以上の絶縁ガスが貯留されていない場合は、補給中に絶縁ガスが無くなる虞があるので、警報を発して補給を中止することにより、無駄な補給を未然に防止することができる。
また、供給してもガス圧が所定の値以上に達しないときは、ガス漏れがあると判断してガス調整手段を閉止して警報を発するので、ガス漏れを未然に発見することができる。
また、現在の温度に対するガス圧を20℃のガス圧に正規化するので、警報圧力値を一定に設定することができ、瞬時に異常値であることを認識できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態に係るガス圧監視制御装置の構成を示すブロック図である。
【図2】PCと制御対象の関係を説明する図である。
【図3】(A)は本発明のガス圧監視制御装置の動作を説明するフローチャート、(B)は本発明のガス圧監視制御装置の自動補給動作を説明するフローチャートである。
【図4】(a)はPCに蓄積されるデータについて説明する図、(b)は各補給日ごとに補給日数(間隔)を記録する図、(c)は蓄積したデータに基づいてガス補給日を求める方法を説明する図である。
【図5】(a)はガス漏れ量が一定時の自動ガス補給開始時期を求める方法を説明する図であり、(b)はガス漏れ量が変化した場合の自動ガス補給開始時期を求める方法を説明する図である。
【図6】従来のガス機器監視装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を図に示した実施形態を用いて詳細に説明する。但し、この実施形態に記載される構成要素、種類、組み合わせ、形状、その相対配置などは特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する主旨ではなく単なる説明例に過ぎない。
【0014】
図1は、本発明の実施形態に係るガス圧監視制御装置の構成を示すブロック図である。本発明のガス圧監視制御装置100は、絶縁ガス(以下、単にガスと呼ぶ)を封入して機器内の部材を電気的に絶縁するように構成されたガス機器13内のガス圧を監視及び制御する。その構成は、ガスを貯留してガス機器13に供給するガスボンベ1と、ガスボンベ1の重量を計量するガスボンベ計量器(ガスボンベ計量手段)2と、ガス機器13内のガスの圧力を検出する圧力リレー(第1のガス圧検出手段)8と、ガスボンベ1内のガスの圧力を検出する圧力リレー(第2のガス圧検出手段)5と、ガスボンベ1からガス機器13へのガスの供給量を調整する電磁弁(ガス調整手段)7と、ガスボンベ1周辺の外気温を測定する温度計(外気温測定手段)10と、ガスボンベ計量器2、圧力リレー8、圧力リレー5、及び温度計10から得られた情報に基づいて、電磁弁7を調整(全開閉及び半開閉を含む)してガス機器13内のガスの圧力が所定値になるように制御するPC(制御手段)11と、を備えて構成されている。尚、ガス機器13には、ガス圧の低下を検知する圧力リレー14を備え、ガス機器13が故障した場合、その内容が故障表示器16に表示されると共に、符号化装置17により故障状況が符号化されて、制御監視システム18に送信される。
【0015】
また、ガス機器13のガス管には、ガス供給口9と、ガス圧を目視できる圧力計15が備えられている。更にガスボンベ1側には、ガスボンベ1内のガス圧を目視できる圧力計4が備えられている。また、ガスボンベ計量器2からガスボンベ1の計量データはケーブル21を介してPC11に伝達する。また、温度計10の温度データはケーブル25を介してPC11に伝達され、圧力リレー5の圧力データはケーブル22を介してPC11に伝達され、圧力リレー8の圧力データはケーブル24を介してPC11に伝達される。また、電磁弁7はPC11からケーブル23を介して駆動され、駆動源として交流電源3が使用される。また、ガスの流れる方向は、ガス管6の中を矢印の方向に流れる。また、PC11には、処理された各データを画面に表示する表示装置12が備えられ、ネットワーク20を介して外部の業務用PC19に送信される。
即ち、本発明のPC11は、図2に示すように、ガスボンベ計量器2、圧力リレー8、圧力リレー5、及び温度計10から得られた情報に基づいて、電磁弁7を調整してガス機器13内のガスの圧力が所定値になるように制御する。PC11は、ガス機器13内のガス圧により、ガス機器13に充填されているガスが所定の圧力であるか否かを判断し、ガスボンベ1内のガス圧により、ガスボンベ1に充填されているガスが所定の圧力で、且つ所定の量があるか否かを判断する。また、温度計10により外気温を測定することにより、気温に対する圧力の変化を正規化することができる。これらの値は常時、PC11に入力するので、ガス機器13の圧力変化率を正確に把握することができる。
【0016】
また、ガス圧は外気温により変動する。即ち、外気温が高くなればガス圧が上昇し、外気温が低くなれば、ガス圧が低下する。その結果、外気温のデータをそのまま使用した場合は、外気温が低くガス圧が低下した場合、異常値として判断してしまう。そこで本実施形態では、圧力リレー8により検出される圧力値を、温度計10により測定した外気温を用いて20℃時のガス圧に換算して記憶する。つまり、圧力リレー8により検出される圧力値に対して、外気温が20℃に対する温度変化に換算係数を乗じて求める。これにより、ガス圧が外気温の変動に対してほぼ直線的な変化となり、ガス圧の変化率を管理し易くなる。
即ち、20℃時のガス圧に換算した値をMPa、圧力リレー8により検出したガス圧をPa、温度計10により測定した外気温をt℃としたとき、MPa=Pa+(t℃−20℃)×0.0025MPa/℃により求めることができる。言い換えると、ガスにSF6ガスを使用した場合、1℃当たりの圧力変化は、0.0025MPaとなる。従って、20℃に対して何度変化したかにより、現在のガス圧が上下する計算式である。つまり、現在の温度に対するガス圧を20℃のガス圧に正規化するものである。これにより、警報圧力値を一定に設定することができ、瞬時に異常値であることを認識できる。
【0017】
図3(A)は本発明のガス圧監視制御装置の動作を説明するフローチャートである。まず、制御監視システム18からガス圧低下の情報を受ける(S0)。その情報に基づいて作業員が現地にガス圧監視制御装置へ運搬する。現地において装置を取り付け、初回のみ手動によりガスをガス機器13に補給する(S1)。そして、PC11を稼動して圧力リレー5,8、温度計10、及びガスボンベ計量器2のデータを取り込み(S2)、PC11に事前に設定されているガス圧20℃換算曲線により圧力リレー8の圧力値を温度計10により計測した外気温を用いて換算し、データを蓄積していく(S3)。そして、例えば10日分のデータが蓄積した後に、ガス圧の低下傾向を計算する。低下率は図4(c)に示すとおり実測値の一番低いデータを結んだ直線の勾配を利用して求める。その結果、圧力低下率が規定値よりも大きいか否かを判断し(S4)、低下率が少なければ、更に10日間、PC11に事前に設定されているガス圧20℃換算曲線により圧力リレー8の圧力値を温度計10により計測した外気温を用いて換算し、データを蓄積していく(S6)。一方、ステップS4で低下率が規定値より大きい場合は、圧力低下警報値に到達する期日を計算し、警報値に到達する1週間前を計算する(S5)。その日がガス機器にガスを自動補給する日である。以下、同じ動作を繰り返す(S7〜S10)。
即ち、PC11は20℃で換算したガス圧を、例えば、まず10日単位に計算して記憶していく。ガス機器13に異常が無ければ、各データをプロットした直線の傾きは少ない。この場合は、更に10日間データを記憶する。このように、ある期間単位にガス圧の低下率を監視して、データの蓄積を継続する。これにより、低下率に異常がない場合は、データ蓄積に専念することができる。
【0018】
図3(B)は本発明のガス圧監視制御装置の自動補給動作を説明するフローチャートである。ガスの自動補給動作がはじまると(S11)、まず、ガスボンベ計量器2によりガスボンベ1の重量を計量して、所定の重量以下の場合は、ガスが無いと判断して異常警報を発して終了する(S13)。ガスボンベ1の重量が所定の重量以上の場合は、PC11から電磁弁7に信号を送り電磁弁7を開放する(S14)。その結果、ガスボンベ1からガスがガス機器13に補給され、圧力リレー8の圧力値が定格圧力値+αになると(S15)、PC11から電磁弁7に信号を送り電磁弁7を閉止して(S16)、蓄積されたデータを消去して(S17)、ステップS22の自動監視ルーチンに進む。また、ステップS14で電磁弁7を開放して、ガスボンベ1からガスをガス機器13に補給したが、圧力リレー8の圧力値が定格圧力値に達しない場場合(S19)、PC11から電磁弁7に信号を送り電磁弁7を閉止して(S20)、異常警報を発して終了する(S21)。
即ち、PC11は、ガス圧の低下率が所定値以上になり、圧力低下警報値の所定期間前にガス機器13にガスを補給する場合、まず、ガスボンベ1にガスが所定量以上貯留されているか否かを、ガスボンベ計量器2で計量した計量値により判断する。そして、ガスボンベ1に所定量以上のガスが貯留されていた場合に、電磁弁7を開放してガスを補給する。そのとき、圧力リレー8、及び圧力リレー5により検出される圧力値を監視しておき、共に定格圧力以上になったら電磁弁7を閉止する。これにより、補給中にガスが無くなることを未然に防止することができる。
【0019】
また、PC11は、ガス圧の低下率が所定値以上になり、圧力低下警報値の所定期間前にガス機器13にガスを補給する場合、まず、ガスボンベ1にガスが所定量以上貯留されているか否かを、ガスボンベ計量器2で計量した計量値により判断する。そして、ガスボンベ1に所定量以上のガスが貯留されていない場合は、補給中にガスが無くなる虞があるので、警報を発して補給を中止する。これにより、無駄な補給を未然に防止することができる。
また、電磁弁7を開放した場合、ガスボンベ1とガス機器13はガス管により接続されて、同じ圧力を示すことになる。そのとき、どちらかにガス漏れの箇所があると、ガス圧は所定の値以上に達しなくなる。このときは、ガス漏れがあると判断して電磁弁7を閉止して警報を発する。これにより、ガス漏れを未然に発見することができる。
【0020】
図4(a)はPCに蓄積されるデータについて説明する図である。例えば、1ヶ月に亘ってデータを蓄積する場合について説明する。尚、データの種類としては、圧力リレー8からの圧力データ「圧力1」、圧力リレー5からの圧力データ「圧力2」、温度計10からの「外温」、ガスボンベ計量器2からの「ガスボンベ1の重量」、「圧力1」を20℃で換算した「圧力1の換算値」、「圧力2」を20℃で換算した「圧力2の換算値」、ガスを補給した「ガス補給日」がある。ここでは、20日間のデータを蓄積した結果、ガス圧低下率が所定値よりも大きかったとすると、21日以降は直線の勾配から計算して警報値の1週間前をガス補給日とする(この例では、翌月の1日)。また、図4(b)のように、各補給日ごとに補給日数(間隔)を記録するようにしてもよい。
【0021】
図4(c)は蓄積したデータに基づいてガス補給日を求める方法を説明する図である。縦軸にガス圧値、横軸に日数を示す。ガス圧の実測値30は、例えば、1時間単位で測定し、その値を20℃に換算して蓄積する。そして、実測値の一番低い値同士を結んで直線を引いたときの勾配から低下率を計算し、低下率が所定の値より大きいときに(勾配が急)、その時点から、圧力低下警報値32に達するまでの予測値31を計算により求める。その結果が、ガス圧低下発生想定日34(B点)であるとすると、そこから1週間前のA点がガス補給日33として求まる。従って、この場合は、A点の日に達すると自動的に電磁弁7を開放して、図3(B)に記載のフローに従ってガスを補給する。
即ち、PC11は20℃で換算したガス圧を計算して記憶していく。ガス機器13に異常が無ければ、各データをプロットした直線の傾きは少ない。また、ガス機器13に異常(例えば、ガス漏れ等)が発生すると、その傾きは大きくなる。本実施形態では、傾き(低下率)が所定の値を超えた場合に、圧力値が圧力低下警報値32に達するのに要する期間を計算し、期間満了時の所定期間前(例えば、1週間前)にガス機器13にガスを補給する。これにより、余裕をもってガスの補給を行うことができ、且つ圧力低下警報値32になる期間を延長することができる。
【0022】
図5(a)はガス漏れ量が一定時の自動ガス補給開始時期を求める方法を説明する図であり、図5(b)はガス漏れ量が変化した場合の自動ガス補給開始時期を求める方法を説明する図である。ガス漏れ量が一定時の自動ガス補給開始時期を求める方法は、図4(c)でも説明したとおり、1時間単位で測定し、その値を20℃に換算して蓄積する。そして、実測値30の一番低い値同士を結んで直線を引いたときの勾配から低下率を計算し、低下率が所定の値より大きいときに(勾配が急)、その時点から、圧力低下警報値32に達するまでの予測値31を計算により求める。その結果が、ガス圧低下発生想定日(B点)であるとすると、そこから1週間前のA点がガス補給日として求まる。従って、この場合は、A点の日に達すると自動的に電磁弁7を開放して、図3(B)に記載のフローに従ってガスを補給する。
ガス漏れ量が途中から変化することもある。その場合は、図5(b)のようにして求める。即ち、1時間単位で測定し、その値を20℃に換算して蓄積する。そして、実測値30の一番低い値同士を結んで直線を引いたときの勾配から低下率を計算し、低下率が所定の値より大きいときに(勾配が急)、その時点から、圧力低下警報値32に達するまでの予測値31を計算により求める。その結果が、ガス圧低下発生想定日(B点)であるとすると、そこから1週間前のA点がガス補給日として求まる。ここで、C点においてガス漏れ量が増大して変化した場合は、直線33の勾配が急なためD点で既にA点以下のガス圧であるので、D点の時点で自動補給が開始される。
【符号の説明】
【0023】
1 ガスボンベ、2 ガスボンベ計量器、3 交流電源、4 圧力計、5 圧力リレー、6 ガス管、7 電磁弁、8 圧力リレー、9 ガス供給口、10 温度計、11 PC、12 表示装置、13 ガス機器、14 圧力リレー、15 圧力計、16 故障表示器、17 符号化装置、18 制御監視システム、19 業務用PC、30 実測値、31 予測値、32 圧力低下警報値、33 ガス補給日、34 ガス低下発生想定日、100 ガス圧監視制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁ガスを封入して機器内の部材を電気的に絶縁するように構成されたガス機器内のガス圧を監視及び制御するガス圧監視制御装置であって、
前記絶縁ガスを貯留して前記ガス機器に供給するガスボンベと、
該ガスボンベの重量を計量するガスボンベ計量手段と、
前記ガス機器内の絶縁ガスの圧力を検出する第1のガス圧検出手段と、
前記ガスボンベ内の絶縁ガスの圧力を検出する第2のガス圧検出手段と、
前記ガスボンベから前記ガス機器への前記絶縁ガスの供給量を調整するガス調整手段と、
前記ガスボンベ周辺の外気温を測定する外気温測定手段と、
前記ガスボンベ計量手段、前記第1のガス圧検出手段、前記第2のガス圧検出手段、及び前記外気温測定手段から得られた情報に基づいて、前記ガス調整手段を調整して前記ガス機器内の前記絶縁ガスの圧力が所定値になるように制御する制御手段と、
を備えたことを特徴とするガス圧監視制御装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記ガスボンベから前記ガス機器に前記絶縁ガスが補給された後、前記第1のガス圧検出手段により検出される圧力値を、前記外気温測定手段により測定した外気温を用いて20℃時のガス圧に換算して記憶することを特徴とする請求項1に記載のガス圧監視制御装置。
【請求項3】
前記制御手段は、経過時間単位の前記圧力値の傾きから将来の圧力値の低下率を計算し、該低下率が所定値以上である場合は、圧力値が非許容値に達するのに要する期間を計算し、該期間満了時の所定期間前に前記ガス機器に絶縁ガスを補給することを特徴とする請求項1又は2に記載のガス圧監視制御装置。
【請求項4】
前記制御手段は、経過時間単位の前記圧力値の傾きから将来の圧力値の低下率を計算し、該低下率が所定値以下である場合は、前記圧力値を継続して計算して記憶することを特徴とする請求項1又は2に記載のガス圧監視制御装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記ガス機器に前記絶縁ガスを補給する場合、前記ガスボンベ計量手段により計量した計量値が所定値以上のとき、前記ガス調整手段を開放し、前記第1のガス圧検出手段、及び前記第2のガス圧検出手段により検出される圧力値が共に定格圧力以上になったら前記ガス調整手段を閉止することを特徴とする請求項4に記載のガス圧監視制御装置。
【請求項6】
前記制御手段は、前記ガス機器に前記絶縁ガスを補給する場合、前記ガスボンベ計量手段により計量した計量値が所定値以下のとき、警報を発して前記ガス調整手段を閉止することを特徴とする請求項4に記載のガス圧監視制御装置。
【請求項7】
前記制御手段は、前記ガス調整手段を開放して前記第1のガス圧検出手段、及び前記第2のガス圧検出手段により検出される圧力値が共に定格圧力以下の場合、前記ガス調整手段を閉止して警報を発することを特徴とする請求項4に記載のガス圧監視制御装置。
【請求項8】
前記20℃時のガス圧に換算した値をMPa、前記第1のガス圧検出手段により検出したガス圧をPa、前記外気温測定手段により測定した外気温をt℃としたとき、前記MPa=Pa+(t℃−20℃)×0.0025MPa/℃により求めることを特徴とする請求項1乃至7の何れか一項に記載のガス圧監視制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−209042(P2012−209042A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−72229(P2011−72229)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】