説明

ガス採集管

【課題】 被検知箇所の環境中のガスを検知するために、ガス採集管を該被検知箇所まで挿入した場合、被検知箇所に存するヘドロ等が先端部に詰まってガス検知を行えなくなるおそれがあることに鑑みて、ヘドロ等に突き刺してしまった場合でも、確実にガス検知を行えるガス採集管を提供する。
【解決手段】 伸縮自在な中空の管主体11の先端部に接続部12aを介して装着させるキャップ部材12を中空とし、保持フランジ部12d、採集用胴部12f、閉塞フランジ部12eを順に設ける。採集用胴部12fに採集口12gを穿設すると共に、該採集用胴部12fにフィルター部材12hを嵌着し、該採集口12gを介して管主体11の内外部を連通させる。管主体11の基端部に接続チューブ2を介してガス検知器3を接続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、閉塞されたあるいは換気されていない空間や穴部等の狭い箇所における、特に危険性ガス、例えば可燃ガス、毒性ガス、酸素欠乏状態にあるか否かのための酸素等の濃度を、これらの危険性ガスを検知するガス検知器まで導くために、該被検知箇所に配されてその環境中のガスを捕捉するガス採集管に関する。
【背景技術】
【0002】
タンクやマンホール、下水道、ゴミ処理施設の残灰ピットなどの閉塞された空間や換気されていない空間、あるいは建設現場等で地表からメタンガス等が流出している場合に流出穴における危険性ガスを検知する場合には、これらの被検知箇所の適宜位置まで達する長尺のガス採集管が用いられる。すなわち、ガス採集管の先端部が被検知箇所に達し、基端部にはフレキシブルな接続チューブが接続され、該接続チューブがガス検知器に接続されている。したがって、ガス検知器を作動させると、前記ガス採集管の先端から被検知箇所の環境中のガスが吸引されてガス検知器に供されることになる。
【0003】
従来のこの種のガス採集管は、被検知箇所までの距離に併せて伸縮可能な構造とされており、先端縁が開放されて採集口が形成されている。このため、例えば、下水道や残灰ピットなどのガス検知を行う場合、これら被検知箇所の適宜位置までガス採集管を伸長させて挿入し、ガス検知器を作動させて、採集口から環境ガスを吸引する。
【0004】
他方、漏洩ガスがガス塊となって流れる性質の被検知ガスについて、ガスの捕捉を確実に行えるようにしたものとして、特許文献1に記載されたガスサンプリングプローブがある。このガスサンプリングプローブは、一端がガス吸引手段に接続され、他端が封止されたガス非吸着性材料からなる管体に、その長手方向に所定の間隔で前記管体の内径よりも細い複数の貫通孔を穿設してなる構成とされたものである。
【0005】
【特許文献1】特開2002−340753
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、下水道等の被検知箇所には、汚泥やヘドロ、ゴミ等が存している場合があり、先端に採集口が形成されたガス採集管を挿入した際に、先端部がこれらヘドロ等に突き刺さり、採集口が閉塞されてしまうおそれがある。採集口が閉塞された状態でガス検知器で吸引しても、危険性ガスが吸引されず、例えばガス採集管の伸縮のための接続部から、危険性ガスが含まれていない周辺空気が吸引されて濃度測定に供される場合が生じ、正確な検知処理を行えないおそれが生じる。
【0007】
また、特許文献1に記載されたガスサンプリングプローブでは、管体に形成された貫通孔は小孔であるため、被検知箇所が下水道等の場合にはヘドロやゴミ等がより詰まりやすく、正確な検知処理を行えないもので、下水道等の被検知箇所におけるガス検知には不向きである。
【0008】
そこで、この発明は、被検知箇所に存する汚泥やヘドロ等に差し込んでしまった場合でも、被検出箇所の環境中のガスを極力採集することができるガス採集管を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の目的を達成するための技術的手段として、この発明に係るガス採集管は、中空円筒の管主体で形成され、該管主体の一端部の接続側端部に接続チューブ等を介してガス検知器が接続され、他端部の採集側端部に採集口が配されて、該採集口から環境中のガスを吸引して前記ガス検知器に供するためのガス採集管において、前記採集側端部の先端を閉塞し、該採集側端部の側壁に透孔により形成した採集口と、前記採集口を覆ったフィルター部材とからなることを特徴としている。
【0010】
ガス検知器に接続させた前記管主体をタンクやマンホール、下水道等の被検知箇所の所定の位置まで挿入する。例えば、下水道等における被測定場所は、作業者が作業する場所となるから底部近傍となる。底部にはヘドロ等が滞留している場合があり、このヘドロ等に管主体が差し込まれた場合、採集側端部の先端が閉塞されているから、先端にヘドロ等が詰まることがない。そして、ガス検知器を作動させると、該ガス検知器の吸引ブロアが作動して、該被測定場所の環境ガスが、前記採集口から吸引される。この採集口には前記フィルター部材が配されているから、該採集口にヘドロ等が詰まることがない。なお、フィルター部材としては、スポンジゴムやガラス繊維その他、検知ガスに冒されることがなく、通気性がある材質であればよい。
【0011】
また、請求項2の発明に係るガス採集管は、前記採集側端部にキャップ部材を取り付け、該キャップ部材は先端が閉塞され、側壁に前記採集口を形成してあることを特徴としている。
【0012】
前記管主体の先端部に栓部材等を挿入して閉塞させ、側壁に採集口を形成した構造であっても構わないが、前記キャップ部材を別体として管主体に取り付ける構造とするものである。管主体は軽量な材料で製作することが取り扱う上で好ましいが、軽量な材料であると、例えばタンク内壁に当接した際に先端部が破損しやすく、破損した場合には使用できなくなるおそれがある。他方、キャップ部材が別体であれば、先端部が補強され容易に破損しなくなる。
【0013】
また、請求項3の発明に係るガス採集管は、前記キャップ部材は、基端部に前記管主体の採集側端部に係合するよう配した接続部と、該接続部に隣接した保持フランジ部と、先端部に設けて管主体の採集側端部の先端を閉塞する閉塞フランジ部と、これら保持フランジ部と閉塞フランジ部との間の採集用胴部とからなり、前記採集用胴部に採集口を形成して、前記管主体に連通させ、該採集用胴部に環状のフィルター部材を着脱自在に設けたことを特徴としている。
【0014】
前記フィルター部材を嵌着する部分を前記保持フランジ部と閉塞フランジ部との間として、該フィルター部材が容易に脱落しないようにしたものである。また、採集口が形成された採集用胴部の径を閉塞フランジ部の径よりも小さくすることによりガス採集管の先端部がヘドロ等に差し込まれた場合に、該閉塞フランジ部でヘドロ等を押し退けて採集用胴部にヘドロ等が回り込まないようにしたものである。
【0015】
また、請求項4の発明に係るガス採集管は、前記キャップ部材は、管主体に着脱自在であることを特徴としている。
【0016】
キャップ部材を管主体に接着剤等で固着しても構わない。しかし、着脱自在とされていれば、不測の状況でキャップ部材の採集口が詰まってしまって十分に吸引を行えなくなった場合には、これを新しいものと交換することにより、迅速に対処することができる。
【発明の効果】
【0017】
この発明に係るガス採集管によれば、先端に環境ガスを吸引する開口がないから、管主体をヘドロ等に差し込んでしまった場合でも、採集口が採集側端部の側壁に配されており、かつ、フィルター部材で覆われているから、該採集口がヘドロで閉塞されてしまうことがない。このため、環境中のガスを極力確実に吸引することができる。
【0018】
また、請求項2の発明に係るガス採集管によれば、管主体の先端部がタンクの壁面等に当接した場合でも管主体がキャップ部材に保護されて、破損することがない。したがって、管主体の軽量化を損なうことがなく、ガス採集管の取り扱いの簡便性が損なわれることがない。
【0019】
また、請求項3の発明に係るガス採集管によれば、管主体の先端部が保護されると共に、例えばヘドロ等に突き刺した場合に、閉塞フランジ部が障害となってヘドロ等が前記採集用胴部に達することが阻止される。このため、前記フィルター部材にまで到達するヘドロ等が減じられ、該採集用胴部に形成された採集口にヘドロ等が詰まってしまうことがない。
【0020】
また、請求項4の発明に係るガス採集管によれば、不測の状況でキャップ部材の採集口が閉塞されて、環境中のガスを吸引できなくなった場合には、容易に新しいキャップ部材と交換することができて、ガスの検知作業に支障が生じない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、図示した好ましい実施の形態に基づいて、この発明に係るガス採集管を具体的に説明する。
【0022】
図1はこの発明に係るガス採集管を用いて環境ガスを検知するガス検知装置の概略の構成を示すもので、主として、この発明に係るガス採集管1と、該ガス採集管1に接続させたフレキシブルな接続チューブ2と、該接続チューブ2に接続させたガス検知器3とにより構成される。なお、ガス検知器3は携行式のものであり、接続チューブ2やガス採集管1と組み合わせることなく単独でもガス検知に供することができる。また、接続チューブ2は、例えば作業者が一方の手にガス検知器3を保持し、他方の手にガス採集管1を把持した状態を許容する長さであれば十分で、作業の支障となる長さとならないようにすると共に、携行時に邪魔とならないように、図1に示すように、コイル状にコンパクト化されるものであれば好ましい。なお、いずれも検知ガスに冒されない材質としてある。
【0023】
そして、ガス採集管1は、図1及び図2に示すように、伸縮自在な管主体11と該管主体11の先端部に取り付けられたキャップ部材12、基端部に前記接続チューブ2を接続させるコネクタ部材13とから構成されている。管主体11は、径の異なる複数本の中空の筒体を組み合わせて振り出し式により伸縮自在とされている。この管主体11の先端部に取り付けられたキャップ部材12は、図3に示す形状とされている。なお、ガス採集管1の管主体11は中空の多角形であっても構わないが、取り扱いの利便性や強度や加工が簡便なことから、円筒形であることが好ましい。
【0024】
図3に示すように、キャップ部材12は、一端部側には、管主体11に適宜長さまで挿入されて該管主体11に接続させる接続部12aと、該接続部12aに隣接して該接続部12aよりも僅かに大径のストッパ部12bとが形成されている。このストッパ部12bの外径寸法は、管主体11の先端部の外径寸法とほぼ等しい大きさとしてある。このストッパ部12bに隣接して該ストッパ部12bよりも小径の首部12cが形成され、この首部12cに隣接してストッパ部12bの反対側には保持フランジ部12dが形成されている。この保持フランジ部12dは前記ストッパ部12bよりも大径で、側面にはローレット目が刻設されて、指先等がかかり易いようにしてある。他方、キャップ部材12の他端部には閉塞フランジ部12eが形成されており、該閉塞フランジ部12eは栓体であって、このキャップ部材12を管主体11に接続させた場合には、この閉塞フランジ部12eで先端部が閉塞されるよう、前記接続部12aから該閉塞フランジ部12eに至る部分までは中空としてある。そして、前記保持フランジ部12dと閉塞フランジ部12eとの間が適宜長さに隔てられ、この間の部分が採集用胴部12fとされている。この採集用胴部12fに、前記接続部12aから閉塞フランジ部12eに至る部分の中空部と接続させた採集口12gが穿設されて、該採集口12gを介して管主体11の内外部が連通させてある。
【0025】
前記採集用胴部12fには、図1に示すように、通気性を備えた材質によって形成されたフィルター部材12hが取り付けられる。このフィルター部材12hは拡開させた状態で前記閉塞フランジ部12eを通過させて採集用胴部12fで収縮して適宜に嵌着される材質であることが、該フィルター部材12hの着脱の利便性が確保されて好ましく、このため例えばスポンジゴム等が用いられる。なお、例えば前記閉塞フランジ部12eを採集用胴部12fにねじ込み式等により着脱自在とすれば、該フィルター部材12hに拡開と収縮を行わせることができない材質によるものとすることができる。
【0026】
前記管主体11のキャップ部材12が接続される先端部には該先端部に嵌合させた先端部ソケット14aが、また、管主体11の伸縮のための接合部には接合部ソケット14bがそれぞれ取り付けられており、管主体11の開口されている部分を保護している。なお、図1に示すように、前記ストッパ部材12bは、先端部ソケット14aに収容される外形寸法としてある。
【0027】
以上により構成されたこの発明の実施形態に係るガス採集管の作用を、以下に説明する。
【0028】
図1に示すように、ガス採集管1に接続チューブ2を介してガス検知器3を接続させた状態として、該ガス検知器3を作動させる。これにより、ガス検知器3が有する吸引ブロア等が作動してガス採集管1の前記採集口12gからフィルター部材12hを通過して環境中のガスが吸い込まれる。そこで、前記管主体11を伸長させて先端部のキャップ部材12を、検知すべきガスが存在していると思われる被検知箇所に配すれば、当該被検知箇所の環境中のガスが吸引されてガス検知器3に供されることになる。このとき、被検知箇所にヘドロ等が堆積している場合には、管主体11の先端がヘドロ等に差し込まれてしまう場合がある。この場合には、前記閉塞フランジ部12eによって管主体11の先端は閉塞されているから管主体11にヘドロ等が侵入してしまうことがない。また、先端部がヘドロ等に差し込まれた場合には、閉塞フランジ部12eがヘドロ等を押し退けるから、該閉塞フランジ部12eの後方へヘドロが回り込むことを極力防止できる。このため、フィルター部材12hにヘドロが付着することが極力防止されるから、該フィルター部材12hの通気性が損なわれることが殆どなく、当該環境中のガスを吸引することができる。したがって、作業場所となる被検知箇所のガスをガス検知器3に供することができ、ガス濃度等を測定することができる。
【0029】
また、不測の状況によりフィルター部材12hにヘドロ等が付着して通気性が損なわれてしまった場合には、該フィルター部材12hを交換する。このフィルター部材12hがスポンジゴムで形成されている場合には容易に拡開するから、拡開した状態でキャップ部材12から取り外し、新しいフィルター部材12hを装着すればよい。あるいは、閉塞フランジ部12eを着脱自在としてあれば、該閉塞フランジ部12eを取り外して新しいフィルター部材12hに交換した後、閉塞フランジ部12eを取り付ける。この場合には、フィルター部材12hは拡開する必要がないから、例えばガラス繊維や不織布等、使用できる材質の自由度が向上する。さらに、場合によっては、キャップ部材12を管主体11に着脱自在とし、該キャップ部材12を新しいものに交換するようにしても構わない。
【0030】
そして、検知されたガス濃度に応じて、例えば作業環境の換気する等適宜な処置を行うことになる。
【産業上の利用可能性】
【0031】
この発明に係るガス採集管は、汚泥やヘドロ等が堆積している環境中のガスを検知する場合に、該被検知箇所まで届かせた際に、先端部がヘドロ等に突き刺さっても先端部にヘドロ等が詰まってしまうことがないので、確実に環境中に存在するガスを検知することができ、適切な対応を迅速に行うことができる。このため、当該環境での作業の安全を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】この発明に係るガス採集管を用いてガスを検知する場合の構成を示すガス検知装置の概略図である。
【図2】この発明に係るガス採集管の正面図であり、フィルター部材を取り外してある状態を示している。
【図3】この発明に係るガス採集管のキャップ部材を示す正面図で、一部を切断して示している。
【符号の説明】
【0033】
1 ガス採集管
2 接続チューブ
3 ガス検知器
11 管主体
12 キャップ部材
12a 接続部
12b ストッパ部
12c 首部
12d 保持フランジ部
12e 閉塞フランジ部
12f 採集用胴部
12g 採集口
12h フィルター部材
14a 先端部ソケット
14b 接合部ソケット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空円筒の管主体で形成され、該管主体の一端部の接続側端部に接続チューブ等を介してガス検知器が接続され、他端部の採集側端部に採集口が配されて、該採集口から環境中のガスを吸引して前記ガス検知器に供するためのガス採集管において、
前記採集側端部の先端を閉塞し、該採集側端部の側壁に透孔により形成した採集口と、
前記採集口を覆ったフィルター部材とからなることを特徴とするガス採集管。
【請求項2】
前記採集側端部にキャップ部材を取り付け、該キャップ部材は先端が閉塞され、側壁に前記採集口を形成してあることを特徴とする請求項1に記載のガス採集管。
【請求項3】
前記キャップ部材は、
基端部に前記管主体の採集側端部に係合するよう配した接続部と、
該接続部に隣接した保持フランジ部と、
先端部に設けて管主体の採集側端部の先端を閉塞する閉塞フランジ部と、
これら保持フランジ部と閉塞フランジ部との間の採集用胴部とからなり、
前記採集用胴部に採集口を形成して、前記管主体に連通させ、
該採集用胴部に環状のフィルター部材を着脱自在に設けたことを特徴とする請求項2に記載のガス採集管。
【請求項4】
前記キャップ部材は、管主体に着脱自在であることを特徴とする請求項2または請求項3に記載のガス採集管。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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