説明

ガス栓

【課題】栓本体(10)におけるせん(33)を収容するせん収容部(11)の開放端から筒部(12)が上方に連設され、せん(33)を回動操作する操作ハンドル(20)の下面は、筒部(12)の上端に第1シール部材(4)を介して相対回動可能に嵌合し、嵌合部よりも内方に、操作ハンドル(20)が筒部(12)に対して抜け止め状態に係合する係合部(45)が設けられているガス栓に関し、栓本体(10)内への防水性を確保すると共に、係合部(45)において発生する磨耗粉がせん(33)とせん収容部(11)との摺動面に侵入しないようにすること。
【解決手段】係合部(45)よりも下方に位置するせん収容部(11)の上端に、内方に開放する環状切欠部(1)を形成し、環状切欠部(1)と操作ハンドル(20)の下面との間に、一端が環状切欠部(1)の構成面に密着し且つ他端が操作ハンドル(20)の下面のうち環状切欠部(1)よりも内方で且つ上方に位置する部分に密着する環状の第2シール部材(5)を介在させたこと。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ガス栓、特に、栓本体内に収容されているせんを前記栓本体の上端に取り付けられる操作ハンドルで回動操作することにより、ガス流路を開閉する形式のガス栓の防水・防塵構造に関する。
【背景技術】
【0002】
ガス流路に連通するせん収容部の開放端に筒部を連設させた構成の栓本体と、前記せん収容部に回動自在に収容されるせんと、前記筒部に相対回動可能に外嵌し且つ抜け止め状態に係合されると共に前記せんを回動操作する操作ハンドルとからなり、せんの上面と操作ハンドルの下面との間にはコイルバネが圧縮状態で介在された構成のガス栓では、一般に、せんがせん収容部内で回動する際の摺動面にグリスが介在されて、せん収容部内のシール性が確保されている。前記グリスは、前記摺動部の上端に設けられたグリス溜めに貯留されており、さらに、実公昭63−7738号公報に開示のものでは、前記グリス溜めは被覆リングにより密閉状態に被覆されている。これにより、操作ハンドルと栓本体との間から筒部内に雨水等の水が浸入しても、水は被覆リングの上面域に溜まり、せんとせん収容部との摺動面に入り込むことはない。
【0003】
このように、せん収容部内への水の浸入を阻止することにより、摺動面及びその近傍の防錆は確保できるが、被覆リングの上面に溜まった水が長期間排出されない状態が続くと、被覆リングで被覆されていないせんの上面や筒部の内壁、さらには、コイルバネや操作ハンドルの下面に錆びが発生する。これらの錆びが拡大して、筒部と操作ハンドルとの係合部や嵌合部に至ると、ガス栓の操作性が劣化し、ガス栓の開閉にも支障をきたすといった問題がある。
【0004】
上記不都合を解消したものとして、特開2005−291308号公報に開示のものがある(特許文献2参照)。
このものでは、前記筒部と操作ハンドルとの嵌合部よりも外側に、栓本体と操作ハンドルとの間に介在されるようにパッキンを装着させることによって、外部から栓本体への水の浸入を防止している。
【特許文献1】実公昭63−7738号公報
【特許文献2】特開2005−291308号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このものでは、前記パッキンを設けることにより、栓本体内への外部からの水の浸入は防止することができるが、前記操作ハンドルとせんの上面との間には、上述したように、コイルバネが圧縮状態で介在されており、これの付勢力によって、前記せんはせん収容部の底側へ常時押圧されていると同時に、操作ハンドルは上方へ押し上げられて、操作ハンドルと筒部とは密に係合させられていることから、操作ハンドルを回動させると、操作ハンドルと筒部との係合部相互の擦れ合いにより、金属の磨耗粉が発生し、この磨耗粉がせんとせん収容部との摺動面に侵入するといった不都合がある。前記磨耗粉が栓本体内に入り込むと、せんの外周面又はせん収容部の内周面が傷付いたり、操作性が悪くなったりする問題がある。
【0006】
本発明は、『ガス流路に連通する栓本体のせん収容部に前記ガス流路を開閉するせんが収容され、
前記せん収容部の開放端から筒部が上方に連設され、
前記せんを回動操作するための操作ハンドルの下面は、前記筒部の上端に環状の第1シール部材を介して相対回動可能に嵌合すると共に、その嵌合部よりも内方に、前記操作ハンドルが前記筒部に対して抜け止め状態に係合する係合部が設けられているガス栓』において、栓本体内への防水性を確実にすると共に、前記操作ハンドルと前記筒部との係合部において発生する磨耗粉が前記せんとせん収容部との摺動面に侵入しないようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために講じた本発明の解決手段は、『前記係合部よりも下方に位置する前記せん収容部の上端に、内方に開放する環状切欠部を形成し、
前記環状切欠部と前記操作ハンドルの下面との間には、一端が前記環状切欠部の構成面に密着し且つ他端が前記操作ハンドルの下面のうち前記環状切欠部よりも内方で且つ上方に位置する部分に密着する環状の第2シール部材が介在されていること』である。
上記技術的手段は次のように作用する。
操作ハンドルの下面と筒部の上端との嵌合部には、従来のものと同様に、第1シール部材が介在されている。前記嵌合部よりも栓本体の内方には、操作ハンドルが筒部に抜け止め状態に係合している係合部が位置しており、前記係合部よりも下方に位置するせん収容部の上端には環状切欠部が内方に開放するように設けられている。
【0008】
環状切欠部と操作ハンドルの下面との間には、第2シール部材が設けられており、前記第2シール部材は、環状切欠部の構成面に密着している一端よりも操作ハンドルの下面に密着している他端が、栓本体の内方で且つ上方に位置するように設定されていることから、前記環状切欠部と操作ハンドルの下面との間には、所定の空間が形成されていると共に、前記環状切欠部から前記操作ハンドルの下面の所定位置に至る前記空間の内方側は、第2シールで密閉された構成となっている。
【0009】
前記第1シール部材が設けられているために、通常は、操作ハンドルと栓本体との間から雨水等の外部の水が筒部内へ浸入することはないが、操作ハンドルと栓本体との間に集中的に放水されたり、ガス栓全体が水没したりした場合、前記第1シール部材を超えて筒部内に水がわずかに浸水してくる場合がある。
【0010】
万一、前記第1シール部材を超えて水が筒部内に浸入して来ることがあったとしても、水は、第2シール部材によって堰き止められると共にその上面の前記空間内に溜まることとなる。よって、水がせん収容部内へ浸入することも、前記空間よりも上方に位置する係合部へ逆流することもない。
【0011】
又、前記第2シール部材は、操作ハンドルと栓本体との係合部よりも下方に設けられているから、操作ハンドルを回動時に、前記係合部の摺り合いにより発生する金属の磨耗粉も第2シール部材で受け止めることができる。これにより、せんとせん収容部との摺動面への磨耗粉の侵入を防止することができる。
【0012】
請求項2に係る発明のガス栓は、請求項1に記載のものにおいて、『前記環状切欠部は、環状水平面と環状垂直面を有する断面略L字状に形成されていると共に、前記第2シール部材の前記一端には、前記環状水平面と前記環状垂直面に密着し且つ上方に開放する断面略コ字状の受け部が形成されている』もので、前記空間内に流れ込んでくる水や落下してくる磨耗粉を、第2シール部材の上面で堰き止めることができる上に、特に、前記一端に設けた受け部内に溜めておくことができる。又、前記受け部で、断面略L字状に構成された環状切欠部の環状水平面と環状垂直面の両面を被覆する構成としたから、第2シール部上に溜まった水が、環状切欠部に付着することはない。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の発明では、仮に、散水装置等からガス栓に向かって勢いよく放水されたり、ガス栓全体が水没するようなことが起こり、操作ハンドルと筒部上端との嵌合部に装着させている第1シール部材を介して、水が前記第1シール部材よりも内方に浸入してくることがあっても、前記嵌合部よりも内方に設けられている第2シール部材で浸入水を堰き止めて、その上面の空間に溜めておくことができるから、せん収容部内への水の浸入を確実に防止することができる上に、前記空間よりも上方に位置する嵌合部側への水の逆流も防止することができる。よって、せんの上面やせん収容部におけるせんの摺動面、さらには、筒部と操作ハンドルとの係合部にも錆びを発生させる不都合を防止することができ、錆びによるガス栓の操作性の劣化を防止することができる。
【0014】
又、第2シール部材は、操作ハンドルと筒部との係合部から発生する磨耗粉も受け止めることができるから、前記摺動面に磨耗粉が入り込んで、せんやせん収容部に傷をつけるといった不都合もない。
【0015】
請求項2のものでは、第1シール部材を超えて浸入してきた水や、係合部から発生した磨耗粉を、第2シール部材の一端に形成されている受け部に溜めておくことができるから、栓本体内部に外部の水や磨耗粉が入り込むことを一層確実に防止することができる。又、環状切欠部の構成面全域を第2シール部の受け部で被覆できるようにしたから、環状切欠部が形成されているせん収容部さらには、栓本体の防錆が一層確実となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本願発明の実施の形態を、図面に基づいて説明する。
本願発明の実施の形態におけるガス栓は、図1に示すように、ガスメータ(M)用のガス栓(C)として実施したものである。
【0017】
一般に、地中の本管に接続されているガス引き込み用配管(3)と各家庭内へガスを送り込むためのガス送り込み用配管(30)との間に、家庭でのガスの使用量を計測するためのガスメータ(M)が設けられている。
【0018】
この種ガスメータ(M)は、通常、屋外に設置されてあり、メータ本体の上端部には、ガス引き込み用配管(3)からのガスをメータ本体内に送り込むガス入口部(31)と、メータ本体内のガスをガス送り込み用配管(30)へ送るガス出口部(32)とが並設されている。そして、本発明実施の形態のガス栓(C)は、ガス入口部(31)とガス引き込み用配管(3)との間に介在させるものである。
【0019】
図2は、本願発明の実施の形態におけるガス栓の組立完成状態での断面図である。
この実施の形態のガス栓は、栓本体(10)の両側方に略L字状のガス流入路(13)とガス流出路(14)とが、開放端が下方に向くように形成された構成となっており、全体に略U字状のガス流路が形成されている。
【0020】
[栓本体(10)の構成について]
栓本体(10)は、図2に示すように、上方に開放すると共に逆円錐台形状のせん(33)を収容するせん収容部(11)と、その上方開放端に連続する筒部(12)とを備えた構成となっており、せん収容部(11)の両側方には、前記ガス流入路(13)及びガス流出路(14)が連通している。
【0021】
ガス流入路(13)には、ガス引き込み用配管(3)が継手(図示せず)を介してが接続され、ガス流出路(14)は、ガスメータ(M)のガス入口部(31)に継手を介して接続される構成となっている。せん(33)には、ガス流入路(13)からガス流出路(14)へガス流路を連通させるガス通過孔(34)が貫通しており、栓本体(10)の開放端部に被嵌させた操作ハンドル(20)の回動に伴ってせん(33)を回動させることにより、ガス流入路(13)からガス流出路(14)へ続くガス流路を開閉させることができる。
【0022】
筒部(12)の内周壁の所定位置には、大小の係合鍔部(15a)(15b)が部分的に位置するように内方に突設されている。
又、筒部(12)よりも内方に位置させた、せん収容部(11)の上端には、図2及び図3に示すように、環状水平面(1a)と、それに連続する環状垂直面(1b)を有する断面略L字状に切り欠かれてなる環状切欠部(1)が内方へ開放するように形成されている。
【0023】
[せん(33)について]
せん(33)は、せん収容部(11)内に丁度収容される大きさの上方に向かって拡大する逆円錐台形状体であり、上述したように、ガス流入路(13)及びガス流出路(14)からなるガス流路に対応する位置には両者を連通させるガス通過孔(34)が貫通している。これにより、せん(33)を操作ハンドル(20)と共に、90度往復回動させることにより前記ガス通路を開閉することができる。
【0024】
又、せん(33)の上面には、円柱状の軸部(35)が突出し、軸部(35)の上端部は操作ハンドル(20)に相対回動阻止状態に連結させるための平行なニつの平面を有する断面略小判形状の凸軸部(36)が、二つの平面をガス通過孔(34)と平行となるように設けられており、軸部(35)を囲むように、コイルバネ(40)が設けられている。
【0025】
コイルバネ(40)は、せん(33)の上面と操作ハンドル(20)の裏面との間に圧縮されて介在されることから、その弾性復帰力によって、せん(33)はせん収容部(11)の底側へ常時押圧されると同時に、後述するように、操作ハンドル(20)は上方に押される態様となっている。
【0026】
[操作ハンドル(20)について]
操作ハンドル(20)は、下方に開放する筒状部(21)の一方からハンドル部(22)を延長させた形状であり、筒状部(21)の裏面中央には、凸軸部(36)を嵌合させるための平行な二つの平面を有する凹部(23)が、その二つの平面がハンドル部(22)と平行となるように形成されている。
【0027】
筒状部(21)の下方開放端の周縁に沿って、筒部(12)の上端の環状壁(2)を収容するための環状凹溝(24)が下方開放状態に形成されてあり、環状凹溝(24)と環状壁(2)との間には、環状の第1パッキン(4)が介在されている。
【0028】
第1パッキン(4)は、ゴム製の環状体からなり、環状壁(2)の外周面と上面に接触し且つ操作ハンドル(20)に形成されている環状凹溝(24)の底面及び外側面に接触することにより、環状壁(2)と環状凹溝(24)との隙間を防水及び防塵状態にシールしている。
【0029】
又、操作ハンドル(20)の筒状部(21)からハンドル部(22)の形成方向に向かって、小係合片(25a)が、その反対側には、大係合片(25b)がそれぞれ円弧状に突設されている。
大係合片(25b)は、図4に示すように、栓本体(10)の筒部(12)の内周面に部分的に突設させた一対の大係合鍔部(15a)(15a)の間の非形成域から、大係合鍔部(15a)(15a)より下方へ位置するように押し込み可能である。尚、小係合片(25a)は、筒部(12)の小係合鍔部(15b)に引っかかることなく、それよりも下方に押し込むことができる。
【0030】
このとき、凸軸部(36)は凹部(23)に、筒部(12)の上端の環状壁(2)は環状凹溝(24)にそれぞれ嵌まり込む態様となり、操作ハンドル(20)の回動と同時にせん(33)を回動させることができる。
【0031】
図4の状態から、操作ハンドル部(20)を180度回動させた状態が、図2及び図5に示した状態であり、小係合片(25a)が大係合鍔部(15a)(15a)に、大係合片(25b)が小係合鍔部(15b)にそれぞれ下方から係合し、操作ハンドル(20)は筒部(12)に対して上方へ抜け止め状態に取り付けられることとなる。
【0032】
尚、せん(33)の上面と操作ハンドル(20)の下面との間には、上述したように、コイルバネ(40)が圧縮状態で介在されており、このコイルバネ(40)の弾性復帰力によって、せん(33)はせん収容部(11)の底側へ常時押圧されると同時に、操作ハンドル(20)は上方に押される。これにより、小係合片(25a)は大係合鍔部(15a)(15a)に、大係合片(25b)は小係合鍔部(15b)にそれぞれ下方から強く係合する態様となる。この状態で、操作ハンドル(20)を回動させると、小大係合片(25a)(25b)と大小係合鍔部(15a)(15b)との係合部(45)が強く擦り合うことにより、相互の金属が磨耗し、磨耗粉が発生することがある。
【0033】
尚、環状切欠部(1)は、前記係合部(45)よりも栓本体(10)内の下方に位置するように設けられており、環状切欠部(1)の前記環状水平面(1a)と、操作ハンドル(20)の筒状部(21)の下面との間の空間(S)に、防塵・防水用の第2パッキン(5)を介在させている。
【0034】
第2パッキン(5)は、図3に示すように、環状のシートパッキン(52)の外周端から環状切欠部(1)の環状水平面(1a)と環状垂直面(1b)の全域に密着状態に充填される大きさ形状の下シール部(50)を下方に突設されていると共に、前記シートパッキン(52)の内周端から環状切欠部(1)よりも上方で且つ内方に位置する操作ハンドル(20)の下面の所定位置に密着する上シール部(51)を上方に突設させた形状のゴム製又は合成樹脂製の環状体であり、上シール部(51)が下シール部(50)よりも上方に且つ栓本体(10)の内方に位置する態様で空間(S)の内方側を閉塞する態様で装着される。
【0035】
[ガス栓の組立について]
本発明の実施の形態のガス栓を組立てるには、まず、栓本体(10)のせん収容部(11)にせん(33)を収容し、凸軸部(36)の二つの平面が栓本体(10)内のガス流路に沿うように位置決めし、コイルバネ(40)を軸部(35)に外嵌させる。
【0036】
そして、筒部(12)の上端の環状壁(2)に第1パッキン(4)を装着させると共に、これよりも、内方で且つ下方に位置するせん収容部(11)の上端開放部の環状切欠部(1)に第2パッキン(5)を配設した後に、操作ハンドル(20)を上記要領で取り付ける。
【0037】
コイルバネ(40)の弾性復帰力によって、大係合片(25b)を小係合鍔部(15b)の下方から、小係合片(25a)を大係合鍔部(15a)の下方からそれぞれ抜け止め状態に係合させた操作ハンドル(20)の取り付け状態にて、筒部(12)の上端の環状壁(2)に操作ハンドル(20)の環状凹溝(24)が第1パッキン(4)を介して回動自在に外嵌すると同時に、せん(33)の凸軸部(36)が凹部(23)に嵌合し、さらに、せん収容部(11)の上端部と操作ハンドル(20)の筒状部(21)の下面との間に形成される空間(S)は、第2パッキン(5)によって内方に閉塞された状態となっている。
【0038】
特に、この実施の形態のものでは、ハンドル部(22)は、図4、図5の二点鎖線に示すように、せん(33)の凸軸部(36)の二つの平面と平行に設けられていると共に、凸軸部(36)の二つの平面は、せん(33)のガス通過孔(34)にも平行に位置するように設定されているから、ハンドル部(22)の向きがガス通過孔(34)の向きに一致する関係となっている。
【0039】
よって、図5に示した状態が操作ハンドル(20)の開位置であり、図示しないが、この状態から、ハンドル部(22)を90度回動させた状態が、ガス通過孔(34)が前記ガス通路に対して直交してせん(33)が閉状態に位置する操作ハンドル(20)の閉位置である。
尚、操作ハンドル(20)には、所定の回動規制手段が設けられており、操作ハンドル(20)は、前記開位置から時計回り或いは反時計回りに90度の範囲で回動規制されている。
【0040】
この実施の形態のガス栓では、操作ハンドル(20)と栓本体(10)との間には、第1パッキン(4)と第2パッキン(5)が介在されており、筒部(12)の上端に設けた第1パッキン(4)によって、栓本体(10)と操作ハンドル(20)との間から雨水や塵芥が栓本体(10)内へ入り込むのを阻止している。
【0041】
しかしながら、この種ガス栓が取り付けられるガスメータ(M)は、屋外に設置されているものであるから、暴風雨による雨水の浸入のほか、洗車等の際にガス栓に勢いよく放水されたり、災害によりガス栓全体が水没した場合等には、外部からの水は第1パッキン(4)を通過して栓本体(10)内に浸入してくることがある。その場合には、第1パッキン(4)よりも内方で且つ下方に位置させている第2パッキン(5)によって、第1パッキン(4)を通過して筒部(12)内に入り込んだ水を堰き止めることができる。
【0042】
第2パッキン(5)は、せん収容部(11)の上端に形成されている環状切欠部(1)と、操作ハンドル(20)の下面との間の空間(S)の、栓本体(10)側を水密状態に閉塞するように装着されているから、第1パッキン(4)を通過して空間(S)内に流れ込んで来た水は、第2パッキン(5)の上面に溜まることとなり、せん収容部(11)内へ水が浸入することも、環状切欠部(1)よりも外方へ水を逆流させることもない。
【0043】
又、下シール部(50)によって、環状切欠部(1)の環状水平面(1a)及び環状垂直面(1b)の全域が被覆されているから、第2パッキン(5)で水を堰き止めている状態が比較的長期間継続されても、せん収容部(11)内、すなわち、せんの摺動面に錆びを発生させることはない。よって、摺動面の錆び付きによるガス栓の操作性の劣化を防止することができる。
【0044】
又、上記実施の形態のガス栓では、操作ハンドル(20)には小大係合片(25a)(25b)を設け、栓本体(10)の筒部(12)には大小係合鍔部(15a)(15b)を設け、コイルバネ(40)の弾性復帰力によって、これらを抜け止め状態に係合させているから、操作ハンドル操作ハンドル(20)の回動時には、これら小大係合片(25a)(25b)と大小係合鍔部(15a)(15b)との係合部(45)が強く擦り合って、磨耗粉が発生することは上述したとおりであるが、前記第2パッキン(5)は、係合部(45)よりも栓本体(10)内で且つ下方に設けられていることから、磨耗粉が発生した場合でも、これを第2パッキン(5)で受けることができる。よって、磨耗粉の栓本体(10)内への侵入は阻止することができるから、せん(33)とせん収容部(11)との摺動面に磨耗粉が入り込んで、せん(33)の外周面又はせん収容部(11)の内周面が傷つく不都合を防止することができる。
【0045】
図6に示すものは、第2パッキン(5)の変形例の説明図であり、前記下シール部(50)を上方に開放する断面略コ字状に構成すると共に、上シール部(51)を下方に開放する断面略コ字状に構成したものであり、前記下シール部(50)の上方開放部を、水や磨耗粉を溜めておく受け部として機能させるようにしたものである。
【0046】
すなわち、第1パッキン(4)を通過して空間(S)内に流れ込んで来た水や係合部(45)から発生する磨耗粉は、下シール部(50)内及びシートパッキン(52)の上面に溜まることとなり、せん収容部(11)内へ水や磨耗粉が浸入することも、環状切欠部(1)よりも外方へ水を逆流させることもない。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本願発明の実施の形態におけるガス栓の使用態様を示す概略図。
【図2】本願発明の実施の形態におけるガス栓の組立完了状態の断面図。
【図3】本願発明の実施の形態におけるガス栓の要部拡大断面図。
【図4】本願発明の実施の形態におけるガス栓の操作ハンドルの取り付け初期状態を示す断面図。
【図5】図2のX−X断面図(図4の状態から、操作ハンドルを180度回動させた状態を示す。)
【図6】本願発明の実施の形態におけるガス栓に採用した第2パッキンの変形例を示す要部拡大断面図。
【符号の説明】
【0048】
(1) ・・・・・・・・環状切欠部
(10)・・・・・・・・栓本体
(11)・・・・・・・・せん収容部
(12)・・・・・・・・筒部
(13)(14) ・・・ガス流出路(ガス流路)
(20)・・・・・・・・操作ハンドル
(33)・・・・・・・・せん
(45)・・・・・・・・係合部
(4) ・・・・・・・・第1シール部材(第1パッキン)
(5) ・・・・・・・・第2シール部材(第2パッキン)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス流路に連通する栓本体のせん収容部に前記ガス流路を開閉するせんが収容され、
前記せん収容部の開放端から筒部が上方に連設され、
前記せんを回動操作するための操作ハンドルの下面は、前記筒部の上端に環状の第1シール部材を介して相対回動可能に嵌合すると共に、その嵌合部よりも内方に、前記操作ハンドルが前記筒部に対して抜け止め状態に係合する係合部が設けられているガス栓において、
前記係合部よりも下方に位置する前記せん収容部の上端に、内方に開放する環状切欠部を形成し、
前記環状切欠部と前記操作ハンドルの下面との間には、一端が前記環状切欠部の構成面に密着し且つ他端が前記操作ハンドルの下面のうち前記環状切欠部よりも内方で且つ上方に位置する部分に密着する環状の第2シール部材が介在されていることを特徴とするガス栓。
【請求項2】
請求項1に記載のガス栓において、前記環状切欠部は、環状水平面と環状垂直面を有する断面略L字状に形成されていると共に、前記第2シール部材の前記一端には、前記環状水平面と前記環状垂直面に密着し且つ上方に開放する断面略コ字状の受け部が形成されていることを特徴とするガス栓。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−270849(P2007−270849A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−93430(P2006−93430)
【出願日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【出願人】(000000284)大阪瓦斯株式会社 (2,453)
【出願人】(000231121)JFE継手株式会社 (140)
【出願人】(000151977)株式会社藤井合金製作所 (66)
【Fターム(参考)】