説明

ガス検出装置

【課題】本発明は大気中のppmからppb程度の低濃度ガスを検出する装置のための光学式のガス検出装置の実現を目指す。
【解決手段】透明な素材で出来た基材とその基材表面に設けた多孔質薄膜とその多孔質薄膜中の細孔内に保持されるガス検出試薬とから構成され検出対象ガスとガス検出試薬との反応により光学特性が変化する光導波路として機能する検出素子、検出素子の一方の端部から入射し検出素子内を伝播される光のための光源、検出素子の他方の端部から放出される光を受ける光検出器、光検出器からの信号を処理する信号処理装置、信号処理装置の出力を表示する表示装置からなるガス検出装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は大気中のppmからppb程度の低濃度ガスを検出する装置のための光学式のガス検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
(光学的特性を利用した方法)
従来、大気中の特定の物質を光学的に検出するとき、その分子構造と光学特性の関係を利用する。例えば、ホルムアルデヒドを検出する手法として、赤外光吸収を利用した方法がある。ホルムアルデヒドを含むケトン・アルデヒド類はC=O結合が波数1765〜1645cm-1に強い赤外光吸収を示す。この波数領域での吸収の程度を検出することにより、ケトン・アルデヒド類を検出することができる。しかし、ケトン・アルデヒド類の混合ガスの分析において、この波数領域でのC=O結合に由来する吸収は、全てのケトン・アルデヒド類に共通の構造であるため、ホルムアルデヒドについてのみ信号分離することは困難であるという問題がある。従って、この手法はホルムアルデヒドの選択的な検出には適用できない。
【0003】
(化学反応を利用した方法)
化学反応は反応物質の分子構造に依存する。反応生成物を直接的又は間接的に検出することにより、特定の物質を選択的に検出ことが可能である。例えば、アルデヒド類とアミン類との反応についても、特定のアルデヒドと特定のアミンの組み合わせのときだけ起こる反応が幾つか知られている。こうした化学反応に基づき特定のアルデヒドを選択的に検出ことが可能である。ホルムアルデヒドの場合、反応試薬として、フクシン亜硫酸類、アゾベンゼン-p-フェニルヒドラジン-スルホン酸(APHS)、4-アミノ-3-ペンテン-2-オン(フルオラル-P)等が検出試薬として知られる(非特許文献1参照)。
【0004】
従来これらの化学反応を利用した検出方法では、検体ガスを溶液に捕集した後に検出対象物質と検出試薬とを反応させ、その生成物を分析する。例えば、ケトン・アルデヒド類と反応試薬とによって、反応による生成物の呈色や発光の程度を、高速液体クロマトグラフィを用いて検出する方法、あるいは検出試薬をカラムに詰め、これに所定の量の検体ガスを吸引する際の反応による呈色の程度から検知及び濃度の測定する方法(検知管)などが知られている。
しかし、前者のクロマトグラフィを用いる方法は感度及び選択性は優れているが、操作が煩雑であるという欠点があり、また後者の検知管を用いる方法は簡便ではあるが、検知精度が劣るという問題があり、実用的ではないという欠点があった。
また、複合光導波路を用いたアンモニア等のセンサーが提案されている(非特許文献2、3参照)。しかし、これらは複合光導波路の製作プロセスが複雑であり、また光導波路に光を導入するためにプリズムを使用しなければならないので、光学素子交換の際に精密な光学調整が必要なり、実用性に欠けるという問題があった。
【0005】
【特許文献1】特願2005−96388号参照
【特許文献2】再表99/026881号公報
【特許文献3】特開平11−049511号公報
【特許文献4】特開2002−250713号公報
【特許文献5】特開2003−119024号公報
【非特許文献1】Analytica Chimica Acta 119(1980)349-357
【非特許文献2】電気化学および工業物理化学(Electrochemistry)「高感度複合導波路のアンモニアセンサへの応用」69,No.11(2001)p.863-865
【非特許文献3】Applied Spectroscopy “Analysis and Application of The Transmission Spectrum of a Composite Optical waveguide”56,No.9(2002)p.1222−1227
【非特許文献4】Advanced Materials,12(2000)1529−1533
【非特許文献5】Analytical Chemistry,76(2004)6719−6726
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、検出試薬を安定に担持する透光性のポーラスな層状固体を利用し、かつ、層状固体と透明基材とが光導波路を形成できる検出素子を用いて、ガス状の検出対象物質と層状固体に保持されている検出試薬との反応生成物質による発色を光により検出することによる、大気中に含まれる微量の物質まで検出可能な携帯可能な小型化できるガス検出装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願は、上記の課題を解決することを目的とし、次の発明を提供する。
すなわち、本発明は、透明な基材、その表面に設けた多孔質薄膜、多孔質薄膜中の細孔内に保持されるガス検出試薬からなる検出素子、検出素子の端部に入射する光のための光源、検出素子のガラス基板の他方の端部から放出される光を受ける光検出器、光検出器からの信号を処理する信号処理装置、信号処理装置の出力を表示する表示装置からなるガス検出装置である。
【0008】
また、本発明においては、ガス検出試薬を、アンモニア又はアミン検出試薬から選ばれる1種とすることができる。
さらに、本発明においては、光源がレーザまたは発光ダイオード等の単色光源であり、光検出器がフォトダイオードとすることができる。
【0009】
本発明では、光源が白色光を平行ビーム化した光であり、光検出器がモノクロメータの分光器とすることができる。
また、本発明においては、基材が厚さ0.05〜2mmの板状であり、その表面および裏面についてその片面あるいは両面に多孔質薄膜の厚さが、0.01〜2μmとすることができる。あるいは、基材が直径0.05〜2mmの円筒状であり、多孔質薄膜の厚さが、0.01〜2μmとすることができる。
さらに本発明においては、ガラス基板上に設けた多孔質薄膜の細孔に、ガス検出試薬を含侵させた2種以上の検出素子を用いることができる。
また、本発明においては、多孔質薄膜が、酸化シリコン、酸化チタン、酸化スズ、酸化亜鉛より選ばれる1種とすることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明のガス検出装置は、ガス検出試薬を安定に担持することができるので、光導波路を用いたガスの検出装置において、従来の液膜や紫外線硬化ポリマー膜による検出薬の担持に比べ、高精度で検出することが可能となる。さらに、光源としてレーザまたは発光ダイオードを用い、光検出器としてフォトダイオードを用いることができるので、小型化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明において用いる多孔質とは、酸化シリコン、酸化チタン、酸化スズ、酸化亜鉛などの規則正しい細孔を有する周知の多孔質物質であり、とくに酸化シリコン及び酸化チタンが好ましく用いられる。さらに、シリカ系の多孔質は、その製造方法も周知の材料であり(特許文献2〜4)、多孔質シリカであれば何でも使うことができるが、代表的には、界面活性剤のミセルなどを鋳型としてゾルゲル法によりオルトケイ酸エチルから形成させる多孔質シリカである。また、チタン系の多孔質も、良く知られている(特許文献5)。
【0012】
光学素子の形態は図1および図2および図3に示す構造の何れかの構造である。図1は板状ガラス基材と多孔質薄膜と検出試薬とから構成される光導波路を示す。光導波路における光の導入と導出が端面結合法により行われる。図2は板状ガラス基材とプリズムと多孔質薄膜と検出試薬とから構成される光導波路を示す。光導波路とプリズムが一体の構造であり、光導波路における光の導入と導出がプリズムカップリング結合法により行われる。図3は円筒状ガラス基材と多孔質薄膜と検出試薬とから構成される光導波路を示す。光導波路における光の導入と導出が端面結合法により行われる。
【0013】
一例を示せば、本件発明の検出素子は、この組成物を所定のガラス基板に滴下し、スピンコート等により薄膜化し、電気炉等により350〜450℃に焼成することにより、ガラス基板上に設けた多孔質シリカ薄膜を得ることができる。
本願発明において示す光学素材の作製手順の概要を以下に示す。はじめに、基板となるガラス板の表面に多孔質薄膜を作製する。次にガス検出試薬を揮発性の貧溶媒に溶かした溶液を調製する。この溶液に先に作製した多孔質薄膜付きのガラス板を浸すか、あるいはその溶液を多孔質薄膜の表面に塗布する。溶媒を除去することにより、細孔内に呈色試薬を導入する。
【0014】
この例では図1に示す構造の光学素子を用いた。透明基板1と検出試薬が細孔内部へ導入された多孔質薄膜2との全体が光導波路3として機能する。光源4から光を導波路3に導入する。その光は導波路3を伝播する。導波路3を通り抜けた光は検出器5で検出される。
【0015】
本発明においては、光源がレーザまたは発光ダイオード等の単色光源であり、光検出器がフォトダイオードとすることが好適であるが、光源としてキセノンランプや白熱ランプ等による白色光をコリメータ等により平行ビーム化した光を発するものを採用し、その光が導波路を透過する際に反射吸収により、その全てが吸収されないで一部が透過し、その透過光を検出できる光検出器として、モノクロメータ等の分光器を用いることもできる。
【0016】
薄膜2をガス雰囲気に暴露すると、ガスは気相から多孔質薄膜の細孔内部へ侵入し、そのときガスは検出試薬と反応する。その反応によって生成する物質を透明基板1と薄膜2を導波する光の伝播損失を測定することにより、間接的にガスを検出する。
さらに本発明においては、光検出器からの信号を処理する計算を、レイト法、エンドポイント法に基づく計算とすることができる。レイト法は検出対象物質と検出試薬との反応による透過光強度の時間についての微分係数と検出対象物質の濃度との関係に基づき、検体ガス中の検出対象物質の濃度評価を行う。一方、エンドポイント法は検出対象物質と検出試薬との反応終了時の透過光強度と検出対象物質の濃度との関係に基づき、検体ガス中の検出対象物質の濃度評価を行う。
【0017】
以下、本発明を、具体的に説明するが、これに制限されるものではない。すなわち、これは本願発明の理解を容易にするためのものであり、これらに制限されるものではないことを知るべきである。本願発明の技術思想に基づく変形、実施態様、他の例は、本願発明に含まれるものである。
【実施例1】
【0018】
(検出試薬として、2,6−ジフェニル−4−(2,4,6−トリフェニル−n−ピリジノ)フェノレイト(以下、DPTPNPP)を用いた大気中のアンモンニアの検出の例)
(1)ガラス基板上の多孔質含浸によるDPTPNPPの細孔内への導入
はじめに、含浸プロセスによるDPTPNPPの多孔質薄膜の細孔内部への導入の例を示す。ガラス板上に多孔質シリカ薄膜を形成した。多孔質材料の作製方法は周知であり代表的なものが幾つか知られ、非特許文献4および非特許文献5に記載の方法がある。オルトケイ酸エチルに、1−プロパノール、希塩酸、2−ブタノールを加え攪拌した。これに、セチルトリメチルアンモニウムクロライド(C16TMA)の水溶液を加え攪拌した。得られた溶液をガラス基板上に数滴滴下し、スピンコータで薄膜化した。得られたものを電気炉により大気中で、400℃で焼成した。
【0019】
次に、濃度0.8mMのアセトン/n−ペンタン混合溶媒によるDPTPNPP溶液を調製し、その溶液に多孔質シリカ薄膜付きのガラス板を1日間浸漬した。その後、多孔質シリカ薄膜付きのガラス板を溶液から取り出し、室温でドライヤの冷風に十分に曝し溶媒を除去した。
図4は得られた光学素子を用いたアンモニア検出装置を示す。光学素子1、光源2(波長488nmのアルゴンレーザ)、検出器3(フォトダイオード)で構成される。光源からの光は入射角度θ=23度で光学素子1の端面に入射させた。光学素子は光導波路として機能する。光は光学素子内部を伝播し、もう一方の端面から出射した。出射した光の強度を検出器により測定した。
【0020】
ガスライン4から試料ガスを光学素子表面に流量1.0L/minで曝露した。試料ガスとして純粋な窒素ガスとアンモニア/窒素ガスを用いた。試料ガスにアンモニアが含まれとき光学素子の検出試薬とアンモニアが反応し、光学素子の光学特性が変化した。この光学特性の変化を図4に示す光学系により測定することにより、アンモニアを間接的に検出した。
【0021】
図5は光学素子のアンモニアガス暴露に対する応答性を示す。大気圧下28℃、湿度50%RH、822ppmの濃度のアンモニアガスを1分間噴射し、光学素子にアンモニアガスを曝露したときの透過光強度の変化の様子を示してしている。図6は濃度と透過光強度の関係を示す。
【0022】
アンモニアガスに曝露後、透過強の減少の極少値をエンドポイントとする。曝露前の透過光強度をI、エンドポイントに達したときの透過光強度をIとする。濃度Cに対して−log(I/I0)のプロットすると、図6に示すようにR=0.874の直線性を示す検量線が得られた。
【0023】
以上の結果をまとめると、(1)ガラス基材と多孔質シリカ薄膜とアンモニア検出試薬(DPTPNPP)から構成される光学素子を作製した。(2)それを用いて上述の測定条件の下で0から1000ppm程度の濃度範囲で大気中のアンモニアが検出できた。(3)その結果得られた検量線は相関係数R=0.969を示す直線性を示した。
【実施例2】
【0024】
(検出試薬として4−クロロ−7−ニトロベンゾルラザン(以下、NBD−Cl)を用いた大気中のトリエチルアミンの検出の例を示す。)
(1)多孔質薄膜の作製
はじめに細孔径3nm程度の細孔を持つ多孔質シリカ薄膜を作製した。作製方法は非特許文献2および非特許文献3に記載の方法であり、上述の実施例1で用いた多孔質シリカ薄膜と同じものである。
【0025】
(2)NBD−Clの導入
次に、濃度12mMのアセトン/n−ペンタン混合溶媒によるNBD−Cl溶液を調製し、その溶液に多孔質シリカ薄膜付きのガラス板を約2時間浸漬した。その後、その多孔質シリカ薄膜付きのガラス板を溶液から取り出し、室温でドライヤの冷風に曝し溶媒を除去した。
【0026】
(3)トリエチルアミンの検出
光学系は実施例1の図4のアンモニア検出で用いたものと同じ構成である。ただし、光源として波長470nmの発光ダイオード(LED)を用いた。光源からの光は入射角度θ=23度で光学素子1の端面に入射させた。光学素子は光導波路として機能する。光は光学素子内部を伝播し、もう一方の端面から出射した。出射した光の強度を検出器により測定した。
【0027】
ガスライン4から試料ガスを光学素子表面に流量1.0L/minで曝露した。試料ガスとして純粋な窒素ガスとトリエチルアミン/窒素ガスを用いた。試料ガスにトリエチルアミンが含まれとき光学素子の検出試薬とトリエチルアミンが反応し、光学素子の光学特性が変化した。この光学特性の変化を図4に示す光学系により測定することにより、トリエチルアミンを間接的に検出した。
【0028】
図7は光学素子のトリエチルアミンガス暴露に対する応答性を示す。大気圧下26℃、湿度63%RH、9.0ppmの濃度のトリエチルアミンガスを1分間噴射し、光学素子にトリエチルアミンガスを曝露したときの透過光強度の変化の様子を示す。図8は濃度と透過光強度の関係を示す。
【0029】
トリエチルアミンガスに曝露すると、透過光強度は減少した。トリエチルアミン曝露を止めると、透過光強度は安定した。その安定した透過光強度をエンドポイントとする。曝露前の透過光強度をI、エンドポイントに達したときの透過光強度をIとする。濃度Cに対して−log(I/I)のプロットすると、図8に示すようにR=0.968の直線性を示す検量線が得られた。
【0030】
以上の結果をまとめると、(1)ガラス基材と多孔質シリカ薄膜とトリエチルアミン検出試薬(NBD―Cl)とから構成される光学素子を作製した。(2)それを用いて測定条件の下で0から15ppm程度の濃度範囲で大気中のトリエチルアミンが検出できた。(3)その結果得られた検量線は相関係数R=0.968を示す直線性を示した。
【実施例3】
【0031】
(検出試薬としてシアニン色素J会合体を用いた酸性ガスおよび塩基性ガスの検出の例を示す。)
(1)シアニン色素J会合体
シアニンやスクアリウム等の色素は2つの複素環核を複数のπ結合が単結合を介して交互に並んだπ電子系であるメチン鎖で連結した分子構造を持つ。そのメチン鎖は共役π電子系と呼ばれ、吸収スペクトルにおけるピーク波長とその形状はそのメチン鎖の長さで大凡決まる。これらの色素分子が凝集すると、分子間の共役π電子系の相互作用により吸収スペクトルにおけるピーク波長のレッドシフトとピーク形状の先鋭化が生じる。こうした凝集体はJ会合体と呼ばれる。
酸性条件下ではメチン鎖のπ結合部においてプロトン付加反応が生じ、塩基性条件下ではそのプロトンが離脱する。酸性および塩基性の条件を整えることにより、可逆にプロトンの脱着を行うことができる。酸性条件下に複数の色素分子から構成されるJ会合体を置くと、その内の一部の色素分子の共役系二重結合にプロトン付加反応が生じる。このとき、共役系二重結合の相互作用が失われるため、吸収スペクトルにおいてJ会合体特有の吸収ピークが失われ、モノマーの吸収スペクトルを示すようになる。これを塩基性条件下に置くと、共役系二重結合に付加したプロトンが離脱するため、分子間の共役系二重結合相互作用が回復し、J会合体的光学特性も回復する。
J会合体の形成の程度を光学的にモニターすることにより、酸性条件および塩基性条件下におけるプロトンの可逆的な脱着反応を通じて、色素分子を取り巻く環境が酸性条件かあるいは塩基性条件を検出することが出来る。
【0032】
(2)シアニン色素J会合体シリカ膜の合成
図9はシアニン色素J会合体ドープシリカ薄膜を用いた酸性および塩基性ガスセンサーの構造を示す。シアニン色素として林原生化学研究所NK-3025を用いた。図9の11にその分子構造を示し、12にJ会合体の構造を示す。初めにゾル溶液を以下の手順で調製した。(1)テトラエトキシオルソシリケイト(TEOS)とエタノールを十分に攪拌し、(2)その溶液に少量の希塩酸を加え攪拌した。(3)さらに、シアニン色素を加えて十分に攪拌し、ゾル溶液を調製した。次に、そのゾル溶液をガラス基板上に適量滴下し、スピンコーターによりそのガス基板上にシアニン色素J会合体ドープシリカ薄膜を形成させた。
【0033】
(3)酸性ガスおよび塩基性ガスに対する応答性
光源としてXeランプを用い、光検出器としてCCD素子を用い、シアニン色素J会合体ドープシリカ薄膜光導波路の酸性および塩基性ガスに対する光学的な応答性を調べた。図10は吸収スペクトルを示し、波長585nmに J会合体ピークが現れる。図11に示すように酸性ガス処理によりシアニン色素J会合体ドープシリカ薄膜光導波路が酸性ガスに暴露されるとJ会合体の吸収ピーク強度は減少し、塩基性ガス処理により塩基性ガスに暴露されるとJ会合体の吸収ピーク強度は増加する。
以上のことから、酸性ガスおよび塩基性ガスに対するシアニン色素J会合体ドープシリカ薄膜光導波路の可逆な応答性が確認された。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明のガス検出装置は、大気中の低濃度ガスの測定感度及び測定精度を向上することができるばかりか、小型化することができるので、量産化するのに適している。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】板状ガラス基材と多孔質薄膜と検出試薬とから構成される光導波路の模式図。
【図2】板状ガラス基材とプリズムと多孔質薄膜と検出試薬とから構成される光導波路の模式図。
【図3】円筒状ガラス基材と多孔質薄膜と検出試薬とから構成される光導波路の模式図。
【図4】ガスを検出するための装置を示す図。
【図5】光学素子のアンモニアガス暴露に対する応答性を示す図。
【図6】実施例1における濃度と透過光強度の関係を示す図。
【図7】光学素子のトリエチルアミンガス暴露に対する応答性を示す図。
【図8】実施例2における濃度と透過光強度の関係を示す図。
【図9】シアニン色素J会合体を検出試薬として用いた酸性ガスおよび塩基性ガスセンサーの模式図。
【図10】シアニン色素J会合体の吸収スペクトルを示す図。
【図11】酸性ガス処理および塩基性ガス処理に対するシアニン色素J会合体の吸収ピーク強度の応答性を示す図。
【符号の説明】
【0036】
1:透明基材
2:検出試薬を含む多孔質薄膜
3:光導波路
4:光源
5:検出器
6:光学素子
7:光源(レーザ、発光ダイオード等)
8:光検出器(フォトダイオード)
9:ガスライン
10:プリズム
11:シアニン色素
12:J会合体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明な素材で出来た基材とその基材表面に設けた多孔質薄膜とその多孔質薄膜中の細孔内に保持されるガス検出試薬とから構成され検出対象ガスとガス検出試薬との反応により光学特性が変化する光導波路として機能する検出素子、検出素子の一方の端部から入射し検出素子内を伝播される光のための光源、検出素子の他方の端部から放出される光を受ける光検出器、光検出器からの信号を処理する信号処理装置、信号処理装置の出力を表示する表示装置からなるガス検出装置。ただし、該ガス検出試薬として、4‐アミノ‐3‐ペンテン‐2‐オン(4-aminopent-3-en-2-one)、4‐アミノ‐3‐オクテン‐2‐オン(4-aminooct-3-en-2-one)、5-アミノ-4-ヘプテン-3-オン(5-aminohept-4-en-3-one)、4‐アミノ‐4‐フェニル‐3‐ブテン‐2‐オン(4-amino-4-phenylbut-3-en-2-one)、3−アミノ‐1,3‐ジフェニル‐2‐プロペン‐1‐オン(3-amino-1,3-diphenylprop-2-en-1-one)及び2‐アミノ‐3‐ペンテン‐2‐オン(2-aminopent-3-en-2-one)から選ばれる1種であるものを用いたホルムアルデヒドを検出するための装置を除く。
【請求項2】
検出素子の基材が透明なガラスまたプラスチックである請求項1に記載したガス検出装置。
【請求項3】
請求項2に記載した検出素子の基材表面に設けられた多孔質薄膜がメソポーラス薄膜である検出素子を用いた請求項1に記載した検出装置。
【請求項4】
請求項2に記載した検出素子の基材が厚さ0.05〜2mmの板状であり、板状基材の表面に設けられら多孔質薄膜相の厚さが、0.01〜2μmである検出素子を用いた請求項1に記載したガス検出装置。
【請求項5】
請求項4に記載した検出素子の板状基材の表面であって光反射面の少なくとも一部に多孔質薄膜が設けられている検出素子を用いた請求項1に記載したガス検出装置。
【請求項6】
請求項2に記載した基材の両端部にプリズム等の光結合素子が設けられいて、該基材表面であって光反射面の少なくとも一部に多孔質薄膜が設けられている検出素子を用いた請求項1に記載したガス検出装置。
【請求項7】
検出素子の基材が円筒状であり、該円筒状基材表面であって光反射面の少なくとも一部に多孔質薄膜を設けた検出素子を用いた請求項1に記載したガス検出装置。
【請求項8】
請求項7に記載した該円筒状基材の直径が0.05〜2mmであり、該多孔質薄膜の厚さが0.01〜2μmである請求項1に記載したガス検出装置。
【請求項9】
大気中に存在する0.001ppmから1000ppmの低濃度物質を検出対象とする請求項1に記載したガス検出装置。
【請求項10】
アンモニア、アセトニトリル、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノエタノールアミン、アニリン、N−メチルアニリン、ピリジン、ピコリン、ニトロベンゼン、エチレンジアミン、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、トリエチルアミン、N-メチル-2-ピロリドン、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジシクロヘキシルアミン、β-ピコリン酸、DMAC、トルエン、キシレン、1,3,5-トリメチルベンゼン、酢酸エチル、クロルピリホス、パラジクロロベンゼン、スチレンメタノール、n-ヘキサン、アセトン、ジクロロメタン、ジクロロメタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、HCFC−225(3,3-ジクロロ-1,1,1,2,2-ペンタフルオロプロパン、1,3-ジクロロ-1,1,2,2,3-ペンタフルオロプロパン)、メチルエチルケトン、デカンホルムアルデヒド、酢酸エチル、ブチルセロソルブ、cis−2−ブテン、n-ブタン、イソブタン、n-ペンタン、イソプロピルアルコール、メタノール等揮発性有機化合物を検出対象とする請求項1に記載したガス検出装置。
【請求項11】
ガス検出試薬が、アンモニア又はアミン検出試薬から選ばれる1種である請求項1に記載したガス検出装置。
【請求項12】
光源がレーザ又は発光ダイオード等の単色光源であり、光検出器がフォトダイオードである請求項1に記載したガス検出装置。
【請求項13】
光源が白色光を平行ビーム化した光であり、光検出器がモノクロメータの分光器である請求項1に記載したガス検出装置。
【請求項14】
基材表面に設けた多孔質薄膜の細孔に、ガス検出試薬を含侵させた2種以上の検出素子を用いる請求項1に記載したガス検出装置。
【請求項15】
多孔質薄膜が、酸化シリコン、酸化チタン、酸化スズ、酸化亜鉛より選ばれる1種である請求項1に記載したガス検出装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2008−107337(P2008−107337A)
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−251608(P2007−251608)
【出願日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】