説明

ガス検出装置

【課題】互いに反応性のある前処理剤と検知剤を用いて検出装置を提供する。
【解決手段】本発明のガス検出装置1は、前処理部10と検出部30とを有しており、前処理部10の前管11と検出部30の後管31には、先端を折り欠くための切断線19、39が形成されている。前管11の一端と後管31の一端を連結管20に挿入しておき、使用の際には先端を折り欠いて開口を形成する。使用の直前まで前処理剤15と検知剤35は分離されているので、化学反応による劣化がおこらない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は試料ガスを前処理した後、試料ガス中の反応成分ガスを検出するガス検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
検知管を用いたガス検出方法は、分析機器を用いずに簡便にガス検出を行なえることから、住環境の悪臭検出、作業環境の化学物質検知、反応生成ガス中の含有物質の検知等に広く用いられている。
しかし、測定雰囲気から採取したサンプルガス中に、検出対象ガスの検出の妨害となるガスが含まれていると、検出対象ガスを正確に検知することができない。
【0003】
例えば、石炭を乾留し、コークスを製造する際に得られるコークスガスは、精錬されて工場の燃料となる他、各種化学物質が分離されているが、コークスガス中のシアン化水素ガスを検知管内の塩化第二水銀と反応させ、発生した塩化水素によるpH変化でシアン化水素ガス濃度を測定しようとすると、コークスガス中にに含まれる硫化水素が塩化第二水銀と反応するため、シアン化水素に対する妨害ガスとなり、シアン化水素ガスの濃度を正確に測定することができない。
【0004】
この場合、コークスガス中の妨害ガスを除去した後、検出対象ガスを検出するようにすればよいが、測定現場で妨害ガスを除去するための作業が煩雑であり、解決が望まれていた。
検知管については、下記文献に記載されている。
【特許文献1】特開2006−184157
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記課題を解決するために、同じガラス管内に封入できない前処理剤と検知剤を使用しなければ検出できない検出対象ガスを簡易迅速に検出できる検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明は、両端が塞がれた前管内に化学物質が配置された前処理部と、両端が塞がれた後管内に、前記化学物質と化学反応する他の化学物質が配置された検出部と、前記前管の一端と前記後管の一端とが挿入され、折り曲げ可能な柔軟性と、内部を観察可能な透明性とを有する連結管と、前記前管と前記後管の、前記連結管に挿入された部分に形成され、前記前管先端と前記後管先端とをそれぞれ折り欠くための切断線とを有し、前記前管の両端と前記後管の両端が折り欠けられ、開口が形成された状態では、前記前管と前記後管が、前記連結管を介して連通され、前記前管を通過した試料ガスが、前記後管内を通過するように構成されたガス検出装置である。
本発明はガス検出装置であって、前記後管内には、試料ガス中に含有される検出対象ガスの濃度に応じて変色する検知剤が配置されたガス検出装置である。
本発明はガス検出装置であって、前記後管は、少なくとも一部が透明で、前記後管の内部を観察可能に構成されたガス検出装置である。
本発明はガス検出装置であって、前記後管はガラス管で構成されたガス検出装置である。
本発明はガス検出装置であって、前記後管には、前記検知剤の変色量が分かる位置に、目盛りが配置されたガス検出装置。
本発明はガス検出装置であって、前記前管内には、前記試料ガス中の検出対象ガス濃度と前記検知剤の変色量の関係を変化させる妨害物質を除去する除去成分が含有された前処理剤が配置されたガス検出装置である。
本発明はガス検出装置であって、前記前処理剤には、前記試料ガス中の検出対象ガスと反応し、前記検知剤を変色させる反応物質を発生させる反応成分が含有されたガス検出装置である。
本発明はガス検出装置であって、前記反応物質は前記検知剤をpH変化させる酸性ガス又はアルカリ性ガスであり、前記検知剤は、pH変化で変色する指示薬を含有するガス検出装置である。
本発明は、前記検知剤は、前記反応ガスと化学反応して変色する反応成分を含有するガス検出装置である。
【発明の効果】
【0007】
管内に一緒に封入すると化学変化する物質を、前管と後管に別々に封入しておき、使用する直前に前管内と後管内を簡単に連通させられるので、化学反応による劣化が無く、操作も簡単である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
図1の符号1は、本発明の一例のガス検出装置を示している。
このガス検出装置1は、前処理部10と、連結管20と、検出部30とを有している。
前処理部10と検出部30は、細長いガラス管から成る前管11と後管31をそれぞれ有している。
【0009】
前管11と後管31の内部には前処理剤15と検知剤35がそれぞれ配置されている。前処理剤15と検知剤35は、粒子や繊維等の担体に、後述する化学物質が添着されて構成されており、通気性を有するフィルタである。
前管11と後管31の両端は、それぞれ溶封されており、前管11内と後管31内は、それぞれ大気雰囲気から遮断され、前処理剤15や検知剤35が大気に接触しないようにされている。
【0010】
前処理剤15と検知剤35の両側には、ガラス繊維やテフロン繊維(テフロン繊維はフッ素樹脂の繊維であり、テフロンは登録商標である)のような、通気性を有する栓16、36がそれぞれ配置されており、栓16、36を超えて粒子状の担体がこぼれ出さないようにされている。
【0011】
前管11と後管31の両端は先窄まり(先細)であり、前管11と後管31の両端は中央部分よりも細くなっている。前管11と後管31の一方の先端部分には、その周囲を一周する傷又は切れ込みから成る切断線19、39がそれぞれ形成されており、前管11と後管31の厚みは切断線19、39の部分が他の部分よりも薄くなっている。
【0012】
連結管20はシリコン樹脂等の樹脂製のチューブであり、前管11と後管31の一端が、それぞれ連結管20内部に挿入され、切断線19、39が連結管20の内部に位置するようにされている。
【0013】
連結管20はゴムのような弾性力を有しており、連結管20の内径は前管11と後管31の外径と同径であるか、それよりも僅かに細くされており、連結管20の両端は僅かに膨らみ、連結管20の内周面が、前管11と後管31の挿入された部分の外周面と密着している。これにより、連結管20の内部には大気が侵入しないようになっている。
【0014】
図3、図4、図5は、相互に連結する前の、前処理部10と検出部30と連結管20をそれぞれ示している。
連結管20はゴムのような柔軟性を有している。連結管20は、内部を観察できる程度に透明であり、連結管20を二本の指で挟み、連結管20上から、切断線19、39よりも先端部分18、38を摘めるようになっている。
【0015】
前管11又は後管31の中央部分を持ち、先端部分18、38を摘んだ状態で力を加えると、連結管20内部で前管11又は後管31の先端部分18、38が切断線19、39に沿って折れ、前管11又は後管31の連結管20の内部に開口が形成される。
【0016】
このとき、連結管20内で、切断線19、39よりも先の部分が管中央部分から分離されるが、連結管20は内部を視認できる程度の透明性を有しているから、先端部分18、38が中央部分から分離できたかどうかが確認できる。分離できていなかった場合、再度連結管20を摘んで折り欠くことができる。
【0017】
図2は、前管11と後管31の連結管20とは反対側の先端部分も折り欠き、開口14a、14b、34a、34bを形成した状態であり、連結管20の内部には、前管11の先端部分18と後管31の先端部分38が折り重なって配置されているが、それらの間には隙間があり、気体が通過できるようになっている。
【0018】
この状態では、前管11と後管31が連結管20で接続されたガス検出装置1の両端のうち、一端の開口14aから他端の開口34aに向けて、ガス検出装置1内を気体が通過可能であり、前管11の開口14aを試料ガス吸入口、後管31の開口34aを吸引装置への接続口として、接続口側を吸引装置内に挿入し、試料ガス吸入口を試料ガス雰囲気中に挿入し、吸引装置を動作させて後管31内の空気を吸引すると、試料ガスや前管11内の空気は後管31を通過して吸引装置に吸引される。
【0019】
連結管20の内周面と前管11及び後管31の外周面は密着しており、連結管20内に大気は侵入せず、前管11を通った試料ガスは、大気が混入することなく後管31の内部に導かれる。
試料ガスには検出対象ガスが含まれており、試料ガスが前管11の内部を通過する間に前処理されると、後管31内の検知剤35は、前管11に吸引された試料ガス中の検出対象ガスの濃度に応じた量だけ変色する。
【0020】
検知剤35は、前処理剤15によって影響を受ける物質であり、前処理剤15と検知剤35を同一のガラス管内に一緒に封入しておくと、検知剤35中の成分が化学変化し、検出対象ガスの濃度と、検知剤35の変色量の関係が変わってしまうが、本発明では、連結管20内部の前管11の先端部分18と後管31の先端部分38は塞がれており、使用直前に両方を折り欠き、前管11の内部と後管31の内部を連通させることができるので、前処理剤15の検知剤35に対する影響は無い。
本発明のガス検出装置1は、様々な検出ガスを検出することができる。検出ガスに対する前処理剤15と検知剤35の組み合わせの例を、下記表1に示す。
【0021】
【表1】

【0022】
表1中の実施例3では、前処理剤には一種類の化学物質(硫酸)が含有されているだけであるが、実施例1、2、4、5は、前処理剤には二種類の化学物質が含有されている。
【0023】
実施例1のヨウ素酸塩と硫酸は、同じ担体に一緒に添着されて前処理剤が構成されており、実施例2の酸化クロムと硫酸も同じ担体に一緒に添着されて前処理剤が構成されている。従って、実施例1、2、及び実施例3では、前管11内の前処理剤15は図3に示すような一層の薬剤層である。
【0024】
実施例4、5では、五酸化ヨウ素と発煙硫酸が同じ担体に一緒に添着され、酸化クロムは別の担体に添着されており、図6に示すように、五酸化ヨウ素と発煙硫酸が添着された担体と、酸化クロムと発煙硫酸が添着された担体は混合されずに前管11に充填されており、この実施例では、前処理剤55は、臭素ガス又は二酸化硫黄ガスから成る反応物質を生成する層55aと、有機ガスを分解除去する除去層55bの二層で構成されている。図7の符号5は図6の前処理部50を連結管20に装着したガス検出装置を示しており、図7は前管11と後管31の先端部分を折り欠き、開口14a、14b、34a、34bを形成した状態を示している。
【0025】
表1の実施例1〜5は、検出対象ガスが前処理剤15、55中の反応成分と反応し、生成された反応物質が、検知剤35のpHを変化させ、メチルレッドやメチルオレンジ等の指示薬を変色させる場合(実施例1、2、5)と、検出対象ガスが前処理剤55中の反応成分と反応し、生成された反応物質が検知剤35中の反応成分と反応し、反応成分を変色させる場合(実施例4)と、検知剤35中に、検出対象ガスと反応して変色する反応成分が含まれる場合(実施例3)に分類される。
いずれにしろ、検知剤35の変色は、連結管20に近い位置から開始され、検出対象ガスの濃度に応じ、変色領域は、吸引装置側に向かって伸びる。
【0026】
吸引装置は、ガス検出装置1を介して一定量の気体を吸引するように構成されている。後管31のガラス管は透明であり、変色した領域を外部から観察することができる。
【0027】
検出対象ガスの量と変色した領域の長さを予め対応付けておくと、試料ガス中の検出対象ガスの濃度が分かる。その濃度が目視で分かるように、後管31には濃度と対応付けられた目盛り32が設けられている。
【0028】
なお、上記実施例では、前管11と後管31の両方が透明なガラス管であったが、前管11は透明でなくてもよく、また、ガラス管でなくてもよい。後管31も、全部が透明でなくてもよく、検知剤35の変色量が視認できればよい。
また、担体は特に限定されず、シリカゲル粒子、アルミナ粒子、珪藻土粒子、樹脂粒子、及びそれらの混合物を用いることができる。更に、粒子に限定されず繊維状であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明のガス検出装置の一例を説明するための断面図
【図2】開口を形成した状態のガス検出装置を説明するための断面図
【図3】前処理部を説明するための断面図
【図4】検出部を説明するための断面図
【図5】連結管を説明するための断面図
【図6】2層構造の前処理剤が充填された前処理部を説明するための断面図
【図7】本発明のガス検出装置の他の例を説明するための断面図
【符号の説明】
【0030】
1、5……ガス検出装置 10……前処理部 11……前管 15、55……前処理剤 19、39…切断線 20……連結管 30……検出部 31……後管 32……目盛 35……検知剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
両端が塞がれた前管内に化学物質が配置された前処理部と、
両端が塞がれた後管内に、前記化学物質と化学反応する他の化学物質が配置された検出部と、
前記前管の一端と前記後管の一端とが挿入され、折り曲げ可能な柔軟性と、内部を観察可能な透明性とを有する連結管と、
前記前管と前記後管の、前記連結管に挿入された部分に形成され、前記前管先端と前記後管先端とをそれぞれ折り欠くための切断線とを有し、
前記前管の両端と前記後管の両端が折り欠けられ、開口が形成された状態では、前記前管と前記後管が、前記連結管を介して連通され、前記前管を通過した試料ガスが、前記後管内を通過するように構成されたガス検出装置。
【請求項2】
前記後管内には、試料ガス中に含有される検出対象ガスの濃度に応じて変色する検知剤が配置された請求項1記載のガス検出装置。
【請求項3】
前記後管は、少なくとも一部が透明で、前記後管の内部を観察可能に構成された請求項2記載のガス検出装置。
【請求項4】
前記後管はガラス管で構成された請求項3記載のガス検出装置。
【請求項5】
前記後管には、前記検知剤の変色量が分かる位置に、目盛りが配置された請求項3又は請求項4のいずれか1項記載のガス検出装置。
【請求項6】
前記前管内には、前記試料ガス中の検出対象ガス濃度と前記検知剤の変色量の関係を変化させる妨害物質を除去する除去成分が含有された前処理剤が配置された請求項2乃至請求項5のいずれか1項記載のガス検出装置。
【請求項7】
前記前処理剤には、前記試料ガス中の検出対象ガスと反応し、前記検知剤を変色させる反応物質を発生させる反応成分が含有された請求項2乃至請求項5のいずれか1項記載のガス検出装置。
【請求項8】
前記反応物質は前記検知剤をpH変化させる酸性ガス又はアルカリ性ガスであり、前記検知剤は、pH変化で変色する指示薬を含有する請求項7記載のガス検出装置。
【請求項9】
前記検知剤は、前記反応ガスと化学反応して変色する反応成分を含有する請求項7記載のガス検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−122193(P2008−122193A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−305443(P2006−305443)
【出願日】平成18年11月10日(2006.11.10)
【出願人】(390010364)光明理化学工業株式会社 (18)
【Fターム(参考)】