説明

ガス検知器付ヘルメットおよびヘルメット装着用ガス検知器

【課題】 装着者に確実に警報を伝達することのできるガス検知器付ヘルメットおよびヘルメット装着用ガス検知器を提供することにある。
【解決手段】 このガス検知器付ヘルメットは、ヘルメットと、このヘルメットの被装着部にガス検知器装着用連結部材を介して装着された、検知対象ガスを検知したときに作動する振動子を有するガス検知器とよりなりる。ヘルメット装着用ガス検知器は、任意のヘルメットについて上記のガス検知器付ヘルメットを実施するため、このガス検知器をヘルメットに着脱自在に装着される被連結部材と、前記ガス検知器を被連結部材に着脱自在に連結するためのガス検知器装着用連結部材とよりなる。ガス検知器装着用連結部材は、前記ガス検知器と微小移動可能に連結されるガス検知器連結部と、ヘルメットの被装着部に微小移動可能に連結される装着用連結部とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス検知器付ヘルメットおよびヘルメット装着用ガス検知器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
有毒ガスや酸欠状態の危険から作業員などの安全を確保するために、検知対象ガスの状態を検知したときに発音手段を作動させ、発生した警報音を作業員などに認識させるヘルメット装着用警報装置が提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、このヘルメット装着用警報装置では、作業現場などにおける騒音が大きい場合には、ヘルメット装着者が警報音を確実に認識し判別することが困難であるという問題点がある。
【0004】
【特許文献1】特開平7−239982号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであって、その目的は、ヘルメット装着者にガス検知器による警報を確実に伝達することのできるガス検知器付ヘルメットおよびヘルメット装着用ガス検知器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のガス検知器付ヘルメットは、ヘルメットと、このヘルメットの被装着部にガス検知器装着用連結部材を介して装着された、検知対象ガスを検知したときに作動する振動子を有するガス検知器とよりなり、
前記ガス検知器装着用連結部材は、前記ガス検知器と微小移動可能に連結されるガス検知器連結部と、ヘルメットの被装着部に微小移動可能に連結される装着用連結部とを有することを特徴とする。
【0007】
本発明のガス検知器付ヘルメットにおいては、ガス検知器装着用連結部材は、弾性金属板が湾曲部を介して折り返されて形成されたU字状のクリップ部材よりなり、
当該クリップ部材の湾曲した頂部によるガス検知器連結部が、ガス検知器に設けられた連結用ピンに遊嵌されることにより、当該ガス検知器装着用連結部材とガス検知器とが微小移動可能に連結されると共に、
ヘルメットの被装着部は、ヘルメットの外面に位置されるよう設けられた被連結部材により構成されており、当該被連結部材に、前記クリップ部材の頂部から伸びる一方の舌片が遊嵌状態に係合されることにより、当該ガス検知器装着用連結部材とヘルメットの被装着部とが微小移動可能に連結される構成とすることができる。
【0008】
そして、ヘルメットの被装着部は、弾性金属板により形成された被連結部材により構成されており、当該被連結部材は、当該被連結部材をヘルメットの周縁部に着脱自在に固定するための固定用挟圧部と、クリップ部材が遊嵌状態に係合されるクリップ受け部分とを有する構成とされることが好ましい。
【0009】
本発明のヘルメット装着用ガス検知器は、検知対象ガスを検知したときに作動する振動子を有するガス検知器と、
ヘルメットに着脱自在に装着される被連結部材と、前記ガス検知器を被連結部材に着脱自在に連結するためのガス検知器装着用連結部材とよりなり、
前記ガス検知器装着用連結部材は、前記ガス検知器と微小移動可能に連結されるガス検知器連結部と、被連結部材に微小移動可能に連結される装着用連結部とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明のガス検知器付ヘルメットにおいて、ガス検知器において検知対象ガスが検知されると振動子が作動するが、当該ガス検知器に対してガス検知器装着用連結部材(以下において、単に「連結部材」ともいう。)が微小移動可能に連結されているために、ガス検知器それ自体が当該連結部材に対して振動体として作用すると共に、更に、当該連結部材がヘルメットの被装着部に対して微小移動可能に連結されているために、当該ヘルメットに対して、ガス検知器および連結部材の連結体が複合的振動体として作用し、結局、ガス検知器の振動子の振動によって、連結部材における2つの微小移動可能な連結によって順次に大きい振動が発生されるので、ヘルメットに対しては、その被装着部を介して大きく増幅された振動が伝達されることとなる。
その結果、ヘルメット装着者は、頭部に装着しているヘルメットの全体が振動することにより、頭部に大きな振動を直接的に受けることとなる。このように、本発明によれば、ガス検知器が検知対象ガスを検知したときの警報をヘルメット装着者に確実に伝達することができる。
【0011】
また、本発明のヘルメット装着用ガス検知器によれば、任意のヘルメットについて上記のガス検知器付ヘルメットを実施することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1は、本発明のガス検知器付ヘルメットの一例における要部を示す説明用断面図であり、10はヘルメットであり、このヘルメット10には、ガス検知器装着用連結部材30を介して、ガス検知器40が装着されている。
【0013】
図2は、ガス検知器40の正面図であって、中央に表示部41が配置されると共に、その左右にガスセンサー42およびブザー43が配置されており、更に、上部に発光部44が設けられている。また、このガス検知器40は振動モータよりなる振動子46(図3参照)を内蔵しており、ガスセンサーが検知対象ガスを検知したとき、例えば特定の有毒ガスや酸素濃度の低下を検知したときに、当該振動子46が作動して振動による警報を発すると共に、ブザー43による警報音および発光部44による警報光が発せられる。47は操作部である。
【0014】
図3は、ガス検知器40に連結部材30が連結された状態を示す説明用縦断側面図であり、図4は、連結部(図2のX部分)の拡大図である。
この例において、連結部材30は、弾性金属板が変形加工されて形成された、全体が大略U字状のクリップ部材よりなり、頂部湾曲部31が、ガス検知器40の背面上部に設けられた、当該ガス検知器40の上縁に沿って水平方向に伸びる連結用ピン50と遊嵌状態に係合されている。具体的には、当該クリップ部材の頂部湾曲部31が連結用ピン50の径より遙かに大きい曲率半径で湾曲しており、連結用ピン50が設けられているガス検知器40の間隙部48の幅は、クリップ部材を形成する弾性金属板の厚みより大きいものとされている。
【0015】
そして、連結部材30に係るクリップ部材の頂部湾曲部31から伸びる2枚の舌片のうち、ガス検知器40側に位置される内側片32の先端(図3における下端)32Aは、ガス検知器40の下縁に沿って水平方向に伸びる、前記連結用ピン50と同様の被係合ピン52に弾性的に係止されており、この係止点を中心に、当該連結部材30がガス検知器40に対して微小移動可能とされている。
【0016】
また、連結部材30に係るクリップ部材の頂部湾曲部31から伸びる舌片のうちの外側に位置される外側片33は、図5にも示されているように、先端(下端)部33Aが半円形に形成されていると共に、先端近傍の位置に、内側片32との間に間隔を形成するための内方突出部33Bが形成されている。
【0017】
一方、図1に示されているように、ヘルメット10にはガス検知器40を装着するための被装着部が設けられている。具体的には、この被装着部は、弾性金属板が変形加工されて形成された被連結部材20により構成されている。
この被連結部材20は、下方側部分にヘルメット10に当該被連結部材20を装着するための固定用挟圧部21が形成されると共に、上方側部分にはヘルメット10の外面に位置するよう、クリップ受け部分22が形成されている。
【0018】
被連結部材20の固定用挟圧部21は折り返された形態を有し、この固定用挟圧部21が、ヘルメット10の周縁部10Aをその弾性力によって挟圧するよう着脱自在に固定され、これにより当該被連結部材20がヘルメット10に装着されている。
【0019】
また、被連結部材20のクリップ受け部分22は、ヘルメット10の外表面に沿って固定用挟圧部21から上方に伸びる中央基板部23の上方部分が、中央基板部23の延長部分である背面側板状部と、この背面側板状部と離間して平行に伸びる表面側板状部とを有する、断面が矩形枠状でその上端が開口した状態の矩形筒状体として形成されており、この矩形筒状体の表面側板状部により、クリップ受け部分22が形成されている。このクリップ受け部分22の上端縁は、略水平方向に伸びるものとされ、その幅方向の寸法は、連結部材30の外側片33の横幅より大きいものとされている。
【0020】
そして、連結部材30における外側片33が、その先端から、被連結部材20のクリップ受け部分22に挿入されることにより、連結部材30が被連結部材20に遊嵌状態に係合されている。
具体的には、被連結部材20のクリップ受け部分22に係る矩形枠部分の内部間隔、すなわち、被連結部材20の表面側板状部と背面側板状部との間の離間距離は、連結部材30に係る弾性金属板の厚みより大きいものとされると共に、被連結部材20のクリップ受け部分22の弾性金属板の厚みが、連結部材30の内側片32と外側片33との間の離間距離よりも小さいものとされ、これにより、当該連結部材30が、被連結部材20に対して微小移動可能に連結された状態とされている。
【0021】
上記のガス検知器付ヘルメットは、ヘルメット10と、ガス検知器40と、ヘルメット10に被装着部を形成するための被連結部材20と、ガス検知器40を被連結部材20に連結するための連結部材30とにより構成されるものである。
そして、被連結部材20を、その固定用挟圧部21がヘルメット10の周縁部10Aを挟圧するよう固定することにより、被装着部が設けられる。
一方、連結部材30のクリップ部材をその弾性力に抗してその内側片32と外側片33とを若干離間させた状態で、当該クリップ部材をガス検知器40の連結用ピン50に係る間隙部48に通すことにより、ガス検知器40に連結部材30が遊嵌状態に係合され、これにより、ガス検知器40と連結部材30とが微小移動可能に連結される。
更に、連結部材30の外側片33を、被装着部を構成する被連結部材20のクリップ受け部分22に係る矩形枠部分に挿通させることにより、連結部材30が遊嵌状態に係合され、これにより、連結部材30とヘルメット10の被装着部とが微小移動可能に連結される。
【0022】
このような構成のガス検知器付ヘルメットは、ヘルメット10が作業員などの頭部に装着されて使用される。この使用状態においては、ヘルメット10の被装着部を構成する被連結部材20における、ヘルメット10の外面に位置された矩形枠部分のクリップ受け部分22に、重力の作用により、連結部材30の頂部湾曲部31に係る個所が係合すると共に、外側片33の先端が被連結部材20の中央基板部23の下方部分に対接することにより、ガス検知器40と連結部材30との連結体が、半ば吊り下げられた状態で保持されることとなる。
【0023】
また、ガス検知器40と連結部材30との連結体においては、連結部材30に係るクリップ部材が、頂部湾曲部31から伸びる内側片32と外側片33が、当該外側片33の下部に形成された内方突出部33Bが内側片32に弾性的に当接することにより、細長い環状体が形成され、この環状体に連結用ピン50が挿通された状態とされていると共に、内側片32の先端が被係合ピン52に係合することにより、連結部材30がガス検知器40に、いわゆるガタのある状態で連結された状態とされている。
【0024】
当該ガス検知器付ヘルメットの使用状態において、ヘルメット装着者の周囲環境における検知対象ガスが所定の濃度となったとき、例えば危険性ガスの濃度が高くなって許容値を超えたとき、あるいは酸素濃度が低下して許容値を下回ったときには、ガス検知器40においてその検知対象ガスの状態が検知され、それにより振動子46が作動し、また、他の警報機構が作動する。
【0025】
このガス検知器付ヘルメットにおいては、ヘルメット10に対して、ガス検知器40と連結部材30との連結体の全体が微小移動可能に連結された状態であり、かつ、当該ガス検知器40と連結部材30との連結体において、連結部材30に対してガス検知器40が微小移動可能に連結された状態である。
このため、ガス検知器40の振動子46が作動すると、連結部材30に対してガス検知器40それ自体が振動体として振動することとなり、このガス検知器40の振動は、連結部材30が遊嵌状態に係合していることから、増幅された状態で連結部材30に伝達されることとなる。
【0026】
一方、当該連結部材30は、ヘルメット10に対して微小移動可能に連結された状態であるから、当該連結部材30の振動が増幅された状態で、被連結部材20による被装着部20を介してヘルメット10に伝達されることとなり、結局、当該ヘルメット10に対して、ガス検知器40と連結部材30との連結体が複合的振動体として作用することとなる。
【0027】
そして、ガス検知器40の振動子46を振動源とする振動により、連結部材における2つの微小移動可能な連結によって順次に大きい振動が発生されるので、ヘルメット10に対しては、その被装着部を介して、大きく増幅された振動が伝達されることとなる。その結果、ヘルメット装着者は、頭部に装着しているヘルメット10の全体が大きくまたは強く振動するために、その頭部に直接的に大きな振動が伝達されることとなる。
このように、本発明のガス検知器付ヘルメットによれば、ガス検知器40が検知対象ガスを検知したときに、ヘルメット装着者に確実に警報を伝達することができる。
【0028】
また、上記のガス検知器付ヘルメットにおいては、連結部材30が環状体として構成されて、これに連結用ピン50が挿通されてガス検知器40との連結が達成されると共に、同時に被連結部材20の矩形枠部分が同様に連結部材30に係る環状体が通過する状態とされているので、ヘルメット10の天地(上下方向)が逆にされた場合にも、ヘルメット10の被連結部材20からの連結部材30の脱落、並びに、当該連結部材30からのガス検知器40の脱落が生ずることがない。
【0029】
以上のように、本発明においては、ヘルメットに連結部材を介してガス検知器を装着してなるガス検知器付ヘルメットにおいて、連結部材とガス検知器との間の連結、並びに、連結部材とヘルメットの被装着部との間の連結を、いずれも、遊嵌状態に係合する構成により微小移動可能な状態で実現することにより、ガス検知器の有する振動子の振動が、ガス検知器と連結部材との連結体の大きな複合的振動としてヘルメットに伝達され、その結果、ヘルメット装着者に対して確実に警報を伝達することができる。
【0030】
これに対して、振動子を有するガス検知器を連結部材に固定して連結し、この連結部材をヘルメットに対して固定して連結した構成では、確実に振動子の振動をヘルメットに伝達することはできても増幅されるようなことはなく、従って、ヘルメット装着者に対して警報の伝達の確実性が低いものである。
【0031】
本発明において、微小移動可能な連結状態を達成するための具体的な構成や、当該微小移動可能な距離の範囲は、特に規定されるべきものではなく、振動伝達系を構成するものにおいて、増幅作用が得られるものであればよい。
【0032】
以上、本発明の具体的な一例について説明したが、本発明においては、種々の変更を加えることが可能である。
例えば、連結部材および被連結部材の連結の態様は、特に上記の例に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明のガス検知器付ヘルメットの一例における要部を示す説明用断面図である。
【図2】ガス検知器の正面図である。
【図3】ガス検知器に連結部材が連結された状態を示す説明用縦断側面図である。
【図4】連結部(図2のX部分)の拡大図である。
【図5】本発明の一例におけるガス検知器の背面図である。
【符号の説明】
【0034】
10 ヘルメット
10A ヘルメットの周縁部
20 被連結部材
21 固定用挟圧部
22 クリップ受け部分
23 中央基板部
30 ガス検知器装着用連結部材
31 頂部湾曲部
32 内側片
32A 下端
33 外側片
33A 先端部
33B 内方突出部
40 ガス検知器
41 表示部
42 ガスセンサー
43 ブザー
44 発光部
46 振動子
47 操作部
48 間隙部
50 連結用ピン
52 被係合ピン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘルメットと、このヘルメットの被装着部にガス検知器装着用連結部材を介して装着された、検知対象ガスを検知したときに作動する振動子を有するガス検知器とよりなり、
前記ガス検知器装着用連結部材は、前記ガス検知器と微小移動可能に連結されるガス検知器連結部と、ヘルメットの被装着部に微小移動可能に連結される装着用連結部とを有することを特徴とするガス検知器付ヘルメット。
【請求項2】
ガス検知器装着用連結部材は、弾性金属板が湾曲部を介して折り返されて形成されたU字状のクリップ部材よりなり、
当該クリップ部材の湾曲した頂部によるガス検知器連結部が、ガス検知器に設けられた連結用ピンに遊嵌されることにより、当該ガス検知器装着用連結部材とガス検知器とが微小移動可能に連結されると共に、
ヘルメットの被装着部は、ヘルメットの外面に位置されるよう設けられた被連結部材により構成されており、当該被連結部材に、前記クリップ部材の頂部から伸びる一方の舌片が遊嵌状態に係合されることにより、当該ガス検知器装着用連結部材とヘルメットの被装着部とが微小移動可能に連結される構成とすることができることを特徴とする請求項1に記載のガス検知器付ヘルメット。
【請求項3】
ヘルメットの被装着部は、弾性金属板により形成された被連結部材により構成されており、当該被連結部材は、当該被連結部材をヘルメットの周縁部に着脱自在に固定するための固定用挟圧部と、クリップ部材が遊嵌状態に係合されるクリップ受け部分とを有する構成とされることを特徴とする請求項2に記載のガス検知器付ヘルメット。
【請求項4】
検知対象ガスを検知したときに作動する振動子を有するガス検知器と、ヘルメットに着脱自在に装着される被連結部材と、前記ガス検知器を被連結部材に着脱自在に連結するためのガス検知器装着用連結部材とよりなり、
前記ガス検知器装着用連結部材は、前記ガス検知器と微小移動可能に連結されるガス検知器連結部と、被連結部材に微小移動可能に連結される装着用連結部とを有することを特徴とするヘルメット装着用ガス検知器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−154365(P2007−154365A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−351935(P2005−351935)
【出願日】平成17年12月6日(2005.12.6)
【出願人】(000250421)理研計器株式会社 (216)
【Fターム(参考)】