説明

ガス検知装置

【課題】簡易な構成で、複数のガス反応性色素を並行して経時的に測定するガス検知装置を提供する。
【解決手段】
ガス検知装置1は、ケース2、筒3、ガスセンサヘッド4、センサ紙5、排気弁6を備える。ケース2は、一方が開放している開口部と、支持ローラ231〜234、軸受241〜244、ピニオンギア25、モータ26を備え、開放部から挿入した筒3を回転可能に支持し、筒3を回転させる。筒3は、透明、円柱のケースであり、一方が開放した開口部30と、筒3を回転可能にしつつ排気弁6を隙間なく詰めるゴム31を備える。センサ紙5は、回転検出用色素50、ガス反応性色素511〜51nが台紙52に塗布されたものであり、筒3内のガスの濃度をこれらの色素の色の変化により検出する。ガスセンサヘッド4は、光ファイバ41により、これらガス反応性色素に光を照射し、反射色の変化をRGBの光の強度として受光素子で検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス反応性色素を利用してガスを検知する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、所定のガスに触れると色が変化するガス反応性色素を利用してガスを検知する装置が開発されている。特許文献1、2には、ガス反応性色素の性質を利用し、光を当てて、反射光の強度を測定する構成が開示されている。また、特許文献3、非特許文献1には、多種のガス反応性色素をアレイ状に並べた用紙にガスを触れさせる装置が開示されている。この特許文献では、変色したこの用紙をスキャナで読み取って、画像解析により、ガスの種類や濃度を検知する旨の記載がある。
【特許文献1】特開平10−62350号公報
【特許文献2】特開2000−131225公報
【特許文献3】米国特許第6368558B1号明細書
【非特許文献1】Testing (and Tasting) Beer on Sight(http://www.photonics.com/content/spectra/2006/September/applications/84217.aspx)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1、2の構成では、複数種類のガス反応性色素を使って検知する構成については示されていないから、複数種類のガスを検出するには、ガス反応性色素を取り替える必要があった。特許文献3、非特許文献1の構成では、ユーザがガス反応性色素を並べた用紙をスキャナで読み取る操作が必要であるから、自動化できない。また、手作業が介在するから、時間の経過に伴う変化を検出するには、定期的な手作業が必要である問題があった。さらに、特許文献3、非特許文献1の構成では、ガス反応性色素をアレイ状に並べているから、どの位置にあるのかを識別し、抽出するために、別途スキャナ、画像処理が必要であり、複雑で高価な構成が必要であって、かつ小型化できない問題があった。
【0004】
そこで、本発明は、簡易な構成で、複数のガス反応性色素を同時に経時的に測定するガス検知装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は以下のとおり構成している。
【0006】
(1) 複数のガス反応性色素が環状に並べられた色素部材と、
前記色素部材の色を観測するセンサと、
前記センサが観測する観測位置を前記ガス反応性色素が並んでいる方向に沿って順番に移動させる移動手段と、を備える。
【0007】
この構成では、移動手段により、観測位置を、前記ガス反応性色素それぞれに順番に移動させており、センサが色素部材の色を観測する。移動手段は、照射手段が照射する照射位置を、ガス反応性色素それぞれに巡回しているから、センサは、複数のガス反応性色素の経時的な変化を並行して自動的に測定することができる。
【0008】
また、移動手段が照射位置をそれぞれのガス反応性色素に移動させているので、センサは、1つの点について、ガス反応性色素についての光の強度また色相等を直接測定することができる。従来のように、アレイ状に並べたガス反応性色素をマトリクス状のビットマップ画像として測定する必要がないから、所定のガス反応性色素の位置を抽出する必要がない。2次元のビットマップから、所定のガス反応性色素の色を抽出するような画像処理が不要になるから、簡易かつ高速に測定することができる。
【0009】
また、この構成では、複数のガス反応性色素が環状に並べられている。ここで、環状に並べるとは、例えば、(A)筒状体、(B)1周のベルトにガス反応性色素を並べるか、(C)平面の上に、閉じた輪の形等に並べることができる。これにより、移動手段は、1方向のみの駆動手段のみによって構成でき、簡易に移動させることができる。例えば、(A)については移動手段を(2)の構成のような筒と筒を回転させるモータとすることができる。また、(B)については移動手段を(3)の構成のようにローラを回転させるモータとすることができる。また、(C)については、移動手段を、センサを輪の形に沿って回転させるアームや円盤とすることができる。
【0010】
また、「複数のガス反応性色素が環状に並べられている」とは1列でもよく、複数列でもよい。
【0011】
また、移動手段は、ガス反応性色素を移動させるようにしてもよく、照射手段を移動させるようにしてもよい。センサの観測位置が前記ガス反応性色素それぞれに巡回すればよい。また、センサは、色の波長を観測するものでもよく、3原色で分離してそれぞれの強度を観測するものでもよい。結果的に色を観測できるものであればよい。
【0012】
(2) 前記色素部材は、中空の筒状部材で構成され、
前記ガス反応性色素は、筒状部材の円周方向に沿って前記筒状部材の内側に順番に並べられており、
前記移動手段は、前記筒を回転させる回転機構を備え、該回転機構が固定された前記センサに対して、前記筒を回転させることにより、前記観測位置を前記ガス反応性色素それぞれに順番に移動させる。
【0013】
この構成では、移動手段を、前記筒を回転する回転機構という簡易な構成で構成しており、前記照射位置を前記ガス反応性色素それぞれに巡回して移動させることができる。また、筒を回転させているので、センサに触れるガスの偏りが生じにくい。
【0014】
(3) 前記色素部材は、複数のローラに巻かれた1周のベルトであって、
前記ガス反応性色素は、前記ベルトの移動方向に沿って順番に並べられており、
前記移動手段は、前記ローラと、前記ローラの一部または全部をそれぞれ回転する回転機構を備え、固定された前記センサに対して、前記ローラを回転させることにより、前記照射位置を順番に前記ガス反応性色素それぞれに移動させるようにしてもよい。
【0015】
(4) 前記ガス反応性色素は、筒状部材の内側に、筒状部材に対して着脱可能に形成された、シート状部材の上に形成されているようにしてもよい。
【0016】
この構成では、ガス反応性色素の化学変化が生じている状態でも、シート状部材を交換すれば、直ちにガス反応性色素の状態をリセットでき、新たな測定をする前の環境に左右されずに別の気体を測定できる。
【0017】
なお、この初期データは、測定前に予め測定するようにプログラムして測定した物を用いてもよいし、予め測定して記憶したデータを用いたものでもよい。
【0018】
(5) 前記色素部材は、前記ガス反応性色素のほかに、所定色の色素が並べられており、
前記移動手段は、前記観測位置を前記ガス反応性色素上それぞれに一順するごとに、前記所定色の色素にも前記観測位置を移動させるようにしてもよい。
【0019】
この構成では、前記照射位置を前記ガス反応性色素上それぞれに一順するごとに、前記所定色の色素にも照射位置を移動させるので、センサが測定しているガス反応性色素を前記所定色の色素を基準として、その位置から巡回したガス反応性色素の数を数えることで容易に特定することができる。したがって、移動手段が移動させた照射位置を測定するために別の構成を備える必要がないので小型化できる。例えば、(2)の構成であれば、筒の回転角度、(3)の構成であれば、ローラの回転角度を検出するエンコーダ等は必要がなくなる。センサが測定しているガス反応性色素を特定した状態で、ガス反応性色素の変化を測定できるから、従来のような後処理、例えば画像処理をする必要がなく、直ちに特定のガス反応性色素の変化を測定できる。
【0020】
(6) 各ガス反応性色素が反応していない状態で、予め、前記移動手段により前記観測位置を前記ガス反応性色素各々に巡回した時にセンサが測定した初期データと、各ガス反応性色素にガスを触れさせた状態で前記移動手段により前記観測位置を各ガス反応性色素に巡回してセンサが測定した測定データと、の差分データを測定結果として出力する出力手段をさらに備えるようにしてもよい。
【0021】
この構成では、各ガス反応性色素が反応していない状態で測定された初期データと、前記ガスを触れさせない初期状態を解除した状態で測定した測定データとの差分データを測定結果として出力する。したがって、周囲の外乱や初期状態で存在する色の状態がキャンセルされ、ガス反応性色素の色の変化だけを抽出することができる。したがって、この構成によれば、より正確にガス反応性色素の変化を測定できる。
【0022】
(7) 前記センサは、
前記ガス反応性色素のいずれかに光を照射する照射手段と、
前記照射手段により照射した光が前記ガス反応性色素に反射して戻ってきた光のうち、所定波長の光を通すフィルタと、
前記フィルタを通した光の強度を信号に変換する受光素子と、を備えるようにしてもよい。
【0023】
この構成によれば、光の色を例えば3原色の強弱として観測できる。
【発明の効果】
【0024】
本発明のガス検知装置によれば、簡易な構成で、複数のガス反応性色素の色を並行して経時的に測定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
<本実施形態の呼気収集装置の概要説明>
図1を用いて、第1実施形態のガス検知装置1の外側の構成について説明する。ガス検知装置1は、ケース2、筒3、ガスセンサヘッド4、センサ紙5、排気弁6を備えている。
【0026】
ケース2は、筒3を内蔵して回転支持するケースである。ケース2は、ケース2の本体20と、本体20を支持する脚21,22、筒3を回転可能に支持する支持ローラ231〜232、支持ローラ231〜232を回転可能に支持する軸受241〜244、支持ローラ231に押し付けられた状態で噛み合うピニオンギア25、ピニオンギア25を回転させるモータ26を備える。
【0027】
ケース2の本体20は、筒状体であって一方の側に開口部(図2の開口部29に相当)を有しており、ここに筒3が挿入されている。支持ローラ231は、筒3を滑らないように支持するため、例えばゴム、弾性体で構成する。また、支持ローラ231、筒3とで噛み合う歯車を構成してもよい。なお、支持ローラ231〜232の奥にも、支持ローラ231,232と同様に、支持ローラ233〜234(図3参照。)、これを支持する軸受を備える。
【0028】
モータ26は、ピニオンギア25を回転し、ピニオンギア25は、これと噛み合う支持ローラ231を回転させる。支持ローラ231が回転することにより、ケース2の内側の筒3が回転する。
【0029】
筒3は、透明の中空状の筒状体であり、例えばプラスチック、樹脂で構成する。筒3内部には、センサ紙5が丸めて挿入されている。
【0030】
ガスセンサヘッド4は、光ファイバ41、受光素子42、ケーブル420、遮蔽材43、支持部材44を備え、筒3内部のセンサ紙5に光を照射して、センサ紙5に照射した光の反射光から、センサ紙5の色を検出する。光ファイバ41は、筒3内部のセンサ紙5に光を照射する。受光素子42は、センサ紙5に照射した光の反射光を照射する。遮蔽材43は、光が外部に漏れないようにするケースである。ケーブル420は、受光素子42から出力された信号を外部に伝送する。
【0031】
排気弁6は、その先端部がケース2、筒3に差し込まれており、排気弁6の後端は、吸引機に接続されている。これにより、図1の左側からガスを吸引し排気弁6から排出して、空気(ガス)の流れを作り出し、ガスをセンサ紙5にさらす。
【0032】
図2のガス検知装置1の内部の構成について説明する。図2は、ガス検知装置1の分解図である。
【0033】
図2に示すように、ケース2の開口部29には、一方が開放した開口部30を有する筒3が挿入されている。このとき支持ローラ231〜232(図4に示す裏側のローラ233、234も同様)は、筒3に押し付けて支持する。排気弁6は、ケース2に筒3を入れた状態で、貫通して差し込まれている。また、筒3の開放していない面にはケース2の中心軸に対して伸縮可能なゴム31が張られている。排気弁6は、ゴム31に差し込まれている。これにより、ゴム31は、筒3を回転可能にしつつ、排気弁6と摺動して排気弁6を隙間なく詰めることができる。したがって、吸引機で吸引したときに、排気弁6から確実にガスを吸引することができる。これにより、筒3の開放部30にガスを取り入れることができる。また、排気弁6は、筒3が回転しても排気弁6が連れ回りしないように、ケース2に固定されている。
【0034】
筒3には、センサ紙5が丸められて挿入されている。センサ紙5は、台紙52の上に、互いに異なる種類のガス反応性色素511〜51n(nは自然数)と、回転検出用目印50とが、塗布または印刷等により長軸状に形成されたものである。センサ紙5は、ガス反応性色素511〜51nが筒3の内側を向くように挿入されている。これにより、また、筒3内に空気が流れたときに、ガス反応性色素511〜51nが反応しやすくなる。センサ紙5の台紙52は、ガスセンサヘッド4が筒3の外側から光ファイバ41により光を照射した場合に、台紙52に関して裏側のガス反応性色素511〜51nの色を検出できるようにする。例えば、透明または半透明のフィルタ、または光を通す薄い紙等とする。
【0035】
また、ガス反応性色素511〜51n、回転検出用色素50は、センサ紙5を筒3に挿入したときに、筒3の円周方向に沿うように平行に並べられている。このように並べられているので、モータ26により筒3を1周分回転させたときに、ガスセンサヘッド4は、センサ紙5上のガス反応性色素511〜51nの色をすべて読み取ることができる。
【0036】
回転検出用目印50は、筒3が1周回転したことを検出するための目印である。回転検出用目印50は、ガス反応性色素511〜51nと異なる所定の色に印刷されている。回転検出用目印50の色を、例えば黒とすることができる。
なお、回転検出用色素50の位置は、センサ紙5の端に限らず、センサ紙5を丸めた円周のどこかにあればよい。
【0037】
図3を用いて、ガス検知装置1がガス反応性色素511〜51nを検出する様子について説明する。図3は、ガス検知装置1のガスセンサヘッド4側から見た透視図である。
なお、図3では、説明の容易のため、支持ローラ231、232を直径方向に移動した図を示している。また、図3では、図示の容易のため、筒3とセンサ紙5を離して描いているが、実際には、センサ紙5を筒3に固定する。後述の図4も同様である。
【0038】
図3に示すように、支持ローラ231、232は、筒3と当接しており、筒3を回転可能に支持する。筒3には、センサ紙5が挿入されており、筒3の円周方向に沿って、ガス反応性色素511〜51nが並んでいる。
【0039】
また、受光素子42は、RGBの3色の光の強度を検出する素子が筒3の円周方向に対し垂直な方向に並べられている。また、ガス反応性色素511〜51は、これに対応して筒3の円周方向に垂直に長軸に形成している。ガス反応性色素511〜51nのいずれかがガスセンサヘッド4の先を通過するとき、RGBの3色の光の強度を同時に検出でき、データ処理がしやすい。ここで、ガス反応性色素511〜51nの長軸方向の長さは、少なくとも受光素子42のRGBを測定する素子が受光できる長さとする。
【0040】
なお、このような受光素子42、ガス反応性色素511〜51nの配置は、本発明を実施する上で必ずしも必須でなく、ガス反応性色素511〜51nの光を順に検出できればよい。また、上記のとおり、移動方向に垂直に所定幅のガス反応性色素511〜51nを設ければ、この方向に長軸に設ける必要はく、RGBの3色の光の強度を同時に検出でき、RGBの3色の光の強度を同時に検出できるから、データ処理がしやすい。
【0041】
図4を用いて、ガスセンサヘッド4の周囲の構成について説明する。図4(A)は、ガスセンサヘッド4の拡大図である。図4(B)は、図1のA−A断面図である。ただし、軸受241〜244、ピニオンギア25、モータ26は、図1に示しており、図示を省略している。また、ケース2は、図1で示した支持ローラ231、232のほかに支持ローラ233、234とそれを支持する図示しない軸受(軸受243〜244と同様の構成である。)を備えて、筒3を支持する。
【0042】
図4(A)に示すように、ケース44は、支持部材45を介して遮蔽材43に固定されている。図4(B)に示すように、支持部材44の先端には受光素子42を格納しており、後端には、ケーブル420を引き出している。光ファイバ41で照射した光は、センサ紙5で反射して、反射した光の一部が受光素子42に入射する。遮蔽材43は、受光素子42に外乱光が入るのを防ぐ。
【0043】
ここで、以上で示した構成により生じるガス検知装置1の機能について説明する。ガス検知装置1は、モータ26により筒3を回転させている間、センサ紙5の色をRGBの強度として測定できる。また、筒3を常に回転しておけば、ガス反応性色素511〜51nの色の変化を、自動的に、時間経過に沿って経時的に、同時平行で測定でき、ガスの濃度、種類を測定できる。
【0044】
また、この実施形態のガス検知装置1では、ガスセンサヘッド4がガス反応性色素511〜nのうちの1点という微小部分を測定しているので、このヘッドを近接することができる。したがって、レンズ等の光学的構成が不要になり、小型化できる。また、スキャナを用いて手動で画像を取り込む必要がない。また、筒3を回転させているので、ガスセンサヘッド4に触れるガスの偏りが生じにくい。
【0045】
また、この構成では、ガス反応性色素511〜51nのそれぞれの色の情報のみを直接測定することができる。したがって、複数のガス反応性色素の測定をする場合に、従来のようにアレイ状に並べたガス反応性色素を画像として取得するビデオや、スキャナが必要がなく、画像処理して所定のアレイの色を抽出する構成が必要ない。したがって、ガス検知装置1を小型化できる。また、ビットマップから、所定のガス反応性色素の色を抽出するような画像処理が不要になるから、簡易かつ高速に測定することができる。
【0046】
また、回転検出用色素50は、筒3の回転制御を簡単にすることができ、ガス検知装置1を小型化できる。ガス反応性色素511〜51nのうちどのガス反応性色素の色を測定しているかは、回転検出用色素50の色を観測したときから、ガス反応性色素511〜51nをいくつ観測したかを数えることで識別できる。この回転検出用色素50は、本発明の実施に必須ではないが、この構成の回転検出用色素50を用いれば、回転角度を知る必要がなく、エンコーダも不要になり、簡易に構成でき、小型化できる。
【0047】
次に、図5を用いて、受光素子42の構成例について説明する。受光素子42は、フォトダイオードとすることができ、例えば、赤フィルタRF、緑フィルタGF、青フィルタBF、ガラス基板421、透明伝導膜422、アルファモスシリコンpn結合423を備える赤フィルタRF、緑フィルタGF、青フィルタBFは、受光した光から赤、緑、青に相当する所定の波長の光を選択するフィルタである。ガラス基板421は、赤フィルタRF、緑フィルタGF、青フィルタBF、透明伝導膜422を構成するための土台である。アルファモスシリコンpn結合423は、p型の領域とn型の領域が接している部分で光起電力効果を生じさせ、光の強度を電圧に変換し、電極Cと、電極R、G、Bそれぞれとの間からこの電圧を取り出す。
【0048】
第1実施形態のガス検知装置1について補足する。
【0049】
観測前にガス反応性色素511〜51nがガスに反応していない状態で1周させておいて、予め光の強度パターン(R,G,B)を調べ、測定した(R,G,B)とこの強度パターン(R,G,B)との差分をとることにより、台紙52の色や外乱を除去するのが望ましい。これにより、外乱の影響を排除した正確な色の変化を測定できる。また、予め測定した光の強度パターン(R,G,B)との差分で測定すれば、ガス反応性色素511〜51nを測定しているか否かをより容易に識別できる。また、ガス反応性色素511〜51nの円周方向の幅、および間隔をそれぞれ等しくしておけば、さらに識別が容易になる。なお、この段落の説明は、後述の第2〜第4実施形態も同様に適用できる。
【0050】
第1実施形態のガス検知装置1では、センサ紙5に一列のガス反応性色素511〜51nを設けたが、筒3の円周方向に沿って複数列設けてもよい。第1実施形態の場合、複数のガスセンサヘッド4を設けるか、ガスセンサヘッド4の中に複数の受光素子42を設けるようにする。このようにすれば、同時に複数のガス反応性色素を測定でき、円周を小さくできるから、筒3を細くすることができ、ガス検知装置1をより小型化することができる。
【0051】
また、図4では、支持ローラを231〜241の4つで支持しているが、3つ以上であれば支持できる。以上で示した支持ローラ231〜234、ピニオンギア25、モータ26の構成は筒3を回転させる構成であるが、筒3を回転できれば、どのような駆動手段でもよいし、必ずしもケース2の本体20は必要がない。例えば筒3の中心に軸を通して、筒3の軸方向の両端で回転可能に軸支するようにしてもよいし、筒3をベルト、プーリーで駆動してもよいし、筒3に歯車の歯面を形成して動力を伝達してもよい。また、筒3とセンサ紙5を一体にしてもよい。ただし、筒3とセンサ紙5を着脱可能にすれば、筒3全体を交換しなくても、センサ紙5だけを交換すればよいので、新たな測定をする前に行った測定の影響を容易に除去できる。
【0052】
また、図5の受光素子42の例は一例であり、ガスセンサヘッド4として、ガス反応性色素511〜51nの色を検出できるのであればどのような構成でもよい。例えば、図5の他の構成で、3原色で分離してそれぞれの強度を観測するものでもよいし、色の波長を観測するものでもよく、結果的に色を観測できるものであればよい。
【0053】
また、筒3内にガスを通すことができれば、排気弁6に限らずどのような構成でもよい。例えば、排気弁6でなく、単に筒3、ケース2の両端を開放した状態にすることも可能である。
また、ケース2の本体20は、透明であってもなくてもよい。筒3は、光ファイバ41の光が当たる部分が透明であればよく、ほかの部分は透明である必要はない。
【0054】
次に、図6を用いて、第1の実施形態の応用に係る第2の実施形態のガス検知装置1Aについて説明する。ガス検知装置1Aは、ローラ71、72と、それぞれを回転可能に支持する支持体73、74(ベルト8の裏側にも支持体を備える。)と、ローラ71、72に巻かれたベルト8と、駆動源261、第1の実施形態と同様のガスセンサヘッド4と、ガスセンサヘッド4を支持する支持体75、76を備える。ベルト7には、その外側に、回転検出用色素50に相当する回転検出用色素501、ガス反応性色素511〜51nに相当するガス反応性色素541〜54nが塗布または印刷等により形成されている。ガスセンサヘッド4は、ベルト8が移動するようにベルト8から離して支持されている。
【0055】
駆動源261がローラ72を回転させると、ベルト8が移動する。これによりガスセンサヘッド4は、順番に回転検出用色素501、ガス反応性色素541〜54nの色を検出する。
【0056】
なお、図6では、ガスセンサヘッド4は、ローラ71、72の位置に設けているが、ガス反応性色素541〜54nを読み取ることができればよく、ガス反応性色素541〜54nを読み取ることができれば、ベルト上のどの位置に配置して読み取ってもよい。
【0057】
次に、図7を用いて、以上の実施形態の応用にかかる第3、第4実施形態のガス検知装置1の構成について説明する。この構成は、本発明の「複数のガス反応性色素が環状に並べられている」ための第1、第2実施形態とは別の形態を示している。
【0058】
第3実施形態のガス検知装置1Bを示す図7(A)では、センサ紙5Aを平面状の台紙521の上に、閉じた輪の形に回転検出用色素502、ガス反応性色素551〜55nを環状に並べて形成する。また、ガスセンサヘッド4に相当するセンサ401を、ガス反応性色素が並べられた環状の形に沿って、モータ262によりアーム91を回転させる。この構成によっても、ガスセンサヘッド4の観測位置をそれぞれのガス反応性色素551〜55nに移動させることができる。なお、アーム91の代わりに円盤上にガスセンサヘッド401を設けてもよい。また、センサ紙5Aは透明でなくてもよい。
【0059】
第4実施形態のガス検知装置1Cを示す図7(B)では、筒39の側面に、ガス反応性色素511〜51nに相当するガス反応性色素561〜56n、回転検出用色素503を環状に並べて、アーム92をモータ263で回転させる。この構成によっても、ガスセンサヘッド4の観測位置をそれぞれのガス反応性色素561〜56nに移動させることができる。
【0060】
以上の実施形態について補足する。
【0061】
第1実施形態のケース2のうち、筒3を回転する構成、および第2実施形態のベルト7を移動させるローラ71、72およびモータ261、第3実施形態のモータ262、アーム91、第4実施形態のモータ263、アーム92は、本発明の「移動手段」に相当する。ガスセンサヘッド4は、本発明の「センサ」に相当する。第1実施形態の筒3およびセンサ紙5は、本発明の「色素部材」に相当する。
【0062】
また、ガス反応性色素511〜51n、541〜54n、551〜55n、561〜56nの配置は、本発明の「複数のガス反応性色素が環状に並べられている」に相当する。このように構成することにより、1方向のみの駆動手段、例えばモータのみによって構成でき、簡易にガスセンサヘッド4がガス反応性色素を観測する観測位置を移動させることができる。なお、第2〜第4実施形態も同様に複数列環状に設けてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】第1実施形態のガス検知装置の構成図
【図2】第1実施形態のガス検知装置の分解図
【図3】第1実施形態のガス検知装置の透視図
【図4】第1実施形態のガスセンサヘッド周囲の構成を表す図
【図5】第1実施形態のガスセンサヘッドの構成例を表す図
【図6】第2実施形態のガス検知装置の全体構成図
【図7】第3、第4実施形態のガス検知装置の全体構成図
【符号の説明】
【0064】
1,1A,1B,1C−ガス検知装置、 2−ケース、 21,22−脚、
231〜234−支持ローラ、 241〜244−軸受、 25−ピニオンギア、
26−モータ、 29−開口部、 3,39−筒、 30−開口部、
4−ガスセンサヘッド、 41−光ファイバ、
42−受光素子、 420−ケーブル、 421−ガラス基板、
422−透明伝導膜、 423−アルファモスシリコンpn結合、
43−遮蔽材、 44−支持部材、 RF−赤フィルタ、
GF−緑フィルタ、 BF−青フィルタ、
R,G,B−受光素子、 5−センサ紙、
50,501,502,503−回転検出用目印、
511〜51n,541〜54n,551〜55n−ガス反応性色素、
561〜56n−ガス反応性色素、 52,521−台紙、 6−排気弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のガス反応性色素が環状に並べられた色素部材と、
前記色素部材の色を観測するセンサと、
前記センサが観測する観測位置を前記ガス反応性色素が並んでいる方向に沿って順番に移動させる移動手段と、を備えるガス検知装置。
【請求項2】
前記色素部材は、中空の筒状部材で構成され、
前記ガス反応性色素は、筒状部材の円周方向に沿って前記筒状部材の内側に順番に並べられており、
前記移動手段は、前記筒を回転させる回転機構を備え、該回転機構が固定された前記センサに対して、前記筒を回転させることにより、前記観測位置を前記ガス反応性色素それぞれに順番に移動させる請求項1に記載のガス検知装置。
【請求項3】
前記色素部材は、複数のローラに巻かれた1周のベルトであって、
前記ガス反応性色素は、前記ベルトの移動方向に沿って順番に並べられており、
前記移動手段は、前記ローラと、前記ローラの一部または全部をそれぞれ回転する回転機構を備え、固定された前記センサに対して、前記ローラを回転させることにより、前記照射位置を順番に前記ガス反応性色素それぞれに移動させる請求項1に記載のガス検知装置。
【請求項4】
前記ガス反応性色素は、筒状部材の内側に、筒状部材に対して着脱可能に形成された、シート状部材の上に形成されている請求項2に記載のガス検知装置。
【請求項5】
前記色素部材は、前記ガス反応性色素のほかに、所定色の色素が並べられており、
前記移動手段は、前記観測位置を前記ガス反応性色素上それぞれに一順するごとに、前記所定色の色素にも前記観測位置を移動させる請求項1〜4のいずれかに記載のガス検知装置。
【請求項6】
各ガス反応性色素が反応していない状態で、予め、前記移動手段により前記観測位置を前記ガス反応性色素各々に巡回した時にセンサが測定した初期データと、各ガス反応性色素にガスを触れさせた状態で前記移動手段により前記観測位置を各ガス反応性色素に巡回してセンサが測定した測定データと、の差分データを測定結果として出力する出力手段をさらに備えた請求項1〜5のいずれかに記載のガス検知装置。
【請求項7】
前記センサは、
前記ガス反応性色素のいずれかに光を照射する照射手段と、
前記照射手段により照射した光が前記ガス反応性色素に反射して戻ってきた光のうち、所定波長の光を通すフィルタと、
前記フィルタを通した光の強度を信号に変換する受光素子と、を備える請求項1〜6のいずれかに記載のガス検知装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−241311(P2008−241311A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−78957(P2007−78957)
【出願日】平成19年3月26日(2007.3.26)
【出願人】(000169477)アビリット株式会社 (294)
【Fターム(参考)】