説明

ガス水封装置の水封異常検知方法

【課題】水封装置からオーバーフローした剰余水11を水位検知タンク6に回収し、その水位検知タンク6の水位異常を自動検知し、警報を自動発令することによって監視員の常時監視を不要とし、早期に水位異常警報を管内に知らせる水封異常監視方法を提供することを目的とする。
【解決手段】ガス輸送管の彎曲部に水封用水を貯留してガス流を遮断する水封装置であって、前記水封用水がオーバーフローした剰余水を水位検知タンクに回収し、該水位検知タンクでの前記剰余水の貯留時間により水位異常を検知し警報を発令することを特徴とするガス水封装置の水封異常検知方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス輸送管に取り付けられて、ガス流を遮断する水封装置の水封異常検知方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
各種プラントには、多数のガス輸送管が設置されている。たとえば製鉄所では、高炉、コークス炉、転炉等から発生する可燃性ガス(たとえばCOガス等)を燃料ガスとして再利用するために、大口径のガス輸送管を使用している。これらのガス輸送管は、点検・補修に応じてガス流を遮断しなければならないので、水封装置が取り付けられている。従来から知られている水封装置の例を模式的に図5に示す。
【0003】
水封装置は、図5に示すようにガス輸送管1の一部をU字型あるいはV字型に彎曲させ、その彎曲部2に水封用水9を貯留することによってガス10の流れを遮断するものである。
【0004】
ガス10を遮断するときは、水封用水排水管3のバルブを閉じ、さらに、水封用水給水管5のバルブを開いて、彎曲部2に水封用水9を供給する。水封装置でガス10を遮断するためには、ガス10の圧力以上の水頭を確保する必要があるので水封用水9は絶えず供給される。
【0005】
ところが、水封用水9を供給し続けると、彎曲部2における水封用水9の水面が上昇しガス輸送管1内に水封用水9が流入して様々なトラブルを引き起こすこととなる。
【0006】
そこで、特許文献1には、彎曲部2の水面を一定の高さに保持するために、水封用水9をオーバーフローさせて、余剰の水封用水9(以下、剰余水11と呼ぶ)を排出する技術が開示されている。即ち、剰余水配水管4から剰余水11を排出することによって、彎曲部2の水封用水9の水面を剰余水配水管4の先端の位置に保つ方法である。
【0007】
この場合、水封用水9は工業用水12を使用し、彎曲部2に水封用水9を供給し続ける方法が一般的であるが、工業用水12の消費量の増大を招くという問題がある。
【0008】
そのため、オーバーフローした剰余水11を貯留した貯水タンクに設けられた循環ポンプにより、貯水タンクから彎曲部2へ剰余水11を循環送給する水封方法もある。
【特許文献1】特開2007−2918号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、いずれの方法も水封用水9の供給や循環ポンプの運転が絶えず行われることが前提であり、プラント内で不測の事態、たとえば、工業用水本管の圧力低下や彎曲部の配管に腐食による穴あきで水漏れしたりすることが起こると、ガス10が遮断されず漏出するという問題が生じる。
【0010】
そのため、この水封操作が安定して行われているかどうかを確認するためには、剰余水11が排出されているかどうかを監視員が常に目視する必要がある。また何らかの異常があった場合には、管内で作業を行っている保全作業員に異常を知らせる必要もある。
【0011】
即ち、従来の水封装置では、監視員が常時水封状況を監視する必要があるとという問題があった。
【0012】
本発明は、上述した問題を解消し、オーバーフローした剰余水11を水位検知タンク6に回収し、その水位検知タンク6の水位異常を自動検知し、警報を自動発令することによって監視員の常時監視を不要とし、早期に水位異常警報を管内に知らせる水封異常監視方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
発明者は上述した問題点を解決するために鋭意検討した結果発明を完成したものであり、その要旨は以下の通りである。
【0014】
第一の発明は、ガス輸送管の彎曲部に水封用水を貯留してガス流を遮断する水封装置であって、前記水封用水がオーバーフローした剰余水を水位検知タンクに回収し、該水位検知タンクでの前記剰余水の貯留時間により水位異常を検知し警報を発令することを特徴とするガス水封装置の水封異常検知方法である。
【0015】
第二の発明は、前記水位検知タンクでの剰余水の貯留時間を前記水位検知タンクからの剰余水の放流量を調整することにより任意の時間に設定することを特徴とするガス水封装置の水封異常検知方法である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、水封水がオーバーフローした剰余水を水位検知タンクに回収し、その水位検知タンクの水位異常を自動検知し警報を自動発令するので、監視員の負荷を軽減し、水位監視に係るコストを削減できる。また、早期に水封異常警報を管内に発することができるので、管内作業者の安全を確保できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0018】
図1は本発明の全体構成を説明する図である。
水封装置は図1に示すように、ガス輸送管1の一部をU字型に彎曲させ、その彎曲部2に水封用水9を貯留することによってガス10の流れを遮断するものである。ガスを遮断した下流側で工事等を行い、工事終了後に再びガス10を流通させるときは、水封用水配水管3のバルブを開いて彎曲部2に貯留した水封用水9を排出することにより行う。
【0019】
ガス10を遮断するときは、水封用水配水管3のバルブを閉じ、更に水封用水給水管5のバルブを開いて、彎曲部2に水封用水9を供給する。水封装置でガス10を遮断するためには、ガス10の圧力以上の水頭を確保する必要があるので、水封用水9は絶えず供給される。
【0020】
ところが、水封用水9を供給し続けると、彎曲部2における水封用水9の水面が上昇し、ガス輸送管1内に水封用水9が流入することとなる。そこで、彎曲部2の水面を一定高さに保持するために、水封用水9を剰余水排水管4を使ってオーバーフローさせて剰余水11を水封装置の外に排出する。
【0021】
剰余水排水管4を経て排出された剰余水11は、図2に示すように水位検知タンク6に回収され、該水位検知タンク6内の水位の変動は水位検出器7で検出される。
【0022】
即ち、前記水位検知タンク6には、タンク内に貯留する剰余水11の水位を計測する水位検出器7と、流入する剰余水11をタンクからオーバーフローさせる排水管8aと、水位検知タンク6内の貯留水を設定した一定時間で排出する止水検知調整管8bで構成されている。
【0023】
異常を検出して警報を発令する装置としては、水位検出器7は例えばフロート式の水位検出器を用いる。さらに、該水位検出器7からの水位異常警報を受信して、管内で点検・補修作業に従事している人々に対して警報を発令する警報器13としては、警報機能があるパトライト警報器が好ましい。また、工事を行う配管の距離が長い場合や曲がりの有る場合は、無線式のポケベルに警報を出力し、作業者に知らせる手段もある。
【0024】
彎曲部2からオーバーフローした剰余水11が連続的に水位検知タンク6に流入している場合は、水封機能は正常に作動しているが、前記剰余水11が途絶えた場合であっても、ただちに異常であるとはいいきれない場合がある。これは、ガス輸送管内のガス圧力の変動により彎曲部2内の貯留水の水面が変化するためである。
【0025】
図4は、ガス輸送管内のガス圧力の変動と彎曲部2における貯留水の水面の位置を示す図である。図4(a)は、ガス圧力が400mmAqと高い場合で、水封用水9は剰余水11となって剰余水配水管4を経て水封装置外に排出される。一方、図4(b)はガス圧力が350mmAqと低くなった場合で、水封用水9の水位は矢印で示すように、剰余水配水管4側では剰余水配水管4開口位置より低くなるため剰余水配水管4からの排水が停止する。
【0026】
このようにガス圧力の変動によって剰余水11が剰余水配水管4から排水されたり、されなかったりするため、ガス圧力の変動時間周期以上の剰余水停止の場合に警報を発令する必要がある。
【0027】
従って、本発明の水位検知タンク6では、図3に示すように、止水検知調整管8bに付属するバルブで水位検知タンク6からの放流量を調整できるようになっている。即ち、剰余水配水管4からの剰余水11の排出が停止してから一定時間後(水位検知タンク6の水位検出器の水位がLminに到達した時点)に警報発令とハ゜テライトが点滅して作業者に危険を知らせるようになっている。
【実施例1】
【0028】
コークス炉ガス(コークス炉で発生した燃料ガスで、ガス成分は、H2:60%、CO:7%、CH4:25%、その他8%)を鋼片加熱炉へ送給するガス輸送管1(内径1500mm)に図2の水位検知タンク6を取り付けた。
【0029】
水位検知タンク6は直径350mm、高さ500mmの円筒形容器とし、その上部に50Aの剰余水給水管8aと下部に15Aの止水検知調整管8bを備えた。
【0030】
止水検知調整管8bのバルブは開度50%に設定して、放流しつつ、剰余水11が100リットル/分で水位検知タンク6に流入する状態で水位検知器7が正常であることを確認した。その後、剰余水11の流入を模擬的に停止したところ、検知タンク6の水位がLmaxから低下を始め、1分30秒後にLminに到達し、水位検出器7から異常警報が発信され、警報器13から警報が発令された。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の全体構成を示す図である。
【図2】水位検知タンクを説明する図である。
【図3】水位検知タンクからの放流量の調整方法を説明する図である。
【図4】ガス圧力の変動を説明する図である。
【図5】従来の水封装置を説明する図である。
【符号の説明】
【0032】
1 ガス輸送管
2 彎曲部
3 水封用水排水管
4 剰余水排水管
5 水封用水給水管
6 水位検知タンク
7 水位検出器
8a剰余水給水管、8b止水検知調整管
9 水封用水
10 ガス
11 剰余水
12 工業用水
13 警報器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス輸送管の彎曲部に水封用水を貯留してガス流を遮断する水封装置であって、前記水封用水がオーバーフローした剰余水を水位検知タンクに回収し、該水位検知タンクでの前記剰余水の貯留時間により水位異常を検知し警報を発令することを特徴とするガス水封装置の水封異常検知方法。
【請求項2】
前記水位検知タンクでの剰余水の貯留時間を前記水位検知タンクからの剰余水の放流量を調整することにより任意の時間に設定することを特徴とするガス水封装置の水封異常検知方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−236170(P2009−236170A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−80812(P2008−80812)
【出願日】平成20年3月26日(2008.3.26)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.パトライト
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】