説明

ガス漏洩検知装置

【課題】ガス供給管30におけるガスの微少漏洩を検知するガス漏洩検知装置において、装置の故障を速やかに検出してセンター等に発呼する。
【解決手段】プロパンガスボンベ10から元調整器20を介して親子式差圧調整器1にガスを流す。親子式差圧調整器1の親調整器11はガス供給管30から集合住宅40側にガスを供給する。子調整器12は親調整器11をバイパスしてガス供給管30に導通するバイパスガス流路2に接続する。バイパスガス流路2にマイコンガスメータ3を設ける。マイコンガスメータ3の流量センサでガスの流量を検出する。微少漏洩検出の期間と異なる第2所定期間をマイコンガスメータ3に設定する。流量0が第2所定期間(例えば15日間)連続する場合、故障警報処理をし、センターに発呼する。第2所定期間を変更可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスボンベ等のガス供給源からガス燃焼機器等のガス消費源にガスを供給するガス供給設備に設けられ、埋設管等のガス供給管の微少漏洩を検知するガス漏洩検知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の装置として、例えば特開平3−41300号公報(特許文献1)、特開平5−296873号公報(特許文献2)に開示されたものがある。これらのガス漏洩検知装置は、プロパンガスボンベから集合住宅等にガスを供給するガス供給管に、親調整器をバイパスするバイパス流路を設けるとともに、このバイパス流路に親調整器よりも調整圧力を高くした子調整器と、微少流量を検知する流量検知手段を有するマイコンメータを設けたものである。
【0003】
これらの構成は、夜間や深夜のガス消費がほとんどなくなるときに親調整器が閉となっても、子調整器を介してマイコンメータで微少流量を検出できるようにしたものである。そして、マイコンメータで微少流量を監視し、30日間連続して3リットル/時間以上の流量があるときにはガスの微少漏洩が生じていると判断してその旨をランプの点灯により表示するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平3−41300号公報
【特許文献2】特開平5−296873号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記従来のガス漏洩検知装置では、親調整器、子調整器及びマイコンメータが正常に機能していることを前提としてガスの微少漏洩を検知できる。この何れの機能が損なわれていても正確な検知を行うことができない。
【0006】
例えば、子調整器が、その内部に異物が混入して故障したり、経年劣化で調整圧力が変化してしまうと、子調整器の出力部と、親調整器の出力部との差圧が一定圧力値(例えば50Pa)以上確保できなくなり、マイコンメータに流量が流れなくなり、配管に微少漏洩が発生していてもそれを検出することができなくなる。
【0007】
そこで、従来は定期点検を行うようにしているが、この定期点検は、子調整器の出力部と親調整器の出力部との差圧を測定し、一定圧力値以上の差圧があれば正常であるという判断をしていた。
【0008】
しかしながら、この定期点検作業は、作業員が現地へ訪問し、圧力計を設置して測定を行うという作業が必要であり、手間がかかっていた。また、定期点検にてマイコンメータに故障が発見された場合、それまでの期間、ガスの漏洩があった可能性もあり、ガス漏洩検知装置としての信頼性に疑問があった。
【0009】
本発明は、ガス漏洩検知装置において自己診断機能を持たせ、装置自体の異常を速やかにセンター等に通報できるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1のガス漏洩検知装置は、ガス供給管に設けた親調整器をバイパスするガス流路に前記親調整器より調整圧力の高い子調整器と前記ガス流路の流量を検知する流量検知手段とを設け、該流量検知手段によって第1所定期間継続して流量があることを検出して微少ガス漏洩を検知するようにしたガス漏洩検知装置において、第2所定時間を記憶する記憶手段と、前記ガス流路に前記第2所定期間継続して流量がないと判定された場合、故障警報処理をする故障診断手段と、を備えたことを特徴とする。
【0011】
請求項2のガス漏洩検知装置は、請求項1に記載のガス漏洩検知装置であって、前記記憶手段の前記第2所定時間が外部から設定可能であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
ガス供給システムにおいては一般的に頻繁にガスが使用される。したがって、一定期間の間(第2所定期間)、ガスの流量が検出できないということは、子調整器や流量検知手段が故障している可能性が高いが、請求項1のガス漏洩検知装置によれば、定期点検を待たずに、この故障を速やかに検出して故障警報処理により通報することができる。
【0013】
請求項2のガス漏洩検知装置によれば、請求項1の効果に加えて、第2所定期間を集合住宅等のガス消費源の状況に応じて設定することで、適切に故障を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態のガス漏洩検知装置の要部ブロック図である。
【図2】実施形態のガス漏洩検知装置を適用したガス供給システムの外観図である。
【図3】実施形態における制御部の制御プログラムの要部フローチャートである。
【図4】実施形態における制御部のタイマ割り込み処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は本発明の一実施形態のガス漏洩検知装置の要部ブロック図、図2は実施形態のガス漏洩検知装置を適用したガス供給システムの外観図である。この実施形態のガス漏洩検知装置は、ガス供給源であるプロパンガスボンベ10と、ガス消費源であるマンション等の集合住宅40との間に配設されている。
【0016】
プロパンガスボンベ10には元調整器20を介して親子式差圧調整器1が接続されており、元調整器20はプロパンガスボンベ10のガスを所定の圧力にして親子式差圧調整器1に供給する。親子式差圧調整器1は親調整器11と子調整器12とからなり、元調整器20からのガスは親調整器11と子調整器12にそれぞれ供給される。親調整器11の出口11aは集合住宅40側にガスを供給するガス供給管30に接続されている。また、子調整器12の出口12aは、親調整器11をバイパスしてガス供給管30に導通するバイパスガス流路2に接続されている。そして、このバイパスガス流路2にマイコンガスメータ3が設けられている。
【0017】
子調整器12の調整圧力は親調整器11の調整圧力より高く設定されている。例えば親調整器11の調整圧力が280mmH2 Oに設定されているときは、子調整器12の調整圧力は約300mmH2 Oに設定する。これにより、集合住宅40側で通常のガス消費があるときは、親調整器11及び子調整器12を介してガスが供給される。一方、夜間や深夜のガス消費がほとんどなくなるときにはガス供給管30の圧力が高くなって親調整器11が閉となり、子調整器12及びマイコンガスメータ3にのみガスが流れるようになる。これにより、バイパスガス流路2を通じて流れる微少なガス流量をマイコンガスメータ3により監視することができる。
【0018】
図1に示すように、マイコンガスメータ3は、故障診断手段を構成する制御部31、流量検知手段としての流量センサ32、圧力センサ33、記憶手段としてのEEPROM34、表示部35及び通信部36を含んで構成されている。制御部31は、CPU、ROM及びRAM等を有するマイコンで構成されており、CPUがROMに記憶されている制御プログラムを実行することにより、後述の処理を行う。
【0019】
流量センサ32は、バイパスガス流路2を通過するガスの流量を検出するための検出素子であり、微少流量(例えば3リットル/時間程度)の流量を正確に積算できる。この流量センサ32でガスの流量を検出し、ガスが第1所定期間である例えば30日間ずっと連続して流れ続けている場合は、ガス供給管30のどこかにガスの微少漏洩があると判断し、その旨を表示部35で表示するとともに、通信部36によりセンターに対して発呼を行う。
【0020】
また、圧力センサ33は周知の検出素子であり、この圧力センサ33は、子調整器12より下流側のバイパスガス流路2の内部圧力を検出する。この圧力センサ33でバイパスガス流路2の内部圧力を監視し、圧力異常等を検出する。
【0021】
記憶手段としてのEEPROM3には、ガスの微少漏洩を判定するための第1所定期間の値(日数)が記憶されている。また、このEEPROM3には、故障を判定の閾値として第2所定期間の値(日数)が記憶されている。これらの第1所定期間及び第2所定期間の値は通信部36を介してセンターから設定される。例えば、第1所定期間は30日、第2所定期間は15日とする。
【0022】
図3は実施形態における制御部31(マイコン)の制御プログラムの要部フローチャート、図4は同制御部31のタイマ割り込み処理のフローチャートであり、同図に基づいて動作を説明する。なお、以下の説明で、微少漏洩判定の日数(期間)をカウントするためのカウンタを「微少漏洩カウンタ」、故障判定の日数をカウントするためのカウンタを「故障カウンタ」とする。
【0023】
図3の処理では、まず、ステップS1で流量センサ32により通常の流量計測を行う。次に、ステップS2で流量が0であるかを判定し、流量が0であれば微少漏洩カウンタをクリアしてステップS5に進み、流量が0でなければ故障カウンタをクリアしてステップS5に進む。この処理は、流量がない場合には微少漏洩もないことになるのでその場合に常に微少漏洩カウンタをクリアする処理、流量が0でなければ流量センサ32等が故障でないので故障カウンタをクリアする処理である。
【0024】
ステップS5では、通信部36を介して第1所定期間あるいは第2所定期間の設定変更等の指示が有るかを判定し、指示がなければステップS7に進み、指示があればステップS6で第1所定期間あるいは第2所定期間の設定処理を行ってステップS7に進む。ステップS7では圧力異常監視などその他の処理を行い、ステップS1に戻る。
【0025】
図4のタイマ割り込み処理では、ステップS21において1日が経過したか否かを判定し、この判定がYESのときにはステップS22に進み、NOのときには何もしないで元のルーチンに復帰する。ステップS22においては故障カウンタをカウントアップし、ステップS23で故障カウンタの内容が第2所定期間(例えば15)に等しいか否かを判定する。判定がNOのときは、ステップS24において微少漏洩カウンタをカウントアップし、ステップS25で微少漏洩カウンタの内容が第1所定期間(例えば30)に等しいか否かを判定する。判定がNOのときには元のルーチンに復帰し、判定がYESのときには、連続して例えば30日の間、流量が0になることがなく微少漏洩が生じていると判断し、ステップS26で漏洩警報処理を行って元のルーチンに復帰する。
【0026】
一方、ステップS23の判定がYESのときには、連続して例えば15日の間、流量が0となっているので、流量センサ32や子調整器12で何らかの故障が発生している可能性があるので、ステップS27で故障警報処理を行って元のルーチンに復帰する。この故障警報処理としては、通信部36によりセンター等に発呼する処理を行う。
【0027】
以上のように、15日間など第2所定期間、流量が0である場合、すなわち流量が検出できないときには、流量センサ32や子調整器12で何らかの故障が発生していると判断でき、この故障を速やかに通報することができる。
【0028】
なお、第1所定期間や第2所定期間はガスの消費源である集合住宅などの戸数などに応じて適切に設定することがができる。また、この第1所定期間や第2所定期間をセンター等から設定する場合について説明したが、マイコンガスメータにおいて設定器を用いて手動で設定できるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0029】
1 親子式差圧調整器
11 親調整器
12 子調整器
2 バイパスガス流路
3 マイコンガスメータ
31 制御部(故障診断手段)
32 流量センサ(流量検知手段)
34 EEPROM(記憶手段)
35 表示部
36 通信部
10 プロパンガスボンベ
20 元調整器
30 ガス供給管
40 集合住宅
50 ガス器具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス供給管に設けた親調整器をバイパスするガス流路に前記親調整器より調整圧力の高い子調整器と前記ガス流路の流量を検知する流量検知手段とを設け、該流量検知手段によって第1所定期間継続して流量があることを検出して微少ガス漏洩を検知するようにしたガス漏洩検知装置において、
第2所定時間を記憶する記憶手段と、
前記ガス流路に前記第2所定期間継続して流量がないと判定された場合、故障警報処理をする故障診断手段と、
を備えたことを特徴とするガス漏洩検知装置。
【請求項2】
前記記憶手段の前記第2所定時間が外部から設定可能であることを特徴とする請求項1に記載のガス漏洩検知装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−160075(P2010−160075A)
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−2927(P2009−2927)
【出願日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】