ガス濃度検出装置
【課題】ガス濃度の検出精度を向上させる。
【解決手段】ガスセンサは、ポンプセル41、モニタセル44及びセンサセル45を有するセンサ素子20を備え、かつ、ポンプセル41で第1チャンバ24内に導入した被検出ガス中の酸素量を所定濃度レベルに調整するとともに、センサセル45で第2チャンバ26内におけるポンプセル41での酸素量調整後のガスから特定成分の濃度を検出し、その検出結果により特定成分の濃度を算出する。センサ制御装置50のマイコン51は、ガスセンサが取り付けられたガス通路壁の温度に関する壁温情報を取得し、その取得した壁温情報に基づいて、ポンプセル41、モニタセル44及びセンサセル45の少なくともいずれかのセル出力又はセル印加電圧を補正する。
【解決手段】ガスセンサは、ポンプセル41、モニタセル44及びセンサセル45を有するセンサ素子20を備え、かつ、ポンプセル41で第1チャンバ24内に導入した被検出ガス中の酸素量を所定濃度レベルに調整するとともに、センサセル45で第2チャンバ26内におけるポンプセル41での酸素量調整後のガスから特定成分の濃度を検出し、その検出結果により特定成分の濃度を算出する。センサ制御装置50のマイコン51は、ガスセンサが取り付けられたガス通路壁の温度に関する壁温情報を取得し、その取得した壁温情報に基づいて、ポンプセル41、モニタセル44及びセンサセル45の少なくともいずれかのセル出力又はセル印加電圧を補正する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス濃度検出装置に関し、特に、ガス室(チャンバ)内の酸素量を所定濃度レベルに調整する酸素ポンプセルと、その酸素量調整後のガスから特定成分の濃度(例えば窒素酸化物(NOx)濃度)を検出するセンサセルとを有するガスセンサに適用されるガス濃度検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、車載エンジンの排気中における窒素酸化物(NOx)を検出する限界電流式のNOxセンサが知られている。このNOxセンサは、ポンプセル及びセンサセルの2セル構造か、又はポンプセル、センサセル及びモニタセルからなる3セル構造を有している。これら各セルのうち、ポンプセルでは、ガス室内に導入した排気中の酸素の排出又は汲み込みが行われ、センサセルでは、ポンプセルを通過した後のガスからNOx濃度が検出される。また、モニタセルでは、ガス室内の余剰酸素量が検出される。
【0003】
さらに、NOxセンサにおいては、上記の各セルを所定の活性温度に保持するためのヒータが設けられている。この場合、各セルが設けられる固体電解質素子の抵抗値(素子インピーダンス)が検出され、その素子インピーダンスが活性温度相当の値になるようヒータの通電が制御される。より具体的には、ポンプセル又はモニタセルの何れかについて素子インピーダンスが検出され、その素子インピーダンスの検出値と目標値との偏差に応じてヒータ通電がフィードバック制御される(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2000−171439号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
エンジンの排気管にNOxセンサが取り付けられている場合、センサ素子では、同素子のセンサ取り付け部位で排気管への熱放出(熱引け)が起こる。その場合、センサ素子の先端側とそれよりも基端側(排気管取り付け部位側)との間に温度勾配が生じ、センサ素子の先端側に比して、それよりも基端側が低温となることが考えられる。また、その温度勾配は、エンジン始動に伴う排気管温度の上昇時などにおいては、排気管温度の温度変化に依存して変動することも考えられる。そのため、特許文献1のように一方のセルの素子インピーダンスに基づいてヒータ通電制御を実行する構成では、温度の制御がなされていないセルにおいて、センサ素子の温度勾配変化に伴いそのセル温度にばらつきが生じるおそれがある。
【0005】
一方で、センサ素子の出力特性は温度特性を有する。このため、セル温度がばらつくと、センサ出力に誤差が生じ、ガス濃度の検出精度が低下するおそれがある。特に、各セルにおいて排気管からの距離が異なる場合には、各セル間で排気管温度の変動の影響を受ける度合いが異なるため、上記問題が生じやすい。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、ガス濃度の検出精度を向上させることができるガス濃度検出装置を提供することを主たる目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するために、以下の手段を採用した。
【0008】
本発明のガス濃度検出装置は、各々に固体電解質体と該固体電解質体に配置された一対の電極とよりなる第1セル及び第2セルを有するセンサ素子を備え、かつ、前記第1セルの電極に電圧を印加することでガス室内に導入した被検出ガス中の酸素量を所定濃度レベルに調整するとともに前記第2セルの電極に電圧を印加することで前記第1セルによる酸素量調整後のガス中の特定成分に応じて第2セル出力を生じさせるガスセンサに適用され、前記第2セル出力により前記特定成分の濃度を算出するガス濃度検出装置において、前記ガスセンサが取り付けられたガス通路壁の温度に関する壁温情報を取得する壁温情報取得手段と、前記壁温情報取得手段により取得した前記壁温情報に基づいて、前記第1セル及び前記第2セルの少なくともいずれかのセル出力又はセル印加電圧を補正する補正手段と、を備えることを特徴とする。
【0009】
ガスセンサにおいて、センサ素子の第1セル及び第2セルは、その出力特性として温度特性を有する。また、ガスセンサの取り付け部位では、ガス通路壁への熱放出がなされる。この場合、ガス通路壁の温度が変化すると、ガス通路壁への熱放出量が変化し、それに起因して各セルでは、各セルとガス通路壁との距離に応じて出力値に影響が生じる。つまり、上記センサ素子においては、少なくともいずれかのセルでその温度が適正温度からずれてしまい、それに起因してセンサ出力に誤差が生じる。それらの点に鑑み、本発明では、ガスセンサの取り付け部位におけるガス通路壁の温度に関する壁温情報を取得し、その壁温情報に応じてセル出力又はセル印加電圧を補正する。これにより、ガスセンサの取り付け部位においてガス通路壁の温度変化があった場合であっても、セル出力又はセル印加電圧に対して排気管の温度変化を考慮した補正が行われるため、セルの温度ずれに伴うセンサ出力誤差を解消することができ、ひいてはガス濃度の検出精度を向上できる。
【0010】
一方のセルを制御対象として、そのセル温度を一定に保つようヒータの通電制御が実行される場合、温度制御がなされていない他方のセルでは、ガス通路壁の温度変化に伴うセル温度の変化が原因で適正温度からの温度ずれが生じる。この場合、温度制御がなされていない方のセルにおいて出力誤差が生じることが懸念される。この点に鑑み、請求項2に記載の発明では、前記ヒータ制御手段による温度制御の対象とされていないセル出力又はセル印加電圧を前記壁温情報に基づいて補正する。こうすることにより、温度制御の対象とされていないセルの温度ずれに起因するセンサ出力誤差を解消することができる。
【0011】
第1セル及び第2セルのうち第1セルについて温度制御が実行されている場合、ガス室内の残留酸素濃度は所望の酸素濃度レベルに保持される。一方、第2セルにおいては、第2セルが温度制御の対象とされていないため、ガス通路壁の温度変動に起因して温度ずれが起こり、その温度ずれ分に相当する出力誤差が生じるものと考えられる。この点に鑑み、請求項3に記載の発明では、第1セルを制御対象として前記ヒータの通電を制御する場合に、前記ガス通路壁の温度に基づいて前記第2セルのセル出力を補正する。こうすることで、第2セルの温度ずれに伴う出力誤差を、ガス通路壁の温度に基づく補正により解消することができ、ひいては第2セルによる濃度検出精度を高めることができる。
【0012】
第1セル及び第2セルのうち第2セルについて温度制御が実行されている場合、ガス通路壁の温度変化によりガス室内の残留酸素濃度にずれが生じ、その残留酸素濃度のずれに起因して第2セル出力に誤差が生じる。この点に鑑み、請求項4に記載の発明では、第2セルを制御対象として前記ヒータの通電を制御する場合に、前記ガス通路壁の温度に基づいて前記第1セルのセル印加電圧を補正する。これにより、ガス室内の残留酸素濃度のずれが抑制され、ひいては第2セルの出力誤差が解消される。その結果、第2セルによる濃度検出精度を高めることができる。
【0013】
第1セル及び第2セルのうち第2セルについて温度制御が実行されている場合、ガス通路壁の温度変化によりガス室内の残留酸素濃度にずれが生じ、その残留酸素濃度のずれに起因して第2セル出力に誤差が生じる。この点に鑑み、請求項5に記載の発明では、第2セルを制御対象として前記ヒータの通電を制御する場合に、前記ガス通路壁の温度に基づいて前記第2セルのセル出力を補正する。これにより、残留酸素濃度のずれに起因する第2セルの出力誤差を、ガス通路壁の温度に基づく補正により解消することができる。その結果、第2セルによる濃度検出精度を高めることができる。
【0014】
内燃機関の排気管に設けられ、排気中の特定成分の濃度(NOx濃度等)を検出するガスセンサでは、同ガスセンサのセンサ素子が排気管内中央部に突き出るようにして排気管に取り付けられている。また、センサ素子に、同素子の先端側と排気管取り付け側とのそれぞれ異なる位置に前記第1セルと前記第2セルとが設けられる構成において、前記内燃機関の排気管壁の温度に基づいてセル出力又はセル印加電圧を補正するとよい。特に、第1セルと第2セルとが排気管の取り付け部位から異なる位置(例えば第1セルがセンサ素子の先端側であって第2セルが排気管取り付け側)に配置されている場合には、各セルにおいて排気管への熱放出によるセル温度の変化の程度が異なる。このため、上記構成では、排気管温度の変化に伴いセンサ素子における温度勾配が変化しやすいことから、本発明を好ましく適用できる。
【0015】
内燃機関の始動時には、内燃機関の始動に伴い排気管温度が常温から上昇するため、排気管の温度変化に依存してセンサ素子の温度勾配が変化し、これによりセルの温度ずれが生じやすい。この点に鑑み、請求項7に記載の発明では、前記内燃機関の所定始動期間においてセル出力又はセル印加電圧の補正を実行する。これにより、排気管の温度変化に伴いセルの温度ずれが生じた場合であっても、セル出力又はセル印加電圧に対して排気管の温度変化を考慮した補正を行うため、その温度ずれに伴うセンサ出力誤差を好適に解消できる。
【0016】
ガス通路壁の温度が所定温度(ガスセンサが内燃機関の排気管に取り付けられている場合、例えば350℃)から外れるほど各セルの温度ずれが大きくなり、その結果ガス濃度の検出精度が低下する。この点に鑑み、請求項8に記載の発明では、ガス通路壁の温度が補正温度域にある場合にセンサ出力の補正を実行する。各セルの温度ずれが大きい場合には、その温度ずれに伴いセンサ素子の出力誤差が大きくなることから、センサ出力の補正を実施するのが望ましい。
【0017】
ここで、補正温度域は、例えばガスセンサが内燃機関の排気管に取り付けられている場合、排気管内を通過する排ガスの温度が低温域(例えば25℃以下)及び過高温域(例えばガソリン車で600℃以上、ディーゼル車で400℃以上)の場合における排気管温度域か、又は内燃機関の暖機後における排気管温度(例えば350℃±10℃)から外れた温度域とするのが望ましい。
【0018】
ガスセンサが第1セル、第2セル及び第3セルからなる3セル構造を有する場合、すなわち、ガスセンサにおけるセンサ素子が、固体電解質体と該固体電解質体に配置された一対の電極とよりなり、前記第1セルの酸素量調整後のガスから前記ガス室内の残留酸素濃度を検出する第3セルを更に備える場合、そのガスセンサでは、第2セルで検出した特定成分の濃度から第3セルで検出した残留酸素濃度を差し引いた値により、被検出ガス中の特定成分の濃度が算出される。この場合、請求項9に記載したように、前記ガス通路壁の温度に基づいて前記第2セルの電流値と前記第3セルの電流値とを補正するとよい。これにより、第2セルと第3セルとにおいて温度ずれによる影響度がそれぞれ異なっていても、それぞれの影響度に合わせた補正を行うことができ、ひいては特定成分の濃度を精度よく算出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
(第1の実施形態)
以下、本発明を具体化した第1の実施形態を図面に基づいて説明する。本実施形態では、車載エンジンの排気管に設けられたNOxセンサを用い、そのNOxセンサの出力に基づいて排気中のNOx濃度を検出するNOx濃度検出システムについて説明する。なお、車載エンジンは、例えばディーゼルエンジンであり、同エンジンの排気管に設けられる排気浄化装置としてのNOx浄化触媒(NOx吸蔵還元型触媒やアンモニア選択還元触媒等)について、NOxセンサの出力に基づいて異常診断等が実施されるようになっている。例えば、NOx浄化触媒の下流側にNOxセンサが設けられ、同NOxセンサの出力から算出されるNOx濃度(NOx浄化率)が所定の異常判定値を上回る場合に、NOx浄化触媒が異常である旨診断される。
【0020】
NOxセンサ10の構成を、図1及び図2を用いて説明する。ここではまず、図2を用いて、NOxセンサ10の全体構成を説明する。
【0021】
図2に示すように、NOxセンサ10は、先端側カバー11とハウジング12と基端側カバー13とを有し、全体として略円柱状をなす。そして、その内部に長尺状のセンサ素子20が収容されている。NOxセンサ10は、ハウジング12にて排気管EPの壁部に取り付けられるようになっており、その取り付けられた状態では先端側カバー11が排気管EP内に配され、先端側カバー11に設けられた複数の小孔(通気孔)11aを通じて排気がセンサ素子20に供給されるようになっている。つまり、NOxセンサ10は、センサ素子20が排気管内中央部に突き出るようにして排気管EPに取り付けられている。図中、「PS」は後述するポンプセルを示し、「SS」は後述するセンサセルを示す。
【0022】
センサ素子20は、いわゆる積層型構造を有するものである。なお、図示は省略するが、先端側カバー11は内外二重構造となっており、内外の各カバーには、センサ素子20の被水防止対策として、その内外において互い違いとなる位置に(すなわち迷路状に)複数の小孔11aが設けられている。
【0023】
次に、センサ素子20の構成を、図1を用いて説明する。図1には、センサ素子20の内部構造を示しており、図の左右方向が同素子の長手方向に相当する。すなわち、図の右側が素子基端側(排気管取り付け部位側)であり、図の左側が素子先端側となっている。
【0024】
センサ素子20は、ポンプセル、センサセル及びモニタセルからなる、いわゆる3セル構造を有するものであり、それら各セルが積層配置されて構成されている。なお、モニタセルは、ポンプセル同様、ガス中の酸素排出の機能を具備するため、補助ポンプセル又は第2ポンプセルと称される場合もある。
【0025】
センサ素子20において、ジルコニア等の酸素イオン導電性材料からなる固体電解質体21,22はシート状をなし、アルミナ等の絶縁材料からなるスペーサ23を介して図の上下に所定間隔を隔てて積層されている。このうち、図の上側の固体電解質体21には排気導入口21aが形成されており、この排気導入口21aを介して当該センサ素子周囲の排気が第1チャンバ24内に導入される。第1チャンバ24は、絞り部25を介して第2チャンバ26に連通している。固体電解質体21の図の上面には、排気を所定の拡散抵抗で出し入れするための多孔質拡散層27が設けられるとともに、大気通路28を区画形成するための絶縁層29が設けられている。
【0026】
また、固体電解質体22の図の下面にはアルミナ等よりなる絶縁層31が設けられ、この絶縁層31により大気通路32が形成されている。絶縁層31には、センサ全体を加熱するためのヒータ(発熱体)33が埋設されている。この場合、ヒータ33により、ポンプセル41、モニタセル44及びセンサセル45が加熱され、これら各セル41,44,45が活性状態とされる。ヒータ33は、図示しないバッテリ電源等からの給電により熱エネルギを発生する。
【0027】
図の下側の固体電解質体22には、第1チャンバ24に対面するようにしてポンプセル41が設けられており、ポンプセル41は、第1チャンバ24内に導入された排気中の酸素を出し入れして同チャンバ24内の残留酸素濃度を所定濃度に調整する。ポンプセル41は、固体電解質体22を挟んで設けられる上下一対の電極42,43を有し、そのうち特に第1チャンバ24側の電極42はNOx不活性電極(NOxを分解し難い電極)となっている。ポンプセル41は、電極42,43間に電圧が印加された状態で、第1チャンバ24内に存在する酸素を分解して電極43より大気通路32側に排出する。
【0028】
また、図の上側の固体電解質体21には、第2チャンバ26に対面するようにしてモニタセル44及びセンサセル45が設けられている。モニタセル44は、上述したポンプセル41により余剰酸素が排出された後に、第2チャンバ26内の残留酸素濃度に応じて起電力、又は電圧印加に伴い電流出力を発生する。センサセル45は、第2チャンバ26内のガスからNOx濃度を検出する。
【0029】
モニタセル44及びセンサセル45は、互いに近接した位置に並べて配置されており、第2チャンバ26側に電極46,47を有するとともに、大気通路28側に共通電極48を有する構成となっている。すなわち、モニタセル44は、固体電解質体21とそれを挟んで対向配置された電極46及び共通電極48とにより構成され、センサセル45は、同じく固体電解質体21とそれを挟んで対向配置された電極47及び共通電極48とにより構成されている。モニタセル44の電極46(第2チャンバ26側の電極)はNOxに不活性なAu−Pt等の貴金属からなるのに対し、センサセル45の電極47(第2チャンバ26側の電極)はNOxに活性な白金Pt、ロジウムRh等の貴金属からなる。なお、便宜上図面ではモニタセル44及びセンサセル45を排気の流れ方向に対して前後に並べて示すが、実際には、これら各セル44,45は排気の流れ方向に対して同等位置になるよう配置されている。
【0030】
ここで、ポンプセル41と、モニタセル44及びセンサセル45とは、センサ素子20の長手方向に並べて設けられており、センサ素子20の先端側にポンプセル41が設けられ、同基端側(排気管取り付け側)にモニタセル44及びセンサセル45が設けられている。
【0031】
上記構成のセンサ素子20(NOxセンサ10)では、排気は多孔質拡散層27及び排気導入口21aを通って第1チャンバ24に導入される。そして、この排気がポンプセル41近傍を通過する際、ポンプセル電極42,43間にポンプセル印加電圧Vpが印加されることで分解反応が起こる。これにより、第1チャンバ24内の酸素濃度に応じて、ポンプセル41を介して酸素が出し入れされる。なお、第1チャンバ24側の電極42がNOx不活性電極であるため、ポンプセル41では排気中のNOxは分解されず、酸素のみが分解されて電極43から大気通路32に排出される。こうしたポンプセル41の働きにより、第1チャンバ24内を所定の低酸素濃度の状態に保持する。
【0032】
ポンプセル41近傍を通過したガスは第2チャンバ26に流れ込み、モニタセル44では、ガス中の残留酸素濃度に応じた出力が発生する。モニタセル44の出力は、モニタセル電極46,48間に所定のモニタセル印加電圧Vmが印加されることでモニタセル電流Imとして検出される。また、センサセル電極47,48間に所定のセンサセル印加電圧Vsが印加されることでガス中のNOxが還元分解され、その際発生する酸素が電極48から大気通路28に排出される。このとき、センサセル45に流れた電流(センサセル電流Is)により、最終的に排気中のNOx濃度が検出される。
【0033】
ここで、NOxセンサ10の出力特性について、図3を用いて説明する。図3のうち(a)はポンプセル41の出力特性(V−I特性)を示し、(b)はセンサセル45の出力特性(V−I特性)を示す。なお、図3において、横軸は印加電圧Vp,Vsであり、縦軸はセル電流Ip,Isである。
【0034】
図3(a)において、電圧軸(横軸)に平行な平坦部分は、ポンプセル電流Ipを特定する限界電流域である。そして、限界電流域におけるポンプセル電流Ipが排気中の酸素濃度と関連付けられている。つまり、排気中の酸素濃度が多いほどポンプセル電流Ipが増大する。この限界電流域は、排気中の酸素濃度が多いほど高電圧側にシフトする。また、限界電流域が高温側にシフトするのに合わせて、ポンプセル印加電圧Vpを決定するための印加電圧特性(印加電圧線Vp0)も高温側にシフトする。
【0035】
また、図3(b)において、電圧軸(横軸)に平行な平坦部分は、センサセル電流Isを特定する限界電流域である。そして、限界電流域におけるセンサセル電流Isが排気中のNOx濃度に関連付けられている。つまり、排気中のNOx濃度が増えるほどセンサセル電流Isが増大する。センサセル印加電圧Vsは、所定NOx濃度相当のセンサセル電流Isを限界電流域で検出可能とする所定値Vs0で設定されている。
【0036】
図1の説明に戻り、センサ制御回路50は、センサ制御の主体となるマイコン51を有している。マイコン51は、ポンプセル41の電極42,43間に印加するポンプセル電圧Vp、モニタセル44の電極46,48間に印加するモニタセル電圧Vm、センサセル45の電極47,48間に印加するセンサセル電圧Vsをそれぞれ制御する。また、マイコン51は、ポンプセル41に流れる電流(ポンプセル電流Ip)、モニタセル44に流れる電流(モニタセル電流Im)及びセンサセル電流Isの各々の計測値を逐次入力する。そして、入力したモニタセル電流Imとセンサセル電流Isとの差分により排気中のNOx濃度を算出する。さらに、マイコン51は、ポンプセル41を制御対象とし、ポンプセル温度が目標とする活性温度(例えば750℃)に一定に保持されるようヒータ23の通電を制御する。
【0037】
ECU70は、車載のエンジンECUであり、それらの制御の主体となるマイコン(図示略)を有している。ECU70は、都度の運転状態に基づいて燃料噴射弁の燃料噴射量や点火装置による点火時期を制御する。また、センサ制御回路50から入力したNOx濃度の値により排気中のNOxの監視等を行う。
【0038】
ところで、NOxセンサ10では、排気管EPに取り付けられることで、センサ素子20の熱がその基端側から排気管EPに放出される。かかる場合、センサ素子20の基端側では、同先端側よりも低温となる。すなわち、センサ素子20では、その長手方向において温度勾配(温度分布)が存在しており、先端側に配置されたポンプセル41が比較的高温になり、同基端側に配置されたモニタセル44及びセンサセル45が比較的低温になる。
【0039】
この温度勾配は、エンジンの冷間始動時には排気管EPの温度が上昇するため、その温度上昇に伴い変化する。つまり、エンジン始動の開始直後とエンジンの暖機完了後とでは排気管EPの壁温が相違するが、このとき、モニタセル44及びセンサセル45は、ポンプセル41よりも排気管EPに近いことから、排気管壁の温度変化の影響を受けやすい。このため、エンジン始動時に排気管壁の温度が比較的低温であれば、モニタセル44及びセンサセル45も比較的低温となり、エンジンの暖機に伴い排気管壁の温度が上昇すれば、それに伴いモニタセル44及びセンサセル45の温度も上昇する。その結果、センサ素子20では、その長手方向の温度勾配が排気管壁の温度に依存して変化することとなる。
【0040】
特に、本実施形態のヒータ通電制御においては、ポンプセル41を制御対象としてその温度が目標とする活性温度に一定に保持されるようヒータ33を通電制御する。一方、モニタセル44及びセンサセル45では、ポンプセル温度を基準にヒータ23が通電制御されることで、温度変動要因(外乱)のない通常時において、それらのセル温度が目標とする活性温度(例えば700℃)に保持されるようになっている。上記のようにポンプセル41を制御対象とする場合、モニタセル44及びセンサセル45について温度変動要因が生じると、その温度変動要因に影響されて温度変化が生じやすい。
【0041】
図4は、エンジン始動開始からの時間経過に伴うポンプセル温度、モニタセル温度及び排気管温度の推移を示すタイムチャートである。なお、モニタセル44とセンサセル45とは近接配置されているため、両者のセル温度は同等となる。
【0042】
図4において、エンジン始動後、ヒータ33の通電制御が実行されると、ポンプセル温度、モニタセル温度がそれぞれ上昇する。また、排気熱により排気管EPが加熱されることで、排気管温度も常温付近から次第に上昇する。このとき、上述したように、センサ素子20から排気管へ熱放出がなされるため、ポンプセル41とモニタセル44及びセンサセル45との温度差(すなわち、センサ素子20の温度勾配)が形成される。また、その温度勾配は、排気管温度の変動に伴い変動する。つまり、モニタセル44及びセンサセル45の温度は、ヒータ33の通電制御による制御対象とされていないため、排気管への熱放出により目標温度よりも低くなってしまう。
【0043】
また、各セル41,44,45においては、その出力特性として温度特性を有しており、各セル温度が活性温度とされることで好適なセンサ制御が実現される。このため、排気管温度の変動に伴う排気管EPへの熱放出によりセル温度が変動して活性温度からずれると、センサ出力に誤差が生じ、NOx濃度の検出精度低下を招くおそれがある。
【0044】
そこで、本実施形態では、排気管EPの壁温を検出し、その壁温に基づいてセンサ出力を補正する。具体的には、本実施形態のセンサ制御回路50において、モニタセル電流Im及びセンサセル電流Isの値をそれぞれ検出し、それらの検出値に対して排気管EPの壁温に応じた補正を行う。そして、その補正後のモニタセル電流Im及びセンサセル電流Isの差分からNOx濃度を算出する。
【0045】
図5に、本実施形態におけるセンサ制御回路50の全体構成を示す機能ブロック図を示す。図5に示すように、センサ制御回路50は、ポンプセル電流Ipを検出するIp検出部52と、モニタセル電流Imを検出するIm検出部53と、センサセル電流Isを検出するIs検出部54とを備えている。Ip検出部52は、ポンプセル電極42,43にポンプセル印加電圧Vpが印加された状態で電極42,43間に流れるポンプセル電流Ipを検出する。Im検出部53は、モニタセル電極46,48にモニタセル印加電圧Vmが印加された状態で電極46,48間に流れるモニタセル電流Imを検出する。Is検出部54は、センサセル電極47,48にセンサセル印加電圧Vsが印加された状態で電極47,48間に流れるセンサセル電流Isを検出する。
【0046】
また、センサ制御回路50は、ヒータ33の通電を制御するヒータ制御部55を有している。ヒータ制御部55は、ポンプセル41の温度が一定に保持されるようヒータ33の通電を制御する。具体的には、ポンプセルインピーダンス検出部56は、ポンプセル41を対象にして素子インピーダンスを検出し、ヒータ制御部55は、ポンプセルインピーダンス検出部56で検出された素子インピーダンスの検出値が目標値に一致するようインピーダンスフィードバック制御を実行する。
【0047】
素子インピーダンスの検出方法は特に限定しないが、本実施形態では、いわゆる掃引法を用いて素子インピーダンスを検出する。具体的には、ポンプセルインピーダンス検出部56は、ポンプセル電極42,43の印加電圧を一時的に交流的に変化させる旨指令し、その際の電流変化量に基づいて、ポンプセル41の素子インピーダンスを算出する。このとき、掃引回路(図示略)によってセンサ印加電圧を所定幅(例えば0.2V)で正負両側(又は正負いずれか一方)に変化させるとともに、その印加電圧変化に伴う素子電流の変化を計測する。そして、その時の印加電圧変化量ΔVと電流変化量ΔIとから素子インピーダンスを算出する(インピーダンス=ΔV/ΔI)。なお、インピーダンス検出に際し、ポンプセル41に流す電流を交流的に変化させ、その際の電流又は電圧の変化量から素子インピーダンスを演算する構成とすることも可能である。
【0048】
このように、ポンプセル41では素子インピーダンスのフィードバック制御によりセル温度が一定に制御されており、センサ制御回路50は、Ip検出部52で検出されたポンプセル電流IpをそのままECU70に出力する。これに対し、モニタセル44及びセンサセル45では、ヒータ制御部55によりセル温度が直接制御されていないため、排気管温度が変動した場合には、その温度変動に依存してセル温度が変化する。このため、モニタセル44及びセンサセル45では、目標とする活性温度と実際のセル温度との間に温度ずれが生じる。したがって、その温度ずれに起因するセル出力の誤差を解消するために、センサ制御回路50は、Im検出部53で検出されたモニタセル電流Im及びIs検出部54で検出されたセンサセル電流Isを、排気管壁温センサ71により検出された排気管の壁温(排気管温度Tex)に応じてそれぞれ補正し、補正後の値に基づいてNOx濃度を算出する。
【0049】
具体的には、センサ制御回路50は、Im検出部53で検出したモニタセル電流Imを補正するIm補正部57と、Is検出部54で検出したセンサセル電流Isを補正するIs補正部58とを備えている。Im補正部57では、Im補正量算出部59で算出したIm補正量を入力し、そのIm補正量を用いてモニタセル電流Imを補正する。Is補正部58では、Is補正量算出部61で算出したIs補正量を入力し、そのIs補正量を用いてモニタセル電流Imを補正する。
【0050】
Im補正量算出部59及びIs補正量算出部61では、例えば排気管温度と補正量(Im補正量及びIs補正量)との関係を示す出力補正用マップを予め記憶しており、そのマップを用いて補正量を算出する。
【0051】
図6は、出力補正用マップの一例である。図6のうち(a)はIm補正量を示し、(b)はIs補正量を示す。図6のマップでは、排気管温度が所定温度Tex0の場合にIm補正量及びIs補正量がゼロとなっている。また、排気管温度が低いほどIm補正量及びIs補正量が大きくなるよう排気管温度と補正量とが関連付けられている。このとき、所定温度Tex0を境にして、排気管温度が低温側の場合に補正量が正の値となり、高温側の場合に補正量が負の値となっている。ここで、所定温度Tex0は、エンジン暖機完了時の排気管温度(例えば350℃)とするのが望ましい。
【0052】
図5において、Ip検出部52、Im検出部53及びIs検出部54は、それぞれ各セルを流れる電流を計測する電流計測抵抗と、その電流計測抵抗による計測値を増幅して出力する増幅回路とを有する電気回路(Ip計測回路、Im計測回路、Is計測回路)により実現される。また、Im補正部57、Is補正部58、Im補正量算出部59及びIs補正量算出部61は、マイコン51により実現される。
【0053】
次に、マイコン51により実行されるNOx濃度算出処理について説明する。図7は、NOxセンサ10におけるNOx濃度算出処理の処理手順を示すフローチャートである。本処理は、マイコン51により所定の時間周期で繰り返し実行される。
【0054】
図7において、ステップS11ではまず、Im計測回路にて計測されたモニタセル電流Imを入力するとともに、Is計測回路にて計測されたセンサセル電流Isを入力する。続いて、ステップS12で、センサ素子20が活性完了状態にあるか否かを判定する。ここでは、エンジン始動を開始した時点から所定時間T0(例えば10min)が経過した場合にセンサ素子20が活性完了したものと判断する。なお、センサ素子20の活性完了状態は、例えばエンジン水温や、素子インピーダンス、センサ出力値に基づいて判断してもよい。そして、センサ素子20が活性完了したものと判定されたことを条件としてステップS13へ進む。
【0055】
ステップS13では、モニタセル電流Im及びセンサセル電流Isの補正を実行するための条件(補正実行条件)が成立しているか否かを判定する。本実施形態では、エンジン始動開始(クランキング開始)から所定時間T1(例えば10数min)以内であることを補正実行条件とする。この所定時間T1は、エンジンの冷間始動時において、排気管温度が常温からエンジンの暖機完了後の温度(例えば350℃)に至るまでの時間とするのが望ましい。そして、ステップS13で補正実行条件が成立した場合にはステップS14へ進む。
【0056】
ステップS14では、排気管壁音センサ71で検出した排気管温度Texを入力する。続くステップS15では、入力した排気管温度Texに応じたIm補正量及びIs補正量を、図6に示した補正用マップを用いて各々求める。そして、ステップS16で、その算出したIm補正量及びIs補正量を用いてモニタセル電流Im及びセンサセル電流Isをそれぞれ補正する。本実施形態では、モニタセル電流Im、センサセル電流Isに、それぞれIm補正量、Is補正量を加えることにより補正を行う。その後、ステップS17で、補正後のモニタセル電流Imと補正後のセンサセル電流Isとの差分によりNOx濃度を算出する。
【0057】
なお、補正の方法としては、これに限定せず、例えば図6の補正用マップの代わりに、排気管温度に応じて設定される補正係数を予めマップ又はテーブルとして記憶しておき、排気管温度に対応する補正係数をモニタセル電流Im、センサセル電流Isに乗算することにより補正を行ってもよい。このとき、補正係数は、排気管温度が所定温度Tex0の場合に値1とし、排気管温度が低いほど補正係数が大きくなるように設定するのが望ましい。
【0058】
図8は、エンジン始動後におけるポンプセル41等の温度推移と、センサセル出力の推移とを示すタイムチャートである。図8のうち(a)はポンプセル温度、モニタセル温度及び排気管温度を示し、(b)は補正の実行時期を示し、(c)はセンサセル出力(=Is)を示す。また、図8(c)において、実線は排気管温度Texに基づいて補正した場合におけるセンサセル出力の推移を示し、一点鎖線は排気管温度Texに基づいて補正しない場合におけるセンサセル出力の推移を示す。
【0059】
図8において、エンジン始動開始後には、センサ出力は、チャンバ内の過剰酸素の排出(電極の吸着酸素の排出を含む)により出力値が大きくなり、その後、過剰酸素が排出されることで出力値が小さくなる。そして、排気中のNOx濃度に対応する出力値となることで活性完了とされる。このとき、エンジン始動開始から所定時間T0が経過した時刻t11でNOxセンサ10が活性完了状態になると、図8(c)に示すように、本実施形態では、時刻t11以降でモニタセル電流Im及びセンサセル電流Isの補正が実施される。そして、排気管温度Texが安定化するまで(すなわちエンジン始動開始から所定時間T1が経過するまで)この補正が継続して実施される。こうしてモニタセル電流Im及びセンサセル電流Isの補正が実施されることにより、センサセル出力が、従来よりも早期にかつ排気管温度に依存することなく出力Nopで安定化する。
【0060】
以上説明した実施の形態によれば、次の優れた効果が得られる。
【0061】
NOxセンサ10が取り付けられた排気管の温度(壁温)を検出し、その壁温に応じてモニタセル電流Im及びセンサセル電流Isを補正する構成としたため、排気管温度の変動に起因してモニタセル44及びセンサセル45の温度ずれが生じた場合に、その温度ずれに伴うセンサ出力誤差を解消することができる。すなわち、排気管温度の変動を考慮していない従来技術では、排気管温度の変動に伴ってモニタセル44及びセンサセル45の温度ずれが生じ、これによりセンサ出力誤差が発生するところ、本実施形態では、排気管温度に応じてモニタセル電流Im及びセンサセル電流Isを補正し、各セルの温度ずれに伴うセンサ出力誤差を解消する。その結果、NOx濃度の検出精度を向上できる。
【0062】
モニタセル電流Im及びセンサセル電流Isを補正するため、モニタセル44及びセンサセル45がヒータ33の通電制御の対象とされていないことに伴いそれらのセルで温度ずれが生じた場合であっても、その温度ずれに伴うセンサ出力誤差を好適に解消することができる。
【0063】
排気管温度に応じたモニタセル電流Im及びセンサセル電流Isの補正は、クランキング開始から所定時間T1の間のエンジン始動期間に行われるため、エンジン始動に伴う排気管温度の上昇変化に対処することができ、NOxセンサ出力の補正を好適に実現することができる。
【0064】
モニタセル電流Imとセンサセル電流Isとを共に補正対象としているため、いずれか一方のみを補正する場合に比べて検出精度を向上させることができる。また、モニタセル電流Imの補正量とセンサセル電流Isの補正量とを排気管温度に応じて別個に設定しているため、セル温度の変動に対するセル出力の変化の傾向が両セル間で相違する場合(例えば、モニタセル44とセンサセル45との材質の相違により、セル温度の変動に対するセル出力の変化の傾向が相違する場合)に、その違いを補正後の値に反映させることができ、補正の精度を向上できる。
【0065】
ポンプセル41を制御対象としてヒータ通電制御を行う構成としたため、モニタセル44又はセンサセル45を制御対象とする場合に比して、NOxセンサ10の検出精度が高く好適である。すなわち、ポンプセル41を温度制御の対象とする場合には、第2チャンバ26内の残留酸素濃度を所望の酸素濃度レベルに保持できるのに対し、モニタセル44及びセンサセル45を温度制御の対象とする場合には、第2チャンバ26内の残留酸素濃度を所望の酸素濃度レベルに保持できない。このとき、第2チャンバ26内の残留酸素濃度を所望の酸素濃度レベルに保持できれば、センサセル45の出力誤差(Is誤差)は、排気管壁の温度変動に起因するセンサセル45の温度ずれ分となる。ここで、図3に示すように、ポンプセル41とセンサセル45とでは、セル出力のスケールが大きく異なる。このため、センサセル45の温度ずれ分は、第2チャンバ26内の残留酸素濃度ずれに起因する出力誤差よりも小さいものと考えられる。したがって、ポンプセル41とモニタセル44及びセンサセル45とのうちポンプセル41を温度制御することにより、センサセル41の出力誤差レベルを小さくし、それにより検出精度の向上を図ることができる。
【0066】
ポンプセル41がセンサ素子20の先端側に配置され、モニタセル44及びセンサセル45が排気管取り付け側に配置されているため、ポンプセル41とモニタセル44及びセンサセル45とで排気管への熱放出の程度が異なる。かかる構成ではセンサ素子20で温度勾配が生じやすくなることから、上記効果が顕著となる。
【0067】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態について、第1の実施形態との相違点を中心に説明する。上記第1の実施形態では、エンジン始動開始(クランキング開始)から所定時間T1以内であることを補正実行条件としてモニタセル電流Im及びセンサセル電流Isの補正を実施したが、本実施形態では、排気管温度が所定の補正温度域にあることを補正実行条件としてそれらの補正を実施する。
【0068】
具体的には、図7のステップS13で、排気管温度Texを入力し、その排気管温度Texが補正温度域にあるか否かを判定する。この補正温度域は、排気管内の排ガス温度が低温域(例えば25℃以下)及び過高温域(例えばガソリン車で600℃以上、ディーゼル車で400℃以上)にある場合における排気管温度の範囲であり、エンジン暖機後の排気管温度Tref(例えば350℃)±α℃(例えば10℃)から外れた温度域とするのが望ましい。そして、排気管温度Texが補正温度域にある場合には、ステップS15以降で排気管温度Texに応じてモニタセル電流Im及びセンサセル電流Isを補正してNOx濃度を算出する。
【0069】
図9は、エンジン始動後におけるポンプセル41等の温度推移、センサセル出力の推移等を示すタイムチャートである。図9のうち(a)はポンプセル温度、モニタセル温度及び排気管温度を示し、(b)は補正の実行時期を示し、(c)はセンサセル出力(=Is)を示す。また、図9(c)において、実線は排気管温度Texに基づいて補正した場合におけるセンサセル出力の推移を示し、一点鎖線は排気管温度Texに基づいて補正しない場合におけるセンサセル出力の推移を示す。
【0070】
図9(a)において、エンジン始動から長期間経過後(例えば10数min経過後)に排気管温度が低下し、時刻t21で補正温度域に至ると、モニタセル電流Im及びセンサセル電流Isの補正が開始される(図9(b)参照)。これにより、センサセル出力は、図9(c)に実線で示すように、排気管温度に依存することなく出力Nopで安定化される。
【0071】
以上説明した実施の形態によれば、次の優れた効果が得られる。
【0072】
排気管温度が温度域Tref±αから外れた場合に排気管温度に応じてモニタセル電流Im及びセンサセル電流Isを補正する構成としたため、排気管温度の変化に好適に対処することができ、センサセル45による濃度検出精度を高めることができる。また、エンジン始動期間だけでなく、エンジン始動期間が経過した後(例えばアイドル制御時)であっても、排気管温度に応じてモニタセル電流Im及びセンサセル電流Isを補正することができる。その結果、センサ検出精度の向上を好適に実現できる。
【0073】
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態について、上記実施形態との相違点を中心に説明する。上記実施形態では、ポンプセル温度のフィードバック制御によりヒータ33の通電制御を実行したが、本実施形態では、モニタセル温度のフィードバック制御によりヒータ33の通電制御を実行する。なお、モニタセル44とセンサセル45とは近接配置されていることから、素子インピーダンスが概ね同一である。したがって、本実施形態において、モニタセル温度の代わりに、センサセル温度に基づいて通電制御を実行してもよい。
【0074】
図10は、本実施形態におけるセンサ制御回路50の全体構成を示す機能ブロック図である。図10のセンサ制御回路50は、図5におけるポンプセルインピーダンス検出部56の代わりに、モニタセルインピーダンス検出部62を備える点で図5と相違する。すなわち、ヒータ制御部55は、モニタセル44(及びセンサセル45)の温度が一定に保持されるようヒータ33の通電を制御し、具体的には、モニタセルインピーダンス検出部62で検出された素子インピーダンスの検出値が目標値に一致するようインピーダンスフィードバック制御を実行する。
【0075】
このように、モニタセル44の素子インピーダンスのフィードバック制御によりモニタセル44(及びセンサセル45)のセル温度が一定に制御されるシステムにおいて、センサ素子20の取り付け部位で排気管への熱放出が行われると、モニタセル44及びセンサセル45では、排気管に近接しているため、その排気管への熱放出に起因してセル温度が低下する。その温度変化を打ち消すようヒータ通電制御が実施されることになるが、その場合、ヒータ33によるセンサ素子20の加温により、ポンプセル41の温度が目標温度よりも高くなる。
【0076】
図11に、エンジン始動開始からの経過時間に伴うポンプセル温度、モニタセル温度及び排気管温度の推移を示す。図11において、エンジン始動後、ヒータ33の通電制御が実行されると、ポンプセル温度、モニタセル温度がそれぞれ上昇する。また、排気熱により排気管が加熱されることで、排気管温度も常温付近から次第に上昇する。このとき、排気管への熱放出によるモニタセル44及びセンサセル45の温度低下を抑制するためにセンサ素子20が加温されるため、モニタセル温度(及びセンサセル温度)は排気管温度の変化に依存することなく目標温度に保持される。これに対し、ポンプセル41では、センサ素子20の加温によりセル温度が目標温度よりも高くなってしまう。そのため、ポンプセル41において排気中の酸素が過剰排出され、これにより、センサセル45のオフセット電流Is0(図3(b)参照)が、第2チャンバ26内の酸素過剰排出分(酸素濃度低下分)だけ小さくなる。その影響で、モニタセル電流Im及びセンサセル電流Isに出力誤差が生じ、その結果、NOx濃度の検出精度低下を招くおそれがある。
【0077】
そこで、本実施形態では、上記第1の実施形態と同様に、センサ制御回路50において、モニタセル電流Im及びセンサセル電流Isの値をそれぞれ検出し、それらの検出値に対して排気管温度に応じた補正を行う。そして、その補正後のセンサセル電流Isとモニタセル電流Imとの差分からNOx濃度を算出する。
【0078】
図12は、エンジン始動後におけるポンプセル41等の温度推移、センサセル出力の推移等を示すタイムチャートである。図12のうち(a)はポンプセル温度、モニタセル温度及び排気管温度を示し、(b)は補正の実行時期を示し、(c)はセンサセル出力(=Is)を示す。また、図12(c)において、実線は排気管温度Texに基づいて補正した場合におけるセンサセル出力の推移を示し、一点鎖線は排気管温度Texに基づいて補正しない場合におけるセンサセル出力の推移を示す。
【0079】
図12において、エンジン始動開始から所定時間T0が経過した時刻t31でNOxセンサ10の活性化が完了すると、図12(c)に示すように、本実施形態では、時刻t31以降でモニタセル電流Im及びセンサセル電流Isの補正が実施されることにより、NOxセンサ出力が、従来よりも早期にかつ排気管温度に依存することなく出力Nopで安定化する。
【0080】
以上説明した実施の形態によれば、次の優れた効果が得られる。
【0081】
排気管温度の変動に起因するモニタセル44での温度ずれを抑制するためにセンサ素子20を加熱した結果、ポンプセル41で温度ずれが生じた場合に、その温度ずれに伴うセンサ出力誤差を解消することができる。すなわち、排気管温度の変動を考慮していない従来技術では、排気管温度が変動すると結果的にポンプセル41で温度ずれが生じ、これに伴い第2チャンバ26内の残留酸素濃度ずれが生じる。さらに、その残留酸素濃度ずれが原因でセンサ出力誤差が発生する。これに対し、本実施形態では、排気管温度に応じてモニタセル電流Im及びセンサセル電流Isを補正することで、ポンプセル41の温度ずれに伴うセンサ出力誤差を解消する。その結果、NOx濃度の検出精度を向上できる。
【0082】
(第4の実施形態)
次に、本発明の第4の実施形態について、上記第3の実施形態との相違点を中心に説明する。第3の実施形態では、モニタセル温度のフィードバック制御によりヒータ33の通電制御を実行し、排気管温度に応じてモニタセル電流Im及びセンサセル電流Isを補正したが、本実施形態では、モニタセル電流Im及びセンサセル電流Isを補正する代わりに、ポンプセル印加電圧Vpを補正する。
【0083】
すなわち、素子インピーダンスのフィードバック制御によりモニタセル44(及びセンサセル45)のセル温度が一定に制御されるシステムにおいて、センサ素子20の取り付け部位で排気管への熱放出が行われると、上述したように、排気管への熱放出に起因してモニタセル44及びセンサセル45の温度が低下する。その温度変化を打ち消すためにヒータ33の通電制御がなされてセンサ素子20が加温されると、ポンプセル41の温度が目標温度よりも高くなる。かかる場合、ポンプセル41において排気中の酸素が過剰排出されるものと考えられる。そこで、本実施形態では、ポンプセル41による過剰な酸素排出を抑制するために、ポンプセル印加電圧Vpが小さくなるよう補正する。すなわち、図3(a)のポンプセル出力特性(V−I特性)において、限界電流域では、印加電圧が大きくなるにつれて電流値がわずかに大きくなるため(すなわち、図3(a)においてわずかに右上がりであるため)、ポンプセル印加電圧Vpが小さくなるよう補正することにより、ポンプセル電流Ipが小さくなり、その結果、ポンプセル41による過剰な酸素排出が抑制されるのである。
【0084】
図13は、本実施形態におけるセンサ制御回路50の全体構成を示す機能ブロック図である。図13のセンサ制御回路50は、図10におけるIm補正部57、Is補正部58、Im補正量算出部59及びIs補正量算出部61の代わりに、Vp補正量算出部63を備えている。Vp補正量算出部63では、排気管壁温センサ71から入力した排気管温度に応じて、例えば排気管温度とVp補正量との関係を示す出力補正用マップを予め記憶しており、そのマップを用いてVp補正量を算出する。
【0085】
図14は、出力補正用マップの一例である。図14のマップでは、排気管温度が所定温度Tex0(例えば、エンジン暖機完了時の排気管温度)の場合にVp補正量がゼロになっている。また、排気管温度が低いほどVp補正量が小さくなるよう排気管温度とVp補正量とが関連付けられている。このとき、所定温度Tex0を境にして、排気管温度が低温側の場合に補正量が負の値となり、高温側の場合に補正量が正の値となっている。
【0086】
図13の説明に戻り、Vp補正量算出部63は、算出したVp補正量をポンプセル駆動部65に出力する。ポンプセル駆動部65では、Ip検出部52から入力したポンプセル印加電圧VpにVp補正量算出部63から入力したVp補正量を加えて補正し、その補正後のポンプセル印加電圧Vpがポンプセル電極42,43に印加されるようポンプセル41を駆動制御する。
【0087】
図13では、ポンプセル41に関する構成において、Vp補正量算出部63及びポンプセル駆動部65がマイコン51により実現され、Ip検出部52が電気回路(Ip計測回路)により実現される。
【0088】
次に、マイコン51により実行されるポンプセル駆動処理について説明する。図15は、NOxセンサ10におけるポンプセル駆動処理の処理手順を示すフローチャートである。本処理は、マイコン51により所定の時間周期で繰り返し実行される。
【0089】
図15において、ステップS21ではまず、Ip計測回路にて計測されたポンプセル電流Ipを入力し、ステップS22でV−I特性(図3(a)参照)からポンプセル印加電圧Vpを算出する。続いて、センサ素子20が活性完了状態であること(ステップS23)、及び補正実行条件が成立していること(ステップS24)を条件としてステップ25へ進む。
【0090】
ステップS25では、排気管温度Texを入力し、その温度に応じたVp補正量を、図14に示した補正用マップを用いて設定する。そして、ステップS27で、そのVp補正量によりポンプセル印加電圧Vpを補正した後、ステップS28で、補正後のポンプセル印加電圧Vpがポンプセル電極42,43に印加されるようポンプセル41を駆動制御する。
【0091】
以上説明した実施の形態によれば、次の優れた効果が得られる。
【0092】
排気管温度の変動に起因してモニタセル44での温度ずれを抑制するためにセンサ素子20を加熱した結果、ポンプセル41で温度ずれが生じた場合に、その温度ずれに伴うセンサ出力誤差を解消することができる。すなわち、排気管温度の変動を考慮していない従来技術では、排気管温度が変動すると結果的にポンプセル41で温度ずれが生じ、これに伴い第2チャンバ26内の残留酸素濃度ずれが生じる。さらに、その残留酸素濃度ずれが原因でセンサ出力誤差が発生する。これに対し、本実施形態では、排気管温度に応じてポンプセル印加電圧Vpを補正することで、第2チャンバ26内の残留酸素濃度が適正濃度になるよう調整する。その結果、ポンプセル41の温度ずれに伴うセンサ出力誤差を解消することができ、ひいてはNOx濃度の検出精度を向上できる。
【0093】
(他の実施形態)
本発明は上記実施形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施してもよい。
【0094】
上記実施形態では、セル出力であるセンサセル電流Is、モニタセル電流Im、又はセル印加電圧であるポンプセル印加電圧Vpを補正するのにあたり、マップを用いて連続的に行ったが、これに限定しない。例えば、1又は複数の排気管温度域に対応する補正値を予め設定しておき、排気管温度の計測値に対応する補正量を算出した後、その補正量を用いて段階的に補正を行ってもよい。
【0095】
上記実施形態では、排気管壁温センサ71により検出した排気管温度を壁温情報とし、そのセンサ検出値に基づいてセル出力であるセンサセル電流Is、モニタセル電流Im、又はセル印加電圧であるポンプセル印加電圧Vpを補正したが、壁温情報はこれに限定しない。例えば、エンジン運転状態やエンジン始動開始からの経過時間等から排気管温度を推定し、その推定した排気管温度を壁温情報としてもよい。エンジン運転状態としては、例えば、エンジン水温やエンジン回転速度等が挙げられる。これらの場合、エンジン水温等から排気温が推定され、さらにその排気温から排気管壁の温度が推定される。
【0096】
上記第3及び第4実施形態では、モニタセル44(及びセンサセル45)を制御対象としたヒータ通電制御において、それぞれセンサセル電流Is及びモニタセル電流Im、又はポンプセル印加電圧Vpを補正したが、ポンプセル電流Ipについての補正を実行してもよい。上述したように、モニタセル44(及びセンサセル45)を制御対象としたヒータ通電制御においては、モニタセル44での温度ずれを抑制するためにセンサ素子20を加熱した結果、ポンプセル41で温度ずれが生ずる。また、その温度ずれに伴って、ポンプセル41においてセンサ出力誤差が生じる。したがって、ポンプセル電流Ipを補正することで、ポンプセル41の温度ずれに伴うポンプセル出力誤差を解消することができる。例えば、ポンプセル出力から排気中の酸素濃度を検出する場合に好適である。
【0097】
上記実施形態では、センサセル電流Isとモニタセル電流Imとのそれぞれに対して個別に補正し、その補正後のセンサセル電流Isとモニタセル電流Imとの差分からNOx濃度を算出したが、センサセル電流Isとモニタセル電流Imとの差分を求めた後、その差分を補正することによりNOx濃度を算出してもよい。
【0098】
上記第1の実施形態において、モニタセル印加電圧Vm及びセンサセル印加電圧Vsを補正してもよい。すなわち、ポンプセル41を制御対象としたヒータ通電制御においては、モニタセル44及びセンサセル45で温度ずれが起こり、その温度ずれに起因してモニタセル電流Im及びセンサセル電流Isに出力誤差が生じる。そこで、V−I特性に従い、モニタセル印加電圧Vm及びセンサセル印加電圧Vsを補正することにより、モニタセル電流Im及びセンサセル電流Isの出力誤差を解消することができる。
【0099】
上記第1の実施形態では、エンジン始動開始から所定時間T1の期間にセル出力の補正を実施したが、その期間経過後にセル出力の補正を実施してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0100】
【図1】センサ素子の内部構造とセンサ制御回路とを示す構成図。
【図2】NOxセンサの全体構成を示す図。
【図3】NOxセンサの出力特性を示す図。
【図4】エンジン始動開始からの時間経過に伴うポンプセル温度、モニタセル温度、排気管温度の推移を示すタイムチャート。
【図5】センサ制御回路の全体構成を示す機能ブロック図。
【図6】出力補正用マップの一例を示す図。
【図7】NOx濃度算出処理の処理手順を示すフローチャート。
【図8】第1の実施形態におけるエンジン始動開始からの時間経過に伴うセル温度及び排気管温度の推移と、センサセル出力とを示すタイムチャート。
【図9】第2の実施形態におけるエンジン始動開始からの時間経過に伴うセル温度及び排気管温度の推移と、センサセル出力とを示すタイムチャート。
【図10】センサ制御回路の全体構成を示す機能ブロック図。
【図11】エンジン始動開始からの時間経過に伴うポンプセル温度、モニタセル温度、排気管温度の推移を示すタイムチャート。
【図12】エンジン始動開始からの時間経過に伴うセル温度及び排気管温度の推移と、センサセル出力とを示すタイムチャート。
【図13】センサ制御回路の全体構成を示す機能ブロック図。
【図14】出力補正用マップの一例を示す図。
【図15】ポンプセル駆動処理の処理手順を示すフローチャート。
【符号の説明】
【0101】
10…NOxセンサ(ガスセンサ)、20…センサ素子、21…固体電解質体、24…第1チャンバ(ガス室)、26…第2チャンバ(ガス室)、33…ヒータ、41…ポンプセル(第1セル)、42,43…電極、44…モニタセル(第3セル)、45…センサセル(第2セル)、46〜48…電極、50…センサ制御回路、51…マイコン、EP…排気管。
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス濃度検出装置に関し、特に、ガス室(チャンバ)内の酸素量を所定濃度レベルに調整する酸素ポンプセルと、その酸素量調整後のガスから特定成分の濃度(例えば窒素酸化物(NOx)濃度)を検出するセンサセルとを有するガスセンサに適用されるガス濃度検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、車載エンジンの排気中における窒素酸化物(NOx)を検出する限界電流式のNOxセンサが知られている。このNOxセンサは、ポンプセル及びセンサセルの2セル構造か、又はポンプセル、センサセル及びモニタセルからなる3セル構造を有している。これら各セルのうち、ポンプセルでは、ガス室内に導入した排気中の酸素の排出又は汲み込みが行われ、センサセルでは、ポンプセルを通過した後のガスからNOx濃度が検出される。また、モニタセルでは、ガス室内の余剰酸素量が検出される。
【0003】
さらに、NOxセンサにおいては、上記の各セルを所定の活性温度に保持するためのヒータが設けられている。この場合、各セルが設けられる固体電解質素子の抵抗値(素子インピーダンス)が検出され、その素子インピーダンスが活性温度相当の値になるようヒータの通電が制御される。より具体的には、ポンプセル又はモニタセルの何れかについて素子インピーダンスが検出され、その素子インピーダンスの検出値と目標値との偏差に応じてヒータ通電がフィードバック制御される(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2000−171439号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
エンジンの排気管にNOxセンサが取り付けられている場合、センサ素子では、同素子のセンサ取り付け部位で排気管への熱放出(熱引け)が起こる。その場合、センサ素子の先端側とそれよりも基端側(排気管取り付け部位側)との間に温度勾配が生じ、センサ素子の先端側に比して、それよりも基端側が低温となることが考えられる。また、その温度勾配は、エンジン始動に伴う排気管温度の上昇時などにおいては、排気管温度の温度変化に依存して変動することも考えられる。そのため、特許文献1のように一方のセルの素子インピーダンスに基づいてヒータ通電制御を実行する構成では、温度の制御がなされていないセルにおいて、センサ素子の温度勾配変化に伴いそのセル温度にばらつきが生じるおそれがある。
【0005】
一方で、センサ素子の出力特性は温度特性を有する。このため、セル温度がばらつくと、センサ出力に誤差が生じ、ガス濃度の検出精度が低下するおそれがある。特に、各セルにおいて排気管からの距離が異なる場合には、各セル間で排気管温度の変動の影響を受ける度合いが異なるため、上記問題が生じやすい。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、ガス濃度の検出精度を向上させることができるガス濃度検出装置を提供することを主たる目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するために、以下の手段を採用した。
【0008】
本発明のガス濃度検出装置は、各々に固体電解質体と該固体電解質体に配置された一対の電極とよりなる第1セル及び第2セルを有するセンサ素子を備え、かつ、前記第1セルの電極に電圧を印加することでガス室内に導入した被検出ガス中の酸素量を所定濃度レベルに調整するとともに前記第2セルの電極に電圧を印加することで前記第1セルによる酸素量調整後のガス中の特定成分に応じて第2セル出力を生じさせるガスセンサに適用され、前記第2セル出力により前記特定成分の濃度を算出するガス濃度検出装置において、前記ガスセンサが取り付けられたガス通路壁の温度に関する壁温情報を取得する壁温情報取得手段と、前記壁温情報取得手段により取得した前記壁温情報に基づいて、前記第1セル及び前記第2セルの少なくともいずれかのセル出力又はセル印加電圧を補正する補正手段と、を備えることを特徴とする。
【0009】
ガスセンサにおいて、センサ素子の第1セル及び第2セルは、その出力特性として温度特性を有する。また、ガスセンサの取り付け部位では、ガス通路壁への熱放出がなされる。この場合、ガス通路壁の温度が変化すると、ガス通路壁への熱放出量が変化し、それに起因して各セルでは、各セルとガス通路壁との距離に応じて出力値に影響が生じる。つまり、上記センサ素子においては、少なくともいずれかのセルでその温度が適正温度からずれてしまい、それに起因してセンサ出力に誤差が生じる。それらの点に鑑み、本発明では、ガスセンサの取り付け部位におけるガス通路壁の温度に関する壁温情報を取得し、その壁温情報に応じてセル出力又はセル印加電圧を補正する。これにより、ガスセンサの取り付け部位においてガス通路壁の温度変化があった場合であっても、セル出力又はセル印加電圧に対して排気管の温度変化を考慮した補正が行われるため、セルの温度ずれに伴うセンサ出力誤差を解消することができ、ひいてはガス濃度の検出精度を向上できる。
【0010】
一方のセルを制御対象として、そのセル温度を一定に保つようヒータの通電制御が実行される場合、温度制御がなされていない他方のセルでは、ガス通路壁の温度変化に伴うセル温度の変化が原因で適正温度からの温度ずれが生じる。この場合、温度制御がなされていない方のセルにおいて出力誤差が生じることが懸念される。この点に鑑み、請求項2に記載の発明では、前記ヒータ制御手段による温度制御の対象とされていないセル出力又はセル印加電圧を前記壁温情報に基づいて補正する。こうすることにより、温度制御の対象とされていないセルの温度ずれに起因するセンサ出力誤差を解消することができる。
【0011】
第1セル及び第2セルのうち第1セルについて温度制御が実行されている場合、ガス室内の残留酸素濃度は所望の酸素濃度レベルに保持される。一方、第2セルにおいては、第2セルが温度制御の対象とされていないため、ガス通路壁の温度変動に起因して温度ずれが起こり、その温度ずれ分に相当する出力誤差が生じるものと考えられる。この点に鑑み、請求項3に記載の発明では、第1セルを制御対象として前記ヒータの通電を制御する場合に、前記ガス通路壁の温度に基づいて前記第2セルのセル出力を補正する。こうすることで、第2セルの温度ずれに伴う出力誤差を、ガス通路壁の温度に基づく補正により解消することができ、ひいては第2セルによる濃度検出精度を高めることができる。
【0012】
第1セル及び第2セルのうち第2セルについて温度制御が実行されている場合、ガス通路壁の温度変化によりガス室内の残留酸素濃度にずれが生じ、その残留酸素濃度のずれに起因して第2セル出力に誤差が生じる。この点に鑑み、請求項4に記載の発明では、第2セルを制御対象として前記ヒータの通電を制御する場合に、前記ガス通路壁の温度に基づいて前記第1セルのセル印加電圧を補正する。これにより、ガス室内の残留酸素濃度のずれが抑制され、ひいては第2セルの出力誤差が解消される。その結果、第2セルによる濃度検出精度を高めることができる。
【0013】
第1セル及び第2セルのうち第2セルについて温度制御が実行されている場合、ガス通路壁の温度変化によりガス室内の残留酸素濃度にずれが生じ、その残留酸素濃度のずれに起因して第2セル出力に誤差が生じる。この点に鑑み、請求項5に記載の発明では、第2セルを制御対象として前記ヒータの通電を制御する場合に、前記ガス通路壁の温度に基づいて前記第2セルのセル出力を補正する。これにより、残留酸素濃度のずれに起因する第2セルの出力誤差を、ガス通路壁の温度に基づく補正により解消することができる。その結果、第2セルによる濃度検出精度を高めることができる。
【0014】
内燃機関の排気管に設けられ、排気中の特定成分の濃度(NOx濃度等)を検出するガスセンサでは、同ガスセンサのセンサ素子が排気管内中央部に突き出るようにして排気管に取り付けられている。また、センサ素子に、同素子の先端側と排気管取り付け側とのそれぞれ異なる位置に前記第1セルと前記第2セルとが設けられる構成において、前記内燃機関の排気管壁の温度に基づいてセル出力又はセル印加電圧を補正するとよい。特に、第1セルと第2セルとが排気管の取り付け部位から異なる位置(例えば第1セルがセンサ素子の先端側であって第2セルが排気管取り付け側)に配置されている場合には、各セルにおいて排気管への熱放出によるセル温度の変化の程度が異なる。このため、上記構成では、排気管温度の変化に伴いセンサ素子における温度勾配が変化しやすいことから、本発明を好ましく適用できる。
【0015】
内燃機関の始動時には、内燃機関の始動に伴い排気管温度が常温から上昇するため、排気管の温度変化に依存してセンサ素子の温度勾配が変化し、これによりセルの温度ずれが生じやすい。この点に鑑み、請求項7に記載の発明では、前記内燃機関の所定始動期間においてセル出力又はセル印加電圧の補正を実行する。これにより、排気管の温度変化に伴いセルの温度ずれが生じた場合であっても、セル出力又はセル印加電圧に対して排気管の温度変化を考慮した補正を行うため、その温度ずれに伴うセンサ出力誤差を好適に解消できる。
【0016】
ガス通路壁の温度が所定温度(ガスセンサが内燃機関の排気管に取り付けられている場合、例えば350℃)から外れるほど各セルの温度ずれが大きくなり、その結果ガス濃度の検出精度が低下する。この点に鑑み、請求項8に記載の発明では、ガス通路壁の温度が補正温度域にある場合にセンサ出力の補正を実行する。各セルの温度ずれが大きい場合には、その温度ずれに伴いセンサ素子の出力誤差が大きくなることから、センサ出力の補正を実施するのが望ましい。
【0017】
ここで、補正温度域は、例えばガスセンサが内燃機関の排気管に取り付けられている場合、排気管内を通過する排ガスの温度が低温域(例えば25℃以下)及び過高温域(例えばガソリン車で600℃以上、ディーゼル車で400℃以上)の場合における排気管温度域か、又は内燃機関の暖機後における排気管温度(例えば350℃±10℃)から外れた温度域とするのが望ましい。
【0018】
ガスセンサが第1セル、第2セル及び第3セルからなる3セル構造を有する場合、すなわち、ガスセンサにおけるセンサ素子が、固体電解質体と該固体電解質体に配置された一対の電極とよりなり、前記第1セルの酸素量調整後のガスから前記ガス室内の残留酸素濃度を検出する第3セルを更に備える場合、そのガスセンサでは、第2セルで検出した特定成分の濃度から第3セルで検出した残留酸素濃度を差し引いた値により、被検出ガス中の特定成分の濃度が算出される。この場合、請求項9に記載したように、前記ガス通路壁の温度に基づいて前記第2セルの電流値と前記第3セルの電流値とを補正するとよい。これにより、第2セルと第3セルとにおいて温度ずれによる影響度がそれぞれ異なっていても、それぞれの影響度に合わせた補正を行うことができ、ひいては特定成分の濃度を精度よく算出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
(第1の実施形態)
以下、本発明を具体化した第1の実施形態を図面に基づいて説明する。本実施形態では、車載エンジンの排気管に設けられたNOxセンサを用い、そのNOxセンサの出力に基づいて排気中のNOx濃度を検出するNOx濃度検出システムについて説明する。なお、車載エンジンは、例えばディーゼルエンジンであり、同エンジンの排気管に設けられる排気浄化装置としてのNOx浄化触媒(NOx吸蔵還元型触媒やアンモニア選択還元触媒等)について、NOxセンサの出力に基づいて異常診断等が実施されるようになっている。例えば、NOx浄化触媒の下流側にNOxセンサが設けられ、同NOxセンサの出力から算出されるNOx濃度(NOx浄化率)が所定の異常判定値を上回る場合に、NOx浄化触媒が異常である旨診断される。
【0020】
NOxセンサ10の構成を、図1及び図2を用いて説明する。ここではまず、図2を用いて、NOxセンサ10の全体構成を説明する。
【0021】
図2に示すように、NOxセンサ10は、先端側カバー11とハウジング12と基端側カバー13とを有し、全体として略円柱状をなす。そして、その内部に長尺状のセンサ素子20が収容されている。NOxセンサ10は、ハウジング12にて排気管EPの壁部に取り付けられるようになっており、その取り付けられた状態では先端側カバー11が排気管EP内に配され、先端側カバー11に設けられた複数の小孔(通気孔)11aを通じて排気がセンサ素子20に供給されるようになっている。つまり、NOxセンサ10は、センサ素子20が排気管内中央部に突き出るようにして排気管EPに取り付けられている。図中、「PS」は後述するポンプセルを示し、「SS」は後述するセンサセルを示す。
【0022】
センサ素子20は、いわゆる積層型構造を有するものである。なお、図示は省略するが、先端側カバー11は内外二重構造となっており、内外の各カバーには、センサ素子20の被水防止対策として、その内外において互い違いとなる位置に(すなわち迷路状に)複数の小孔11aが設けられている。
【0023】
次に、センサ素子20の構成を、図1を用いて説明する。図1には、センサ素子20の内部構造を示しており、図の左右方向が同素子の長手方向に相当する。すなわち、図の右側が素子基端側(排気管取り付け部位側)であり、図の左側が素子先端側となっている。
【0024】
センサ素子20は、ポンプセル、センサセル及びモニタセルからなる、いわゆる3セル構造を有するものであり、それら各セルが積層配置されて構成されている。なお、モニタセルは、ポンプセル同様、ガス中の酸素排出の機能を具備するため、補助ポンプセル又は第2ポンプセルと称される場合もある。
【0025】
センサ素子20において、ジルコニア等の酸素イオン導電性材料からなる固体電解質体21,22はシート状をなし、アルミナ等の絶縁材料からなるスペーサ23を介して図の上下に所定間隔を隔てて積層されている。このうち、図の上側の固体電解質体21には排気導入口21aが形成されており、この排気導入口21aを介して当該センサ素子周囲の排気が第1チャンバ24内に導入される。第1チャンバ24は、絞り部25を介して第2チャンバ26に連通している。固体電解質体21の図の上面には、排気を所定の拡散抵抗で出し入れするための多孔質拡散層27が設けられるとともに、大気通路28を区画形成するための絶縁層29が設けられている。
【0026】
また、固体電解質体22の図の下面にはアルミナ等よりなる絶縁層31が設けられ、この絶縁層31により大気通路32が形成されている。絶縁層31には、センサ全体を加熱するためのヒータ(発熱体)33が埋設されている。この場合、ヒータ33により、ポンプセル41、モニタセル44及びセンサセル45が加熱され、これら各セル41,44,45が活性状態とされる。ヒータ33は、図示しないバッテリ電源等からの給電により熱エネルギを発生する。
【0027】
図の下側の固体電解質体22には、第1チャンバ24に対面するようにしてポンプセル41が設けられており、ポンプセル41は、第1チャンバ24内に導入された排気中の酸素を出し入れして同チャンバ24内の残留酸素濃度を所定濃度に調整する。ポンプセル41は、固体電解質体22を挟んで設けられる上下一対の電極42,43を有し、そのうち特に第1チャンバ24側の電極42はNOx不活性電極(NOxを分解し難い電極)となっている。ポンプセル41は、電極42,43間に電圧が印加された状態で、第1チャンバ24内に存在する酸素を分解して電極43より大気通路32側に排出する。
【0028】
また、図の上側の固体電解質体21には、第2チャンバ26に対面するようにしてモニタセル44及びセンサセル45が設けられている。モニタセル44は、上述したポンプセル41により余剰酸素が排出された後に、第2チャンバ26内の残留酸素濃度に応じて起電力、又は電圧印加に伴い電流出力を発生する。センサセル45は、第2チャンバ26内のガスからNOx濃度を検出する。
【0029】
モニタセル44及びセンサセル45は、互いに近接した位置に並べて配置されており、第2チャンバ26側に電極46,47を有するとともに、大気通路28側に共通電極48を有する構成となっている。すなわち、モニタセル44は、固体電解質体21とそれを挟んで対向配置された電極46及び共通電極48とにより構成され、センサセル45は、同じく固体電解質体21とそれを挟んで対向配置された電極47及び共通電極48とにより構成されている。モニタセル44の電極46(第2チャンバ26側の電極)はNOxに不活性なAu−Pt等の貴金属からなるのに対し、センサセル45の電極47(第2チャンバ26側の電極)はNOxに活性な白金Pt、ロジウムRh等の貴金属からなる。なお、便宜上図面ではモニタセル44及びセンサセル45を排気の流れ方向に対して前後に並べて示すが、実際には、これら各セル44,45は排気の流れ方向に対して同等位置になるよう配置されている。
【0030】
ここで、ポンプセル41と、モニタセル44及びセンサセル45とは、センサ素子20の長手方向に並べて設けられており、センサ素子20の先端側にポンプセル41が設けられ、同基端側(排気管取り付け側)にモニタセル44及びセンサセル45が設けられている。
【0031】
上記構成のセンサ素子20(NOxセンサ10)では、排気は多孔質拡散層27及び排気導入口21aを通って第1チャンバ24に導入される。そして、この排気がポンプセル41近傍を通過する際、ポンプセル電極42,43間にポンプセル印加電圧Vpが印加されることで分解反応が起こる。これにより、第1チャンバ24内の酸素濃度に応じて、ポンプセル41を介して酸素が出し入れされる。なお、第1チャンバ24側の電極42がNOx不活性電極であるため、ポンプセル41では排気中のNOxは分解されず、酸素のみが分解されて電極43から大気通路32に排出される。こうしたポンプセル41の働きにより、第1チャンバ24内を所定の低酸素濃度の状態に保持する。
【0032】
ポンプセル41近傍を通過したガスは第2チャンバ26に流れ込み、モニタセル44では、ガス中の残留酸素濃度に応じた出力が発生する。モニタセル44の出力は、モニタセル電極46,48間に所定のモニタセル印加電圧Vmが印加されることでモニタセル電流Imとして検出される。また、センサセル電極47,48間に所定のセンサセル印加電圧Vsが印加されることでガス中のNOxが還元分解され、その際発生する酸素が電極48から大気通路28に排出される。このとき、センサセル45に流れた電流(センサセル電流Is)により、最終的に排気中のNOx濃度が検出される。
【0033】
ここで、NOxセンサ10の出力特性について、図3を用いて説明する。図3のうち(a)はポンプセル41の出力特性(V−I特性)を示し、(b)はセンサセル45の出力特性(V−I特性)を示す。なお、図3において、横軸は印加電圧Vp,Vsであり、縦軸はセル電流Ip,Isである。
【0034】
図3(a)において、電圧軸(横軸)に平行な平坦部分は、ポンプセル電流Ipを特定する限界電流域である。そして、限界電流域におけるポンプセル電流Ipが排気中の酸素濃度と関連付けられている。つまり、排気中の酸素濃度が多いほどポンプセル電流Ipが増大する。この限界電流域は、排気中の酸素濃度が多いほど高電圧側にシフトする。また、限界電流域が高温側にシフトするのに合わせて、ポンプセル印加電圧Vpを決定するための印加電圧特性(印加電圧線Vp0)も高温側にシフトする。
【0035】
また、図3(b)において、電圧軸(横軸)に平行な平坦部分は、センサセル電流Isを特定する限界電流域である。そして、限界電流域におけるセンサセル電流Isが排気中のNOx濃度に関連付けられている。つまり、排気中のNOx濃度が増えるほどセンサセル電流Isが増大する。センサセル印加電圧Vsは、所定NOx濃度相当のセンサセル電流Isを限界電流域で検出可能とする所定値Vs0で設定されている。
【0036】
図1の説明に戻り、センサ制御回路50は、センサ制御の主体となるマイコン51を有している。マイコン51は、ポンプセル41の電極42,43間に印加するポンプセル電圧Vp、モニタセル44の電極46,48間に印加するモニタセル電圧Vm、センサセル45の電極47,48間に印加するセンサセル電圧Vsをそれぞれ制御する。また、マイコン51は、ポンプセル41に流れる電流(ポンプセル電流Ip)、モニタセル44に流れる電流(モニタセル電流Im)及びセンサセル電流Isの各々の計測値を逐次入力する。そして、入力したモニタセル電流Imとセンサセル電流Isとの差分により排気中のNOx濃度を算出する。さらに、マイコン51は、ポンプセル41を制御対象とし、ポンプセル温度が目標とする活性温度(例えば750℃)に一定に保持されるようヒータ23の通電を制御する。
【0037】
ECU70は、車載のエンジンECUであり、それらの制御の主体となるマイコン(図示略)を有している。ECU70は、都度の運転状態に基づいて燃料噴射弁の燃料噴射量や点火装置による点火時期を制御する。また、センサ制御回路50から入力したNOx濃度の値により排気中のNOxの監視等を行う。
【0038】
ところで、NOxセンサ10では、排気管EPに取り付けられることで、センサ素子20の熱がその基端側から排気管EPに放出される。かかる場合、センサ素子20の基端側では、同先端側よりも低温となる。すなわち、センサ素子20では、その長手方向において温度勾配(温度分布)が存在しており、先端側に配置されたポンプセル41が比較的高温になり、同基端側に配置されたモニタセル44及びセンサセル45が比較的低温になる。
【0039】
この温度勾配は、エンジンの冷間始動時には排気管EPの温度が上昇するため、その温度上昇に伴い変化する。つまり、エンジン始動の開始直後とエンジンの暖機完了後とでは排気管EPの壁温が相違するが、このとき、モニタセル44及びセンサセル45は、ポンプセル41よりも排気管EPに近いことから、排気管壁の温度変化の影響を受けやすい。このため、エンジン始動時に排気管壁の温度が比較的低温であれば、モニタセル44及びセンサセル45も比較的低温となり、エンジンの暖機に伴い排気管壁の温度が上昇すれば、それに伴いモニタセル44及びセンサセル45の温度も上昇する。その結果、センサ素子20では、その長手方向の温度勾配が排気管壁の温度に依存して変化することとなる。
【0040】
特に、本実施形態のヒータ通電制御においては、ポンプセル41を制御対象としてその温度が目標とする活性温度に一定に保持されるようヒータ33を通電制御する。一方、モニタセル44及びセンサセル45では、ポンプセル温度を基準にヒータ23が通電制御されることで、温度変動要因(外乱)のない通常時において、それらのセル温度が目標とする活性温度(例えば700℃)に保持されるようになっている。上記のようにポンプセル41を制御対象とする場合、モニタセル44及びセンサセル45について温度変動要因が生じると、その温度変動要因に影響されて温度変化が生じやすい。
【0041】
図4は、エンジン始動開始からの時間経過に伴うポンプセル温度、モニタセル温度及び排気管温度の推移を示すタイムチャートである。なお、モニタセル44とセンサセル45とは近接配置されているため、両者のセル温度は同等となる。
【0042】
図4において、エンジン始動後、ヒータ33の通電制御が実行されると、ポンプセル温度、モニタセル温度がそれぞれ上昇する。また、排気熱により排気管EPが加熱されることで、排気管温度も常温付近から次第に上昇する。このとき、上述したように、センサ素子20から排気管へ熱放出がなされるため、ポンプセル41とモニタセル44及びセンサセル45との温度差(すなわち、センサ素子20の温度勾配)が形成される。また、その温度勾配は、排気管温度の変動に伴い変動する。つまり、モニタセル44及びセンサセル45の温度は、ヒータ33の通電制御による制御対象とされていないため、排気管への熱放出により目標温度よりも低くなってしまう。
【0043】
また、各セル41,44,45においては、その出力特性として温度特性を有しており、各セル温度が活性温度とされることで好適なセンサ制御が実現される。このため、排気管温度の変動に伴う排気管EPへの熱放出によりセル温度が変動して活性温度からずれると、センサ出力に誤差が生じ、NOx濃度の検出精度低下を招くおそれがある。
【0044】
そこで、本実施形態では、排気管EPの壁温を検出し、その壁温に基づいてセンサ出力を補正する。具体的には、本実施形態のセンサ制御回路50において、モニタセル電流Im及びセンサセル電流Isの値をそれぞれ検出し、それらの検出値に対して排気管EPの壁温に応じた補正を行う。そして、その補正後のモニタセル電流Im及びセンサセル電流Isの差分からNOx濃度を算出する。
【0045】
図5に、本実施形態におけるセンサ制御回路50の全体構成を示す機能ブロック図を示す。図5に示すように、センサ制御回路50は、ポンプセル電流Ipを検出するIp検出部52と、モニタセル電流Imを検出するIm検出部53と、センサセル電流Isを検出するIs検出部54とを備えている。Ip検出部52は、ポンプセル電極42,43にポンプセル印加電圧Vpが印加された状態で電極42,43間に流れるポンプセル電流Ipを検出する。Im検出部53は、モニタセル電極46,48にモニタセル印加電圧Vmが印加された状態で電極46,48間に流れるモニタセル電流Imを検出する。Is検出部54は、センサセル電極47,48にセンサセル印加電圧Vsが印加された状態で電極47,48間に流れるセンサセル電流Isを検出する。
【0046】
また、センサ制御回路50は、ヒータ33の通電を制御するヒータ制御部55を有している。ヒータ制御部55は、ポンプセル41の温度が一定に保持されるようヒータ33の通電を制御する。具体的には、ポンプセルインピーダンス検出部56は、ポンプセル41を対象にして素子インピーダンスを検出し、ヒータ制御部55は、ポンプセルインピーダンス検出部56で検出された素子インピーダンスの検出値が目標値に一致するようインピーダンスフィードバック制御を実行する。
【0047】
素子インピーダンスの検出方法は特に限定しないが、本実施形態では、いわゆる掃引法を用いて素子インピーダンスを検出する。具体的には、ポンプセルインピーダンス検出部56は、ポンプセル電極42,43の印加電圧を一時的に交流的に変化させる旨指令し、その際の電流変化量に基づいて、ポンプセル41の素子インピーダンスを算出する。このとき、掃引回路(図示略)によってセンサ印加電圧を所定幅(例えば0.2V)で正負両側(又は正負いずれか一方)に変化させるとともに、その印加電圧変化に伴う素子電流の変化を計測する。そして、その時の印加電圧変化量ΔVと電流変化量ΔIとから素子インピーダンスを算出する(インピーダンス=ΔV/ΔI)。なお、インピーダンス検出に際し、ポンプセル41に流す電流を交流的に変化させ、その際の電流又は電圧の変化量から素子インピーダンスを演算する構成とすることも可能である。
【0048】
このように、ポンプセル41では素子インピーダンスのフィードバック制御によりセル温度が一定に制御されており、センサ制御回路50は、Ip検出部52で検出されたポンプセル電流IpをそのままECU70に出力する。これに対し、モニタセル44及びセンサセル45では、ヒータ制御部55によりセル温度が直接制御されていないため、排気管温度が変動した場合には、その温度変動に依存してセル温度が変化する。このため、モニタセル44及びセンサセル45では、目標とする活性温度と実際のセル温度との間に温度ずれが生じる。したがって、その温度ずれに起因するセル出力の誤差を解消するために、センサ制御回路50は、Im検出部53で検出されたモニタセル電流Im及びIs検出部54で検出されたセンサセル電流Isを、排気管壁温センサ71により検出された排気管の壁温(排気管温度Tex)に応じてそれぞれ補正し、補正後の値に基づいてNOx濃度を算出する。
【0049】
具体的には、センサ制御回路50は、Im検出部53で検出したモニタセル電流Imを補正するIm補正部57と、Is検出部54で検出したセンサセル電流Isを補正するIs補正部58とを備えている。Im補正部57では、Im補正量算出部59で算出したIm補正量を入力し、そのIm補正量を用いてモニタセル電流Imを補正する。Is補正部58では、Is補正量算出部61で算出したIs補正量を入力し、そのIs補正量を用いてモニタセル電流Imを補正する。
【0050】
Im補正量算出部59及びIs補正量算出部61では、例えば排気管温度と補正量(Im補正量及びIs補正量)との関係を示す出力補正用マップを予め記憶しており、そのマップを用いて補正量を算出する。
【0051】
図6は、出力補正用マップの一例である。図6のうち(a)はIm補正量を示し、(b)はIs補正量を示す。図6のマップでは、排気管温度が所定温度Tex0の場合にIm補正量及びIs補正量がゼロとなっている。また、排気管温度が低いほどIm補正量及びIs補正量が大きくなるよう排気管温度と補正量とが関連付けられている。このとき、所定温度Tex0を境にして、排気管温度が低温側の場合に補正量が正の値となり、高温側の場合に補正量が負の値となっている。ここで、所定温度Tex0は、エンジン暖機完了時の排気管温度(例えば350℃)とするのが望ましい。
【0052】
図5において、Ip検出部52、Im検出部53及びIs検出部54は、それぞれ各セルを流れる電流を計測する電流計測抵抗と、その電流計測抵抗による計測値を増幅して出力する増幅回路とを有する電気回路(Ip計測回路、Im計測回路、Is計測回路)により実現される。また、Im補正部57、Is補正部58、Im補正量算出部59及びIs補正量算出部61は、マイコン51により実現される。
【0053】
次に、マイコン51により実行されるNOx濃度算出処理について説明する。図7は、NOxセンサ10におけるNOx濃度算出処理の処理手順を示すフローチャートである。本処理は、マイコン51により所定の時間周期で繰り返し実行される。
【0054】
図7において、ステップS11ではまず、Im計測回路にて計測されたモニタセル電流Imを入力するとともに、Is計測回路にて計測されたセンサセル電流Isを入力する。続いて、ステップS12で、センサ素子20が活性完了状態にあるか否かを判定する。ここでは、エンジン始動を開始した時点から所定時間T0(例えば10min)が経過した場合にセンサ素子20が活性完了したものと判断する。なお、センサ素子20の活性完了状態は、例えばエンジン水温や、素子インピーダンス、センサ出力値に基づいて判断してもよい。そして、センサ素子20が活性完了したものと判定されたことを条件としてステップS13へ進む。
【0055】
ステップS13では、モニタセル電流Im及びセンサセル電流Isの補正を実行するための条件(補正実行条件)が成立しているか否かを判定する。本実施形態では、エンジン始動開始(クランキング開始)から所定時間T1(例えば10数min)以内であることを補正実行条件とする。この所定時間T1は、エンジンの冷間始動時において、排気管温度が常温からエンジンの暖機完了後の温度(例えば350℃)に至るまでの時間とするのが望ましい。そして、ステップS13で補正実行条件が成立した場合にはステップS14へ進む。
【0056】
ステップS14では、排気管壁音センサ71で検出した排気管温度Texを入力する。続くステップS15では、入力した排気管温度Texに応じたIm補正量及びIs補正量を、図6に示した補正用マップを用いて各々求める。そして、ステップS16で、その算出したIm補正量及びIs補正量を用いてモニタセル電流Im及びセンサセル電流Isをそれぞれ補正する。本実施形態では、モニタセル電流Im、センサセル電流Isに、それぞれIm補正量、Is補正量を加えることにより補正を行う。その後、ステップS17で、補正後のモニタセル電流Imと補正後のセンサセル電流Isとの差分によりNOx濃度を算出する。
【0057】
なお、補正の方法としては、これに限定せず、例えば図6の補正用マップの代わりに、排気管温度に応じて設定される補正係数を予めマップ又はテーブルとして記憶しておき、排気管温度に対応する補正係数をモニタセル電流Im、センサセル電流Isに乗算することにより補正を行ってもよい。このとき、補正係数は、排気管温度が所定温度Tex0の場合に値1とし、排気管温度が低いほど補正係数が大きくなるように設定するのが望ましい。
【0058】
図8は、エンジン始動後におけるポンプセル41等の温度推移と、センサセル出力の推移とを示すタイムチャートである。図8のうち(a)はポンプセル温度、モニタセル温度及び排気管温度を示し、(b)は補正の実行時期を示し、(c)はセンサセル出力(=Is)を示す。また、図8(c)において、実線は排気管温度Texに基づいて補正した場合におけるセンサセル出力の推移を示し、一点鎖線は排気管温度Texに基づいて補正しない場合におけるセンサセル出力の推移を示す。
【0059】
図8において、エンジン始動開始後には、センサ出力は、チャンバ内の過剰酸素の排出(電極の吸着酸素の排出を含む)により出力値が大きくなり、その後、過剰酸素が排出されることで出力値が小さくなる。そして、排気中のNOx濃度に対応する出力値となることで活性完了とされる。このとき、エンジン始動開始から所定時間T0が経過した時刻t11でNOxセンサ10が活性完了状態になると、図8(c)に示すように、本実施形態では、時刻t11以降でモニタセル電流Im及びセンサセル電流Isの補正が実施される。そして、排気管温度Texが安定化するまで(すなわちエンジン始動開始から所定時間T1が経過するまで)この補正が継続して実施される。こうしてモニタセル電流Im及びセンサセル電流Isの補正が実施されることにより、センサセル出力が、従来よりも早期にかつ排気管温度に依存することなく出力Nopで安定化する。
【0060】
以上説明した実施の形態によれば、次の優れた効果が得られる。
【0061】
NOxセンサ10が取り付けられた排気管の温度(壁温)を検出し、その壁温に応じてモニタセル電流Im及びセンサセル電流Isを補正する構成としたため、排気管温度の変動に起因してモニタセル44及びセンサセル45の温度ずれが生じた場合に、その温度ずれに伴うセンサ出力誤差を解消することができる。すなわち、排気管温度の変動を考慮していない従来技術では、排気管温度の変動に伴ってモニタセル44及びセンサセル45の温度ずれが生じ、これによりセンサ出力誤差が発生するところ、本実施形態では、排気管温度に応じてモニタセル電流Im及びセンサセル電流Isを補正し、各セルの温度ずれに伴うセンサ出力誤差を解消する。その結果、NOx濃度の検出精度を向上できる。
【0062】
モニタセル電流Im及びセンサセル電流Isを補正するため、モニタセル44及びセンサセル45がヒータ33の通電制御の対象とされていないことに伴いそれらのセルで温度ずれが生じた場合であっても、その温度ずれに伴うセンサ出力誤差を好適に解消することができる。
【0063】
排気管温度に応じたモニタセル電流Im及びセンサセル電流Isの補正は、クランキング開始から所定時間T1の間のエンジン始動期間に行われるため、エンジン始動に伴う排気管温度の上昇変化に対処することができ、NOxセンサ出力の補正を好適に実現することができる。
【0064】
モニタセル電流Imとセンサセル電流Isとを共に補正対象としているため、いずれか一方のみを補正する場合に比べて検出精度を向上させることができる。また、モニタセル電流Imの補正量とセンサセル電流Isの補正量とを排気管温度に応じて別個に設定しているため、セル温度の変動に対するセル出力の変化の傾向が両セル間で相違する場合(例えば、モニタセル44とセンサセル45との材質の相違により、セル温度の変動に対するセル出力の変化の傾向が相違する場合)に、その違いを補正後の値に反映させることができ、補正の精度を向上できる。
【0065】
ポンプセル41を制御対象としてヒータ通電制御を行う構成としたため、モニタセル44又はセンサセル45を制御対象とする場合に比して、NOxセンサ10の検出精度が高く好適である。すなわち、ポンプセル41を温度制御の対象とする場合には、第2チャンバ26内の残留酸素濃度を所望の酸素濃度レベルに保持できるのに対し、モニタセル44及びセンサセル45を温度制御の対象とする場合には、第2チャンバ26内の残留酸素濃度を所望の酸素濃度レベルに保持できない。このとき、第2チャンバ26内の残留酸素濃度を所望の酸素濃度レベルに保持できれば、センサセル45の出力誤差(Is誤差)は、排気管壁の温度変動に起因するセンサセル45の温度ずれ分となる。ここで、図3に示すように、ポンプセル41とセンサセル45とでは、セル出力のスケールが大きく異なる。このため、センサセル45の温度ずれ分は、第2チャンバ26内の残留酸素濃度ずれに起因する出力誤差よりも小さいものと考えられる。したがって、ポンプセル41とモニタセル44及びセンサセル45とのうちポンプセル41を温度制御することにより、センサセル41の出力誤差レベルを小さくし、それにより検出精度の向上を図ることができる。
【0066】
ポンプセル41がセンサ素子20の先端側に配置され、モニタセル44及びセンサセル45が排気管取り付け側に配置されているため、ポンプセル41とモニタセル44及びセンサセル45とで排気管への熱放出の程度が異なる。かかる構成ではセンサ素子20で温度勾配が生じやすくなることから、上記効果が顕著となる。
【0067】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態について、第1の実施形態との相違点を中心に説明する。上記第1の実施形態では、エンジン始動開始(クランキング開始)から所定時間T1以内であることを補正実行条件としてモニタセル電流Im及びセンサセル電流Isの補正を実施したが、本実施形態では、排気管温度が所定の補正温度域にあることを補正実行条件としてそれらの補正を実施する。
【0068】
具体的には、図7のステップS13で、排気管温度Texを入力し、その排気管温度Texが補正温度域にあるか否かを判定する。この補正温度域は、排気管内の排ガス温度が低温域(例えば25℃以下)及び過高温域(例えばガソリン車で600℃以上、ディーゼル車で400℃以上)にある場合における排気管温度の範囲であり、エンジン暖機後の排気管温度Tref(例えば350℃)±α℃(例えば10℃)から外れた温度域とするのが望ましい。そして、排気管温度Texが補正温度域にある場合には、ステップS15以降で排気管温度Texに応じてモニタセル電流Im及びセンサセル電流Isを補正してNOx濃度を算出する。
【0069】
図9は、エンジン始動後におけるポンプセル41等の温度推移、センサセル出力の推移等を示すタイムチャートである。図9のうち(a)はポンプセル温度、モニタセル温度及び排気管温度を示し、(b)は補正の実行時期を示し、(c)はセンサセル出力(=Is)を示す。また、図9(c)において、実線は排気管温度Texに基づいて補正した場合におけるセンサセル出力の推移を示し、一点鎖線は排気管温度Texに基づいて補正しない場合におけるセンサセル出力の推移を示す。
【0070】
図9(a)において、エンジン始動から長期間経過後(例えば10数min経過後)に排気管温度が低下し、時刻t21で補正温度域に至ると、モニタセル電流Im及びセンサセル電流Isの補正が開始される(図9(b)参照)。これにより、センサセル出力は、図9(c)に実線で示すように、排気管温度に依存することなく出力Nopで安定化される。
【0071】
以上説明した実施の形態によれば、次の優れた効果が得られる。
【0072】
排気管温度が温度域Tref±αから外れた場合に排気管温度に応じてモニタセル電流Im及びセンサセル電流Isを補正する構成としたため、排気管温度の変化に好適に対処することができ、センサセル45による濃度検出精度を高めることができる。また、エンジン始動期間だけでなく、エンジン始動期間が経過した後(例えばアイドル制御時)であっても、排気管温度に応じてモニタセル電流Im及びセンサセル電流Isを補正することができる。その結果、センサ検出精度の向上を好適に実現できる。
【0073】
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態について、上記実施形態との相違点を中心に説明する。上記実施形態では、ポンプセル温度のフィードバック制御によりヒータ33の通電制御を実行したが、本実施形態では、モニタセル温度のフィードバック制御によりヒータ33の通電制御を実行する。なお、モニタセル44とセンサセル45とは近接配置されていることから、素子インピーダンスが概ね同一である。したがって、本実施形態において、モニタセル温度の代わりに、センサセル温度に基づいて通電制御を実行してもよい。
【0074】
図10は、本実施形態におけるセンサ制御回路50の全体構成を示す機能ブロック図である。図10のセンサ制御回路50は、図5におけるポンプセルインピーダンス検出部56の代わりに、モニタセルインピーダンス検出部62を備える点で図5と相違する。すなわち、ヒータ制御部55は、モニタセル44(及びセンサセル45)の温度が一定に保持されるようヒータ33の通電を制御し、具体的には、モニタセルインピーダンス検出部62で検出された素子インピーダンスの検出値が目標値に一致するようインピーダンスフィードバック制御を実行する。
【0075】
このように、モニタセル44の素子インピーダンスのフィードバック制御によりモニタセル44(及びセンサセル45)のセル温度が一定に制御されるシステムにおいて、センサ素子20の取り付け部位で排気管への熱放出が行われると、モニタセル44及びセンサセル45では、排気管に近接しているため、その排気管への熱放出に起因してセル温度が低下する。その温度変化を打ち消すようヒータ通電制御が実施されることになるが、その場合、ヒータ33によるセンサ素子20の加温により、ポンプセル41の温度が目標温度よりも高くなる。
【0076】
図11に、エンジン始動開始からの経過時間に伴うポンプセル温度、モニタセル温度及び排気管温度の推移を示す。図11において、エンジン始動後、ヒータ33の通電制御が実行されると、ポンプセル温度、モニタセル温度がそれぞれ上昇する。また、排気熱により排気管が加熱されることで、排気管温度も常温付近から次第に上昇する。このとき、排気管への熱放出によるモニタセル44及びセンサセル45の温度低下を抑制するためにセンサ素子20が加温されるため、モニタセル温度(及びセンサセル温度)は排気管温度の変化に依存することなく目標温度に保持される。これに対し、ポンプセル41では、センサ素子20の加温によりセル温度が目標温度よりも高くなってしまう。そのため、ポンプセル41において排気中の酸素が過剰排出され、これにより、センサセル45のオフセット電流Is0(図3(b)参照)が、第2チャンバ26内の酸素過剰排出分(酸素濃度低下分)だけ小さくなる。その影響で、モニタセル電流Im及びセンサセル電流Isに出力誤差が生じ、その結果、NOx濃度の検出精度低下を招くおそれがある。
【0077】
そこで、本実施形態では、上記第1の実施形態と同様に、センサ制御回路50において、モニタセル電流Im及びセンサセル電流Isの値をそれぞれ検出し、それらの検出値に対して排気管温度に応じた補正を行う。そして、その補正後のセンサセル電流Isとモニタセル電流Imとの差分からNOx濃度を算出する。
【0078】
図12は、エンジン始動後におけるポンプセル41等の温度推移、センサセル出力の推移等を示すタイムチャートである。図12のうち(a)はポンプセル温度、モニタセル温度及び排気管温度を示し、(b)は補正の実行時期を示し、(c)はセンサセル出力(=Is)を示す。また、図12(c)において、実線は排気管温度Texに基づいて補正した場合におけるセンサセル出力の推移を示し、一点鎖線は排気管温度Texに基づいて補正しない場合におけるセンサセル出力の推移を示す。
【0079】
図12において、エンジン始動開始から所定時間T0が経過した時刻t31でNOxセンサ10の活性化が完了すると、図12(c)に示すように、本実施形態では、時刻t31以降でモニタセル電流Im及びセンサセル電流Isの補正が実施されることにより、NOxセンサ出力が、従来よりも早期にかつ排気管温度に依存することなく出力Nopで安定化する。
【0080】
以上説明した実施の形態によれば、次の優れた効果が得られる。
【0081】
排気管温度の変動に起因するモニタセル44での温度ずれを抑制するためにセンサ素子20を加熱した結果、ポンプセル41で温度ずれが生じた場合に、その温度ずれに伴うセンサ出力誤差を解消することができる。すなわち、排気管温度の変動を考慮していない従来技術では、排気管温度が変動すると結果的にポンプセル41で温度ずれが生じ、これに伴い第2チャンバ26内の残留酸素濃度ずれが生じる。さらに、その残留酸素濃度ずれが原因でセンサ出力誤差が発生する。これに対し、本実施形態では、排気管温度に応じてモニタセル電流Im及びセンサセル電流Isを補正することで、ポンプセル41の温度ずれに伴うセンサ出力誤差を解消する。その結果、NOx濃度の検出精度を向上できる。
【0082】
(第4の実施形態)
次に、本発明の第4の実施形態について、上記第3の実施形態との相違点を中心に説明する。第3の実施形態では、モニタセル温度のフィードバック制御によりヒータ33の通電制御を実行し、排気管温度に応じてモニタセル電流Im及びセンサセル電流Isを補正したが、本実施形態では、モニタセル電流Im及びセンサセル電流Isを補正する代わりに、ポンプセル印加電圧Vpを補正する。
【0083】
すなわち、素子インピーダンスのフィードバック制御によりモニタセル44(及びセンサセル45)のセル温度が一定に制御されるシステムにおいて、センサ素子20の取り付け部位で排気管への熱放出が行われると、上述したように、排気管への熱放出に起因してモニタセル44及びセンサセル45の温度が低下する。その温度変化を打ち消すためにヒータ33の通電制御がなされてセンサ素子20が加温されると、ポンプセル41の温度が目標温度よりも高くなる。かかる場合、ポンプセル41において排気中の酸素が過剰排出されるものと考えられる。そこで、本実施形態では、ポンプセル41による過剰な酸素排出を抑制するために、ポンプセル印加電圧Vpが小さくなるよう補正する。すなわち、図3(a)のポンプセル出力特性(V−I特性)において、限界電流域では、印加電圧が大きくなるにつれて電流値がわずかに大きくなるため(すなわち、図3(a)においてわずかに右上がりであるため)、ポンプセル印加電圧Vpが小さくなるよう補正することにより、ポンプセル電流Ipが小さくなり、その結果、ポンプセル41による過剰な酸素排出が抑制されるのである。
【0084】
図13は、本実施形態におけるセンサ制御回路50の全体構成を示す機能ブロック図である。図13のセンサ制御回路50は、図10におけるIm補正部57、Is補正部58、Im補正量算出部59及びIs補正量算出部61の代わりに、Vp補正量算出部63を備えている。Vp補正量算出部63では、排気管壁温センサ71から入力した排気管温度に応じて、例えば排気管温度とVp補正量との関係を示す出力補正用マップを予め記憶しており、そのマップを用いてVp補正量を算出する。
【0085】
図14は、出力補正用マップの一例である。図14のマップでは、排気管温度が所定温度Tex0(例えば、エンジン暖機完了時の排気管温度)の場合にVp補正量がゼロになっている。また、排気管温度が低いほどVp補正量が小さくなるよう排気管温度とVp補正量とが関連付けられている。このとき、所定温度Tex0を境にして、排気管温度が低温側の場合に補正量が負の値となり、高温側の場合に補正量が正の値となっている。
【0086】
図13の説明に戻り、Vp補正量算出部63は、算出したVp補正量をポンプセル駆動部65に出力する。ポンプセル駆動部65では、Ip検出部52から入力したポンプセル印加電圧VpにVp補正量算出部63から入力したVp補正量を加えて補正し、その補正後のポンプセル印加電圧Vpがポンプセル電極42,43に印加されるようポンプセル41を駆動制御する。
【0087】
図13では、ポンプセル41に関する構成において、Vp補正量算出部63及びポンプセル駆動部65がマイコン51により実現され、Ip検出部52が電気回路(Ip計測回路)により実現される。
【0088】
次に、マイコン51により実行されるポンプセル駆動処理について説明する。図15は、NOxセンサ10におけるポンプセル駆動処理の処理手順を示すフローチャートである。本処理は、マイコン51により所定の時間周期で繰り返し実行される。
【0089】
図15において、ステップS21ではまず、Ip計測回路にて計測されたポンプセル電流Ipを入力し、ステップS22でV−I特性(図3(a)参照)からポンプセル印加電圧Vpを算出する。続いて、センサ素子20が活性完了状態であること(ステップS23)、及び補正実行条件が成立していること(ステップS24)を条件としてステップ25へ進む。
【0090】
ステップS25では、排気管温度Texを入力し、その温度に応じたVp補正量を、図14に示した補正用マップを用いて設定する。そして、ステップS27で、そのVp補正量によりポンプセル印加電圧Vpを補正した後、ステップS28で、補正後のポンプセル印加電圧Vpがポンプセル電極42,43に印加されるようポンプセル41を駆動制御する。
【0091】
以上説明した実施の形態によれば、次の優れた効果が得られる。
【0092】
排気管温度の変動に起因してモニタセル44での温度ずれを抑制するためにセンサ素子20を加熱した結果、ポンプセル41で温度ずれが生じた場合に、その温度ずれに伴うセンサ出力誤差を解消することができる。すなわち、排気管温度の変動を考慮していない従来技術では、排気管温度が変動すると結果的にポンプセル41で温度ずれが生じ、これに伴い第2チャンバ26内の残留酸素濃度ずれが生じる。さらに、その残留酸素濃度ずれが原因でセンサ出力誤差が発生する。これに対し、本実施形態では、排気管温度に応じてポンプセル印加電圧Vpを補正することで、第2チャンバ26内の残留酸素濃度が適正濃度になるよう調整する。その結果、ポンプセル41の温度ずれに伴うセンサ出力誤差を解消することができ、ひいてはNOx濃度の検出精度を向上できる。
【0093】
(他の実施形態)
本発明は上記実施形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施してもよい。
【0094】
上記実施形態では、セル出力であるセンサセル電流Is、モニタセル電流Im、又はセル印加電圧であるポンプセル印加電圧Vpを補正するのにあたり、マップを用いて連続的に行ったが、これに限定しない。例えば、1又は複数の排気管温度域に対応する補正値を予め設定しておき、排気管温度の計測値に対応する補正量を算出した後、その補正量を用いて段階的に補正を行ってもよい。
【0095】
上記実施形態では、排気管壁温センサ71により検出した排気管温度を壁温情報とし、そのセンサ検出値に基づいてセル出力であるセンサセル電流Is、モニタセル電流Im、又はセル印加電圧であるポンプセル印加電圧Vpを補正したが、壁温情報はこれに限定しない。例えば、エンジン運転状態やエンジン始動開始からの経過時間等から排気管温度を推定し、その推定した排気管温度を壁温情報としてもよい。エンジン運転状態としては、例えば、エンジン水温やエンジン回転速度等が挙げられる。これらの場合、エンジン水温等から排気温が推定され、さらにその排気温から排気管壁の温度が推定される。
【0096】
上記第3及び第4実施形態では、モニタセル44(及びセンサセル45)を制御対象としたヒータ通電制御において、それぞれセンサセル電流Is及びモニタセル電流Im、又はポンプセル印加電圧Vpを補正したが、ポンプセル電流Ipについての補正を実行してもよい。上述したように、モニタセル44(及びセンサセル45)を制御対象としたヒータ通電制御においては、モニタセル44での温度ずれを抑制するためにセンサ素子20を加熱した結果、ポンプセル41で温度ずれが生ずる。また、その温度ずれに伴って、ポンプセル41においてセンサ出力誤差が生じる。したがって、ポンプセル電流Ipを補正することで、ポンプセル41の温度ずれに伴うポンプセル出力誤差を解消することができる。例えば、ポンプセル出力から排気中の酸素濃度を検出する場合に好適である。
【0097】
上記実施形態では、センサセル電流Isとモニタセル電流Imとのそれぞれに対して個別に補正し、その補正後のセンサセル電流Isとモニタセル電流Imとの差分からNOx濃度を算出したが、センサセル電流Isとモニタセル電流Imとの差分を求めた後、その差分を補正することによりNOx濃度を算出してもよい。
【0098】
上記第1の実施形態において、モニタセル印加電圧Vm及びセンサセル印加電圧Vsを補正してもよい。すなわち、ポンプセル41を制御対象としたヒータ通電制御においては、モニタセル44及びセンサセル45で温度ずれが起こり、その温度ずれに起因してモニタセル電流Im及びセンサセル電流Isに出力誤差が生じる。そこで、V−I特性に従い、モニタセル印加電圧Vm及びセンサセル印加電圧Vsを補正することにより、モニタセル電流Im及びセンサセル電流Isの出力誤差を解消することができる。
【0099】
上記第1の実施形態では、エンジン始動開始から所定時間T1の期間にセル出力の補正を実施したが、その期間経過後にセル出力の補正を実施してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0100】
【図1】センサ素子の内部構造とセンサ制御回路とを示す構成図。
【図2】NOxセンサの全体構成を示す図。
【図3】NOxセンサの出力特性を示す図。
【図4】エンジン始動開始からの時間経過に伴うポンプセル温度、モニタセル温度、排気管温度の推移を示すタイムチャート。
【図5】センサ制御回路の全体構成を示す機能ブロック図。
【図6】出力補正用マップの一例を示す図。
【図7】NOx濃度算出処理の処理手順を示すフローチャート。
【図8】第1の実施形態におけるエンジン始動開始からの時間経過に伴うセル温度及び排気管温度の推移と、センサセル出力とを示すタイムチャート。
【図9】第2の実施形態におけるエンジン始動開始からの時間経過に伴うセル温度及び排気管温度の推移と、センサセル出力とを示すタイムチャート。
【図10】センサ制御回路の全体構成を示す機能ブロック図。
【図11】エンジン始動開始からの時間経過に伴うポンプセル温度、モニタセル温度、排気管温度の推移を示すタイムチャート。
【図12】エンジン始動開始からの時間経過に伴うセル温度及び排気管温度の推移と、センサセル出力とを示すタイムチャート。
【図13】センサ制御回路の全体構成を示す機能ブロック図。
【図14】出力補正用マップの一例を示す図。
【図15】ポンプセル駆動処理の処理手順を示すフローチャート。
【符号の説明】
【0101】
10…NOxセンサ(ガスセンサ)、20…センサ素子、21…固体電解質体、24…第1チャンバ(ガス室)、26…第2チャンバ(ガス室)、33…ヒータ、41…ポンプセル(第1セル)、42,43…電極、44…モニタセル(第3セル)、45…センサセル(第2セル)、46〜48…電極、50…センサ制御回路、51…マイコン、EP…排気管。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
各々に固体電解質体と該固体電解質体に配置された一対の電極とよりなる第1セル及び第2セルを有するセンサ素子を備え、かつ、前記第1セルの電極に電圧を印加することでガス室内に導入した被検出ガス中の酸素量を所定濃度レベルに調整するとともに前記第2セルの電極に電圧を印加することで前記第1セルによる酸素量調整後のガス中の特定成分に応じて第2セル出力を生じさせるガスセンサに適用され、前記第2セル出力により前記特定成分の濃度を算出するガス濃度検出装置において、
前記ガスセンサが取り付けられたガス通路壁の温度に関する壁温情報を取得する壁温情報取得手段と、
前記壁温情報取得手段により取得した前記壁温情報に基づいて、前記第1セル及び前記第2セルの少なくともいずれかのセル出力又はセル印加電圧を補正する補正手段と、
を備えることを特徴とするガス濃度検出装置。
【請求項2】
前記ガスセンサは、前記センサ素子を加熱するヒータと、前記センサ素子における前記第1セル及び前記第2セルのうち一方のセルを制御対象としてセル温度が目標温度になるよう前記ヒータの通電を制御するヒータ制御手段とを備えており、
前記補正手段は、前記壁温情報取得手段により取得した前記壁温情報に基づいて前記ヒータ制御手段により温度制御がなされていないセルのセル出力又はセル印加電圧を補正することを特徴とする請求項1に記載のガス濃度検出装置。
【請求項3】
前記ヒータ制御手段は、前記第1セルを制御対象として前記ヒータの通電を制御し、
前記補正手段は、前記壁温情報取得手段により取得した前記壁温温度に基づいて前記第2セルのセル出力を補正することを特徴とする請求項2に記載のガス濃度検出装置。
【請求項4】
前記ヒータ制御手段は、前記第2セルを制御対象として前記ヒータの通電を制御し、
前記補正手段は、前記壁温情報取得手段により取得した前記壁温情報に基づいて前記第1セルの印加電圧を補正することを特徴とする請求項2に記載のガス濃度検出装置。
【請求項5】
前記ガスセンサは、前記センサ素子を加熱するヒータと、前記センサ素子における前記第2セルを制御対象としてセル温度が目標温度になるよう前記ヒータの通電を制御するヒータ制御手段とを備えており、
前記補正手段は、前記壁温情報取得手段により取得した壁温情報に基づいて前記第2セルのセル出力を補正することを特徴とする請求項1に記載のガス濃度検出装置。
【請求項6】
前記ガス通路壁は、内燃機関の排気管壁であり、
前記ガスセンサは、前記センサ素子が排気管内の中央部に突き出るようにして該排気管に取り付けられ、
前記センサ素子には、同素子の先端側と排気管取り付け側とのそれぞれ異なる位置に前記第1セルと前記第2セルとが設けられ、
前記補正手段は、前記内燃機関の排気管壁の温度に基づいてセル出力又はセル印加電圧を補正することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載のガス濃度検出装置。
【請求項7】
前記補正手段は、前記内燃機関の所定始動期間においてセル出力又はセル印加電圧の補正を実行することを特徴とする請求項7に記載のガス濃度検出装置。
【請求項8】
前記壁温情報取得手段は、前記ガス通路壁に設けた温度センサの検出値を前記壁温情報として取得し、
前記補正手段は、前記ガス通路壁の温度が補正温度域にある場合に、セル出力又はセル印加電圧の補正を実行することを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載のガス濃度検出装置。
【請求項9】
前記センサ素子が、固体電解質体と該固体電解質体に配置された一対の電極とよりなり、前記第1セルの酸素量調整後のガスから前記ガス室内の残留酸素濃度を検出する第3セルを更に備えるガスセンサに適用され、
前記第2セルのセル出力と前記第3セルのセル出力との差により前記特定成分の濃度を算出するものであり、かつ、前記補正手段により前記ガス通路壁の温度に基づいて前記第2セルのセル出力と前記第3セルのセル出力とを補正するとともに、その補正後の各セル出力により前記特定成分の濃度を算出することを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項に記載のガス濃度検出装置。
【請求項1】
各々に固体電解質体と該固体電解質体に配置された一対の電極とよりなる第1セル及び第2セルを有するセンサ素子を備え、かつ、前記第1セルの電極に電圧を印加することでガス室内に導入した被検出ガス中の酸素量を所定濃度レベルに調整するとともに前記第2セルの電極に電圧を印加することで前記第1セルによる酸素量調整後のガス中の特定成分に応じて第2セル出力を生じさせるガスセンサに適用され、前記第2セル出力により前記特定成分の濃度を算出するガス濃度検出装置において、
前記ガスセンサが取り付けられたガス通路壁の温度に関する壁温情報を取得する壁温情報取得手段と、
前記壁温情報取得手段により取得した前記壁温情報に基づいて、前記第1セル及び前記第2セルの少なくともいずれかのセル出力又はセル印加電圧を補正する補正手段と、
を備えることを特徴とするガス濃度検出装置。
【請求項2】
前記ガスセンサは、前記センサ素子を加熱するヒータと、前記センサ素子における前記第1セル及び前記第2セルのうち一方のセルを制御対象としてセル温度が目標温度になるよう前記ヒータの通電を制御するヒータ制御手段とを備えており、
前記補正手段は、前記壁温情報取得手段により取得した前記壁温情報に基づいて前記ヒータ制御手段により温度制御がなされていないセルのセル出力又はセル印加電圧を補正することを特徴とする請求項1に記載のガス濃度検出装置。
【請求項3】
前記ヒータ制御手段は、前記第1セルを制御対象として前記ヒータの通電を制御し、
前記補正手段は、前記壁温情報取得手段により取得した前記壁温温度に基づいて前記第2セルのセル出力を補正することを特徴とする請求項2に記載のガス濃度検出装置。
【請求項4】
前記ヒータ制御手段は、前記第2セルを制御対象として前記ヒータの通電を制御し、
前記補正手段は、前記壁温情報取得手段により取得した前記壁温情報に基づいて前記第1セルの印加電圧を補正することを特徴とする請求項2に記載のガス濃度検出装置。
【請求項5】
前記ガスセンサは、前記センサ素子を加熱するヒータと、前記センサ素子における前記第2セルを制御対象としてセル温度が目標温度になるよう前記ヒータの通電を制御するヒータ制御手段とを備えており、
前記補正手段は、前記壁温情報取得手段により取得した壁温情報に基づいて前記第2セルのセル出力を補正することを特徴とする請求項1に記載のガス濃度検出装置。
【請求項6】
前記ガス通路壁は、内燃機関の排気管壁であり、
前記ガスセンサは、前記センサ素子が排気管内の中央部に突き出るようにして該排気管に取り付けられ、
前記センサ素子には、同素子の先端側と排気管取り付け側とのそれぞれ異なる位置に前記第1セルと前記第2セルとが設けられ、
前記補正手段は、前記内燃機関の排気管壁の温度に基づいてセル出力又はセル印加電圧を補正することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載のガス濃度検出装置。
【請求項7】
前記補正手段は、前記内燃機関の所定始動期間においてセル出力又はセル印加電圧の補正を実行することを特徴とする請求項7に記載のガス濃度検出装置。
【請求項8】
前記壁温情報取得手段は、前記ガス通路壁に設けた温度センサの検出値を前記壁温情報として取得し、
前記補正手段は、前記ガス通路壁の温度が補正温度域にある場合に、セル出力又はセル印加電圧の補正を実行することを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載のガス濃度検出装置。
【請求項9】
前記センサ素子が、固体電解質体と該固体電解質体に配置された一対の電極とよりなり、前記第1セルの酸素量調整後のガスから前記ガス室内の残留酸素濃度を検出する第3セルを更に備えるガスセンサに適用され、
前記第2セルのセル出力と前記第3セルのセル出力との差により前記特定成分の濃度を算出するものであり、かつ、前記補正手段により前記ガス通路壁の温度に基づいて前記第2セルのセル出力と前記第3セルのセル出力とを補正するとともに、その補正後の各セル出力により前記特定成分の濃度を算出することを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項に記載のガス濃度検出装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2009−192289(P2009−192289A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−31512(P2008−31512)
【出願日】平成20年2月13日(2008.2.13)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年2月13日(2008.2.13)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
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