ガス濃度検出装置
【課題】エンジン運転状態による活性判定バラツキを低減することが可能なガス濃度検出装置を提供する。
【解決手段】イグニッションON時に、前回通電OFFからの経過時間が基準値より長い場合には、NOxセンサへの通電をONにし(ステップ106)、NOxセンサセル出力の変曲点を特定し(ステップ108)、変曲点に関する学習値をECU内に取り込む(ステップ110)。経過時間が基準値未満である場合には、所定時間α経過後のNOxセンサセル出力N(α)が基準値N1以上であれば、変曲点を特定し(ステップ108)、変曲点に関する学習値を取り込む(ステップ110)。
【解決手段】イグニッションON時に、前回通電OFFからの経過時間が基準値より長い場合には、NOxセンサへの通電をONにし(ステップ106)、NOxセンサセル出力の変曲点を特定し(ステップ108)、変曲点に関する学習値をECU内に取り込む(ステップ110)。経過時間が基準値未満である場合には、所定時間α経過後のNOxセンサセル出力N(α)が基準値N1以上であれば、変曲点を特定し(ステップ108)、変曲点に関する学習値を取り込む(ステップ110)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンから排出される排ガス中の特定ガス成分の濃度を検出するガス濃度検出装置に係り、特にNOxセンサセルの活性点(活性判定点)の学習に関する。
【背景技術】
【0002】
余剰酸素を排出する酸素ポンプセルと、余剰酸素排出後のガス中の特定成分の濃度を検出するセンサセルとを備えたガス濃度検出装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。この特許文献1のガス濃度検出装置によれば、酸素ポンプセルに流れる電流値に基づいて、センサセルに流れる電流値が補正される。これにより、被検出ガス中の酸素濃度が変化しても高精度に濃度検出を行うことができる。
【0003】
また、酸素ポンプセルやセンサセルは固体電解質からなる素子を有している。かかる固体電解質からなる素子を用いたガス濃度検出装置では、素子温度を所定の活性温度に加熱する必要がある。素子抵抗(素子インピーダンス)を検出し、検出した素子抵抗と目標値との偏差に基づいてヒータの通電を制御する装置が知られている(例えば、特許文献2参照。)。この特許文献2の装置によれば、ヒータ電力に基づき素子抵抗の目標値を補正することで、素子温度を所望の温度に保持することができる。
【0004】
また、素子インピーダンスに基づき、ガス濃度センサの活性判定を行う装置が知られている(例えば、特許文献3参照。)。
【0005】
【特許文献1】特開2002−116180号公報
【特許文献2】特開2003−50227号公報
【特許文献3】特開2004−177179号公報
【特許文献4】特開平11−237363号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、近年、エミッション低減のため、ガス濃度センサの早期活性化と共に、精度良く活性判定を行うことが要求されている。
しかしながら、上記特許文献3においてセンサ活性判定の指標とされる素子インピーダンス等は、センサ個体差がある。このため、ガス濃度検知セルによりガス濃度を高精度に検出し始める時期に的確にセンサ活性判定を行うことができない可能性がある。さらに素子インピーダンス等により活性判定すると、エンジン運転状態により活性判定バラツキが生じてしまう可能性がある。
【0007】
本発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、エンジン運転状態による活性判定バラツキを低減することが可能なガス濃度検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明は、被測定ガス中の酸素濃度を変化させることが可能な酸素濃度制御手段と、該酸素濃度制御手段により酸素濃度を変化させた後のガスから特定ガス成分の濃度を検知するガス濃度検知セルとを備えたガス濃度検出装置であって、
所定の運転状態で、かつ、前記酸素濃度制御手段により前記ガス濃度検知セルの酸素濃度が所定値以上にされた後に、前記ガス濃度検知セルの酸素濃度が減少する過程で、前記ガス濃度検知セルの出力の変曲点を活性点として特定する変曲点特定手段と、
前記変曲点特定手段により特定された変曲点に関する情報である変曲点学習値を記憶する記憶手段とを備えたことを特徴とする。
【0009】
また、第2の発明は、被測定ガス中の酸素濃度を変化させることが可能な酸素濃度制御手段と、該酸素濃度制御手段により酸素濃度を変化させた後のガスから特定ガス成分の濃度を検知するガス濃度検知セルとを備えたガス濃度検出装置であって、
内燃機関の排気通路のNOx濃度を推定するNOx濃度推定手段と、
前記NOx濃度推定手段により推定されたNOx濃度を用いて前記ガス濃度検知セルの出力を補正する補正手段と、
前記内燃機関の始動時、かつ、前記酸素濃度制御手段により前記ガス濃度検知セルの酸素濃度が所定値以上にされた後に、前記ガス濃度検知セルの酸素濃度が減少する過程で、前記補正手段により補正された出力の変曲点を特定する変曲点特定手段と、
前記変曲点特定手段により特定された変曲点に関する情報である変曲点学習値を記憶する記憶手段とを備えたことを特徴とする。
【0010】
また、第3の発明は、被測定ガス中の酸素濃度を変化させることが可能な酸素濃度制御手段と、該酸素濃度制御手段により酸素濃度を変化させた後のガスから特定ガス成分の濃度を検知するガス濃度検知セルとを備えたガス濃度検出装置であって、
内燃機関の燃料カット時、かつ、前記酸素濃度制御手段により前記ガス濃度検知セルの酸素濃度が増加せしめられた後に、前記ガス濃度検知セルの酸素濃度が減少する過程で、前記ガス濃度検知セルの出力の変曲点を特定する変曲点特定手段と、
前記変曲点特定手段により特定された変曲点に関する学習値である変曲点学習値を記憶する記憶手段とを備えたことを特徴とする。
【0011】
また、第4の発明は、被測定ガス中の酸素濃度を変化させることが可能な酸素濃度制御手段と、該酸素濃度制御手段により酸素濃度を変化させた後のガスから特定ガス成分の濃度を検知するガス濃度検知セルとを備えたガス濃度検出装置であって、
内燃機関の排気通路のNOx濃度を低減するNOx濃度低減手段と、
前記内燃機関のアイドル時、かつ、前記NOx濃度低減手段によりNOx濃度が低減された後に、前記ガス濃度検知セルの酸素濃度が減少する過程で、前記ガス濃度検知セルの出力の変曲点を特定する変曲点特定手段と、
前記変曲点特定手段により特定された変曲点に関する情報である変曲点学習値を記憶する記憶手段とを備えたことを特徴とする。
【0012】
また、第5の発明は、第1から第4の何れか1の発明において、
前記記憶手段は、前記変曲点が特定されたときの前記ガス濃度検知セルの出力及び素子温度と相関を有する物性値と、前記変曲点が特定されるまでの時間とをマップとして格納することを特徴とする。
【0013】
また、第6の発明は、第3の発明において、
前記酸素濃度制御手段は、ヒータへの通電を制御するヒータ制御手段であり、
前記ヒータ制御手段は、通常時に比して燃料カット時の前記ヒータへの通電量を低下させることを特徴とする。
【0014】
また、第7の発明は、第3の発明において、
電圧印加に伴って被測定ガス中の余剰酸素を排出する酸素ポンプセルを更に備え、
前記酸素濃度制御手段は、前記酸素ポンプセルへの通電を制御する酸素ポンプセル制御手段であり、
前記酸素ポンプセル制御手段は、通常時に比して燃料カット時の前記酸素ポンプセルへの通電量を低下させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
第1の発明では、内燃機関が所定の運転状態で、かつ、酸素濃度制御手段によりガス濃度検知セルの酸素濃度が所定値以上にされた後に、ガス濃度検知セルの酸素濃度が減少する過程で、ガス濃度検知セルの出力の変曲点が活性点として特定される。第1の発明によれば、一般的なセンサ活性(本活性)の判定と異なり、残存酸素の影響を受けることなく特定ガス成分の濃度をガス濃度検知セルにより検出し始める時期をもって、ガス濃度検知セルが活性状態であると判定される。従って、ガス濃度検知セルの活性判定を精度良く行うことができる。さらに、第1の発明では、この変曲点に関する情報である変曲点学習値が記憶される。変曲点学習値を利用することで、内燃機関の運転状態による活性判定バラツキを低減することができる。
【0016】
第2の発明では、NOx濃度の推定値を用いて、ガス濃度検知セル出力が補正される。内燃機関の始動時、かつ、酸素濃度制御手段によりガス濃度検知セルの酸素濃度が所定値以上にされた後に酸素濃度が減少する過程で、補正されたガス濃度検知セル出力の変曲点が活性点として特定される。第2の発明によれば、一般的なセンサ活性(本活性)の判定と異なり、内燃機関の始動時に、残存酸素の影響を受けることなく特定ガス成分の濃度をガス濃度検知セルにより検出し始める時期をもって、ガス濃度検知セルが活性状態であると判定される。さらに、内燃機関の始動時のNOx濃度の変化の影響を受けることなく、精度良く変曲点を特定することができる。従って、ガス濃度検知セルの活性判定を精度良く行うことができる。さらに、第2の発明では、この変曲点に関する情報である変曲点学習値が記憶される。変曲点学習値を利用することで、内燃機関の運転状態による活性判定バラツキを低減することができる。
【0017】
第3の発明では、内燃機関の燃料カット時、かつ、酸素濃度制御手段によりガス濃度検知セルの酸素濃度が増加せしめられた後に酸素濃度が減少する過程で、ガス濃度検知セルの出力の変曲点が活性点として特定される。第3の発明によれば、内燃機関の燃料カット時に、残存酸素の影響を受けることなく特定ガス成分の濃度をガス濃度検知セルにより検出し始める時期をもって、ガス濃度検知セルが活性状態であると判定される。従って、ガス濃度検知セルの活性判定を精度良く行うことができる。さらに、第3の発明では、この変曲点に関する情報である変曲点学習値が記憶される。変曲点学習値を利用することで、内燃機関の運転状態による活性判定バラツキを低減することができる。また、燃料カット時も学習可能であるため、学習頻度を確保することができる。
【0018】
第4の発明では、内燃機関のアイドル時、かつ、NOx濃度低減手段によりNOx濃度が低減された後に、ガス濃度検知セルの酸素濃度が減少する過程で、ガス濃度検知セルの出力の変曲点が活性点として特定される。第4の発明によれば、内燃機関のアイドル時に、残存酸素の影響を受けることなく特定ガス成分の濃度をガス濃度検知セルにより検出し始める時期をもって、ガス濃度検知セルが活性状態であると判定される。さらに、内燃機関のアイドル時のNOx濃度の変化の影響を受けることなく、精度良く変曲点を特定することができる。従って、ガス濃度検知セルの活性判定を精度良く行うことができる。さらに、第4の発明では、この変曲点に関する情報である変曲点学習値が記憶される。変曲点学習値を利用することで、内燃機関の運転状態による活性判定バラツキを低減することができる。また、アイドル時も学習可能であるため、学習頻度を確保することができる。
【0019】
第5の発明では、記憶手段により、変曲点が特定されたときのガス濃度検知セルの出力及び素子温度と相関を有する物性値と、変曲点が特定されるまでの時間とがマップとして格納される。変曲点が特定されたときは、物性値のセンサ個体差が最も小さい。よって、かかるマップを学習値として利用することで、内燃機関の運転状態による活性判定バラツキを低減することができる。
【0020】
第6の発明によれば、通常時に比して燃料カット時のヒータへの通電量を低下させることで、ガス濃度検知セルの酸素濃度を増加させることができる。これにより、燃料カット時も変曲点を特定することができ、学習頻度を確保することができる。
【0021】
第7の発明によれば、通常時に比して燃料カット時の酸素ポンプセルへの通電量を低下させることで、ガス濃度検知セルの酸素濃度を増加させることができる。これにより、燃料カット時も変曲点を特定することができ、学習頻度を確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。尚、各図において共通する要素には、同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0023】
実施の形態1.
[システム構成の説明]
図1は、本発明の実施の形態1によるシステムの構成の一例を示す図である。図2は、図1に示すシステムに搭載されるガス濃度検出装置の構成を示す図である。
【0024】
図1に示すシステムは、エンジン1として、4サイクルのディーゼルエンジン(圧縮着火内燃機関)を備えている。なお、エンジン1は、ガソリンエンジン(火花点火内燃機関)であってもよい。エンジン1の各気筒2のピストンは、クランク機構を介してクランク軸3に連結されている。クランク軸3の近傍には、クランク角度CAを検出するクランク角センサ4が設けられている。
【0025】
エンジン1の各気筒2には、燃料を筒内に直接噴射するインジェクタ5が設置されている。各インジェクタ5は、共通のコモンレール6に接続されている。このコモンレール6には、サプライポンプ7によって加圧された燃料が蓄えられる。インジェクタ5は、1サイクル中に複数回、任意のタイミングで燃料を筒内に噴射することができる。
【0026】
エンジン1の吸気ポート8には、吸気バルブ9が設けられている。この吸気バルブ9の開弁特性(開弁時期、リフト量、作用角)は、公知の油圧式もしくは機械式の可変動弁機構(図示せず)により変更可能である。吸気ポート8は、吸気マニホールド10を介して吸気通路11に接続されている。吸気通路11の途中には、スロットル弁12が設けられている。スロットル弁12は、スロットルモータ13により駆動される電子制御式のバルブである。スロットル弁12は、アクセル開度センサ15により検出されるアクセル開度AA等に基づいて駆動されるものである。スロットル弁12の近傍には、スロットル開度TAを検出するスロットル開度センサ13が設けられている。スロットル弁12の上流には、吸入空気量Gaを検出するエアフロメータ16が設けられている。エアフロメータ16の上流にはエアクリーナ17が設けられている。
【0027】
また、エンジン1の排気ポート18には、排気バルブ19が設けられている。この排気バルブ19の開弁特性(開弁時期、リフト量、作用角)は、公知の油圧式もしくは機械式の可変動弁機構(図示せず)により変更可能である。排気ポート18は、排気マニホールド20を介して排気通路21に接続されている。排気通路21には、選択還元触媒(以下「SCR(Selective Catalytic Reduction)触媒」という。)22が設けられている。この選択還元触媒22の上流には、尿素水タンク24に蓄えられた尿素水((NH2)2CO+H2O)を添加する尿素水添加弁23が設けられている。尿素水添加弁23から添加された尿素水から生成されたアンモニアによって、NOxが窒素に還元される。選択還元触媒22の下流には、NOx濃度を検出するNOxセンサ25が設けられている。NOxセンサ25の下流には、アンモニアを酸化するための酸化触媒26が設けられている。
【0028】
上記NOxセンサ25は、図2に示すガス濃度検出装置の一部を構成する。NOxセンサ25は、図2に示すように、酸素ポンプセル40の下方に、スペーサ50、NOxセンサセル60、スペーサ65、ヒータ80を順次積層することにより形成されている。
【0029】
酸素ポンプセル40は、被測定ガス中の余剰酸素を除去する機能のみを有し、固体電解質体41と一対のポンプ電極42,43とを有している。素子である固体電解質体41は、酸素イオン導電性を有しており、例えば、シート状に成形されたZrO2,HfO2,ThO2,BiO3等である。この固体電解質体41を上下から挟むポンプ電極42,43は、例えば、スクリーン印刷等の方法により形成することができる。
【0030】
固体電解質体41表面に形成された第1ポンプ電極42は、被測定ガスである排ガスが存在する空間、すなわち、エンジン1の排気通路21内に露出している。該第1ポンプ電極42として、例えば、Pt等の貴金属を含む多孔質サーメット電極を用いることができる。
【0031】
一方、第1ポンプ電極42と対向するように固体電解質体41裏面に形成された第2ポンプ電極43は、後述する第1内部空間51に露出している。該第2ポンプ電極43として、NOxガスに対して不活性な電極、例えば、Pt−Au合金とジルコニアやアルミナ等のセラミックスとを含む多孔質サーメット電極を用いることができる。
【0032】
酸素ポンプセル40には、固体電解質体41とポンプ電極42,43を貫通する導入孔としてのピンホール44が形成されている。ピンホール44の孔径は、ピンホール44を介して第1内部空間51(後述)に導入される排ガスの拡散速度が所定速度となるように設計されている。第1内部空間51は、ピンホール44と保護層70とを介して、被測定ガスが存在する空間に連通している。
【0033】
また、ピンホール44を含む第1ポンプ電極42表面とその周辺の固体電解質体41とを覆うように、多孔質保護層70が形成されている。多孔質保護層70は、例えば、多孔質アルミナ等により形成することができる。この多孔質保護層70により、第1ポンプ電極42の被毒を抑制することができると共に、排ガスに含まれるスス等によるピンホール44の目詰まりを抑制することができる。
【0034】
スペーサ50には、上述した第1内部空間51と、第2内部空間52とが形成されている。スペーサ50は、例えば、アルミナ等により形成することができる。2つの内部空間51,52は、連通孔53を介して連通している。これらの内部空間51,52及び連通孔53は、スペーサ50に抜き穴を設けることにより形成することができる。
【0035】
NOxセンサセル60は、NOxの還元分解により生じる酸素量からNOx濃度を検出するものである。NOxセンサセル60は、固体電解質体61と、該固体電解質体61を上下から挟む一対の検出電極62,63とを有している。これらの検出電極62,63は、例えば、スクリーン印刷等の方法により形成することができる。
【0036】
固体電解質体61表面に形成された第1検出電極62は、第2内部空間52に露出している。この第1検出電極62として、例えば、Pt−Rh合金とジルコニアやアルミナ等のセラミックスとを含む多孔質サーメット電極を用いることができる。
【0037】
一方、第1検出電極62と対向するように、固体電解質体61裏面に形成された第2検出電極63は、スペーサ65に形成された大気ダクト66に露出している。大気ダクト66には、大気が導入される。この第2検出電極63として、例えば、Pt等の貴金属を含む多孔質サーメット電極を用いることができる。大気ダクト66は、スペーサ65に切り欠きを設けることにより形成することができる。
【0038】
ヒータ80は、シート状の絶縁層82,83と、これらの絶縁層82,83間に埋設されたヒータ電極81とを有している。絶縁層82,83は、例えば、アルミナ等のセラミックスにより形成される。ヒータ電極81は、例えば、Ptとアルミナ等のセラミックスとのサーメットにより形成される。
【0039】
また、図1に示すように、排気マニホールド20には、外部EGR通路27の一端が接続されている。外部EGR通路27の他端は、吸気マニホールド10近傍の吸気通路11に接続されている。この外部EGR通路27を通して、排気ガス(既燃ガス)の一部を吸気通路11に還流させること、つまり外部EGR(Exhaust Gas Recirculation)を行うことができる。外部EGR通路27の途中には、外部EGRガスを冷却するためのEGRクーラ28が設けられている。外部EGR通路27におけるEGRクーラ28の下流には、EGR弁29が設けられている。このEGR弁29の開度を大きくするほど、外部EGR通路27を通る排気ガス量(すなわち、外部EGR量もしくは外部EGR率)を増大させることができる。
【0040】
また、図1に示すシステムは、制御装置としてのECU(Electronic Control Unit)30を備えている。ECU30の出力側には、インジェクタ5、サプライポンプ7、スロットルモータ13、尿素水添加弁23、EGR弁29等が接続されている。ECU30の入力側には、クランク角センサ4、スロットル開度センサ14、アクセル開度センサ15、エアフロメータ16、NOxセンサ25(後述)が接続されている。
【0041】
また、図2に示すように、ECU30は、ポンプセル制御手段31と、センサセル制御手段32と、ヒータ制御手段33とを有している。
ポンプセル制御手段31は、酸素ポンプセル40の第1及び第2ポンプ電極42,43に接続されている。ポンプセル制御手段31は、第1及び第2ポンプ電極42,43に電圧を印加すると共に、酸素ポンプセル40に流れる電流値を「酸素ポンプセル出力」として検出するものである。
センサセル制御手段32は、NOxセンサセル60の第1及び第2検出電極62,63に接続されている。センサセル制御手段32は、第1及び第2検出電極62,63に電圧を印加すると共に、NOxセンサセル60に流れる電流値を「NOxセンサセル出力」として検出するものである。また、センサセル制御手段32は、NOxセンサセル60の素子インピーダンスを検出することができる。
ヒータ制御手段33は、ヒータ電極81に接続されている。ヒータ制御手段33は、ヒータ電極81に電力を供給するものである。
【0042】
ECU30は、クランク角度CAに基づいて、機関回転数NEを算出する。ECU30は、スロットル開度TAやアクセル開度AA等に基づいて、機関負荷KLを算出する。ECU30は、機関負荷KLに基づいて、インジェクタ5からの燃料噴射量を算出する。
また、ECU30は、各センサからの信号に基づき、所定のプログラムに従って各アクチュエータを作動させることにより、エンジン1の運転状態を制御する。
【0043】
[実施の形態1の特徴]
(NOx濃度検出動作)
先ず、図2に示すガス濃度検出装置の動作、すなわち、NOxセンサ25によるNOx濃度検出動作について説明する。
NOxセンサ25の保護層70上方の排気通路21(図1参照)には、被測定ガスとしての排ガスが流れている。この排ガス中には、酸素、NOx、CO2、H2O等が含まれている。排ガスは、保護層70とピンホール44を介して、第1内部空間51に導入される。この第1内部空間51に導入される排ガス量は、保護層70とピンホール44の拡散抵抗により決まる。
【0044】
そして、ポンプセル制御手段31から第1及び第2ポンプ電極42,43にそれぞれ正電圧及び負電圧が印加されると、第1内部空間51に露出する第2ポンプ電極43上で、残存酸素と排ガス中の酸素が酸素イオンO2−に還元される。この酸素イオン2−は、ポンピング作用により固体電解質体41を透過して第1ポンプ電極42側に排出される。このとき、酸素ポンプセル40を流れる電流値が、「酸素ポンプセル出力」としてポンプセル制御手段31により検出される。酸素ポンプセル40により余剰酸素が排出されることで、排ガス中の酸素濃度がNOxセンサセル4によるNOx濃度検出に影響しない程度にまで低くされる。
【0045】
余剰酸素が除去され低酸素濃度にされた排ガスは、連通孔53を介して第2内部空間52に導入される。そして、センサセル制御手段32から第1検出電極62と第2検出電極63の間に所定電圧が印加されると、残存酸素と排ガス中の特定成分であるNOxが第1検出電極62上で分解され酸素イオンO2−が発生する。NOxは一旦NOに分解(単ガス化)された後、さらに酸素イオンO2−に分解される。発生した酸素イオンO2−は、固体電解質体61を透過して、第2検出電極63から大気ダクト66に排出される。このとき、NOxセンサセル60を流れる電流値が、「NOxセンサセル出力」としてセンサセル制御手段32により検出され、NOxセンサ25により検出されたNOx濃度とされる。
また、固体電解質体41,61を目標温度に加熱するために、ヒータ制御手段33からヒータ電極81に電力が断続的に供給されている。
【0046】
(センサ活性判定)
ところで、エミッションを低減するため、NOxセンサ25を早期に活性化させる要求がある。すなわち、早期にNOxセンサ25のNOxセンサセル60を活性判定し、NOxセンサセル出力を各種制御に用いるという要求がある。NOxセンサ25の早期活性化を実現するためには、NOxセンサ25の状態を迅速かつ高精度に把握することが重要である。
ここで、固体電解質体からなる素子を用いたNOxセンサでは、正常な特性を得るために、ヒータ電極へ通電することにより素子温度を所定の活性温度に加熱する必要がある。
既述した特許文献3の装置によれば、素子インピーダンスに基づいて活性判定が行われる。その他に、ヒータへの供給電力やヒータ抵抗等に基づき、ガス濃度センサの活性判定を行う装置が知られている。
【0047】
しかしながら、素子インピーダンスやヒータ供給電力やヒータ抵抗等は、センサ個体間でのバラツキ(すなわち、センサ個体差)がある。このため、素子インピーダンス等に基づき、センサの状態を迅速かつ高精度に把握することは難しい。素子インピーダンス等に基づきセンサの活性判定を早期に行うと、活性判定後にNOxセンサセルが残存酸素の影響を受けながらNOx濃度を検知する事態が生じ得る。すなわち、活性判定後にも関わらず、NOxセンサセル出力の精度が低いという事態が生じ得る。そうすると、エミッション低減効果が不十分となってしまう可能性がある。さらに、素子インピーダンス等に基づきガス濃度センサの活性判定を行う手法では、センサ個体差の影響を受けるため、各センサで早期活性化を最大限に実現することは困難である。
【0048】
そこで、本実施の形態1では、以下に説明するように、NOxセンサ25の状態を精度良く把握し、NOxセンサ25の活性判定を早期かつ高精度に行うようにする。
図3は、エンジン始動時の酸素ポンプセル出力の変化とNOxセンサセル出力の変化を示す図である。図3における破線Lpは酸素ポンプセル出力の変化を、実線LsはNOxセンサセル出力の変化を、それぞれ示している。
【0049】
図3における時刻t0において、イグニッションがONにされ、NOxセンサ25の暖機が開始される。すなわち、ヒータ制御手段33からヒータ電極81への通電が開始される。かかる通電により、酸素ポンプセル40及びNOxセンサセル60の温度、すなわち、固体電解質体41,61の温度が徐々に上昇する。この時刻t0において、酸素ポンプセル40近傍の第1内部空間51と、NOxセンサセル60近傍の第2内部空間52には、大気中の酸素が残存している。
【0050】
その後、時刻t1において、NOxセンサセル60の固体電解質体61の温度が所定温度に達すると、NOxセンサセル出力が得られる。この時刻t1以降、NOxセンサセル60(固体電解質体61)の活性度が上がるに連れ、NOxセンサセル出力は上昇する。これは、NOxセンサセル60近傍の第2内部空間52に導入されたNOxが第1検出電極62上で分解されるのではなく、第2内部空間52に残存する酸素が第1検出電極62上で分解されるためである。その後、時刻t3において、NOxセンサセル出力が上限値に達する。すなわち、NOxセンサセル60により検出可能な酸素イオン濃度の上限値に達する。
【0051】
また、時刻t1より後の時刻t2において、酸素ポンプセル40の固体電解質体41の温度が所定温度に達すると、酸素ポンプセル出力が得られる。この時刻t2以降、酸素ポンプセル40(固体電解質体41)の活性度が上がるに連れて、酸素ポンプセル40近傍の第1内部空間51に残存する酸素が排出される量が増加する。このため、酸素ポンプセル出力は上昇する。
【0052】
酸素ポンプセル40の活性度が上がるに連れ、第1内部空間51からの酸素の排出量が多くなる。さらに、排気通路21から第1内部空間51に導入される排ガス量が多くなる。そうすると、第1内部空間51における残存酸素濃度が低くなり、第1内部空間51から第2内部空間52に供給される酸素量も少なくなる。よって、酸素ポンプセル40の活性度が上がるに連れ、第2内部空間52における残存酸素濃度が徐々に低くなる。その結果、時刻t4以降、NOxセンサセル出力が低下する。
【0053】
その後、第2内部空間52における残存酸素が除去される時刻t5において、NOxセンサ出力に変曲点が現れる。すなわち、時刻t5の前後において、NOxセンサセル出力のカーブが大きく変わる。この変曲点が現れる前のNOxセンサ出力は、第2内部空間52に残存する酸素濃度の影響、すなわち、酸素ポンプセル40の活性度の影響が支配的である。一方、変曲点が現れた後のNOxセンサ出力は、第2内部空間52のNOx濃度及びNOxセンサセル60の第1検出電極62に吸着された酸素濃度、すなわち、NOxセンサセル60の活性度の影響を受ける。よって、この変曲点が現れる時刻t5において、NOxセンサ25の暖機前に第1及び第2内部空間51,52に残存していた酸素が除去されたと把握することができる。従って、変曲点が現れた時刻t5以降は、残存酸素の影響を受けることなく、NOxセンサセル60によりNOx濃度を精度良く検出することができる。
【0054】
そこで、本実施の形態1では、NOxセンサセル出力に変曲点が現れる時刻t5において、NOxセンサ25の活性判定を行う。ここで、本発明におけるNOxセンサ25の活性判定は、一般的なセンサ活性(本活性)とは異なるものである。本発明では、残存酸素の影響がないNOxセンサ出力を検出し始めた時点、すなわち、残存酸素の影響を受けることなくNOxセンサセル出力を各種制御に用いることができるようになった時点をもって「活性状態」とする(以下同様)。このように、NOxセンサセル60が残存酸素の影響を受けることなくNOx濃度を検出し始める時刻t5に、NOxセンサ25の活性判定を行うことで、NOxセンサ25の早期活性化の要求を最大限満たすことができる。
【0055】
(変曲点特定方法)
次に、図4を参照して、上記変曲点を特定する方法について説明する。
図4は、NOxセンサセル出力の変曲点を特定する方法を説明するための図である。先ず、所定間隔毎にNOxセンサセル出力Nを取得すると共に、各時刻においてNOxセンサセル出力の変化量ΔNを算出する。ここで、時刻tにおける変化量ΔN(t)は、次式(1)に従って算出される。この算出された変化量ΔN(t)が所定の基準値ΔNthよりも小さくなったとき、その時刻tでのNOxセンサセル出力N(t)が変曲点と特定される。
ΔN(t)=N(t-1)-N(t)・・・(1)
図4に示す例では、時刻t10から時刻t14までの間、NOxセンサセル出力Nは減少している。このため、各時刻t11〜時刻t14において上式(1)により算出された変化量ΔN(t11)〜ΔN(t14)は、全て正の値をとる。変化量ΔN(t11)〜ΔN(t13)は予め定められた基準値ΔNth以上であるが、変化量ΔN(t14)は基準値ΔNthよりも小さくなっている。このため、時刻t14でのNOxセンサセル出力N(t14)が、変曲点と特定される。NOxセンサセル出力に変曲点が現れた時刻t14に、NOxセンサ25の活性判定が行われる。
【0056】
また、上記特許文献3のように素子インピーダンスに基づいて活性判定を行うと、エンジンの運転状態によって活性判定時期が異なってしまう可能性がある。
【0057】
そこで、本実施の形態1では、変曲点の特定時に、変曲点に関する情報を学習するようにする。かかる学習は、例えば、変曲点が特定されるまでの時間、変曲点が特定されたときのNOxセンサセル出力、及び変曲点が特定されたときの素子温度と相関を有する物性値をマップに取り込む(格納する)ことにより行う。この素子温度と相関を有する物性値は、例えば、インピーダンス、ヒータ抵抗及びヒータ電力のうち少なくとも1つである。
【0058】
このような変曲点に関する情報を学習するためには、NOxセンサセル出力に変曲点を発生させる必要がある。そのためには、NOxセンサ25内の酸素濃度を所定値以上に高くする必要がある。つまり、第1及び第2内部空間51,52に残存する酸素濃度を高くし、NOxセンサセル60の第1検出電極62に吸着される酸素濃度を高くする必要がある。
【0059】
エンジン始動時においては、前回通電OFFからイグニッションONまでの経過時間(以下「経過時間」と略する。)がある程度必要である。
図5は、エンジン始動時において、経過時間に応じたNOxセンサセル出力の変化を説明するための図である。図5において、実線Ls1は、経過時間が十分に長い(例えば、数時間以上)場合のNOxセンサ出力変化を示している。経過時間が短くなると、一点鎖線Ls2で示すように、NOxセンサセル出力が上限値に維持される時間が短くなる。さらに経過時間が短い場合には、二点鎖線Ls3で示すように、NOxセンサセル出力が上限値まで上昇せずに下降し始める。これらの場合、何れもNOxセンサセル出力が基準値N1よりも上昇するため、変曲点を特定することができ、変曲点に関する情報の学習をすることが可能である。
一方、経過時間が非常に短い場合(例えば、1時間以内の場合)には、破線Ls4で示すように、イグニッションONから所定時間αが経過してもNOxセンサセル出力が基準値N1に達しない。この場合、変曲点を特定することができないため、変曲点に関する情報を学習することができない。
従って、変曲点に関する情報を学習するためには、NOxセンサセル出力が基準値N1よりも上昇する程度の経過時間が必要である。すなわち、NOxセンサセル出力が基準値N1よりも上昇する程度に、NOxセンサ25内の酸素濃度を増加させる必要がある。
【0060】
[実施の形態1における具体的処理]
図6は、本実施の形態1において、ECU30が実行するルーチンを示すフローチャートである。図7は、図6のステップ108で実行される変曲点特定ルーチンを示すフローチャートである。図6に示すルーチンは、所定間隔毎に起動するものである。
【0061】
図6に示すルーチンによれば、先ず、イグニッションONであるか否かを判別する(ステップ100)。このステップ100でイグニッションONではないと判別された場合には、本ルーチンを一端終了する。一方、ステップ100でイグニッションONであると判別された場合には、前回通電OFFからイグニッションONまでの経過時間を取得する(ステップ102)。このステップ102では、例えば、本ルーチンとは別ルーチンにより算出されている経過時間が読み込まれる。
【0062】
次に、上記ステップ102で取得された経過時間が基準値よりも長いか否かを判別する(ステップ104)。この基準値は、前回通電OFFされてから、十分に酸素濃度が増加しているか否かを判別するための閾値である。このステップ104で経過時間が基準値よりも長いと判別された場合には、NOxセンサ25への通電をONにする(ステップ106)。このステップ106では、ECU30のポンプセル制御手段31から酸素ポンプセル40への通電がONにされ、センサセル制御手段32からNOxセンサセル60への通電がONにされ、ヒータ制御手段33からヒータ電極81への通電がONにされる。
【0063】
その後、ステップ108に移行し、NOxセンサセル出力の変曲点が特定される。このステップ108では、図7に示すルーチンが起動される。
図7に示すルーチンによれば、先ず、NOxセンサセル出力N(t)を取得する(ステップ120)。そして、上記ステップ120で取得されたNOxセンサセル出力N(t)を用いて、上式(1)に従って変化量ΔN(t)を算出する(ステップ122)。その後、上記ステップ122で算出された変化量ΔN(t)がゼロよりも大きいか(すなわち、変化量ΔN(t)が正の値であるか)否かを判別する(ステップ124)。このステップ124では、今回のNOxセンサセル出力N(t)が、前回のNOxセンサセル出力N(t−1)よりも小さいか否か、すなわち、NOxセンサセル出力が減少しているか否かが判別される。
【0064】
上記ステップ124で変化量ΔN(t)がゼロよりも大きいと判別された場合には、今回のNOxセンサセル出力N(t)が前回のNOxセンサセル出力N(t−1)よりも小さく、NOxセンサ出力が減少していると判断される。この場合、続いて、変化量ΔN(t)が基準値ΔNthよりも小さいか否かを判別する(ステップ126)。このステップ126で変化量ΔN(t)が基準値ΔNthよりも小さいと判別された場合には、NOxセンサセル出力N(t)を変曲点と特定する(ステップ128)。このステップ128では、NOxセンサ25の活性判定が行われる。図4に示す例では、変化量ΔN(t14)が基準値ΔNthよりも小さいため、時刻t14でのNOxセンサセル出力N(t14)が変曲点と特定される。その後、図7に示すルーチンを終了し、図6に示すルーチンのステップ110に移行する。
【0065】
図6に示すルーチンのステップ110では、変曲点に関する情報が学習値として取り込まれる。このステップ110では、変曲点特定時のNOxセンサ出力N(t)と、センサ通電ONから変曲点特定時までの時間と、変曲点特定時の素子温度と相関を有する物性値とが、三次元マップとして格納される。その後、図6に示すルーチンを終了する。
【0066】
一方、上記ステップ104で経過時間が基準値未満であると判別された場合には、上記ステップ106と同様に、NOxセンサ25への通電をONにする(ステップ112)。その後、上記ステップ112で通電ONされてから所定時間αが経過したか否かを判別する(ステップ114)。この所定時間αは、NOxセンサ25内に十分な酸素が存在していれば、NOxセンサセル出力が下記基準値N1(図5参照)を超える時間である。このステップ114で所定時間αが経過していないと判別された場合には、上記ステップ112に戻る。一方、上記ステップ114で所定時間αが経過したと判別された場合には、NOxセンサセル出力N(α)を取得する(ステップ116)。そして、上記ステップ116で取得されたNOxセンサセル出力N(α)が基準値N1以上であるか否かを判別する(ステップ118)。この基準値N1は、NOxセンサセル出力の変曲点を特定可能であるか否かを判別するための閾値である。
【0067】
上記ステップ118において、図5において破線Ls4で示すように、NOxセンサセル出力N(α)が基準値N1に達していないと判別された場合には、変曲点の特定が不可能であり、変曲点に関する情報の学習も不可能であると判断される。この場合、変曲点を特定することなく、図6に示すルーチンを終了する。一方、上記ステップ118において、図5において二点鎖線Ls3で示すように、NOxセンサ出力N(α)が基準値N1以上であると判別された場合には、変曲点の特定が可能であると判断される。この場合、上記ステップ108に移行する。
【0068】
以上説明したように、本実施の形態1では、酸素ポンプセル40により残存酸素を排出した後にNOxセンサセル60によりNOx濃度が検出される。このため、エンジン始動時のように、NOxセンサ25内の酸素濃度が高い場合には、図3に示すようなNOxセンサセル出力の変化が得られる。このNOxセンサセル出力に現れる変曲点は、NOxセンサセル60が残存酸素の影響を受けることなくNOx濃度を検出可能となったことを示している。本実施の形態1では、一般的なセンサ活性(本活性)判定とは異なり、この変曲点が現れる時期に、NOxセンサ25が活性状態であると判定される。すなわち、センサ個体差を有する素子インピーダンス等ではなく、センサ個体差とは無関係にNOxセンサセル出力に現れる変曲点に基づいてNOxセンサ25の活性判定が精度良く行われる。このため、NOxセンサ25の早期活性を最大限に実現することができると共に、高精度のNOxセンサセル出力を各種制御に用いることでエミッション低減の要求を十分に満たすことができる。
【0069】
また、本実施の形態1では、NOxセンサセル出力の変曲点を特定した後、この変曲点に関する情報を学習値として記憶する。例えば、変曲点特定時のNOxセンサ出力と、センサ通電ONから変曲点特定時までの時間と、変曲点特定時の素子温度と相関を有する物性値とが三次元マップとして格納される。よって、かかる学習値を利用することで、エンジン運転状態による活性判定バラツキを低減することができる。特に、エンジン始動条件(前回通電OFFからの経過時間)による活性判定バラツキを低減することができる。また、エンジン始動時に学習が行われるため、学習頻度を確保することができる。
【0070】
ところで、上記実施の形態1では、図7に示すルーチンのように、NOxセンサセル出力の変化量ΔN(t)と基準値ΔNthとの比較結果等に基づいて変曲点を特定しているが、以下の変形例の方法によって変曲点を特定してもよい。
【0071】
(第1変形例)
酸素ポンプセル40とNOxセンサセル60は同様の構成を有しており、共にセル内を酸素イオンO2−が流れるときの電流値を出力している。よって、酸素ポンプセル出力とNOxセンサセル出力との間には、相関関係がある。そこで、第1変形例では、NOxセンサセル出力の変曲点を特定するために、かかる相関関係を利用する。図8は、酸素ポンプセル出力とNOxセンサセル出力との相関関係を示す図である。図8における破線Lpは酸素ポンプセル出力の変化を示し、実線LsはNOxセンサセル出力の変化を示している。NOxセンサ25への通電をONにすると、図8に示すように、NOxセンサセル出力の変曲点だけでなく、酸素ポンプセル出力にも変曲点が現れる。この酸素ポンプセル出力の変曲点は、第1内部空間51に残存する酸素が排出されたときに現れる。本発明者は、酸素ポンプセル出力の変曲点が現れる時刻21と、NOxセンサセル出力の変曲点が現れる時刻t22との間には、相関関係があることを見いだした。
ここで、両時刻t21,t22の差Δtnは、実験等により予め求めておき、ECU30内に記憶させておくことができる。よって、後述する方法により酸素ポンプセル出力に変曲点が現れる時期を特定することができれば、その特定された変曲点の時期に予め求めた差Δtnを加算することで、NOxセンサセル出力に変曲点が現れる時期を推定することができる。
【0072】
図9を参照して、酸素ポンプセル出力の変曲点を特定する方法について説明する。図9は、本実施の形態1の第1変形例において、酸素ポンプセル出力の変曲点を特定する方法を説明するための図である。酸素ポンプセル出力の変曲点の特定方法は、上記実施の形態1で説明したNOxセンサセル出力の変曲点の特定方法の一部を適用することができる。
【0073】
先ず、所定間隔毎に、酸素ポンプセル出力Pを取得すると共に、各時刻において酸素ポンプセル出力の変化量ΔPを算出する。ここで、時刻tにおける変化量ΔP(t)は、次式(2)に従って算出される。そして、この算出された変化量ΔP(t)が所定の基準値ΔPthよりも小さくなったとき、その時刻tでの酸素ポンプセル出力P(t)を変曲点と特定する。なお、変化量ΔP(t)が正の値をとるように、次式(2)では、時刻tの出力P(t)から時刻(t−1)の出力P(t−1)を減算している。
ΔP(t)=P(t)-P(t-1)・・・(2)
【0074】
図9に示す例では、時刻t30から時刻t34までの間、酸素ポンプセル出力Pは増加している。このため、各時刻t31〜時刻t34において上式(2)により算出された変化量ΔP(t31)〜ΔP(t34)は、全て正の値をとる。変化量ΔP(t31)〜ΔP(t33)は予め定められた基準値ΔPth以上であるが、ΔP(t34)は基準値ΔPthよりも小さい。このため、時刻t34での酸素ポンプセル出力P(t34)が変曲点と特定される。従って、この時刻t34に上記のΔtnを加えた時刻(t34+Δtn)において、NOxセンサセル出力Nに変曲点が現れると推定することができる。
【0075】
図10は、本実施の形態1の第1変形例による変曲点特定ルーチンを示すフローチャートである。図10に示すルーチンは、図6のステップ108において起動される。図10に示すルーチンによれば、先ず、酸素ポンプセル出力P(t)を取得する(ステップ130)。そして、上記ステップ130で取得された酸素ポンプセル出力P(t)を用いて、上式(2)に従って変化量ΔP(t)を算出する(ステップ132)。
【0076】
その後、上記ステップ132で算出された変化量ΔP(t)が基準値ΔPthよりも小さいか否かを判別する(ステップ134)。このステップ134で変化量ΔP(t)が基準値ΔPth以上であると判別された場合には、酸素ポンプセル出力Pに未だ変曲点が現れていないと判断して、図10に示す本ルーチンを終了する。
一方、上記ステップ134で変化量ΔP(t)が基準値ΔPthよりも小さいと判別された場合には、時刻tでの酸素ポンプセル出力P(t)を変曲点と特定する(ステップ136)。そして、上記ステップ136で特定された変曲点を用い、酸素ポンプセル出力PとNOxセンサセル出力Nとの相関関係を考慮して、NOxセンサセル出力の変曲点を推定する(ステップ138)。
ここで、図8に示すように、酸素ポンプセル出力に変曲点が現れる時期t21と、NOxセンサセル出力に変曲点が現れる時期t22との時間差Δtnが予め求められ、ECU30内に記憶されている。上記ステップ138では、酸素ポンプセル出力に変曲点が現れる時期tに時間差Δtnを加えた時刻(t+Δtn)に、NOxセンサセル出力に変曲点が現れると推定される。この時刻(t+Δtn)において、NOxセンサ25の活性判定が行われる。その後、本ルーチンを終了する。
【0077】
第1変形例では、酸素ポンプセル出力Pに変曲点が現れる時期が特定され、酸素ポンプセル出力PとNOxセンサセル出力Nとの相関関係を考慮して、NOxセンサセル出力Nに変曲点が現れる時期が推定される。よって、NOxセンサセル60がNOx濃度を精度良く検知し始める時期を的確に推定することができる。
【0078】
(第2変形例)
上記第1変形例では、酸素ポンプセル出力PとNOxセンサセル出力Nとの相関関係を考慮して、NOxセンサセル出力Pに変曲点が現れる時期を推定した。
図11は、本発明の実施の形態1の第2変形例によるガス濃度検出装置の要部を説明するためのブロック図である。図11に示すガス濃度検出装置は、NOxセンサ25Aを有している。このNOxセンサ25Aは、図2に示すNOxセンサ25内に、空燃比センサセル90を更に備えたものである。この空燃比センサセル90は、図示しない固体電解質体を有し、所定電圧が印加され、セル内を酸素イオンO2−が流れるときに電流値を出力している。空燃比センサセル90の出力は、ECU30Aの空燃比センサセル制御手段34により検出される。その他のガス濃度検出装置の構成は、図2に示すガス濃度検出装置10の構成と同様であるため、図示並びに説明を省略する。
【0079】
空燃比センサセル90とNOxセンサセル60とは、共にセル内を酸素イオンO2−が流れるときの電流値を出力している。よって、空燃比センサセル出力とNOxセンサセル出力との間には、相関関係がある。本第2変形例では、NOxセンサセル出力の変曲点を特定するために、かかる相関関係を利用する。
【0080】
図12は、空燃比センサセル出力とNOxセンサセル出力との相関関係を示す図である。図12における一点鎖線Laは空燃比センサセル出力の変化を示し、実線LsはNOxセンサセル出力の変化を示している。また、破線Lpは参考用としての酸素ポンプセル出力の変化を示している。
【0081】
図12に示すように、上記NOxセンサセル出力の変曲点だけでなく、空燃比センサセル出力にも変曲点が現れる。変曲点は、例えば、空燃比センサセル出力の変化量が正から負に変わるときの空燃比センサセル出力とすることができる。この空燃比センサセル出力に変曲点が現れる時期t20と、NOxセンサセル出力に変曲点が現れる時刻t22との間には、相関関係がある。両時刻t20,22の差Δtaは、実験等により予め求めておき、ECU30A内に記憶させておくことができる。よって、空燃比センサセル出力の変曲点を特定することができれば、NOxセンサセル出力の変曲点の時期を推定することができる。従って、本第2変形例によれば、上記第1変形例と同様に、NOxセンサセル60が実際のNOx濃度を精度良く検出し始める時期を的確に推定することができる。
【0082】
また、上記実施の形態1では、NOxセンサ25の制御をエンジン制御用のECU30により行っているが、NOxセンサ25制御用のECUをエンジン制御用のECU30と別個に構成してもよい。
【0083】
尚、本実施の形態1及びその変形例においては、NOxセンサセル60が第1〜5の発明における「ガス濃度検知セル」に、ヒータ電極81が第6の発明における「ヒータ」に、ヒータ制御手段33が第6の発明における「ヒータ制御手段」に、酸素ポンプセル40が第7の発明における「酸素ポンプセル」に、ポンプセル制御手段31が第7の発明における「酸素ポンプセル制御手段」に、それぞれ相当する。
また、本実施の形態1及びその変形例においては、ECU30が、ステップ102,104の処理を実行することにより第1の発明における「酸素濃度制御手段」が、ステップ108,128又は138の処理を実行することにより第1の発明における「変曲点特定手段」が、ステップ110の処理を実行することにより第1の発明における「記憶手段」が、それぞれ実現されている。
【0084】
実施の形態2.
次に、図13及び図14を参照して、本発明の実施の形態2について説明する。
本実施の形態2のシステムは、図1及び図2に示すハードウェア構成を用いて、ECU30に、図6及び図14に示すルーチンを実行させることにより実現することができる。
【0085】
[実施の形態2の特徴]
上記実施の形態1では、エンジン始動時に変曲点に関する情報を学習する。
ところで、エンジン始動時は、SCR触媒22の活性が低いため、SCR触媒22下流にNOxが存在することとなる。図13は、エンジン始動時のSCR触媒22下流のNOx濃度の変化と、NOxセンサセル出力の変化を示す図である。図13において、太い実線LsはNOxセンサセル出力の変化を、細い実線LはSCR触媒22下流のNOx濃度の測定値である。この測定値は、公知の分析計によるものである。
図13に示すように、SCR触媒22下流のNOx濃度が変化すると、NOxセンサセル出力が変化してしまう。図13に示す範囲Rにおいて、本来はNOxセンサセル出力に変曲点が現れる。しかし、NOx濃度変化に伴うNOxセンサセル出力の変化により、NOxセンサセル出力の変曲点を精度良く特定することができない可能性がある。
【0086】
そこで、本実施の形態2では、公知の手法によりNOx濃度を推定し、NOx濃度の推定値を用いてNOxセンサセル出力を補正する。具体的には、EGR量や燃料噴射量等からNOx濃度の推定値を求め、実際のNOxセンサセル出力から推定値を減じることによち、NOxセンサセル出力を補正する。そして、補正後のNOxセンサセル出力の変曲点を特定する。
【0087】
[実施の形態2における具体的処理]
本実施の形態2においても、先ず、図6に示すルーチンが起動される。図6に示すルーチンのステップ108において、図7に示すルーチンに代えて、図14に示すルーチンが起動される。図14は、本実施の形態2において、図6のステップ108で実行される変曲点特定ルーチンを示すフローチャートである。
【0088】
図14に示すルーチンによれば、先ず、図7に示すルーチンと同様に、NOxセンサセル出力N(t)を取得する(ステップ120)。次に、公知の手法を用いて、SCR触媒22下流のNOx濃度を推定する(ステップ140)。このステップ140では、例えば、EGR量や燃料噴射量等に基づいて、NOx濃度の推定値が求められる。
【0089】
その後、上記ステップ140で求められたNOx濃度推定値を用いて、上記ステップ120で取得されたNOxセンサセル出力N(t)をNa(t)に補正する(ステップ142)。このステップ142では、例えば、NOxセンサセル出力N(t)からNOx濃度推定値を減じることで、NOxセンサセル出力Na(t)に補正される。そして、上記ステップ142で補正されたNOxセンサセル出力Na(t)を用いて、次式(3)に従って、変化量ΔNa(t)を算出する(ステップ144)。
ΔNa(t)=Na(t-1)-Na(t)・・・(3)
【0090】
次に、上記ステップ144で算出された変化量ΔNa(t)がゼロよりも大きいか(すなわち、変化量ΔNa(t)が正の値であるか)否かを判別する(ステップ146)。このステップ146では、今回のNOxセンサセル出力Na(t)が前回のNOxセンサセル出力Na(t−1)よりも小さいか否か、すなわち、NOxセンサセル出力Na(t)が減少しているか否かが判別される。
【0091】
上記ステップ146で変化量ΔNa(t)がゼロよりも大きいと判別された場合には、今回のNOxセンサセル出力Na(t)が前回のNOxセンサセル出力Na(t−1)よりも小さく、NOxセンサ出力Na(t)が減少していると判断される。この場合、続いて、変化量ΔNa(t)が基準値ΔNthよりも小さいか否かを判別する(ステップ148)。
【0092】
上記ステップ148で変化量ΔNa(t)が基準値ΔNthよりも小さいと判別された場合には、NOxセンサセル出力Na(t)を変曲点と特定する(ステップ150)。このステップ150では、NOxセンサ25の活性判定が行われる。その後、図14に示すルーチンを終了し、図6に示すルーチンのステップ110に移行し、変曲点に関する情報が学習される。
【0093】
以上説明したように、本実施の形態2では、エンジン始動時に、NOx濃度推定値を求め、このNOx濃度推定値を用いてNOxセンサセル出力Nが補正される。そして、補正後のNOxセンサセル出力Naの変曲点が特定される。従って、エンジン始動時においても、エンジン1から排出されるNOx濃度の変化の影響を受けることなく、精度良く変曲点を特定することができ、変曲点に関する情報を精度良く学習することができる。よって、かかる学習値を利用することで、エンジン運転状態による活性判定バラツキを低減することができる。
【0094】
尚、本実施の形態2においては、ECU30が、ステップ140の処理を実行することにより第2の発明における「NOx濃度推定手段」が、ステップ142の処理を実行することにより第2の発明における「補正手段」が、ステップ150の処理を実行することにより第2の発明における「変曲点特定手段」が、それぞれ実現されている。
【0095】
実施の形態3.
次に、図15を参照して、本発明の実施の形態3について説明する。
本実施の形態3のシステムは、図1及び図2に示すハードウェア構成を用いて、ECU30に、後述する図15に示すルーチンを実行させることにより実現することができる。
【0096】
[実施の形態3の特徴]
上記実施の形態1,2では、エンジン始動時に変曲点情報を学習した。
本実施の形態3では、燃料カット(F/C)の実行時に変曲点情報を学習する場合について説明する。ここで、上述したように、NOxセンサセル出力の変曲点を特定するためには、NOxセンサ25内の酸素濃度を高める必要がある。
【0097】
そこで、燃料カット実行中にNOxセンサ25内の酸素濃度を高めるために、ヒータ制御手段33からヒータ電極81への通電がOFFにされる。そうすると、素子温度が下がり、酸素ポンプセル40の酸素ポンピング能力が低下する。これにより、NOxセンサ25内の酸素濃度、すなわち、第1内部空間51及び第2内部空間52の酸素濃度、並びにNOxセンサセル60の第1検出電極62に吸着される酸素濃度が高くなる。
【0098】
かかるNOxセンサ25内の酸素濃度は、NOxセンサ25自体の応答性のほか、エンジン1の吸入空気量Gaが支配的である。そこで、吸入空気量Gaの積算値である積算空気量Qaを基準値Qthと比較することで、NOxセンサ25内の酸素濃度が所望の濃度まで高められたか否かを判断する。すなわち、積算空気量Qaに基づいて、変曲点を特定可能であるか否かを判断する。詳細には、積算空気量Qaが基準値Qthよりも大きくなると、NOxセンサセル出力の変曲点を特定する。
変曲点の特定方法及び変曲点に関する情報の学習方法については、上記実施の形態1の方法を適用することができる。
【0099】
なお、燃料カット実行中は、筒内で爆発は起こらないため、NOxは発生しない。このため、上記実施の形態2のようなNOxセンサセル出力の補正は不要である。
【0100】
[実施の形態3における具体的処理]
図15は、本実施の形態3において、ECU30が実行するルーチンを示すフローチャートである。
図15に示すルーチンによれば、先ず、燃料カットを実行中であるか否かを判別する(ステップ160)。燃料カットは、例えば、車両走行中にアクセル開度AAが全閉にされた場合に、燃料噴射量がゼロにされることである。このステップ160で燃料カットが実行されていないと判別された場合には、本ルーチンを終了する。
【0101】
上記ステップ160で燃料カットを実行中であると判別された場合には、ヒータ電極81への通電をOFFにする(ステップ162)。このステップ162の処理により、酸素ポンプセル40の酸素ポンピング能力が低下し、NOxセンサ25内の酸素濃度が徐々に高くなる。
【0102】
次に、積算空気量Qaを算出する(ステップ164)。このステップ164では、ヒータ電極81への通電をOFFにしてからの吸入空気量Gaを積算することで、積算空気量Qaが求められる。
【0103】
その後、燃料カットを継続中であるか否かを判別する(ステップ166)。このステップ166で燃料カットを継続中ではないと判別された場合、例えば、車両運転者によるアクセル踏み込み操作があったときや、エンジン回転数Neが燃料カット復帰回転数に達したとき等には、ヒータ電極81への通電をONにする(ステップ168)。その後、本ルーチンを終了し、NOxセンサセル出力を他の制御に用いる。
【0104】
一方、上記ステップ166で燃料カットを継続中であると判別された場合には、上記ステップ164で算出された積算空気量Qaが基準値Qthよりも大きいか否かを判別する(ステップ170)。この基準値Qthは、NOxセンサ25内の酸素濃度を所望濃度にまで高められたか否かを判別するための閾値である。このステップ170で積算空気量Qaが基準値Qthに達していないと判別された場合には、NOxセンサ25内の酸素濃度が所望濃度にまで高められていないと判断される。すなわち、NOxセンサセル出力の変曲点を特定できず、変曲点に関する情報を学習できないと判断される。この場合、ステップ162に戻る。
【0105】
上記ステップ170で積算空気量Qaが基準値Qthよりも大きいと判別された場合には、NOxセンサ25内の酸素濃度が所望濃度にまで高められたと判断される。この場合、ヒータ制御手段33からヒータ電極81への通電をONにする(ステップ172)。そして、上記ステップ108に移行し、図7に示すルーチンを実行することで変曲点を特定する。その後、図6に示すルーチンと同様に、変曲点学習値を取り込む(ステップ110)。その後、本ルーチンを終了する。
【0106】
以上説明したように、本実施の形態3では、燃料カット時に、ヒータ電極81への通電をOFFにすることで、NOxセンサ25内の酸素濃度を高める。そして、積算空気量Qaが基準値Qthよりも大きい場合に、NOxセンサ25内の酸素濃度が所望濃度にまで高められたと判断し、NOxセンサセル出力の変曲点を特定する。従って、燃料カット時においても、変曲点の特定並びに変曲点に関する情報の学習を行うことができる。よって、かかる学習値を利用することにより、エンジン運転状態による活性判定バラツキを低減することができる。また、燃料カット時に学習が行われるため、学習頻度を確保することができる。
【0107】
以下、本実施の形態3の変形例について説明する。上記実施の形態3では、NOxセンサ25内の酸素濃度を高めるために、ヒータ電極81への通電をOFFにしている。以下の変形例のように、NOxセンサ25内の酸素濃度を高めるために、上記実施の形態3とは異なる方法を用いてもよい。
【0108】
(第1変形例)
上記実施の形態3のように、燃料カット実行中にヒータ電極81への通電をOFFにすると、素子温度が急激に低下する。そうすると、燃料カットを継続しない場合に通電をONにしても、しばらくの間は素子温度が上昇しないため、NOxセンサセル出力を他の制御に用いることができない。よって、素子温度が上昇するまでの間に、排気エミッション特性が悪化する可能性がある。
第1変形例では、燃料カット実行中に、NOxセンサ25内の酸素濃度を高めるために、図16に示すように、素子温度制御目標値を低下させる。図16は、本実施の形態3の第1変形例において、ECU30が実行するルーチンを示すフローチャートである。図16に示すルーチンは、図15に示すルーチンと、ステップ162A,168A,172Aが相違する。よって、この相違点について説明する。
【0109】
図16に示すルーチンによれば、ステップ160で燃料カットを実行中であると判別された場合に、素子温度の制御目標値を低下させる(ステップ162A)。すなわち、ヒータ制御手段33による制御目標値を低下させる。これにより、ヒータ電極81への通電時間が通常時に比して短くされ、素子温度が低下するため、酸素ポンプセル40の酸素排出能力が低下する。その結果、NOxセンサ25内の酸素濃度、すなわち、第1内部空間51及び第2内部空間52の酸素濃度、並びに、第1検出電極62に吸着される酸素濃度を高めることができる。
ここで、かかる制御目標値を低下させることによる素子温度の低下は、上記実施の形態3の通電OFF時に比して小さい。このため、燃料カットを継続しない場合に制御目標値を復帰させれば(ステップ168A)、上記実施の形態3に比して素子温度を早期に上昇させることができる。よって、上記実施の形態3に比して、素子温度上昇までの間の排気エミッション特性の悪化を抑制することができるという効果が得られる。
また、ステップ170で積算空気量Qaが基準値Qthよりも大きいと判別された場合には、素子温度の制御目標値を復帰させる(ステップ172B)。その後、変曲点の特定(ステップ108)と変曲点学習値の取り込み(ステップ110)が順次実行される。
【0110】
(第2変形例)
第2変形例では、燃料カット実行中に、NOxセンサ25内の酸素濃度を高めるために、図17に示すように、素子温度の制御目標値を低下させるだけでなく、NOxセンサセル60への印加電圧も低下させる。図17は、本実施の形態3の第2変形例において、ECU30が実行するルーチンを示すフローチャートである。図17に示すルーチンは、図15に示すルーチンと、ステップ162B,168B,172Bが相違する。よって、この相違点について説明する。
【0111】
図17に示すルーチンによれば、ステップ160で燃料カットを実行中であると判別された場合に、素子温度の制御目標値を低下させると共に、NOxセンサセル60への印加電圧を低下させる(ステップ162B)。NOxセンサセル60への印加電圧を低下させると、NOxセンサセル60の酸素排出能力が低下する。このため、上記第1変形例に比して、第2内部空間52の第1検出電極62周辺の酸素濃度を高めることができるため、第1検出電極62に吸着される酸素濃度を更に高めることができる。よって、上記第1変形例に比して、NOxセンサ25内の酸素濃度をより高めることができるため、変曲点の特定を精度良く行うことができる。
また、ステップ166で燃料カットを継続していないと判別された場合や、ステップ170で積算空気量Qaが基準値Qthよりも大きいと判別された場合には、素子温度の制御目標値とNOxセンサセル60への印加電圧とを復帰させる(ステップ168C,172C)。
【0112】
(第3変形例)
第3変形例では、NOxセンサ25の素子温度を低下させることなく、NOxセンサ25内の酸素濃度を高める方法について説明する。すなわち、図18に示すように、燃料カット実行中に、酸素ポンプセル40への印加電圧を通常時に比して低下させる。図18は、本実施の形態3の第3変形例において、ECU30が実行するルーチンを示すフローチャートである。図18に示すルーチンは、図15に示すルーチンと、ステップ162C,168C,172Cが相違する。よって、この相違点について説明する。
【0113】
図18に示すルーチンによれば、ステップ160で燃料カットを実行中であると判別された場合に、酸素ポンプセル40への印加電圧を、通常時に比して低下させる(ステップ162C)。これにより、酸素ポンプセル40の酸素排出能力が低下する。その結果、NOxセンサ25内の酸素濃度、すなわち、第1内部空間51及び第2内部空間52の酸素濃度並びに第1検出電極62に吸着される酸素濃度を高めることができる。第3変形例では、素子温度を低下させていないため、燃料カットを継続しない場合に酸素ポンプセル40への印加電圧を復帰させれば(ステップ168C)、早期にNOxセンサセル出力を他の制御に使用することができる。よって、第1及び第2変形例に比して、更に排気エミッション特性の悪化を抑制することができる。
また、ステップ170で積算空気量Qaが基準値Qthよりも大きいと判別された場合には、酸素ポンプセル40への印加電圧を復帰させる(ステップ172C)。その後、変曲点の特定(ステップ108)と変曲点学習値の取り込み(ステップ110)が順次実行される。
【0114】
(第4変形例)
第4変形例では、NOxセンサ25内の酸素濃度を高めるために、図19に示すように、酸素ポンプセル40への印加電圧を通常時に比して低下させるだけでなく、NOxセンサセル60への印加電圧も低下させる。図19は、本実施の形態3の第4変形例において、ECU30が実行するルーチンを示すフローチャートである。図19に示すルーチンは、図15に示すルーチンと、ステップ162D,168D,172Dが相違する。よって、この相違点について説明する。
【0115】
図19に示すルーチンによれば、ステップ160で燃料カットを実行中であると判別された場合に、酸素ポンプセル40への印加電圧を通常時に比して低下させると共に、NOxセンサセル60への印加電圧も通常時に比して低下させる(ステップ162D)。これにより、上記第3変形例に比して、第2内部空間52の第1検出電極62周辺の酸素濃度を高めることができるため、第1検出電極62に吸着される酸素濃度を更に高めることができる。よって、上記第3変形例に比して、NOxセンサ25内の酸素濃度をより高めることができるため、変曲点の特定を精度良く行うことができる。
また、ステップ166で燃料カットを継続していないと判別された場合や、ステップ170で積算空気量Qaが基準値Qthよりも大きいと判別された場合には、酸素ポンプセル40への印加電圧とNOxセンサセル60への印加電圧とを復帰させる(ステップ168D,172D)。
【0116】
尚、本実施の形態3及びその変形例においては、ECU30が、ステップ162,162A,162B,162C,162Dの処理を実行することにより第3の発明における「酸素濃度制御手段」が、ステップ162,162A,162Bの処理を実行することにより第6の発明における「ヒータ制御手段」が、ステップ162C,162Dの処理を実行することにより第7の発明における「酸素ポンプセル制御手段」が、ステップ108の処理を実行することにより第3の発明における「変曲点特定手段」が、ステップ110の処理を実行することにより第3及び第5の発明における「記憶手段」が、それぞれ実現されている。
【0117】
実施の形態4.
次に、図20及び図21を参照して、本発明の実施の形態4について説明する。
本実施の形態4のシステムは、図1及び図2に示すハードウェア構成を用いて、ECU30に、後述する図21に示すルーチンを実行させることにより実現することができる。
【0118】
[実施の形態4の特徴]
上記実施の形態1,2では、エンジン始動時に変曲点に関する情報を学習した。また、上記実施の形態3では、燃料カット時に変曲点に関する情報を学習した。
【0119】
本実施の形態4では、アイドル時に変曲点に関する情報を学習する場合について説明する。
ところで、アイドル時には、エンジン始動時に比してSCR触媒22の活性が高い。よって、アイドル時のSCR触媒22下流のNOx濃度は、エンジン始動時に比して低い。しかし、アイドル時においても、SCR触媒22下流のNOx濃度が変化すると、これに伴ってNOxセンサセル出力が変化してしまい、変曲点を精度良く特定することができない可能性がある。
【0120】
ここで、上記実施の形態2と同様に、NOx濃度の推定値を用いてNOxセンサセル出力を補正する方法が考えられる。しかし、上述したように、アイドル時のNOx排出量は少ない。このアイドル時のNOx濃度は、図20に示すように、尿素水添加弁23からの尿素水添加量を増やすことで、低下させることができる。図20は、尿素水添加量と、SCR触媒22下流のNOx濃度との関係を示す図である。
【0121】
そこで、本実施の形態4では、アイドル時に、尿素水添加量を例えば図20におけるQiのように増加させることによってNOx濃度を低下させる。その後、NOxセンサセル出力の変曲点を特定し、変曲点に関する情報を学習する。
【0122】
[実施の形態4における具体的処理]
図21は、本実施の形態4において、ECU30が実行するルーチンを示すフローチャートである。
図21に示すルーチンによれば、先ず、エンジン1がアイドル状態であるか否かを判別する(ステップ180)。このステップ180でアイドル状態ではないと判別された場合には、本ルーチンを終了する。
【0123】
上記ステップ180でアイドル状態であると判別された場合には、NOxセンサ25内の酸素濃度を増加させる(ステップ182)。このステップ182では、上記実施の形態3及び変形例で説明したように、ヒータ通電制御や、素子温度制御目標値の制御や、ポンプセル印加電圧制御等を実行することで、NOxセンサ25の第1内部空間51及び第2内部空間52の酸素濃度並びに第1検出電極62に吸着される酸素濃度を高めることができる。
【0124】
次に、NOx低減処理を実行する(ステップ184)。このステップ184では、例えば、尿素水添加量の増量のほか、EGR量の増量等がなされる。その後、ステップ108の処理に移行し、図7に示すルーチンにより、NOxセンサセル出力の変曲点が特定される。その後、図6に示すルーチンと同様に、変曲点に関する情報が学習値として取り込まれる(ステップ110)。
【0125】
以上説明したように、本実施の形態4では、アイドル時に、NOx低減処理が実行され後、NOxセンサセル出力の変曲点が特定される。従って、アイドル時においても、エンジン1から排出されるNOx濃度の変化の影響を受けることなく、精度良く変曲点を特定することができ、変曲点に関する情報を精度良く学習することができる。よって、エンジン運転状態による活性判定バラツキを低減することができる。また、アイドル時に学習が行われるため、学習頻度を確保することができる。
【0126】
尚、本実施の形態4においては、ECU30が、ステップ182の処理を実行することにより第4の発明における「酸素濃度制御手段」が、ステップ184の処理を実行することにより第4の発明における「NOx濃度低減手段」が、ステップ108の処理を実行することにより第4の発明における「変曲点特定手段」が、ステップ110の処理を実行することにより第4の発明における「記憶手段」が、それぞれ実現されている。
【図面の簡単な説明】
【0127】
【図1】本発明の実施の形態1によるシステムの構成の一例を示す図である。
【図2】図1に示すシステムに搭載されるガス濃度検出装置の構成を示す図である。
【図3】エンジン始動時の酸素ポンプセル出力の変化とNOxセンサセル出力の変化を示す図である。
【図4】NOxセンサセル出力の変曲点を特定する方法を説明するための図である。
【図5】エンジン始動時において、経過時間に応じたNOxセンサセル出力の変化を説明するための図である。
【図6】本発明の実施の形態1において、ECU30が実行するルーチンを示すフローチャートである。
【図7】図6のステップ108で実行される変曲点特定ルーチンを示すフローチャートである。
【図8】酸素ポンプセル出力とNOxセンサセル出力との相関関係を示す図である。
【図9】本発明の実施の形態1の第1変形例において、酸素ポンプセル出力の変曲点を特定する方法を説明するための図である。
【図10】本発明の実施の形態1の第1変形例による変曲点特定ルーチンを示すフローチャートである。
【図11】本発明の実施の形態1の第2変形例によるガス濃度検出装置の要部を説明するためのブロック図である。
【図12】空燃比センサセル出力とNOxセンサセル出力との相関関係を示す図である。
【図13】エンジン始動時のSCR触媒22下流のNOx濃度の変化と、NOxセンサセル出力の変化を示す図である。
【図14】本発明の実施の形態2において、図6のステップ108で実行される変曲点特定ルーチンを示すフローチャートである。
【図15】本発明の実施の形態3において、ECU30が実行するルーチンを示すフローチャートである。
【図16】本発明の実施の形態3の第1変形例において、ECU30が実行するルーチンを示すフローチャートである。
【図17】本発明の実施の形態3の第2変形例において、ECU30が実行するルーチンを示すフローチャートである。
【図18】本発明の実施の形態3の第3変形例において、ECU30が実行するルーチンを示すフローチャートである。
【図19】本発明の実施の形態3の第4変形例において、ECU30が実行するルーチンを示すフローチャートである。
【図20】尿素水添加量と、SCR触媒22下流のNOx濃度との関係を示す図である。
【図21】本発明の実施の形態4において、ECU30が実行するルーチンを示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0128】
1 エンジン
25 NOxセンサ
30 ECU
31 ポンプセル制御手段
32 センサセル制御手段
33 ヒータ制御手段
40 酸素ポンプセル
60 NOxセンサセル
81 ヒータ電極
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンから排出される排ガス中の特定ガス成分の濃度を検出するガス濃度検出装置に係り、特にNOxセンサセルの活性点(活性判定点)の学習に関する。
【背景技術】
【0002】
余剰酸素を排出する酸素ポンプセルと、余剰酸素排出後のガス中の特定成分の濃度を検出するセンサセルとを備えたガス濃度検出装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。この特許文献1のガス濃度検出装置によれば、酸素ポンプセルに流れる電流値に基づいて、センサセルに流れる電流値が補正される。これにより、被検出ガス中の酸素濃度が変化しても高精度に濃度検出を行うことができる。
【0003】
また、酸素ポンプセルやセンサセルは固体電解質からなる素子を有している。かかる固体電解質からなる素子を用いたガス濃度検出装置では、素子温度を所定の活性温度に加熱する必要がある。素子抵抗(素子インピーダンス)を検出し、検出した素子抵抗と目標値との偏差に基づいてヒータの通電を制御する装置が知られている(例えば、特許文献2参照。)。この特許文献2の装置によれば、ヒータ電力に基づき素子抵抗の目標値を補正することで、素子温度を所望の温度に保持することができる。
【0004】
また、素子インピーダンスに基づき、ガス濃度センサの活性判定を行う装置が知られている(例えば、特許文献3参照。)。
【0005】
【特許文献1】特開2002−116180号公報
【特許文献2】特開2003−50227号公報
【特許文献3】特開2004−177179号公報
【特許文献4】特開平11−237363号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、近年、エミッション低減のため、ガス濃度センサの早期活性化と共に、精度良く活性判定を行うことが要求されている。
しかしながら、上記特許文献3においてセンサ活性判定の指標とされる素子インピーダンス等は、センサ個体差がある。このため、ガス濃度検知セルによりガス濃度を高精度に検出し始める時期に的確にセンサ活性判定を行うことができない可能性がある。さらに素子インピーダンス等により活性判定すると、エンジン運転状態により活性判定バラツキが生じてしまう可能性がある。
【0007】
本発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、エンジン運転状態による活性判定バラツキを低減することが可能なガス濃度検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明は、被測定ガス中の酸素濃度を変化させることが可能な酸素濃度制御手段と、該酸素濃度制御手段により酸素濃度を変化させた後のガスから特定ガス成分の濃度を検知するガス濃度検知セルとを備えたガス濃度検出装置であって、
所定の運転状態で、かつ、前記酸素濃度制御手段により前記ガス濃度検知セルの酸素濃度が所定値以上にされた後に、前記ガス濃度検知セルの酸素濃度が減少する過程で、前記ガス濃度検知セルの出力の変曲点を活性点として特定する変曲点特定手段と、
前記変曲点特定手段により特定された変曲点に関する情報である変曲点学習値を記憶する記憶手段とを備えたことを特徴とする。
【0009】
また、第2の発明は、被測定ガス中の酸素濃度を変化させることが可能な酸素濃度制御手段と、該酸素濃度制御手段により酸素濃度を変化させた後のガスから特定ガス成分の濃度を検知するガス濃度検知セルとを備えたガス濃度検出装置であって、
内燃機関の排気通路のNOx濃度を推定するNOx濃度推定手段と、
前記NOx濃度推定手段により推定されたNOx濃度を用いて前記ガス濃度検知セルの出力を補正する補正手段と、
前記内燃機関の始動時、かつ、前記酸素濃度制御手段により前記ガス濃度検知セルの酸素濃度が所定値以上にされた後に、前記ガス濃度検知セルの酸素濃度が減少する過程で、前記補正手段により補正された出力の変曲点を特定する変曲点特定手段と、
前記変曲点特定手段により特定された変曲点に関する情報である変曲点学習値を記憶する記憶手段とを備えたことを特徴とする。
【0010】
また、第3の発明は、被測定ガス中の酸素濃度を変化させることが可能な酸素濃度制御手段と、該酸素濃度制御手段により酸素濃度を変化させた後のガスから特定ガス成分の濃度を検知するガス濃度検知セルとを備えたガス濃度検出装置であって、
内燃機関の燃料カット時、かつ、前記酸素濃度制御手段により前記ガス濃度検知セルの酸素濃度が増加せしめられた後に、前記ガス濃度検知セルの酸素濃度が減少する過程で、前記ガス濃度検知セルの出力の変曲点を特定する変曲点特定手段と、
前記変曲点特定手段により特定された変曲点に関する学習値である変曲点学習値を記憶する記憶手段とを備えたことを特徴とする。
【0011】
また、第4の発明は、被測定ガス中の酸素濃度を変化させることが可能な酸素濃度制御手段と、該酸素濃度制御手段により酸素濃度を変化させた後のガスから特定ガス成分の濃度を検知するガス濃度検知セルとを備えたガス濃度検出装置であって、
内燃機関の排気通路のNOx濃度を低減するNOx濃度低減手段と、
前記内燃機関のアイドル時、かつ、前記NOx濃度低減手段によりNOx濃度が低減された後に、前記ガス濃度検知セルの酸素濃度が減少する過程で、前記ガス濃度検知セルの出力の変曲点を特定する変曲点特定手段と、
前記変曲点特定手段により特定された変曲点に関する情報である変曲点学習値を記憶する記憶手段とを備えたことを特徴とする。
【0012】
また、第5の発明は、第1から第4の何れか1の発明において、
前記記憶手段は、前記変曲点が特定されたときの前記ガス濃度検知セルの出力及び素子温度と相関を有する物性値と、前記変曲点が特定されるまでの時間とをマップとして格納することを特徴とする。
【0013】
また、第6の発明は、第3の発明において、
前記酸素濃度制御手段は、ヒータへの通電を制御するヒータ制御手段であり、
前記ヒータ制御手段は、通常時に比して燃料カット時の前記ヒータへの通電量を低下させることを特徴とする。
【0014】
また、第7の発明は、第3の発明において、
電圧印加に伴って被測定ガス中の余剰酸素を排出する酸素ポンプセルを更に備え、
前記酸素濃度制御手段は、前記酸素ポンプセルへの通電を制御する酸素ポンプセル制御手段であり、
前記酸素ポンプセル制御手段は、通常時に比して燃料カット時の前記酸素ポンプセルへの通電量を低下させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
第1の発明では、内燃機関が所定の運転状態で、かつ、酸素濃度制御手段によりガス濃度検知セルの酸素濃度が所定値以上にされた後に、ガス濃度検知セルの酸素濃度が減少する過程で、ガス濃度検知セルの出力の変曲点が活性点として特定される。第1の発明によれば、一般的なセンサ活性(本活性)の判定と異なり、残存酸素の影響を受けることなく特定ガス成分の濃度をガス濃度検知セルにより検出し始める時期をもって、ガス濃度検知セルが活性状態であると判定される。従って、ガス濃度検知セルの活性判定を精度良く行うことができる。さらに、第1の発明では、この変曲点に関する情報である変曲点学習値が記憶される。変曲点学習値を利用することで、内燃機関の運転状態による活性判定バラツキを低減することができる。
【0016】
第2の発明では、NOx濃度の推定値を用いて、ガス濃度検知セル出力が補正される。内燃機関の始動時、かつ、酸素濃度制御手段によりガス濃度検知セルの酸素濃度が所定値以上にされた後に酸素濃度が減少する過程で、補正されたガス濃度検知セル出力の変曲点が活性点として特定される。第2の発明によれば、一般的なセンサ活性(本活性)の判定と異なり、内燃機関の始動時に、残存酸素の影響を受けることなく特定ガス成分の濃度をガス濃度検知セルにより検出し始める時期をもって、ガス濃度検知セルが活性状態であると判定される。さらに、内燃機関の始動時のNOx濃度の変化の影響を受けることなく、精度良く変曲点を特定することができる。従って、ガス濃度検知セルの活性判定を精度良く行うことができる。さらに、第2の発明では、この変曲点に関する情報である変曲点学習値が記憶される。変曲点学習値を利用することで、内燃機関の運転状態による活性判定バラツキを低減することができる。
【0017】
第3の発明では、内燃機関の燃料カット時、かつ、酸素濃度制御手段によりガス濃度検知セルの酸素濃度が増加せしめられた後に酸素濃度が減少する過程で、ガス濃度検知セルの出力の変曲点が活性点として特定される。第3の発明によれば、内燃機関の燃料カット時に、残存酸素の影響を受けることなく特定ガス成分の濃度をガス濃度検知セルにより検出し始める時期をもって、ガス濃度検知セルが活性状態であると判定される。従って、ガス濃度検知セルの活性判定を精度良く行うことができる。さらに、第3の発明では、この変曲点に関する情報である変曲点学習値が記憶される。変曲点学習値を利用することで、内燃機関の運転状態による活性判定バラツキを低減することができる。また、燃料カット時も学習可能であるため、学習頻度を確保することができる。
【0018】
第4の発明では、内燃機関のアイドル時、かつ、NOx濃度低減手段によりNOx濃度が低減された後に、ガス濃度検知セルの酸素濃度が減少する過程で、ガス濃度検知セルの出力の変曲点が活性点として特定される。第4の発明によれば、内燃機関のアイドル時に、残存酸素の影響を受けることなく特定ガス成分の濃度をガス濃度検知セルにより検出し始める時期をもって、ガス濃度検知セルが活性状態であると判定される。さらに、内燃機関のアイドル時のNOx濃度の変化の影響を受けることなく、精度良く変曲点を特定することができる。従って、ガス濃度検知セルの活性判定を精度良く行うことができる。さらに、第4の発明では、この変曲点に関する情報である変曲点学習値が記憶される。変曲点学習値を利用することで、内燃機関の運転状態による活性判定バラツキを低減することができる。また、アイドル時も学習可能であるため、学習頻度を確保することができる。
【0019】
第5の発明では、記憶手段により、変曲点が特定されたときのガス濃度検知セルの出力及び素子温度と相関を有する物性値と、変曲点が特定されるまでの時間とがマップとして格納される。変曲点が特定されたときは、物性値のセンサ個体差が最も小さい。よって、かかるマップを学習値として利用することで、内燃機関の運転状態による活性判定バラツキを低減することができる。
【0020】
第6の発明によれば、通常時に比して燃料カット時のヒータへの通電量を低下させることで、ガス濃度検知セルの酸素濃度を増加させることができる。これにより、燃料カット時も変曲点を特定することができ、学習頻度を確保することができる。
【0021】
第7の発明によれば、通常時に比して燃料カット時の酸素ポンプセルへの通電量を低下させることで、ガス濃度検知セルの酸素濃度を増加させることができる。これにより、燃料カット時も変曲点を特定することができ、学習頻度を確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。尚、各図において共通する要素には、同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0023】
実施の形態1.
[システム構成の説明]
図1は、本発明の実施の形態1によるシステムの構成の一例を示す図である。図2は、図1に示すシステムに搭載されるガス濃度検出装置の構成を示す図である。
【0024】
図1に示すシステムは、エンジン1として、4サイクルのディーゼルエンジン(圧縮着火内燃機関)を備えている。なお、エンジン1は、ガソリンエンジン(火花点火内燃機関)であってもよい。エンジン1の各気筒2のピストンは、クランク機構を介してクランク軸3に連結されている。クランク軸3の近傍には、クランク角度CAを検出するクランク角センサ4が設けられている。
【0025】
エンジン1の各気筒2には、燃料を筒内に直接噴射するインジェクタ5が設置されている。各インジェクタ5は、共通のコモンレール6に接続されている。このコモンレール6には、サプライポンプ7によって加圧された燃料が蓄えられる。インジェクタ5は、1サイクル中に複数回、任意のタイミングで燃料を筒内に噴射することができる。
【0026】
エンジン1の吸気ポート8には、吸気バルブ9が設けられている。この吸気バルブ9の開弁特性(開弁時期、リフト量、作用角)は、公知の油圧式もしくは機械式の可変動弁機構(図示せず)により変更可能である。吸気ポート8は、吸気マニホールド10を介して吸気通路11に接続されている。吸気通路11の途中には、スロットル弁12が設けられている。スロットル弁12は、スロットルモータ13により駆動される電子制御式のバルブである。スロットル弁12は、アクセル開度センサ15により検出されるアクセル開度AA等に基づいて駆動されるものである。スロットル弁12の近傍には、スロットル開度TAを検出するスロットル開度センサ13が設けられている。スロットル弁12の上流には、吸入空気量Gaを検出するエアフロメータ16が設けられている。エアフロメータ16の上流にはエアクリーナ17が設けられている。
【0027】
また、エンジン1の排気ポート18には、排気バルブ19が設けられている。この排気バルブ19の開弁特性(開弁時期、リフト量、作用角)は、公知の油圧式もしくは機械式の可変動弁機構(図示せず)により変更可能である。排気ポート18は、排気マニホールド20を介して排気通路21に接続されている。排気通路21には、選択還元触媒(以下「SCR(Selective Catalytic Reduction)触媒」という。)22が設けられている。この選択還元触媒22の上流には、尿素水タンク24に蓄えられた尿素水((NH2)2CO+H2O)を添加する尿素水添加弁23が設けられている。尿素水添加弁23から添加された尿素水から生成されたアンモニアによって、NOxが窒素に還元される。選択還元触媒22の下流には、NOx濃度を検出するNOxセンサ25が設けられている。NOxセンサ25の下流には、アンモニアを酸化するための酸化触媒26が設けられている。
【0028】
上記NOxセンサ25は、図2に示すガス濃度検出装置の一部を構成する。NOxセンサ25は、図2に示すように、酸素ポンプセル40の下方に、スペーサ50、NOxセンサセル60、スペーサ65、ヒータ80を順次積層することにより形成されている。
【0029】
酸素ポンプセル40は、被測定ガス中の余剰酸素を除去する機能のみを有し、固体電解質体41と一対のポンプ電極42,43とを有している。素子である固体電解質体41は、酸素イオン導電性を有しており、例えば、シート状に成形されたZrO2,HfO2,ThO2,BiO3等である。この固体電解質体41を上下から挟むポンプ電極42,43は、例えば、スクリーン印刷等の方法により形成することができる。
【0030】
固体電解質体41表面に形成された第1ポンプ電極42は、被測定ガスである排ガスが存在する空間、すなわち、エンジン1の排気通路21内に露出している。該第1ポンプ電極42として、例えば、Pt等の貴金属を含む多孔質サーメット電極を用いることができる。
【0031】
一方、第1ポンプ電極42と対向するように固体電解質体41裏面に形成された第2ポンプ電極43は、後述する第1内部空間51に露出している。該第2ポンプ電極43として、NOxガスに対して不活性な電極、例えば、Pt−Au合金とジルコニアやアルミナ等のセラミックスとを含む多孔質サーメット電極を用いることができる。
【0032】
酸素ポンプセル40には、固体電解質体41とポンプ電極42,43を貫通する導入孔としてのピンホール44が形成されている。ピンホール44の孔径は、ピンホール44を介して第1内部空間51(後述)に導入される排ガスの拡散速度が所定速度となるように設計されている。第1内部空間51は、ピンホール44と保護層70とを介して、被測定ガスが存在する空間に連通している。
【0033】
また、ピンホール44を含む第1ポンプ電極42表面とその周辺の固体電解質体41とを覆うように、多孔質保護層70が形成されている。多孔質保護層70は、例えば、多孔質アルミナ等により形成することができる。この多孔質保護層70により、第1ポンプ電極42の被毒を抑制することができると共に、排ガスに含まれるスス等によるピンホール44の目詰まりを抑制することができる。
【0034】
スペーサ50には、上述した第1内部空間51と、第2内部空間52とが形成されている。スペーサ50は、例えば、アルミナ等により形成することができる。2つの内部空間51,52は、連通孔53を介して連通している。これらの内部空間51,52及び連通孔53は、スペーサ50に抜き穴を設けることにより形成することができる。
【0035】
NOxセンサセル60は、NOxの還元分解により生じる酸素量からNOx濃度を検出するものである。NOxセンサセル60は、固体電解質体61と、該固体電解質体61を上下から挟む一対の検出電極62,63とを有している。これらの検出電極62,63は、例えば、スクリーン印刷等の方法により形成することができる。
【0036】
固体電解質体61表面に形成された第1検出電極62は、第2内部空間52に露出している。この第1検出電極62として、例えば、Pt−Rh合金とジルコニアやアルミナ等のセラミックスとを含む多孔質サーメット電極を用いることができる。
【0037】
一方、第1検出電極62と対向するように、固体電解質体61裏面に形成された第2検出電極63は、スペーサ65に形成された大気ダクト66に露出している。大気ダクト66には、大気が導入される。この第2検出電極63として、例えば、Pt等の貴金属を含む多孔質サーメット電極を用いることができる。大気ダクト66は、スペーサ65に切り欠きを設けることにより形成することができる。
【0038】
ヒータ80は、シート状の絶縁層82,83と、これらの絶縁層82,83間に埋設されたヒータ電極81とを有している。絶縁層82,83は、例えば、アルミナ等のセラミックスにより形成される。ヒータ電極81は、例えば、Ptとアルミナ等のセラミックスとのサーメットにより形成される。
【0039】
また、図1に示すように、排気マニホールド20には、外部EGR通路27の一端が接続されている。外部EGR通路27の他端は、吸気マニホールド10近傍の吸気通路11に接続されている。この外部EGR通路27を通して、排気ガス(既燃ガス)の一部を吸気通路11に還流させること、つまり外部EGR(Exhaust Gas Recirculation)を行うことができる。外部EGR通路27の途中には、外部EGRガスを冷却するためのEGRクーラ28が設けられている。外部EGR通路27におけるEGRクーラ28の下流には、EGR弁29が設けられている。このEGR弁29の開度を大きくするほど、外部EGR通路27を通る排気ガス量(すなわち、外部EGR量もしくは外部EGR率)を増大させることができる。
【0040】
また、図1に示すシステムは、制御装置としてのECU(Electronic Control Unit)30を備えている。ECU30の出力側には、インジェクタ5、サプライポンプ7、スロットルモータ13、尿素水添加弁23、EGR弁29等が接続されている。ECU30の入力側には、クランク角センサ4、スロットル開度センサ14、アクセル開度センサ15、エアフロメータ16、NOxセンサ25(後述)が接続されている。
【0041】
また、図2に示すように、ECU30は、ポンプセル制御手段31と、センサセル制御手段32と、ヒータ制御手段33とを有している。
ポンプセル制御手段31は、酸素ポンプセル40の第1及び第2ポンプ電極42,43に接続されている。ポンプセル制御手段31は、第1及び第2ポンプ電極42,43に電圧を印加すると共に、酸素ポンプセル40に流れる電流値を「酸素ポンプセル出力」として検出するものである。
センサセル制御手段32は、NOxセンサセル60の第1及び第2検出電極62,63に接続されている。センサセル制御手段32は、第1及び第2検出電極62,63に電圧を印加すると共に、NOxセンサセル60に流れる電流値を「NOxセンサセル出力」として検出するものである。また、センサセル制御手段32は、NOxセンサセル60の素子インピーダンスを検出することができる。
ヒータ制御手段33は、ヒータ電極81に接続されている。ヒータ制御手段33は、ヒータ電極81に電力を供給するものである。
【0042】
ECU30は、クランク角度CAに基づいて、機関回転数NEを算出する。ECU30は、スロットル開度TAやアクセル開度AA等に基づいて、機関負荷KLを算出する。ECU30は、機関負荷KLに基づいて、インジェクタ5からの燃料噴射量を算出する。
また、ECU30は、各センサからの信号に基づき、所定のプログラムに従って各アクチュエータを作動させることにより、エンジン1の運転状態を制御する。
【0043】
[実施の形態1の特徴]
(NOx濃度検出動作)
先ず、図2に示すガス濃度検出装置の動作、すなわち、NOxセンサ25によるNOx濃度検出動作について説明する。
NOxセンサ25の保護層70上方の排気通路21(図1参照)には、被測定ガスとしての排ガスが流れている。この排ガス中には、酸素、NOx、CO2、H2O等が含まれている。排ガスは、保護層70とピンホール44を介して、第1内部空間51に導入される。この第1内部空間51に導入される排ガス量は、保護層70とピンホール44の拡散抵抗により決まる。
【0044】
そして、ポンプセル制御手段31から第1及び第2ポンプ電極42,43にそれぞれ正電圧及び負電圧が印加されると、第1内部空間51に露出する第2ポンプ電極43上で、残存酸素と排ガス中の酸素が酸素イオンO2−に還元される。この酸素イオン2−は、ポンピング作用により固体電解質体41を透過して第1ポンプ電極42側に排出される。このとき、酸素ポンプセル40を流れる電流値が、「酸素ポンプセル出力」としてポンプセル制御手段31により検出される。酸素ポンプセル40により余剰酸素が排出されることで、排ガス中の酸素濃度がNOxセンサセル4によるNOx濃度検出に影響しない程度にまで低くされる。
【0045】
余剰酸素が除去され低酸素濃度にされた排ガスは、連通孔53を介して第2内部空間52に導入される。そして、センサセル制御手段32から第1検出電極62と第2検出電極63の間に所定電圧が印加されると、残存酸素と排ガス中の特定成分であるNOxが第1検出電極62上で分解され酸素イオンO2−が発生する。NOxは一旦NOに分解(単ガス化)された後、さらに酸素イオンO2−に分解される。発生した酸素イオンO2−は、固体電解質体61を透過して、第2検出電極63から大気ダクト66に排出される。このとき、NOxセンサセル60を流れる電流値が、「NOxセンサセル出力」としてセンサセル制御手段32により検出され、NOxセンサ25により検出されたNOx濃度とされる。
また、固体電解質体41,61を目標温度に加熱するために、ヒータ制御手段33からヒータ電極81に電力が断続的に供給されている。
【0046】
(センサ活性判定)
ところで、エミッションを低減するため、NOxセンサ25を早期に活性化させる要求がある。すなわち、早期にNOxセンサ25のNOxセンサセル60を活性判定し、NOxセンサセル出力を各種制御に用いるという要求がある。NOxセンサ25の早期活性化を実現するためには、NOxセンサ25の状態を迅速かつ高精度に把握することが重要である。
ここで、固体電解質体からなる素子を用いたNOxセンサでは、正常な特性を得るために、ヒータ電極へ通電することにより素子温度を所定の活性温度に加熱する必要がある。
既述した特許文献3の装置によれば、素子インピーダンスに基づいて活性判定が行われる。その他に、ヒータへの供給電力やヒータ抵抗等に基づき、ガス濃度センサの活性判定を行う装置が知られている。
【0047】
しかしながら、素子インピーダンスやヒータ供給電力やヒータ抵抗等は、センサ個体間でのバラツキ(すなわち、センサ個体差)がある。このため、素子インピーダンス等に基づき、センサの状態を迅速かつ高精度に把握することは難しい。素子インピーダンス等に基づきセンサの活性判定を早期に行うと、活性判定後にNOxセンサセルが残存酸素の影響を受けながらNOx濃度を検知する事態が生じ得る。すなわち、活性判定後にも関わらず、NOxセンサセル出力の精度が低いという事態が生じ得る。そうすると、エミッション低減効果が不十分となってしまう可能性がある。さらに、素子インピーダンス等に基づきガス濃度センサの活性判定を行う手法では、センサ個体差の影響を受けるため、各センサで早期活性化を最大限に実現することは困難である。
【0048】
そこで、本実施の形態1では、以下に説明するように、NOxセンサ25の状態を精度良く把握し、NOxセンサ25の活性判定を早期かつ高精度に行うようにする。
図3は、エンジン始動時の酸素ポンプセル出力の変化とNOxセンサセル出力の変化を示す図である。図3における破線Lpは酸素ポンプセル出力の変化を、実線LsはNOxセンサセル出力の変化を、それぞれ示している。
【0049】
図3における時刻t0において、イグニッションがONにされ、NOxセンサ25の暖機が開始される。すなわち、ヒータ制御手段33からヒータ電極81への通電が開始される。かかる通電により、酸素ポンプセル40及びNOxセンサセル60の温度、すなわち、固体電解質体41,61の温度が徐々に上昇する。この時刻t0において、酸素ポンプセル40近傍の第1内部空間51と、NOxセンサセル60近傍の第2内部空間52には、大気中の酸素が残存している。
【0050】
その後、時刻t1において、NOxセンサセル60の固体電解質体61の温度が所定温度に達すると、NOxセンサセル出力が得られる。この時刻t1以降、NOxセンサセル60(固体電解質体61)の活性度が上がるに連れ、NOxセンサセル出力は上昇する。これは、NOxセンサセル60近傍の第2内部空間52に導入されたNOxが第1検出電極62上で分解されるのではなく、第2内部空間52に残存する酸素が第1検出電極62上で分解されるためである。その後、時刻t3において、NOxセンサセル出力が上限値に達する。すなわち、NOxセンサセル60により検出可能な酸素イオン濃度の上限値に達する。
【0051】
また、時刻t1より後の時刻t2において、酸素ポンプセル40の固体電解質体41の温度が所定温度に達すると、酸素ポンプセル出力が得られる。この時刻t2以降、酸素ポンプセル40(固体電解質体41)の活性度が上がるに連れて、酸素ポンプセル40近傍の第1内部空間51に残存する酸素が排出される量が増加する。このため、酸素ポンプセル出力は上昇する。
【0052】
酸素ポンプセル40の活性度が上がるに連れ、第1内部空間51からの酸素の排出量が多くなる。さらに、排気通路21から第1内部空間51に導入される排ガス量が多くなる。そうすると、第1内部空間51における残存酸素濃度が低くなり、第1内部空間51から第2内部空間52に供給される酸素量も少なくなる。よって、酸素ポンプセル40の活性度が上がるに連れ、第2内部空間52における残存酸素濃度が徐々に低くなる。その結果、時刻t4以降、NOxセンサセル出力が低下する。
【0053】
その後、第2内部空間52における残存酸素が除去される時刻t5において、NOxセンサ出力に変曲点が現れる。すなわち、時刻t5の前後において、NOxセンサセル出力のカーブが大きく変わる。この変曲点が現れる前のNOxセンサ出力は、第2内部空間52に残存する酸素濃度の影響、すなわち、酸素ポンプセル40の活性度の影響が支配的である。一方、変曲点が現れた後のNOxセンサ出力は、第2内部空間52のNOx濃度及びNOxセンサセル60の第1検出電極62に吸着された酸素濃度、すなわち、NOxセンサセル60の活性度の影響を受ける。よって、この変曲点が現れる時刻t5において、NOxセンサ25の暖機前に第1及び第2内部空間51,52に残存していた酸素が除去されたと把握することができる。従って、変曲点が現れた時刻t5以降は、残存酸素の影響を受けることなく、NOxセンサセル60によりNOx濃度を精度良く検出することができる。
【0054】
そこで、本実施の形態1では、NOxセンサセル出力に変曲点が現れる時刻t5において、NOxセンサ25の活性判定を行う。ここで、本発明におけるNOxセンサ25の活性判定は、一般的なセンサ活性(本活性)とは異なるものである。本発明では、残存酸素の影響がないNOxセンサ出力を検出し始めた時点、すなわち、残存酸素の影響を受けることなくNOxセンサセル出力を各種制御に用いることができるようになった時点をもって「活性状態」とする(以下同様)。このように、NOxセンサセル60が残存酸素の影響を受けることなくNOx濃度を検出し始める時刻t5に、NOxセンサ25の活性判定を行うことで、NOxセンサ25の早期活性化の要求を最大限満たすことができる。
【0055】
(変曲点特定方法)
次に、図4を参照して、上記変曲点を特定する方法について説明する。
図4は、NOxセンサセル出力の変曲点を特定する方法を説明するための図である。先ず、所定間隔毎にNOxセンサセル出力Nを取得すると共に、各時刻においてNOxセンサセル出力の変化量ΔNを算出する。ここで、時刻tにおける変化量ΔN(t)は、次式(1)に従って算出される。この算出された変化量ΔN(t)が所定の基準値ΔNthよりも小さくなったとき、その時刻tでのNOxセンサセル出力N(t)が変曲点と特定される。
ΔN(t)=N(t-1)-N(t)・・・(1)
図4に示す例では、時刻t10から時刻t14までの間、NOxセンサセル出力Nは減少している。このため、各時刻t11〜時刻t14において上式(1)により算出された変化量ΔN(t11)〜ΔN(t14)は、全て正の値をとる。変化量ΔN(t11)〜ΔN(t13)は予め定められた基準値ΔNth以上であるが、変化量ΔN(t14)は基準値ΔNthよりも小さくなっている。このため、時刻t14でのNOxセンサセル出力N(t14)が、変曲点と特定される。NOxセンサセル出力に変曲点が現れた時刻t14に、NOxセンサ25の活性判定が行われる。
【0056】
また、上記特許文献3のように素子インピーダンスに基づいて活性判定を行うと、エンジンの運転状態によって活性判定時期が異なってしまう可能性がある。
【0057】
そこで、本実施の形態1では、変曲点の特定時に、変曲点に関する情報を学習するようにする。かかる学習は、例えば、変曲点が特定されるまでの時間、変曲点が特定されたときのNOxセンサセル出力、及び変曲点が特定されたときの素子温度と相関を有する物性値をマップに取り込む(格納する)ことにより行う。この素子温度と相関を有する物性値は、例えば、インピーダンス、ヒータ抵抗及びヒータ電力のうち少なくとも1つである。
【0058】
このような変曲点に関する情報を学習するためには、NOxセンサセル出力に変曲点を発生させる必要がある。そのためには、NOxセンサ25内の酸素濃度を所定値以上に高くする必要がある。つまり、第1及び第2内部空間51,52に残存する酸素濃度を高くし、NOxセンサセル60の第1検出電極62に吸着される酸素濃度を高くする必要がある。
【0059】
エンジン始動時においては、前回通電OFFからイグニッションONまでの経過時間(以下「経過時間」と略する。)がある程度必要である。
図5は、エンジン始動時において、経過時間に応じたNOxセンサセル出力の変化を説明するための図である。図5において、実線Ls1は、経過時間が十分に長い(例えば、数時間以上)場合のNOxセンサ出力変化を示している。経過時間が短くなると、一点鎖線Ls2で示すように、NOxセンサセル出力が上限値に維持される時間が短くなる。さらに経過時間が短い場合には、二点鎖線Ls3で示すように、NOxセンサセル出力が上限値まで上昇せずに下降し始める。これらの場合、何れもNOxセンサセル出力が基準値N1よりも上昇するため、変曲点を特定することができ、変曲点に関する情報の学習をすることが可能である。
一方、経過時間が非常に短い場合(例えば、1時間以内の場合)には、破線Ls4で示すように、イグニッションONから所定時間αが経過してもNOxセンサセル出力が基準値N1に達しない。この場合、変曲点を特定することができないため、変曲点に関する情報を学習することができない。
従って、変曲点に関する情報を学習するためには、NOxセンサセル出力が基準値N1よりも上昇する程度の経過時間が必要である。すなわち、NOxセンサセル出力が基準値N1よりも上昇する程度に、NOxセンサ25内の酸素濃度を増加させる必要がある。
【0060】
[実施の形態1における具体的処理]
図6は、本実施の形態1において、ECU30が実行するルーチンを示すフローチャートである。図7は、図6のステップ108で実行される変曲点特定ルーチンを示すフローチャートである。図6に示すルーチンは、所定間隔毎に起動するものである。
【0061】
図6に示すルーチンによれば、先ず、イグニッションONであるか否かを判別する(ステップ100)。このステップ100でイグニッションONではないと判別された場合には、本ルーチンを一端終了する。一方、ステップ100でイグニッションONであると判別された場合には、前回通電OFFからイグニッションONまでの経過時間を取得する(ステップ102)。このステップ102では、例えば、本ルーチンとは別ルーチンにより算出されている経過時間が読み込まれる。
【0062】
次に、上記ステップ102で取得された経過時間が基準値よりも長いか否かを判別する(ステップ104)。この基準値は、前回通電OFFされてから、十分に酸素濃度が増加しているか否かを判別するための閾値である。このステップ104で経過時間が基準値よりも長いと判別された場合には、NOxセンサ25への通電をONにする(ステップ106)。このステップ106では、ECU30のポンプセル制御手段31から酸素ポンプセル40への通電がONにされ、センサセル制御手段32からNOxセンサセル60への通電がONにされ、ヒータ制御手段33からヒータ電極81への通電がONにされる。
【0063】
その後、ステップ108に移行し、NOxセンサセル出力の変曲点が特定される。このステップ108では、図7に示すルーチンが起動される。
図7に示すルーチンによれば、先ず、NOxセンサセル出力N(t)を取得する(ステップ120)。そして、上記ステップ120で取得されたNOxセンサセル出力N(t)を用いて、上式(1)に従って変化量ΔN(t)を算出する(ステップ122)。その後、上記ステップ122で算出された変化量ΔN(t)がゼロよりも大きいか(すなわち、変化量ΔN(t)が正の値であるか)否かを判別する(ステップ124)。このステップ124では、今回のNOxセンサセル出力N(t)が、前回のNOxセンサセル出力N(t−1)よりも小さいか否か、すなわち、NOxセンサセル出力が減少しているか否かが判別される。
【0064】
上記ステップ124で変化量ΔN(t)がゼロよりも大きいと判別された場合には、今回のNOxセンサセル出力N(t)が前回のNOxセンサセル出力N(t−1)よりも小さく、NOxセンサ出力が減少していると判断される。この場合、続いて、変化量ΔN(t)が基準値ΔNthよりも小さいか否かを判別する(ステップ126)。このステップ126で変化量ΔN(t)が基準値ΔNthよりも小さいと判別された場合には、NOxセンサセル出力N(t)を変曲点と特定する(ステップ128)。このステップ128では、NOxセンサ25の活性判定が行われる。図4に示す例では、変化量ΔN(t14)が基準値ΔNthよりも小さいため、時刻t14でのNOxセンサセル出力N(t14)が変曲点と特定される。その後、図7に示すルーチンを終了し、図6に示すルーチンのステップ110に移行する。
【0065】
図6に示すルーチンのステップ110では、変曲点に関する情報が学習値として取り込まれる。このステップ110では、変曲点特定時のNOxセンサ出力N(t)と、センサ通電ONから変曲点特定時までの時間と、変曲点特定時の素子温度と相関を有する物性値とが、三次元マップとして格納される。その後、図6に示すルーチンを終了する。
【0066】
一方、上記ステップ104で経過時間が基準値未満であると判別された場合には、上記ステップ106と同様に、NOxセンサ25への通電をONにする(ステップ112)。その後、上記ステップ112で通電ONされてから所定時間αが経過したか否かを判別する(ステップ114)。この所定時間αは、NOxセンサ25内に十分な酸素が存在していれば、NOxセンサセル出力が下記基準値N1(図5参照)を超える時間である。このステップ114で所定時間αが経過していないと判別された場合には、上記ステップ112に戻る。一方、上記ステップ114で所定時間αが経過したと判別された場合には、NOxセンサセル出力N(α)を取得する(ステップ116)。そして、上記ステップ116で取得されたNOxセンサセル出力N(α)が基準値N1以上であるか否かを判別する(ステップ118)。この基準値N1は、NOxセンサセル出力の変曲点を特定可能であるか否かを判別するための閾値である。
【0067】
上記ステップ118において、図5において破線Ls4で示すように、NOxセンサセル出力N(α)が基準値N1に達していないと判別された場合には、変曲点の特定が不可能であり、変曲点に関する情報の学習も不可能であると判断される。この場合、変曲点を特定することなく、図6に示すルーチンを終了する。一方、上記ステップ118において、図5において二点鎖線Ls3で示すように、NOxセンサ出力N(α)が基準値N1以上であると判別された場合には、変曲点の特定が可能であると判断される。この場合、上記ステップ108に移行する。
【0068】
以上説明したように、本実施の形態1では、酸素ポンプセル40により残存酸素を排出した後にNOxセンサセル60によりNOx濃度が検出される。このため、エンジン始動時のように、NOxセンサ25内の酸素濃度が高い場合には、図3に示すようなNOxセンサセル出力の変化が得られる。このNOxセンサセル出力に現れる変曲点は、NOxセンサセル60が残存酸素の影響を受けることなくNOx濃度を検出可能となったことを示している。本実施の形態1では、一般的なセンサ活性(本活性)判定とは異なり、この変曲点が現れる時期に、NOxセンサ25が活性状態であると判定される。すなわち、センサ個体差を有する素子インピーダンス等ではなく、センサ個体差とは無関係にNOxセンサセル出力に現れる変曲点に基づいてNOxセンサ25の活性判定が精度良く行われる。このため、NOxセンサ25の早期活性を最大限に実現することができると共に、高精度のNOxセンサセル出力を各種制御に用いることでエミッション低減の要求を十分に満たすことができる。
【0069】
また、本実施の形態1では、NOxセンサセル出力の変曲点を特定した後、この変曲点に関する情報を学習値として記憶する。例えば、変曲点特定時のNOxセンサ出力と、センサ通電ONから変曲点特定時までの時間と、変曲点特定時の素子温度と相関を有する物性値とが三次元マップとして格納される。よって、かかる学習値を利用することで、エンジン運転状態による活性判定バラツキを低減することができる。特に、エンジン始動条件(前回通電OFFからの経過時間)による活性判定バラツキを低減することができる。また、エンジン始動時に学習が行われるため、学習頻度を確保することができる。
【0070】
ところで、上記実施の形態1では、図7に示すルーチンのように、NOxセンサセル出力の変化量ΔN(t)と基準値ΔNthとの比較結果等に基づいて変曲点を特定しているが、以下の変形例の方法によって変曲点を特定してもよい。
【0071】
(第1変形例)
酸素ポンプセル40とNOxセンサセル60は同様の構成を有しており、共にセル内を酸素イオンO2−が流れるときの電流値を出力している。よって、酸素ポンプセル出力とNOxセンサセル出力との間には、相関関係がある。そこで、第1変形例では、NOxセンサセル出力の変曲点を特定するために、かかる相関関係を利用する。図8は、酸素ポンプセル出力とNOxセンサセル出力との相関関係を示す図である。図8における破線Lpは酸素ポンプセル出力の変化を示し、実線LsはNOxセンサセル出力の変化を示している。NOxセンサ25への通電をONにすると、図8に示すように、NOxセンサセル出力の変曲点だけでなく、酸素ポンプセル出力にも変曲点が現れる。この酸素ポンプセル出力の変曲点は、第1内部空間51に残存する酸素が排出されたときに現れる。本発明者は、酸素ポンプセル出力の変曲点が現れる時刻21と、NOxセンサセル出力の変曲点が現れる時刻t22との間には、相関関係があることを見いだした。
ここで、両時刻t21,t22の差Δtnは、実験等により予め求めておき、ECU30内に記憶させておくことができる。よって、後述する方法により酸素ポンプセル出力に変曲点が現れる時期を特定することができれば、その特定された変曲点の時期に予め求めた差Δtnを加算することで、NOxセンサセル出力に変曲点が現れる時期を推定することができる。
【0072】
図9を参照して、酸素ポンプセル出力の変曲点を特定する方法について説明する。図9は、本実施の形態1の第1変形例において、酸素ポンプセル出力の変曲点を特定する方法を説明するための図である。酸素ポンプセル出力の変曲点の特定方法は、上記実施の形態1で説明したNOxセンサセル出力の変曲点の特定方法の一部を適用することができる。
【0073】
先ず、所定間隔毎に、酸素ポンプセル出力Pを取得すると共に、各時刻において酸素ポンプセル出力の変化量ΔPを算出する。ここで、時刻tにおける変化量ΔP(t)は、次式(2)に従って算出される。そして、この算出された変化量ΔP(t)が所定の基準値ΔPthよりも小さくなったとき、その時刻tでの酸素ポンプセル出力P(t)を変曲点と特定する。なお、変化量ΔP(t)が正の値をとるように、次式(2)では、時刻tの出力P(t)から時刻(t−1)の出力P(t−1)を減算している。
ΔP(t)=P(t)-P(t-1)・・・(2)
【0074】
図9に示す例では、時刻t30から時刻t34までの間、酸素ポンプセル出力Pは増加している。このため、各時刻t31〜時刻t34において上式(2)により算出された変化量ΔP(t31)〜ΔP(t34)は、全て正の値をとる。変化量ΔP(t31)〜ΔP(t33)は予め定められた基準値ΔPth以上であるが、ΔP(t34)は基準値ΔPthよりも小さい。このため、時刻t34での酸素ポンプセル出力P(t34)が変曲点と特定される。従って、この時刻t34に上記のΔtnを加えた時刻(t34+Δtn)において、NOxセンサセル出力Nに変曲点が現れると推定することができる。
【0075】
図10は、本実施の形態1の第1変形例による変曲点特定ルーチンを示すフローチャートである。図10に示すルーチンは、図6のステップ108において起動される。図10に示すルーチンによれば、先ず、酸素ポンプセル出力P(t)を取得する(ステップ130)。そして、上記ステップ130で取得された酸素ポンプセル出力P(t)を用いて、上式(2)に従って変化量ΔP(t)を算出する(ステップ132)。
【0076】
その後、上記ステップ132で算出された変化量ΔP(t)が基準値ΔPthよりも小さいか否かを判別する(ステップ134)。このステップ134で変化量ΔP(t)が基準値ΔPth以上であると判別された場合には、酸素ポンプセル出力Pに未だ変曲点が現れていないと判断して、図10に示す本ルーチンを終了する。
一方、上記ステップ134で変化量ΔP(t)が基準値ΔPthよりも小さいと判別された場合には、時刻tでの酸素ポンプセル出力P(t)を変曲点と特定する(ステップ136)。そして、上記ステップ136で特定された変曲点を用い、酸素ポンプセル出力PとNOxセンサセル出力Nとの相関関係を考慮して、NOxセンサセル出力の変曲点を推定する(ステップ138)。
ここで、図8に示すように、酸素ポンプセル出力に変曲点が現れる時期t21と、NOxセンサセル出力に変曲点が現れる時期t22との時間差Δtnが予め求められ、ECU30内に記憶されている。上記ステップ138では、酸素ポンプセル出力に変曲点が現れる時期tに時間差Δtnを加えた時刻(t+Δtn)に、NOxセンサセル出力に変曲点が現れると推定される。この時刻(t+Δtn)において、NOxセンサ25の活性判定が行われる。その後、本ルーチンを終了する。
【0077】
第1変形例では、酸素ポンプセル出力Pに変曲点が現れる時期が特定され、酸素ポンプセル出力PとNOxセンサセル出力Nとの相関関係を考慮して、NOxセンサセル出力Nに変曲点が現れる時期が推定される。よって、NOxセンサセル60がNOx濃度を精度良く検知し始める時期を的確に推定することができる。
【0078】
(第2変形例)
上記第1変形例では、酸素ポンプセル出力PとNOxセンサセル出力Nとの相関関係を考慮して、NOxセンサセル出力Pに変曲点が現れる時期を推定した。
図11は、本発明の実施の形態1の第2変形例によるガス濃度検出装置の要部を説明するためのブロック図である。図11に示すガス濃度検出装置は、NOxセンサ25Aを有している。このNOxセンサ25Aは、図2に示すNOxセンサ25内に、空燃比センサセル90を更に備えたものである。この空燃比センサセル90は、図示しない固体電解質体を有し、所定電圧が印加され、セル内を酸素イオンO2−が流れるときに電流値を出力している。空燃比センサセル90の出力は、ECU30Aの空燃比センサセル制御手段34により検出される。その他のガス濃度検出装置の構成は、図2に示すガス濃度検出装置10の構成と同様であるため、図示並びに説明を省略する。
【0079】
空燃比センサセル90とNOxセンサセル60とは、共にセル内を酸素イオンO2−が流れるときの電流値を出力している。よって、空燃比センサセル出力とNOxセンサセル出力との間には、相関関係がある。本第2変形例では、NOxセンサセル出力の変曲点を特定するために、かかる相関関係を利用する。
【0080】
図12は、空燃比センサセル出力とNOxセンサセル出力との相関関係を示す図である。図12における一点鎖線Laは空燃比センサセル出力の変化を示し、実線LsはNOxセンサセル出力の変化を示している。また、破線Lpは参考用としての酸素ポンプセル出力の変化を示している。
【0081】
図12に示すように、上記NOxセンサセル出力の変曲点だけでなく、空燃比センサセル出力にも変曲点が現れる。変曲点は、例えば、空燃比センサセル出力の変化量が正から負に変わるときの空燃比センサセル出力とすることができる。この空燃比センサセル出力に変曲点が現れる時期t20と、NOxセンサセル出力に変曲点が現れる時刻t22との間には、相関関係がある。両時刻t20,22の差Δtaは、実験等により予め求めておき、ECU30A内に記憶させておくことができる。よって、空燃比センサセル出力の変曲点を特定することができれば、NOxセンサセル出力の変曲点の時期を推定することができる。従って、本第2変形例によれば、上記第1変形例と同様に、NOxセンサセル60が実際のNOx濃度を精度良く検出し始める時期を的確に推定することができる。
【0082】
また、上記実施の形態1では、NOxセンサ25の制御をエンジン制御用のECU30により行っているが、NOxセンサ25制御用のECUをエンジン制御用のECU30と別個に構成してもよい。
【0083】
尚、本実施の形態1及びその変形例においては、NOxセンサセル60が第1〜5の発明における「ガス濃度検知セル」に、ヒータ電極81が第6の発明における「ヒータ」に、ヒータ制御手段33が第6の発明における「ヒータ制御手段」に、酸素ポンプセル40が第7の発明における「酸素ポンプセル」に、ポンプセル制御手段31が第7の発明における「酸素ポンプセル制御手段」に、それぞれ相当する。
また、本実施の形態1及びその変形例においては、ECU30が、ステップ102,104の処理を実行することにより第1の発明における「酸素濃度制御手段」が、ステップ108,128又は138の処理を実行することにより第1の発明における「変曲点特定手段」が、ステップ110の処理を実行することにより第1の発明における「記憶手段」が、それぞれ実現されている。
【0084】
実施の形態2.
次に、図13及び図14を参照して、本発明の実施の形態2について説明する。
本実施の形態2のシステムは、図1及び図2に示すハードウェア構成を用いて、ECU30に、図6及び図14に示すルーチンを実行させることにより実現することができる。
【0085】
[実施の形態2の特徴]
上記実施の形態1では、エンジン始動時に変曲点に関する情報を学習する。
ところで、エンジン始動時は、SCR触媒22の活性が低いため、SCR触媒22下流にNOxが存在することとなる。図13は、エンジン始動時のSCR触媒22下流のNOx濃度の変化と、NOxセンサセル出力の変化を示す図である。図13において、太い実線LsはNOxセンサセル出力の変化を、細い実線LはSCR触媒22下流のNOx濃度の測定値である。この測定値は、公知の分析計によるものである。
図13に示すように、SCR触媒22下流のNOx濃度が変化すると、NOxセンサセル出力が変化してしまう。図13に示す範囲Rにおいて、本来はNOxセンサセル出力に変曲点が現れる。しかし、NOx濃度変化に伴うNOxセンサセル出力の変化により、NOxセンサセル出力の変曲点を精度良く特定することができない可能性がある。
【0086】
そこで、本実施の形態2では、公知の手法によりNOx濃度を推定し、NOx濃度の推定値を用いてNOxセンサセル出力を補正する。具体的には、EGR量や燃料噴射量等からNOx濃度の推定値を求め、実際のNOxセンサセル出力から推定値を減じることによち、NOxセンサセル出力を補正する。そして、補正後のNOxセンサセル出力の変曲点を特定する。
【0087】
[実施の形態2における具体的処理]
本実施の形態2においても、先ず、図6に示すルーチンが起動される。図6に示すルーチンのステップ108において、図7に示すルーチンに代えて、図14に示すルーチンが起動される。図14は、本実施の形態2において、図6のステップ108で実行される変曲点特定ルーチンを示すフローチャートである。
【0088】
図14に示すルーチンによれば、先ず、図7に示すルーチンと同様に、NOxセンサセル出力N(t)を取得する(ステップ120)。次に、公知の手法を用いて、SCR触媒22下流のNOx濃度を推定する(ステップ140)。このステップ140では、例えば、EGR量や燃料噴射量等に基づいて、NOx濃度の推定値が求められる。
【0089】
その後、上記ステップ140で求められたNOx濃度推定値を用いて、上記ステップ120で取得されたNOxセンサセル出力N(t)をNa(t)に補正する(ステップ142)。このステップ142では、例えば、NOxセンサセル出力N(t)からNOx濃度推定値を減じることで、NOxセンサセル出力Na(t)に補正される。そして、上記ステップ142で補正されたNOxセンサセル出力Na(t)を用いて、次式(3)に従って、変化量ΔNa(t)を算出する(ステップ144)。
ΔNa(t)=Na(t-1)-Na(t)・・・(3)
【0090】
次に、上記ステップ144で算出された変化量ΔNa(t)がゼロよりも大きいか(すなわち、変化量ΔNa(t)が正の値であるか)否かを判別する(ステップ146)。このステップ146では、今回のNOxセンサセル出力Na(t)が前回のNOxセンサセル出力Na(t−1)よりも小さいか否か、すなわち、NOxセンサセル出力Na(t)が減少しているか否かが判別される。
【0091】
上記ステップ146で変化量ΔNa(t)がゼロよりも大きいと判別された場合には、今回のNOxセンサセル出力Na(t)が前回のNOxセンサセル出力Na(t−1)よりも小さく、NOxセンサ出力Na(t)が減少していると判断される。この場合、続いて、変化量ΔNa(t)が基準値ΔNthよりも小さいか否かを判別する(ステップ148)。
【0092】
上記ステップ148で変化量ΔNa(t)が基準値ΔNthよりも小さいと判別された場合には、NOxセンサセル出力Na(t)を変曲点と特定する(ステップ150)。このステップ150では、NOxセンサ25の活性判定が行われる。その後、図14に示すルーチンを終了し、図6に示すルーチンのステップ110に移行し、変曲点に関する情報が学習される。
【0093】
以上説明したように、本実施の形態2では、エンジン始動時に、NOx濃度推定値を求め、このNOx濃度推定値を用いてNOxセンサセル出力Nが補正される。そして、補正後のNOxセンサセル出力Naの変曲点が特定される。従って、エンジン始動時においても、エンジン1から排出されるNOx濃度の変化の影響を受けることなく、精度良く変曲点を特定することができ、変曲点に関する情報を精度良く学習することができる。よって、かかる学習値を利用することで、エンジン運転状態による活性判定バラツキを低減することができる。
【0094】
尚、本実施の形態2においては、ECU30が、ステップ140の処理を実行することにより第2の発明における「NOx濃度推定手段」が、ステップ142の処理を実行することにより第2の発明における「補正手段」が、ステップ150の処理を実行することにより第2の発明における「変曲点特定手段」が、それぞれ実現されている。
【0095】
実施の形態3.
次に、図15を参照して、本発明の実施の形態3について説明する。
本実施の形態3のシステムは、図1及び図2に示すハードウェア構成を用いて、ECU30に、後述する図15に示すルーチンを実行させることにより実現することができる。
【0096】
[実施の形態3の特徴]
上記実施の形態1,2では、エンジン始動時に変曲点情報を学習した。
本実施の形態3では、燃料カット(F/C)の実行時に変曲点情報を学習する場合について説明する。ここで、上述したように、NOxセンサセル出力の変曲点を特定するためには、NOxセンサ25内の酸素濃度を高める必要がある。
【0097】
そこで、燃料カット実行中にNOxセンサ25内の酸素濃度を高めるために、ヒータ制御手段33からヒータ電極81への通電がOFFにされる。そうすると、素子温度が下がり、酸素ポンプセル40の酸素ポンピング能力が低下する。これにより、NOxセンサ25内の酸素濃度、すなわち、第1内部空間51及び第2内部空間52の酸素濃度、並びにNOxセンサセル60の第1検出電極62に吸着される酸素濃度が高くなる。
【0098】
かかるNOxセンサ25内の酸素濃度は、NOxセンサ25自体の応答性のほか、エンジン1の吸入空気量Gaが支配的である。そこで、吸入空気量Gaの積算値である積算空気量Qaを基準値Qthと比較することで、NOxセンサ25内の酸素濃度が所望の濃度まで高められたか否かを判断する。すなわち、積算空気量Qaに基づいて、変曲点を特定可能であるか否かを判断する。詳細には、積算空気量Qaが基準値Qthよりも大きくなると、NOxセンサセル出力の変曲点を特定する。
変曲点の特定方法及び変曲点に関する情報の学習方法については、上記実施の形態1の方法を適用することができる。
【0099】
なお、燃料カット実行中は、筒内で爆発は起こらないため、NOxは発生しない。このため、上記実施の形態2のようなNOxセンサセル出力の補正は不要である。
【0100】
[実施の形態3における具体的処理]
図15は、本実施の形態3において、ECU30が実行するルーチンを示すフローチャートである。
図15に示すルーチンによれば、先ず、燃料カットを実行中であるか否かを判別する(ステップ160)。燃料カットは、例えば、車両走行中にアクセル開度AAが全閉にされた場合に、燃料噴射量がゼロにされることである。このステップ160で燃料カットが実行されていないと判別された場合には、本ルーチンを終了する。
【0101】
上記ステップ160で燃料カットを実行中であると判別された場合には、ヒータ電極81への通電をOFFにする(ステップ162)。このステップ162の処理により、酸素ポンプセル40の酸素ポンピング能力が低下し、NOxセンサ25内の酸素濃度が徐々に高くなる。
【0102】
次に、積算空気量Qaを算出する(ステップ164)。このステップ164では、ヒータ電極81への通電をOFFにしてからの吸入空気量Gaを積算することで、積算空気量Qaが求められる。
【0103】
その後、燃料カットを継続中であるか否かを判別する(ステップ166)。このステップ166で燃料カットを継続中ではないと判別された場合、例えば、車両運転者によるアクセル踏み込み操作があったときや、エンジン回転数Neが燃料カット復帰回転数に達したとき等には、ヒータ電極81への通電をONにする(ステップ168)。その後、本ルーチンを終了し、NOxセンサセル出力を他の制御に用いる。
【0104】
一方、上記ステップ166で燃料カットを継続中であると判別された場合には、上記ステップ164で算出された積算空気量Qaが基準値Qthよりも大きいか否かを判別する(ステップ170)。この基準値Qthは、NOxセンサ25内の酸素濃度を所望濃度にまで高められたか否かを判別するための閾値である。このステップ170で積算空気量Qaが基準値Qthに達していないと判別された場合には、NOxセンサ25内の酸素濃度が所望濃度にまで高められていないと判断される。すなわち、NOxセンサセル出力の変曲点を特定できず、変曲点に関する情報を学習できないと判断される。この場合、ステップ162に戻る。
【0105】
上記ステップ170で積算空気量Qaが基準値Qthよりも大きいと判別された場合には、NOxセンサ25内の酸素濃度が所望濃度にまで高められたと判断される。この場合、ヒータ制御手段33からヒータ電極81への通電をONにする(ステップ172)。そして、上記ステップ108に移行し、図7に示すルーチンを実行することで変曲点を特定する。その後、図6に示すルーチンと同様に、変曲点学習値を取り込む(ステップ110)。その後、本ルーチンを終了する。
【0106】
以上説明したように、本実施の形態3では、燃料カット時に、ヒータ電極81への通電をOFFにすることで、NOxセンサ25内の酸素濃度を高める。そして、積算空気量Qaが基準値Qthよりも大きい場合に、NOxセンサ25内の酸素濃度が所望濃度にまで高められたと判断し、NOxセンサセル出力の変曲点を特定する。従って、燃料カット時においても、変曲点の特定並びに変曲点に関する情報の学習を行うことができる。よって、かかる学習値を利用することにより、エンジン運転状態による活性判定バラツキを低減することができる。また、燃料カット時に学習が行われるため、学習頻度を確保することができる。
【0107】
以下、本実施の形態3の変形例について説明する。上記実施の形態3では、NOxセンサ25内の酸素濃度を高めるために、ヒータ電極81への通電をOFFにしている。以下の変形例のように、NOxセンサ25内の酸素濃度を高めるために、上記実施の形態3とは異なる方法を用いてもよい。
【0108】
(第1変形例)
上記実施の形態3のように、燃料カット実行中にヒータ電極81への通電をOFFにすると、素子温度が急激に低下する。そうすると、燃料カットを継続しない場合に通電をONにしても、しばらくの間は素子温度が上昇しないため、NOxセンサセル出力を他の制御に用いることができない。よって、素子温度が上昇するまでの間に、排気エミッション特性が悪化する可能性がある。
第1変形例では、燃料カット実行中に、NOxセンサ25内の酸素濃度を高めるために、図16に示すように、素子温度制御目標値を低下させる。図16は、本実施の形態3の第1変形例において、ECU30が実行するルーチンを示すフローチャートである。図16に示すルーチンは、図15に示すルーチンと、ステップ162A,168A,172Aが相違する。よって、この相違点について説明する。
【0109】
図16に示すルーチンによれば、ステップ160で燃料カットを実行中であると判別された場合に、素子温度の制御目標値を低下させる(ステップ162A)。すなわち、ヒータ制御手段33による制御目標値を低下させる。これにより、ヒータ電極81への通電時間が通常時に比して短くされ、素子温度が低下するため、酸素ポンプセル40の酸素排出能力が低下する。その結果、NOxセンサ25内の酸素濃度、すなわち、第1内部空間51及び第2内部空間52の酸素濃度、並びに、第1検出電極62に吸着される酸素濃度を高めることができる。
ここで、かかる制御目標値を低下させることによる素子温度の低下は、上記実施の形態3の通電OFF時に比して小さい。このため、燃料カットを継続しない場合に制御目標値を復帰させれば(ステップ168A)、上記実施の形態3に比して素子温度を早期に上昇させることができる。よって、上記実施の形態3に比して、素子温度上昇までの間の排気エミッション特性の悪化を抑制することができるという効果が得られる。
また、ステップ170で積算空気量Qaが基準値Qthよりも大きいと判別された場合には、素子温度の制御目標値を復帰させる(ステップ172B)。その後、変曲点の特定(ステップ108)と変曲点学習値の取り込み(ステップ110)が順次実行される。
【0110】
(第2変形例)
第2変形例では、燃料カット実行中に、NOxセンサ25内の酸素濃度を高めるために、図17に示すように、素子温度の制御目標値を低下させるだけでなく、NOxセンサセル60への印加電圧も低下させる。図17は、本実施の形態3の第2変形例において、ECU30が実行するルーチンを示すフローチャートである。図17に示すルーチンは、図15に示すルーチンと、ステップ162B,168B,172Bが相違する。よって、この相違点について説明する。
【0111】
図17に示すルーチンによれば、ステップ160で燃料カットを実行中であると判別された場合に、素子温度の制御目標値を低下させると共に、NOxセンサセル60への印加電圧を低下させる(ステップ162B)。NOxセンサセル60への印加電圧を低下させると、NOxセンサセル60の酸素排出能力が低下する。このため、上記第1変形例に比して、第2内部空間52の第1検出電極62周辺の酸素濃度を高めることができるため、第1検出電極62に吸着される酸素濃度を更に高めることができる。よって、上記第1変形例に比して、NOxセンサ25内の酸素濃度をより高めることができるため、変曲点の特定を精度良く行うことができる。
また、ステップ166で燃料カットを継続していないと判別された場合や、ステップ170で積算空気量Qaが基準値Qthよりも大きいと判別された場合には、素子温度の制御目標値とNOxセンサセル60への印加電圧とを復帰させる(ステップ168C,172C)。
【0112】
(第3変形例)
第3変形例では、NOxセンサ25の素子温度を低下させることなく、NOxセンサ25内の酸素濃度を高める方法について説明する。すなわち、図18に示すように、燃料カット実行中に、酸素ポンプセル40への印加電圧を通常時に比して低下させる。図18は、本実施の形態3の第3変形例において、ECU30が実行するルーチンを示すフローチャートである。図18に示すルーチンは、図15に示すルーチンと、ステップ162C,168C,172Cが相違する。よって、この相違点について説明する。
【0113】
図18に示すルーチンによれば、ステップ160で燃料カットを実行中であると判別された場合に、酸素ポンプセル40への印加電圧を、通常時に比して低下させる(ステップ162C)。これにより、酸素ポンプセル40の酸素排出能力が低下する。その結果、NOxセンサ25内の酸素濃度、すなわち、第1内部空間51及び第2内部空間52の酸素濃度並びに第1検出電極62に吸着される酸素濃度を高めることができる。第3変形例では、素子温度を低下させていないため、燃料カットを継続しない場合に酸素ポンプセル40への印加電圧を復帰させれば(ステップ168C)、早期にNOxセンサセル出力を他の制御に使用することができる。よって、第1及び第2変形例に比して、更に排気エミッション特性の悪化を抑制することができる。
また、ステップ170で積算空気量Qaが基準値Qthよりも大きいと判別された場合には、酸素ポンプセル40への印加電圧を復帰させる(ステップ172C)。その後、変曲点の特定(ステップ108)と変曲点学習値の取り込み(ステップ110)が順次実行される。
【0114】
(第4変形例)
第4変形例では、NOxセンサ25内の酸素濃度を高めるために、図19に示すように、酸素ポンプセル40への印加電圧を通常時に比して低下させるだけでなく、NOxセンサセル60への印加電圧も低下させる。図19は、本実施の形態3の第4変形例において、ECU30が実行するルーチンを示すフローチャートである。図19に示すルーチンは、図15に示すルーチンと、ステップ162D,168D,172Dが相違する。よって、この相違点について説明する。
【0115】
図19に示すルーチンによれば、ステップ160で燃料カットを実行中であると判別された場合に、酸素ポンプセル40への印加電圧を通常時に比して低下させると共に、NOxセンサセル60への印加電圧も通常時に比して低下させる(ステップ162D)。これにより、上記第3変形例に比して、第2内部空間52の第1検出電極62周辺の酸素濃度を高めることができるため、第1検出電極62に吸着される酸素濃度を更に高めることができる。よって、上記第3変形例に比して、NOxセンサ25内の酸素濃度をより高めることができるため、変曲点の特定を精度良く行うことができる。
また、ステップ166で燃料カットを継続していないと判別された場合や、ステップ170で積算空気量Qaが基準値Qthよりも大きいと判別された場合には、酸素ポンプセル40への印加電圧とNOxセンサセル60への印加電圧とを復帰させる(ステップ168D,172D)。
【0116】
尚、本実施の形態3及びその変形例においては、ECU30が、ステップ162,162A,162B,162C,162Dの処理を実行することにより第3の発明における「酸素濃度制御手段」が、ステップ162,162A,162Bの処理を実行することにより第6の発明における「ヒータ制御手段」が、ステップ162C,162Dの処理を実行することにより第7の発明における「酸素ポンプセル制御手段」が、ステップ108の処理を実行することにより第3の発明における「変曲点特定手段」が、ステップ110の処理を実行することにより第3及び第5の発明における「記憶手段」が、それぞれ実現されている。
【0117】
実施の形態4.
次に、図20及び図21を参照して、本発明の実施の形態4について説明する。
本実施の形態4のシステムは、図1及び図2に示すハードウェア構成を用いて、ECU30に、後述する図21に示すルーチンを実行させることにより実現することができる。
【0118】
[実施の形態4の特徴]
上記実施の形態1,2では、エンジン始動時に変曲点に関する情報を学習した。また、上記実施の形態3では、燃料カット時に変曲点に関する情報を学習した。
【0119】
本実施の形態4では、アイドル時に変曲点に関する情報を学習する場合について説明する。
ところで、アイドル時には、エンジン始動時に比してSCR触媒22の活性が高い。よって、アイドル時のSCR触媒22下流のNOx濃度は、エンジン始動時に比して低い。しかし、アイドル時においても、SCR触媒22下流のNOx濃度が変化すると、これに伴ってNOxセンサセル出力が変化してしまい、変曲点を精度良く特定することができない可能性がある。
【0120】
ここで、上記実施の形態2と同様に、NOx濃度の推定値を用いてNOxセンサセル出力を補正する方法が考えられる。しかし、上述したように、アイドル時のNOx排出量は少ない。このアイドル時のNOx濃度は、図20に示すように、尿素水添加弁23からの尿素水添加量を増やすことで、低下させることができる。図20は、尿素水添加量と、SCR触媒22下流のNOx濃度との関係を示す図である。
【0121】
そこで、本実施の形態4では、アイドル時に、尿素水添加量を例えば図20におけるQiのように増加させることによってNOx濃度を低下させる。その後、NOxセンサセル出力の変曲点を特定し、変曲点に関する情報を学習する。
【0122】
[実施の形態4における具体的処理]
図21は、本実施の形態4において、ECU30が実行するルーチンを示すフローチャートである。
図21に示すルーチンによれば、先ず、エンジン1がアイドル状態であるか否かを判別する(ステップ180)。このステップ180でアイドル状態ではないと判別された場合には、本ルーチンを終了する。
【0123】
上記ステップ180でアイドル状態であると判別された場合には、NOxセンサ25内の酸素濃度を増加させる(ステップ182)。このステップ182では、上記実施の形態3及び変形例で説明したように、ヒータ通電制御や、素子温度制御目標値の制御や、ポンプセル印加電圧制御等を実行することで、NOxセンサ25の第1内部空間51及び第2内部空間52の酸素濃度並びに第1検出電極62に吸着される酸素濃度を高めることができる。
【0124】
次に、NOx低減処理を実行する(ステップ184)。このステップ184では、例えば、尿素水添加量の増量のほか、EGR量の増量等がなされる。その後、ステップ108の処理に移行し、図7に示すルーチンにより、NOxセンサセル出力の変曲点が特定される。その後、図6に示すルーチンと同様に、変曲点に関する情報が学習値として取り込まれる(ステップ110)。
【0125】
以上説明したように、本実施の形態4では、アイドル時に、NOx低減処理が実行され後、NOxセンサセル出力の変曲点が特定される。従って、アイドル時においても、エンジン1から排出されるNOx濃度の変化の影響を受けることなく、精度良く変曲点を特定することができ、変曲点に関する情報を精度良く学習することができる。よって、エンジン運転状態による活性判定バラツキを低減することができる。また、アイドル時に学習が行われるため、学習頻度を確保することができる。
【0126】
尚、本実施の形態4においては、ECU30が、ステップ182の処理を実行することにより第4の発明における「酸素濃度制御手段」が、ステップ184の処理を実行することにより第4の発明における「NOx濃度低減手段」が、ステップ108の処理を実行することにより第4の発明における「変曲点特定手段」が、ステップ110の処理を実行することにより第4の発明における「記憶手段」が、それぞれ実現されている。
【図面の簡単な説明】
【0127】
【図1】本発明の実施の形態1によるシステムの構成の一例を示す図である。
【図2】図1に示すシステムに搭載されるガス濃度検出装置の構成を示す図である。
【図3】エンジン始動時の酸素ポンプセル出力の変化とNOxセンサセル出力の変化を示す図である。
【図4】NOxセンサセル出力の変曲点を特定する方法を説明するための図である。
【図5】エンジン始動時において、経過時間に応じたNOxセンサセル出力の変化を説明するための図である。
【図6】本発明の実施の形態1において、ECU30が実行するルーチンを示すフローチャートである。
【図7】図6のステップ108で実行される変曲点特定ルーチンを示すフローチャートである。
【図8】酸素ポンプセル出力とNOxセンサセル出力との相関関係を示す図である。
【図9】本発明の実施の形態1の第1変形例において、酸素ポンプセル出力の変曲点を特定する方法を説明するための図である。
【図10】本発明の実施の形態1の第1変形例による変曲点特定ルーチンを示すフローチャートである。
【図11】本発明の実施の形態1の第2変形例によるガス濃度検出装置の要部を説明するためのブロック図である。
【図12】空燃比センサセル出力とNOxセンサセル出力との相関関係を示す図である。
【図13】エンジン始動時のSCR触媒22下流のNOx濃度の変化と、NOxセンサセル出力の変化を示す図である。
【図14】本発明の実施の形態2において、図6のステップ108で実行される変曲点特定ルーチンを示すフローチャートである。
【図15】本発明の実施の形態3において、ECU30が実行するルーチンを示すフローチャートである。
【図16】本発明の実施の形態3の第1変形例において、ECU30が実行するルーチンを示すフローチャートである。
【図17】本発明の実施の形態3の第2変形例において、ECU30が実行するルーチンを示すフローチャートである。
【図18】本発明の実施の形態3の第3変形例において、ECU30が実行するルーチンを示すフローチャートである。
【図19】本発明の実施の形態3の第4変形例において、ECU30が実行するルーチンを示すフローチャートである。
【図20】尿素水添加量と、SCR触媒22下流のNOx濃度との関係を示す図である。
【図21】本発明の実施の形態4において、ECU30が実行するルーチンを示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0128】
1 エンジン
25 NOxセンサ
30 ECU
31 ポンプセル制御手段
32 センサセル制御手段
33 ヒータ制御手段
40 酸素ポンプセル
60 NOxセンサセル
81 ヒータ電極
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定ガス中の酸素濃度を変化させることが可能な酸素濃度制御手段と、該酸素濃度制御手段により酸素濃度を変化させた後のガスから特定ガス成分の濃度を検知するガス濃度検知セルとを備えたガス濃度検出装置であって、
内燃機関が所定の運転状態で、かつ、前記酸素濃度制御手段により前記ガス濃度検知セルの酸素濃度が所定値以上にされた後に、前記ガス濃度検知セルの酸素濃度が減少する過程で、前記ガス濃度検知セルの出力の変曲点を活性点として特定する変曲点特定手段と、
前記変曲点特定手段により特定された変曲点に関する情報である変曲点学習値を記憶する記憶手段とを備えたことを特徴とするガス濃度検出装置。
【請求項2】
被測定ガス中の酸素濃度を変化させることが可能な酸素濃度制御手段と、該酸素濃度制御手段により酸素濃度を変化させた後のガスから特定ガス成分の濃度を検知するガス濃度検知セルとを備えたガス濃度検出装置であって、
内燃機関の排気通路のNOx濃度を推定するNOx濃度推定手段と、
前記NOx濃度推定手段により推定されたNOx濃度を用いて前記ガス濃度検知セルの出力を補正する補正手段と、
前記内燃機関の始動時、かつ、前記酸素濃度制御手段により前記ガス濃度検知セルの酸素濃度が所定値以上にされた後に、前記ガス濃度検知セルの酸素濃度が減少する過程で、前記補正手段により補正された出力の変曲点を活性点として特定する変曲点特定手段と、
前記変曲点特定手段により特定された変曲点に関する情報である変曲点学習値を記憶する記憶手段とを備えたことを特徴とするガス濃度検出装置。
【請求項3】
被測定ガス中の酸素濃度を変化させることが可能な酸素濃度制御手段と、該酸素濃度制御手段により酸素濃度を変化させた後のガスから特定ガス成分の濃度を検知するガス濃度検知セルとを備えたガス濃度検出装置であって、
内燃機関の燃料カット時、かつ、前記酸素濃度制御手段により前記ガス濃度検知セルの酸素濃度が増加せしめられた後に、前記ガス濃度検知セルの酸素濃度が減少する過程で、前記ガス濃度検知セルの出力の変曲点を活性点として特定する変曲点特定手段と、
前記変曲点特定手段により特定された変曲点に関する学習値である変曲点学習値を記憶する記憶手段とを備えたことを特徴とするガス濃度検出装置。
【請求項4】
被測定ガス中の酸素濃度を変化させることが可能な酸素濃度制御手段と、該酸素濃度制御手段により酸素濃度を変化させた後のガスから特定ガス成分の濃度を検知するガス濃度検知セルとを備えたガス濃度検出装置であって、
内燃機関の排気通路のNOx濃度を低減するNOx濃度低減手段と、
前記内燃機関のアイドル時、かつ、前記NOx濃度低減手段によりNOx濃度が低減された後に、前記ガス濃度検知セルの酸素濃度が減少する過程で、前記ガス濃度検知セルの出力の変曲点を活性点として特定する変曲点特定手段と、
前記変曲点特定手段により特定された変曲点に関する情報である変曲点学習値を記憶する記憶手段とを備えたことを特徴とするガス濃度検出装置。
【請求項5】
請求項1から4の何れか1項に記載のガス濃度検出装置において、
前記記憶手段は、前記変曲点が特定されたときの前記ガス濃度検知セルの出力及び素子温度と相関を有する物性値と、前記変曲点が特定されるまでの時間とをマップとして格納することを特徴とするガス濃度検出装置。
【請求項6】
請求項3に記載のガス濃度検出装置において、
前記酸素濃度制御手段は、ヒータへの通電を制御するヒータ制御手段であり、
前記ヒータ制御手段は、通常時に比して燃料カット時の前記ヒータへの通電量を低下させることを特徴とするガス濃度検出装置。
【請求項7】
請求項3に記載のガス濃度検出装置において、
電圧印加に伴って被測定ガス中の余剰酸素を排出する酸素ポンプセルを更に備え、
前記酸素濃度制御手段は、前記酸素ポンプセルへの通電を制御する酸素ポンプセル制御手段であり、
前記酸素ポンプセル制御手段は、通常時に比して燃料カット時の前記酸素ポンプセルへの通電量を低下させることを特徴とするガス濃度検出装置。
【請求項1】
被測定ガス中の酸素濃度を変化させることが可能な酸素濃度制御手段と、該酸素濃度制御手段により酸素濃度を変化させた後のガスから特定ガス成分の濃度を検知するガス濃度検知セルとを備えたガス濃度検出装置であって、
内燃機関が所定の運転状態で、かつ、前記酸素濃度制御手段により前記ガス濃度検知セルの酸素濃度が所定値以上にされた後に、前記ガス濃度検知セルの酸素濃度が減少する過程で、前記ガス濃度検知セルの出力の変曲点を活性点として特定する変曲点特定手段と、
前記変曲点特定手段により特定された変曲点に関する情報である変曲点学習値を記憶する記憶手段とを備えたことを特徴とするガス濃度検出装置。
【請求項2】
被測定ガス中の酸素濃度を変化させることが可能な酸素濃度制御手段と、該酸素濃度制御手段により酸素濃度を変化させた後のガスから特定ガス成分の濃度を検知するガス濃度検知セルとを備えたガス濃度検出装置であって、
内燃機関の排気通路のNOx濃度を推定するNOx濃度推定手段と、
前記NOx濃度推定手段により推定されたNOx濃度を用いて前記ガス濃度検知セルの出力を補正する補正手段と、
前記内燃機関の始動時、かつ、前記酸素濃度制御手段により前記ガス濃度検知セルの酸素濃度が所定値以上にされた後に、前記ガス濃度検知セルの酸素濃度が減少する過程で、前記補正手段により補正された出力の変曲点を活性点として特定する変曲点特定手段と、
前記変曲点特定手段により特定された変曲点に関する情報である変曲点学習値を記憶する記憶手段とを備えたことを特徴とするガス濃度検出装置。
【請求項3】
被測定ガス中の酸素濃度を変化させることが可能な酸素濃度制御手段と、該酸素濃度制御手段により酸素濃度を変化させた後のガスから特定ガス成分の濃度を検知するガス濃度検知セルとを備えたガス濃度検出装置であって、
内燃機関の燃料カット時、かつ、前記酸素濃度制御手段により前記ガス濃度検知セルの酸素濃度が増加せしめられた後に、前記ガス濃度検知セルの酸素濃度が減少する過程で、前記ガス濃度検知セルの出力の変曲点を活性点として特定する変曲点特定手段と、
前記変曲点特定手段により特定された変曲点に関する学習値である変曲点学習値を記憶する記憶手段とを備えたことを特徴とするガス濃度検出装置。
【請求項4】
被測定ガス中の酸素濃度を変化させることが可能な酸素濃度制御手段と、該酸素濃度制御手段により酸素濃度を変化させた後のガスから特定ガス成分の濃度を検知するガス濃度検知セルとを備えたガス濃度検出装置であって、
内燃機関の排気通路のNOx濃度を低減するNOx濃度低減手段と、
前記内燃機関のアイドル時、かつ、前記NOx濃度低減手段によりNOx濃度が低減された後に、前記ガス濃度検知セルの酸素濃度が減少する過程で、前記ガス濃度検知セルの出力の変曲点を活性点として特定する変曲点特定手段と、
前記変曲点特定手段により特定された変曲点に関する情報である変曲点学習値を記憶する記憶手段とを備えたことを特徴とするガス濃度検出装置。
【請求項5】
請求項1から4の何れか1項に記載のガス濃度検出装置において、
前記記憶手段は、前記変曲点が特定されたときの前記ガス濃度検知セルの出力及び素子温度と相関を有する物性値と、前記変曲点が特定されるまでの時間とをマップとして格納することを特徴とするガス濃度検出装置。
【請求項6】
請求項3に記載のガス濃度検出装置において、
前記酸素濃度制御手段は、ヒータへの通電を制御するヒータ制御手段であり、
前記ヒータ制御手段は、通常時に比して燃料カット時の前記ヒータへの通電量を低下させることを特徴とするガス濃度検出装置。
【請求項7】
請求項3に記載のガス濃度検出装置において、
電圧印加に伴って被測定ガス中の余剰酸素を排出する酸素ポンプセルを更に備え、
前記酸素濃度制御手段は、前記酸素ポンプセルへの通電を制御する酸素ポンプセル制御手段であり、
前記酸素ポンプセル制御手段は、通常時に比して燃料カット時の前記酸素ポンプセルへの通電量を低下させることを特徴とするガス濃度検出装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【公開番号】特開2009−192375(P2009−192375A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−33351(P2008−33351)
【出願日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
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