説明

ガス燃焼器

【課題】燃焼排ガスに含まれる不完全燃焼ガスを確実に検出できる小型且つ安価なガス燃焼器を提供する。
【解決手段】本体と、本体に収容されたガスバーナと、ガスバーナによって生じた燃焼排ガスを排出する本体に設けられた排出口と、排出口に対してガスバーナを遮蔽するようにガスバーナの上方に傾斜して設置された遮蔽板50と、を有するガス燃焼器において、遮蔽板50が、中空に形成されるとともにガスバーナと向き合う側の面50cに複数の貫通孔51が設けられており、そして、遮蔽板50の複数の貫通孔51から遮蔽板50の内部に進入した燃焼排ガスに含まれる不完全燃焼ガスを検出するガス検出手段を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス給湯器等のガス燃焼器に関し、特に、屋外に設置されるガス燃焼器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、屋外に設置されるガス燃焼器としてのガス給湯器(図5に符号701で示す)は、住宅などの壁面に取り付けられる箱型の本体710と、図示しないガス管から供給されたLPガスや都市ガス等の燃料ガスを本体710前面に設けられた吸気口711から取り入れた空気と混合して燃焼させるガスバーナ720と、ガスバーナ720の上方に設けられ且つ一端に図示しない給水管、他端に図示しない出湯管が接続された吸熱管を備えた熱交換器730と、熱交換器730の上方に設けられ且つガスバーナ720による燃料ガスの燃焼によって生じた燃焼排ガスを排出するための排気室740と、ガスバーナによる燃料ガスの燃焼等の制御を行う制御部780と、を備えている。また、排気室740は、排気室740内の燃焼排ガスを本体710外部に排出する本体710前面に設けられた排気口712と、熱交換器730及びガスバーナ720が排気口712から進入した風雨等に晒されないように遮蔽する遮蔽板750と、を備えている。
【0003】
このガス給湯器701は、ガスバーナ720で燃料ガスを燃焼させ、高温の燃焼排ガスで熱交換器730を熱することにより、熱交換器730の吸熱管に供給された冷水を温水に変えて、図示しない台所や風呂などの温水需用部などに送出する。また、ガスバーナ720の燃焼によって生じた燃焼排ガスは、熱交換器730を通過して排気室740に到達し、さらに、遮蔽板750の下面を伝って排気室740の天井面740a近傍まで上昇したのち、排気口712から本体710外部に排出される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したようなガス給湯器は、故障や経年劣化などにより不完全燃焼が生じるおそれがある。そして、不完全燃焼が生じると、一酸化炭素(CO)や炭化水素(HC)などの有害な不完全燃焼ガスを含む燃焼排ガスが排出される。しかしながら、従来は、ガス燃焼器が屋外に設置されることもあって、このような不完全燃焼ガスを検出して燃焼停止や警報鳴動などの安全動作を行う安全装置が設けられることはなかったが、近年の安全意識の高まりに伴い、屋外に設置するガス燃焼器にも上述した安全装置を備えることが要請されている。
【0005】
そして、このような要請に応えるものとして、図6に示すように、上述した従来のガス給湯器701において、燃焼排ガスが通過する排気室740の天井面740aに不完全燃焼ガスを検出するガスセンサ760を設け、制御部780がこのガスセンサ760による不完全燃焼ガスの検出に応じて燃焼停止などの安全動作を行う構成が考えられる。しかしながら、ガスバーナ720の一部に不完全燃焼が生じた場合など、排気室740内の燃焼排ガスに不完全燃焼ガスの濃度の偏りが生じてしまうことがあり、ガスセンサ760の設置位置によっては、不完全燃焼ガスを含む燃焼排ガスが排出されているにもかかわらず、不完全燃焼ガスが検出できないという問題があった。
【0006】
図6に示す一例で説明すると、ガスバーナ720の正常燃焼Aによって生じる燃焼排ガスF1、F2と、不完全燃焼Bによって生じる燃焼排ガスF3と、は互いに攪拌されることなくガスバーナ720から上昇して排気室740の天井面740a近傍まで到達する。このとき、ガスセンサ760付近を燃焼排ガスF2のみが流れ、燃焼排ガスF3がその付近を流れないので、燃焼排ガスF3に含まれる不完全燃焼ガスを検出することができない。このような問題を回避するため、ガスセンサ760を複数設けたり、排気室740の容積を大きくして燃焼排ガスの攪拌を促進したり、別途燃焼排ガスを攪拌する装置を設けたりする構成が考えられるが、一般住宅などに設置されるガス給湯器などのガス燃焼器は小型で且つ低価格であることが求められるので、これら構成を実現することは困難であった。
【0007】
本発明は、上記課題に係る問題を解決することを目的としている。即ち、本発明は、燃焼排ガスに含まれる不完全燃焼ガスを確実に検出できる小型且つ安価なガス燃焼器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載された発明は、上記目的を達成するために、本体と、前記本体に収容されたガスバーナと、前記ガスバーナによって生じた燃焼排ガスを排出する前記本体に設けられた排出口と、前記排出口に対して前記ガスバーナを遮蔽するように前記ガスバーナの上方に傾斜して設置された遮蔽板と、を有するガス燃焼器において、前記遮蔽板が、中空に形成されるとともに前記ガスバーナと向き合う側の面に複数の貫通孔が設けられており、そして、前記遮蔽板の複数の貫通孔から前記遮蔽板の内部に進入した前記燃焼排ガスに含まれる不完全燃焼ガスを検出するガス検出手段を有していることを特徴とするガス燃焼器である。
【0009】
請求項2に記載された発明は、請求項1に記載された発明において、前記遮蔽板の複数の貫通孔のそれぞれの直径をd[m]、前記遮蔽板の複数の貫通孔の個数をn、前記燃焼排ガスの最小流速をU[m/s]、前記燃焼排ガスの動粘性係数をν[m2/s]、としたとき、次の式
(U×√(d2×n))/ν>2320
を満たすことを特徴とするものである。
【0010】
請求項3に記載された発明は、請求項1又は2に記載された発明において、前記ガス検出手段が収容されるガス検出室と、前記遮蔽板の内部に進入した前記燃焼排ガスを前記ガス検出室に導くように前記遮蔽板と前記ガス検出室とを連通する管路と、を有していることを特徴とするものである。
【0011】
請求項4に記載された発明は、請求項3に記載された発明において、前記ガス検出室の内部の気体を強制的に排出して、前記遮蔽板の内部に進入した前記燃焼排ガスを前記管路を通じて前記ガス検出室に引き込むガス流動手段を備えていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載された発明によれば、遮蔽板が、中空に形成されるとともにガスバーナと向き合う側の面に前記遮蔽板の内部と貫通する複数の貫通孔が設けられているので、ガスバーナから上昇してきた燃焼排ガスが遮蔽板の複数の貫通孔を通過してその内部に進入し、つまり、燃焼排ガスが狭い流路を通過して遮蔽板の内部に広がる空間に流れ込み、そのため、燃焼排ガスに乱流を発生させて均一に攪拌することができる。また、既存の遮蔽板を用いて燃焼排ガスを攪拌するので、小型且つ安価に燃焼排ガスを均一に攪拌することができる。そして、この遮蔽板の複数の貫通孔から遮蔽板の内部に進入し均一に攪拌された燃焼排ガスから不完全燃焼ガスを検出するので、燃焼排ガスに含まれる不完全燃焼ガスを確実に検出できる。
【0013】
請求項2に記載された発明によれば、遮蔽板の複数の貫通孔のそれぞれの直径をd[m]、遮蔽板の複数の貫通孔の個数をn、燃焼排ガスの最小流速をU[m/s]、燃焼排ガスの動粘性係数をν[m2/s]、としたとき、次の式
(U×√(d2×n))/ν>2320
を満たすので、つまり、この式は流体力学等で用いられるレイノルズ数を示し、一般的にこの式で示されるレイノルズ数が2320を超えると流体に乱流が発生するので、複数の貫通孔の直径及び個数、並びに、燃焼排ガスの最小流速及び動粘性係数、を上記式を満たすように定めることで、遮蔽板の複数の貫通孔からその内部に進入した燃焼排ガスに、より確実に乱流を発生させて均一に攪拌することができ、燃焼排ガスに含まれる不完全燃焼ガスをより確実に検出できる。
【0014】
請求項3に記載された発明によれば、ガス検出手段が収容されるガス検出室と、遮蔽板の内部に進入した燃焼排ガスをガス検出室に導くように遮蔽板とガス検出室とを連通する管路と、を有しているので、燃焼排ガスの流量変動が激しい遮蔽板から、管路を介してこの遮蔽板と別体に設けられたガス検出室に燃焼排ガスを導入することで、ガス検出室内に収容されたガス検出手段に安定した流速の燃焼排ガスを供給することができ、そのため、燃焼排ガスに含まれる不完全燃焼ガスをより確実に検出できる。
【0015】
また、一般的に、ガス燃焼器で用いられるガス検出手段としてのセンサは、使用温湿度が高いこと、高濃度(3000ppm以上)の不完全燃焼ガスを検出する必要があること等の理由から接触燃焼式ガスセンサが最適であるが、この接触燃焼式ガスセンサは、その特性上、被検出ガスの流速が変動することにより検出精度が悪くなるので、流量変動が激しい箇所に用いることができなかった。しかしながら、上記発明により、ガス検出手段としてガス燃焼器での使用に適した接触燃焼式ガスセンサを用いることができる。
【0016】
請求項4に記載された発明によれば、ガス検出室の内部の燃焼排ガスを強制的に排出するとともに、遮蔽板の内部に進入した燃焼排ガスを管路を通じてガス検出室に内部に引き込むので、ガス検出室に収容されたガス検出手段に、さらに安定した流速で確実に燃焼排ガスを供給でき、そのため、燃焼排ガスに含まれる不完全燃焼ガスをより確実に検出できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明に係るガス燃焼器の一実施形態であるガス給湯器を、図1〜図3を参照して説明する。このガス給湯器は、一般家庭などで用いられ、水道管などから供給される冷水を加熱して温水にしたのち台所や風呂などの温水需用部に送出するものである。なお、本実施形態では、ガス給湯器をガス燃焼器の一例として説明するが、これに限ったものではなく、他にも風呂釜など、屋外に設置されガスバーナを本体内に収容したガス燃焼器であれば本発明の適用が可能である。
【0018】
ガス燃焼器としてのガス給湯器1は、本体10と、ガスバーナ20と、熱交換器30と、排気室40と、遮蔽板50と、ガス検出室70と、制御部80と、を備えている。
【0019】
本体10は、例えば、複数の板金が組み合わされて構成されており、箱形に形成されている。本体10は、説明の便宜上、各図面においてその内部を透視した状態で記載している。本体10の前面10a下部には、ガスバーナ20に空気を供給するための吸気口11が設けられており、本体10の前面10a上部には、ガスバーナ20の燃焼によって生じた燃焼排ガスを本体10内から排出するための排気口12が設けられている。本実施形態では、本体10は箱形に形成されているが、これに限らず、例えば円筒形状など、ガス給湯器としての機能を実現できるものであればその形状は任意である。
【0020】
ガスバーナ20は、本体10に収容されており、図示しないガス管が接続されている。ガスバーナ20は、このガス管を通じて供給されるLPガスや都市ガスなどの燃料ガスを、吸気口11から供給される空気と混合して燃焼させて、高温の燃焼排ガスを発生させる装置である。
【0021】
熱交換器30は、本体10に収容されており、ガスバーナ20の上方に隣接して配設されている。熱交換器30は、例えば、吸熱フィンを外周に備えるとともにつづら折れ状に屈曲された図示しない熱交換パイプ(即ち、吸熱管)を備えており、この熱交換パイプを流れる冷水を高温の燃焼排ガスで加熱して温水として図示しない温水需用部に対して供給する。
【0022】
排気室40は、熱交換器30の上方に設けられた空間である。ガスバーナ20での燃料ガスの燃焼により発生した燃焼排ガスは、高温であるため熱交換器30を通過して上昇し、この排気室40に流れ込む。そして、該燃焼排ガスは、本体10の前面10aに設けられた排気口12から排出される。
【0023】
遮蔽板50は、板金などによって中空の長方形板状に形成されている。遮蔽板50は、排気口12に対して熱交換器30及びガスバーナ20を遮蔽するように、一方の端部50aが本体10の前面10aに接し、一方の端部50aと相対する他方の端部50bが本体10に接することなく一方の端部50aより上方に位置づけられて(即ち、傾斜して)、排気室40内に配設されている。この遮蔽板50は、排気口12から進入した風雨等が熱交換器30やガスバーナ20に当たることを防いでいる。
【0024】
遮蔽板50の下面(即ち、ガスバーナ20と向かい合う面)50cには、図2に示すように、遮蔽板50の内部と貫通する円形に形成された複数の貫通孔51が設けられている。遮蔽板50は、熱交換器30を間に挟んでガスバーナ20の上方に配設されているので、図3に示すように、遮蔽板50の下面50cにはガスバーナ20から上昇してきた燃焼排ガスFが当たる。そして、この燃焼排ガスFは、下面50cに設けられた複数の貫通孔51から遮蔽板50の内部の空間に流れ込み、このとき、燃焼排ガスFは、狭い流路である複数の貫通孔51を通過して遮蔽板50の内部の広い空間に出るので、乱流が発生して燃焼排ガスFは均一に拡散される。そして、遮蔽板50の内部に流れ込んだ燃焼排ガスFは、上方(即ち、他方の端部50b)に向かって流れる。
【0025】
また、遮蔽板50の下面50cに設けられた複数の貫通孔51は、遮蔽板50の複数の貫通孔51のそれぞれの直径をd[m]、遮蔽板50の複数の貫通孔51の個数をn、燃焼排ガスの最小流速をU[m/s]、燃焼排ガスの動粘性係数をν[m2/s]、としたとき、次の式
(U×√(d2×n))/ν>2320
を満たすように形成されている。
【0026】
これは流体力学などで一般的に用いられているレイノルズ数を示す式であり、このレイノルズ数が2320を超えると流体に乱流が発生することが知られている。そして、燃焼排ガスの最小流速U及び燃焼排ガスの動粘性係数νはガスバーナ20の能力などによって予め定まってので、本実施形態において、遮蔽板50を複数の貫通孔51の総開口面積と同等の管路と見なして算出したレイノルズ数が2320を超えるように、複数の貫通孔51の直径及び個数を定めることにより、遮蔽板50の内部に流れ込んだ燃焼排ガスFに、より確実に乱流を発生させることができる。
【0027】
ガス検出室70は、例えば、中空の箱状に形成されており、遮蔽板50との間を供給管71及び排出管72によって連通されている。供給管71は細管状に形成されており、一方の端部が遮蔽板50の側部50dの上方に接続され、他方の端部がガス検出室70の上面に接続されている。また、排出管72は細管状に形成されており、一方の端部が遮蔽板50の側部50dの下方に接続され、他方の端部がガス検出室70の側面に接続されている。このため、遮蔽板50の内部に流れ込んだ燃焼排ガスは、その動圧により供給管71を通じてガス検出室70に流れ込み、そして、排出管72を通じて遮蔽板50の内部に戻される。供給管71は、請求項中の管路に相当する。
【0028】
ガス検出室70には一酸化炭素(CO)や炭化水素(HC)などのガスバーナ20の不完全燃焼によって生じる不完全燃焼ガスに反応して、その出力を変化させる周知の接触燃焼式ガスセンサ(不図示)が収容されている。この接触燃焼式ガスセンサは、請求項中のガス検出手段に相当する。接触燃焼式ガスセンサを用いることにより、高温多湿の環境下での不完全燃焼ガスの検出が可能となる。また、3000ppmを超える高濃度の不完全燃焼ガスの検出が可能となる。
【0029】
このようにガス検出室70には細管である供給管71を通じて、動圧により燃焼排ガスが供給されるので、ガス検出室70内における燃焼排ガスの流量変動を防いで、流速を安定させることができる。そのため、接触燃焼式ガスセンサによる不完全燃焼ガスの検出精度を向上させることができる。なお、本実施形態において、ガス検出室70は箱形に形成されているが、円筒形状や球状など、本発明の目的に反しない限りその形状は任意である。
【0030】
制御部80は、ガス給湯器1の全体の制御を司るものであり、例えば、マイクロコンピュータなどで構成されている。制御部80には、それぞれ図示しない点火スイッチ、火力調整スイッチ、及び、流量調整弁などが接続されている。制御部80は、利用者によって、図示しない点火スイッチがオン操作されると、図示しない流量調整弁を弁開してガスバーナ20に燃料ガスを供給するとともに該ガスに点火して燃焼を開始し、また、点火スイッチがオフ操作されると、図示しない流量調整弁を弁閉してガスバーナ20への燃料ガスの供給を遮断して燃焼を終了する。また、図示しない火力調整スイッチの操作に応じて、図示しない流量調整弁の弁開量を制御してガスバーナ20への燃料ガスの供給量を調整する。
【0031】
また、制御部80には、上述した接触燃焼式ガスセンサが接続されており、接触燃焼式ガスセンサの出力に基づいて検出対象である不完全燃焼ガスの濃度を算出し、予め定められた基準濃度と比較して、算出した濃度が基準濃度を超えていたとき、燃焼排ガスから不完全燃焼ガスを検出したものと判断して、ガスバーナ20への燃料ガスの供給を停止して、図示しないLEDやブザーなどを動作させて、利用者に不完全燃焼ガスの発生を警報する。
【0032】
以上より、本発明によれば、遮蔽板50が、中空に形成されるとともにガスバーナ20と向き合う下面50cに遮蔽板50の内部と貫通する複数の貫通孔51が設けられているので、ガスバーナ20から上昇してきた燃焼排ガスが遮蔽板50の複数の貫通孔51を通過してその内部に進入し、つまり、燃焼排ガスが狭い流路を通過して遮蔽板の内部に広がる空間に流れ込み、そのため、燃焼排ガスに乱流を発生させて均一に攪拌することができる。また、従来備えていた遮蔽板50を用いて燃焼排ガスを攪拌するので、小型且つ安価に燃焼排ガスを均一に攪拌することができる。そして、この遮蔽板50の複数の貫通孔51から遮蔽板50の内部に進入し均一に攪拌された燃焼排ガスから不完全燃焼ガスを検出するので、燃焼排ガスに含まれる不完全燃焼ガスを確実に検出できる。
【0033】
また、遮蔽板50の複数の貫通孔51のそれぞれの直径をd[m]、遮蔽板50の複数の貫通孔51の個数をn、燃焼排ガスの最小流速をU[m/s]、燃焼排ガスの動粘性係数をν[m2/s]、としたとき、次の式 (U×√(d2×n))/ν>2320 を満たすので、つまり、この式は流体力学等で用いられるレイノルズ数を示し、一般的にこの式で示されるレイノルズ数が2320を超えると流体に乱流が発生するので、複数の貫通孔51の直径及び個数、並びに、燃焼排ガスの最小流速及び動粘性係数、を上記式を満たすように定めることで、遮蔽板50の複数の貫通孔51からその内部に進入した燃焼排ガスに、より確実に乱流を発生させて均一に攪拌することができ、燃焼排ガスに含まれる不完全燃焼ガスをより確実に検出できる。
【0034】
また、接触燃焼式ガスセンサが収容されたガス検出室70と、遮蔽板50の内部に進入した燃焼排ガスをガス検出室70に導くように遮蔽板50とガス検出室70とを連通する供給管71と、を有しているので、燃焼排ガスの流量変動が激しい遮蔽板50から、供給管71を通じてガス検出室70に燃焼排ガスを供給することで、ガス検出室70内に収容された接触燃焼式ガスセンサに安定した流速の燃焼排ガスを供給することができ、そのため、燃焼排ガスに含まれる不完全燃焼ガスをより確実に検出できる。
【0035】
なお、上述した本実施形態においては、排出管72によってガス検出室70に供給された燃焼排ガスを遮蔽板50に戻していたが、これに限ったものではない。燃焼排ガスは遮蔽板50から供給管71を通じてガス検出室70に供給されるが、燃焼排ガスの動圧が弱いときや、燃焼排ガスの流量変動が非常に激しいときなど、燃焼排ガスを一定の流量でガス検出室70に供給できない場合があった。
【0036】
そこで、例えば、図4に示すガス給湯器1Aのように、排出管72に代えて、本体10の側面10bに設けられた排気ファン74と、一方の端部がガス検出室70に接続され、他方の端部が排気ファン74に接続された排出管73と、を備える構成としても良い。このようにすることで、ガス検出室70の内部の燃焼排ガスを強制的に排出するとともに、遮蔽板50の内部に進入した燃焼排ガスを供給管71を通じてガス検出室70の内部に引き込むので、ガス検出室70に収容された接触燃焼式ガスセンサに、さらに安定した流速で確実に燃焼排ガスを供給でき、そのため、燃焼排ガスに含まれる不完全燃焼ガスをより確実に検出できる。
【0037】
また、本実施形態においては、ガス検出室70にガス検出手段としての接触燃焼式ガスセンサを設けるものであったが、これに限らず、例えば、遮蔽板50の内部の上方にガス検出手段となるガスセンサを設ける構成であっても良い。ただし、この構成の場合は、燃焼排ガスの流量変動の影響を受けにくいガスセンサなどを用いる必要がある。
【0038】
なお、前述した実施形態は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の一実施形態であるガス給湯器を示す概略図である。
【図2】図1のガス給湯器に設けられる遮蔽板の斜視図である。
【図3】図2のW−W線に沿う断面図である。
【図4】本発明の他の実施形態であるガス給湯器を示す概略図である。
【図5】従来のガス給湯器を示す概略図である。
【図6】図5のガス給湯器にガスセンサを設けた構成を示す概略図である。
【符号の説明】
【0040】
1、1A ガス給湯器(ガス燃焼器)
10 本体
11 吸気口
12 排気口
20 ガスバーナ
30 熱交換器
40 排気室
50 遮蔽板
50c 遮蔽板の下面(ガスバーナと向き合う側の面)
51 複数の貫通孔
70 ガス検出室
71 供給管(管路)
72、73 排出管
74 排気ファン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体と、前記本体に収容されたガスバーナと、前記ガスバーナによって生じた燃焼排ガスを排出する前記本体に設けられた排出口と、前記排出口に対して前記ガスバーナを遮蔽するように前記ガスバーナの上方に傾斜して設置された遮蔽板と、を有するガス燃焼器において、
前記遮蔽板が、中空に形成されるとともに前記ガスバーナと向き合う側の面に複数の貫通孔が設けられており、そして、
前記遮蔽板の複数の貫通孔から前記遮蔽板の内部に進入した前記燃焼排ガスに含まれる不完全燃焼ガスを検出するガス検出手段を有している
ことを特徴とするガス燃焼器。
【請求項2】
前記遮蔽板の複数の貫通孔のそれぞれの直径をd[m]、前記遮蔽板の複数の貫通孔の個数をn、前記燃焼排ガスの最小流速をU[m/s]、前記燃焼排ガスの動粘性係数をν[m2/s]、としたとき、次の式
(U×√(d2×n))/ν>2320
を満たすことを特徴とする請求項1に記載のガス燃焼器。
【請求項3】
前記ガス検出手段が収容されるガス検出室と、
前記遮蔽板の内部に進入した前記燃焼排ガスを前記ガス検出室に導くように前記遮蔽板と前記ガス検出室とを連通する管路と、を有していることを特徴とする請求項1又は2に記載のガス燃焼器。
【請求項4】
前記ガス検出室の内部の気体を強制的に排出して、前記遮蔽板の内部に進入した前記燃焼排ガスを前記管路を通じて前記ガス検出室に引き込むガス流動手段を備えていることを特徴とする請求項3に記載のガス燃焼器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−85061(P2010−85061A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−257140(P2008−257140)
【出願日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】