説明

ガス生成物質組成物

【課題】自己点火性、高められた熱的安定性、減じられた成分反応性、衝撃および摩擦に関する改良された感受性を有し、ガス収率を増加できるエアバッグインフレータ、安全ベルトアセンブリーなど乗り物乗員拘束システム用ガス発生剤を提供する。
【解決手段】第一燃料としてのDL−酒石酸;カルボン酸、アミノ酸、テトラゾール類、トリアゾール類、グアニジン類、アゾアミド類、それらの金属塩および非金属塩類、およびそれらの混合物から選択された第二の燃料;および、第一の酸化剤としての塩素酸カリウムを含む組成物。過塩素酸カリウムが第二の酸化剤として好ましく含まれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
この出願は、2006年4月25日に出願された米国仮出願番号60/795,077の利益を要求する。
【0002】
技術分野
本発明は、例えば、ガス生成システム、および自動車の拘束システムのためのガス発生装置の中で使用されるガス生成物質/自己点火組成物に一般に関する。
【0003】
本発明の背景
本発明は、燃焼に際して比較的少量の固体と、比較的豊富な量のガスを生産するガス生成物質/自己点火組成物に関する。固体の量を減らし、ガスの量を増加させ、それによりインフレータのろ過の必要を減少させるということは、進行中の挑戦である。その結果、フィルターはサイズが減少されるか、または全く除去されることがあり、それによりインフレータの重量および/またはサイズを低減する。
同様に重要な挑戦は、衝撃、摩擦または静電放電刺激に関する比較的低い感度を示すガス生成物質を製造することである。
【0004】
エアバッグインフレータが、高温熱エイジング、熱エイジング、熱サイクリング、熱衝撃、湿度サイクリングなどのような環境上の条件にさらされることがさらに必要とされる。これらの極端なテストは多くの問題を引き起こし、破損ないし、破壊に導くインフレータの過剰加圧でのエアバッグの膨張に及ぶ場合がある。コンディショニングにかかわらず同じ性能を与えるガス生成物質およびインフレータ/ガス生成システムを有することはしたがって望ましいことである。本発明は、これらの可能性に対する多くの解決策を提供する。
【0005】
それに関連して、比較的低温(200℃以下)で自動点火するために使用される組成物である自己点火組成物は望ましい。なぜならそれらは比較的低い融点を有し、したがって比較的低い自己点火温度を有するからである。さらに、別の重要な点は、ガス生成および自己点火に関する2重の機能性を提供することである。それにもかかわらず、望ましい自己点火温度を提供するある種の化学物質は、残念ながら、USCAR熱エイジング試験の後に、より反応性でより安定性の低い組成物を提供することに寄与する。典型的には、参照され本明細書の一部として組み込まれる、SAE International Document SAE/USCAR−24 ”USCAR INFLATOR TECHNICAL REQUIREMENTS AND VALIDATION”に規定されるように、107℃に約400時間暴露される。
【0006】
たとえば、他の好ましい水酸基官能基を含んでいる組成物は、そこに含まれた、より反応性の成分のために、より貧弱な熱的安定性を示すことが見出された。例示のためにより具体的に述べれば、グルコースおよび塩素酸カリウムを含んでいる組成物は、例外的に自己点火物質として良好である。それにもかかわらず、熱エイジング試験に供された時、自己点火温度は200℃以上に上昇し、この組成物の熱的安定性が危険にさらされる。電子局在化により水酸基官能基は各グルコース分子上の末端のプロトンの酸性度を高めるが、それは、USCARの要求する極端な熱エイジングにさらされた時に、経時的に分解物として水を生産する傾向を有すると信じられている。グルコースは特に6つの水酸基を有しており、グルコース1mol当たり最大6molの水を提供する。
【0007】
従って、自己点火とガス生成の両方の機能を提供する組成物を提供することは当該技術分野における改良である。更に、これらの組成物は、200℃または200℃以下の自己点火温度を維持しつつ、USCAR熱エイジングの要求に合格しなければならない。
【0008】
本発明の要約
上記の課題は、第一の燃料としてDL−酒石酸;カルボン酸、アミノ酸、テトラゾール類、トリアゾール類、グアニジン類およびそれらの混合物から選ばれた第二の燃料;および酸化剤としての塩素酸カリウム;を含む、自己点火/ガス生成組成物を含むガス生成物質またはガス生成システムによって解決される。金属硝酸塩、金属亜硝酸塩、金属過塩素酸塩、金属酸化物、他の公知の酸化剤およびそれらの混合物から選ばれた第二の酸化剤も使用されることができる。非吸湿性の酸化剤が好ましい。
本発明により、さらには自己点火/ガス生成組成物が組込まれたガス生成装置またはガス生成システム、および乗り物乗員保護システムが提供される。
【0009】
発明の詳細な説明
本発明は、下記の少なくとも1つを有するガス生成システムを提供する:エアバッグインフレータのための自己点火性、高められた熱的安定性、減じられた成分反応性、および/または衝撃および摩擦に関する改良された感受性。本発明のガス生成システムは、塩素酸塩に基づいた自己点火システムの点火機能性についてのユニークな利点を提供する。この利点は、ガス収率を増加させつつ、塩素酸塩に基づいた自己点火システムのほとんどの反応成分をそれらの最小の機能的な量にすることにより達成される。好ましいガス生成システムは、燃料としてカルボン酸の混合物から形成された自己点火/ガス生成組成物を利用し、塩素酸カリウム、過塩素酸カリウム、硝酸ストロンチウム、硝酸カリウムおよび金属酸化物から選ばれた1つ以上の酸化剤を使用する。
(表1を参照。)
【0010】
制限を受けるものではないが、下記は本発明の動作理論について説明するものと信じられている。選択される第一の燃料はDL−酒石酸である。好ましい第二の燃料はコハク酸である。これらの2つのカルボン酸の組み合わせは、pKa数値によって示されるカルボン酸の酸性度および融点に基づいて、システムへの所望の機能性のためのメカニズムを提供する。コハク酸のより低い融点と組み合わされた時、カルボン酸上の水酸基置換基の程度は必要な反応性を提供する。塩素酸カリウムと組み合わされた相互作用が、自己点火機能のメカニズムの原因であると信じられている。酒石酸のDとLの形態は、このシステム内では同様に良好に機能する。しかしながら、酒石酸のラセミ混合物において、DとLの形態間の水素結合の効果が、最適の熱的安定性を提供ことが知られた。比較的低い自己点火温度がこの関係によって達成されることが認識されなければならない。酒石酸の好ましい含有量は約5−40重量%であり、より好ましくは約10−25重量%である。
【0011】
コハク酸は水酸基置換の欠如とその融点に基づき、このガス生成/自己点火(AI)システム内の好ましい共燃料である。水酸基置換基は自己点火機能に典型的に必要であるが、特にUSCAR熱エイジング要件にさらされた時、あまりにも多くの水酸基置換基は分解を悪化させると信じられている。コハク酸は、共燃料として、この自己点火/ガス生成物質システムに好ましいコンプリメントを提供する。コハク酸の好ましい含有量は、約5−30重量%であり、より好ましくは約5−20重量%である。このシステムは他の適当なカルボン酸共燃料でも機能するだろう。このようなカルボン酸としては、たとえば、粘液酸、シュウ酸、サリチル酸、リンゴ酸、フマル酸、マロン酸、バルビツル酸、グルタミン酸、およびアジピン酸があげられるが、これらに限定されるものではない。代替えのカルボン酸は、約0−20重量%で一般に提供される。
【0012】
アミノ酸のような代替え共燃料もガス生成/AIシステムに組み入れられることができる。これらに限定されるものではないが、たとえばグリシン、ヒスチジン、アルギニンおよびセリンのようなアミノ酸は、約0−20重量%で一般に提供される。
【0013】
テトラゾール類、トリアゾール類およびグアニジン類のような他の共燃料とのカルボン酸の相互作用は、燃料混合物間の融点降下に基づいた低い自己点火温度を提供することがさらに実証された。例えば、DL−酒石酸(融点210℃)および5AT(融点206℃)は相互作用により、151℃の融点を提供する。同じ現象が5ATとコハク酸の間でも観察される。この塩素酸カリウム存在下での強制された溶融は、低温自己点火機能のための代替の機構を提示する。
【0014】
第二の燃料としては、5−アミノテトラゾールのようなテトラゾール類;5−アミノテトラゾールカリウムのようなアゾールの金属塩類;アゾール類の非金属非アンモニウム塩;5−アミノテトラゾールのようなアゾール類の硝酸塩類;5−アミノテトラゾールのようなアゾール類のニトロアミン誘導体;5−アミノテトラゾールジカリウム塩のようなアゾール類のニトロアミン誘導体の金属塩類;5−アミノテトラゾールジカリウム塩のようなアゾール類のニトロアミン誘導体の金属塩類;5−アミノテトラゾールのようなアゾール類のニトロアミン誘導体の非金属塩類;およびジシアンジアミドのようなグアニジン類;グアニジン硝酸塩のようなグアニジン塩類;ニトログアニジンのようなグアニジン類のニトロ誘導体;アゾジカルボンアミドのようなアゾアミド類;アゾジカルボンアミジン二硝酸塩のようなアゾアミド類の硝酸塩;およびそれの混合物があげられる。
第二の燃料は酒石酸との共燃料としてこのシステム内で使用することができる。参照され本明細書の一部として組み込まれる、米国特許番号5,035,757および5,872,329は、これらの燃料のあるタイプを開示し例証する。
【0015】
塩素酸カリウムと酒石酸との混合物は、エイジング後の、より信頼性の高い自己点火機能に関して、炭水化物−塩素酸塩(D−グルコース)システムに対する改良を示す。酒石酸はD−グルコースのような還元糖よりも、より少ない水酸基置換を有し、それにより分解生成物として水の化学的な生成を減少させる。エイジングプロセスを介する水の生成は、システムの安定性と機能を危険にさらす。
【0016】
このシステムの第一の酸化剤は塩素酸カリウムである。塩素酸カリウムの含有量は自己点火機能に対して重要なだけでなく、最も望まれる安全要素を達成するために減じられなければならない。最低限の機能する量での塩素酸カリウムの利用は、改善された衝撃/摩擦および、システムの酸素需要量の補足によりガス収率を増加させる機会を可能とする。これは、より高い酸素分およびより少ない固体量を有する第二の酸化剤の利用によって達成されることができる。塩素酸カリウムは、約5−70重量%で一般に提供される。
【0017】
最も好ましい第二の酸化剤は過塩素酸カリウムである。他の好ましい第二の酸化剤としては、硝酸ストロンチウムおよび硝酸カリウムのような金属硝酸塩;亜硝酸カリウムのような金属亜硝酸塩;硝酸銅のような塩基性金属硝酸塩;酸化鉄および酸化銅のような金属酸化物;およびこれらの混合物があげられる。第二の酸化剤は、約0−50重量%、より好ましくは約10−40重量%で一般に提供される。
【0018】
ヒュームドシリカ、窒化ホウ素およびグラファイトのような加工助剤も使用されることができる。従って、ガス生成物質は安全に圧縮されてタブレットにされるかまたは打錠され、次いで粒状にされることができる。ガス生成物質は、さらにセルロース誘導体、酢酸セルロースおよび酢酸セルロースブチレートおよびカルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースの塩類;シリコーン;ポリアルケンカルボネート類、たとえばポリプロピレンカルボネートおよびポリエチレンカルボネート;のようなバインダーを含むことができる。加工助剤および/またはバインダーは、約0−15重量%、より好ましくは約0−5重量%で一般に提供される。
【0019】
スラグ形成剤も提供されることができ、シリコーン化合物、たとえば、シリコン元素、;二酸化ケイ素;ポリジメチルシロキサンのようなシリコーン類;ケイ酸カリウムのようなケイ酸塩;タルクおよびクレーのような天然の鉱物および他の公知のスラグ形成剤から選択される。スラグ形成剤は、典型的には約0−10重量%、より好ましくは約0−5重量%で提供される。
【0020】
【表1】

【0021】
自己点火システム中での塩素酸カリウムの反応性は、特にUSCARの要件で熱エイジングされた時に、衝撃感受性および塩素の分解物の腐食性に関する性能を発現すると信じられている。炭水化物−塩素酸塩システムは、107℃で400時間エイジングした際に著しく分解する。炭水化物−塩素酸塩システムについてのホットプレート上でのベースラインの自己点火温度は174℃である。しかし、エイジング後には自己点火温度は220℃以上に増加する。最適のインフレータ機能のためには、自己点火組成物が200℃未満の自己点火温度を示すべきであることが一般に認識されている。
【0022】
表2を参照。ある種の既知のカルボン酸−塩素酸塩システムは、熱的安定性に関して自己点火システムの改良を提示するが、ガス生成組成物の2重の機能を提供しない。カルボン酸−塩素酸塩システムの腐食性分解物は、アルミニウム、鋼、EDPMおよびプラスチックのようなインフレータ構成要素と相互作用する可能性を有している。この反応性のために、物質の量は自己点火システムとしてのみの使用のために制限されている。更に、ある種の既知のカルボン酸−塩素酸塩システムは、本発明と異なり、蒸気スカベンジャーに依存する。
【0023】
提案されたガス生成物質/AIシステムは、ガス生成物質/自己点火組成物の1mol当たり、最大75%のガス生成を示し、175℃のホットプレート値のベースラインは、107℃で600時間のエイジングの後に事実上変わらなかった(表1)。提案されたシステムの分解による質量減量は約4−20%に制限された。一方、DL−酒石酸/塩素酸カリウムシステムおよび炭水化物塩素酸塩システムでは20%よりも大きかった。
(表3を参照。)
【0024】
表2:

【0025】
表3:

【0026】
以下の実施例1は、表2、3および4における「改良されたカルボン酸−塩素酸塩システム」を定義することが認識されるべきである。以下の実施例2は、表2、3および4における「既存のカルボン酸−塩素酸塩システム」を定義することが認識されるべきである。以下の実施例9は「炭水化物−塩素酸塩システム」を定義する。
【0027】
自己点火とガス生成組成物の組み合わされた機能は、インフレータ設計に関するコストを減じるだろう。本発明の認識される利点は、良好な燃焼速度性能と、他の塩素酸塩システムの約50−55%と比較して約60−75%である高いガス収率が組み合わされた自己点火機能である。
【0028】
これらの配合物用セーフティマージンは著しく改善される。炭水化物−塩素酸塩システムおよび従前のカルボン酸−塩素酸塩システムは、2.06−2.64インチのHD50値を有している。さらに、摩擦安全性も関心事である。これらのシステムは、24N−128NのBAM摩擦数値を実証した。提案されたガス生成システムは、衝撃感度に対して4.5−7.3インチのHD50数値、および摩擦感度に対して216N−360Nを提示する。これらの物質のARC試験は追加の利点を実証する。炭水化物−塩素酸塩システムは、109.84℃のARC数値を有している。また、他のカルボン酸−塩素酸塩システムは、111℃から126℃に及ぶARC数値を有している。本発明に従って形成された組成物は、131℃のARC数値を実証した。
【0029】
ガス生成物質/AIシステムにおいてはインフレータの構成要素との適合性も向上される。アルミニウム、鋼、EDPMおよびプラスチックとの反応は、107℃で600時間エイジングされた後も起こらなかった。
(表4を参照。)
【0030】
表4:

【0031】
本発明の組成物は、アルドリッチまたはフィッシャーケミカル社のような公知のサプライヤーによって提供される成分から形成される。組成物は顆粒状の形態で提供され、公知の方法で乾燥混合および圧縮されるか、または公知の他の方法で混合されることができる。組成物は、エアバッグデバイスまたは乗員保護システム、安全ベルトデバイス中に典型的に見出されるガス発生装置、または乗り物乗員保護システムのようなガス生成システムにおいて典型的に利用されることができ、これらは公知の技術または当業者により製造されることができる。他のガス生成システム内での使用も企図される。
【0032】
以下の例は、さらに本発明の利点を例証する。比較例の組成物を形成するために、以下に記載された様々な成分を含んでいる配合物の乾燥混合物が公知の方法で調製された。
【0033】
実施例1:
本発明の好ましい実施態様に従って、23重量%のDL−酒石酸(DL−TTA)、15重量%のコハク酸(SA)、20重量%の塩素酸カリウムおよび42重量%の過塩素酸カリウムが顆粒状の形態で提供され、均質的に乾燥混合され、次に公知の方法でペレット化された。示差走査熱量計(DSC)によって評価すると、自己点火開始は157−160℃だった。ベースラインホットプレート自己点火温度は170−172℃だった。公知の設計の乗客側インフレータおよびドライバー側インフレータ内で107℃600時間エイジングされた後の、同じ組成物のホットプレート自己点火温度は174℃であった。エイジング後の組成物の分解は比較的微小だった。インフレータ構成要素の分解物の反応性は比較的微小だった。この例は、本発明に従って形成された組成物が、制限された反応性を提供しつつ、エイジングの前後において、比較的低く同様の自己点火温度を提供することを例証する。したがって、更に、本発明に従う形成された組成物は、エイジングの後にも優れた熱的安定性を示す。
【0034】
実施例2:
比較の目的のために、35.0重量%のDL−酒石酸(DL−TTA)および65.0重量%塩素酸カリウムが、顆粒状の形態で提供され、均質的に乾燥混合され、次に、公知の方法でペレット化された。示差走査熱量計(DSC)によって評価すると、自己点火開始は166℃だった。ベースラインホットプレート自己点火温度は177℃だった。実施例1と同じインフレータ内で107℃で600時間エイジングされた後の、同じ組成物のホットプレート自己点火温度は193℃だった。エイジングした後の組成物の分解は比較的大きかった。インフレータ構成要素との分解物の反応性は比較的高かった。この例は、コハク酸のような第二の燃料の欠如によって、および塩素を含んでいる酸化剤の増加によって、分解およびインフレータ構成要素との反応性がどのように増加するかを例証する。
【0035】
実施例3:
比較の目的のために、44.0重量%のDL−酒石酸(DL−TTA)、10.0重量%の塩素酸カリウム、および46.0重量%の過塩素酸カリウムが顆粒状の形態で提供され、均質的に乾燥混合され、次に、公知の方法でペレット化された。示差走査熱量計(DSC)によって評価すると、自己点火開始は170℃だった。炎が生じなかったので、ベースラインホットプレート自己点火温度は存在しなかった。さらに、炎が生じなかったので、20mlのバイアル内での107℃で600時間エイジングされた後の同じ組成物のホットプレート自己点火温度も存在しなかった。エイジングした後の組成物の分解は比較的微小だった。インフレータ構成要素との分解物の反応性は比較的微小だった。この例は、塩素を含んでいる酸化剤の増加、およびコハク酸のような第二の燃料の欠如で、自己点火機能がどのように悪影響を及ぼされるかを例証する。
【0036】
実施例4:
比較の目的のために、42.5重量%のDL−酒石酸(DL−TTA)、20重量%の塩素酸カリウム、および36重量%の過塩素酸カリウムが顆粒状の形態で提供され、均質的に乾燥混合され、次に、公知の方法でペレット化された。示差走査熱量計(DSC)によって評価すると、自己点火開始は171℃だった。ベースラインホットプレート自己点火温度は176℃だった。20mlのバイアル内での107℃で600時間エイジングされた後の同じ組成物のホットプレート自己点火温度は175℃であった。エイジングした後の組成物の分解は比較的微小だった。インフレータ構成要素との分解物の反応性は比較的穏やかだった。この例は、インフレータ構成要素との反応性を増加させる分解物に、コハク酸または第二の燃料の欠如がどのように帰着するかを例証する。
【0037】
実施例5:
比較の目的のために、12.0重量%のDL−酒石酸(DL−TTA)、23.5重量%のコハク酸(SA)、13.0重量%の塩素酸カリウム、および51.5重量%の過塩素酸カリウムが顆粒状の形態で提供され、均質的に乾燥混合され、次に、公知の方法でペレット化された。示差走査熱量計(DSC)によって評価すると、自己点火開始は159℃だった。弱い自己点火であったが、ベースラインホットプレート自己点火温度は、176℃だった。炎が生じなかったので、20mlのバイアル内での107℃で600時間エイジングされた後の同じ組成物のホットプレート自己点火温度は存在しなかった。エイジングした後の組成物の分解は比較的微小だった。インフレータ構成要素との分解物の反応性は比較的微小だった。この例は、エイジングの後の自己点火機能が、どのように成分の量の変化によって影響されるかを例証する。
【0038】
実施例6:
比較の目的のために、31重量%のコハク酸(SA)、20重量%の塩素酸カリウム、および49重量%の過塩素酸カリウムが顆粒状の形態で提供され、均質的に乾燥混合され、次に、公知の方法でペレット化された。示差走査熱量計(DSC)によって評価すると、融点は184℃だった。ベースラインホットプレート融点温度は207℃だった。20mlのバイアル内で107℃で600時間エイジングされた後の、同じ組成物のホットプレート融点温度は、210℃だった。エイジングした後の組成物の分解は比較的最小だった。インフレータ構成要素との分解物の反応性は比較的微小だった。この例は、DL−酒石酸の自己点火機能、およびDL酒石酸のない場合の自己点火機能性の欠如を例証する。
【0039】
実施例7:
コハク酸、DL−酒石酸およびD−酒石酸のDSC評価は、それぞれの融点が189.05℃、212.27℃および167.66℃であることを与えた。この結果は、水素結合がDL−酒石酸の融点を増加させるという確信を支持する。
【0040】
実施例8:
実施例1に従って形成された組成物は、154−159℃の範囲のベースライン自己点火温度を有することが見出された。107℃で400時間エイジングされた後、組成物は依然として154−159℃の範囲の自己点火温度を示した。この組成物は1989℃の燃焼温度で65.2重量%のガス状生成物と、900(cal/g)の反応熱を示した。実施例9の中で示されるように、燃焼温度と反応熱は公知の自己点火物質より比較的低く、そのため、ガスの流出物の冷却要件を緩和する。
【0041】
実施例9:
実施例1に示されたようにして、d−グルコースの27重量%および塩素酸カリウムの73重量%を含んでいる組成物が混合されペレット化された。この組成物は、150−175℃の範囲のベースライン自己点火温度を有することが見出された。107℃で400時間エイジングされた後、炭水化物−塩素酸塩システムは、220℃よりも高い自己点火温度を示した。この組成物は2290℃の燃焼温度で55.5重量%のガス状生成物と、1126(cal/g)の反応熱を示した。この公知の組成物の燃焼温度および反応熱は、実施例8において示されたような本発明の組成物よりも比較的高い。そのため、ガスの流出物の冷却要件を増加させる。
【0042】
実施例10:
DSCによって測定すると、25重量%のコハク酸および75重量%のDL−酒石酸を含んでいる組成物は、174.67℃の融点を示した。DSCによって測定すると、10重量%のコハク酸および90重量%のDL−酒石酸を含んでいる組成物は、180.84℃の融点を示した。DSCによって測定すると、75重量%のコハク酸および25重量%のDL−酒石酸を含んでいる組成物は、176.82℃の融点を示した。DSCによって測定すると、50重量%のコハク酸および50重量%のDL−酒石酸を含んでいる組成物は、176.57℃の融点を示した。この例は、本発明の他の利点を保持しつつ、自己点火温度を調整する能力を例証する。
【0043】
実施例11:
DSCによって測定すると、43重量%のD−酒石酸、および57重量%の塩素酸カリウムを含んでいる組成物は、167.66℃の融点および144℃の自己点火温度を示した。DSCによって測定すると、35重量%のDL−酒石酸、および65重量%の塩素酸カリウムを含んでいる組成物は、212.27℃の融点および164℃の自己点火温度を示した。DSCによって測定すると、29重量%のコハク酸、および71重量%の塩素酸カリウムを含んでいる組成物は、189.05℃の融点および185℃の自己点火温度を示した。DSCによって測定すると、コハク酸、DL−酒石酸、および塩素酸カリウムを含んでいる組成物は、176.57℃の融点および157℃の自己点火温度を示した。この例は、本発明の他の利点を保持しつつ、自己点火温度を調整する能力を例証する。
【0044】
実施例12:
実施例1に従って形成された組成物は、以下の燃焼速度を示した:100psigで、毎秒約0.3インチ(ips);500psigで約0.45ips;1000psigで約0.59ips;1500psigで約0.73ips;2000psigで約0.75ips;2500psigで約0.88ips;3000psigで約0.98ips;3500psigで約1.05ips;4000psigで約1.07ips。燃焼速度試験は、それぞれサンプルが内部に置かれた鋼製爆弾の中で行われた。
爆弾は0−5500psiで加圧されることができる。長さ0.5インチのプロペラントサンプルが、熱電対と共にエポキシ樹脂中、長さ方向に沿って包まれた。その後、プロペラントのむき出しにされた端が電気的なマッチで点火された。試験温度を約20−24℃に維持しつつ、サンプルを様々な圧力で点火した。燃焼速度が、ついでそれぞれの試験について測定された。この例は、本発明の組成物が、いかにして自己点火機能とガス生成機能の両方において受容可能な燃焼速度を提供するかを例証する。
【0045】
例示の観点から、例1において例証されるような好ましい組成物は次のものを含むだろう:22.0−24.0重量%のDL−酒石酸、14.0−16.0重量%のコハク酸、19.0−21.0重量%の塩素酸カリウムおよび41.0−43.0重量%の過塩素酸カリウム。別の表現をすれば、ここで例証されるように、燃料の最適比は、エイジングの後に比較的低い自己点火温度および優れた熱的安定性をもたらす。更に、ここで例証されるように、酸化剤の最適比は、エイジングの後に信頼できる自己点火機能、および制限された反応性をもたらす。
【0046】
例えばd−グルコースと塩素酸カリウムを含む炭水化物−塩素酸塩システムのような公知の自己点火物質はより敏感で、したがって、取扱に関する問題をもたらすことが認識されるべきである。従って、これらの物質の移送のために特別の設備が作られなければならない。一方、本発明の自己点火/ガス生成組成物は湿りにくく、より容易に輸送され、公知の自己点火物質ほど敏感ではない。
【0047】
図1に示されるように、例示されるインフレータまたはガス生成システム10は、公知の技術により製造することのできる、本発明に従って形成された第一のガス生成/自己点火組成物12を含むようにあつらえられた2重のチャンバー設計を有する。米国特許第6,422,601、6,805,377、6,659,500、6,749,219および6,752,421は、典型的なエアバッグインフレータ設計を例証し、これらは参照され本明細書の一部として組み込まれる。
【0048】
図2を参照する。本発明の例示的なインフレータまたはガス生成システム10は、エアバッグシステム200に組み入れられることができる。エアバッグシステム200は、少なくとも1つのエアバッグ202および、エアバッグの内部と流体連絡を可能にするようにエアバッグ202に連結された、本発明のガス生成組成物を含むインフレータ−10を含んでいる。エアバッグシステム200は、さらに衝突センサー210を含むかまたはこれと接続されることができる。衝突センサー210は、たとえば、衝突の際にエアバッグインフレータ−10の活性化を介して、エアバッグシステム200の発動の信号を発する衝突センサーアルゴリズムを含む。
【0049】
図2を再度参照する。エアバッグシステム200は、安全ベルトアセンブリー150のような追加の要素を含む、より広く、より包括的な乗り物乗員拘束システム180に組み入れられることもできる。図2はそのような拘束システムの1つの例示的な実施態様の模式的な図を示す。安全ベルトアセンブリー150は安全ベルトハウジング152、およびハウジング152から伸びる安全ベルト100を含んでいる。安全ベルトリトラクタメカニズム154(例えばばねによるメカニズム)が、ベルトの端部分に連結されることができる。さらに、衝突の際にリトラクタメカニズムを始動させるために、ガス生成物質/自動点火組成物12を含む安全ベルトプリテンショナー156はベルトリトラクターメカニズム154に連結されることができる。本発明の安全ベルトの実施態様と共に使用されることができる典型的なシートベルトリトラクタメカニズムは、参照され本明細書の一部として組み込まれる、米国特許5,743,480、5,553,803、5,667,161、5,451,008、4,558,832および4,597,546に記載されている。典型的なプリテンショナーの例は、参照され本明細書の一部として組み込まれる、米国特許6,505,790および6,419,177に記載されている。
【0050】
安全ベルトアセンブリー150は、例えばプリテンショナーに組み入れられた火工品イグナイタ(示されない)の起動によってベルトプリテンショナー156の発動の信号を発する衝突センサーアルゴリズムを有する、衝突センサー158(例えば慣性センサーまたは加速度計)を有するかまたはこれと接続されることができる。先に参照され本明細書の一部として組み込まれた米国特許6,505,790および6,419,177は、そのような方法で始動されるプリテンショナーの例を提供する。
【0051】
安全ベルトアセンブリー150、エアバッグシステム200、およびより広くより包括的な乗り物乗員拘束システム180は、例示にすぎず、本発明により企図されるガス生成システムを何ら制限するものではない。
【0052】
本発明の先の記述は例示の目的だけのためにあり、ここに示された様々な構造および操作上の特徴は、特許請求の範囲により画定される本発明の精神および範囲から逸脱することなく、当業者により多くの改良を受けることができることは理解されるだろう。本明細書の記述は、したがって、本発明の範囲を制限するのが目的ではない。本発明の範囲は、特許請求の範囲およびそれらの等価物によってのみ決定される。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】図1は、本発明のインフレータの一般的な構造を示す横断面の側面図である。
【図2】図2は、本発明のガス生成組成物を含んでいる例示的な乗り物乗員拘束システムの概要図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一燃料としてDL−酒石酸を約5−40%;
カルボン酸、アミノ酸、テトラゾール類、トリアゾール類、グアニジン類、アゾアミド類、それらの金属塩および非金属塩類、およびそれらの混合物から選択された第二の燃料を約0.1から30%;
第1の酸化剤としての塩素酸カリウムを約5−70%;を含む組成物、
ここで前記の%は組成物の合計重量と比較した各成分の重量に基づく。
【請求項2】
さらに第二の酸化剤を合計の組成物の約0.1−50重量パーセントで含み、該第二の酸化剤が金属過塩素酸塩、金属硝酸塩、金属亜硝酸塩、金属酸化物、塩基性金属硝酸塩および混合物から選択される、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
前記の第二の酸化剤が過塩素酸カリウム、硝酸ストロンチウム、硝酸カリウム;亜硝酸カリウム;塩基性硝酸銅;酸化鉄、酸化銅;およびそれらの混合物から選択される、請求項2記載の組成物。
【請求項4】
第2の燃料が、粘液酸、シュウ酸、サリチル酸、リンゴ酸、フマル酸、マロン酸、バルビツル酸、グルタミン酸、アジピン酸および混合物から選択されたカルボン酸を含む、請求項1記載の組成物。
【請求項5】
前記の第2の燃料が、グリシン、ヒスチジン、アルギニンおよびセリン、ならびにそれらの混合物から選択されたアミノ酸を含む、請求項1記載の組成物。
【請求項6】
前記の第2の燃料が、5−アミノテトラゾール;5−アミノテトラゾールカリウム;5−アミノテトラゾール硝酸塩;5−ニトロアミノテトラゾール;5−ニトロアミノテトラゾールジカリウム;5−ニトロアミノテトラゾールジカリウム;およびそれらの混合物から選択されるテトラゾールを含む、請求項1記載の組成物。
【請求項7】
前記の第2の燃料が、ニトログアニジン、ジシアンジアミド、グアニジン硝酸塩、アゾジカルボンアミド、アゾジカルボンアミド二硝酸塩およびそれらの混合物から選択される、請求項1記載の組成物。
【請求項8】
請求項1記載の組成物を含むガス生成システム。
【請求項9】
請求項1記載の組成物を含む乗り物乗員保護システム。
【請求項10】
さらに過塩素酸カリウムを含み、DL−酒石酸は約5−40重量パーセントで提供され、コハク酸は約0.1−30重量パーセントで提供され、塩素酸カリウムは約5−70重量パーセントで提供され、過塩素酸カリウムは約0.1−50重量パーセントで提供される、請求項1記載の組成物。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−314411(P2007−314411A)
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−115090(P2007−115090)
【出願日】平成19年4月25日(2007.4.25)
【出願人】(507000143)ティー ケー ホールディングス インク (18)
【Fターム(参考)】