説明

ガス自動サンプリング装置

【課題】ガスサンプリング装置において、閉鎖循環系内の検体ガスを自動的かつ連続的に短時間にサンプリングすること、さらには装置の耐久性の向上およびサンプリングパターンを多様化できる装置を提供する。
【解決手段】閉鎖循環系1と、その閉鎖循環系1とバルブV1,V2を介して接続され、かつ、バルブV3によって仕切られた排気装置と接続されたサンプリング・ループ3と、そのサンプリング・ループ3とバルブV4,V5を介して接続されたキャリアガスライン5とを備え、その複数個のバルブを組み合わせバルブの開閉を制御することにより、前記サンプリング・ループにキャリアガスを導入してキャリアガスと閉鎖循環系内の検体ガス2を採取するガス自動サンプリング装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、触媒反応等において閉鎖循環系内に生成した気体を分析や計測するために、連続的かつ自動的に採取するサンプリング装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のガスサンプリング装置では、配管に主にガラス製またはテフロン(登録商標)製の六方バルブや三方コックを取り付けて用い、これを回転させて、反応系の排出部や試料容器からサンプリング流路を介してガスクロマトグラフ等の分析系へと切り替えることで気体の定性・定量分析を行っている(例えば、特許文献1、2参照)。
【特許文献1】特開2003−4714号公報
【特許文献2】特開2000−9610号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来のガスサンプリング装置においては、使用するコックの性質上サンプリングの自動化が困難であった。例えば、ガラス製六方コックは外気の漏れ込みが少なく減圧下での気体分析には極めて適しているが、その材質から強度が乏しくモーター等で回転を自動化すると容易に破損する欠点がある。また一方で、テフロン(登録商標)製六方コックではモーターを使用した自動回転化には適するが、テフロン(登録商標)摺り合わせ部の耐久性が乏しく長時間の使用により容易に気体の漏れが発生する。
また、六方コックを使用したシステムでは、サンプリング・ループ内がキャリアガスで満たされているため、サンプリング時に閉鎖循環系内の検体ガスがサンプリング・ループに拡散する速度が遅く、サンプリングの所要時間が長くなり、特に閉鎖循環系内が減圧下の場合には、逆にキャリアガスが閉鎖循環系内に流れ込み、サンプリング毎に閉鎖循環系内の圧力・組成が大きく変動するという問題点があった。
【0004】
したがって本発明は、ガスサンプリング装置において、閉鎖循環系内の検体ガスを自動的かつ連続的(断続的も含む、以下同様)に短時間にサンプリングすることを目的としており、さらには装置の耐久性の向上およびサンプリングパターンを多様化できる装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは上記目的を達成するために、閉鎖循環系からのガス自動サンプリング装置においては、複数個の電磁バルブまたは圧縮空気バルブを組み合わせて流路の切り替えを行い、これらをプログラムコントローラーによって遠隔自動操作することで、連続的な自動サンプリングを可能とし、また装置自体の耐久性を向上させることが可能であることが分かった。
すなわち本発明は、
(1)閉鎖循環系と、その閉鎖循環系とバルブを介して接続され、かつ、バルブによって仕切られた排気装置と接続されたサンプリング・ループと、そのサンプリング・ループとバルブを介して接続されたキャリアガスラインとを備え、その複数個のバルブを組み合わせバルブの開閉を制御することにより、前記サンプリング・ループにキャリアガスを導入して閉鎖循環系内の検体ガスを採取することを特徴とするガス自動サンプリング装置、
(2)閉鎖循環系とサンプリング・ループとの間に、バルブによって仕切られたバッファー部をさらに備え、閉鎖循環系からサンプリング・ループへの検体ガス導入時の閉鎖循環系内の圧力変化を最小限に抑えることを特徴とする(1)記載のガス自動サンプリング装置、
(3)閉鎖循環系からサンプリング・ループへの検体ガス導入時に、閉鎖循環系に比べサンプリング・ループ側を低圧とすることを特徴とする(1)または(2)記載のガス自動サンプリング装置、
(4)前記バルブの開閉をプログラム制御によって集中制御することを特徴とする(1)〜(3)のいずれか1項記載のガス自動サンプリング装置、および、
(5)前記(1)または(2)項に記載のガス自動サンプリング装置のユニットを複数組み合わせ、バルブの開閉をプログラム制御することで複数個の閉鎖循環系内の検体ガスの連続的かつ自動的なガス分析を可能としたことを特徴とするガス自動サンプリング装置、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明のガス自動サンプリング装置によれば、次のような効果を奏する。
制御された複数個のバルブを用いて検体ガスおよびキャリアガスのガス導入・ガス流路の切り替えを行うことで、閉鎖循環系内のガスの定性分析・定量分析等を容易に自動化することができる。
六方コックを使用せず、耐久性に優れた電磁バルブ、圧縮空気バルブを使用することで、ガスサンプリング装置の耐久性を飛躍的に向上させることができ、長期間の連続自動サンプリングが可能である。また、最適なバルブを選択することで、閉鎖循環系内が加圧状態・減圧状態のどちらの場合でもサンプリングができる。
さらに、真空ポンプを使用した排気装置と組み合わせることで、予めサンプリング・ループ内を真空にすることができるので、サンプリング・ループへの検体ガス拡散時間の大幅な短縮を図ることができ、またサンプリング時のキャリアガスの閉鎖循環系内への逆流を防ぐことができる。
【0007】
また、各バルブの開閉はプログラム制御によって一括制御し、開閉時間等は用いる検体ガス、閉鎖循環系の種類等に合わせて最適値を設定可能である。
そして、ガス自動サンプリング装置を1ユニットとし、これを複数ユニット連結しコントロールすることで、複数の閉鎖循環系内の検体ガスの分析を1台のガスクロマトグラフを用いて自動的に連続的に行うことが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の実施の形態について、添付の図面に基づいて説明する。
図1は本発明に係るガス自動サンプリング装置の構成の概略を示すための図であり、サンプリング・ループ3はバッファー部4を介して閉鎖循環系1と接続されている。閉鎖循環系1とバッファー部4の間はバルブV1により、そして、バッファー部4とサンプリング・ループ3の間はバルブV2によって区切られ、さらに、サンプリング・ループ3はバルブV3によって真空ポンプにつながる排気装置(図示せず)と区切られている。
また、キャリアガス6がガスクロマトグラフへと流れるキャリアガスライン5がサンプリング・ループ3と平行して存在する。そして、サンプリング・ループ3に設けられたバルブV4,V5とキャリアガスライン5に設けられたバルブV6,V7の開閉によって、キャリアガスの流路をキャリアガスライン5側とサンプリング・ループ3側とに切り替えることができる。
【0009】
そして、上記バルブの開閉の組み合わせによって、閉鎖循環系からサンプリング・ループへ検体ガス導入を行い、次にサンプリング・ループへキャリアガスラインのキャリアガスを導入し、検体ガスをキャリアガスに合流させた後、ガスクロマトグラフへ接続されたキャリアガスラインへと接続することで検体ガスを採取し、ガス成分の定性分析・定量分析を行う。
【0010】
以下に、サンプリングの手順を図5に示すフローチャートを用いて説明する。
バルブを初期位置に設定する(ステップ1)。この初期位置は、バルブV1,V4,V5が閉じ、バルブV6,V7が開いた状態であり、閉鎖循環系1とバッファー部4およびサンプリング・ループ3とキャリアガスライン5が仕切られた状態である。
ここで、図1に示すように、バルブV2,V3を開き、稼動している真空ポンプ(図示せず)で吸引し(ステップ2)、バッファー部4およびサンプリング・ループ3内が真空ポンプにより真空状態となり、キャリアガス6はキャリアガスライン5を通ってガスクロマトグラフ(図示せず)へと流れている。
【0011】
次に、図2に示すように、バルブV2を閉じ、バルブV1を開けることにより閉鎖循環系1からバッファー部4へ検体ガス2の導入を行う(ステップ3)。バッファー部4は予め真空状態となっており、検体ガス2のガス導入時間は極めて短時間で済む。ここで、バッファー部4は閉鎖循環系1内の検体ガス2の圧力・組成変化を最小限に抑えるためその容積を小さくすることが好ましい。ただし、閉鎖循環系1内の検体ガス2の圧力・組成変化を考慮する必要が無い場合はバッファー部4およびバルブV2を省略し、より簡易な構造とすることも可能である。
【0012】
次いで、図3に示すように、バルブV1、V3を閉じ、ポンプ吸引を停止し、バルブV2を開けることでバッファー部4からサンプリング・ループ3へ検体ガス2の拡散を行う(ステップ4)。この場合も、サンプリング・ループ3内が予め真空となっているため、バッファー部4から検体ガス2の拡散時間は大幅に短時間で進行する。また、バッファー部4とサンプリング・ループ3の体積比は対象とする検体ガスのガスクロマトグラフでの感度に応じて設定することが望ましい。
また、バッファー部4が省略されている場合でも、サンプリング・ループ3はバルブV3を介して真空ポンプと接続しサンプリング前に予め真空とすることで、閉鎖循環系からサンプリング・ループへ検体ガスの拡散時間を大幅に短縮し、また閉鎖循環系内へのキャリアガスの流入防止が可能となる。
【0013】
最後に、図4に示すように、バルブV2,V6,V7を閉じ、バルブV4,V5を開けることで、キャリアガス6の流れをキャリアガスライン5からサンプリング・ループ3へと切り替え、サンプリング・ループ3内の検体ガスにキャリアガス6を導入して合流させガスクロマトグラフ(図示せず)へと流し込む(ステップ5)。
ガスクロマトグラフでの分析終了後はバルブV4,V5を閉じ、バルブV6,V7を開ける(ステップ6)ことで初期の状態へと戻る。
このようにして、サンプリングを継続して行うことができる。
【0014】
次に、前記したようなサンプリング装置を1ユニットとし、これを複数ユニット組み合わせたガス自動サンプリング装置について説明する。
複数ユニットのそれぞれをユニットAおよびユニットBとし、図5に示すフローチャートを1セットして、ユニットAに対するサンプリング制御AおよびユニットBに対するサンプリング制御Bとする。1ユニットの一連のサンプリング手順(フローチャート図5)が終了した時点で、別のユニットに対して同様のサンプリング手順で制御を行うのが好ましい。これらを例えば、ABABABと交互のサンプリングを設定したり、AABAABやAABBAABB等の種々の組み合わせで行うこともできる。
また、サンプリング間隔を短時間に設定したい場合には、サンプリング制御Aとサンプリング制御Bを並行して行うこともできる。例えば、制御を並行して行った場合の一ステップを図6に例示するように、ユニットAが検体ガスのサンプリング(前記の図4に相当する)のときに、ユニットBは検体ガスの拡散(前記の図3に相当する)を同時に行うように制御することができる。
【0015】
本発明のガス自動サンプリング装置では、閉鎖循環系の種類にしたがって、サンプリング時間・量(検体ガス拡散時間等)、またサンプリング間隔(何分毎にサンプリングを繰り返すか)などを任意に設定できるものであり、単数ユニットの場合であってもサンプリングの多数の制御パターンが可能である。
さらに、ガス自動サンプリング装置のユニットを複数組み合わせるには、例えば、図6に示すように各ユニットを直列に組み合わせたり、あるいは、各キャリアガスライン5を並列にし、各ユニットを並列に組み合わせることができる。そして複数ユニットに対して、サンプリング時間・量、サンプリング間隔、ユニット相互の制御間隔など、先に記載したように各々の検体に対して種々のサンプリング制御パターンができる。であるから、最適なサンプリングにより、所望のサンプルの定性・定量分析を極めて正確に実施することができる。
【0016】
本発明のガスサンプリングの対象となる閉鎖循環系は、触媒反応(光触媒等を含む)を行う反応部と、その反応物および生成物を循環させるための一定体積を有する循環部とからなるシステムである。この閉鎖循環系は、いわゆるバッジ式とフロー式反応システムの両者の長所を併せ持っており、反応部に反応ガスを繰り返し通過させて、循環部に生成した気体成分の定性・定量を一定時間毎に分析を行うことで、その反応の速度、反応のメカニズムの検討が容易となり、触媒反応開発の有力なツールである。具体例としては、(a)反応物を含む水溶液中に酸化チタン等の半導体光触媒を懸濁させた反応部に光照射し、ここから生成した気体成分を循環部に拡散させ、一定時間毎に気体成分を定性・定量する懸濁系光触媒反応、または(b)各種の酸化物および金属触媒を反応部にて加熱状態とし、窒素酸化物(NOx)等の気体を循環部と反応部を繰り返し循環させることで、窒素酸化物ガス成分の分解過程を観測する触媒反応などがある。
【0017】
本発明のサンプリング装置は、バルブを使用するものであり、閉鎖循環系内が常圧は勿論、加圧状態あるいは減圧状態のいずれであっても、ガスのサンプリングを良好に行うことができる。そして、採用するバルブは、ダイアフラム式、ソレノイド式等を使用することで、駆動時の摩耗を最低限に抑えることが可能であり、従来の6方コック式に比べ耐久性が飛躍的に向上する。
【0018】
各バルブの開閉は電気信号または圧縮空気によってコントローラーから制御される。開閉のタイミング等はプログラムによって自在に変えることが可能であり、検体ガスや用いる閉鎖循環系の性質に合わせて最適なサンプリングプロセスを設定することができる。
検体ガスが発火性または可燃性である場合には、圧縮空気によってバルブの開閉を制御することで爆発の危険性を回避することが好ましい。
また、閉鎖循環系からの導入ライン、キャリアガスライン、サンプリング・ループ、バルブの素材は検体ガスに合わせテフロン(登録商標)、ステンレス、ガラス等から選択することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明のガス自動サンプリング装置の概略図である。
【図2】本発明のガス自動サンプリング装置のバッファー部への検体ガス導入の状態を示す図である。
【図3】本発明のガス自動サンプリング装置のサンプリング・ループへの検体ガスの拡散状態を示す図である。
【図4】本発明のガス自動サンプリング装置のキャリアガス流路の切り替えによるサンプリング状態を示す図である。
【図5】本発明のガス自動サンプリングの制御フローチャートの一例である。
【図6】本発明のガス自動サンプリング装置を複数ユニット組み合わせた一例の概略図である。
【符号の説明】
【0020】
1 閉鎖循環系
2 検体ガス
3 サンプリング・ループ
4 バッファー部
5 キャリアガスライン
6 キャリアガス
V1,V2,V3,V4,V5,V6,V7 バルブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
閉鎖循環系と、その閉鎖循環系とバルブを介して接続され、かつ、バルブによって仕切られた排気装置と接続されたサンプリング・ループと、そのサンプリング・ループとバルブを介して接続されたキャリアガスラインとを備え、その複数個のバルブを組み合わせバルブの開閉を制御することにより、前記サンプリング・ループにキャリアガスを導入して閉鎖循環系内の検体ガスを採取することを特徴とするガス自動サンプリング装置。
【請求項2】
閉鎖循環系とサンプリング・ループとの間に、バルブによって仕切られたバッファー部をさらに備え、閉鎖循環系からサンプリング・ループへの検体ガスの導入時の閉鎖循環系内の圧力変化を最小限に抑えることを特徴とする請求項1記載のガス自動サンプリング装置。
【請求項3】
閉鎖循環系からサンプリング・ループへの検体ガスの導入時に、閉鎖循環系に比べサンプリング・ループ側を低圧とすることを特徴とする請求項1または2記載のガス自動サンプリング装置。
【請求項4】
前記バルブの開閉をプログラム制御によって集中制御することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載のガス自動サンプリング装置。
【請求項5】
請求項1または2項に記載のガス自動サンプリング装置のユニットを複数組み合わせ、バルブの開閉をプログラム制御することで複数個の閉鎖循環系内の検体ガスの連続的かつ自動的なガス分析を可能としたことを特徴とするガス自動サンプリング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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