説明

ガス警報器

【課題】ガスセンサに供給される駆動電圧が変動しても警報濃度が変動しないガス警報器を提供する。
【解決手段】ガスセンサ1が、検出対象ガスのガス濃度に応じたセンサ出力Vsを出力する。このガスセンサ1には、電圧源2から駆動電圧Vdが供給されている。CPU31が、ガスセンサ1からのセンサ出力Vsが警報値以上となったときに警報ブザー41及び警報ランプ42を用いて警報を発生する。駆動電圧検出回路20が、ガスセンサ1に供給される駆動電圧Vdを検出する。CPU31が、駆動電圧検出回路20により検出された駆動電圧Vdに基づいて警報値を設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス警報器に係り、特に、検出対象ガスのガス濃度を検出するガスセンサと、前記ガスセンサに駆動電圧を供給して前記ガスセンサを駆動させる電源手段と、前記ガスセンサにより検出されたガス濃度が警報値以上のときに警報を発生する警報発生手段と、を備えたガス警報器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
上述したガスセンサの一例として、接触燃焼式が知られている(例えば特許文献1、2)。図12に示すように、接触燃焼式のガスセンサ1は、センサ素子Rs及びレファ素子Rrを有している。上記センサ素子Rsは、検出対象ガスとの燃焼を促進する触媒(例えばパラジウム(Pd))を担持した担体(例えばアルミナ(Al23))から成る触媒担体11と、この触媒担体11に覆われた白金ヒータ12と、から構成されている。レファ素子Rrは、検出対象ガスに対して不感となる担体13と、この担体13に覆われた白金ヒータ14と、から構成されている。
【0003】
上記センサ素子Rsの白金ヒータ12と、レファ素子Rrの白金ヒータ14とは、検出対象ガスのない空気中(エアベース)では等しい抵抗値になるように設けられている。上述したセンサ素子Rs及びレファ素子Rrは、固定抵抗R1、R2と共にブリッジ回路Bを構成している。このブリッジ回路Bには、電源手段としての電圧源2から駆動電圧(例えば2.0V)が供給されている。駆動電圧が供給されると、センサ素子Rsが加熱されて検出対象ガスが燃焼する。
【0004】
以上の構成によれば、ブリッジ回路Bは、エアベースでは平衡状態となり、中点電位差V0が0となる。これに対して、検出対象ガスを含む空気中では検出対象ガスとの燃焼熱によりセンサ素子Rsの温度が上昇し、これに伴ってセンサ素子Rsの白金ヒータ12の抵抗値が増加する。一方、レファ素子Rrは検出対象ガスと燃焼しないため、センサ素子Rsの温度より低くなる。このため、ブリッジ回路Bは不平衡状態となり、中点電位差V0が発生する。電圧計3は、上記中点電位差V0を検出して、検出対象ガスの濃度に応じたセンサ出力Vsとして出力する。ガス警報器は、このセンサ出力Vsが警報値(例えば0.25V)以上になった場合に警報を発生するように構成されている。
【0005】
ところで、上述した電圧源2により供給される駆動電圧は変動が生じることがある。今、駆動電圧2.0Vに対して±0.5Vの範囲で変動すると仮定する。上述したエアベースにおけるセンサ素子Rsとレファ素子Rrとの抵抗値が例えば10Ωで同一であれば、図13(A)及び図14(A)に示すように、駆動電圧が±0.5Vの範囲で変動してもセンサ出力が変動することはない。よって、図15(A)に示すように、駆動電圧が変動してもガス警報器から警報が発生するときのガス濃度である警報濃度(%)は一定となる。
【0006】
しかしながら、センサ素子Rsとレファ素子Rrとの抵抗値は、全く同じにすることが難しく、若干異なっている場合が多い。このようにセンサ素子Rsとレファ素子Rrとの抵抗値が異なると、図13(B)及び(C)、図14(B)及び(C)に示すように、エアベース時のセンサ出力が0から大きくズレ、さらに駆動電圧の変動によりセンサ出力も変動する。
【0007】
よって、従来のように警報値が例えば0.25Vで一定である場合、図15(B)及び(C)に示すように、駆動電圧の変動に応じて警報濃度(%)が変動してしまう。即ち、図15(B)に示すように、センサ素子Rs=10Ω、レファ素子Rr=7Ωの場合、駆動電圧が大きくなるに従って警報濃度(%)が高くなる。また、図15(C)に示すように、センサ素子Rs=7Ω、レファ素子Rr=10Ωの場合、駆動電圧が大きくなるに従って警報濃度(%)が低くなる。このため、高い精度の警報を行うことができない、という問題があった。
【0008】
また、上述した接触燃焼式のガスセンサ1としては、図16に示すような構成も知られている。図16において、上述した図12について既に説明したガスセンサ1と同等の部分には同一符号を付してその詳細な説明を省略する。同図に示すように、ガスセンサ1のブリッジ回路Bは、上述したセンサ素子Rs、レファ素子Rr、固定抵抗R1及びR2に加えて可変抵抗VRを備えている。この可変抵抗VRを設けることにより、センサ素子Rsとレファ素子Rrとの抵抗値が同一でなくても、例えば2Vの駆動電圧が供給されているときのセンサ出力Vsが0になるように調整することができる。
【0009】
この場合、図17及び図18に示すように、2Vの駆動電圧に対するセンサ出力Vsのバラツキは抑えられているが、駆動電圧の変動に対するセンサ出力Vsの変動は改善されていない。よって、図12に示すガスセンサ1を用いたガス警報器と同様に、図19に示すように、駆動電圧の変動に応じて警報濃度(%)が変動するため、高い精度の警報を行うことができない、という問題があった。また、ガスセンサ1としては、接触燃焼式に限らず、半導体式や限界電流式であっても駆動電圧の変動に応じてセンサ出力Vsが変動することが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2005−84787号公報
【特許文献2】特開平7−301612号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
そこで、本発明は、ガスセンサに供給される駆動電圧が変動しても警報濃度が変動しないガス警報器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述した課題を解決するためになされた請求項1記載の発明は、検出対象ガスのガス濃度に応じたセンサ出力を出力するガスセンサと、前記ガスセンサに駆動電圧を供給して前記ガスセンサを駆動させる電源手段と、前記ガスセンサから出力されたセンサ出力が警報値以上のときに警報を発生する警報発生手段と、を備えたガス警報器において、前記電源手段により供給される前記駆動電圧を検出する駆動電圧検出手段と、前記駆動電圧検出手段により検出された前記駆動電圧に応じて前記警報値を設定する警報値設定手段と、をさらに備えたことを特徴とするガス警報器に存する。
【0013】
請求項2記載の発明は、予め測定した複数の大きさの駆動電圧に対するエアベース時の前記ガスセンサのセンサ出力が格納された格納手段をさらに備え、前記格納手段に格納された複数のセンサ出力に基づいて、前記駆動電圧に対するエアベース時のセンサ出力に基準警報値を加算した警報値を示す1次関数式を算出する関係式算出手段と、を備え、前記警報値設定手段が、前記駆動電圧検出手段により検出された駆動電圧を前記関係式算出手段により算出された1次関数式に代入した値を警報値として設定することを特徴とする請求項1に記載のガス警報器に存する。
【0014】
請求項3記載の発明は、予め測定した所定の駆動電圧に対するエアベース時の前記ガスセンサのセンサ出力のデータが格納された格納手段と、前記格納手段に格納されたセンサ出力を前記所定の駆動電圧で除した値を傾きとした前記駆動電圧に対するエアベース時のセンサ出力に基準警報値を加算した警報値を示す1次関数式を算出する関係式算出手段と、を備え、前記警報値設定手段が、前記駆動電圧検出手段により検出された駆動電圧を前記関係式算出手段により算出された1次関数式に代入した値を警報値として設定することを特徴とする請求項1に記載のガス警報器に存する。
【0015】
請求項4記載の発明は、前記駆動電圧検出手段により検出された駆動電圧に基づいて前記電源手段の異常を検出する異常検出手段をさらに備えたことを特徴とする請求項1〜3何れか1項に記載のガス警報器に存する。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように請求項1及び2記載の発明によれば、警報値設定手段が、駆動電圧検出手段により検出された駆動電圧に応じて警報値を設定するので、ガスセンサに供給される駆動電圧が変動しても警報濃度が変動しない。
【0017】
請求項3記載の発明によれば、ガスセンサに供給する駆動電圧を変化させて、複数の駆動電圧に対するエアベース時のガスセンサのセンサ出力を予め測定する必要がないので、製造コストを抑えることができる。
【0018】
請求項4記載の発明によれば、駆動電圧検出手段により検出された駆動電圧を流用して電源手段の異常を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明のガス警報器の一実施形態を示す回路図である。
【図2】RAM内に格納される駆動電圧Vd=1.5V、2.0V、2.5Vに対するセンサ出力Vsのデータの一例を示す表である。
【図3】RAM内に格納される駆動電圧Vd=1.5V、2.0V、2.5Vに対する警報値の一例を示す表である。
【図4】第1実施形態における駆動電圧に対するセンサ出力及び警報値を示すグラフである。
【図5】図1のガス警報器を構成するCPUの処理手順を示すフローチャートである。
【図6】本発明のガス警報器における駆動電圧に対する警報濃度を示すグラフである。
【図7】(A)Rs=Rr=10Ω、(B)Rs=10Ω、Rr=7Ω、(C)Rs=7Ω、Rr=10Ωのときの駆動電圧に対する図1に示すガスセンサのセンサ出力を示す表である。
【図8】(A)Rs=Rr=10Ω、(B)Rs=10Ω、Rr=7Ω、(C)Rs=7Ω、Rr=10Ωのときの駆動電圧に対する図1に示すガスセンサのセンサ出力を示すグラフである。
【図9】駆動電圧2.0Vに対するセンサ出力Vsと、駆動電圧に対するセンサ出力を示す1次関数式の傾きAと、の関係を示すグラフである。
【図10】第2実施形態における駆動電圧に対するセンサ出力及び警報値を示すグラフである。
【図11】電圧源として電源トランスを用いたときのガスセンサを示す回路図である。
【図12】接触燃焼式のガスセンサの一例を示す図である。
【図13】(A)Rs=Rr=10Ω、(B)Rs=10Ω、Rr=7Ω、(C)Rs=7Ω、Rr=10Ωのときの駆動電圧に対する図12に示すガスセンサのセンサ出力を示す表である。
【図14】(A)Rs=Rr=10Ω、(B)Rs=10Ω、Rr=7Ω、(C)Rs=7Ω、Rr=10Ωのときの駆動電圧に対する図12に示すガスセンサのセンサ出力を示すグラフである。
【図15】(A)Rs=Rr=10Ω、(B)Rs=10Ω、Rr=7Ω、(C)Rs=7Ω、Rr=10Ωのときの駆動電圧に対する従来のガス警報器の警報濃度を示すグラフである。
【図16】可変抵抗を設けた接触燃焼式のガスセンサの一例を示す図である。
【図17】(A)Rs=Rr=10Ω、(B)Rs=10Ω、Rr=7Ω、(C)Rs=7Ω、Rr=10Ωのときの駆動電圧に対する図16に示すガスセンサのセンサ出力、を示す表である。
【図18】(A)Rs=Rr=10Ω、(B)Rs=10Ω、Rr=7Ω、(C)Rs=7Ω、Rr=10Ωのときの駆動電圧に対する図16に示すガスセンサのセンサ出力を示すグラフである。
【図19】(A)Rs=Rr=10Ω、(B)Rs=10Ω、Rr=7Ω、(C)Rs=7Ω、Rr=10Ωのときの駆動電圧に対する図16に示すガスセンサを用いた従来のガス警報器の警報濃度、を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
第1実施形態
以下、本発明の第1実施形態を図1〜図6に基づいて説明する。図1に示すように、ガス警報器10は、ガスセンサ1と、駆動電圧検出手段としての駆動電圧検出回路20と、マイクロコンピュータ(以下μCOM)30と、警報ブザー41と、警報ランプ42と、を備えている。上記ガスセンサ1は、センサ素子Rs及びレファ素子Rrと、固定抵抗R1及びR2と、電源手段としての電圧源2と、電圧計3と、から構成されている。上記センサ素子Rsは、触媒担体11と、白金ヒータ12と、から構成されている。触媒担体11は、検出対象ガスとの燃焼を促進する触媒(例えばパラジウム(Pd))を担持した担体(アルミナ(Al23))から成る。白金ヒータ12は、温度に応じて抵抗値が変化する測温抵抗体であり、上記触媒担体11に覆われている。
【0021】
上記レファ素子Rrは、担体13と、白金ヒータ14と、から構成されている。担体13は、検出対象ガスに対して不感となる上記担体のみで構成されている。白金ヒータ14は、温度に応じて抵抗値が変化する測温抵抗体であり、上記担体13に覆われている。上記センサ素子Rs及びレファ素子Rrは、固定抵抗R1及びR2と共にブリッジ回路Bを構成している。上記電圧源2は、上記レファ素子Rr及び固定抵抗R1の接続点と、センサ素子Rs及び固定抵抗R2の接続点と、の間に駆動電圧Vdを供給して、ガスセンサ1を駆動する。また、固定抵抗R1及びR2の接続点と、レファ素子Rr及びセンサ素子Rsの接続点と、の間に発生する中点電位差V0は、電圧計3に接続されている。この電圧計3は、接続された中点電位差V0を検出してセンサ出力Vsとして出力する。電圧計3からのセンサ出力Vsのアナログ値は、図示しないA/D変換器によってディジタル値に変換された後に後述するμCOM30に供給される。
【0022】
駆動電圧検出回路20は、OPアンプ21から構成されている。OPアンプ21は、−入力端が出力端に接続されるボルテージフォロアである。このOPアンプ21の+入力端は、電圧源2から供給される駆動電圧Vdが入力される。そして、OPアンプ21は、上記+入力端に入力された駆動電圧Vdを増幅率1で増幅して出力する。OPアンプ21から出力された駆動電圧Vdのアナログ値は、図示しないA/D変換器によってディジタル値に変換された後に後述するμCOM30に供給される。
【0023】
上記μCOM30は、ガス警報器10全体の制御を司るコンピュータであり、ガスセンサ1からのセンサ出力Vsが警報値Vw以上になったときに後述する警報ブザー41及び警報ランプ42を制御して警報を発生する。また、μCOM30は、駆動電圧検出回路20により検出された駆動電圧Vdに応じて上記警報値Vwを設定し直す。
【0024】
上記μCOM30は、プログラムに従って各種の処理を行う中央処理ユニット(CPU)31と、CPU31が行う処理のプログラムなどを格納した読み出し専用のメモリであるROM32と、CPU31での各種の処理過程で利用するワークエリア、各種データを格納するデータ格納エリアなどを有する読み出し書き込み自在のメモリであるRAM33と、を有している。上記警報ブザー41は、μCOM30の制御に従ってブザー音(警報音)を発生する装置である。上記警報ランプ42は、μCOM30の制御に従って発光する発光素子である。
【0025】
次に、上述した構成のガス警報器10の動作について説明する。まず、ガス警報器10の製造工程において、製造者は、ガスセンサ1に対して供給する駆動電圧Vdを例えば1.5V、2.0V、2.5Vと変化させる。製造者は、そのときのエアベースにおけるセンサ出力Vsのデータを測定し、設定器などを用いて格納手段としてのRAM33などに格納する。これにより、RAM33内には、3つの大きさの駆動電圧Vd(1.5V、2.0V、2.5V)に対するエアベース時のセンサ出力Vsのデータが格納される。例えば、センサ素子Rs=10Ω、レファ素子Rr=7Ωであった場合は、図2に示すようなセンサ出力Vsが測定されて、RAM33内に格納される。
【0026】
図2に示すようなセンサ出力Vsのデータが格納されると、CPU31は、格納された各センサ出力Vsにそれぞれ基準警報値としての0.25Vを加算して、その加算した値を警報値VwとしてRAM33内に格納する。例えば、図2に示すようなセンサ出力Vsのデータが格納されていた場合、図3に示すようにこれらセンサ出力Vs=−0.131V、−0.176V、−0.221Vに0.25Vを加算した値0.119V(−0.131V+0.25V)、0.074V(−0.176V+0.25V)、0.029V(−0.221V+0.25V)が各駆動電圧Vdに応じた警報値Vwとして格納される。
【0027】
その後、CPU31は、関係式算出手段として働き、RAM33内に格納した上記警報値Vwのデータから任意の駆動電圧Vdに対する警報値Vwを示す1次関数式である警報値ラインL1(図4)を求める。具体的には、図3に示すようにRAM33内に格納された(駆動電圧Vd、警報値Vw)=(1.5V、0.119V)、(2.0V、0.074V)、(2.5V、0.029V)の3点を通る1次関数式(Vw=0.088×Vd+0.25)を警報値ラインL1とする。この警報値ラインL1は、図4からも明らかなように任意の駆動電圧Vdに対するセンサ出力ラインL2に対して平行に引かれ、警報値ラインL1とセンサ出力L2との差分は常に基準警報値=0.25Vとなる。
【0028】
上述したガス警報器10を出荷して、家庭内に設置した後に電源を投入すると、CPU31は、図5に示すような動作を開始する。まず、CPU31は、ガスセンサ1を制御して検出対象ガスのガス濃度を検出させ、そのガス濃度に応じたセンサ出力Vsを取り込む(ステップS1)。さらに、CPU31は、駆動電圧検出回路20から出力される駆動電圧Vdを取り込む(ステップS2)。次に、CPU31は、警報値設定手段として働き、上述したように求めた警報値ラインL1の1次関数式(Vw=0.088×Vd+0.25)にステップS2で取り込んだ駆動電圧Vdを代入した値を警報値Vwを設定する(ステップS3)。その後、CPU31は、ステップS1で取り込んだセンサ出力VsがステップS3で設定した警報値Vw以上か否かを判定する(ステップS4)。
【0029】
センサ出力Vsが警報値よりも下回っていれば(ステップS4でN)、CPU31は、再びステップS1に戻る。一方、センサ出力Vsが警報値Vw以上であれば(ステップS4でY)、CPU31は、ガス漏れが生じていると判断して、警報発生手段として働き、警報ブザー41及び警報ランプ42による警報を開始する(ステップS5)。その後、CPU31は、再びセンサ出力Vsの取り込み(ステップS6)、駆動電圧Vdの取り込み(ステップS7)、警報値Vwの設定(ステップS8)を行って、ステップS6で取り込んだセンサ出力VsがステップS8で設定した警報値Vwを下回ると(ステップS9でN)、警報ブザー41及び警報ランプ42による警報を停止した後(ステップS10)、ステップS1に戻る。
【0030】
上述したガス警報器10によれば、CPU31が、駆動電圧検出回路20により検出された駆動電圧Vdに応じて警報値Vwを設定するので、センサ素子Rsとレファ素子Rrとの抵抗値が異なっているときにガスセンサ1に供給される駆動電圧Vdが変動しても図6に示すように警報濃度(%)が変動しない。
【0031】
なお、上述した第1実施形態では、警報値ラインL1を求めるために3つの駆動電圧に対するセンサ出力Vsを予め測定してRAM33内に格納していたが、本発明はこれに限ったものではない。警報値ラインL1を示す1次関数を求めるには少なくとも2つの駆動電圧に対するセンサ出力Vsを予め測定してRAM33内に格納していればよい。
【0032】
また、上述した第1実施形態では、警報値ラインL1を求めて、この警報値ラインL1から駆動電圧検出回路20により検出された駆動電圧Vdに応じて警報値を設定していたが、本発明はこれに限ったものではない。例えば、単に図3に示すような駆動電圧Vdと警報値Vwとのテーブルから駆動電圧Vdに応じた警報値Vwを設定するようにしてもよい。
【0033】
第2実施形態
次に、第2実施形態における本発明のガス警報器10を説明する。なお、第2実施形態におけるガス警報器10の構成は、第1実施形態と同様であるためここでは詳細な説明は省略する。次に、第2実施形態のガス警報器10の動作について説明する。
【0034】
上記駆動電圧Vdに対するセンサ出力Vsは下記の式(1)で表すことができる。
Vs=Vd×Rr/(Rs+Rr)−Vd/2 …(1)
よって、例えばセンサ素子Rs、レファ素子Rrの抵抗値が(A)Rs=Rr=10Ω、(B)Rs=10Ω、Rr=7Ω、(C)Rs=7Ω、Rr=10Ωの場合、各駆動電圧Vd=1.5V、2.0V、2.5Vに対するセンサ出力Vsを上記式(1)を用いて求めると図7及び図8に示されたようになる。
【0035】
よって、(A)〜(C)におけるセンサ出力ラインL2の1次関数式は、図8に示すように、(A)Vs=0×Vd、(B)Vs=−0.088×Vd、(C)Vs=0.088×Vd、となる。即ち、センサ出力ラインL2の1次関数式の傾きAは、(A)が0、(B)が−0.088、(C)が0.088となる。
【0036】
上述したように駆動電圧Vdに対するセンサ出力VsはVs=A×Vdの1次関数で表すことができる。よって、1つの駆動電圧Vdに対するセンサ出力Vsを測定すれば、下記の式(2)から、そのガスセンサ1のセンサ出力ラインL2の傾きAを得ることができる。
A=1/Vd×Vs …(2)
【0037】
例えば、駆動電圧Vd=2.0Vのときのセンサ出力Vsに対する傾きAの関係は、図9に示すように下記の式(3)で表すことができる。
A=1/2.0×Vs=0.5×Vs …(3)
【0038】
そこで、ガス警報器10の製造工程において、製造者は、ガスセンサ1に対して供給する駆動電圧Vdを例えば2.0Vに設定し、そのときのエアベースにおけるセンサ出力Vsのデータを測定し、設定器などを用いて格納手段としてRAM33などに格納する。これにより、RAM33内には所定の駆動電圧Vd=2.0Vに対するエアベース時のガスセンサ1のセンサ出力Vsのデータが格納される。例えば、センサ素子Rs=10Ω、レファ素子Rr=7Ωのときは、センサ出力Vsとして−0.176Vが測定される。
【0039】
上記センサ出力Vsのデータが格納されると、CPU31は、関係式算出手段として働き、格納されたセンサ出力Vs=−0.176Vを対応する駆動電圧V=2.0Vで除した値(−0.176V/2.0V)=−0.088を駆動電圧Vdに対するセンサ出力Vsを示す1次関数式であるセンサ出力ラインL2の傾きとして求める。さらに、求めたセンサ出力ラインL2の1次関数式Vs=−0.088×Vdに基準警報値である0.25Vを加算した値を警報値ラインL1の1次関数式Vw=−0.088×Vd+0.25として設定する。
【0040】
上述したガス警報器10を出荷して、家庭内に設置した後に電源を投入すると、CPU31は、第1実施形態とほぼ同等の動作を開始する。なお、CPU31は、ステップS3では、ステップS2で取り込んだ駆動電圧Vdを上述した求めた警報値ラインL1の1次関数式Vw=−0.088×Vd+0.25に代入して求めた警報値Vkとして設定する。
【0041】
上述したガス警報器10によれば、CPU31が、駆動電圧検出回路20により検出された駆動電圧Vdに応じて警報値Vwを設定するので、センサ素子Rsとレファ素子Rrとの抵抗値が異なっているときにガスセンサ1に供給される駆動電圧Vdが変動しても図6に示すように警報濃度(%)が変動しない。
【0042】
また、上述したガス警報器10によれば、製造時に駆動電圧Vd=2.0Vに対するセンサ出力Vsを測定するだけでよく、第1実施形態のように駆動電圧Vdを変化させて、複数の駆動電圧Vdに対するエアベース時のガスセンサ1のセンサ出力Vsを測定する必要がないので、製造コストを抑えることができる。
【0043】
なお、上述した実施形態では、ブリッジ回路Bをセンサ素子Rs及びレファ素子Rrと、固定抵抗R1及びR2で構成していたが、本発明はこれに限ったものではない。例えば、図16に示すように、可変抵抗VRを用いても良い。
【0044】
また、上述した実施形態では、ガスセンサ1として接触燃焼式のものを用いていたが、本発明はこれに限ったものではない。ガスセンサ1としては駆動電圧Vdの変動に対してセンサ出力Vsが変動するものであれば半導体式でも限界電流式でも適用することができる。
【0045】
なお、上述した第1及び第2実施形態では、警報値Vwを設定するためだけに駆動電圧Vdを検出していたが、本発明はこれに限ったものではない。例えば、駆動電圧Vdに上限しきい値、下限しきい値を設けて、CPU31が、異常検出手段として働き、駆動電圧Vdが上限しきい値を超えたり、下限しきい値を下回ったときに、電圧源2の故障(異常)を検出するようにしてもよい。例えば、図1に示すように電源トランスTの1次側電圧を直接変圧してガスセンサ1に交流電圧を印加するタイプのガス警報器10ではトランスTの故障(例えばトランス巻線の断線やショート)などの異常を検出することができる。また、AC90V以下やAC110V異常で使用された場合(例えば誤って国外で使用された場合)、駆動電圧Vdの異常として捕らえ、異常検出することができる。
【0046】
また、前述した実施形態は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【符号の説明】
【0047】
1 ガスセンサ
2 電圧源(電源手段)
20 駆動電圧検出回路(駆動電圧検出手段)
31 CPU(警報発生手段、警報値設定手段、関係式算出手段)
33 RAM(格納手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出対象ガスのガス濃度に応じたセンサ出力を出力するガスセンサと、前記ガスセンサに駆動電圧を供給して前記ガスセンサを駆動させる電源手段と、前記ガスセンサから出力されたセンサ出力が警報値以上のときに警報を発生する警報発生手段と、を備えたガス警報器において、
前記電源手段により供給される前記駆動電圧を検出する駆動電圧検出手段と、
前記駆動電圧検出手段により検出された前記駆動電圧に応じて前記警報値を設定する警報値設定手段と、
をさらに備えたことを特徴とするガス警報器。
【請求項2】
予め測定した複数の大きさの駆動電圧に対するエアベース時の前記ガスセンサのセンサ出力が格納された格納手段をさらに備え、
前記格納手段に格納された複数のセンサ出力に基づいて、前記駆動電圧に対するエアベース時のセンサ出力に基準警報値を加算した警報値を示す1次関数式を算出する関係式算出手段と、を備え、
前記警報値設定手段が、前記駆動電圧検出手段により検出された駆動電圧を前記関係式算出手段により算出された1次関数式に代入した値を警報値として設定する
ことを特徴とする請求項1に記載のガス警報器。
【請求項3】
予め測定した所定の駆動電圧に対するエアベース時の前記ガスセンサのセンサ出力のデータが格納された格納手段と、
前記格納手段に格納されたセンサ出力を前記所定の駆動電圧で除した値を傾きとした前記駆動電圧に対するエアベース時のセンサ出力に基準警報値を加算した警報値を示す1次関数式を算出する関係式算出手段と、を備え、
前記警報値設定手段が、前記駆動電圧検出手段により検出された駆動電圧を前記関係式算出手段により算出された1次関数式に代入した値を警報値として設定する
ことを特徴とする請求項1に記載のガス警報器。
【請求項4】
前記駆動電圧検出手段により検出された駆動電圧に基づいて前記電源手段の異常を検出する異常検出手段を
さらに備えたことを特徴とする請求項1〜3何れか1項に記載のガス警報器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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