説明

ガス警報器

【課題】コストダウン及び小型化を図ると共に警報精度の向上を図ったガス警報器を提供する。
【解決手段】ガスセンサ2が、検出対象ガスのガス濃度に応じた大きさの交流信号をセンサ出力Vsとして出力する。A/D変換器74が、センサ出力Vsをサンプリングしてデジタル値に変換する。μCOM7内のCPU71が、A/D変換器74によりサンプリングされたセンサ出力Vsの振幅を求めて、求めた振幅が警報値以上のときに警報を発生する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス警報器に係り、特に、検出対象ガスのガス濃度に応じた大きさの交流信号をセンサ出力として出力するガスセンサを備えたガス警報器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
上述したガス警報器として、例えば図6に示されたようなものが知られている(例えば特許文献1)。同図に示すように、ガス警報器1は、ガスセンサ2と、商用交流電源3と、トランス4と、警報判定回路5と、警報ブザー6と、を備えている。上記ガスセンサ2は、ブリッジ回路21と、カップリングコンデンサC1と、差動増幅器22と、カップリングコンデンサC2と、整流・平滑回路23と、から構成されている。そして、上記ブリッジ回路21は、センサ素子Rs、レファ素子Rr、固定抵抗R1、R2及び可変抵抗RVを有している。
【0003】
上記センサ素子Rsは、検出対象ガスとの燃焼を促進する触媒(例えばパラジウム(Pd))を担持した担体(例えばアルミナ(Al23))から成る触媒担体21Aと、この触媒担体21Aに覆われた白金ヒータ21Bと、から構成されている。上記レファ素子Rrは、検出対象ガスに対して不感となる担体21Cと、この担体21Cに覆われた白金ヒータ21Dと、から構成されている。
【0004】
上記センサ素子Rsの白金ヒータ21Bと、レファ素子Rrの白金ヒータ21Dとは、検出対象ガスのない空気中(エアベース)ではほぼ等しい抵抗値になるように設けられている。上記固定抵抗R1及びR2も互いにほぼ等しい抵抗値になるように設けられている。そして、上述したセンサ素子Rs、レファ素子Rr及び固定抵抗R1、R2は、後述する可変抵抗RVと共にブリッジ接続されている。
【0005】
上記ブリッジ回路21には、トランス4によって降圧された商用交流電源3からの交流電圧Vdが供給されている。上記可変抵抗RVは、固定抵抗R1及び固定抵抗R2の間に接続されている。可変抵抗RVは、エアベースにおいてブリッジ回路21に交流電圧が供給されたときにセンサ素子Rs及びレファ素子Rr間の接続点と、可変抵抗RVの中点と、の間に生じるセンサ出力Vsが小さくなるように調整されている。
【0006】
上述したセンサ素子Rs及びレファ素子Rrが同一の温度特性であれば、エアベースではブリッジ回路21が完全に平衡状態となり、ブリッジ回路21に交流電圧が供給されてもセンサ出力Vsは常に0である。しかしながら、センサ素子Rs及びレファ素子Rrは、上述したように異なる構造であるため、温度特性が若干異なる。よって、エアベースでのセンサ出力Vsは、微少な交流信号となる。
【0007】
これに対して、検出対象ガスを含む空気中では検出対象ガスとの燃焼熱によりセンサ素子Rsの温度が上昇し、これに伴ってセンサ素子Rsの白金ヒータ21Bの抵抗値が増加する。一方、レファ素子Rrは検出対象ガスと燃焼しないため、センサ素子Rsの温度より低くなる。このため、ブリッジ回路21の平衡が大きく崩れて、センサ出力Vsは、その振幅が大きくなる。
【0008】
上記カップリングコンデンサC1は、図7に示す交流波形のセンサ出力Vsを図8に示すように例えば2.5V(バイアス電圧)分、プラス側にバイアスするコンデンサである。なお、バイアス電圧は、5V電源を抵抗R3と抵抗R5とで分圧することにより与えられる。上記差動増幅器22は、上記バイアスされたセンサ出力を図9に示すように抵抗比(R6/R4)で増幅する。上記カップリングコンデンサC2は、抵抗R7を介してグランドに接続されている。カップリングコンデンサC2は、抵抗R3と抵抗R5でバイアスされた差動増幅器22からのセンサ出力Vsを図10に示すようにグランドレベルに落とすためのコンデンサである。
【0009】
上記整流・平滑回路23は、カップリングコンデンサC2により点がグランドに落とされたセンサ出力Vsを整流するダイオードDと、整流されたセンサ出力Vsを平滑するコンデンサC3と、から構成されている。よって、整流・平滑回路23は、図11に示すように、交流信号であるセンサ出力Vsを整流・平滑して直流電圧に変換して出力する。警報判定回路5は、整流・平滑されたセンサ出力Vsと警報値とを比較して、センサ出力Vsが警報値以上のときに警報ブザー6を用いて警報を発生する。
【0010】
上述した従来のガス警報器1では、交流信号のセンサ出力Vsを直流信号に変換している。このため、カップリングコンデンサC1、C2、バイアス電圧用の抵抗R3、R5、整流用のダイオードD、平滑用のコンデンサC3が必要であり、部品点数が多くなることが難点である。
【0011】
上述したカップリングコンデンサC1、C2及び平滑用のコンデンサC3は、長期使用すると容量抜けが発生することがある。また、整流用ダイオードDは、部品毎に順方向電圧にバラツキが生じたり、温度変化によって順方向電圧にバラツキが生じることがある。このため、上述した容量抜けや順方向電圧のバラツキに起因して警報判定回路5に供給されるセンサ出力Vsに変動が生じ、センサ出力Vsが警報値に達したときのガス濃度である警報濃度が部品毎にばらついたり、温度変化によってばらついたり、経年的に変化する、恐れがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2004−157914号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
そこで、本発明は、コストダウン及び小型化を図ると共に警報精度の向上を図ったガス警報器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するためになされた請求項1記載の発明は、検出対象ガスのガス濃度に応じた大きさの交流信号をセンサ出力として出力するガスセンサを備えたガス警報器において、前記センサ出力をサンプリングしてデジタル値に変換するアナログ/デジタル変換手段と、前記アナログ/デジタル変換手段によりサンプリングされたセンサ出力の振幅を求めるコンピュータと、前記求めた振幅が警報値以上のときに警報を発生する警報発生手段と、を備えたガス警報器に存する。
【0015】
請求項2記載の発明は、前記センサ出力を増幅する増幅器を備え、前記増幅器が、前記センサ出力のプラス電圧及びマイナス電圧のうち何れか一方のみを増幅するように設けられ、前記アナログ/デジタル変換手段が、前記増幅器により増幅されたセンサ出力をサンプリングするように設けられていることを特徴とする請求項1に記載のガス警報器に存する。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように請求項1記載の発明によれば、交流信号のセンサ出力をコンピュータに供給して、コンピュータによりセンサ出力の振幅を求めることにより、交流のセンサ出力を直流に変換する必要がなくなるため、整流・平滑回路や、整流平滑回路の前段に設けたカップリングコンデンサが不要となり、コストダウン及び小型化を図ると共に警報精度の向上を図ることができる。
【0017】
請求項2記載の発明によれば、センサ出力のプラス電圧及びマイナス電圧のうち何れか一方のみを増幅するように増幅器を設けることにより、センサ出力をバイアスするためのカップリングコンデンサやバイアス電圧を生成するための抵抗が不要となり、より一層、コストダウン及び小型化を図ると共に警報精度の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】第1実施形態における本発明のガス警報器を示す回路図である。
【図2】(A)は図1に示すガス警報器のC部の電圧波形を示すタイムチャートであり、(B)は(A)の拡大図である。
【図3】図1に示すガス警報器を構成するCPUの処理手順を示すフローチャートである。
【図4】第2実施形態における本発明のガス警報器を示す回路図である。
【図5】(A)は図4に示すガス警報器のC部の電圧波形を示すタイムチャートであり、(B)は(A)の拡大図である。
【図6】従来のガス警報器の一例を示す回路図である。
【図7】図6に示すガス警報器のA部の電圧波形を示すタイムチャートである。
【図8】図6に示すガス警報器のB部の電圧波形を示すタイムチャートである。
【図9】図6に示すガス警報器のC部の電圧波形を示すタイムチャートである。
【図10】図6に示すガス警報器のD部の電圧波形を示すタイムチャートである。
【図11】図6に示すガス警報器のE部の電圧波形を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
第1実施形態
以下、本発明の第1実施形態を図面に基づいて説明する。図1に示すように、ガス警報器1は、ガスセンサ2と、交流電圧源としての商用交流電源3と、トランス4と、コンピュータとしてのマイクロコンピュータ(μCOM)7と、警報ブザー6と、を備えている。上記ガスセンサ2は、ブリッジ回路21と、カップリングコンデンサC1と、増幅器としての差動増幅器22と、から構成されている。そして、上記ブリッジ回路21は、センサ抵抗としてのセンサ素子Rs、レファ素子Rr、固定抵抗R1、R2及び可変抵抗RVを有している。
【0020】
上記センサ素子Rsは、触媒担体21Aと、白金ヒータ21Bと、から構成されている。触媒担体21Aは、検出対象ガスとの燃焼を促進する触媒(例えばパラジウム(Pd))を担持した担体(例えばアルミナ(Al23))から成る。白金ヒータ21Bは、温度に応じて抵抗値が変化する測温抵抗体であり、上記触媒担体21Aに覆われている。上記レファ素子Rrは、担体21Cと、白金ヒータ21Dと、から構成されている。担体21Cは、検出対象ガスに対して不感となる上記担体のみで構成されている。白金ヒータ21Dは、温度に応じて抵抗値が変化する測温抵抗体であり、上記担体21Cに覆われている。
【0021】
上記センサ素子Rsの白金ヒータ21Bと、レファ素子Rrの白金ヒータ21Dとは、検出対象ガスのない空気中(エアベース)ではほぼ等しい抵抗値になるように設けられている。上記固定抵抗R1及びR2も互いにほぼ等しい抵抗値になるように設けられている。そして、上記センサ素子Rs及びレファ素子Rrは、固定抵抗R1、R2及び可変抵抗RVと共にブリッジ接続されている。
【0022】
上記レファ素子Rr及び固定抵抗R1の接続点と、センサ素子Rs及び固定抵抗R2の接続点と、の間には、トランス4によって降圧された商用交流電源3からの交流電圧Vdが供給されている。上記可変抵抗RVは、固定抵抗R1及び固定抵抗R2の間に接続されている。また、可変抵抗RVと、レファ素子Rr及びセンサ素子Rsの接続点と、の間に発生するセンサ出力Vsは、カップリングコンデンサC1を介して差動増幅器22の入力に接続されている。
【0023】
上記カップリングコンデンサC1の+側には、差動増幅器22の+入力端、−入力端及び抵抗R4を介してバイアス電圧Vb(=2.5V)が供給されている。バイアス電圧Vbは、5V電源を抵抗R3と抵抗R5とで分圧することにより生成されている。そして、カップリングコンデンサC1は、交流信号のセンサ出力Vs(図7)を図2に示すようにバイアス電圧Vb分、プラス側にバイアスする。上記差動増幅器22は、カップリングコンデンサC1によりバイアスされたセンサ出力Vsを増幅する。差動増幅器22によって増幅されたセンサ出力Vsは、μCOM7に供給される。
【0024】
上記μCOM7は、ガス警報器1全体の制御を司るコンピュータであり、差動増幅器22からのセンサ出力Vsの振幅が警報値以上になったときに後述する警報ブザー6を制御して警報を発生する。
【0025】
上記μCOM7は、プログラムに従って各種の処理を行う中央処理ユニット(CPU)71と、CPU71が行う処理のプログラムなどを格納した読み出し専用のメモリであるROM72と、CPU71での各種の処理過程で利用するワークエリア、各種データを格納するデータ格納エリアなどを有する読み出し書き込み自在のメモリであるRAM73と、アナログのセンサ出力VsをCPU71による処理が可能なデジタル値に変換するアナログ/デジタル変換手段としてのA/D変換器74と、を備えている。
【0026】
次に、上述した構成のガス警報器1の動作について説明する。まず、ガス警報器1に電源を投入すると、ブリッジ回路21にトランス4で降圧された交流電圧Vdが供給され、これに応じて差動増幅器22から図2に示すようなバイアス・増幅されたセンサ出力Vsが出力される。また、CPU71は、ガス警報器1の電源投入に応じて定期的に図3に示す警報判定処理を開始する。
【0027】
まず、CPU71は、A/D変換器74を制御して、所定時間毎に予め定めた回数m、上記差動増幅器22から出力されるセンサ出力Vsをサンプリングしてデジタル値に変換させる(ステップS1)。なお、所定時間は、商用交流電源3の周期よりも短い時間に設定されている。商用交流電源3の周期は0.02secである。そこで、本実施形態では、図2(B)に示すように所定時間を0.02secの1/200の0.1msecとしている。上記回数mは、所定時間×回数mが商用交流電源3の周期よりも長くなるように定められている。即ち、200回以上に定められている。このように所定時間及び回数を定めることにより、センサ出力Vsの1周期分を細かくサンプリングすることができる。
【0028】
次に、CPU71は、サンプリングしたセンサ出力Vsのピークをセンサ出力Vsの振幅として検出する(ステップS2)。次に、CPU71は、ステップS2で求めたセンサ出力Vsの振幅が警報値以上になったか否かを判断する(ステップS3)。センサ出力Vsの振幅が警報値以上のとき(ステップS3でY)、CPU71は、警報発生手段として働き、警報ブザー6を用いてガス漏れの旨を警報した後(ステップS4)、処理を終了する。
【0029】
上述したガス警報器1によれば、交流信号のセンサ出力VsをμCOM7に供給して、μCOM7によりセンサ出力Vsの振幅を求めることにより、交流のセンサ出力Vsを直流に変換する必要がなくなるため、図6に示す整流・平滑回路23や、カップリングコンデンサC2が不要となり、コストダウン及び小型化を図ると共に警報精度の向上を図ることができる。
【0030】
なお、上述した第1実施形態によれば、サンプリングしたセンサ出力Vsのピーク(最大値)をセンサ出力Vsの振幅として検出していたが、サンプリングしたセンサ出力の最小値の大きさをセンサ出力Vsの振幅として検出するようにしてもよい。
【0031】
第2実施形態
上述した第1実施形態では、差動増幅器22によりブリッジ回路21から出力されるセンサ出力Vsのプラス電圧及びマイナス電圧の両方を増幅していたが、本発明はこれに限ったものではない。例えば、図4に示すようにガス警報器1を構成して、差動増幅器22によりセンサ出力Vsのプラス電圧のみを増幅するようにしてもよい。同図に示すように、第1実施形態ではセンサ素子Rs及びレファ素子Rrの接続点はカップリングコンデンサC1を介して差動増幅器22の−入力端に接続されていたが、第2実施形態では、カップリングコンデンサC1を介さずに差動増幅器22の−入力端に接続されている。また、第1実施形態では、差動増幅器22の+入力端にはバイアス電圧Vdが供給されていたが、第2実施形態では、グランド電圧が供給されている。
【0032】
このように差動増幅器22を接続することにより、図5に示すように、差動増幅器22は、ブリッジ回路21から出力されるセンサ出力Vs(図7)がマイナス電圧のときのみセンサ出力Vsを増幅する(反転増幅)。差動増幅器22は、ブリッジ回路21から出力されるセンサ出力Vsがプラス電圧のときは0を出力する。この図5に示すセンサ出力VsはμCOM7に対して供給される。そして、第1実施形態と同様にμCOM7は、センサ出力Vsをサンプリングして振幅を求め、求めた振幅が警報値以上のときに警報を発生する。
【0033】
第2実施形態のガス警報器1によれば、センサ出力Vsのマイナス電圧のみを増幅するように差動増幅器22を設けることにより、センサ出力VsをバイアスするためのカップリングコンデンサC1やバイアス電圧を生成するための抵抗R3及びR5が不要となり、より一層、コストダウン及び小型化を図ると共に警報精度の向上を図ることができる。
【0034】
また、前述した実施形態は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【符号の説明】
【0035】
1 ガス警報器
2 ガスセンサ
Vs センサ出力
22 差動増幅器(増幅器)
7 μCOM(コンピュータ、警報発生手段)
71D A/D変換器(アナログ/デジタル変換手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出対象ガスのガス濃度に応じた大きさの交流信号をセンサ出力として出力するガスセンサを備えたガス警報器において、
前記センサ出力をサンプリングしてデジタル値に変換するアナログ/デジタル変換手段と、
前記アナログ/デジタル変換手段によりサンプリングされたセンサ出力の振幅を求めるコンピュータと、
前記求めた振幅が警報値以上のときに警報を発生する警報発生手段と、
を備えたガス警報器。
【請求項2】
前記センサ出力を増幅する増幅器を備え、
前記増幅器が、前記センサ出力のプラス電圧及びマイナス電圧のうち何れか一方のみを増幅するように設けられ、
前記アナログ/デジタル変換手段が、前記増幅器により増幅されたセンサ出力をサンプリングするように設けられている
ことを特徴とする請求項1に記載のガス警報器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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