説明

ガス警報器

【課題】演算増幅器の−入力とブリッジ回路との間のオープン故障と、演算増幅器の出力のオープン故障を検出することができるガス警報器を提供する。
【解決手段】OPアンプ3は、ブリッジ回路2の中点電位V1、V2の差分をセンサ出力VsとしてμCOM4に入力する。μCOM4は、センサ出力Vsに基づいてガス漏洩を検出する。また、帰還抵抗Rfの両端がμCOM4に接続されている。μCOM4は、OPアンプ3の両端電圧を帰還抵抗Rfに流れる演算電流Iとして検出し、検出したOPアンプ3の両端電圧が閾値以下のときにオープン故障を検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス警報器に係り、特に、ブリッジ回路を備えたガス警報器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
上述したガス警報器として、例えば図8に示されたものが知られている。上記ガス警報器1は、ブリッジ回路2と、演算増幅器としてのOPアンプ3と、このOPアンプ3の入力抵抗Rin及び帰還抵抗Rfと、マイクロコンピュータ(μCOM)4と、を備えている。上記ブリッジ回路2は、検知対象ガスと燃焼するセンサ素子Rsと、検知対象ガスと燃焼しない比較素子Rrと、第1固定抵抗としての固定抵抗R1と、第2固定抵抗としての固定抵抗R2と、がブリッジ接続されて構成されている。
【0003】
センサ素子Rsは、測温抵抗である白金コイルと、この白金コイルに塗布した検知対象ガスであるメタンガスとの接触燃焼を捕捉するパラジウム触媒が担持された担体としてのγアルミナと、で構成されている。比較素子Rrは、測温抵抗である白金コイルと、この白金コイルに塗布したメタンガスに対して不感となる材料であるγアルミナと、で構成されている。これらセンサ素子Rs及び比較素子Rrは、互いに同じ抵抗値になるように設けられている。
【0004】
上記OPアンプ3の−入力には、上記センサ素子Rsと比較素子Rrとの中点電位V1が入力抵抗Rinを介して入力され、OPアンプ3の+入力には、上記固定抵抗R1と固定抵抗R2との中点電位V2が入力されている。また、OPアンプ3の−入力と出力とは帰還抵抗Rfを介して接続されている。OPアンプ3は、入力されたセンサ素子Rsと比較素子Rrの中点電位V1と、固定抵抗R1と固定抵抗R2の中点電位V2と、の差である中点電位差を増幅してセンサ出力Vsとして出力して、抵抗R5を介してCPU4aに供給している。
【0005】
以上の構成によれば、メタンガスを含む空気中では可燃ガスとの燃焼熱によりセンサ素子Rsの温度が上昇し、これに伴ってセンサ素子Rsの抵抗値が増加する。一方、比較素子Rrはメタンガスと接触燃焼しないため、センサ素子Rsの温度より低くなる。このため、センサ素子Rsと比較素子Rrとの中点電位V1は、可燃ガスの濃度が高くなるに従って低くなる。一方、固定抵抗R1と固定抵抗R2との中点電位V2は可燃ガスの濃度に関係なく一定となるため、中点電位V1と中点電位V2との差であるセンサ出力Vsは、雰囲気温度によりセンサ素子Rsの抵抗値の変動分を相殺したメタンガスの濃度に応じた値となる。
【0006】
上記CPU4aは、上記センサ出力Vsが警報判定点以上の状態が例えば25秒継続したとき、または、上記センサ出力Vsが判定点(>警報判定点)以上の状態が例えば5秒継続したときにガス漏れを警報する。
【0007】
なお、上記警報判定点、判定点及び故障判定点は、出荷前の濃度調整工程において設定される。即ち、上記警報判定点は、図2に示すように、このエアベースにおけるセンサ出力Vsよりも第1所定値T1だけ高い値に設定される。また、上記判定点は、このエアベースにおけるセンサ出力Vsよりも第2所定値T2(>T1)だけ高い値に設定される。
【0008】
ところで、上記ガス警報器1は、ブリッジ回路2を構成するセンサ素子Rs、比較素子Rr、固定抵抗R1及び固定抵抗R2のばらつきや、駆動電圧E0のばらつきなどに起因して、製品毎にエアベースにおけるセンサ出力Vsがばらついてしまう。このため、出荷前にエアベースのセンサ出力Vsを求めて、エアベースのセンサ出力Vsが許容ばらつき範囲外のものは規格外として出荷しないようにしている。
【0009】
上記ガス警報器1においては、図2に示すように、エアベースにおけるセンサ出力VsがOPアンプ3の最大出力5Vの半分よりも少し下の2.145Vとなるようにブリッジ回路2を設計して、許容ばらつき範囲の下限値と、上限品に設定された判定点と、をOPアンプ3の出力範囲内(0V〜5V)に収めていた。
【0010】
しかしながら、上述した従来のガス警報器1では、図8中バツ印で示す入力抵抗Rinのオープン故障やOPアンプ3の出力ピンのオープン故障が発生すると、これを検出することができない、という問題があった。
【0011】
即ち、入力抵抗Rinのオープン故障(即ちOPアンプ3の−入力とブリッジ回路2との間のオープン故障)が発生すると、OPアンプ3の出力は中点電位V2に固定され、OPアンプ3の出力ピンのオープン故障が発生すると、μCOM4に入力される電圧は中点電位V1に固定される。この中点電位V1は、センサ素子Rs及び比較素子Rrが等しい値に設定されているため、2.1Vの駆動電圧E0の1/2である1.05Vとなる。中点電位V2は、例えば固定抵抗R1=470Ω、固定抵抗R2=510Ωに設定すると、1.093Vとなる。
【0012】
入力抵抗RinやOPアンプ3の出力ピンのオープン故障が発生するとμCOM4に入力された電圧は、上記中点電位V1もしくは中点電位V2に固定され、ガス雰囲気中でも上昇することはなく、上記警報判定点を越えることがないため、非常に危険な状況に陥る可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
そこで、本発明は、演算増幅器の−入力とブリッジ回路との間のオープン故障と、演算増幅器の出力のオープン故障を検出することができるガス警報器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上述した課題を解決するための請求項1記載の発明は、検知対象ガスと燃焼するセンサ素子、前記検知対象ガスと燃焼しない比較素子、第1固定抵抗及び第2固定抵抗がブリッジ接続されて構成されたブリッジ回路と、前記ブリッジ回路の2つの中点電位が入力された演算増幅器と、前記演算増幅器の入力と前記演算増幅器の出力との間に接続された帰還抵抗と、前記演算増幅器の出力に基づいてガス漏れを検出するガス漏れ検出手段と、を備えたガス警報器において、前記帰還抵抗に流れる電流を検出する電流検出手段と、前記電流検出手段により検出された電流に基づいて故障を検出する故障検出手段と、をさらに備えたことを特徴とするガス警報器に存する。
【0015】
請求項2記載の発明は、前記ガス漏れ検出手段が、マイクロコンピュータから構成され、前記マイクロコンピュータが、前記電流検出手段として機能し、前記帰還抵抗の片側の電圧と他端側の電圧との差分を前記帰還抵抗に流れる電流として演算すると共に、前記故障検出手段として機能し、前記演算された帰還抵抗に流れる電流に基づいて故障を検出する演算を行うことを特徴とする請求項1に記載のガス警報器に存する。
【0016】
請求項3記載の発明は、前記ガス漏れ検出手段が、マイクロコンピュータから構成され、前記電流検出手段が、前記帰還抵抗の両端が入力され、前記帰還抵抗の両端電圧を前記帰還抵抗に流れる電流として出力する差動増幅回路から構成され、前記マイクロコンピュータが、前記故障検出手段として機能し、前記差動増幅回路からの出力に基づいて故障を検出する演算を行うことを特徴とする請求項1に記載のガス警報器に存する。
【0017】
請求項4記載の発明は、前記電流検出手段が、前記帰還抵抗の両端が接続され、前記帰還抵抗の両端電圧を前記帰還抵抗に流れる電流として出力する差動増幅回路から構成され、前記故障検出手段が、前記差動増幅回路の出力と閾電圧とが入力され、これら入力された前記差動増幅回路の出力と前記閾電圧との比較結果を出力するコンパレータ回路から構成されていることを特徴とする請求項1に記載のガス警報器に存する。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように請求項1記載の発明によれば、演算増幅器の−入力とブリッジ回路との間のオープン故障と、演算増幅器の出力のオープン故障が発生すると演算増幅器の帰還抵抗に流れる電流がほぼ0になることに着目し、電流検出手段が、演算増幅器の帰還抵抗に流れる電流を検出し、故障検出手段が、電流検出手段により検出された電流に基づいて故障を検出する。従って、演算増幅器の−入力とブリッジ回路との間のオープン故障と、演算増幅器の出力のオープン故障を検出することができる。
【0019】
請求項2記載の発明によれば、ガス漏れ検出手段を構成するマイクロコンピュータを流用して、電流検出手段及び故障検出手段として機能させることにより、帰還抵抗の両端をマイクロコンピュータに接続するだけでよく、部品点数の削減を図ることができる。
【0020】
請求項3記載の発明によれば、ガス漏れ検出手段を構成するマイクロコンピュータを流用して、故障検出手段として機能させることにより、部品点数を削減できる。しかも、電流検出手段を差動増幅回路で構成し、その出力をマイクロコンピュータに入力することにより、マイクロコンピュータのA/D入力端子を1つ増やすだけで、故障検出を行うことができる。
【0021】
請求項4記載の発明によれば、電流検出手段を差動増幅回路から構成し、故障検出手段をコンパレータ回路から構成することにより、簡単な構成で故障検出を行うことができ、A/D入力端子を持たない安価なマイクロコンピュータを選定し、コストダウンを図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】第1実施形態における本発明のガス警報器を示す回路図である。
【図2】本発明におけるガス警報器の判定点、警報判定点及びエアベースにおけるセンサ出力の関係を示すグラフである。
【図3】正常時における中点電位V1、V2、演算電流I、センサ出力Vs及び帰還抵抗Rfの両端電圧を示す説明図である。
【図4】入力抵抗Rinのオープン故障時における中点電位V1、V2、演算電流I、センサ出力Vs及び帰還抵抗Rfの両端電圧を示す説明図である。
【図5】帰還抵抗Rfのオープン故障時における中点電位V1、V2、演算電流I、センサ出力Vs及び帰還抵抗Rfの両端電圧を示す説明図である。
【図6】第2実施形態における本発明のガス警報器の要部を示す回路図である。
【図7】第3実施形態における本発明のガス警報器の要部を示す回路図である。
【図8】従来のガス警報器の一例を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
第1実施形態
以下、第1実施形態における本発明のガス警報器を図1及び図2に基づいて説明する。上記ガス警報器1は、ブリッジ回路2と、演算増幅器としてのOPアンプ3と、このOPアンプ3の入力抵抗Rin及び帰還抵抗Rfと、μCOM4と、を備えている。上記ブリッジ回路2は、検知対象ガスと接触燃焼するセンサ素子Rsと、検知対象ガスと接触燃焼しない比較素子Rrと、第1固定抵抗としての固定抵抗R1と、第2固定抵抗としての固定抵抗R2と、がブリッジ接続されて構成されている。
【0024】
センサ素子Rsは、測温抵抗である白金コイルと、この白金コイルに塗布され、パラジウム触媒が担持された担体としてのγアルミナと、で構成されている。上記パラジウム触媒は、検知対象ガスであるメタンガスとの接触燃焼を促進する触媒である。比較素子Rrは、測温抵抗である白金コイルと、この白金コイルに塗布され、メタンガスに対して不感となる材料であるγアルミナと、で構成されている。
【0025】
これらセンサ素子Rs及び比較素子Rrは、互いに直列接続され、同じ抵抗値になるように設けられている。上記固定抵抗R1及び固定抵抗R2は、互いに直列接続され、上記センサ素子Rs及び比較素子Rrに対して並列に接続されている。そして、上記センサ素子Rs及び固定抵抗R1間の接続点と、比較素子Rr及び固定抵抗R2間の接続点と、の間に2.1Vの駆動電圧E0が供給されている。
【0026】
上記OPアンプ3は、5Vの電源電圧の供給を受けて動作し、その−入力には上記センサ素子Rsと比較素子Rrとの中点電位V1が入力抵抗Rinを介して入力され、その+入力には固定抵抗R1と固定抵抗R2との中点電位V2が入力されている。このOPアンプ3には、その−入力と出力との間に帰還抵抗Rfが接続されている。
【0027】
OPアンプ3は、上記中点電位V1と中点電位V2との差である中点電位差を増幅してガス濃度に応じたセンサ出力Vsとして出力する。このOPアンプ3からのセンサ出力Vsは、抵抗R5を介してμCOM4のA/D入力端子AD1に供給される。また、上記帰還抵抗Rfの片側の電圧VRf1がμCOM4のA/D入力端子AD2に接続され、他端側の電圧VRf2がμCOM4のA/D入力端子AD3に接続されている。
【0028】
上記μCOM4は、プログラムに従って各種の処理を行う中央処理ユニット(CPU)4aと、CPU4aが行う処理プログラムなどが格納されたROM4bと、CPU4aでの各種の処理過程で使用するワークエリア、各種データを格納するデータ格納エリアなど有する読み出し書き込み自在のメモリであるRAM4cと、A/D入力端子AD1〜AD3に入力されたアナログの電圧をデジタルに変換するA/D変換器4dと、が内蔵されていて、これらがバスラインによって接続されている。
【0029】
まず、上記CPU4aは、電源オンに応じて、ガス漏れ検出手段として機能し、A/D入力端子AD1に入力されたセンサ出力Vsを上記A/D変換器4dによってデジタル値に変換し、その変換されたセンサ出力Vsが警報判定点以上の状態が例えば25秒継続したとき、または、センサ出力Vsが判定点(>警報判定点)以上の状態が例えば5秒継続したときにガス漏れを検出し、図示しないブザーを鳴動させて警報発生する警報発生処理を行う(図2参照)。
【0030】
CPU4aは、上記警報発生処理に続いて、入力抵抗Rinのオープン故障及びOPアンプ3の出力ピンのオープン故障を検出するオープン故障検出処理を行う。このオープン故障検出処理の原理についてまず説明する。正常時には、帰還抵抗RfにはOPアンプ3の出力から−入力に向かって演算電流Iが流れる。これに対して、上記オープン故障が発生すると、演算電流Iが遮断され0となる。
【0031】
そこで、オープン故障検出処理においてCPU4aは、まず電流検出手段として機能し、A/D入力端子AD2、AD3に入力された帰還抵抗Rfの片側の電圧VRf1及び他端側の電圧VRf2を上記A/D変換器4dによってそれぞれデジタル値に変換し、その変換された電圧VRf1及びVRf2の差分、即ち、帰還抵抗Rfの両端電圧を演算電流Iとして求める。次に、CPU4aは、故障検出手段として機能し、求めた帰還抵抗Rfの両端電圧が閾値以下のときにオープン故障を検出し、例えば図示しないLEDを点滅させてその旨を報知する。
【0032】
次に、上記閾値の設定について考えて見る。今、帰還抵抗Rf=270kΩ、入力抵抗Rin=11kΩ、固定抵抗R1=470Ω、固定抵抗R2=510Ωとしたときの帰還抵抗Rfに流れる演算電流Iについて考えて見る。このときエアベースにおいては、中点電位V1=1.05V(=2.1V/2)、中点電位V2=1.093V{=2.1V×510Ω/(470Ω+510Ω)}となり、これらは正常時でもオープン故障時でも変わらない。
【0033】
また、正常時は、OPアンプ3のセンサ出力Vsは下記の式(1)で求められる。
Vs={V2+Rf/Rin(V2−V1)}
={1.093V+270kΩ/11kΩ(1.093V−1.05V)
=2.145V …(1)
【0034】
よって、正常時は、図3に示すように、帰還抵抗Rfの片側の電圧VRf1は、センサ出力Vs=2.145Vと等しくなり、帰還抵抗Rfの他端側の電圧VRf2は、中点電位V2と等しくなるため、電圧帰還抵抗Rfの両端電圧は1.052V(=2.145V−1.093V)となり、演算電流I=3.90μA(=1.052V/270kΩ)となる。
【0035】
これに対して、入力抵抗Rinのオープン故障が発生したときは、図4に示すように、演算電流Iが遮断され0となるため、帰還抵抗Rfの電圧VRf1及びVRf2は、中点電位V2=1.093Vと等しくなり、帰還抵抗Rfの両端電圧は0となる。
【0036】
また、OPアンプ3の出力のオープン故障が発生したときは、図5に示すように、演算電流Iが遮断され0となるため、帰還抵抗Rfの電圧VRf1及びVRf2は、中点電位V1=1.05Vと等しくなり、帰還抵抗Rfの両端電圧は0となる。
【0037】
即ち、正常時は、帰還抵抗Rfの両端電圧が1.052V、オープン故障時は、帰還抵抗Rfの両端電圧が0Vとなるため、閾値としてはこの間の0.2Vに設定されている。そして、CPU4aは、求めた帰還抵抗Rfの両端電圧が閾値=0.2V以下のときにオープン故障を検出する。
【0038】
上述したガス警報器1によれば、入力抵抗Rin(OPアンプ3の−入力とブリッジ回路2との間)のオープン故障と、OPアンプ3の出力のオープン故障が発生するとOPアンプ3の帰還抵抗Rfに流れる電流がほぼ0になることに着目し、CPU4aが、帰還抵抗Rfの両端電圧を演算電流Iとして検出し、検出された帰還抵抗Rfの両端電圧が閾値以下のときに故障を検出する。従って、入力抵抗Rinのオープン故障と、OPアンプ3の出力のオープン故障を検出することができる。
【0039】
また、上述したガス警報器1によれば、ガス漏れ検出手段として機能するμCOM4内のCPU4aを流用して、電流検出手段及び故障検出手段として機能させることにより、帰還抵抗Rfの両端をμCOM4に接続するだけでよく、部品点数の削減を図ることができる。
【0040】
第2実施形態
次に、第2実施形態における本発明のガス警報器を図6を参照して以下説明する。第1実施形態と第2実施形態とで大きく異なる点は、電流検出手段の構成である。第1実施形態では、帰還抵抗Rfの両端をμCOM4のA/D入力端子AD2、AD3にそれぞれ接続して、CPU4aの演算処理によって演算電流Iを求めていたが、第2実施形態では、帰還抵抗Rfの両端とμCOM4との接続をやめて、差動増幅回路7を用いて演算電流Iを検出している。
【0041】
即ち、第2実施形態では、図6に示すように、ガス警報器1は、帰還抵抗Rfの片側の電圧VRf1及び他端側の電圧VRf2が+入力にそれぞれ入力されたOPアンプ5、6と、OPアンプ5、6の出力がそれぞれ入力された差動増幅回路7と、をさらに備えている。
【0042】
OPアンプ5、6は、−入力と出力とを接続したボルテージホロワを構成し、+入力に供給された電圧VRf1、VRf2をそれぞれ出力する。上記差動増幅回路7は、OPアンプ7aと、抵抗R71〜R74と、を備えている。上記OPアンプ7aは、その−入力が抵抗R71を介してOPアンプ6の出力に接続されると共に抵抗R72を介してOPアンプ7aの出力に接続されている。また、OPアンプ7aは、その+入力が抵抗R73を介してOPアンプ5の出力に接続されると共に抵抗R74を介してグランドに接続されている。
【0043】
上述した差動増幅回路7は、OPアンプ7aの出力から電圧VRf1、VRf2の差分、即ち、帰還抵抗Rfの両端電圧を増幅して出力する。そのOPアンプ7aの出力は、μCOM4のA/D入力端子AD2に接続されている。本実施形態では、正常時にはOPアンプ7aの出力が5V(=OPアンプ7aの電源電圧)、オープン故障時には約0Vとなるように差動増幅回路7の増幅率(即ち抵抗R71〜R74の値)が決められている。
【0044】
詳しく説明すると、図3〜図5について上述した第1実施形態で説明したように、例えば、帰還抵抗Rf=270kΩ、入力抵抗Rin=11kΩ、固定抵抗R1=470Ω、固定抵抗R2=510Ωとした場合、正常時には帰還抵抗Rfの両端電圧は1.052V、オープン故障時には帰還抵抗Rfの両端電圧は0Vとなる。この正常時の帰還抵抗Rfの両端電圧に差動増幅回路7の増幅率を掛けた値が、OPアンプ7aの電源電圧を越えるように差動増幅回路7の増幅率を定めている。例えば、差動増幅回路7の増幅率を10倍(即ち、10×R71=10×R73=R72=R74)に設定している。このように設定すると、OPアンプ7aの出力は、正常時には飽和して5V(=OPアンプ7aの電源電圧)となり、オープン故障時には約0Vとなる。
【0045】
μCOM4内のCPU4aは、A/D入力端子AD2に入力されたOPアンプ5の出力を上記A/D変換器4dによってそれぞれデジタル値に変換し、その変換されたOPアンプ5の出力が閾値以下のときにオープン故障を検出し、例えば図示しないLEDを点滅させてその旨を報知する。
【0046】
上述したガス警報器1によれば、ガス漏れ検出手段として機能するμCOM4内のCPU4aを流用して、故障検出手段として機能させることにより、部品点数を削減できる。しかも、電流検出手段を差動増幅回路7で構成し、その出力をμCOM4に入力することにより、μCOM4のA/D入力端子AD2を1つ増やすだけで、オープン故障検出機能を追加できる。
【0047】
第3実施形態
次に、第3実施形態における本発明のガス警報器を図7を参照して以下説明する。なお、同図において、上述した図6について第2実施形態で説明した部分と同等の部分については同一符号を付してその詳細な説明を省略する。第2実施形態と第3実施形態とで大きく異なる点は、故障検出手段の構成である。第2実施形態では、OPアンプ7aの出力をμCOM4のA/D入力端子AD2にそれぞれ接続して、CPU4aの演算処理によってオープン故障を検出していたが、第3実施形態では、OPアンプ7aの出力とμCOM4との接続をやめて、コンパレータ回路8を用いてオープン故障の検出を行っている。
【0048】
即ち、第3実施形態では、図7に示すように、ガス警報器1は、帰還抵抗Rfの片側の電圧VRf1及び他端側の電圧VRf2が+入力にそれぞれ入力されたOPアンプ5、6と、OPアンプ5、6の出力がそれぞれ入力された差動増幅回路7と、コンパレータ回路8と、をさらに備えている。OPアンプ5、6及び差動増幅回路7については、上述した第2実施形態と同等であるため、ここでは詳細な説明を省略する。
【0049】
このコンパレータ回路8は、OPアンプ8aと、抵抗R81、R82と、を備えている。上記OPアンプ8aは、その−入力にOPアンプ7aの出力が供給され、その+入力に電源電圧5Vを抵抗R81及びR82で分圧して得た閾電圧Vrefが供給されている。コンパレータ回路8は、OPアンプ7aの出力が閾電圧Vref以上のときはLoレベル(0V)、閾電圧Vrefよりも低いときはHiレベル(5V)を出力する。本実施形態では、閾電圧Vref=0.45Vに設定している(R81=10×R82)。
【0050】
以上の構成によれば、正常時は、OPアンプ7aの出力は5Vとなり、閾電圧Vref以上となるため、コンパレータ回路8のOPアンプ8aからはLoレベルが出力される。一方、オープン故障時は、OPアンプ7aの出力は0Vとなり、閾電圧Vrefよりも小さくなるため、コンパレータ回路8のOPアンプ8aからはHiレベルが出力される。
【0051】
このコンパレータ回路8の出力を例えばμCOM4に接続して、μCOM4内のCPU4aは、コンパレータ回路8の出力がHiレベルのときにLEDなどを点滅させてその旨を報知させてもよい。また、コンパレータ回路8の出力を直接LEDに供給してLEDを点灯させてその旨を報知させてもよい。
【0052】
上述したガス警報器1によれば、電流検出手段を差動増幅回路7から構成し、故障検出手段をコンパレータ回路8から構成することにより、簡単な構成で電流検出、故障検出を行うことができ、A/D入力端子を持たない安価なマイクロコンピュータを選定し、コストダウンを図ることができる。
【0053】
なお、上述した帰還抵抗Rf、入力抵抗Rin、固定抵抗R1及び固定抵抗R2の値は一例であり、本発明はこれに限定されるものではない。
【0054】
また、上述した実施形態では、センサ素子Rsと比較素子Rrとの接続点を中点電圧V1とし、固定抵抗R1と固定抵抗R2との接続点を中点電圧V2としていたが、本発明はこれに限ったものではない。例えば、センサ素子Rsと比較素子Rrとの接続点と、固定抵抗R1、R2の接続点と、の間に駆動電圧E0を印加し、センサ素子Rsと固定抵抗R1との接続点を中点電位V1とし、比較素子Rrと固定抵抗R2との接続点を中点電位V2としてもよい。
【0055】
また、前述した実施形態は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【符号の説明】
【0056】
1 ガス警報器
2 ブリッジ回路
3 OPアンプ(演算増幅器)
4 μCOM(ガス漏れ検出手段、電流検出手段、故障検出手段)
7 差動増幅回路
8 コンパレータ回路
R1 固定抵抗
R2 固定抵抗
Rf 帰還抵抗
Rs センサ素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検知対象ガスと燃焼するセンサ素子、前記検知対象ガスと燃焼しない比較素子、第1固定抵抗及び第2固定抵抗がブリッジ接続されて構成されたブリッジ回路と、前記ブリッジ回路の2つの中点電位が入力された演算増幅器と、前記演算増幅器の入力と前記演算増幅器の出力との間に接続された帰還抵抗と、前記演算増幅器の出力に基づいてガス漏れを検出するガス漏れ検出手段と、を備えたガス警報器において、
前記帰還抵抗に流れる電流を検出する電流検出手段と、
前記電流検出手段により検出された電流に基づいて故障を検出する故障検出手段と、
をさらに備えたことを特徴とするガス警報器。
【請求項2】
前記ガス漏れ検出手段が、マイクロコンピュータから構成され、
前記マイクロコンピュータが、前記電流検出手段として機能し、前記帰還抵抗の片側の電圧と他端側の電圧との差分を前記帰還抵抗に流れる電流として演算すると共に、前記故障検出手段として機能し、前記演算された帰還抵抗に流れる電流に基づいて故障を検出する演算を行う
ことを特徴とする請求項1に記載のガス警報器。
【請求項3】
前記ガス漏れ検出手段が、マイクロコンピュータから構成され、
前記電流検出手段が、前記帰還抵抗の両端が入力され、前記帰還抵抗の両端電圧を前記帰還抵抗に流れる電流として出力する差動増幅回路から構成され、
前記マイクロコンピュータが、前記故障検出手段として機能し、前記差動増幅回路からの出力に基づいて故障を検出する演算を行う
ことを特徴とする請求項1に記載のガス警報器。
【請求項4】
前記電流検出手段が、前記帰還抵抗の両端が接続され、前記帰還抵抗の両端電圧を前記帰還抵抗に流れる電流として出力する差動増幅回路から構成され、
前記故障検出手段が、前記差動増幅回路の出力と閾電圧とが入力され、これら入力された前記差動増幅回路の出力と前記閾電圧との比較結果を出力するコンパレータ回路から構成されている
ことを特徴とする請求項1に記載のガス警報器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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