説明

ガティガムを含有する脂溶性活性成分の組成物

本発明は、植物ガムおよび1つまたは複数の脂溶性活性成分を含有する組成物に関し、この組成物は、乾燥物質における組成物全体を基準として40重量%未満の油を含む。これらの組成物は、食料飲料、動物飼料、化粧品または医薬組成物を強化、増強および/または着色するために使用することができる。また本発明は、このような組成物の調製にも言及する。さらに、本発明は、組成物を飲料の成分と混合することによる飲料の製造方法に言及する。また本発明は、この方法によって得られる飲料にも言及する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、植物ガムおよび1つまたは複数の脂溶性活性成分を含有する組成物に関し、この組成物は、乾燥物質における組成物全体を基準として40重量%未満の油を含む。これらの組成物は、食料飲料、動物飼料、化粧品または医薬組成物を強化、増強および/または着色するために使用することができる。また本発明は、このような組成物の調製にも言及する。さらに、本発明は、組成物を飲料の成分と混合することによる飲料の製造方法に言及する。また本発明は、この方法によって得られる飲料にも言及する。
【0002】
脂溶性活性成分、例えばβ−カロテンを含有する、食料、飲料、動物飼料、化粧品または医薬組成物を強化、増強または着色するための組成物は、当該技術分野において既知である。β−カロテンは、その強烈な、そして上記の用途のために非常に満足なオレンジ色のために、好ましい着色剤化合物である。最終組成物は通常飲料などの水性組成物なので、脂肪(油)相が製品から分離する(対応する製品を受け入れ難いものにし得る)のを回避するために、強化、増強および/または着色のための組成物には、付加的な化合物が添加されなければならない。
【0003】
従って、脂溶性活性成分は、最終水性組成物中の相分離を防止するためにデンプンまたは魚ゼラチンなどの補助化合物と併用されることが多い。しかしながら、これらの補助化合物は、最終製品の色特性および栄養特性に悪影響を与えることが多い。そのため、組成物の味、乳化、エマルジョン安定性、膜形成能力および/または色に関して非常に良好な特性を有する改善された補助化合物を含有する脂溶性活性成分の新しい組成物を開発することが所望される。
【0004】
別名インディアンガムまたはアクスルウッド(Axlewood)としても知られているガティガムは、シクンシ(Combretaceae)科に属する樹木であるアノゲシアス・ラティフォリア(Anogessias latifolia)からの滲出液として得られる。これは、L−アラビノース、D−ガラクトース、D−マンノース、D−キシロース、およびD−グルコリン酸(glucorinic acid)を有する複合多糖類である。ガティガムは、5%までまたはそれ以上のタンパク質を含有し得る。これは、繊維源、膜形成剤、接着剤などとして、風味剤または油の封入のために使用される。
【0005】
米国特許出願公開第2003/0021874A1号明細書には、非ミルク系酸性飲料を安定化するために使用される組成物が開示されている。この特許出願に記載される全ての組成物の柱は、ペクチンまたはアルギナートのいずれかからなる特定の量の安定剤系に存する。組成物が混濁剤(clouding agent)も含有する場合、ガムはさらに安定剤として使用され得る。この特許出願(米国特許出願公開第2003/0021874A1号明細書)とは対照的に、本発明に従う組成物はペクチンまたはアルギナートのような安定剤を含有しない。
【0006】
米国特許出願公開第2005/0287221A1号明細書には、ガムおよび/またはガム樹脂および活性物質を有する組成物ならびにその乾燥形態への転化が開示されている。そこに開示されるように、開示される活性ビードレットは、封入された医薬品からなる。これらの生物活性物質は、哺乳類の小腸への経口送達用である。本発明に従う組成物は、米国特許出願公開第2005/0287221A1号明細書で開示される組成物とは著しく異なる。
【0007】
飲料などの製品の着色では、飲料の光学的透明度を保つのが望ましいことも多い。補給のためのカロテノイド、例えばβ−カロテンなどの脂溶性着色剤は多くの形態で利用可能であるが、飲料に添加すると目に見える濁度を増大させる傾向があるであろう。液体の上部におけるリンギング(ringing)、すなわち分離した脂溶性β−カロテン層の形成も、多数の既知のβ−カロテン製剤の問題である。目に見える濁度またはリンギングを増大させることなく脂溶性物質を飲料に添加する1つの手段は、物質をリポソーム内に封入することである。しかしながら、これは費用のかかる方法であり、リポソーム中の物質の濃度は低い傾向にある。
【0008】
従って、元気回復に役立つ量または栄養補給的な量で飲料に添加することができる、カロテノイドなどの脂溶性着色剤の満足できる組成物は、飲料の光学的透明度に影響を与えてはならず、そして添加される飲料の知覚特性を変えてはならず、さらにリンギングを生じてはならない。
【0009】
そのため、上記の問題を示さない、すなわち分離現象を示さない、食料、飲料、動物飼料、化粧品または医薬組成物を強化、増強および/または着色するための脂溶性活性成分の組成物が依然として必要とされている。脂溶性活性成分が着色剤である場合、組成物はさらに、得られる製品の色強度および色安定性の増大を提供しなければならない。
【0010】
従って、本発明の目的は、上記のような所望の特性、例えば、光学的透明度およびエマルジョン安定性に関して非常に良好な特性、そして/あるいは改善された色強度および色安定性(適用可能であれば)を有する脂溶性活性成分の組成物を提供することであった。また、例えば異なる乳化技術を用いることによって、脂溶性活性成分の組成物を調製するための方法を改善することも本発明の目的であった。
【0011】
この目的は、本発明に従う組成物によって解決された。
【0012】
本発明は、ガティガムおよび1つまたは複数の脂溶性活性成分を含む組成物に関し、この組成物は、乾燥物質における組成物全体を基準として40重量%未満の油、さらに好ましくは35重量%未満の油、さらに好ましくは30重量%未満の油を含む。最も好ましいのは、本発明に従う組成物が0〜10重量%の油を含む場合である。
【0013】
本発明の好ましい実施形態では、組成物は、乾燥物質における組成物全体を基準として20〜85重量%の間、さらに好ましくは30〜65重量%の間のガティガムを含む。
【0014】
本明細書で使用する場合、「脂溶性活性成分」という用語は、ビタミンA、D、E、Kおよびこれらの誘導体、多価不飽和脂肪酸、親油性健康成分、カロテノイド、ならびに風味または芳香物質、そしてこれらの混合物からなる群から選択されるビタミンを指す。
【0015】
本発明に従って適切である多価不飽和脂肪酸(PUFA)は、好ましくは16〜24個の炭素原子、および特に1〜6個の二重結合を有し、好ましくは、4または5または6個の二重結合を有する一価または多価不飽和カルボン酸である。
【0016】
不飽和脂肪酸は、n−6系およびn−3系の両方に属することができる。n−3多価不飽和酸の好ましい例はエイコサペンタ−5,8,11,14,17−エン酸およびドコサヘキサ−4,7,10,13,16,19−エン酸であり、n−6多価不飽和酸の好ましい例はアラキドン酸およびγリノレン酸である。
【0017】
多価不飽和脂肪酸の好ましい誘導体は、これらのエステル、例えばグリセリド、特にトリグリセリド、特に好ましくはエチルエステルである。n−3およびn−6多価不飽和脂肪酸のトリグリセリドが特に好ましい。
【0018】
トリグリセリドは、3つの同じ不飽和脂肪酸または2つもしくは3つの異なる不飽和脂肪酸を含有することができる。これらは部分的に飽和脂肪酸を含有してもよい。
【0019】
誘導体がトリグリセリドである場合、普通は3つの異なるn−3多価不飽和脂肪酸がグリセリンでエステル化される。本発明の1つの好ましい実施形態では、脂肪酸部分の30%がn−3脂肪酸であり、これらのうちの25%が長鎖多価不飽和脂肪酸であるトリグリセリドが使用される。さらに好ましい実施形態では、市販のROPUFA(登録商標)’30’n−3 Food Oil(DSM Nutritional Products Ltd,(Kaiseraugst,Switzerland))が使用される。
【0020】
本発明の別の好ましい実施形態では、PUFAエステルはROPUFA(登録商標)’75’n−3 EEである。ROPUFA’75’n−3 EEは、エチルエステルの形態の精製マリンオイル(marine oil)であり、72%の最低含量のn−3脂肪酸エチルエステルを有する。これは、混合したトコフェロール、パルミチン酸アスコルビル、クエン酸によって安定化され、ローズマリー抽出物を含有する。
【0021】
本発明の別の好ましい実施形態では、PUFAエステルは、最低含量9%のγリノレン酸を有する精製した月見草油であるROPUFA(登録商標)’10’n−6油であり、これは、DL−α−トコフェロールおよびパルミチン酸アスコルビルによって安定化される。
【0022】
本発明によると、多価不飽和脂肪酸のトリグリセリド(例えば、マリンオイル(魚油)および/または植物油、そして発酵バイオマスまたは遺伝子改変植物から抽出される油)を含有する天然に存在する油(1つまたは複数の成分)の使用は有利であり得る。
【0023】
多価不飽和脂肪酸のトリグリセリドを含む好ましい油は、オリーブ油、ヒマワリ種子油、月見草種子油、ボリジ(borage)油、ブドウ種子油、大豆油、落花生油、小麦胚芽油、カボチャ種子油、クルミ油、ゴマ油、菜種油(キャノーラ)、ブラックカラント種子油、キウイ種子油、特定の真菌からの油、および魚油である。
【0024】
多価不飽和脂肪酸の好ましい例は、例えば、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、ドコサヘキサエン酸、エイコサペンタエン酸などである。
【0025】
本発明によると、好ましい親油性健康成分は、リスベラトロール、マルバトウキ(ligusticum)、補酵素Q10(「CoQ10」とも呼ばれる)、補酵素Q9および/またはこれらの還元形態(対応するユビキノール)から選択されるユビキノン(ubichinone)および/またはユビキノール(1つまたは複数の成分)、ゲニステイン、そして/あるいはα−リポ酸である。
【0026】
本発明の特に好ましい脂溶性活性成分は、カロテノイド、特にβ−カロテン、リコペン、ルテイン、ビキシン、アスタキサンチン、アポカロテナール(apocarotenal)、β−アポ−8’−カロテナール、β−アポ−12’−カロテナール、カンタキサンチン、クリプトキサンチン、シトラナキサンチンおよびゼアキサンチンである。最も好ましいのはβ−カロテンである。
【0027】
本発明の好ましい実施形態では、組成物は、乾燥物質における組成物全体を基準として0.1〜70重量%の間、さらに好ましくは0.1〜30重量%の間、さらに好ましくは0.5〜20重量%の間、最も好ましくは0.5〜15重量%の間の1つまたは複数の脂溶性活性成分を含む。
【0028】
これに関連して使用される「油」という語句は、組成物の所望の使用のために適切なあらゆるトリグリセリドまたは他の全ての油(例えば、テルペン)を含む。油は好ましくは植物性油または脂肪であり、好ましくは、コーン油、ヒマワリ油、大豆油、ベニバナ油、菜種油、ピーナッツ油、ヤシ油、パーム核油、綿実油、オレンジ油、リモネン、オリーブ油またはココナッツ油である。
【0029】
本発明のさらに好ましい実施形態では、組成物は、少なくとも1つの付加的な植物ガムをさらに含むことを特徴とし、特に好ましくは、さらなる植物ガムはアカシアガムである。本発明に従う組成物中で使用されるアカシアガムは、アカシア・セネガル(Acacia senegal)またはアカシア・セヤル(Acacia seyal)であり、好ましくはアカシア・セヤル(Acacia Seyal)である。
【0030】
本発明に従う組成物が少なくとも1つの付加的な植物ガムをさらに含む場合、少なくとも1つの加工デンプンをさらに含むことが好ましい。
【0031】
本明細書において使用される「食品用加工デンプン」という用語は、既知の化学的方法によって疎水性部分で置換されたデンプンから作られた加工デンプンに関する。例えば、デンプンは、アルキルまたはアルケニル炭化水素基で置換されたコハク酸および/またはグルタル酸無水物などの環状ジカルボン酸無水物で処理することができる。
【0032】
本発明の特に好ましい加工デンプンは以下の式(I)を有する。
【化1】



式中、Stはデンプンであり、Rはアルキレン基であり、R’は疎水性基である。好ましくは、Rは、ジメチレンまたはトリメチレンなどの低級アルキレン基である。R’は、好ましくは5〜18個の炭素原子を有するアルキルまたはアルケニル基でよい。式(I)の好ましい加工デンプンは、オクテニルコハク酸デンプンナトリウム(「OSA−デンプン」)である。本明細書において使用される「OSA−デンプン」という用語は、オクテニルコハク酸無水物(OSA)で処理された任意のデンプン(コーン、小麦、タピオカ、ジャガイモなどの任意の天然源からのデンプン、または合成されたデンプン)を示す。置換度、すなわちヒドロキシル基の総数に対するエステル化ヒドロキシル基の数は、通常、0.1%〜10%の範囲、好ましくは0.5%〜5%の範囲、より好ましくは2%〜4%の範囲で様々である。
【0033】
OSA−デンプンは、デンプン、マルトデキストリン、炭水化物、ガム、コーンシロップなどのさらなる親水コロイドと、場合により、脂肪酸のモノ−およびジクリセリド、脂肪酸のポリグリセロールエステル、レシチン、モノステアリン酸ソルビタン、植物繊維および/または糖などの任意の典型的な乳化剤(共乳化剤(co−emulgator)として)とを含有してもよい。
【0034】
OSA−デンプンは、例えば、商品名HiCap 100、Capsul、Capsul HS、Purity Gum 2000、UNI−PURE、HYLON VIIでNational Starchから、Roquette Freresから、商品名CEmCapでCereStarから、あるいはTate & Lyleから市販されている。HiCap 100が特に好ましい。
【0035】
本発明に従う組成物が少なくとも1つの付加的な植物ガムをさらに含む場合、さらに好ましいのは、1つまたは複数のオリゴ糖、例えばデキストリンおよびマルトデキストリンなど、特に5〜65のデキストロース当量(DE)の範囲を有するもの、ならびにグルコースシロップ、特に20〜95DEの範囲を有するものをさらに含む場合である。「デキストロース当量」(DE)という用語は加水分解度を示し、乾燥重量に基づいてD−グルコースとして計算される還元糖の量の尺度であり、スケールは、0に近いDEを有する天然デンプンおよび100のDEを有するグルコースを基準とする。好ましくは、マルトデキストリンが本発明に従う組成物中で使用される。
【0036】
また本発明は、上記の組成物の製造方法にも関し、以下のステップ:
I) ガティガムおよび場合により1つまたは複数の付加的な植物ガムを水中に溶解させるステップと、
II) 場合により、少なくとも1つの加工デンプンをステップI)の溶液に添加するステップと、
III) 1つまたは複数の脂溶性活性成分および40重量%未満の油(乾燥物質における組成物全体を基準として)を含み、そして脂溶性活性成分がカロテノイドである場合には有機溶媒をさらに含む有機相を、ステップII)の溶液に添加するステップと、
IV) 30℃〜100℃の間、さらに好ましくは45℃〜80℃の間、さらに好ましくは50℃〜70℃の間の温度において、ステップIII)の混合物を乳化させるステップと、
IV) 有機溶媒を減圧下で蒸発させるステップと、
VI) 噴霧乾燥、パウダーキャッチ(powder catch)または他の方法によってエマルジョンを乾燥させるステップと、
を含む(方法は、本明細書において指定される量の成分を用いて実行することができる)。
【0037】
乾燥ステップは、当業者に知られている任意の従来の乾燥方法を用いて実行することができ、好ましいのは、噴霧乾燥および/またはパウダーキャッチ法(この方法では、噴霧された懸濁液滴が、デンプンまたはケイ酸カルシウムまたはケイ酸または炭酸カルシウムまたはこれらの混合物などの吸着剤床に捕えられ、続いて乾燥される)である。
【0038】
さらに好ましくは、所望されるなら、本方法のステップII)において、オリゴ糖、好ましくはマルトデキストリンが添加される。
【0039】
適切な有機溶媒は、ハロゲン化脂肪族炭化水素、脂肪族エーテル、脂肪族および環状カーボネート、脂肪族エステルおよび環状エステル(ラクトン)、脂肪族および環状ケトン、脂肪族アルコール、ならびにこれらの混合物である。
【0040】
ハロゲン化脂肪族炭化水素の例は、モノ−またはポリハロゲン化線状、分枝状または環状C−〜C15−アルカンである。特に好ましい例は、モノ−またはポリ塩素化または−臭素化線状、分枝状または環状C−〜C15−アルカンである。好ましくは、CHClが使用される。
【0041】
脂肪族エステルおよび環状エステル(ラクトン)の例は、酢酸エチル、酢酸イソプロピルおよび酢酸n−ブチル、ならびにγ−ブチロラクトンである。
【0042】
脂肪族および環状ケトンの例は、アセトン、ジエチルケトンおよびイソブチルメチルケトン、ならびにシクロペンタノンおよびイソホロンである。
【0043】
環状カーボネートの例は、特に、エチレンカーボネートおよびプロピレンカーボネートならびにこれらの混合物である。
【0044】
脂肪族エーテルの例はジアルキルエーテルであり、アルキル部分は、1〜4個の炭素原子を有する。1つの好ましい例はジメチルエーテルである。
【0045】
脂肪族アルコールの例は、エタノール、イソ−プロパノール、プロパノールおよびブタノールである。
【0046】
また本発明は、食料、飲料、動物飼料、化粧品または医薬組成物を強化、増強および/または着色するための上記の組成物の使用にも関する。
【0047】
また本発明は、上記の組成物を飲料のさらなる通常の成分と混合することによる、飲料の製造方法にも関する。
【0048】
また本発明は、上記のような方法によって得られる飲料にも関する。
【0049】
意外にも、本発明の組成物は水と混合することができ、それによって得られる混合物は高い安定性を有することが分かった。さらに、得られた混合物から脂溶性活性成分の分離は得られない。脂溶性活性成分がβ−カロテンであれば、β−カロテンの他に魚ゲルまたは着色化合物などの補助化合物が存在しなくても有利な色が達成される。
【0050】
さらに思いがけなく、本発明に従う組成物は、少量の油(例えば、1重量%まで低下して)を用いると、改善された特性、例えば色強度および色安定性を有することが分かった。
【0051】
反対の定義がなければ、組成物の化合物の量(重量%)は、乾燥物質における組成物全体(有機溶媒および/または水のような溶媒を含まない全ての成分の合計量)を基準とした、この化合物の重量%を指す。本発明に従う組成物は好ましくはエマルジョンである。
【0052】
固体組成物は、さらに、ケイ酸またはリン酸三カルシウムなどのアンチケーキング剤を、10重量%まで、好ましくは0.1〜5重量%含有してもよい。
【0053】
水溶性酸化防止剤は、例えば、アスコルビン酸またはその塩、好ましくはアスコルビン酸ナトリウム、ヒドロキシチロコール(hydroxy tyrocol)およびオレウロペインなどの水溶性ポリフェノール、アグリコン、没食子酸エピガロカテキン(EGCG)、またはローズマリーもしくはオリーブの抽出物であり得る。
【0054】
脂溶性酸化防止剤は、例えば、トコフェロール、例えば、dl−α−トコフェロール(すなわち、合成トコフェロール)、d−α−トコフェロール(すなわち、天然トコフェロール)、β−またはγ−トコフェロール、もしくはこれらの2つ以上の混合物、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、エトキシキン、没食子酸プロピル、tert.ブチルヒドロキシキノリン、または6−エトキシ−1,2−ジヒドロキシ−2,2,4−トリメチルキノリン(EMQ)、または脂肪酸のアスコルビン酸エステル、好ましくはパルミチン酸またはステアリン酸アスコルビルであり得る。
【0055】
さらに、組成物は水を含むことができる。
【0056】
好ましくは、本発明の組成物は、カロテノイド化合物を除いてさらなる着色物質を含有しない。好ましくは、本発明の組成物は魚ゼラチンを含有しない。
【0057】
表1は、乾燥物質における組成物全体を基準として、組成物の好ましい成分の好ましい量(重量%)を示す。表1において指定される量は、上記した成分の好ましい量とさらに組み合わせることができる。
【0058】
【表1】



【0059】
また本発明は、食料、飲料、動物飼料、化粧品または医薬組成物を強化、増強および/または着色するため、好ましくは、飲料を強化、増強および/または着色するための上記の組成物の使用にも関する。本発明の組成物を含有する飲料が充填されたボトルの表面に、「リンギング」、すなわち不溶性部分の望ましくない分離は存在しない。
【0060】
本発明の他の態様は、上記の組成物を含有する食料、飲料、動物飼料、化粧品および医薬組成物である。
【0061】
本発明の製品形態を着色剤または添加剤成分として使用することができる飲料は、炭酸飲料、例えばフレーバーセルツァー(seltzer)水、ソフトドリンクまたはミネラルドリンク、および非炭酸飲料、例えばフレーバー水、果実ジュース、果実パンチ、ならびにこれらの飲料の濃縮形態であり得る。これらは、天然果実または野菜ジュースあるいは人工フレーバーに基づくことができる。また、アルコール飲料およびインスタント飲料粉末も含まれる。糖含有飲料に加えて、ノンカロリーおよび人口甘味料を有するダイエット飲料も含まれる。
【0062】
さらに、天然原料から得られる酪農製品または合成酪農製品は、本発明の製品形態を着色剤または添加剤成分として使用することができる食品の範囲内に入る。このような製品の典型的な例は、ミルク飲料、アイスクリーム、チーズ、ヨーグルトなどである。豆乳飲料などの代用乳製品および豆腐製品もこの用途の範囲内に含まれる。
【0063】
また、菓子製品、キャンディー、ガム、デザート、例えばアイスクリーム、ゼリー、プディング、インスタントプディング粉末などの、着色剤または添加剤成分として本発明の製品形態を含有する甘味も含まれる。
【0064】
また、着色剤または添加剤成分として本発明の製品形態を含有するシリアル、スナック、クッキー、パスタ、スープおよびソース、マヨネーズ、サラダドレッシングなども含まれる。さらに、乳製品およびシリアルのために使用される果実調製物も含まれる。
【0065】
本発明の組成物によって食品に添加される1つまたは複数の脂溶性活性成分、好ましくはカロテノイド、特にβ−カロテンの最終濃度は、食料組成物の全重量を基準とし、そして着色または増強される特定の食品と、意図される着色度または増強度とに依存して、好ましくは、0.1〜50ppm、好ましくは1〜30ppm、より好ましくは3〜20ppm、例えば約6ppmであり得る。
【0066】
本発明の食料組成物は、好ましくは、本発明の組成物の形態の脂溶性活性成分を食品に添加することによって得られる。食料または医薬品の着色または増強のために、本発明の組成物は、水に分散可能な固体製品形態の用途のためにそれ自体知られている方法に従って使用することができる。
【0067】
一般に、組成物は、特定の用途に従って他の適切な食料成分を有する水性原液、乾燥粉末混合物またはプレブレンドのいずれかとして添加され得る。混合は、最終用途の製剤に依存して、例えば、乾燥粉末ブレンダー、低せん断ミキサー、高圧ホモジナイザーまたは高せん断ミキサーを用いて行うことができる。容易に明らかであるように、このような専門的事項は当業者の技能の範囲内である。
【0068】
本発明の組成物が着色剤として使用される錠剤またはカプセルなどの医薬組成物も、本発明の範囲内である。錠剤の着色は、液体または固体着色剤組成物の形態の組成物を錠剤コーティング混合物に別個に添加するか、あるいは錠剤コーティング混合物の成分の1つに組成物を添加することによって達成され得る。着色されたハードまたはソフトシェルカプセルは、組成物をカプセル塊の水溶液に取り込むことによって調製することができる。
【0069】
本発明の組成物が活性成分として使用される錠剤(咀嚼錠、発泡錠またはフィルムコート錠など)またはカプセル(ハードシェルカプセルなど)などの医薬組成物も本発明の範囲内である。製品形態は、通常、粉末として錠剤混合物に添加されるか、あるいはカプセルを製造するためにそれ自体知られている方法でカプセルに充填される。
【0070】
例えば、卵黄、食用家禽、ブロイラーまたは水生動物のための、色素沈着用の着色剤として、あるいは活性成分として組成物が使用される、栄養成分のプレミックス、複合飼料、代用乳、流動食または飼料調製物などの動物飼料品も本発明の範囲内である。
【0071】
本発明の組成物が着色剤または添加剤または活性成分として使用される、化粧品、洗面用品および皮膚用製品、すなわちクリーム、ローション、浴用剤、口紅、シャンプー、コンディショナー、スプレーまたはゲルなどのスキンケアおよびヘアケア製品も本発明の範囲内である。
【0072】
本発明の飲料および組成物は、以下に記載される試験方法で優れた挙動を示すもの、特に、有利な色調を示すものである。
【0073】
本発明の飲料の例は、スポーツ飲料、ビタミン補給水、およびビタミンの添加の対象となる飲料である。また、下痢による電解質の損失を回復させるために使用される飲料も対象となる。また、フレーバーセルツァー水、ソフトドリンクまたはミネラルドリンクなどの炭酸飲料、そして非炭酸果実および野菜ジュース、パンチ、ならびにこれらの飲料の濃縮形態も対象となる。
【0074】
本発明はさらに、上記の組成物をさらなる通常の成分と混合することによる、飲料の製造方法に関する。
【0075】
さらに、本発明は、上記のような飲料の製造方法によって得ることができる飲料に関する。
【0076】
本発明の組成物は好ましくは添加剤組成物であり、好ましくは、添加剤組成物として使用される。
【0077】
[物理的安定性]
エマルジョンは、液滴の内部相の分布が時間と無関係であれば物理的に安定であると考えられる。可能性のある不安定性は、クリーミング、沈降、オストワルド熟成、合体、転相および凝集である。
【0078】
沈降およびクリーミングは当該技術分野においてよく知られており、ストークスの法則を用いて文献において十分に説明されている。沈降およびクリーミングの速度は、密度、媒体の粘度、粒径によって影響を受ける。このため、本発明を証明するために、粒径D(3,2)の測定を実現した。さらに、いくつかのカロテノイド製剤の色の変化はD(3,2)値の関数であり、例えばβ−カロテンの場合、液滴が小さいほど、色はより大きく黄色に変化する。
【0079】
本発明による製造方法のステップV)に従うカロテンエマルジョンは、0.05μm〜1μmのサイズ範囲を示す(Mastersizer Sにより実現される測定)。
【0080】
エマルジョン中の軟凝集の度合いは、動電学的な力にも依存する。全ての系の安定性は、液滴間の反発相互作用と引力相互作用のバランス、例えば、ファンデルワールス、静電的、立体的安定化に依存する。DLVOモデルによると不可逆的な軟凝集に対するエネルギー障壁としての機能を果たす電位プロットの正の初期最大値(positive primary maximum)は、室温で1.5kTよりも(37.5mVよりも)大きくなければならない。この静電反発力は、電気泳動移動度から計算されるゼータ電位によって定量化することができる。我々のエマルジョンの安定性評価は、スモルコウスキの方程式(Smoluchowski equation)を用いてゼータ電位を測定することによって実行した。我々の場合、ゼータ電位は常に−38mVよりも高かった(Zetasizer Nano SZにより実現される測定)。
【0081】
産業における色の用途のために、重要なのは色の測定だけでなく、色差の正確な決定でもある。CIE L(CIELAB)は、
201101141005038620__________10-5757-DM__2EP2009056771___APH_2
(Commission Internationale d’Eclairage、従って、その頭文字語CIE)によって指定される最も完全な
201101141005038620__________10-5757-DM__2EP2009056771___APH_3
である。これは、人間の目に見える色全てを表現し、参照として使用されるデバイス非依存モデルとしての機能を果たすように作られた。CIELABの3つの座標は、色の明度(L、L=0は黒色を生じ、L=100は白色を示す)、赤色/マゼンタと緑色の間のその位置(a、負の値は緑色を示し、正の値はマゼンタを示す)および黄色と青色の間のその位置(b、負の値は青色を示し、正の値は黄色を示す)を表す。L、aおよびbの後のアスタリスク()は、これらをハンター(Hunter)のL、aおよびbと区別するためにL、aおよびbを表すので、フルネームの一部である。我々のシステムでは、狭いサイズ分布を伴った粒径の低下は、Lの増大と直接相関する。さらに、粒径の低下は、やや赤色から黄色がかった色への、β−カロテンに基づく、製品形態の色のシフトに変換される。我々の場合、Lは常に70よりも高く、bは正であった。
【0082】
本発明は、限定することは意図されない以下の実施例によってさらに説明される。
【0083】
[実施例1]
ビーカー上で、ガティガムを水中に注ぎ、全部溶解するまで室温で攪拌した。その間に、β−カロテン、コーン油、α−トコフェロールを含有する有機相を溶媒に溶解した。次に、有機相を水相に添加し、得られた混合物を乳化させた(FLUID 5000 RPM)。最後に、溶媒を減圧下で蒸発させた。得られた生成物を、パウダーキャッチ(デンプン床において)によって乾燥形態に転化させた。生成物の粒径、色測定およびゼータ電位を決定した。
【0084】
【表2】



【0085】
[実施例2]
この例では、ガティガムおよびセヤルガムを水中に注ぎ、完全に溶解するまで系を混合した。次に、食品用加工デンプンおよびマルトデキストリンを添加し、得られた混合物を、完全に溶解するまで攪拌した。実験手順はこのステップの後であり、実施例1に記載されるものと同じである。
【0086】
【表3】



【0087】
[実施例3]
ビーカー上で、ガティガムを水中に注ぎ、全部溶解するまで室温で攪拌した。その間に、β−カロテン、コーン油、α−トコフェロールを含有する有機相を溶媒に溶解した。乳化工程を2つの部分に分割し、最初にプレミックスを実現し(ESCO LABOR−25000 RPM)、次に高圧ホモジナイザーにおいてさらに乳化させた。最後に、溶媒を減圧下で蒸発させた。得られた生成物を、パウダーキャッチ(デンプン床において)によって乾燥形態に転化させた。生成物の粒径、β−カロテン含量、色測定およびゼータ電位を決定した。
【0088】
【表4】



【0089】
[実施例4]
ビーカー上で、ガティガムを水中に注ぎ、全部溶解するまで室温で攪拌した。その間に、β−カロテン、コーン油、α−トコフェロールを含有する有機相を溶媒に溶解した。乳化工程を2つの部分に分割し、最初にプレミックスを実現し(ESCO LABOR−25000 RPM)、次に高圧ホモジナイザーにおいてさらに乳化させた。最後に、溶媒を減圧下で蒸発させた。得られた生成物を、パウダーキャッチ(デンプン床において)によって乾燥形態に転化させた。生成物の粒径、β−カロテン含量、色測定およびゼータ電位を決定した。
【0090】
【表5】



【0091】
[実施例5]
ビーカー上で、ガティガムおよびマルトデキストリンを連続的に水中に注ぎ、全部溶解するまで室温で攪拌した。その後、予め60℃まで温めた酢酸トコフェリルを水相に添加した。次に、得られた混合物を乳化させた(FLUID 4000 RPM)。最後に、得られた生成物を、噴霧乾燥によって乾燥形態に転化させた。エマルジョンの粒径および酢酸トコフェリル含量を決定した。
【0092】
【表6】



【0093】
[実施例6]
ビーカー上で、ガティガムおよびマルトデキストリンを連続的に水中に注ぎ、全部溶解するまで室温で攪拌した。その間に、補酵素Q10を60℃で中鎖トリグリセリドに溶解した。乳化工程を2つの部分に分割し、最初にプレミックスを実現し((FLUID 2000 RPM)、次に高圧ホモジナイザーにおいてさらに乳化させた。得られた生成物を、パウダーキャッチ(デンプン床において)によって乾燥形態に転化させた。生成物の粒径および補酵素Q10含量を決定した。
【0094】
【表7】




【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガティガムおよび1つまたは複数の脂溶性活性成分を含む組成物であって、乾燥物質における組成物全体を基準として40重量%未満の油を含む組成物。
【請求項2】
脂溶性活性成分が、カロテノイド、特にβ−カロテン、リコペン、ルテイン、ビキシン、アスタキサンチン、アポカロテナール、β−アポ−8’−カロテナール、β−アポ−12’−カロテナール、カンタキサンチン、クリプトキサンチン、シトラナキサンチンおよびゼアキサンチンであることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記組成物が、乾燥物質における組成物全体を基準として0.1〜30重量%の間のカロテノイドを含むことを特徴とする請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
1つのカロテノイドがβ−カロテンであることを特徴とする請求項2または3に記載の組成物。
【請求項5】
前記組成物が、少なくとも1つの付加的な植物ガムをさらに含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記付加的な植物ガムが、アカシアガムであることを特徴とする請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記組成物が、少なくとも1つの加工デンプンをさらに含むことを特徴とする請求項5または6に記載の組成物。
【請求項8】
前記加工デンプンが、食品用OSA加工デンプンであることを特徴とする請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記組成物が、1つまたは複数のオリゴ糖をさらに含むことを特徴とする請求項7または8に記載の組成物。
【請求項10】
前記オリゴ糖がマルトデキストリンであることを特徴とする請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
以下のステップ:
I) ガティガムおよび場合により1つまたは複数の付加的な植物ガムを水中に溶解させるステップと、
II) 場合により、少なくとも1つの加工デンプンをステップI)の溶液に添加するステップと、
III) 1つまたは複数の脂溶性活性成分および40重量%未満の油(乾燥物質における組成物全体を基準として)を含み、そして前記脂溶性活性成分がカロテノイドの場合には、有機溶媒をさらに含む有機相を、ステップII)の溶液に添加するステップと、
IV) 30℃と100℃の間、さらに好ましくは45℃と80℃の間、さらに好ましくは50℃と70℃の間の温度において、ステップIII)の混合物を乳化させるステップと、
V) 前記有機溶媒を減圧下で蒸発させるステップと、
VI) 噴霧乾燥、パウダーキャッチまたは他の方法によって前記エマルジョンを乾燥させるステップと
を含む、請求項1〜10のいずれか一項に記載の組成物の製造方法。
【請求項12】
[請求項11]
ステップII)において、1つまたは複数のオリゴ糖も添加されることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
[請求項12]
食料、飲料、動物飼料、化粧品または医薬組成物を強化、増強および/または着色するための、請求項1〜10のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項14】
[請求項13]
請求項1〜10のいずれか一項に記載の組成物を含有する飲料。

【公表番号】特表2011−521658(P2011−521658A)
【公表日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−512106(P2011−512106)
【出願日】平成21年6月3日(2009.6.3)
【国際出願番号】PCT/EP2009/056771
【国際公開番号】WO2009/147158
【国際公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【出願人】(503220392)ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ. (873)
【Fターム(参考)】