ガラクチュロン酸還元酵素及びガラクチュロン酸を資化する酵母
【課題】ガラクチュロン酸を資化する酵母を提供し、ポリガラクチュロン酸の分解産物であるガラクチュロン酸を資化してペクチンの再資源化に貢献する。
【解決手段】本発明は、タイ地酒オウ(Ou)の酒もと(Cocha)から単離された低温適応酵母(受託番号:NITE P-611、寄託日:平成20年7月18日)由来であって、(1)20〜45℃及びpH6.0〜8.4の環境下で安定であり、(2)40℃付近の至適温度、6.3付近の至適pH、(3)ガラクチュロン酸、グルクロン酸に作用するが、ガラクトース、グルコース、マンノース、ソルビトール、グルコン酸には作用せず、(4)各1mMのCu2+、Fe2+、Pb2+によって阻害を受けるが、各1mMのMg2+、Co2+、Mn2+、Na+、Ca2+、Ni2+、K+、Ba2+、Zn2+によっては阻害を受けず、NADPH特異的であるガラクチュロン酸還元酵素を産生する酵母を提供する。
【解決手段】本発明は、タイ地酒オウ(Ou)の酒もと(Cocha)から単離された低温適応酵母(受託番号:NITE P-611、寄託日:平成20年7月18日)由来であって、(1)20〜45℃及びpH6.0〜8.4の環境下で安定であり、(2)40℃付近の至適温度、6.3付近の至適pH、(3)ガラクチュロン酸、グルクロン酸に作用するが、ガラクトース、グルコース、マンノース、ソルビトール、グルコン酸には作用せず、(4)各1mMのCu2+、Fe2+、Pb2+によって阻害を受けるが、各1mMのMg2+、Co2+、Mn2+、Na+、Ca2+、Ni2+、K+、Ba2+、Zn2+によっては阻害を受けず、NADPH特異的であるガラクチュロン酸還元酵素を産生する酵母を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は新規なガラクチュロン酸還元酵素及びガラクチュロン酸を資化する酵母に関する。
【背景技術】
【0002】
ペクチンは野菜や果実に多く含まれているが、その再利用に関して、例えばりんご搾汁残渣に含まれるペクチンは、その約70%が農作物の肥料、家畜の飼料、増粘多糖類、ゲル化剤、乳タンパク安定剤などの食品添加物に再利用されるにすぎず、残る約30%のペクチンが廃棄されているとの報告がある。また、ペクチンはりんご以外の果物、特に柑橘類の搾汁残渣にも多く含まれるが、その再利用率はりんごの場合よりもさらに低いといわれている。このようにペクチンの再利用は肥料等の安価な利用かつ食品産業など限られた産業における利用にとどまっており、ペクチンを幅広い産業でバイオマス資源として再利用することは天然資源の確保の面からも、ごみ処理という環境浄化の面からも注目に値する。
【0003】
ペクチンは植物細胞壁・特に果実の細胞壁に多く含まれる非セルロース性多糖であり、ホモガラクツロナン、ラムノガラクツロナン−I、ラムノガラクツロナン−IIという3つの特徴的な構造ドメインから形成される複合多糖である。このうち、ホモガラクツロナンはペクチンの主要構成糖として知られており、ペクチンの約70%を占める。ホモガラクツロナンの中でもっとも一般的な構造はガラクチュロン酸のみがα−1,4−結合したポリガラクチュロン酸であり、一部のガラクチュロン酸にはそのカルボキシル基がメチルエステル化されたものやその水酸基がアセチル化されたものが存在している。
【0004】
ポリガラクチュロン酸は様々な微生物によって分解される。例えば、植物寄生性を示すバクテリア、例えば一部の糸状菌は、ガラクチュロン酸をピルビン酸とグリセルアルデヒド3リン酸にまで代謝する。この代謝は、真性細菌によく見られる代謝系であるエントナードウトロフ(ED)経路を利用することによって行われている。また、Kluyveromyces属酵母など、酵母においても、ポリガラクチュロン酸のグルコシド結合を加水分解するポリガラクチュロン酸分解酵素(ポリガラクチュロナーゼ)を生産する種はいくつか知られている(例えば非特許文献1や2参照)。
【0005】
しかしながら、ガラクチュロン酸をピルビン酸とグリセルアルデヒド3リン酸にまで代謝するED経路は真核生物では確認されておらず、酵母ではポリガラクチュロン酸から分解されたガラクチュロン酸を利用することはできないと考えられていた。事実、Kluyveromyces属酵母をはじめとしたポリガラクチュロナーゼ生産酵母において、ポリガラクチュロナーゼ分解産物であるガラクチュロン酸が資化されたという報告例はない。そして、ガラクチュロン酸を資化する酵母を利用することができれば、ペクチンの再資源化においても有効な手段を与えると考えられる。
【0006】
ガラクチュロン酸を還元する酵素として、これまでのところカビの一種であるHypocreajecorina株から得られたL−ガラクチュロン酸脱水素酵素が報告されているが(非特許文献3)、酵母を起源とするものは知られていない。しかも、低温においても活性を維持するものは知られていない。
【0007】
一方、近年では、食品の熟成等に用いられている低温機能性酵素への期待が高まっており、その低温適応性微生物が着目されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Hirose, N., Kishida, K., Kawasaki, H. and Sakai, T. (1999) Purification and characterization of an endo-polygalacturonase from a mutant of Saccharomyces cerevisiae., Bioscience Biotechnology and Biochemistry vol.63, 1100-1103
【0009】
【非特許文献2】Sienkstele, R., Bartkeviciute, D. and Sasnauskas K. (1999) Cloning,targeted disruption and heterologous expression of the Kluyveromyces marxianus endo-polygalacturonase gene (EPG1). Yeast vol.15, 311-322
【0010】
【非特許文献3】Kuorelahti, S., Kalkkinen, N., Penttila, M., Londesborough, J., Richard, P., Identification in the mold Hypocrea jecorina of the first fungal D-galacturonic acid reductase, Biochemistry vol. 44: 11234-11240 (2005)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明はガラクチュロン酸を資化する酵母及びそれを分解する酵素を提供し、ポリガラクチュロン酸の分解産物であるガラクチュロン酸を資化してペクチンの再資源化に貢献することを課題としている。
【0012】
このような背景技術のもと、本願発明者は種々の研究を重ねたところ、タイ地酒オウ(Ou)の酒もと(Cocha)から単離された低温適応酵母が、ガラクチュロン酸を資化していることを見いだし、本願発明を完成するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の酵母は、タイ地酒オウ(Ou)の酒もと(Cocha)から単離された酵母C. diffluens FC11株であり、本発明のガラクチュロン酸還元酵素は、酵母C. diffluens FC11株によって産生され、以下の性質を有する。
(1)温度安定性及びpH安定性
20〜45℃及びpH6.0〜8.4の環境下で安定である。
(2)至適温度及び至適pH
至適温度は40℃付近、至適pHは6.3付近である。
(3)基質特異性
ガラクチュロン酸、グルクロン酸に作用するが、ガラクトース、グルコース、マンノース、ソルビトール、グルコン酸には作用しない。
(4)金属による影響
各1mMのCu2+、Fe2+、Pb2+によって阻害を受ける。
(5)電子供与体
NADPH特異的である。
(6)分子量
約45kDa(SDS−PAGE法による)である。
【発明の効果】
【0014】
本発明の酵素によるとペクチンの分解産物であるガラクチュロン酸をL−ガラクトン酸に低温で資化することができる。また、この酵素を有する酵母の利用により、ペクチンを低温でL−ガラクトン酸まで分解利用できるために、ペクチンの利用範囲が広がる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】ゲノムDNAの抽出手順を示す図である。
【図2】プライマーD1を用いて決定された酵母FC11株の26SrDNAと酵母C. diffluens標準株との相同性を示す図である。
【図3】プライマーD2を用いて決定された酵母FC11株の26SrDNAと酵母C. diffluens標準株との相同性を示す図である。
【図4】酵母FC11株の培養(振蕩培養)中における培地中ガラクチュロン酸の減少を示す図である。
【図5】酵母FC11株の増殖を示す培養(振蕩培養)曲線である。
【図6】酵母FC11株の培養(静置培養)中における培地中ガラクチュロン酸の減少を示す図である。
【図7】酵母FC11株の増殖を示す培養(静置培養)曲線である。
【図8】無細胞抽出液によるガラクチュロン酸変換反応を調べるための操作手順を示す図である。
【図9】透析した無細胞抽出液によるガラクチュロン酸変換反応を調べるための操作手順を示す図である。
【図10】NADPHの酸化反応を調べるための操作手順を示す図である。
【図11】無細胞抽出液によるガラクチュロン酸変換反応におけるクロマトグラムであって、上のクロマトグラムは加熱した無細胞抽出液による場合を、下のクロマトグラムは非加熱の細胞抽出液による場合を示す。
【図12】透析後の無細胞抽出液(NADPH添加)によるガラクチュロン酸変換反応におけるクロマトグラムであって、上のクロマトグラムは非加熱の透析した無細胞抽出液による場合を、下のクロマトグラムは加熱処理後の透析した無細胞抽出液による場合を示す。
【図13】精製された酵素によるガラクチュロン酸の還元反応を調べるための操作手順を示す図である。
【図14】酵素精製途中におけるDEAE-toyopearlカラムによるクロマトグラムである。
【図15】酵素精製途中における第1回目のRed-toyopearlカラムによるクロマトグラムである。
【図16】酵素精製途中における第2回目のRed-toyopearlカラムによるクロマトグラムである。
【図17】酵素精製途中におけるMono Q HRカラムによるクロマトグラムである。
【図18】分画により得られた酵素のSDS−PAGEを示す図である。
【図19】精製された酵素の温度安定性を示す図である。
【図20】精製された酵素のpH安定性を示す図である。
【図21】精製された酵素の至適温度を示す図である。
【図22】精製された酵素の至適pHを示す図である。
【図23】精製された酵素反応における金属塩の影響を調べるための操作手順を示す図である。
【図24】還元糖量の測定方法を示す図である。
【図25】酵素反応による反応産物のNMRチャートである。チャート上の角枠内にその一部が拡大されている。
【図26】D−ガラクトノ1,4ラクトンのNMRチャートである。
【図27】D−ガラクトノ1,4ラクトンアルカリ開環産物のNMRチャートである。チャート上の角枠内にその一部が拡大されている。
【図28】ガラクチュロン酸のNMRチャートである。チャート上の角枠内にその一部が拡大されている。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の酵素は、タイ地酒オウ(Ou)の酒もと(Cocha)から単離された低温適応酵母由来の分子量約45kDaのガラクチュロン酸酸化酵素であって、次の理化学的性質を有する。
(1)温度安定性及びpH安定性
20〜45℃及びpH6.0〜8.4の環境下で安定である。
(2)至適温度及び至適pH
至適温度は40℃付近、至適pHは6.3付近である。
(3)基質特異性
ガラクチュロン酸、グルクロン酸に作用するが、ガラクトース、グルコース、マンノース、ソルビトール、グルコン酸には作用しない。
(4)金属による影響
各1mMのCu2+、Fe2+、Pb2+によって阻害を受けるが、各1mMのMg2+、Co2+、Mn2+、Na+、Ca2+、Ni2+、K+、Ba2+、Zn2+によって阻害を受けない。
(5)電子供与体
NADPH特異的である
【0017】
本発明の酵素は、低温適応酵母であるCryptococcus diffluens FC11株(寄託番号:NITE P-611、寄託日:平成20年7月18日)によって産生される。この酵母は、タイの地酒オウ(Ou)の酒もとを分離源とする培養から単離された酵母である。この酵母は、一般的な酵母があまり増殖を示さない4℃で顕著に増殖し、15〜30℃で良好に増殖するが、35℃以上ではほとんど増殖しない。この酵母はガラクチュロン酸を資化し、好気性条件下では、ガラクチュロン酸を含有しない培地よりも、それを含有する培地において増殖速度が速い。
【0018】
この酵母は、他の酵母では認められないガラクチュロン酸資化能を有するという特徴を有する他、次の形態学的特徴や生理学的性質を有する。なお、形態学的特徴や生理学的性質は他のCryptococcus diffluens属に属する菌株とほぼ変わりがなく、低温での増殖に特徴があると言える。
(1)形態学的特徴
球形、単極出芽であるが、偽菌糸については不明。
(2)温度特性
4〜30℃で増殖し、約25℃が最適増殖温度であって、15℃以下においても旺盛に増殖する。
(3)菌学的特徴
好気性菌で発酵性はなく、嫌気条件では生育しない。
(4)酵素生産
ガラクチュロン酸還元酵素の他にポリガラクチュロン酸(ペクチンの主要構成糖)分解酵素及びアミラーゼ、オーツスペルトキシランの分解酵素を生産する。また、ガラクチュロン酸還元酵素以外のこれらの酵素も低温適応酵素であって、ガラクチュロン酸還元酵素の酵素活性(分解活性)の至適温度は30℃であり、15℃での活性が最大活性の活性の約80%、4℃でも最大活性の約20%程度である。
(5)資化性
スクロース、マルトース、トレハロース、ラクトース、ルフィノース、可溶性デンプン、キシロース、アラビノース、ラムノース、ガラクチュロン酸を資化するがガラクトース、リボースを資化しない。また、その他の資化性について、Cryptococcus diffluens strain CBS8985と相違はない。
【0019】
酵母を培養するための培地は、他の酵母を培養するための培地と変わるところがなく、種々の酵母培養用の培地が用いられる。ただし、本発明の酵母はガラクトースやリボースを資化できないので、培地にはガラクトースやリボース以外の糖が用いられ、スクロース、マルトース、トレハロース、ラクトース、ルフィノース、可溶性デンプン、キシロース、アラビノース、ラムノースが好ましく用いられる。また、上記のとおり、ガラクチュロン酸を資化し、ガラクチュロン酸を用いることにより増殖速度が高くなるので、ガラクチュロン酸を前記糖に替えて、あるいは前記糖に加えて用いるのが好ましい。
【0020】
培養条件、特に培養温度については他の酵母とは異なり、35℃を超えると生育はほとんど認められず、35℃以下の低温度における好気的条件下、具体的には4〜15℃の温度において培養するのが好ましい。培地のpHについては他の酵母と同様に中性付近で培養を行わせることもできるが、pH5.0〜6.0の条件下で培養をするのが好ましい。pH7.0付近になると増殖速度が低下する傾向にあり、他の酵母に比べると最適生育pHは低いと考えられる。
【0021】
本発明の酵素はガラクチュロン酸を還元してL−ガラクトン酸を生成する。酵素反応は、至適pHであるpH6.3付近で行わせるのが望ましいが、pH6〜8の範囲で反応を行わせることができる。また、至適温度である40℃付近で行わせるのが望ましいが、10〜50℃の温度範囲で行わせることもできる。特に10〜30℃の低温においても、至適温度における活性の60%程度の活性効率で反応を行わせることができ、室温条件でもガラクチュロン酸をL−ガラクトン酸に変換することができる。
【0022】
得られた、L−ガラクトン酸は、例えば加熱調理用食品の添加剤として使用される他(特開2005−21153号公報参照)、種々の工業用薬品として使用されうる。
【実施例1】
【0023】
次に、本発明の酵母及び酵素について、以下の実施例に基づき、さらに詳細に説明する。
〔酵母の単離〕
タイ地酒オウ(Ou)の酒もと(Cocha)を滅菌生理食塩水に懸濁し、YPD培地に接種後、4℃で14日間静置した。その培養液を、アンピシリン(50μg/ml)含有YPDプレート培地に塗布して25℃で培養した。プレート培地に生育したコロニーを再度YPD培地で4℃、7日間培養し、生育した菌株から酵母菌(FC11株)を選別した。
【0024】
選別した酵母菌を、YPD培地を用いて各種温度(4℃、15℃、25℃、35℃)で7日間培養したところ、4℃で顕著に増殖し、15〜25℃で良好な生育が認められた。また、35℃以上では生育が認められなかったので、選別された酵母は低温適応性であることが判別した。
【0025】
〔菌株の同定〕
(a)26SrDNA遺伝子の塩基配列の解析
酵母の26SrDNAの塩基配列解析を行った。
i)DNAの塩基配列の確認
PCRの鋳型とするために菌体からゲノムDNAの抽出を行った。その抽出法を図1に示す。次にPCRに用いるプライマーを合成した。その塩基配列が表1に示される。26SD1で示されるプライマー(配列番号1)はForward側、26SD2で示されるプライマー(配列番号2)はReverse側である。また、相同性を調べるために用いられた菌株を表2に示した。
【0026】
【表1】
【0027】
塩基配列決定はDye termination法を用いた。ゲノムDNAの抽出に用いた試料はBECKMAN COULTER社製のCEQTM DTCS-Quick Start Kitを用いて作製した。実験手法は付属説明書に従った。抽出したゲノムDNAを鋳型とし、上記表1に示すプライマーを用いた。反応はBIO-RAD社製のi Cyclerにより行った。反応溶液の調製は東洋紡社のBlend Taq ポリメラーゼの付属説明書を参考にした。反応は、変性94℃、30秒、アニーリング49.1℃, 1分、伸長72℃ 1.5分で35サイクル行った。シークエンサーは、BECKMAN COULTER社製のCEQ 2000XLF DNA Analysis Systemを使用した。塩基配列の解析は、遺伝子解析ソフトGENETYX(ソフトウェア開発社製)によって行った。
【0028】
ii)DNAの塩基配列
上記により決定された酵母26SrDNAの塩基配列の相同性が表2に示された。また、本発明の単離された酵母FC11株と酵母C. diffluens CBS8985株、UWFP株(以下においては、両者を「標準株」として説明する)との相同性が図2及び図3に示された。各図上段はC. diffluens標準株の26SrDNAを、各図下段は本発明の単離された酵母FC11株の26SrDNAを示している。Forward側のD1プライマーの使用により決定された酵母C. diffluens標準株の塩基配列が配列表の配列番号3で、D1プライマーの使用により決定された酵母FC11株の塩基配列が配列番号4で示される。また、D2プライマーの使用により決定された酵母C. diffluens標準株の塩基配列が配列表の配列番号5で、D2プライマーの使用により決定された酵母FC11株の塩基配列が配列番号6で示される。配列番号7で示されたものは酵母26SrDNAのD1/D2領域の全塩基配列である。この塩基配列は、Kurutzman、Robnettの方法(1998)により決定されたものである。
【0029】
【表2】
【0030】
(b)糖の資化性
次に選別された酵母FC11株における糖の資化性について調べた。酵母の前培養にはGYP培地(酵母エキス0.5w/v%、Peptone 0.5w/v%、Glucose 0.5w/v%含有)を使用し、資化性の確認にはSC糖添加培地(糖2.0w/v%、Yeast nitrogen base 0.7w/v%、Casamino acid 0.5w/v%含有)とSC糖無添加培地(Yeast nitrogen base 0.7w/v%、Casamino acid 0.5w/v%含有)を使用した。糖の資化性は、「The yeasts; a taxonomic study(Elsevier)(9)」を参考にして調べられた。
【0031】
(c)ガラクチュロン酸の資化性
ガラクチュロン酸(GalA)の資化性は、SC糖添加培地とSC糖無添加培地を用いて酵母を培養した時の菌体の増殖と培養液中の糖の減少の経時変化を比較することによって調べられた。糖の資化は、SCGalA添加培地(GalA0.5w/v%、Yeast nitrogen base 0.7w/v%、Casamino acid 0.5w/v%含有)とSC糖無添加培地(Yeast nitrogen base 0.7w/v%、Casamino acid 0.5w/v%含有)を使用した振蕩培養(好気的環境下)と静置培養(嫌気的環境下)とで行った。菌体の増殖はOD660によって計測し、糖の定量が高性能陰イオンクロマトグラフィ(以下「HPAEC」と言う)によって行われた。その結果が表3及び図4〜図7に示された。図4及び図5は振蕩培養による場合を、図6及び図7は静置培養による場合を示し、各図とも培地がガラクチュロン酸を含む場合を示している。HPAECの条件が表4に示される。なお、表3にはこれまで各種の文献で知られている種々の酵母(C. diffluens株)の資化性を参考に記した。表3中に示されるvariableは、菌株によって資化性が確定できないことを示しているが、そのほとんどは資化性があると考えられている。
【0032】
【表3】
【0033】
【表4】
【0034】
上記26SrDNAの相同性検索と糖の資化性の調査の結果、選別された菌株FC11株は、C. diffluens標準株の有する性質とよく一致した。また、赤みがかったコロニーをGYP寒天培地に形成し、この形態からもC. diffluens標準株と一致した。これらのことより、選別された菌株はC. diffluens(C. diffluensFC11株)であると結論づけられた。
【0035】
〔ガラクチュロン酸の酵素変換〕
次に、C. diffluensFC11株の無細胞抽出液(粗酵素)を用いて、ガラクチュロン酸の酵素変換について検討した。
【0036】
(a)酵母の培養
GYP寒天培地に菌をまきコロニーを形成させた。このコロニーをGYP培地3mlに植菌し、30℃で18時間振盪培養したものを種培養として用いた。
【0037】
まず、培地炭素源の酵素発現に及ぼす影響及び反応液のpH条件の検討を行った。その検討には、ガラクチュロン酸、シトラスペクチン、グルコース、ガラクトースの4種類の炭素源を用い、炭素源1w/v%、酵母エキス0.5w/v%、ペプトン0.5w/v%を含み、所定のpH5.0に調製された4種類の本培養用の培地を使用した。本培養用の培地20mlを太試験管に入れ、種培養を100μlを植菌し、30℃48時間振蕩培養した。
【0038】
上記培養により酵素発現条件を確定した後、ガラクチュロン酸1w/v%、酵母エキス0.5w/v%、ペプトン0.5w/v%含有、pH5.0に調製された本培養の培地を使用し、太試験管に20mlの培地を入れ、種培養の100μlを植菌し、30℃で48時間振蕩培養した。
【0039】
(b)無細胞抽出液(粗酵素)の調製
培養菌体を遠心分離(15,000rpm、10分間)により集菌し、10mMのリン酸カリウム緩衝液(以後「KPB」と称する。)pH7.0で洗菌後、10mMKPBpH7.0に懸濁した。懸濁菌体はビーズビーダーを用いて破砕し(2,500rpm、1分間、3回繰り返し)、遠心分離(15,000rpm、10分間)により上清画分と沈殿(細胞残渣)画分に分離した。得られた上清画分を無細胞抽出液とした。
【0040】
(c)無細胞抽出液によるガラクチュロン酸変換反応
図8に示す方法に従い、4種類の炭素源を用いて培養した菌体から得られた無細胞抽出液を用いて18時間酵素反応を行った。コントロールとして5分間加熱した無細胞抽出液を用いた。活性の有無は反応液10μlをDionex DXc-500システム・HPAECに供し、ガラクチュロン酸の定量によって確認した。高速液体クロマトグラフィの条件は前記表4に示す条件と同じである。また、変換反応のpH条件はpH5.0,6.0,7.0とし、pH5.0は酢酸バッファー、pH6.0とpH7.0はKPBによって調製した。
【0041】
(d)透析した無細胞抽出液によるガラクチュロン酸変換反応
無細胞抽出液25mlを10mMKPB1000mlで2時間透析をした。NADPH0.25mM酵素反応液に添加する場合にはこの操作を2回繰り返した。反応組成及び操作、活性の確認方法は図9に示された。活性の有無は反応液10μlをDionex DXc-500システム・HPAECに供し、ガラクチュロン酸の定量によって確認した。HPAECの条件は、上記(c)無細胞抽出液と同じ条件である。なお、比較例として透析後の無細胞抽出液を加熱処理して、同様の試験を行った。
【0042】
(e)ガラクチュロン酸依存性NADPHの酸化反応
ガラクチュロン酸の酵素反応におけるNADPHの関与を確認するため、図10に示された方法でNADPHの酸化反応を調べた。ガラクチュロン酸の酵素反応におけるNADPHの酸化は、NADPHに特異的な吸収波長(OD340)の初速度変化を測定することによって求めた。
【0043】
(f)試験結果
酵素発現条件として、上記したように、4種類の炭素源を用いてガラクチュロン酸変換酵素の発現に及ぼす影響を調べた。その結果、ガラクチュロン酸を炭素源として培養した菌の無細胞抽出液でのみガラクチュロン酸のピークの減少を確認することができた(図11)。また、図11にはpHが7.0の場合を示しているが、反応液のpHが6.0のときにもガラクチュロン酸の減少を確認することができた(図示せず)。しかしながら、pH5.0の場合はピークの減少を確認することはできなかった(図示せず)。
【0044】
次に、無細胞抽出液を十分に透析したのち、図8に示された反応条件で同じ反応を行ったところガラクチュロン酸の減少は見られなかった。そこで補酵素が関与している可能性を考慮し、NADPとNADPHを添加して図9に示された条件で反応を行ったところ、NADPHを添加した場合に活性が復活し、ガラクチュロン酸のピークは消失していた(図示せず)。このことよりガラクチュロン酸変換反応はNADPHを補酵素とする還元反応であることが確認された。また、NADPHを加え反応時間10分で反応を行ったところ、図12に示されたようにGalA(ガラクチュロン酸)のピークの減少が確認できた。また、反応産物と思われる新たなピークが現れた。次に、ガラクチュロン酸の酵素反応におけるNADPHの関与を調べた結果、ガラクチュロン酸の添加に基づくOD340の減少を確認することができた(図示せず)。
【0045】
このようにガラクチュロン酸の変換反応がNADPHの酸化と連動していることより、ガラクチュロン酸の還元反応が起っていると考えられた。
【0046】
〔ガラクチュロン酸還元酵素の精製〕
C. diffluensFC11株から、ガラクチュロン酸還元酵素の精製を行った。
(a)種培養及び本培養
種培養にはGYP培地(Yeast extract 0.5%、Peptone 0.5%、Glucose 0.5%含有)を用いた。また、本培養には、ガラクチュロン酸変換反応の際に用いた本培養用の培地を改良したガラクチュロン酸0.2w/v%、酵母エキス0.5w/v%、ペプトン0.5w/v%含有、pH5.0の培地を使用した。培養は100mlの培地を500mlコルベンに入れたものを10本、合計1Lで44時間振蕩培養を行った。
【0047】
(b)酵素活性の測定
本酵素の活性はガラクチュロン酸の還元に伴うNADPH酸化で測定した。この測定は図13に示す方法で行った。また、タンパク質の定量は280nmの吸光度から算出した。
【0048】
(c)還元酵素の精製
培養菌体を遠心分離(10,000rpm、10分間)で集菌し、10mMKPB(pH7.0)で洗菌後、10mMKPBに懸濁した。懸濁菌体はOHTAKE WORKSのFRENCH PRESSを用いて1,500kg/cm2で1回破砕を行った。破砕した菌体を遠心分離(10,000rpm、10分間)により、上清画分と沈殿(細胞残渣)画分に分離した。上清画分を10mMKPBで十分に透析したものを粗酵素液とした。
【0049】
得られた粗酵素液を10mMKPB(pH7.0)で平衡化したDEAE-toyopearlカラム(φ4×6cm)に供し、0〜0.5MNaClの直線濃度勾配法により溶出した。流速は4.0ml/min(10ml/fraction)で行った。このときのクロマトグラムが図14に示された。
【0050】
DEAE-toyopearlカラムクロマトにより得られた活性画分を回収し、10mMKPB(pH7.0)で透析した後、10mMKPBで平衡化したRed-toyopearlカラム(φ1×20cm)に供し、0.3MのNaClで洗浄後0.3〜0.8MNaClの直線濃度勾配法により溶出した。1.0ml/min(5ml/fraction)で行った。このときのクロマトグラムが図15に示された。
【0051】
さらに、Red-toyopearlカラムクロマトにより得られた活性画分を回収し、10mMKPB(pH7.0)で透析した後、10mMKPB(pH7.0)で平衡化したRed-toyopearlカラム(φ1×20cm)に再び供し、0〜0.5MNaClの直線濃度勾配法により溶出した。1.0ml/min(5ml/fraction)で行った。このときのクロマトグラムを図16に示された。
【0052】
2回目のRed-toyopearlカラムクロマトにより得られた活性画分を回収し、10mMKPB(pH7.0)で透析した後、10mMKPB(pH7.0)で平衡化したAmersham Pharmacia Biotech 社製のMono Q HR 5/5カラムに供し、0〜0.4MNaClの直線濃度勾配法により溶出した。1.0ml/min(1ml/fraction)で行った。このときのクロマトグラムが図17に示された。
【0053】
Mono Qカラムにより得られた活性画分について、SDS−PAGE法によって精製度を確認した。SDS−PAGEは、「細胞工学 別冊目で見る実験ノートシリーズ バイオ実験イラストレイテッド5」(秀潤社)の方法に従った。SDS−ポリアクリルアミドゲルの組成が表5に、2×サンプルバッファーの組成が表6に示される。サイズマーカーにはXL-Lader Broad(APRO)を用いた。酵素液と等量のサンプルバッファーを混合し、100℃、3分間熱処理して調製したサンプルを20mAで電気泳動後、クマシーブルー染色を行ってタンパク質のバンドを検出した。その結果が図18に示された。
【0054】
図18に示すレーン7、8、9はそれぞれMono QカラムによるフラクションNo.50、51、53に対応する。これらのレーンはほぼ単一のバンドを示し、精製度が高いことが確認された。また、これらのバンドから、ガラクチュロン酸の還元酵素の分子量は約45kDaであると確定された。
【0055】
【表5】
【0056】
【表6】
【0057】
〔ガラクチュロン酸還元酵素の性質〕
次に精製された酵素の性質が調べられた。
(a)温度安定性及びpH安定性
温度安定性は酵素をpH7.0において各温度で30分間放置した後、残存する活性を反応温度30℃で測定することにより調べた。また、pH安定性は4℃において各pHで12時間放置した後、残存する活性をpH7.0で測定することにより調べた。測定は図13に示す方法に準じて行われた。各pHの調整は、pH4.0とpH5.0は酢酸バッファー、pH6.0とpH7.0及びpH8.0はKPB、pH9.0はグリシンバッファー、pH10.0はNa2CO3−NaHCO3を用いた。これらの結果は図19及び図20に示された。
【0058】
これらの結果、この酵素は45℃まで安定であり、pH6.0〜8.4で比較的安定であることが判った。これらの保存環境下においても、60%以上の相対活性を有し、失活することはなかった。
【0059】
(b)至適温度及び至適pH
酵素反応における温度とpHの影響を調べた。至適温度の測定は、図13に示した方法と同様の方法で行われ、反応液を各温度で1分間インキュベートした後に活性測定が実施された。至適pHの測定において、pH4.0とpH5.0は酢酸バッファー、pH6.0とpH7.0及びpH8.0はKPB、pH9.0はグリシンバッファー、pH10.0はNa2CO3−NaHCO3を用いてpH調整を行った。各バッファーは50mMに調製した。これらの結果は図21及び図22に示された。
【0060】
その結果、至適温度は約40℃、至適pHはpH6.3であることがわかった。また、本酵素は10℃においても最大活性の約60%の相対活性を示し、好冷性酵素であると結論づけられる。
【0061】
(c)酵素反応における金属塩の影響
金属塩の影響は次に示すMgCl2、CaCl2、BaCl2、ZnCl2、NiCl2、CoCl2、MnCl2、HgCl2、CuCl2、CdCl2、FeCl2、AgCl、KCl、NaCl、PbCl2を各々1mM添加することにより調べた。反応条件が図23に示された。また、それらの結果は表7に示された。
【0062】
【表7】
【0063】
本酵素のガラクチュロン酸の還元活性は1mMのCu2+、Fe2+、Pb2+で完全な阻害を受けた。Cd2+、Zn2+に若干の阻害が認められた。1mMのMg2+、Co2+、Mn2+、Na+、Ca2+、Ni2+、K+、Ba2+、Zn2+は活性を阻害することはなかった。また、活性を促進する金属は確認できなかった。
【0064】
(d)基質特異性
基質特異性の検討には、基質にガラクチュロン酸、ガラクトース、グルクロン酸、グルコース、マンノース、ソルビトール、グルコン酸を各50μg/ml用い、図13に示す方法に従った。その結果が表8に示された。
【0065】
【表8】
【0066】
本酵素はガラクチュロン酸に対してもっとも強い活性を示した。しかし、6位が水酸基であるガラクトースに対してまったく活性を示さなかった。また、ウロン酸であるグルクロン酸に対してはガラクチュロン酸に対する活性の2/3の活性を示した。アルドン酸であるグルコン酸に対してはまったく活性を示さなかった。これらのことより本酵素は糖の6位のカルボキシル基を認識して反応することが示唆された。
【0067】
(d)補酵素要求性
補酵素要求性はNADPH又はNADHを各0.25mM用いて、図13に示す方法に準じて行った。その結果が表9に示される。
【0068】
【表9】
【0069】
NADPHとNADHを補酵素として添加し、反応を行った結果、表9に示されたようにNADPH添加時にOD340の減少が確認できた。この減少はガラクチュロン酸依存的であった。しかし、NADH添加時には確認できなかった。このことから、本酵素はNADPHを補酵素(電子供与体)として利用していると言える。
【0070】
〔ガラクチュロン酸還元酵素による反応産物の同定〕
(a)ソモギーネルソン法による定量
ガラクチュロン酸の1位のアルデヒド基が還元されているのではないかと仮定し、酵素反応による還元末端糖量の変化を測定した。還元糖量の定量はソモギーネルソン法に従い、ガラクチュロン酸の吸収ピークであるOD660における検量線からガラクチュロン酸の濃度を測定した。その測定方法が図24に示された。コントロールとして煮沸処理した酵素を用いて反応させた反応溶液を用いた。その結果が表10に示された。
【0071】
【表10】
【0072】
結果、コントロールとして煮沸処理した酵素を用いた反応液よりも酵素反応液の還元末端糖量が減少しており、本酵素が1位のアルデヒド基を還元していることが理解された。
【0073】
(b)反応産物の精製
ガラクチュロン酸0.05mMを含む50mMKPBの基質溶液に、酵素とNADPHを徐々に加えていき酵素反応を行った。NADPHの減少をOD340によって計測し、減少が見られなくなった時の反応液と反応前の基質溶液をHPAECによって測定しガラクチュロン酸のピークの消失を確認した。酵素反応の終了後、反応液を遠心濃縮により80倍に濃縮した。その後、不溶化した酵素タンパクを遠心分離(15,000rpm、10分間)により取り除いた。その後、Bio-Gel P-2 Gelに供し、NADPHと反応産物を分離した。HPAECで目的とする反応産物ピークを確認した。その後、エバポレーターにより乾固し、精製物を得た。
【0074】
(c)NMR(核磁気共鳴)による解析
NMR日本電子JMTC-400/54/SS400MHzを用いてガラクチュロン酸、D−ガラクトノ1,4ラクトン、D−ガラクトノ1,4ラクトンアルカリ開環産物(D−ガラクトン酸)、反応産物の解析を行った。得られた13C NMRのスペクトルとChemDraw Ultra 6.0によって示されたスペクトルの比較によってその確認を行った。解析に用いた反応産物は、得られた反応産物をD2Oに溶解し凍結乾燥させたものを用いた。その結果が図25〜28に示される。図25は反応産物を、図26はD−ガラクトノ1,4ラクトンを、図27はD−ガラクトノ1,4ラクトンアルカリ開環産物を、図28はガラクチュロン酸を示す。
【0075】
その結果、図25〜28に示されるように、開環させたD−ガラクトノ1,4ラクトンのスペクトルと反応産物のスペクトルが一致した。このことから本酵素による反応産物は、D−ガラクトノ1,4ラクトンが開環した化合物であると同定した。NMRではD体とL体はほぼ同じスペクトルを与えるので、反応産物はL−ガラクトン酸であることが理解された。
【0076】
なお、非特許文献3で開示されているL−ガラクトン酸脱水素酵素はガラチュロン酸の酸化反応(逆反応)も触媒するが、本発明のガラクチュロン酸還元酵素はこの逆反応の作用はほとんどなく、また、至適温度が低温域にあるため、酵素としては全く異なる酵素であると言える。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明による酵母及び酵素はガラクチュロン酸を資化して、L−ガラクトン酸を生成するので、ペクチンの分解産物であるガラクチュロン酸がバイオマスとして容易に利用されうる。特にガラクチュロン酸還元酵素は10〜20℃ないし30℃という比較的低温環境下でも優れた活性を示す。従って、室温での還元反応も可能となり、エネルギーコストが軽減される。また、酵母も低温下で増殖可能なために、ペクチンを炭素源とする種々の発酵食品やバイオマスへの応用が期待される。
【技術分野】
【0001】
本発明は新規なガラクチュロン酸還元酵素及びガラクチュロン酸を資化する酵母に関する。
【背景技術】
【0002】
ペクチンは野菜や果実に多く含まれているが、その再利用に関して、例えばりんご搾汁残渣に含まれるペクチンは、その約70%が農作物の肥料、家畜の飼料、増粘多糖類、ゲル化剤、乳タンパク安定剤などの食品添加物に再利用されるにすぎず、残る約30%のペクチンが廃棄されているとの報告がある。また、ペクチンはりんご以外の果物、特に柑橘類の搾汁残渣にも多く含まれるが、その再利用率はりんごの場合よりもさらに低いといわれている。このようにペクチンの再利用は肥料等の安価な利用かつ食品産業など限られた産業における利用にとどまっており、ペクチンを幅広い産業でバイオマス資源として再利用することは天然資源の確保の面からも、ごみ処理という環境浄化の面からも注目に値する。
【0003】
ペクチンは植物細胞壁・特に果実の細胞壁に多く含まれる非セルロース性多糖であり、ホモガラクツロナン、ラムノガラクツロナン−I、ラムノガラクツロナン−IIという3つの特徴的な構造ドメインから形成される複合多糖である。このうち、ホモガラクツロナンはペクチンの主要構成糖として知られており、ペクチンの約70%を占める。ホモガラクツロナンの中でもっとも一般的な構造はガラクチュロン酸のみがα−1,4−結合したポリガラクチュロン酸であり、一部のガラクチュロン酸にはそのカルボキシル基がメチルエステル化されたものやその水酸基がアセチル化されたものが存在している。
【0004】
ポリガラクチュロン酸は様々な微生物によって分解される。例えば、植物寄生性を示すバクテリア、例えば一部の糸状菌は、ガラクチュロン酸をピルビン酸とグリセルアルデヒド3リン酸にまで代謝する。この代謝は、真性細菌によく見られる代謝系であるエントナードウトロフ(ED)経路を利用することによって行われている。また、Kluyveromyces属酵母など、酵母においても、ポリガラクチュロン酸のグルコシド結合を加水分解するポリガラクチュロン酸分解酵素(ポリガラクチュロナーゼ)を生産する種はいくつか知られている(例えば非特許文献1や2参照)。
【0005】
しかしながら、ガラクチュロン酸をピルビン酸とグリセルアルデヒド3リン酸にまで代謝するED経路は真核生物では確認されておらず、酵母ではポリガラクチュロン酸から分解されたガラクチュロン酸を利用することはできないと考えられていた。事実、Kluyveromyces属酵母をはじめとしたポリガラクチュロナーゼ生産酵母において、ポリガラクチュロナーゼ分解産物であるガラクチュロン酸が資化されたという報告例はない。そして、ガラクチュロン酸を資化する酵母を利用することができれば、ペクチンの再資源化においても有効な手段を与えると考えられる。
【0006】
ガラクチュロン酸を還元する酵素として、これまでのところカビの一種であるHypocreajecorina株から得られたL−ガラクチュロン酸脱水素酵素が報告されているが(非特許文献3)、酵母を起源とするものは知られていない。しかも、低温においても活性を維持するものは知られていない。
【0007】
一方、近年では、食品の熟成等に用いられている低温機能性酵素への期待が高まっており、その低温適応性微生物が着目されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Hirose, N., Kishida, K., Kawasaki, H. and Sakai, T. (1999) Purification and characterization of an endo-polygalacturonase from a mutant of Saccharomyces cerevisiae., Bioscience Biotechnology and Biochemistry vol.63, 1100-1103
【0009】
【非特許文献2】Sienkstele, R., Bartkeviciute, D. and Sasnauskas K. (1999) Cloning,targeted disruption and heterologous expression of the Kluyveromyces marxianus endo-polygalacturonase gene (EPG1). Yeast vol.15, 311-322
【0010】
【非特許文献3】Kuorelahti, S., Kalkkinen, N., Penttila, M., Londesborough, J., Richard, P., Identification in the mold Hypocrea jecorina of the first fungal D-galacturonic acid reductase, Biochemistry vol. 44: 11234-11240 (2005)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明はガラクチュロン酸を資化する酵母及びそれを分解する酵素を提供し、ポリガラクチュロン酸の分解産物であるガラクチュロン酸を資化してペクチンの再資源化に貢献することを課題としている。
【0012】
このような背景技術のもと、本願発明者は種々の研究を重ねたところ、タイ地酒オウ(Ou)の酒もと(Cocha)から単離された低温適応酵母が、ガラクチュロン酸を資化していることを見いだし、本願発明を完成するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の酵母は、タイ地酒オウ(Ou)の酒もと(Cocha)から単離された酵母C. diffluens FC11株であり、本発明のガラクチュロン酸還元酵素は、酵母C. diffluens FC11株によって産生され、以下の性質を有する。
(1)温度安定性及びpH安定性
20〜45℃及びpH6.0〜8.4の環境下で安定である。
(2)至適温度及び至適pH
至適温度は40℃付近、至適pHは6.3付近である。
(3)基質特異性
ガラクチュロン酸、グルクロン酸に作用するが、ガラクトース、グルコース、マンノース、ソルビトール、グルコン酸には作用しない。
(4)金属による影響
各1mMのCu2+、Fe2+、Pb2+によって阻害を受ける。
(5)電子供与体
NADPH特異的である。
(6)分子量
約45kDa(SDS−PAGE法による)である。
【発明の効果】
【0014】
本発明の酵素によるとペクチンの分解産物であるガラクチュロン酸をL−ガラクトン酸に低温で資化することができる。また、この酵素を有する酵母の利用により、ペクチンを低温でL−ガラクトン酸まで分解利用できるために、ペクチンの利用範囲が広がる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】ゲノムDNAの抽出手順を示す図である。
【図2】プライマーD1を用いて決定された酵母FC11株の26SrDNAと酵母C. diffluens標準株との相同性を示す図である。
【図3】プライマーD2を用いて決定された酵母FC11株の26SrDNAと酵母C. diffluens標準株との相同性を示す図である。
【図4】酵母FC11株の培養(振蕩培養)中における培地中ガラクチュロン酸の減少を示す図である。
【図5】酵母FC11株の増殖を示す培養(振蕩培養)曲線である。
【図6】酵母FC11株の培養(静置培養)中における培地中ガラクチュロン酸の減少を示す図である。
【図7】酵母FC11株の増殖を示す培養(静置培養)曲線である。
【図8】無細胞抽出液によるガラクチュロン酸変換反応を調べるための操作手順を示す図である。
【図9】透析した無細胞抽出液によるガラクチュロン酸変換反応を調べるための操作手順を示す図である。
【図10】NADPHの酸化反応を調べるための操作手順を示す図である。
【図11】無細胞抽出液によるガラクチュロン酸変換反応におけるクロマトグラムであって、上のクロマトグラムは加熱した無細胞抽出液による場合を、下のクロマトグラムは非加熱の細胞抽出液による場合を示す。
【図12】透析後の無細胞抽出液(NADPH添加)によるガラクチュロン酸変換反応におけるクロマトグラムであって、上のクロマトグラムは非加熱の透析した無細胞抽出液による場合を、下のクロマトグラムは加熱処理後の透析した無細胞抽出液による場合を示す。
【図13】精製された酵素によるガラクチュロン酸の還元反応を調べるための操作手順を示す図である。
【図14】酵素精製途中におけるDEAE-toyopearlカラムによるクロマトグラムである。
【図15】酵素精製途中における第1回目のRed-toyopearlカラムによるクロマトグラムである。
【図16】酵素精製途中における第2回目のRed-toyopearlカラムによるクロマトグラムである。
【図17】酵素精製途中におけるMono Q HRカラムによるクロマトグラムである。
【図18】分画により得られた酵素のSDS−PAGEを示す図である。
【図19】精製された酵素の温度安定性を示す図である。
【図20】精製された酵素のpH安定性を示す図である。
【図21】精製された酵素の至適温度を示す図である。
【図22】精製された酵素の至適pHを示す図である。
【図23】精製された酵素反応における金属塩の影響を調べるための操作手順を示す図である。
【図24】還元糖量の測定方法を示す図である。
【図25】酵素反応による反応産物のNMRチャートである。チャート上の角枠内にその一部が拡大されている。
【図26】D−ガラクトノ1,4ラクトンのNMRチャートである。
【図27】D−ガラクトノ1,4ラクトンアルカリ開環産物のNMRチャートである。チャート上の角枠内にその一部が拡大されている。
【図28】ガラクチュロン酸のNMRチャートである。チャート上の角枠内にその一部が拡大されている。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の酵素は、タイ地酒オウ(Ou)の酒もと(Cocha)から単離された低温適応酵母由来の分子量約45kDaのガラクチュロン酸酸化酵素であって、次の理化学的性質を有する。
(1)温度安定性及びpH安定性
20〜45℃及びpH6.0〜8.4の環境下で安定である。
(2)至適温度及び至適pH
至適温度は40℃付近、至適pHは6.3付近である。
(3)基質特異性
ガラクチュロン酸、グルクロン酸に作用するが、ガラクトース、グルコース、マンノース、ソルビトール、グルコン酸には作用しない。
(4)金属による影響
各1mMのCu2+、Fe2+、Pb2+によって阻害を受けるが、各1mMのMg2+、Co2+、Mn2+、Na+、Ca2+、Ni2+、K+、Ba2+、Zn2+によって阻害を受けない。
(5)電子供与体
NADPH特異的である
【0017】
本発明の酵素は、低温適応酵母であるCryptococcus diffluens FC11株(寄託番号:NITE P-611、寄託日:平成20年7月18日)によって産生される。この酵母は、タイの地酒オウ(Ou)の酒もとを分離源とする培養から単離された酵母である。この酵母は、一般的な酵母があまり増殖を示さない4℃で顕著に増殖し、15〜30℃で良好に増殖するが、35℃以上ではほとんど増殖しない。この酵母はガラクチュロン酸を資化し、好気性条件下では、ガラクチュロン酸を含有しない培地よりも、それを含有する培地において増殖速度が速い。
【0018】
この酵母は、他の酵母では認められないガラクチュロン酸資化能を有するという特徴を有する他、次の形態学的特徴や生理学的性質を有する。なお、形態学的特徴や生理学的性質は他のCryptococcus diffluens属に属する菌株とほぼ変わりがなく、低温での増殖に特徴があると言える。
(1)形態学的特徴
球形、単極出芽であるが、偽菌糸については不明。
(2)温度特性
4〜30℃で増殖し、約25℃が最適増殖温度であって、15℃以下においても旺盛に増殖する。
(3)菌学的特徴
好気性菌で発酵性はなく、嫌気条件では生育しない。
(4)酵素生産
ガラクチュロン酸還元酵素の他にポリガラクチュロン酸(ペクチンの主要構成糖)分解酵素及びアミラーゼ、オーツスペルトキシランの分解酵素を生産する。また、ガラクチュロン酸還元酵素以外のこれらの酵素も低温適応酵素であって、ガラクチュロン酸還元酵素の酵素活性(分解活性)の至適温度は30℃であり、15℃での活性が最大活性の活性の約80%、4℃でも最大活性の約20%程度である。
(5)資化性
スクロース、マルトース、トレハロース、ラクトース、ルフィノース、可溶性デンプン、キシロース、アラビノース、ラムノース、ガラクチュロン酸を資化するがガラクトース、リボースを資化しない。また、その他の資化性について、Cryptococcus diffluens strain CBS8985と相違はない。
【0019】
酵母を培養するための培地は、他の酵母を培養するための培地と変わるところがなく、種々の酵母培養用の培地が用いられる。ただし、本発明の酵母はガラクトースやリボースを資化できないので、培地にはガラクトースやリボース以外の糖が用いられ、スクロース、マルトース、トレハロース、ラクトース、ルフィノース、可溶性デンプン、キシロース、アラビノース、ラムノースが好ましく用いられる。また、上記のとおり、ガラクチュロン酸を資化し、ガラクチュロン酸を用いることにより増殖速度が高くなるので、ガラクチュロン酸を前記糖に替えて、あるいは前記糖に加えて用いるのが好ましい。
【0020】
培養条件、特に培養温度については他の酵母とは異なり、35℃を超えると生育はほとんど認められず、35℃以下の低温度における好気的条件下、具体的には4〜15℃の温度において培養するのが好ましい。培地のpHについては他の酵母と同様に中性付近で培養を行わせることもできるが、pH5.0〜6.0の条件下で培養をするのが好ましい。pH7.0付近になると増殖速度が低下する傾向にあり、他の酵母に比べると最適生育pHは低いと考えられる。
【0021】
本発明の酵素はガラクチュロン酸を還元してL−ガラクトン酸を生成する。酵素反応は、至適pHであるpH6.3付近で行わせるのが望ましいが、pH6〜8の範囲で反応を行わせることができる。また、至適温度である40℃付近で行わせるのが望ましいが、10〜50℃の温度範囲で行わせることもできる。特に10〜30℃の低温においても、至適温度における活性の60%程度の活性効率で反応を行わせることができ、室温条件でもガラクチュロン酸をL−ガラクトン酸に変換することができる。
【0022】
得られた、L−ガラクトン酸は、例えば加熱調理用食品の添加剤として使用される他(特開2005−21153号公報参照)、種々の工業用薬品として使用されうる。
【実施例1】
【0023】
次に、本発明の酵母及び酵素について、以下の実施例に基づき、さらに詳細に説明する。
〔酵母の単離〕
タイ地酒オウ(Ou)の酒もと(Cocha)を滅菌生理食塩水に懸濁し、YPD培地に接種後、4℃で14日間静置した。その培養液を、アンピシリン(50μg/ml)含有YPDプレート培地に塗布して25℃で培養した。プレート培地に生育したコロニーを再度YPD培地で4℃、7日間培養し、生育した菌株から酵母菌(FC11株)を選別した。
【0024】
選別した酵母菌を、YPD培地を用いて各種温度(4℃、15℃、25℃、35℃)で7日間培養したところ、4℃で顕著に増殖し、15〜25℃で良好な生育が認められた。また、35℃以上では生育が認められなかったので、選別された酵母は低温適応性であることが判別した。
【0025】
〔菌株の同定〕
(a)26SrDNA遺伝子の塩基配列の解析
酵母の26SrDNAの塩基配列解析を行った。
i)DNAの塩基配列の確認
PCRの鋳型とするために菌体からゲノムDNAの抽出を行った。その抽出法を図1に示す。次にPCRに用いるプライマーを合成した。その塩基配列が表1に示される。26SD1で示されるプライマー(配列番号1)はForward側、26SD2で示されるプライマー(配列番号2)はReverse側である。また、相同性を調べるために用いられた菌株を表2に示した。
【0026】
【表1】
【0027】
塩基配列決定はDye termination法を用いた。ゲノムDNAの抽出に用いた試料はBECKMAN COULTER社製のCEQTM DTCS-Quick Start Kitを用いて作製した。実験手法は付属説明書に従った。抽出したゲノムDNAを鋳型とし、上記表1に示すプライマーを用いた。反応はBIO-RAD社製のi Cyclerにより行った。反応溶液の調製は東洋紡社のBlend Taq ポリメラーゼの付属説明書を参考にした。反応は、変性94℃、30秒、アニーリング49.1℃, 1分、伸長72℃ 1.5分で35サイクル行った。シークエンサーは、BECKMAN COULTER社製のCEQ 2000XLF DNA Analysis Systemを使用した。塩基配列の解析は、遺伝子解析ソフトGENETYX(ソフトウェア開発社製)によって行った。
【0028】
ii)DNAの塩基配列
上記により決定された酵母26SrDNAの塩基配列の相同性が表2に示された。また、本発明の単離された酵母FC11株と酵母C. diffluens CBS8985株、UWFP株(以下においては、両者を「標準株」として説明する)との相同性が図2及び図3に示された。各図上段はC. diffluens標準株の26SrDNAを、各図下段は本発明の単離された酵母FC11株の26SrDNAを示している。Forward側のD1プライマーの使用により決定された酵母C. diffluens標準株の塩基配列が配列表の配列番号3で、D1プライマーの使用により決定された酵母FC11株の塩基配列が配列番号4で示される。また、D2プライマーの使用により決定された酵母C. diffluens標準株の塩基配列が配列表の配列番号5で、D2プライマーの使用により決定された酵母FC11株の塩基配列が配列番号6で示される。配列番号7で示されたものは酵母26SrDNAのD1/D2領域の全塩基配列である。この塩基配列は、Kurutzman、Robnettの方法(1998)により決定されたものである。
【0029】
【表2】
【0030】
(b)糖の資化性
次に選別された酵母FC11株における糖の資化性について調べた。酵母の前培養にはGYP培地(酵母エキス0.5w/v%、Peptone 0.5w/v%、Glucose 0.5w/v%含有)を使用し、資化性の確認にはSC糖添加培地(糖2.0w/v%、Yeast nitrogen base 0.7w/v%、Casamino acid 0.5w/v%含有)とSC糖無添加培地(Yeast nitrogen base 0.7w/v%、Casamino acid 0.5w/v%含有)を使用した。糖の資化性は、「The yeasts; a taxonomic study(Elsevier)(9)」を参考にして調べられた。
【0031】
(c)ガラクチュロン酸の資化性
ガラクチュロン酸(GalA)の資化性は、SC糖添加培地とSC糖無添加培地を用いて酵母を培養した時の菌体の増殖と培養液中の糖の減少の経時変化を比較することによって調べられた。糖の資化は、SCGalA添加培地(GalA0.5w/v%、Yeast nitrogen base 0.7w/v%、Casamino acid 0.5w/v%含有)とSC糖無添加培地(Yeast nitrogen base 0.7w/v%、Casamino acid 0.5w/v%含有)を使用した振蕩培養(好気的環境下)と静置培養(嫌気的環境下)とで行った。菌体の増殖はOD660によって計測し、糖の定量が高性能陰イオンクロマトグラフィ(以下「HPAEC」と言う)によって行われた。その結果が表3及び図4〜図7に示された。図4及び図5は振蕩培養による場合を、図6及び図7は静置培養による場合を示し、各図とも培地がガラクチュロン酸を含む場合を示している。HPAECの条件が表4に示される。なお、表3にはこれまで各種の文献で知られている種々の酵母(C. diffluens株)の資化性を参考に記した。表3中に示されるvariableは、菌株によって資化性が確定できないことを示しているが、そのほとんどは資化性があると考えられている。
【0032】
【表3】
【0033】
【表4】
【0034】
上記26SrDNAの相同性検索と糖の資化性の調査の結果、選別された菌株FC11株は、C. diffluens標準株の有する性質とよく一致した。また、赤みがかったコロニーをGYP寒天培地に形成し、この形態からもC. diffluens標準株と一致した。これらのことより、選別された菌株はC. diffluens(C. diffluensFC11株)であると結論づけられた。
【0035】
〔ガラクチュロン酸の酵素変換〕
次に、C. diffluensFC11株の無細胞抽出液(粗酵素)を用いて、ガラクチュロン酸の酵素変換について検討した。
【0036】
(a)酵母の培養
GYP寒天培地に菌をまきコロニーを形成させた。このコロニーをGYP培地3mlに植菌し、30℃で18時間振盪培養したものを種培養として用いた。
【0037】
まず、培地炭素源の酵素発現に及ぼす影響及び反応液のpH条件の検討を行った。その検討には、ガラクチュロン酸、シトラスペクチン、グルコース、ガラクトースの4種類の炭素源を用い、炭素源1w/v%、酵母エキス0.5w/v%、ペプトン0.5w/v%を含み、所定のpH5.0に調製された4種類の本培養用の培地を使用した。本培養用の培地20mlを太試験管に入れ、種培養を100μlを植菌し、30℃48時間振蕩培養した。
【0038】
上記培養により酵素発現条件を確定した後、ガラクチュロン酸1w/v%、酵母エキス0.5w/v%、ペプトン0.5w/v%含有、pH5.0に調製された本培養の培地を使用し、太試験管に20mlの培地を入れ、種培養の100μlを植菌し、30℃で48時間振蕩培養した。
【0039】
(b)無細胞抽出液(粗酵素)の調製
培養菌体を遠心分離(15,000rpm、10分間)により集菌し、10mMのリン酸カリウム緩衝液(以後「KPB」と称する。)pH7.0で洗菌後、10mMKPBpH7.0に懸濁した。懸濁菌体はビーズビーダーを用いて破砕し(2,500rpm、1分間、3回繰り返し)、遠心分離(15,000rpm、10分間)により上清画分と沈殿(細胞残渣)画分に分離した。得られた上清画分を無細胞抽出液とした。
【0040】
(c)無細胞抽出液によるガラクチュロン酸変換反応
図8に示す方法に従い、4種類の炭素源を用いて培養した菌体から得られた無細胞抽出液を用いて18時間酵素反応を行った。コントロールとして5分間加熱した無細胞抽出液を用いた。活性の有無は反応液10μlをDionex DXc-500システム・HPAECに供し、ガラクチュロン酸の定量によって確認した。高速液体クロマトグラフィの条件は前記表4に示す条件と同じである。また、変換反応のpH条件はpH5.0,6.0,7.0とし、pH5.0は酢酸バッファー、pH6.0とpH7.0はKPBによって調製した。
【0041】
(d)透析した無細胞抽出液によるガラクチュロン酸変換反応
無細胞抽出液25mlを10mMKPB1000mlで2時間透析をした。NADPH0.25mM酵素反応液に添加する場合にはこの操作を2回繰り返した。反応組成及び操作、活性の確認方法は図9に示された。活性の有無は反応液10μlをDionex DXc-500システム・HPAECに供し、ガラクチュロン酸の定量によって確認した。HPAECの条件は、上記(c)無細胞抽出液と同じ条件である。なお、比較例として透析後の無細胞抽出液を加熱処理して、同様の試験を行った。
【0042】
(e)ガラクチュロン酸依存性NADPHの酸化反応
ガラクチュロン酸の酵素反応におけるNADPHの関与を確認するため、図10に示された方法でNADPHの酸化反応を調べた。ガラクチュロン酸の酵素反応におけるNADPHの酸化は、NADPHに特異的な吸収波長(OD340)の初速度変化を測定することによって求めた。
【0043】
(f)試験結果
酵素発現条件として、上記したように、4種類の炭素源を用いてガラクチュロン酸変換酵素の発現に及ぼす影響を調べた。その結果、ガラクチュロン酸を炭素源として培養した菌の無細胞抽出液でのみガラクチュロン酸のピークの減少を確認することができた(図11)。また、図11にはpHが7.0の場合を示しているが、反応液のpHが6.0のときにもガラクチュロン酸の減少を確認することができた(図示せず)。しかしながら、pH5.0の場合はピークの減少を確認することはできなかった(図示せず)。
【0044】
次に、無細胞抽出液を十分に透析したのち、図8に示された反応条件で同じ反応を行ったところガラクチュロン酸の減少は見られなかった。そこで補酵素が関与している可能性を考慮し、NADPとNADPHを添加して図9に示された条件で反応を行ったところ、NADPHを添加した場合に活性が復活し、ガラクチュロン酸のピークは消失していた(図示せず)。このことよりガラクチュロン酸変換反応はNADPHを補酵素とする還元反応であることが確認された。また、NADPHを加え反応時間10分で反応を行ったところ、図12に示されたようにGalA(ガラクチュロン酸)のピークの減少が確認できた。また、反応産物と思われる新たなピークが現れた。次に、ガラクチュロン酸の酵素反応におけるNADPHの関与を調べた結果、ガラクチュロン酸の添加に基づくOD340の減少を確認することができた(図示せず)。
【0045】
このようにガラクチュロン酸の変換反応がNADPHの酸化と連動していることより、ガラクチュロン酸の還元反応が起っていると考えられた。
【0046】
〔ガラクチュロン酸還元酵素の精製〕
C. diffluensFC11株から、ガラクチュロン酸還元酵素の精製を行った。
(a)種培養及び本培養
種培養にはGYP培地(Yeast extract 0.5%、Peptone 0.5%、Glucose 0.5%含有)を用いた。また、本培養には、ガラクチュロン酸変換反応の際に用いた本培養用の培地を改良したガラクチュロン酸0.2w/v%、酵母エキス0.5w/v%、ペプトン0.5w/v%含有、pH5.0の培地を使用した。培養は100mlの培地を500mlコルベンに入れたものを10本、合計1Lで44時間振蕩培養を行った。
【0047】
(b)酵素活性の測定
本酵素の活性はガラクチュロン酸の還元に伴うNADPH酸化で測定した。この測定は図13に示す方法で行った。また、タンパク質の定量は280nmの吸光度から算出した。
【0048】
(c)還元酵素の精製
培養菌体を遠心分離(10,000rpm、10分間)で集菌し、10mMKPB(pH7.0)で洗菌後、10mMKPBに懸濁した。懸濁菌体はOHTAKE WORKSのFRENCH PRESSを用いて1,500kg/cm2で1回破砕を行った。破砕した菌体を遠心分離(10,000rpm、10分間)により、上清画分と沈殿(細胞残渣)画分に分離した。上清画分を10mMKPBで十分に透析したものを粗酵素液とした。
【0049】
得られた粗酵素液を10mMKPB(pH7.0)で平衡化したDEAE-toyopearlカラム(φ4×6cm)に供し、0〜0.5MNaClの直線濃度勾配法により溶出した。流速は4.0ml/min(10ml/fraction)で行った。このときのクロマトグラムが図14に示された。
【0050】
DEAE-toyopearlカラムクロマトにより得られた活性画分を回収し、10mMKPB(pH7.0)で透析した後、10mMKPBで平衡化したRed-toyopearlカラム(φ1×20cm)に供し、0.3MのNaClで洗浄後0.3〜0.8MNaClの直線濃度勾配法により溶出した。1.0ml/min(5ml/fraction)で行った。このときのクロマトグラムが図15に示された。
【0051】
さらに、Red-toyopearlカラムクロマトにより得られた活性画分を回収し、10mMKPB(pH7.0)で透析した後、10mMKPB(pH7.0)で平衡化したRed-toyopearlカラム(φ1×20cm)に再び供し、0〜0.5MNaClの直線濃度勾配法により溶出した。1.0ml/min(5ml/fraction)で行った。このときのクロマトグラムを図16に示された。
【0052】
2回目のRed-toyopearlカラムクロマトにより得られた活性画分を回収し、10mMKPB(pH7.0)で透析した後、10mMKPB(pH7.0)で平衡化したAmersham Pharmacia Biotech 社製のMono Q HR 5/5カラムに供し、0〜0.4MNaClの直線濃度勾配法により溶出した。1.0ml/min(1ml/fraction)で行った。このときのクロマトグラムが図17に示された。
【0053】
Mono Qカラムにより得られた活性画分について、SDS−PAGE法によって精製度を確認した。SDS−PAGEは、「細胞工学 別冊目で見る実験ノートシリーズ バイオ実験イラストレイテッド5」(秀潤社)の方法に従った。SDS−ポリアクリルアミドゲルの組成が表5に、2×サンプルバッファーの組成が表6に示される。サイズマーカーにはXL-Lader Broad(APRO)を用いた。酵素液と等量のサンプルバッファーを混合し、100℃、3分間熱処理して調製したサンプルを20mAで電気泳動後、クマシーブルー染色を行ってタンパク質のバンドを検出した。その結果が図18に示された。
【0054】
図18に示すレーン7、8、9はそれぞれMono QカラムによるフラクションNo.50、51、53に対応する。これらのレーンはほぼ単一のバンドを示し、精製度が高いことが確認された。また、これらのバンドから、ガラクチュロン酸の還元酵素の分子量は約45kDaであると確定された。
【0055】
【表5】
【0056】
【表6】
【0057】
〔ガラクチュロン酸還元酵素の性質〕
次に精製された酵素の性質が調べられた。
(a)温度安定性及びpH安定性
温度安定性は酵素をpH7.0において各温度で30分間放置した後、残存する活性を反応温度30℃で測定することにより調べた。また、pH安定性は4℃において各pHで12時間放置した後、残存する活性をpH7.0で測定することにより調べた。測定は図13に示す方法に準じて行われた。各pHの調整は、pH4.0とpH5.0は酢酸バッファー、pH6.0とpH7.0及びpH8.0はKPB、pH9.0はグリシンバッファー、pH10.0はNa2CO3−NaHCO3を用いた。これらの結果は図19及び図20に示された。
【0058】
これらの結果、この酵素は45℃まで安定であり、pH6.0〜8.4で比較的安定であることが判った。これらの保存環境下においても、60%以上の相対活性を有し、失活することはなかった。
【0059】
(b)至適温度及び至適pH
酵素反応における温度とpHの影響を調べた。至適温度の測定は、図13に示した方法と同様の方法で行われ、反応液を各温度で1分間インキュベートした後に活性測定が実施された。至適pHの測定において、pH4.0とpH5.0は酢酸バッファー、pH6.0とpH7.0及びpH8.0はKPB、pH9.0はグリシンバッファー、pH10.0はNa2CO3−NaHCO3を用いてpH調整を行った。各バッファーは50mMに調製した。これらの結果は図21及び図22に示された。
【0060】
その結果、至適温度は約40℃、至適pHはpH6.3であることがわかった。また、本酵素は10℃においても最大活性の約60%の相対活性を示し、好冷性酵素であると結論づけられる。
【0061】
(c)酵素反応における金属塩の影響
金属塩の影響は次に示すMgCl2、CaCl2、BaCl2、ZnCl2、NiCl2、CoCl2、MnCl2、HgCl2、CuCl2、CdCl2、FeCl2、AgCl、KCl、NaCl、PbCl2を各々1mM添加することにより調べた。反応条件が図23に示された。また、それらの結果は表7に示された。
【0062】
【表7】
【0063】
本酵素のガラクチュロン酸の還元活性は1mMのCu2+、Fe2+、Pb2+で完全な阻害を受けた。Cd2+、Zn2+に若干の阻害が認められた。1mMのMg2+、Co2+、Mn2+、Na+、Ca2+、Ni2+、K+、Ba2+、Zn2+は活性を阻害することはなかった。また、活性を促進する金属は確認できなかった。
【0064】
(d)基質特異性
基質特異性の検討には、基質にガラクチュロン酸、ガラクトース、グルクロン酸、グルコース、マンノース、ソルビトール、グルコン酸を各50μg/ml用い、図13に示す方法に従った。その結果が表8に示された。
【0065】
【表8】
【0066】
本酵素はガラクチュロン酸に対してもっとも強い活性を示した。しかし、6位が水酸基であるガラクトースに対してまったく活性を示さなかった。また、ウロン酸であるグルクロン酸に対してはガラクチュロン酸に対する活性の2/3の活性を示した。アルドン酸であるグルコン酸に対してはまったく活性を示さなかった。これらのことより本酵素は糖の6位のカルボキシル基を認識して反応することが示唆された。
【0067】
(d)補酵素要求性
補酵素要求性はNADPH又はNADHを各0.25mM用いて、図13に示す方法に準じて行った。その結果が表9に示される。
【0068】
【表9】
【0069】
NADPHとNADHを補酵素として添加し、反応を行った結果、表9に示されたようにNADPH添加時にOD340の減少が確認できた。この減少はガラクチュロン酸依存的であった。しかし、NADH添加時には確認できなかった。このことから、本酵素はNADPHを補酵素(電子供与体)として利用していると言える。
【0070】
〔ガラクチュロン酸還元酵素による反応産物の同定〕
(a)ソモギーネルソン法による定量
ガラクチュロン酸の1位のアルデヒド基が還元されているのではないかと仮定し、酵素反応による還元末端糖量の変化を測定した。還元糖量の定量はソモギーネルソン法に従い、ガラクチュロン酸の吸収ピークであるOD660における検量線からガラクチュロン酸の濃度を測定した。その測定方法が図24に示された。コントロールとして煮沸処理した酵素を用いて反応させた反応溶液を用いた。その結果が表10に示された。
【0071】
【表10】
【0072】
結果、コントロールとして煮沸処理した酵素を用いた反応液よりも酵素反応液の還元末端糖量が減少しており、本酵素が1位のアルデヒド基を還元していることが理解された。
【0073】
(b)反応産物の精製
ガラクチュロン酸0.05mMを含む50mMKPBの基質溶液に、酵素とNADPHを徐々に加えていき酵素反応を行った。NADPHの減少をOD340によって計測し、減少が見られなくなった時の反応液と反応前の基質溶液をHPAECによって測定しガラクチュロン酸のピークの消失を確認した。酵素反応の終了後、反応液を遠心濃縮により80倍に濃縮した。その後、不溶化した酵素タンパクを遠心分離(15,000rpm、10分間)により取り除いた。その後、Bio-Gel P-2 Gelに供し、NADPHと反応産物を分離した。HPAECで目的とする反応産物ピークを確認した。その後、エバポレーターにより乾固し、精製物を得た。
【0074】
(c)NMR(核磁気共鳴)による解析
NMR日本電子JMTC-400/54/SS400MHzを用いてガラクチュロン酸、D−ガラクトノ1,4ラクトン、D−ガラクトノ1,4ラクトンアルカリ開環産物(D−ガラクトン酸)、反応産物の解析を行った。得られた13C NMRのスペクトルとChemDraw Ultra 6.0によって示されたスペクトルの比較によってその確認を行った。解析に用いた反応産物は、得られた反応産物をD2Oに溶解し凍結乾燥させたものを用いた。その結果が図25〜28に示される。図25は反応産物を、図26はD−ガラクトノ1,4ラクトンを、図27はD−ガラクトノ1,4ラクトンアルカリ開環産物を、図28はガラクチュロン酸を示す。
【0075】
その結果、図25〜28に示されるように、開環させたD−ガラクトノ1,4ラクトンのスペクトルと反応産物のスペクトルが一致した。このことから本酵素による反応産物は、D−ガラクトノ1,4ラクトンが開環した化合物であると同定した。NMRではD体とL体はほぼ同じスペクトルを与えるので、反応産物はL−ガラクトン酸であることが理解された。
【0076】
なお、非特許文献3で開示されているL−ガラクトン酸脱水素酵素はガラチュロン酸の酸化反応(逆反応)も触媒するが、本発明のガラクチュロン酸還元酵素はこの逆反応の作用はほとんどなく、また、至適温度が低温域にあるため、酵素としては全く異なる酵素であると言える。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明による酵母及び酵素はガラクチュロン酸を資化して、L−ガラクトン酸を生成するので、ペクチンの分解産物であるガラクチュロン酸がバイオマスとして容易に利用されうる。特にガラクチュロン酸還元酵素は10〜20℃ないし30℃という比較的低温環境下でも優れた活性を示す。従って、室温での還元反応も可能となり、エネルギーコストが軽減される。また、酵母も低温下で増殖可能なために、ペクチンを炭素源とする種々の発酵食品やバイオマスへの応用が期待される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酵母由来であって、下記の性質を有する分子量約45kDaのガラクチュロン酸還元酵素。
(1)温度安定性及びpH安定性
20〜45℃及びpH6.0〜8.4の環境下で安定である。
(2)至適温度及び至適pH
至適温度は40℃付近、至適pHは6.3付近である。
(3)基質特異性
ガラクチュロン酸、グルクロン酸に作用するが、ガラクトース、グルコース、マンノース、ソルビトール、グルコン酸には作用しない。
(4)金属による影響
各1mMのCu2+、Fe2+、Pb2+によって阻害を受ける。
(5)電子供与体
NADPH特異的である。
【請求項2】
ガラクチュロン酸資化酵母C. diffluens FC11株(受託番号:NITE P-611、寄託日:平成20年7月18日)。
【請求項1】
酵母由来であって、下記の性質を有する分子量約45kDaのガラクチュロン酸還元酵素。
(1)温度安定性及びpH安定性
20〜45℃及びpH6.0〜8.4の環境下で安定である。
(2)至適温度及び至適pH
至適温度は40℃付近、至適pHは6.3付近である。
(3)基質特異性
ガラクチュロン酸、グルクロン酸に作用するが、ガラクトース、グルコース、マンノース、ソルビトール、グルコン酸には作用しない。
(4)金属による影響
各1mMのCu2+、Fe2+、Pb2+によって阻害を受ける。
(5)電子供与体
NADPH特異的である。
【請求項2】
ガラクチュロン酸資化酵母C. diffluens FC11株(受託番号:NITE P-611、寄託日:平成20年7月18日)。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図18】
【公開番号】特開2010−130998(P2010−130998A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−141110(P2009−141110)
【出願日】平成21年6月12日(2009.6.12)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成20年7月11日 社団法人日本生物工学会発行の「第60回日本生物工学会大会 講演要旨集」に発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成20年8月27日 社団法人日本生物工学会主催の「第60回日本生物工学会大会」において文書をもって発表
【出願人】(505127721)公立大学法人大阪府立大学 (688)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年6月12日(2009.6.12)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成20年7月11日 社団法人日本生物工学会発行の「第60回日本生物工学会大会 講演要旨集」に発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成20年8月27日 社団法人日本生物工学会主催の「第60回日本生物工学会大会」において文書をもって発表
【出願人】(505127721)公立大学法人大阪府立大学 (688)
【Fターム(参考)】
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