説明

ガラスアンテナの特性決定方法および構造

【目的】 双四角ループアンテナの特性決定を容易に行い得るようにすることと、双四角ループアンテナの利得、広帯域特性および指向性を向上させる。
【構成】 一対の対称形状の四角形ループ部1,1を備えたアンテナ本体Aをガラス面Wに配設するに当たって、前記各四角形ループ部1,1の縦寸法L1と横寸法L2との比を適当に設定することによりアンテナの利得、広帯域特性および指向性を決定するようにしている。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本願発明は、車両用等として使用されるガラスアンテナの特性決定方法および構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】一般的に、車両等の移動体用として使用されるガラスアンテナは、ウインドガラス等のガラス面に不透明なループ状の導体(即ち、ガラスループアンテナ線)をスパッタリングして構成されることとなっている(特開昭62ー102604号公報参照)。
【0003】ところで、上記のようなガラスアンテナとして、一対の対称形状の四角形ループ部を備えた双四角ループアンテナも提案されている。
【0004】このような双四角ループアンテナの場合、四角形ループ部の形状あるいは四角形ループ部の間隔もしくは給電部の位置によって、アンテナの利得、広帯域特性および指向性が大きく影響されることを、種々のテストを重ねるうちに本発明者らは知るに至ったのである。
【0005】なお、単純な形状の複数のループアンテナを扇形に拡開配置して広帯域化を図るようにしたものが特開昭61ー128609号公報に開示されているが、双四角ループアンテナにおける特性決定については何等開示されていない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本願発明は、上記の点に鑑みてなされたもので、双四角ループアンテナの特性決定を容易に行い得るようにすることと、双四角ループアンテナの利得、広帯域特性および指向性を向上させることを目的とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】請求項1の発明では、上記課題を解決するための手段として、一対の対称形状の四角形ループ部を備えたアンテナ本体をガラス面に配設するに当たって、前記各四角形ループ部の縦寸法と横寸法との比を適当に設定することによりアンテナの利得、広帯域特性および指向性を決定するようにしている。
【0008】請求項2の発明では、上記課題を解決するための手段として、一対の対称形状の四角形ループ部を備えたアンテナ本体をガラス面に配設するに当たって、前記四角形ループ部間の間隔を適当に設定することによりアンテナの利得、広帯域特性および指向性を決定するようにしている。
【0009】請求項3の発明では、上記課題を解決するための手段として、一対の対称形状の四角形ループ部を備え且つ該両四角形ループ部のそれぞれの一辺が相対向するアンテナ本体をガラス面に配設してなるガラスアンテナにおいて、相対向する一辺における一端側近傍に給電部を設けている。
【0010】
【作用】請求項1の発明では、上記手段によって次のような作用が得られる。
【0011】即ち、一対の対称形状の四角形ループ部を備えたアンテナ本体の場合、前記四角形ループ部の縦寸法と横寸法の比によってアンテナ利得、広帯域性および指向性が大きく影響されるところから、四角形ループ部の縦寸法と横寸法との比を適当に設定することにより、所望のアンテナ利得、広帯域性および指向性を有するガラスアンテナの設計が容易にできるのである。
【0012】請求項2の発明では、上記手段によって次のような作用が得られる。
【0013】即ち、一対の対称形状の四角形ループ部を備えたアンテナ本体の場合、前記両四角形ループ部間の間隔によってアンテナ利得、広帯域性および指向性が大きく影響されるところから、四角形ループ部間の間隔を適当に設定することにより、所望のアンテナ利得、広帯域性および指向性を有するガラスアンテナの設計が容易にできるのである。
【0014】請求項3の発明では、上記手段によって次のような作用が得られる。
【0015】即ち、一対の対称形状の四角形ループ部を備えたアンテナ本体における給電部を、各四角形ループ部の相対向する一辺の一端側近傍に設けるようにしたことにより、これを車両用ウインドガラスに配設する場合、窓枠部に近い方に給電部を位置せしめることが可能となるのである。
【0016】
【発明の効果】請求項1の発明によれば、一対の対称形状の四角形ループ部を備えたアンテナ本体をガラス面に配設するに当たって、前記各四角形ループ部の縦寸法と横寸法との比を適当に設定することによりアンテナの利得、広帯域特性および指向性を決定するようにしたので、四角形ループ部の縦寸法と横寸法との比を適当に設定することにより、所望のアンテナ利得、広帯域性および指向性を有するガラスアンテナの設計を容易に得ることができるという優れた効果がある。
【0017】請求項2の発明によれば、一対の対称形状の四角形ループ部を備えたアンテナ本体をガラス面に配設するに当たって、前記四角形ループ部間の間隔を適当に設定することによりアンテナの利得、広帯域特性および指向性を決定するようにしたので、四角形ループ部間の間隔を適当に設定することにより、所望のアンテナ利得、広帯域性および指向性を有するガラスアンテナの設計を容易に得ることができるという優れた効果がある。
【0018】請求項3の発明によれば、一対の対称形状の四角形ループ部を備え且つ該両四角形ループ部のそれぞれの一辺が相対向するアンテナ本体をガラス面に配設してなるガラスアンテナにおいて、相対向する一辺における一端側近傍に給電部を設けて、これを車両用ウインドガラスに配設する場合、窓枠部に近い方に給電部を位置せしめることが可能となるようにしたので、アンテナ利得、広帯域性および指向性の向上が図れるとともに、デザイン性も向上するという優れた効果がある。
【0019】
【実施例】以下、添付の図面を参照して、本願発明の好適な実施例を説明する。
【0020】図1には、本願発明の実施例にかかるガラスアンテナが示されている。
【0021】本実施例のガラスアンテナは、図1に示すように、一対の相似形状の四角形ループ部1,1と、該両四角形ループ部1,1における相対向する一辺1a,1a間に設けられる給電部2とからなるアンテナ本体Aをガラス面Wに配設して構成されている。本実施例の場合、ガラス面Wは、自動車のリヤウインドガラスとされている(図2参照)。
【0022】上記のように構成されたガラスアンテナは、各四角形ループ部1の形状(即ち、縦寸法L1と横寸法L2との比R=L1:L2)、四角形ループ部1,1における相対向する一辺1a,1a間の間隔D、給電部2の位置によってアンテナ利得(dB)、広帯域性(即ち、定在波比:SWR)および指向性が大きく影響されることが判明している。
【0023】そこで、各四角形ループ部1,1の縦横寸法比R=L1:L2を変えて、アンテナ利得(dB)、定在波比(SWR)および指向性を測定したところ、図3ないし図10に示す結果が得られた。
【0024】ここで、図3ないし図6には、平均利得、最大利得、最小利得および(平均利得ー最小利得)がそれぞれ示され、また、図7には、800MHz、850MHz、900MHzおよび950MHzにおける指向性がそれぞれ示されており、R=1:1の場合を実線で、R=5:2の場合を点線で、R=2:5の場合を1点鎖線で示している。さらに、図8ないし図10には、それぞれR=1:1、R=5:2およびR=2:5の場合における定在波比(SWR)が示されている。
【0025】これによれば、自動車電話用アンテナとしての使用周波数域である860〜970MHzにおいては、R=1:1の場合が極めて良好なアンテナ利得、広帯域性および指向性を示すことがわかる。
【0026】即ち、四角形ループ部1,1の縦寸法L1と横寸法L2との比R=L1:L2を適当に設定することにより、所望のアンテナ利得、広帯域性および指向性を有するガラスアンテナの設計を容易に得ることができるのである。
【0027】また、四角形ループ部1,1における相対向する一辺1a,1a間の間隔Dを変えて、アンテナ利得(dB)、定在波比(SWR)および指向性を測定したところ、図11ないし図20に示す結果が得られた。
【0028】ここで、図11ないし図14には、平均利得、最大利得、最小利得および(平均利得ー最小利得)がそれぞれ示され、また、図15には、800MHz、850MHz、900MHzおよび950MHzにおける指向性がそれぞれ示されており、D=0mmの場合を実線で、D=5mmの場合を点線で、D=15mmの場合を1点鎖線で、D=25mmで示している。さらに、図16ないし図20には、それぞれD=3mm、D=5mm、D=7mm、D=11mmおよびD=15mmの場合における定在波比(SWR)が示されている。
【0029】これによれば、自動車電話用アンテナとしての使用周波数域である860〜970MHzにおいては、D=5〜15mmの場合が良好なアンテナ利得、広帯域性および指向性を示すことがわかる。
【0030】即ち、四角形ループ部1,1における相対向する一辺1a,1a間の間隔Dを適当に設定することにより、所望のアンテナ利得、広帯域性および指向性を有するガラスアンテナの設計を容易に得ることができるのである。
【0031】さらに、給電部2の位置を変えて、アンテナ利得(dB)、定在波比(SWR)および指向性を測定したところ、図21ないし図30に示す結果が得られた。
【0032】ここで、図21ないし図24には、平均利得、最大利得、最小利得および(平均利得ー最小利得)がそれぞれ示され、また、図25には、800MHz、850MHz、900MHzおよび950MHzにおける指向性がそれぞれ示されており、給電部2の位置が、四角形ループ部1,1における相対向する一辺1a,1a間の下端(即ち、図1に示すもの)の場合を実線で、やや下の場合を点線で、センターの場合を1点鎖線で、やや上の場合を2点鎖線で、上端の場合を3点鎖線で示している。さらに、図26ないし図30には、それぞれ給電部2の位置が、下端、やや下、センター、やや上および上端の場合における定在波比(SWR)が示されている。
【0033】これによれば、自動車電話用アンテナとしての使用周波数域である860〜970MHzにおいては、給電部2の位置が下端およびやや下の場合が良好なアンテナ利得、広帯域性および指向性を示すことがわかる。
【0034】即ち、給電部2の位置は、四角形ループ部1,1における相対向する一辺1a,1a間の下端あるいはやや下に設定することにより、所望のアンテナ利得、広帯域性および指向性を有するガラスアンテナの設計を容易に得ることができるのである。
【0035】また、給電部2が下端あるいはやや下に位置せしめられたアンテナ本体Aを車両用ウインドガラスに配設する場合、窓枠部3に近い方に給電部2が位置せしめられることとなるところから、アンテナ利得、広帯域性および指向性の向上が図れるとともに、デザイン性も向上することとなるのである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本願発明の実施例にかかるガラスアンテナの正面図である。
【図2】本願発明の実施例にかかるガラスアンテナを備えた自動車の平面図である。
【図3】本願発明の実施例にかかるガラスアンテナにおける四角形ループ部の形状(即ち、縦横寸法比)を変えた場合の平均利得特性図である。
【図4】本願発明の実施例にかかるガラスアンテナにおける四角形ループ部の形状(即ち、縦横寸法比)を変えた場合の最大利得特性図である。
【図5】本願発明の実施例にかかるガラスアンテナにおける四角形ループ部の形状(即ち、縦横寸法比)を変えた場合の最小利得特性図である。
【図6】本願発明の実施例にかかるガラスアンテナにおける四角形ループ部の形状(即ち、縦横寸法比)を変えた場合の(平均ー最小)利得特性図である。
【図7】本願発明の実施例にかかるガラスアンテナにおける四角形ループ部の形状(即ち、縦横寸法比)を変えた場合の800MHz,850MHz,900MHzおよび950MHzでの指向性特性図である。
【図8】本願発明の実施例にかかるガラスアンテナにおける四角形ループ部の縦横寸法比=1:1とした場合の定在波比(SWR)特性図である。
【図9】本願発明の実施例にかかるガラスアンテナにおける四角形ループ部の縦横寸法比=5:2とした場合の定在波比(SWR)特性図である。
【図10】本願発明の実施例にかかるガラスアンテナにおける四角形ループ部の縦横寸法比=2:5とした場合の定在波比(SWR)特性図である。
【図11】本願発明の実施例にかかるガラスアンテナにおける四角形ループ部間の間隔を変えた場合の平均利得特性図である。
【図12】本願発明の実施例にかかるガラスアンテナにおける四角形ループ部間の間隔を変えた場合の最大利得特性図である。
【図13】本願発明の実施例にかかるガラスアンテナにおける四角形ループ部間の間隔を変えた場合の最小利得特性図である。
【図14】本願発明の実施例にかかるガラスアンテナにおける四角形ループ部間の間隔を変えた場合の(平均ー最小)利得特性図である。
【図15】本願発明の実施例にかかるガラスアンテナにおける四角形ループ部間の間隔を変えた場合の800MHz,850MHz,900MHzおよび950MHzでの指向性特性図である。
【図16】本願発明の実施例にかかるガラスアンテナにおける四角形ループ部間の間隔を3mmとした場合の定在波比(SWR)特性図である。
【図17】本願発明の実施例にかかるガラスアンテナにおける四角形ループ部間の間隔を5mmとした場合の定在波比(SWR)特性図である。
【図18】本願発明の実施例にかかるガラスアンテナにおける四角形ループ部間の間隔を7mmとした場合の定在波比(SWR)特性図である。
【図19】本願発明の実施例にかかるガラスアンテナにおける四角形ループ部間の間隔を11mmとした場合の定在波比(SWR)特性図である。
【図20】本願発明の実施例にかかるガラスアンテナにおける四角形ループ部間の間隔を15mmとした場合の定在波比(SWR)特性図である。
【図21】本願発明の実施例にかかるガラスアンテナにおける給電部の位置を変えた場合の平均利得特性図である。
【図22】本願発明の実施例にかかるガラスアンテナにおける給電部の位置を変えた場合の最大利得特性図である。
【図23】本願発明の実施例にかかるガラスアンテナにおける給電部の位置を変えた場合の最小利得特性図である。
【図24】本願発明の実施例にかかるガラスアンテナにおける給電部の位置を変えた場合の(平均ー最小)利得特性図である。
【図25】本願発明の実施例にかかるガラスアンテナにおける給電部の位置を変えた場合の800MHz,850MHz,900MHzおよび950MHzでの指向性特性図である。
【図26】本願発明の実施例にかかるガラスアンテナにおける給電部の位置を下端とした場合の定在波比(SWR)特性図である。
【図27】本願発明の実施例にかかるガラスアンテナにおける給電部の位置をやや下とした場合の定在波比(SWR)特性図である。
【図28】本願発明の実施例にかかるガラスアンテナにおける給電部の位置をセンターとした場合の定在波比(SWR)特性図である。
【図29】本願発明の実施例にかかるガラスアンテナにおける給電部の位置をやや上とした場合の定在波比(SWR)特性図である。
【図30】本願発明の実施例にかかるガラスアンテナにおける給電部の位置を上端とした場合の定在波比(SWR)特性図である。
【符号の説明】
1は四角形ループ部、2は給電部、Aはアンテナ本体、Wはガラス面。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 一対の対称形状の四角形ループ部を備えたアンテナ本体をガラス面に配設するに当たって、前記各四角形ループ部の縦寸法と横寸法との比を適当に設定することによりアンテナの利得、広帯域特性および指向性を決定することを特徴とするガラスアンテナの特性決定方法。
【請求項2】 一対の対称形状の四角形ループ部を備えたアンテナ本体をガラス面に配設するに当たって、前記四角形ループ部間の間隔を適当に設定することによりアンテナの利得、広帯域特性および指向性を決定することを特徴とするガラスアンテナの特性決定方法。
【請求項3】 一対の対称形状の四角形ループ部を備え且つ該両四角形ループ部のそれぞれの一辺が相対向するアンテナ本体をガラス面に配設してなり、相対向する一辺における一端側近傍に給電部が設けられていることを特徴とするガラスアンテナの構造。

【図1】
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【図2】
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【図7】
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【図3】
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【図4】
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【図15】
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【図5】
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【図6】
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【図25】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【公開番号】特開平5−90821
【公開日】平成5年(1993)4月9日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平3−251698
【出願日】平成3年(1991)9月30日
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)