説明

ガラスセラミック体、その製造方法およびガラスセラミック体パッケージ

【課題】所定割合のガラス組成物およびフォルステライトの混合物を焼成するガラスセラミック体を用いたセラミックパッケージの熱膨張率を増大化させ、このパッケージに実装する水晶片との貼り合わせの不具合を解消して信頼性を高める。
【解決手段】水晶片18を収容配置して貼り合わせたベース部材12とキャップ部材14を低融点ガラスの封止部材16により気密封着しパッケージ化した水晶振動子10を提供する。ここで、少なくともベース部材は、所定割合でガラス組成物とフォルステライトを配合して焼成した複合焼成体からなり、25〜400℃におけるこの焼成体と水晶の熱膨張率の差を±0.1%以内にしたガラスセラミック体およびそれを用いたパッケージ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラスセラミック体、その製造方法およびそのガラスセラミック体パッケージに関し、特に、熱膨張率においてガラスセラミック体と水晶の熱膨張率を近似させる水晶を用いる圧電素子のガラスセラミック体パッケージに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水晶片を用いる水晶振動子用圧電素子をガラスセラミック複合体のパッケージに実装するには、ベース部材に圧電素子を貼り付け配置して低融点ガラスの封止材でキャップ部材を取り付けている。しかし、加熱処理で貼り合せ加工する場合、圧電素子とガラスセラミック複合体のベース部材とは熱膨張率が一致しないため加熱・冷却後に圧電素子に応力歪が生じて反りや亀裂などの不具合となることがある。こうした応力歪による不具合に対してガラスセラミック複合体の熱膨張係数を変えるような種々のガラスセラミック複合体が提案されている。例えば、特許文献1はガラス中にフォルステライトを30〜70重量%分散させた熱膨張係数100〜150x10−7/℃のガラスセラミック複合体を用いる水晶振動子用フラットパッケージを開示する。また、特許文献2は熱膨張係数が100〜150x10−7/℃の結晶化ガラス中にフォルステライトを40〜60重量%含むガラスセラミック複合体を用いたフラットパッケージを開示して、水晶振動子など水晶を用いた表面実装型圧電素子の温度変化に伴う共振特性の改善策を提案している。
【特許文献1】特許第2822846号明細書
【特許文献2】特開平9−208261号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述する従来のガラスセラミック複合体を用いたパッケージではベース部材の熱膨張係数を特定範囲にするようフォルステライトとガラス組成の混合割合を調整していたが、250℃前後の封止加工温度での熱膨張率では水晶片を用いた圧電素子の反りを軽減することが難しく満足な成果を得ることができなかった。すなわち、ガラスセラミック複合体の熱膨張係数が所定範囲にあっても実際の処理温度によって熱膨張率は多少異なり、その変動値が水晶の熱膨張率と大きく異なることがある。このことから、ある温度tにおける熱膨張率は水晶およびガラスセラミック複合体の熱膨張係数を所望する範囲に選定したとしても互いに反対方向に変動する場合が生じ、そのために実用される温度範囲での整合が困難となって反りなどの不具合が生ずる。それゆえに、温度tにおいて加熱処理する場合にはその時の処理温度tで熱膨張率の整合を図る必要が生ずるが、本発明者等はこの点に着目して、フォルステライトとガラス組成物の混合割合やガラス組成物の構成比を特定する各種の複合焼成体を実験的に試作して結果的に好ましいガラスセラミック体を選定した。
【0004】
また、水晶振動子に用いられる水晶片は、切断方位によってその熱膨張率が異なり、従来技術では熱膨張係数表記で13.9x10−6/℃の熱膨張係数を有する水晶振動子用水晶片と熱膨張係数が略同一になるガラスセラミック複合体が開示されている。しかし、このような熱膨張係数を有する水晶のATカットには整合できたが、25℃〜400℃の範囲でそれより高熱膨張率となる切断方位であるXカットによる熱膨張係数表記で約18x10−6/℃となるような水晶片には整合が不十分となっていた。例えば、従来ガラスセラミック複合体としての熱膨張係数で水晶の熱膨張係数に近づけるべく材料と組成を選択して、熱膨張係数を高めるガラスセラミック複合体を追求するのみでは満足できるガラスセラミック複合体の提供ができなかった。特に、ガラスセラミック複合体のパッケージとして、その処理温度における熱膨張率の変化や変動状況を充分に把握されることがなく、その結果、水晶とパッケージの熱膨張率の不一致に伴い温度変化での応力歪やそりの発生による不具合を生じさせていた。
【0005】
一方、近年水晶振動子の更なる小型化が進み、従来の水晶からなる圧電素子を四角板状形態から水晶から一体形成された外枠付形態への変化にも対応する必要が生じてきている。こうした形状の圧電素子を用いる場合、水晶の外枠部分とベース部材およびキャップ部材との接合面積が従来の水晶振動子と比較して大きくなり、より一層の熱膨張率の整合性が重要視されてきている。
【0006】
したがって、この発明は上記欠点に鑑みて提案されたものであリ、熱膨張率を増大化させるのみならず水晶の熱膨張率との差に着目した新規かつ改良されたガラスセラミック体を提供し、このガラスセラミック体を用いたパッケージにおいて水晶片を用いた圧電素子が加熱処理される作業温度範囲において熱膨張率を整合させるようにした新規かつ改良されたパッケージの提供を目的とする。
【0007】
特に、ガラス組成物とフォルステライトとの配合割合とガラス組成物の構成比および混合物の焼成条件等を特定範囲内に選んだガラスセラミック体の製造方法とこれを用いるパッケージ化作業温度の25℃ないし400℃における水晶振動子用水晶と熱膨張率が近似するガラスセラミック体を用いたパッケージの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による第一の観点によれば、65〜95重量%のガラス組成物と35〜5重量%のフォルステライト(2MgO・SiO)とで配合した混合物を焼成して得た複合焼成体の25〜400℃の温度範囲内における熱膨張率を0.55〜0.75%とし、水晶の熱膨張率に比べてその差が±0.1%以内になるようにしたガラスセラミック体が開示される。この場合、ガラス組成物はSiOが70〜85重量%、Pが5〜10重量%、MgOが0〜5重量%、NaOが0〜2重量%およびROが8〜20重量%からなる構成比であるか、SiOが40〜55重量%、Alが20〜30重量%、Pが10〜20重量%、BaOが0〜5重量%、およびROが5〜10重量%からなる構成比とする。ここで、RはK、NaおよびLiから選ばれた少なくとも一種である。
【0009】
本発明の別の観点によれば、前述のガラスセラミック体を用いたベース部材およびキャップ部材のパッケージが提供され、さらに電極パッドを有するベース部材にこの電極パッドと接続する電極を有する水晶片を用いた圧電素子を貼り付けて収容配置し、約240℃前後の温度でベース部材とキャップ部材とを低融点ガラスの封止部材により気密封着する水晶振動子用パッケージを提案する。例えば、ガラス組成物のガラス材と2MgO・SiOのフォルステライト材との出発物質を65重量%以上のガラス材と残部フォルステライト材で配合した混合物を最高温度が1000℃以下、好ましくは930〜980℃の範囲に設定した焼成プロファイルにより焼成したガラスセラミック体を製造する。ここで、ガラスセラミック体パッケージとするためには、出発物質は焼成前に所定の形状に加工される。すなわち、ベース部材に加工するスラリによるグリーンシートの積層工程と、キャップ部材に加工する粉末プレス工程で所定形状に加工する。このようにして製造されたガラスセラミック体のベース部材とキャップ部材はその間に水晶の圧電素子を介在または実装して低融点ガラスの封止部材により気密封着してパッケージとする。特に、水晶の圧電素子に額縁状の外枠付き水晶を介在させて組み込む場合において、反りによる不具合発生を防止することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明はガラス組成物とフォルステライトを特定割合で配合して焼成した複合焼成体の熱膨張率を特定範囲にして水晶の熱膨張率に近似させるガラスセラミック体を提供するので、このガラスセラミック体を用いたベース部材に水晶片を用いた圧電素子の実装でも反り等の不具合を生じさせない。すなわち、水晶振動子として、ガラスセラミック体と水晶体との熱膨張率差を±0.1%に選定して熱膨張率を整合させたのでパッケージの加工処理と製品化後の加熱冷却時に生ずる応力歪やそりなどの不具合を低減することができる。特に、複合焼成体は、25〜400℃における熱膨張率の規制と特に250℃近辺での封止部材である低融点ガラスの加熱処理に伴う製作工程および完成後の加熱・冷却時の不具合発生を防ぐなどの実用的効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の構成要件であるガラス組成物とフォルステライトとの混合割合および結晶性ガラス組成物の組成比については、特許文献1および2に開示される範囲および組成比が参考にされている。先ず、混合割合については、特許文献ではガラス組成物40〜60重量%と、フォルステライト60〜40重量%の範囲内で配合しているのに対して、本発明ではガラス組成物の割合を65%以上と限定した。この値は水晶等の圧電素子、特に音叉型水晶振動子に用いられる圧電素子の熱膨張率により整合するために必要な値であり、複合焼成体の熱膨張率は、25〜400℃において、0.55〜0.75%の範囲内にされ、実質的に水晶熱膨張率と本発明によるガラスセラミック体の熱膨張率の差を±0.1%以内にすることができる。換言すると、この複合焼成体と水晶片を用いた圧電素子との25〜400℃の範囲の各温度における熱膨張率の差が0.1%以内とするよう次の条件を満たすガラスセラミック体を提供する。
【0012】
【数1】

【0013】
ただし、dLtは複合焼成体の25℃〜t℃までの延び量、L25は複合焼成体の25℃における長さ×100、dCtは水晶の25℃〜t℃までの延び量およびC25は水晶の25℃における長さ×100である。
【0014】
一方、ガラス組成物の組成比に関しては特許文献とも共通してリチウム系ガラスであり、結晶化ガラスとしてのPを含み結晶核形成機能を利用している。また、ガラス組成物は具体的にSiOとAl系の異なる系統を挙げており、特許文献2に記載された組成を中心にして適正な組成比を選定している。なお、本発明の複合焼成体ではクリストバライトの生成が焼成プロファイルや焼成温度を930〜980℃に範囲限定することで確認された。すなわち、X線回折等の解析において、出発物質の混合物には含まれないクリストバライトがこのような焼成温度で生成される。上述する熱膨張率の差が±0.1%以内になるようにして得られたガラスセラミック体はパッケージのベース部材および必要に応じてはキャップ部材としても使用され、低融点ガラスの封止部材を介在して気密封着されたパッケージに一体化される。ここでベース部材は電極パッドを有し、この電極パッドに接合する電極を有する圧電素子の水晶片からなる振動子を貼り付け配置し、あるいは外枠付水晶振動子用圧電素子を用いてこの圧電素子をベース部材とキャップ部材との間に介在させて、250℃前後の作業温度でベース部材とキャップ部材を気密封着し、それによりベース部材と水晶片との接合によるそり等の不具合を解消する。特に後者の場合、本発明のガラスセラミックパッケージ部材と外枠付水晶振動子用圧電素子との接触面積が大きくなるために熱膨張率の整合化による効果は顕著になる。
【実施例1】
【0015】
本発明の実施例として、先ず、本発明に係るガラスセラミック体を用いたフラットパッケージについて、図1の分解斜視図に示す水晶振動子10を参照しつつ説明する。この水晶振動子10は、パッケージを構成するベース部材12、キャップ部材14および両部材を気密封着する低融点ガラスの封止部材16、およびこのパッケージ内に収容配置する水晶片18を具備して構成される。ベース部材12はその周辺部分が肉厚に形成され、封止部材16を介在してキャップ部材14の周辺部分と接合する。また、ベース部材12の中央部分は肉薄で収容空間を形成しその内部に電極パッド13を有する。一方、電極部19を形成した水晶片18はベース部材の電極パッド13に接合するようベース部材12の収容空間に配置される。その後、ベース部材12とキャップ部材14とは低融点ガラスの封止部材16で気密封着されてフラットパッケージを形成し、水晶片18を収容して水晶振動子10が完成される。ここで、ベース部材12およびキャップ部材14は本発明に係るガラスセラミック体からなり、水晶片18が固着されるベース部材12との間で熱膨張係数の相違により生ずるそりなどの不具合の発生を阻止している。
【実施例2】
【0016】
次に、本発明のガラスセラミックを使用したパッケージについて、別の実施例について図2を参照しつつ説明する。この実施例では水晶振動子パッケージ20は電極パッド23を形成したベース部材22、キャップ部材24および両部材を気密封着する低融点ガラスの封止部材26、および水晶からなる外枠付水晶振動子用圧電素子28を具備して構成される。ベース部材22およびキャップ部材24はその周縁部に封止部材26が形成され、外枠付水晶振動子用圧電素子28はその電極29をベース部材22の電極パッド23と接続し、上下からそれぞれ封止部材26を介して接合され気密封着される。また、ベース部材、キャップ部材および外枠付き水晶振動子用圧電素子は、上述のようにそれぞれ個々に分割された状態で封着される場合もあるが、分割される前の段階、つまり各部材あるいは素子の集合した板状の状態同士でそれぞれ封着され、その後に、個々の水晶振動子に切断分割される場合もあり、それによって作業の効率化を図る。
【実施例3】
【0017】
以下、本発明のガラスセラミック体に関して、ガラス組成物とフォルステライトの異なる組成比の代表的な実施例の試作した複合焼成体について、これら試作品と水晶との熱膨張率の特性曲線を図3および4に示す。試作した複合焼成体は50〜100%のガラス組成物と残部フォルステライト(2MgO・SiO)を配合し混合分散させ焼成して製造されている。ガラス組成物はそれ自体の熱膨張係数が10〜20ppm(10〜20x10−6)/℃程度のもので酸化物基準のガラス組成が選定され、たとえば、試作品の一例ではガラス組成物70重量%とフォルステライト30重量%の混合物を最高温度で1000℃以内、好ましくは930〜980℃の焼成温度により約1時間焼成して複合焼成体が製造された。この場合のガラスセラミック体は25〜400℃において、熱膨張率が0.55〜0.75%であり、水晶片を用いる圧電素子の熱膨張率と略一致する。すなわち、この温度範囲内における両者の熱膨張率の差が±0.1%以内にあるガラスセラミック体である。図3および図4は25℃から400℃までの水晶と本発明に係る試作複合焼成体8例に対するほぼ同形の測定用試験片による熱膨張率およびその差の温度特性曲線を示す。ここで複合焼成体の試作品について、図4は水晶の熱膨張率を基準値0の直線で示す同時に本発明の特定範囲とした熱膨張率差±0.1%の境界を実線で表示し、本発明のガラスセラミック体は25℃から400℃までの熱膨張率の変化に関し、水晶との熱膨張率差が±0.1以内であることに着目している。また、表1は水晶および試作した8例の複合焼成体に関する熱膨張の状態を周囲温度25℃間隔で測定した実測値である。
【0018】
【表1】

【0019】
本発明が特徴とするガラスセラミック体を用いたベース部材およびキャップ部材からなるパッケージでは、ベース部材に貼り合せ配置した圧電素子を中間部材の介在なしに直接に接続固定できる。また、外枠付水晶振動子用圧電素子の複数個を集合状態で用いる場合、本発明のガラスセラミック体を使用したベース部材およびキャップ部材が集合状態の外枠付水晶振動子用圧電素子の上下にそれぞれ封止部材の低融点ガラスにより接合される。この場合は熱膨張率の差を±0.1以内にすることで反り防止の効果は極めて顕著である。なんとなれば、ベース部材およびキャップ部材の集合体または水晶からなる外枠付き水晶振動子用圧電素子の集合体を50mm×50mmの大きさにした場合、外枠付き水晶振動子用圧電素子の集合体をベース部材およびキャップ部材の集合体で上下から封止部材で封着した場合、50mm×50mmの大きさで全体の反りが従来では100μm以上であるのに対して、ガラスセラミック体と水晶との熱膨張率差が±0.1以内であれば、50mm×50mmの大きさで全体の反りが80μm以下にすることができる。このようにして水晶片等の温度変化に伴う応力歪や反りの発生の不具合を解消すると共に共振周波数の変動も制御可能となる。
【0020】
上述のガラスセラミック体でのガラス組成物はSiOが80重量%、Pが8重量%およびROが12重量%からなり、RはLiおよびKから選ばれる少なくとも一種でLiを含み、ガラス自体の熱膨張係数が15.5ppm/℃である。また、このガラスセラミック複合体は特性値として、100〜400℃における熱膨張係数が16.12ppm/℃、抗折強度が約2500kgf/cmであり,水晶振動子用セラミックパッケージとして満足されるものであった。このガラスセラミック体の製造は、先ず、出発材料であるガラス材とフォルステライト材の粉末を湿式ボールミルで粉砕混合して平均粒径を0.1〜5μmに微粉末化し、乾燥、らいかい後に粉末を成形プレスして980℃で約1時間焼成する。次いで、複合焼成体を直方体に切断して熱膨張係数と抗折強度を測定し、前述の測定結果を得た。
【0021】
次に、図1に示したフラットパッケージに用いるガラスセラミック体の製造方法について詳述する。以下、各工程毎にアルファベット順に列挙する。
a.出発物質のガラス組成物とフォルステライトの原料粉末にバインダと溶剤を混合してスラリを調製し、ドクターブレード法により厚さ100〜300μmのグリーンシートを製作する。
b.製作された第1のグリーンシートに水晶振動子のキャビティとスルーホールを打ち抜き、第2のグリーンシートにはスルーホール用のみの孔を打ち抜く。これらのグリーンシートはベース部材を構成するものとしてガラスセラミック複合体を得る。
c.これら第1および2のグリーンシートを積層し、所定の圧力でプレスして積層体にする。
d.この積層体を脱バインダし、980℃で約1時間焼成して複合焼成体を生成する。
e.銅(Cu)ペーストをスクリーン印刷し、スルーホールにペーストを充填すると同時に内部導体部及び外部取り出し電極を形成する。
f.複合焼成体の積層体を切断し、パッケージサイズに対応するベース部材12を得る。
g.上述のベース部材12と同じ出発材料の混合粉末を使用し、粉末プレスによる成形工程と、930℃での焼成工程を経て複合焼成体としてキャップ部材14を得る。
h.上記fのベース部材12に予め低融点ガラスの封止部材16を周辺部分に形成する。
i.図1に示すようにベース部材12の中央部分の両端に形成した電極パッド13と水晶片18の電極部19とを導電性接着剤で固着する。
j.前述のキャップ部材14をベース部材12上に置き、封止部材16の低融点ガラスを約250℃に加熱してベース部材とキャップ部材とを気密封着してパッケージ化し水晶振動子10を完成する。このときキャップ部材は、ベース部材と同様グリーンシートを用いて作製しても良い。また、グリーンシート焼成後に電極ペーストを印刷焼付けする替わりに、グリーンシート焼成前に電極を印刷しグリーンシートと同時焼成することもできる。
【0022】
本発明の別の実施例として、ガラスセラミック体を用いたフラットパッケージについてその製造方法を説明する。
a.原料粉末材料とバインダおよび溶剤を混合し、スラリを製造してドクターブレード法により厚さ100〜300μmのグリーンシートを作成する。
b.スルーホールを形成したグリーンシート2枚を積層し、所定の圧力でプレスして積層体にする。
c.積層体を脱バインダし、960℃で焼成する。
d.銀(Ag)ペーストをスクリーン印刷し、スルーホールを充填するとともに内部導体部及び外部取り出し電極を形成する。
e.焼成された積層体を切断し、パッケージのベース部材を得る。
f.パッケージのキャップ部材は水晶で製作して、水晶の熱膨張係数に合わせる。
g.前述のベース部材に予め低融点ガラスの封止部材を塗着形成しておき、このベース部材上の電極パッド部と外枠付き水晶片の電極部とを導電性接着剤等で固着接続した後、水晶のキャップ部材をベース部材上に配置し封止部材で気密封着してパッケージ化し水晶振動子を完成する。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明のガラスセラミック体は水晶振動子用パッケージとして利用され、水晶振動子は広く発振装置として各種電気機器で使用される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係るガラスセラミック体を用いたパッケージの分解斜視図である。
【図2】同じく図1の別の実施例であるパッケージの分解斜視図である。
【図3】試作した複合焼成体と水晶の熱膨張率温度特性図である。
【図4】図3に示す複合焼成体と水晶との熱膨張率の差の温度特性図である。
【符号の説明】
【0025】
10,20;パッケージ(水晶振動子)
12,22;ベース部材
13,23;電極パッド
14,24;キャップ部材
16,26;封止部材
18,28;水晶片(圧電素子)
19,29;電極



【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス組成物が95〜65重量%と、フォルステライト(2MgO・SiO)が5〜35重量%の割合の混合物を焼成した複合焼成体であって、25〜400℃の温度範囲内において、前記複合焼成体の熱膨張率と水晶の熱膨張率との熱膨張率差を±0.1%以内にしたことを特徴とするガラスセラミック体。
【請求項2】
前記ガラス組成物は、SiOが70〜85重量%、Pが5〜10重量%、MgOが0〜5重量%、NaOが0〜2重量%およびRO(ここでRはKおよびLiから選ばれた少なくとも一種である)が8〜20重量%の範囲内で含有することを特徴とする請求項1に記載のガラスセラミック体。
【請求項3】
前記ガラス組成物は、SiOが40〜55重量%、Alが20〜30重量%、Pが10〜20重量%、BaOが0〜5重量%、およびRO(ここでRはKおよびLiから選ばれた少なくとも一種である)が5〜10重量%の範囲内で含有することを特徴とする請求項1に記載のガラスセラミック体。
【請求項4】
SiOが70〜85重量%、Pが5〜10重量%、MgOが0〜5重量%、NaOが0〜2重量%およびRO(ここでRはKおよびLiから選ばれた少なくとも一種である)が8〜20重量%を含むガラス材95〜65重量%と、2MgO・SiOフォルステライト材5〜35重量%との出発物質を混合し、その混合物を930〜980℃で焼成し、生成された複合焼成体の熱膨張率を、25〜400℃の温度範囲内において、0.55〜0.75%にすることを特徴とするガラスセラミック体の製造方法。
【請求項5】
SiOが40〜55重量%、Alが20〜30重量%、Pが10〜20重量%、BaOが0〜5重量%およびRO(ここでRはKおよびLiから選ばれた少なくとも一種である)が5〜10重量%を含むガラス材95〜65重量%と、2MgO・SiOフォルステライト材5〜35重量%との出発物質を配合・混合し、その混合物を930〜980℃で焼成し、生成された複合焼成体の熱膨張率を、25〜400℃の温度範囲内において、0.55〜0.75%にすることを特徴とするガラスセラミック体の製造方法。
【請求項6】
前記出発物質はベース部材に加工するグリーンシートの積層工程と、キャップ部材に加工する粉末プレス工程で所定形状に加工することを特徴とする請求項4または5に記載のガラスセラミック体の製造方法。
【請求項7】
請求項1ないし3に記載のガラスセラミック体を使用したベース部材およびキャップ部材を低融点ガラスの封止部材により気密封着したことを特徴とするガラスセラミック体パッケージ。
【請求項8】
前記ベース部材と前記キャップ部材の間に水晶を用いた圧電素子を実装したことを特徴とする請求項7に記載のガラスセラミック体パッケージ。
【請求項9】
電極パッドを有する前記ベース部材に電極を有する前記圧電素子を接続配置し、前記封止部材を約250℃に加熱して前記ベース部材と前記キャップ部材を気密封着したことを特徴とする請求項8に記載のガラスセラミック体パッケージ。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−8419(P2006−8419A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−183235(P2004−183235)
【出願日】平成16年6月22日(2004.6.22)
【出願人】(300078431)エヌイーシー ショット コンポーネンツ株式会社 (75)
【Fターム(参考)】