説明

ガラスパネルの壁面構造及びガラスパネルユニット並びにカーテンウォール

【課題】本発明は、ガラスパネルを支持する支持部材がガラスパネルに対して目立たないガラスパネルの支持構造、及び、カーテンウォールを構築する際に工期を短縮でき、且つ強度においても方立構造と同等の強度を有するガラスパネルユニット並びにカーテンウォールを提供することを目的とする。
【解決手段】本発明によれば、下見板張り状に配置される複数のガラスパネル12、12…と平行になるように、支持部材14を階段状に構成する。これにより、ガラスパネル12、12…と支持部材14とが視覚的に一体化するので、支持部材14がガラスパネル12に対して目立たなくなる。また、支持部材14又はラーメン構造体であり、又はラーメンの2本の縦梁16A、16Bによって剛的に荷重を伝達することにより、ガラスパネル12、12…を縦梁16A、16Bの主に軸力によって支持する。これにより、従来の方立構造と同等の構造強度を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に外壁材としてガラスパネルを用いたカーテンウォールにおける、ガラスパネルの壁面構造及びガラスパネルユニット並びにガラスパネルユニットによって構築されるカーテンウォールに関する。
【背景技術】
【0002】
外壁材としてガラスパネルを用いたカーテンウォールは、透視性、デザイン性に優れており、近年では高層建築物のカーテンウォールに盛んに使用されている。また、ガラスパネルとして熱線吸収ガラス、高断熱遮熱複層ガラス、複層ガラス、合わせガラス等の諸機能(断熱、保温、遮音、安全機能)を有するガラスが選択されて使用されている。
【0003】
一方、カーテンウォールにおけるガラスパネルの支持構造としては、特許文献1等に開示された方立(マリオン)タイプの支持構造が一般的に知られている。この支持構造は、方立と呼ばれる強度部材を階床に鉛直方向に固定するとともに、この方立に直交して複数の無目を所定の間隔で取り付け、この後、隣接する方立の間の上下に位置する無目にガラスパネルを嵌め込んで支持する構造である。
【0004】
また、特許文献1のガラスパネルの支持構造は、上方のガラスパネルの下端縁を呑み込む第1の呑込部と、下方のガラスパネルの上端縁を呑み込む第2の呑込部とが無目に形成されている。また、第1の呑込部は、第2の呑込部よりも室外側に形成されるとともに、第1の呑込部と第2の呑込部とが見込み方向に重ねて形成されている。このカーテンウォール構造によれば、第1の呑込部と第2の呑込部とを見込み方向に重ねた分だけ無目の見付け寸法が小さくなるので、無目が目立ち難くなり、カーテンウォールの外観が良好になるという利点がある。また、このように二つの呑込部を見込み方向に重ねて形成した特許文献1のカーテンウォール構造は、その構造上、ガラスパネルを鉛直方向に支持する構造ではなく、ガラスパネルを上下方向に傾斜した姿勢で支持する下見板張り状の構造となっている。
【特許文献1】特開2001−20425号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示されたガラスパネルの支持構造では、無目を支持する方立が、幅が大きく厚みも厚い柱状の支持構造体なので、室外からこのカーテンウォールを斜め方向から見ると、隣接する方立の一部が重なりあって全体として一種の壁のように見えるため、透視性が悪くデザイン的に良好なものではないという欠点があった。また、特許文献1のカーテンウォール構造は、方立を躯体に固定する作業、方立に無目を取り付ける作業、及び無目にガラスパネルを嵌め込む作業を建築現場で行う必要があるため、工期が長くなるという問題もあった。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされてもので、ガラスパネルを支持する支持部材がガラスパネルに対して目立たないガラスパネルの壁面構造、及び、カーテンウォールを構築する際に工期を短縮でき、且つ強度においても方立構造と同等の強度を有するガラスパネルユニット並びにカーテンウォールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、前記目的を達成するために、複数枚のガラスパネルが支持部材により下見板張り状に配置される複数のガラスパネルの壁面構造であって、前記支持部材は第1のガラスパネルの左右各々の上下端に少なくとも第1及び第2の横梁と、第1のガラスパネルの左右各々に第1のガラスパネルと略平行な第1及び第2の縦梁と、を有し、前記左右の第1の横梁は、前記第1のガラスパネルの上辺コーナー部付近を支持する第1の係止部と、前記第1の係止部より屋外側に位置する前記第1のガラスパネルの上方に配置される第2のガラスパネルの下辺コーナー部を支持する第2の係止部と、を有し、第2の横梁は、前記第1のガラスパネルの下辺コーナー部付近を支持する第3の係止部と、前記第3の係止部より屋内側に位置する前記第1のガラスパネルの下方に配置される第3のガラスパネルの上辺コーナー部付近を支持する第4の係止部と、を有し、前記第1及び第2の横梁は前記第1及び第2の縦梁により、連結、固定されていることを特徴とするガラスパネルの壁面構造を提供する。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1において、前記第1の縦梁が連結、固定された前記第1及び第2の横梁との間であって、前記第1のガラスパネルの左右に、かつ前記第1の縦梁よりも屋内側に、前記第1の縦梁と略平行に前記第2の縦梁が配置されていることを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2において、前記第1の縦梁は、すくなくとも前記第2のガラスパネルの左右上辺コーナー部付近を支持する第3の横梁まで延在され、前記第1の縦梁と第3の横梁が連結、固定されていることを特徴とするガラスパネルの壁面構造。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項1から3において、前記第2の縦梁は、すくなとも前記第3のガラスパネルの左右下辺コーナー部付近を支持する第4の横梁まで延在され、前記第2の縦梁と前記第4の横梁が連結、固定されていることを特徴とする。
【0011】
請求項5に記載の発明は、請求項4において、前記第1の縦梁は、前記第1の縦梁の上端部と前記第3の横梁とが連結、固定され、前記第1の縦梁の下端部と前記第2の横梁とが連結、固定され、かつ前記第2の縦梁は、前記第2の縦梁の上端部と前記第1の横梁とが連結、固定され、前記第2の縦梁の下端部と前記第4の横梁とが連結、固定されていることを特徴とする。
【0012】
請求項6に記載の発明は、請求項5において、前記第1及び第3の横梁との間であって、前記第2のガラスパネルの左右に、かつ第1の縦梁よりも屋外側に、前記第1の縦梁と略平行に第3の縦梁が配置され、前記第3の縦梁により前記第1及び第3の横梁が連結固定されていることを特徴とする。
【0013】
請求項7に記載の発明は、請求項5または6において、前記第2及び第4の横梁との間であって、前記第2のガラスパネルの左右に、かつ第2の縦梁よりも屋内側に、前記第2の縦梁と略平行に第4の縦梁が配置され、前記第4の縦梁により前記第2及び第4の横梁が連結固定されていることを特徴とする。
【0014】
請求項8に記載の発明は、請求項1または2において、前記第1の縦梁は、前記第1の縦梁の上端部と前記第1の横梁とが連結、固定され、前記第1の縦梁の下端部と前記第2の横梁とが連結、固定され、かつ前記第2の縦梁は、前記第2の縦梁の上端部と前記第1の横梁とが連結、固定され、前記第2の縦梁の下端部と前記第3のガラスパネルの左右下辺コーナー部付近を支持する第4の横梁とが連結、固定されていることを特徴とする。
【0015】
請求項9に記載の発明は、請求項8において、前記第2及び第4の横梁との間であって、前記第2のガラスパネルの左右に、かつ第2の縦梁よりも屋内側に、前記第2の縦梁と略平行に第4の縦梁が配置され、前記第4の縦梁により前記第2及び第4の横梁が連結固定されていることを特徴とする。
【0016】
請求項10に記載の発明は、請求項1または2において、前記第1の縦梁は、前記第1の縦梁の上端部と前記第2のガラスパネルの左右上辺コーナー部付近を支持する第3の横梁とが連結、固定され、前記第1の縦梁の下端部と前記第2の横梁とが連結、固定され、かつ前記第2の縦梁は、前記第2の縦梁の上端部と前記第1の横梁とが連結、固定され、前記第2の縦梁の下端部と前記第2の横梁と、が連結、固定されていることを特徴とする。
【0017】
請求項11に記載の発明は、請求項10において、前記第1及び第3の横梁との間であって、前記第2のガラスパネルの左右に、かつ第1の縦梁よりも屋外側に、前記第1の縦梁と略平行に第3の縦梁が配置され、前記第3の縦梁により前記第1及び第3の横梁が連結固定されていることを特徴とする。
【0018】
請求項12に記載の発明は、請求項4から11において、前記係止部の少なくとも一つが前記横梁と分離可能に接合されていることを特徴とする。
【0019】
請求項13に記載の発明は、請求項4から12において、前記の縦梁および横梁の少なくとも一つが、隣り合う前記ガラスパネルとで共用されていることを特徴とする。
【0020】
請求項1から13の発明によれば、下見板張り状に配置される複数のガラスパネルと平行になるように、第1及び第2の縦梁を階段状に構成し、第1の縦梁をガラスパネルと視覚的に一体化させたので、ガラスパネルを支持する第1の縦梁がガラスパネルに対して目立たなくなる。また、第1及び第2の縦梁、第1及び第2の横梁は多張間架構(フィーレンデールトラスともいう)であり、梁りの圧縮荷重に対する剛性と梁の曲げ剛性によって横方向荷重を支える。これにより、従来の方立構造と同等の構造強度を得ることができる。
【0021】
また、多張間架構の第1及び第2の縦梁間の隙間により、縦梁は、梁間が抜けた透視性のあるすっきりとした形状となるので、構造的な軽量化、及び省スペース化を図ることができる。
【0022】
請求項14に記載の発明は、カーテンウォールであって、求項1から13のうちいずれか一つに記載のガラスパネルの壁面構造によって構築されたことを特徴とする。
【0023】
請求項15に記載の発明は、ガラスパネルユニットであって、所定の高さに対応する複数枚のガラスパネルからなる一列のパネル体が、請求項1から13のうちいずれか一つに記載のガラスパネルの壁面構造により支持されることを特徴とする。
【0024】
請求項15に記載の発明によれば、例えばビルの1フロア分の高さに相当する複数枚のガラスパネルからなる一列のパネル体を、請求項1から13のいずれか1項に記載した多張間架構の支持部材によって支持することによりガラスパネルユニットを構成し、そして、このガラスパネルユニットを、そのままビルの躯体に設置する。このようなガラスパネルユニットは、工場にて組み立てられるので、建設現場ではガラスパネルユニットをビルの躯体に設置する工事だけで済む。したがって、ガラスパネルユニットの設置工期が短縮し、工費も削減できる。
【0025】
請求項16に記載の発明によれば、カーテンウォールであって、請求項15に記載のガラスパネルユニットによって構築されたことを特徴とする。
【0026】
請求項16に記載の発明によれば、請求項15に記載したガラスパネルユニットをビルの躯体に順次設置するだけで、カーテンウォールを構築できる。これにより、カーテンウォールの工期を大幅に短縮でき、工費も大幅に削減できる。
【発明の効果】
【0027】
本発明に係るガラスパネルの壁面構造によれば、下見板張り状に配置される複数のガラスパネルと平行になるように、第1及び第2の縦梁を階段状に構成し、第1の縦梁をガラスパネルと視覚的に一体化させたので、ガラスパネルを支持する支持部材がガラスパネルに対して目立たなくなり、第1及び第2の縦梁間の隙間により、縦梁は、梁間が抜けた透視性のあるすっきりとした形状となるので、構造的な軽量化、及び省スペース化を図ることができる。
【0028】
また、本発明にかかるガラスパネルユニットによれば、所定の高さに対応する複数枚のガラスパネルからなる一列のパネル体を、前記支持構造により支持し、建設現場ではガラスパネルユニットをビルの躯体に設置する工事だけで済むようにしたので、ガラスパネルユニットの設置工期が短縮し、工費も削減できる。
【0029】
更に、本発明に係るカーテンウォールによれば、前記ガラスパネルユニットをビルの躯体に順次設置するだけで構築されるので、カーテンウォールの工期を大幅に短縮でき、工費も大幅に削減できる。
【0030】
また、従来の方立支持構造と比して本発明の支持構造の部材では、約2割の軽量化を測ることができ、施工が容易になるとともに、材料費も削減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、添付図面に従って本発明に係るガラスパネルの壁面構造及びガラスパネルユニット並びにカーテンウォールの好ましい実施の形態について詳説する。
【0032】
図1は、実施の形態のカーテンウォール10を室外側から見た正面図、図2は図1のカーテンウォール10を室内側から見た要部斜視図であり、図3、図4は、カーテンウォール10を構成するガラスパネル12の支持構造を示した要部拡大斜視図である。
【0033】
図1に示したカーテンウォール10は、上下方向に配置された4枚の矩形状ガラスパネル12、12…がビルの1フロア分の高さLに相当するもので、これらの多数のガラスパネル12、12…は、図2〜図4に示した実施の形態の支持部材14、14…によって一枚ずつ下見板張り状に支持されてビルの外壁を構成している。なお、図2に示した支持部材14は、多数のガラスパネル12、12…との位置関係を分かり易く説明するために、その構成を誇張して示しており、その構成の詳細は図3、図4に示されている。
【0034】
支持部材14は、下見板張り状に配置されるガラスパネル12、12…と略平行に全体が階段状に構成される。また、この支持部材14は、多張間架構であり、ガラスパネル12の略二枚の高さ寸法をもって1枚のガラスパネル12につき2本の縦梁(第1の縦梁)16A、及び縦梁(第2の縦梁)16Bがガラスパネル(第2のガラスパネル)12Aに略平行に、かつ鉛直方向に対して45°以内に配置される。鉛直方向に対しては、特に10°以内が好ましい。また、ガラスパネル12A側の縦梁16Aは、前記ガラスパネル12Aの上方に位置するガラスパネル(第1のガラスパネル)12Bと共有され、上方のガラスパネル12Bにおいてはガラスパネル12Aと反対側の縦梁として配される。ガラスパネル12Aと反対側の縦梁16Bは、ガラスパネル12Aの下方のガラスパネル(第3のガラスパネル)12Cと共有され、ガラスパネル12Cにおいてはガラスパネル12C側の縦梁として配されて構成される。なお、図1、図2では、全てのガラスパネルに符号12を付して説明したが、図3、図4ではガラスパネルの上下位置関係を明確にするために符号12A、12B、12Cを付して説明している。
【0035】
この2本の縦梁16A、16Bは、図3、図4に示すように板状に形成され、ガラスパネル12Aの面と直交する方向に並設されるが、板状に限定されるものではなく棒材や角筒状材であってもよい。また、支持部材14の剛性を高めるために、支持部材14を斜め材のあるトラス構造としてもよい。しかしながら、図3の如く2本の縦梁16A、16B間に隙間18のある実施の形態の支持部材14は、その隙間により透視性が向上するという利点がある。
【0036】
支持部材14を構成する横梁(第1の横梁)20A、横梁(第2の横梁)20Bは、略水平にガラスパネル12Aの一枚分の高さTとガラスパネル12Aの傾きとに対応する間隔をもって縦梁16A、16Bに連結されている。
横梁20Aは、上方のガラスパネル12Bの下辺コーナー部を支持する金具(第1の係止部)24Aと、金具24Aより屋内側に位置するガラスパネル12Aの上辺コーナー部を支持する金具(第2の係止部)28Aと、を有する。また、横梁20Bは、ガラスパネル12Aの下辺コーナー部を支持する金具(第3の係止部)24Bと、そのガラスパネル12Cの上辺コーナー部を支持する金具(第4の係止部)と、を有する。このように金具24A、24B、28A、28Bの位置を、横梁20において水平方向にずらすことにより、ガラスパネル12、12…が図2の如く支持部材14に下見板張り状に固定される。なお、符号26は、ガラスパネル12のコーナー部を金具24A、24Bに接着させるためのシーリング材である。
【0037】
一方、縦梁16Aは、横梁20Aの貫通孔22に貫通配置され、ガラスパネル12Bの上辺コーナー部を支持する横梁(第3の横梁)20Cまで延在され、縦梁16Aと横梁20Cとが連結、固定されている。また、縦梁16Bは、横梁20Bの貫通孔22に貫通配置され、ガラスパネル12Cの下辺コーナー部を支持する横梁(第4の横梁)20Dまで延在され、縦梁16Bと横梁20Dとが連結、固定されている。なお、縦梁16Aと横梁20Aが連結固定されていれば、縦梁16Aは分割された材料であってもよく、横梁20Aに貫通孔を備えなくてもよい。
【0038】
なお、図1に示すようにガラスパネル12の略二枚の高さ寸法をもって1枚のガラスパネル12につき2本の縦梁(第1の縦梁)16A、及び縦梁(第2の縦梁)16Bがガラスパネル(第2のガラスパネル)12Aに略平行に配置されている例で説明したが、少なくとも三枚以上の高さ寸法をもって1枚のガラスパネル12につきガラスパネル12の左右それぞれに少なくとも3本以上梁を備えてもよい。しかし、コスト面、カーテンウォールの外観の観点から図1に示すように1枚のガラスパネル12につきガラスパネル12の左右各々に2本の梁を備えていることがより好ましい。
【0039】
次に、前記の如く構成されたカーテンウォール10の利点について説明する。
【0040】
上述したように、実施の形態のガラスパネルの支持構造は、下見板張り状に配置される複数のガラスパネル12、12…と平行になるように、支持部材14は階段状に構成される。このように、支持部材14を、ガラスパネル12、12…に沿った階段状に構成することにより、ガラスパネル12、12…と支持部材14とが視覚的に一体化するので、支持部材14がガラスパネル12に対して目立たなくなる。
【0041】
また、支持部材14は多張間架構であり、構成材の2本の縦梁16A、16Bによって剛的に荷重を受け、ガラスパネル12、12…を縦梁16A、16B及び横梁20A、20Bの枠体によって支持することができる。図3には、ガラスパネル12Aに近接した縦梁16Aに圧縮方向の軸力がかかり、その縦梁16Aに隣接する縦梁16Bに引っ張り方向の軸力がかかっている図が示されている。これにより、従来の方立構造と同等の横方向加重の強度を得ることができるようになる。また、2本の縦梁16A、16B間の隙間18により、支持部材14は、透視性のあるすっきりとした形状となるので、構造的な軽量化、及び省スペース化を図ることができる。
【0042】
また、1本の横梁20A、20Bに、ガラスパネル12A、12Bの下部コーナー部を受ける金具24A、24Bと、下方のガラスパネル12B、12Cの上部コーナー部を受ける金具28A、28Bを設け、これらの金具24A、24Bと金具28A、28Bとが見込み方向に重ねて設けられているので、横梁20A、20Bの見付け寸法が小さくなる。したがって、カーテンウォール10を正面から見たときに、横梁20A、20Bが目立ち難くなるので、カーテンウォール10の外観が良好になる。
【0043】
次に、カーテンウォール10の施工(構築)方法について説明する。
【0044】
まず、ビルの1フロア分の高さに相当する4枚のガラスパネル12、12…からなる一列のパネル体を、図3に示したトラス構造の支持部材14によって支持することによりガラスパネルユニット30を構成する。ガラスパネルユニット30の構成、すなわち、ガラスパネルユニット30の組み立ては出荷工場にて行い、これを建設現場に搬送し、建設現場ではガラスパネルユニット30、30…をビルの躯体に設置する工事を行う。これにより、建設現場にてガラスパネルユニット30を組み立てる従来の施工方法と比較して、ガラスパネルユニット30及びカーテンウォール10の設置工期が短縮し、工費も削減できる。
【0045】
図5(A)〜(F)には、金具(第1の係止部)24Aが横梁(第1の横梁)20Aと分離可能に接合されたその分離可能構造の一例が示されている。なお、金具(第2の係止部)24Bと横梁(第2の横梁)20Bとの分離可能構造においても同様であるが、どちらか一方にこの分離可能構造を適用してもよい。
【0046】
図5(A)で示す分離可能構造は、連結ピン40、40を介してガラスパネル12Bを挟持する一対のプレート42、44と、ガラスパネル12Bの室内側面に配置されたプレート44をピン46を介して横梁20Aに傾斜固定されるアーム48とから金具24Aを構成した例である。
【0047】
図5(B)で示す分離可能構造は、連結ピン40、40を介してガラスパネル12Bを挟持する一対のプレート42、44と、ガラスパネル12Bの室内側面に配置されたプレート44を横梁20Aの傾斜面21に締結するねじ50とから金具24Aを構成した例である。
【0048】
図5(C)で示す分離可能構造は、ガラスパネル12Bに形成された孔部に嵌合されて固定される固定部52と、固定部52をブラケット54を介して横梁20Aに締結するねじ56とから金具24Aを構成した例である。
【0049】
図5(D)で示す分離可能構造は、ガラスパネル12Bの下端部を受ける凹型ホルダ58と、ホルダ58を横梁20Aに締結するねじ棒60とから金具24Aを構成した例である。
【0050】
図5(E)で示す分離可能構造は、横梁20Aの端部に切欠部23を形成するとともに、横梁20Aの端部にL字状のプレート62を、その下辺部でねじ64により固定することによって、切欠部23とプレート62との間でガラスパネル12Bの下端部を受ける凹型の金具24Aを構成した例である。
【0051】
図5(F)で示す分離可能構造は、図5(E)の分離可能構造の変形例であり、ねじ64の代わりに、横梁20Aの下面に一対のフック66、66を形成し、このフック66、66に係合するフック68、68をL字状のプレート70に形成し、フック66、66にフック68、68を係合させることにより、切欠部23とプレート70との間でガラスパネル12Bの下端部を受ける凹型の金具24Aを構成した例である。
【0052】
図5(A)から(F)の金具24Aを利用することにより、ガラスパネル12Bを横梁20Aに容易に組み付けることができ、よって、出荷工場においてガラスパネルユニット30を簡単に組み立てることができる。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は、ガラスパネルのみでなく、建築用外壁部、内壁部、又は装飾用壁や仕切りにも適用できる。また、建築物の外壁部や窓部などを二重構造としたダブルスキンファサード構造における室外側のガラス支持構造に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】実施の形態のカーテンウォールを室外側から見た正面図
【図2】図1のカーテンウォールを室内側から見た要部斜視図
【図3】図1のカーテンウォールを構成するガラスパネルの支持構造を示した要部拡大斜視図
【図4】図1のカーテンウォールを構成するガラスパネルの支持構造を示した要部拡大斜視図
【図5】係止部が横梁と分離可能に接合されたその分離可能構造の一例を示した要部構造図
【符号の説明】
【0055】
10…カーテンウォール、12A、12B、12C…ガラスパネル、14…支持部材、16A、16B…縦梁、18…隙間、20A、20B、20C、20D…横梁、22…貫通孔、24A、24B…金具、26…シーリング材、28A、28B…金具、30…ガラスパネルユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数枚のガラスパネルが支持部材により下見板張り状に配置される複数のガラスパネルの壁面構造であって、
前記支持部材は第1のガラスパネルの左右各々の上下端に少なくとも第1及び第2の横梁と、第1のガラスパネルの左右各々に第1のガラスパネルと略平行な第1及び第2の縦梁と、を有し、
前記左右の第1の横梁は、前記第1のガラスパネルの上辺コーナー部付近を支持する第1の係止部と、前記第1の係止部より屋外側に位置する前記第1のガラスパネルの上方に配置される第2のガラスパネルの下辺コーナー部を支持する第2の係止部と、を有し、
第2の横梁は、前記第1のガラスパネルの下辺コーナー部付近を支持する第3の係止部と、前記第3の係止部より屋内側に位置する前記第1のガラスパネルの下方に配置される第3のガラスパネルの上辺コーナー部付近を支持する第4の係止部と、を有し、
前記第1及び第2の横梁は前記第1及び第2の縦梁により、連結、固定されていることを特徴とするガラスパネルの壁面構造。
【請求項2】
前記第1の縦梁が連結、固定された前記第1及び第2の横梁との間であって、前記第1のガラスパネルの左右に、かつ前記第1の縦梁よりも屋内側に、前記第1の縦梁と略平行に前記第2の縦梁が配置されていることを特徴とする請求項1に記載のガラスパネルの壁面構造。
【請求項3】
前記第1の縦梁は、すくなくとも前記第2のガラスパネルの左右上辺コーナー部付近を支持する第3の横梁まで延在され、前記第1の縦梁と第3の横梁が連結、固定されていることを特徴とする請求項1または2に記載のガラスパネルの壁面構造。
【請求項4】
前記第2の縦梁は、すくなくとも前記第3のガラスパネルの左右下辺コーナー部付近を支持する第4の横梁まで延在され、前記第2の縦梁と前記第4の横梁が連結、固定されていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のガラスパネルの壁面構造。
【請求項5】
前記第1の縦梁は、前記第1の縦梁の上端部と前記第3の横梁とが連結、固定され、前記第1の縦梁の下端部と前記第2の横梁とが連結、固定され、かつ前記第2の縦梁は、前記第2の縦梁の上端部と前記第1の横梁とが連結、固定され、前記第2の縦梁の下端部と前記第4の横梁とが連結、固定されていることを特徴とする請求項4に記載のガラスパネルの壁面構造。
【請求項6】
前記第1及び第3の横梁との間であって、前記第2のガラスパネルの左右に、かつ第1の縦梁よりも屋外側に、前記第1の縦梁と略平行に第3の縦梁が配置され、前記第3の縦梁により前記第1及び第3の横梁が連結固定されていることを特徴とする請求項5に記載のガラスパネルの壁面構造。
【請求項7】
前記第2及び第4の横梁との間であって、前記第2のガラスパネルの左右に、かつ第2の縦梁よりも屋内側に、前記第2の縦梁と略平行に第4の縦梁が配置され、前記第4の縦梁により前記第2及び第4の横梁が連結固定されていることを特徴とする請求項5または6に記載のガラスパネルの壁面構造。
【請求項8】
前記第1の縦梁は、前記第1の縦梁の上端部と前記第1の横梁とが連結、固定され、前記第1の縦梁の下端部と前記第2の横梁とが連結、固定され、かつ前記第2の縦梁は、前記第2の縦梁の上端部と前記第1の横梁とが連結、固定され、前記第2の縦梁の下端部と前記第3のガラスパネルの左右下辺コーナー部付近を支持する第4の横梁とが連結、固定されていることを特徴とする請求項1または2に記載のガラスパネルの壁面構造。
【請求項9】
前記第2及び第4の横梁との間であって、前記第2のガラスパネルの左右に、かつ第2の縦梁よりも屋内側に、前記第2の縦梁と略平行に第4の縦梁が配置され、前記第4の縦梁により前記第2及び第4の横梁が連結固定されていることを特徴とする請求項8に記載のガラスパネルの壁面構造。
【請求項10】
前記第1の縦梁は、前記第1の縦梁の上端部と前記第2のガラスパネルの左右上辺コーナー部付近を支持する第3の横梁とが連結、固定され、前記第1の縦梁の下端部と前記第2の横梁とが連結、固定され、かつ前記第2の縦梁は、前記第2の縦梁の上端部と前記第1の横梁とが連結、固定され、前記第2の縦梁の下端部と前記第2の横梁と、が連結、固定されていることを特徴とする請求項1または2に記載のガラスパネルの壁面構造。
【請求項11】
前記第1及び第3の横梁との間であって、前記第2のガラスパネルの左右に、かつ第1の縦梁よりも屋外側に、前記第1の縦梁と略平行に第3の縦梁が配置され、前記第3の縦梁により前記第1及び第3の横梁が連結固定されていることを特徴とする請求項10に記載のガラスパネルの壁面構造。
【請求項12】
前記第1乃至第4の係止部の少なくとも一つが前記第1乃至第4の横梁と分離可能に接合されていることを特徴とする請求項4から11のいずれかに記載のガラスパネルの壁面構造。
【請求項13】
前記第1乃至第2の縦梁および前記第1乃至第4の横梁の少なくとも一つが、隣り合う前記ガラスパネルとで共用されていることを特徴とする請求項4から12のいずれかに記載のガラスパネルの壁面構造。
【請求項14】
請求項1から13のうちいずれか一つに記載のガラスパネルの壁面構造によって構築されたことを特徴とするカーテンウォール。
【請求項15】
所定の高さに対応する複数枚のガラスパネルからなる一列のパネル体が、請求項1から13のうちいずれか一つに記載のガラスパネルの壁面構造により支持されることを特徴とするガラスパネルユニット。
【請求項16】
請求項15に記載のガラスパネルユニットによって構築されたことを特徴とするカーテンウォール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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