説明

ガラス固化体貯蔵設備及びその貯蔵方法。

【課題】
地震時の振動や衝撃及び熱膨張差に対する好適な支持構造を提供し、多数本の内管と外管並びに上部及び下部外管支持架構の現地据付工程を短縮し、さらに、現地組立作業における据付精度向上を図った好適なガラス固化体貯蔵設備を提供する。
【解決手段】
外管の内周面及び外周面の両方に突出した耐震ラグを設け、これに取合う内管の外周面にはスリット付きの補強パッドを取付け、さらに外管外周面の上部及び下部外管支持架構の上面に取合う位置にスリット付きの上部及び下部耐震サポートを配した構成とする。また、内管と外管並びに上部及び下部耐震サポートを工場で組立調整し、これらの組立構造物を現地まで輸送し、現地にて一括同時据付を行うことができるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原子力発電設備からの使用済み燃料再処理による廃液を封入したガラス固化体を収納するためのガラス固化体貯蔵設備及びその貯蔵方法に係る。
【背景技術】
【0002】
使用済み燃料の再処理によって分離された放射性廃棄物は、放射線と崩壊熱を発生するために溶融ガラスと混合されてキャニスターと呼ばれる容器に充填,封入されたガラス固化体として安定化された後、ガラス固化体貯蔵設備で所定温度以下となるまで長期間保管される。
【0003】
このガラス固化体貯蔵設備の例として、特許文献1の実開平2−77698号公報に、図10及び図11に示す技術が記載されている。図10において、地下に形成した貯蔵ピット1上部の床面(天井スラブ)2に多数の高レベルパッケージ(ガラス固化体)3の挿入孔4を穿設し、該挿入孔4に下端を閉口として高レベルパッケージ3を多段に収納し得るようにした内管5上端を固定して該内管5を前記貯蔵ピット1内部に吊り下げ支持し、前記内管5の外周を外管6で覆って、内管5と外管6の間隙に冷却流体を流し得るようにしている。なお、15は内管5の下端に挿入した緩衝材、16は床プラグ、17は内管蓋、18は上部遮蔽板、19は支柱を示す。
【0004】
さらに、内管5及び外管6の支持装置として、図10及び図11に示す技術が考えられている。すなわち、外管6を囲うようにしてH字型鋼等の鉄骨を井桁状に組んで上部及び下部外管支持架構7,8を設け、該各外管支持架構7,8に取付けた支持部材9及びブロック10により外管6外周の周方向に等間隔な4箇所の位置を固定して外管6を各外管支持架構7,8に支持する。そして、外管6にねじ孔11に連通する貫通孔12を設け、前記ねじ孔11及び貫通孔12に外管6外周側から調整ボルト13等のスペーサを螺着して内管5の表面に取付けた座14との間に微小の間隙Sを有するように調整ボルト13先端を外管6内周面に対し突設配置し、内管5と外管6に温度差による長手方向の伸び差が生じた場合でも、内管5と外管6の間を直接連結せず、外管6から突出する調整ボルト13の先端で内管5を係止するようにしている。したがって、地震時の振動や衝撃或いは熱膨張等の半径方向の変形により内管5が振れた場合でも外管6に接触して破損することが抑止される。
【0005】
これらのガラス固化体貯蔵設備では、放射性物質の崩壊熱によって、内管5の温度が高くなり、図示されていないがガラス固化体貯蔵設備建屋の外から外気が取り込まれ、図示されていないが下部遮蔽板と貯蔵ピット1の下部流路に流入し、内管5と外管6の間隙を上昇する自然対流が生じてガラス固化体が冷却される。ここで、一般にガラス固化体貯蔵設備における最高使用温度は、内管5では約200℃、外管6では約100℃、上部及び下部外管支持架構7,8では約50℃以下である。しかるに、実開平2−77698号公報では、内管5と外管6は温度差による熱伸び差を吸収する構造となっているが、外管6と上部及び下部外管支持架構7,8は各外管支持架構に取付けた支持部材9及びブロック10により外管6外周の周方向に等間隔な4箇所の位置を固定して外管6を上部及び下部外管支持架構7,8に支持するとあり、外管6と上部及び下部外管支持架構7,8は温度差による熱伸び差を吸収する構造を考慮していないと考えられる。
【0006】
一方、特許文献2の特許第3314524号では、外管と支持構造物(支持架構)は半径方向及び上下方向(長手方向)の移動を許容し、水平回転方向の移動を拘束する支持装置を具備しているので、地震時の振動や衝撃に対処し、かつ、温度差による熱伸び差を吸収する構造になっている。しかし、内管と外管は固定スペーサにより固定されているので、内管と外管は温度差による熱伸び差を吸収する構造を考慮していないと考えられる。
【0007】
【特許文献1】実開平2−77698号公報
【特許文献2】特許第3314524号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前述した公開及び特許公報より、内管5と外管6、外管6と上部及び下部外管支持架構7,8はいずれも温度差があり固定すると熱膨張差応力が発生するので、これらの温度差による半径方向及び上下方向(長手方向)熱伸び差を吸収する構造が要求される。一方、地震時の振動や衝撃に対しては、内管5と外管6、外管6と上部及び下部外管支持架構7,8はいずれも水平方向地震荷重の場合には水平回転方向の移動を拘束する支持構造が要求され、垂直方向地震荷重の場合には垂直方向に支持する構造が要求される。また、ガラス固化体貯蔵設備では多数本の内管5と外管6並びに上部及び下部外管支持架構7,8を建設現場で組立作業するため、据付工程の短縮が要求される。さらに、工場作業と異なり、これらの現地組立作業における据付精度向上も課題となる。
【0009】
以上のように、地震時の振動や衝撃及び熱膨張差に対する好適な支持構造を提供し、多数本の内管と外管並びに上部及び下部外管支持架構の現地据付工程を短縮し、さらに、現地組立作業における据付精度向上を図ることが望まれる。
【0010】
本発明の目的は、地震時の振動や衝撃及び熱膨張差に対する好適な支持構造のガラス固化体貯蔵設備及びその貯蔵方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のガラス固化体貯蔵設備は、貯蔵ピットの上部の天井スラブに上端を固定されて吊り下げ支持されたガラス固化体収納用の内管の外周を外管で覆い、該内管と該外管の間に冷却空気を流すよう構成したガラス固化体貯蔵設備であって、外管垂直方向支持板と上部及び下部耐震サポートを、長さ調整可能な耐震ラグにより狭隘部となる井桁状の支持架構に取り付けたことを特徴とする。
【0012】
或いは、本発明のガラス固化体貯蔵設備は、貯蔵ピットの上部の床面である天井スラブに上端を固定されて吊り下げ支持された高レベルパッケージであるガラス固化体収納用の内管の外周を外管で覆い、内管と外管の間に冷却空気を流すようにしたガラス固化体貯蔵設備において、内管と外管並びに上部及び下部耐震サポートを工場で組立調整し、これらの組立構造物を現地にて一括同時据付を行うようにしたことを特徴とする。
【0013】
或いは、本発明のガラス固化体貯蔵設備の貯蔵方法は、貯蔵ピットの上部の天井スラブに上端を固定されて吊り下げ支持されたガラス固化体収納用の内管の外周を外管で覆い、該内管と該外管の間に間隙を有するガラス固化体貯蔵設備の貯蔵方法であって、外管垂直方向支持板と上部及び下部耐震サポートを、長さ調整可能な耐震ラグにより狭隘部となる井桁状の支持架構に取り付け、該内管と該外管の間に間隙に冷却空気を流して貯蔵することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によると、地震時の振動や衝撃及び熱膨張差に対する好適な支持構造のガラス固化体貯蔵設備及びその貯蔵方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
貯蔵ピットの上部の床面(天井スラブ)に上端を固定されて吊り下げ支持された高レベルパッケージ(ガラス固化体)収納用の内管の外周を外管で覆い、内管と外管の間に冷却空気を流すようにした貯蔵設備において、外管の内周面及び外周面の両方に突出した耐震ラグを設け、これに取合う内管の外周面にはスリット付きの補強パッドを取付け、さらに外管外周面の上部及び下部外管支持架構の上面に取合う位置にスリット付きの上部及び下部耐震サポートを配した構成とする。上部及び下部耐震サポートは現地据付時に上部及び下部外管支持架構の上面に溶接固定される。このような構成にすることにより、内管と外管並びに外管と上部及び下部外管支持架構はそれぞれ温度差による半径方向及び上下方向(長手方向)熱伸び差を吸収することができる。一方、地震時の振動や衝撃に対しては、内管と外管、外管と上部及び下部外管支持架構はいずれも水平方向地震荷重の場合には、補強パッド及び耐震サポートのスリットと耐震ラグが取合い水平回転方向の移動を拘束することができる。垂直方向地震荷重の場合には外管の上部に取付けられた外管垂直支持板が上部耐震サポートに支持ボルトにより締結され、垂直方向に支持される。また、上部及び下部外管支持架構の間に中間支柱が固定され、下部外管支持架構と貯蔵ピット下面の間に支柱が固定されて外管を含めて垂直方向に支持される。支柱及び中間支柱は全部の井桁状支持架構に対して必要ではなく、耐震強度を満足する本数であればよい。また、内管は貯蔵ピットの上部の床面(天井スラブ)に上端を固定されて吊り下げられ、垂直方向に支持される。このような構成にしたことにより、内管と外管並びに上部及び下部耐震サポートを工場で組立調整し、これらの組立構造物を現地まで輸送し、現地にて一括同時据付を行うことができるようにした。この場合、内管と外管並びに上部及び下部耐震サポートはスリットを介して上下にスライドするので、図示しないが据付固定冶具や縛着等による仮固定が必要である。なお、外管垂直方向支持板並びに上部及び下部耐震サポートを菱形構造として、現地据付時にこれらを45°回転させて狭隘部となる井桁状の支持架構を通過させることができるようにした。
【0016】
次の作用を説明する。内管と外管並びに上部及び下部耐震サポートは、品質管理及び信頼性環境の良い工場で組立調整し、これらの組立構造物を現地まで輸送し、現地にて一括同時据付を行う。これは、外管垂直方向支持板並びに上部及び下部耐震サポートを菱形構造として、現地据付時にこれらを45°回転させて狭隘部となる井桁状の支持架構を通過させ、通過後に45°回転を戻すことによって、一括同時据付が可能となる。したがって、工場で組立調整後にケガキ線或いは合いマークを入れておくことによって、現地ではこれらのケガキ線或いは合いマークを確認するだけでよく、現地での組立調整が不要となり、また、これらの現地組立作業における据付精度も向上することになる。これらの現地一括同時据付後、上部及び下部耐震サポートは井桁状の上部及び下部外管支持架構の上面に溶接固定されるので、狭隘部となる井桁部の内側や下面での作業と異なり、作業性及び検査性が一段と向上する。これらの現地一括同時据付及び狭隘部作業の回避により、現地据付工程が短縮され、現地工数低減にも寄与することになる。一方、内管,外管,上部及び下部耐震サポート並びに上部及び下部外管支持架構の構成は、それぞれ温度差による半径方向及び上下方向(長手方向)熱伸び差を吸収するので、熱膨張差応力の発生を防ぐことができる。また、地震時の振動や衝撃に対しても、水平方向地震荷重の場合には、少なくとも内管及び外管周方向の2箇所の耐震ラグを介して水平回転方向の移動を拘束するので、地震時の横振れを抑止することができる。垂直方向地震荷重の場合も、耐震強度を満足する構成とすることができる。
【実施例】
【0017】
本発明の好適な一実施例であるガラス固化体貯蔵設備の支持構造を図1から図9により説明する。
【0018】
貯蔵ピット1の上部の床面(天井スラブ)2に上端を固定されて吊り下げ支持されたガラス固化体3収納用の内管5の外周を外管6で覆い、内管5と外管6の間に冷却空気を流すようにしたガラス固化体貯蔵設備において、外管6の内周面及び外周面の両方に突出した耐震ラグ24を設け、これに取合う内管5の外周面にはスリット付きの補強パッド23を取付け、さらに外管6外周面の上部及び下部外管支持架構7,8の上面に取合う位置にスリット付きの上部及び下部耐震サポート25,26を配した構成とする。上部及び下部耐震サポート25,26は現地据付時に上部及び下部外管支持架構7,8の上面に現地にて溶接固定される。ここで、符号27は上部現地溶接部、28は下部現地溶接部である。上部及び下部外管支持架構7,8は外管6を囲うようにして井桁状に組んだ鉄骨であるが、図1から図9では一例として角形型鋼を示したが、H字型鋼等でもよい。このような構成にすることにより、内管5と外管6並びに外管6と上部及び下部外管支持架構7,8はそれぞれ温度差による半径方向及び上下方向(長手方向)熱伸び差を吸収することができる。なお、上部耐震サポート25は上部連結板25aと上部ブラケット25bを菱形に組み立てて一体構造としたものであり、耐震ラグ24と係合するスリット加工を行ったものである。下部耐震サポート26も同様に下部連結板26aと下部ブラケット26bを菱形に組み立てて一体構造としたものであり、耐震ラグ24と係合するスリット加工を行ったものである。
【0019】
一方、地震時の振動や衝撃に対しては、内管5と外管6、外管6と上部及び下部外管支持架構7,8はいずれも水平方向地震荷重の場合には、補強パッド23及び上部及び下部耐震サポート25,26のスリットと耐震ラグ24が取合い水平回転方向の移動を拘束することができる。垂直方向地震荷重の場合には外管6の上部に取付けられた外管垂直支持板21が上部耐震サポート25に支持ボルト22により締結され、垂直方向に支持される。ここで、外管垂直支持板21は上部耐震サポート25と同様に菱形に加工される。また、上部及び下部外管支持架構7,8の間に中間支柱20が固定され、下部外管支持架構8と貯蔵ピット1下面の間に支柱19が固定されて外管6を含めて垂直方向に支持される。支柱19及び中間支柱20は全部の井桁状の上部及び下部外管支持架構7,8に対して必要ではなく、耐震強度を満足する本数であればよい。また、内管5は貯蔵ピット1の上部の床面(天井スラブ)2に上端を固定されて吊り下げられ、垂直方向に支持される。
【0020】
このような構成にしたことにより、内管5と外管6並びに上部及び下部耐震サポート25,26を工場で組立調整し、これらの組立構造物を現地まで輸送し、現地にて一括同時据付を行うことができるようにした。この場合、内管5と外管6並びに上部及び下部耐震サポート25,26はスリットを介して上下にスライドするので、図示しないが据付固定冶具や縛着等による仮固定が必要である。なお、外管垂直方向支持板21並びに上部及び下部耐震サポート25,26を菱形構造として、現地据付時にこれらを45°回転させて貯蔵ピット1の上部の床面(天井スラブ)2の桁梁(図示しない)及び狭隘部となる井桁状の上部外管支持架構7を通過させることができるようにした。また、外管垂直方向支持板21並びに上部及び下部耐震サポート25,26を菱形構造としたことにより、従来例の図11に示す支持部材9が不要となり、上部及び下部外管支持架構7,8の井桁部をさらに小さくできるので、内管5及び外管6の据付密度を高めることが可能である。
【0021】
図6の内管5と外管6の工場組立において、内管5の外周面にはスリット付きの補強パッド23を取付け、このスリットに密着するように耐震ラグ24を押し込み、そのときの位置を表すケガキ線を耐震ラグ24に入れ、しかる後に内管5の半径方向の相対熱伸び量に応じたギャップG1を確保するために、耐震ラグ24をその分引き抜き外管6の外面に溶接する。外管6には耐震ラグ24を出し入れする角孔があけてある。耐震ラグ24と上部及び下部耐震サポート25,26との間には、外管6との半径方向の相対熱伸び量にこれらの組立誤差等を考慮してギャップG2が確保されるようにする。このようにすることにより、内管5と外管6並びに外管6と上部及び下部外管支持架構7,8はそれぞれ温度差による半径方向及び上下方向(長手方向)熱伸び差を吸収することができる。
【0022】
一方、図8は地震時の水平方向地震荷重が作用したときの内管5と外管6の相対変位の一例を誇張して示したものである。図9は図8の地震時相対変位の一例を上から見た横断面図である。図9から分かるように、相対変位により内管5と外管6の半径方向の間隙部断面積(図9ではA1及びA2)が一定ではない。また、図6のギャップG1及びG2により、上部及び下部外管支持架構7,8のエレベーションにおける内管5と外管6の相対変位も異なることになる。さらに、内管5と外管6には溶接管が使用される場合があり、これらの断面は許容差範囲内で楕円形状になる場合が多い。このように内管5と外管6は、常に真円とはならず、半径方向間隙が一定ではない。しかしながら、一般に内管5と外管6との半径方向の間隙は地震時の相対変位に比べて余裕を見て大きくしている。したがって、図9を一例にとれば、冷却流量Q≒A1×υ1≒A2×υ2と考えられる(管壁の摩擦損失は無視した)。ここに、A1,A2は間隙部断面積、υ1,υ2は間隙部流速である。すなわち、内管5と外管6の間隙部の冷却効果は冷却流量に比例すると考えられるので、A1部とA2部においては冷却効果の影響差は小さいと考えられる。
【0023】
さらに、内管5と外管6並びに上部及び下部耐震サポート25,26は、品質管理及び信頼性環境の良い工場で組立調整し、これらの組立構造物を現地まで輸送し、現地にて一括同時据付を行う。これは、外管垂直方向支持板21並びに上部及び下部耐震サポート25,26を菱形構造として、現地据付時にこれらを45°回転させて貯蔵ピット1の上部の床面(天井スラブ)2の桁梁(図示しない)及び狭隘部となる井桁状の上部外管支持架構7を通過させ、通過後に45°回転を戻すことによって、一括同時据付が可能となる。したがって、工場で組立調整後にケガキ線或いは合いマークを入れておくことによって、現地ではこれらのケガキ線或いは合いマークを確認するだけでよく、現地での組立調整が不要となり、また、これらの現地組立作業における据付精度も向上することになる。これらの現地一括同時据付後、上部及び下部耐震サポート25,26は井桁状の上部及び下部外管支持架構7,8の上面にそれぞれ上部現地溶接部27及び下部現地溶接部に示されるように溶接固定されるので、狭隘部となる井桁部の内側や下面での作業と異なり、作業性及び検査性が一段と向上する。これらの現地一括同時据付及び狭隘部作業の回避により、現地据付工程が短縮され、現地工数低減にも寄与することになる。
【0024】
本実施例によると、内管と外管並びに上部及び下部耐震サポートは、工場で組立調整後にケガキ線或いは合いマークを入れておくことによって、現地ではこれらのケガキ線或いは合いマークを確認するだけでよく、現地での組立調整が不要となる。したがって、内管と外管並びに上部及び下部耐震サポートは工場で組立調整し、この状態で現地まで輸送し、現地にてこれらの組立構造物の一括同時据付を可能とした。また、現地での組立調整作業が不要となるので、これらの現地組立作業における据付精度も向上することになる。これらの現地一括同時据付後、上部及び下部耐震サポートは井桁状の上部及び下部外管支持架構の上面に溶接固定されるので、狭隘部となる井桁部の内側や下面での作業と異なり、作業性及び検査性が一段と向上する。これらの現地一括同時据付及び狭隘部作業の回避により、現地据付工程が短縮され、現地工数低減にも寄与することになる。なお、内管、外管、上部及び下部耐震サポート並びに上部及び下部外管支持架構は、今まで述べたように地震時の振動や衝撃に対する耐震強度を満足し、かつ、温度差による熱膨張差応力の発生を防ぐことができる構成となっている。
【0025】
また、外管垂直方向支持板並びに上部及び下部耐震サポートを菱形構造として、現地据付時にこれらを45°回転させて貯蔵ピットの上部の床面(天井スラブ)の桁梁及び狭隘部となる井桁状の上部外管支持架構を通過させ、通過後に45°回転を戻すことによって、請求項1の一括同時据付が可能となる。また、外管垂直方向支持板並びに上部及び下部耐震サポートを菱形構造としたことにより、従来例に示す支持部材が不要となり、上部及び下部外管支持架構の井桁部をさらに小さくできるので、内管及び外管の据付密度を高めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明に係るガラス固化体貯蔵設備の支持構造の一実施例を示す主要部の縦断面図である。
【図2】図1のI−I矢視図である。
【図3】図1のII−II矢視図である。
【図4】図1のIII−III矢視図である。
【図5】現地据付時に内管及び外管を45°回転させて、狭隘部となる井桁状支持架構を通過させる説明図である。
【図6】図1のIV部拡大図である。
【図7】図6を上から見た図である。
【図8】図1の内管及び外管に、水平方向地震荷重が作用した時の相対変位の一例を示す概略図である。
【図9】図8の地震時の相対変位の一例を上から見た横断面図である。
【図10】高レベルパッケージ(ガラス固化体)貯蔵設備の一例を示す縦断面図である。
【図11】図10の内管及び外管と井桁状支持架構との取合い構造を示す横断面図である。
【符号の説明】
【0027】
1 貯蔵ピット
2 上部の床面(天井スラブ)
3 高レベルパッケージ(ガラス固化体)
4 挿入孔
5 内管
6 外管
7 上部外管支持架構
8 下部外管支持架構
9 支持部材
10 ブロック
11 ねじ孔
12 貫通孔
13 調整ボルト
14 座
15 緩衝材
16 床プラグ
17 内管蓋
18 上部遮蔽板
19 支柱
20 中間支柱
21 外管垂直方向支持板
22 支持ボルト
23 補強パッド
24 耐震ラグ
25a 上部連結板
25b 上部ブラケット
25 上部耐震サポート
26a 下部連結板
26b 下部ブラケット
26 下部耐震サポート
27 上部現地溶接部
28 下部現地溶接部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
貯蔵ピットの上部の天井スラブに上端を固定されて吊り下げ支持されたガラス固化体収納用の内管の外周を外管で覆い、該内管と該外管の間に冷却空気を流すよう構成したガラス固化体貯蔵設備であって、外管垂直方向支持板と上部及び下部耐震サポートを、長さ調整可能な耐震ラグにより狭隘部となる井桁状の支持架構に取り付けたことを特徴とするガラス固化体貯蔵設備。
【請求項2】
貯蔵ピットの上部の床面である天井スラブに上端を固定されて吊り下げ支持された高レベルパッケージであるガラス固化体収納用の内管の外周を外管で覆い、内管と外管の間に冷却空気を流すようにしたガラス固化体貯蔵設備において、内管と外管並びに上部及び下部耐震サポートを工場で組立調整し、これらの組立構造物を現地にて一括同時据付を行うようにしたことを特徴とするガラス固化体貯蔵設備。
【請求項3】
請求項2記載のガラス固化体貯蔵設備において、外管垂直方向支持板と上部及び下部耐震サポートを菱形構造として、これらを45°回転させて狭隘部となる井桁状の支持架構を通過させることができるようにしたことを特徴とするガラス固化体貯蔵設備。
【請求項4】
貯蔵ピットの上部の天井スラブに上端を固定されて吊り下げ支持されたガラス固化体収納用の内管の外周を外管で覆い、該内管と該外管の間に間隙を有するガラス固化体貯蔵設備の貯蔵方法であって、外管垂直方向支持板と上部及び下部耐震サポートを、長さ調整可能な耐震ラグにより狭隘部となる井桁状の支持架構に取り付け、該内管と該外管の間に間隙に冷却空気を流して貯蔵することを特徴とするガラス固化体貯蔵設備の貯蔵方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2009−80056(P2009−80056A)
【公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−250414(P2007−250414)
【出願日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【出願人】(507250427)日立GEニュークリア・エナジー株式会社 (858)