説明

ガラス洗浄用ローラブラシ

【課題】重量を軽減し、作業性及び生産性を改善したガラス洗浄用ローラブラシを提供する。
【解決手段】中心軸の周りに回転してガラス基板の表面を洗浄するガラス洗浄用ローラブラシは、円筒状のローラシャフト3と、このローラシャフト2の周面にこの周面を覆うようにして接着剤により固定されたブラシシート3とを有する。このブラシシート3は、織物地に毛材が編み込まれて構成されており、この毛材は、その先端がローラシャフトの半径方向の外側に向かうようにローラシャフトに放射状に配置されている。ローラシャフト2は、カーボン製のパイプを、ステンレス製のフィルムで被覆したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置(LCD)及びプラズマ表示装置(PDP)等の平面型表示装置の製造工程において、そのガラス面を洗浄するために使用されるガラス洗浄用ローラブラシに関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置等の製造工程において、ガラス基板の表面に付着している付着物は、ローラブラシにより除去される。例えば、厚さが0.7〜1.5mm程度のガラス基板を高速で水平方向に搬送し、1対のローラブラシを、前記ガラス基板を挟んでその上下に対向するように、且つ、その回転軸がガラス基板の搬送方向に直交するようにして配置し、ブラシがガラス基板の表面をガラス基板の搬送方向に反対の方向に掃引するように、ローラブラシを、例えば、300rpmの回転速度で回転駆動する。ブラシを構成する毛材は、その線径が例えば0.05mmのナイロン(商品名:ポリアミド系繊維)製である。この毛材がガラス基板の表面を摺擦することにより、ガラス基板表面の付着物を除去する。
【0003】
従来のローラブラシには、ローラシャフトに毛材を取り付ける態様が2種類あり、この毛材の取付け態様に起因して、植毛型ローラブラシと、チャンネル型ローラブラシとがある(特許文献1)。特許文献1に開示された植毛型ローラブラシは、ローラシャフトの周面に、多数の溝を形成し、毛材をU字形に折り返して折り返し側を溝に挿入し、この溝内の毛材折り返し部にピンを挿入して、毛材を溝内に固定している。一方、チャンネル型ローラブラシは、帯状の金属帯を、その幅方向の両端部を起立させて断面がU字形の形状のチャネルを成形し、このチャネルをローラシャフトの周面に沿って螺旋状に巻回して固定した後、このU字溝内に、U字形に折り返した毛材をその折り返し側から挿入し、毛材の折り曲げ部の内側にワイヤを通してこのワイヤをローラシャフトに固定し、チャネルのU字の側面をその上端開口が狭まるように折り曲げて、毛材をシャフトに固定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−38207号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述の従来のローラブラシには、その重量が重いという問題点がある。例えば、チャンネル型ローラブラシにおいては、チャンネルが金属製であり、長さが3mのローラブラシでも、ローラシャフトを除いたブラシ部分の重量が20kgもあり、極めて重いという難点がある。
【0006】
近時、液晶表示装置の画面の大型化に伴い、そのガラス基板の洗浄に使用するローラブラシも長寸化しており、このため、ローラブラシの重量が重いことが作業性及び生産性を阻害している。
【0007】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであって、重量を軽減し、作業性及び生産性を改善したガラス洗浄用ローラブラシを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るガラス洗浄用ローラブラシは、中心軸の周りに回転してガラス基板の表面を洗浄するガラス洗浄用ローラブラシにおいて、円筒状のローラシャフトと、このローラシャフトの周面にこの周面を覆うようにして接着剤により直接固定されたブラシシートとを有し、このブラシシートは、織物地に毛材が編み込まれて構成されており、この毛材は、その先端が前記ローラシャフトの半径方向の外側に向かうように前記ローラシャフトに放射状に配置されていることを特徴とする。
【0009】
このガラス洗浄用ローラブラシにおいて、前記ローラシャフトは、例えば、カーボン製のパイプを、ステンレス製のフィルムで被覆して構成されている。
【発明の効果】
【0010】
本発明においては、毛材が織物地に編み込まれてブラシシートが構成され、このブラシシートがローラシャフトに直接接着されて、毛材が植毛されたローラブラシが構成されている。このため、このブラシシートの部分は極めて軽量である。従って、作業性及び生産性が極めて優れたガラス洗浄用ローラブラシを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態に係るローラブラシの全体を示す斜視図である。
【図2】同じく、そのローラブラシの端部を拡大して示す斜視図である。
【図3】同じく、そのブラシシートの植毛状態を示す斜視図である。
【図4】同じく、そのブラシシートの植毛態様を示す断面図である。
【図5】同じく、そのブラシシートの他の植毛態様を示す断面図である。
【図6】同じく、そのブラシシートの更に他の植毛態様を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、添付の図面を参照して具体的に説明する。図1乃至図4に示すように、本実施形態のローラブラシ1は、例えば、長さが8mの長寸のものであり、ローラシャフト2の周面に、ブラシシート3が接着剤により直接固定されている。このブラシシート3は、所定の幅をもつシートであり、ローラシャフト2の周面に螺旋状に巻回され、ブラシシート3間に隙間がないように配置されて、ブラシシート3がローラシャフト2の周面を被覆している。
【0013】
ローラシャフト2は、その軸方向の両端部の端面に、回動軸4がローラシャフト2に同軸的に且つ一体的に形成されており、回動軸4の外側両端部には、ローラブラシ1を駆動装置に取り付けるための取付板5がその面を回動軸4に垂直にして、回動軸4と一体的に形成されている。
【0014】
一方、ブラシシート3は、織物地11に、毛材12が編み込まれており、毛材12が織物地11から起立した状態に植毛されている。この毛材12は、例えば、線径が0.07mmのナイロン繊維を使用することができる。織物地11に対する毛材12の植毛態様は、例えば、図4乃至図6に示すものがある。図4(a)に示す植毛態様は、地経糸21(図中、紙面に垂直に配置された糸)に対し、地緯糸22(図中、紙面に平行に横方向に延びる糸)が交互に交錯して地組織を形成しており、この地組織に対して、パイル緯糸23が編み込まれている。このパイル緯糸23は、例えば、特定の地経糸21の下方をくぐったのち、3本の地経糸21を飛び越えて、4本目の地経糸21の下方をくぐるというように編み込まれている。そして、図4(b)に示すように、パイル緯糸23の中央部を切断すると、地経糸21及び地緯糸22からなる地組織に、パイル緯糸23が地組織の面に垂直になるように植毛されたブラシシートが得られる。このパイル緯糸23が毛材となる。この植毛態様は、図4(c)に示すように、毛材25が1個の地経糸21をくぐっただけのものもあれば、毛材25が3個の地経糸21に交互に係合したものもある。
【0015】
図5(a)に示す植毛態様は、地経糸31が上下2段になるように配置され、これらの地経糸31に地緯糸32が絡み合い、地組織を構成している。そして、上段の各地経糸31の下方をくぐり、上段の地経糸31の中間でループを形成するようにしてパイル緯糸33が編み込まれている。このパイル緯糸33の各ループには、図5(c)に示す針金34が打ち込まれる。この針金34はその後端部に刃35が形成されており、この針金34を引き抜くことにより、刃35がパイル緯糸33のループ部分を切断し、図4(b)と同様の植毛が得られる。
【0016】
この場合に、図5(b)に示すように、地経糸41にパイル緯糸42を織り込み、パイル経糸42のループ43内に上端に凹部45が形成されている針金44を打ち込み、この凹部45に刃を打ち込むことにより、パイル緯糸42のループ43を切断してもよい。
【0017】
図6(a)に示す植毛態様は、一群の地経糸51aと他の一群の地経糸51bとを上下に2段に分けて配置し、各地経糸51a及び51bを夫々地緯糸52a及び52bで平織りする。そして、パイル緯糸53を、上段の地経糸51aと下段の地経糸51bとに、交互に掛け渡し、図6(b)に示すように、パイル緯糸53を上段と下段との中間で切断することにより、2枚のパイル織物が得られ、2枚のブラシシートを得ることができる。
【0018】
ローラシャフト2は、例えば、カーボン製のパイプを、ステンレス製のフィルムで被覆したものである。このカーボン製パイプは、例えば、ピッチ系カーボンにより成形されており、このピッチ系カーボンはたわみが小さく、また軽量であるため慣性モーメントが小さいという利点がある。
【0019】
このカーボンパイプをステンレスフィルムで被覆したローラシャフト2は、例えば、厚さが5mm、直径が100mmのカーボンパイプに対し、厚さが0.5mmのステンレスパイプを嵌合して、圧入することにより、製造することができる。又は、カーボンパイプの周面に、適宜の幅のステンレス帯を螺旋状に巻回して、カーボンパイプをステンレスで被覆することとしてもよい。仮に、カーボンパイプが露出していると、ローラブラシを半導体ウエハの洗浄に使用したときに、pHが14程度のアルカリ水にカーボンが接触し、粉化が生じる。このステンレス被覆は、このようなカーボンの粉化を防止するためのものである。
【0020】
また、ピッチ系のカーボンをローラシャフト2の強度を担うベース部分に使用するのは、このピッチ系カーボンが、軽量で且つ剛性が高いために、例えば、長さが8mもの長寸のローラシャフト2を高速で回転駆動した場合に、その中央部のぶれが少ないという利点があるからである。
【0021】
上述のごとく構成された本実施形態のガラス洗浄用ローラブラシ1においては、上下に1対平行に配置され、両者間に高速で通板されてくるガラス基板の上面及び下面をローラブラシ1の回転駆動によりブラシが摺擦して洗浄する。このローラブラシ1は、例えば、400rpmの高速回転で、ガラス基板の表面をその移動方向とは逆方向に摺擦する。このとき、本実施形態によれば、ローラシャフト2が軽量であり、また、ブラシシート3は、織物地に毛材を編み込んだものであり、金属製のチャンネルを使用しないので、ブラシシート3も極めて軽量である。例えば、このブラシシート3は、長さが8mのローラブラシにおいて、5kg程度の重量になる。よって、本実施形態のローラブラシ1は、その全体が軽量であり、大型液晶表示装置の洗浄用として長寸化しても、その取り扱いが容易であり、しかも、剛性が高いため、高精度で、液晶表示画面のガラス基板を洗浄することができる。これにより、広大な面積のガラス基板を安全に且つむらなく均一に洗浄することができる。
【0022】
なお、ローラシャフト2としては、必ずしもカーボン製パイプを使用しなくても、ブラシシート自体が、チャネルを使用しないので軽量化されているので、ローラブラシの軽量化が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明は、軽量かつ剛性が高いローラブラシなので、液晶表示装置のガラス基板及び半導体ウエハ等の広大な面積を洗浄する際に極めて有益である。
【符号の説明】
【0024】
1:ローラブラシ
2:ローラシャフト
3:ブラシシート
4:回動軸
5:取付板
11:織物地
12:毛材
21,31,41,51a,51b:地経糸
22,32,42,52a、52b:地緯糸
23,33,43,53:パイル緯糸
25:毛材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心軸の周りに回転してガラス基板の表面を洗浄するガラス洗浄用ローラブラシにおいて、円筒状のローラシャフトと、このローラシャフトの周面にこの周面を覆うようにして接着剤により直接固定されたブラシシートとを有し、このブラシシートは、織物地に毛材が編み込まれて構成されており、この毛材は、その先端が前記ローラシャフトの半径方向の外側に向かうように前記ローラシャフトに放射状に配置されていることを特徴とするガラス洗浄用ローラブラシ。
【請求項2】
前記ローラシャフトは、カーボン製のパイプを、ステンレス製のフィルムで被覆して構成されていることを特徴とする請求項1に記載のガラス洗浄用ローラブラシ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−131144(P2011−131144A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−291871(P2009−291871)
【出願日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【出願人】(509354592)株式会社ヒットコーポレーション (1)
【出願人】(390000837)株式会社ナカジマブラシ (1)
【Fターム(参考)】